JP4097925B2 - 無色透明酸化スズゾルおよびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止剤などに用いられる無色透明酸化スズゾルおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に酸化スズは半導体であり、単体で比較的高い導電性を示す金属酸化物である。また、バンドギャップが広く可視光を吸収しないため無色透明であるという特徴も備えた物理的・化学的安定性に優れた材料であり、電気・電子用途に期待される材料である。特にアンチモンやインジウムと複合化されものは透明導電性酸化被膜として有名であるが、酸化スズ単体でも、ゾル化することで導電性を向上させて帯電防止剤として利用することなども検討されている。
【0003】
酸化スズゾルには、塩基性化合物を分散安定剤とする塩基性の酸化スズゾルと酸性化合物を分散安定剤とする酸性の酸化スズゾルが知られている。従来、塩基性の酸化スズゾルは、アンモニアやアミノアルコール、第4級アンモニウム水酸化物を分散安定剤として水媒体中に酸化スズ超微粒子を分散させることで調製され、そして得られる酸化スズゾルにも、アンモニアやアミノアルコール、第4級アンモニウム水酸化物を含まれるものが知られていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術にはその操作性や生産性の面で問題があった。すなわち、アンモニアを分散安定剤とした系では、高濃度の酸化スズ含有スラリーをゾル化することが困難であることから、ゾル調製時の酸化スズ含有スラリー中固形分濃度の上限が低くなるために低固形分濃度のものしか製造できず、利用可能な濃度にするためには濃縮工程を必要としていた。しかも、高濃度化のための濃縮工程において、随時アンモニア水を添加しなければならないうえに、細やかなpHコントロールが必要とされるなどの操作上の煩わしさがあった。
【0005】
一方、塩基性の有機化合物を分散安定剤とした技術においては、例えば、アミノアルコールを分散安定剤とした系は、アミノアルコールの必要量が多く、また、塗布加工液組成物として用いたとき塗布加工液の安定性が低く、塗布膜に斑が生じてヘイズが大きくなる場合があるという問題があった。さらに、第4級アンモニウム水酸化物を分散安定剤とした系は、第4級アンモニウム水酸化物が高価であるうえ、必要量が多いという問題があった。
【0006】
その他、酸化スズ単体ではなく、酸化アンチモンや酸化タングステンと酸化スズとの複合ゾル、アンチモンドープ酸化スズ水性ゾル、アンチモンドープ酸化スズ有機ゾルの分散安定剤としてアルキルアミンを用いる可能性について示された報告はあるものの(特開平10−251018号公報、特開平3−151038号公報)、水を主媒体とする系でアルキルアミンを実際に用いた例は示されていない。有機溶媒を主媒体とする系で利用された例は報告されているものの(特開平10−251018号公報)、粒子の解膠が不十分で、媒体中で一次粒子がクラスターを形成してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、着色が無く良好な導電性を有し、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性にも優れ、酸化スズ超微粒子が平均粒径15nm未満まで解膠された無色透明酸化スズゾルおよびその無色透明酸化スズゾルを濃縮工程や細やかなpHコントロールなしで安価に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、平均粒径15nm未満の酸化スズ超微粒子を5wt%〜15wt%含有するスラリーを、アルキルアミンを用いてゾル化することにより、酸化スズ超微粒子が1次粒子レベルまで解膠され、着色がなく良好な導電性を有し、かつ、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子および/または水分散性重合体水性分散体との混合安定性に優れた無色透明酸化スズゾルを効率良くかつ安価に製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の第一は、分散安定剤としてアルキルアミンを含有する水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒を媒体とする無色透明酸化スズゾルであって、アルキルアミンのモル数が、酸化スズのモル数の0.15〜0.50倍であり、pHが8.5〜10.0の範囲にあることを特徴とする無色透明酸化スズゾルを要旨とするものであり、好ましくは、ゾル中の酸化スズ超微粒子の体積平均粒子径(mv)および数平均粒子径(mn)がともに15nm未満で、かつ、mv/mnが1.0〜1.1の範囲にあるシャープな粒度分布を有するものであり、塗布加工液組成物として用いたとき、得られた塗布膜の表面固有抵抗が1010Ω/□未満になるものであり、また、好ましくはアニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性にも優れていることを特徴とするものである。
本発明の第二は、酸化スズ超微粒子スラリーにアルキルアミンを分散安定剤として添加して水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒を媒体とする無色透明酸化スズゾルを製造する方法において、酸化スズ超微粒子含有スラリーとして酸化スズ濃度が5wt%〜15wt%のものを用い、アルキルアミンの添加量を酸化スズに対して0.15〜0.50倍モルとし、pHが8.5〜10.0の範囲とすること特徴とする無色透明酸化スズゾルの製造法を要旨とするものであり、好ましくは、湿式法で酸化スズ超微粒子含有スラリーを得て、このスラリーを60℃以上に加熱した後洗浄し、次いでアルキルアミンを分散安定剤としてゾル化を行うものである。
【0010】
【発明実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の第二の酸化スズゾルの製造法について説明する。
本発明の製造法は、大別して酸化スズ超微粒子含有スラリー製造工程と酸化スズ超微粒子含有スラリーのゾル化工程との2つに分けることができる。
なお、本発明におけるゾルとは、1〜100nm程度の大きさを持つ固体分散質が液体分散媒中に分散した流動性のある系で、固体分散質が活発なブラウン運動をしており、速やかに濾紙を通過する程度まで分散しているものまたはその状態を指す。一方、スラリーとは、静置により液体分散媒中の固体分散質が沈降する系を示し、固体分散質の殆どが濾紙を通過できない程度にしか分散していないものまたはその状態を示す。
【0011】
本発明における酸化スズ超微粒子とは、酸化スズ、あるいはその溶媒和物や配位化合物の超微粒子のことをいい、その平均粒径は15nm未満でシャープな粒径分布を持つものである。ここでの粒径は、粒度分布計(日機装株式会社製、マイクロトラックUPA150粒度分布計モデルNo.9340)を用いて、動的光散乱法により測定した平均粒径である。
【0012】
酸化スズ超微粒子含有スラリーの製造工程において、酸化スズ超微粒子含有スラリーの製造方法に規定はないが、後のゾル化の容易さを考慮すると、湿式法により酸化スズ超微粒子含有スラリーを製造するのが好ましい。
【0013】
本発明において、湿式法で酸化スズ超微粒子含有スラリーを製造する方法にも特に規定はなく、金属スズやスズ化合物を加水分解または熱加水分解する方法や、スズイオンを含む酸性溶液をアルカリ加水分解する方法、スズイオンを含む溶液をイオン交換膜やイオン交換樹脂によりイオン交換する方法など何れの方法も用いることができる。
【0014】
本発明において、湿式法で酸化スズ超微粒子含有スラリーを製造する方法に用いられるスズ原料には、金属スズ、ハロゲン化物や硫酸塩などの水溶性の無機塩、蓚酸や酢酸などの有機酸塩、有機スズ化合物、スズアルコキシドなどが挙げられるが、何れの化合物においても溶液中におけるスズイオンの価数が4価になりうるものが用いられる。
【0015】
本発明において、酸化スズ超微粒子は酸性域での調製が可能であるので、スラリーを製造する際のpHは1.5〜5.0が好ましく、さらに好ましくは1.5〜3.0である。特にアルカリ加水分解法において、中性域および塩基性域に到達するまでアルカリを添加することはコストアップにつながるのみならず、生成した酸化スズが過剰のアルカリ成分の影響で分散しやすくなるために洗浄時に排出されてしまい、収率を低下させる。しかも、生成したゾルの安定性に問題を生じるため好ましくない。一方、pH1.5以下では酸化スズ超微粒子の生成量が少なく不適当である。
【0016】
上記のようにして得られた酸化スズ超微粒子含有スラリーは、次のゾル化工程に移る前に通常、加熱処理および洗浄を行う。加熱温度は60℃以上が好ましく、さらに好ましくは75℃以上である。加熱処理しなくても目的の無色透明酸化スズゾルを得ることは可能であるが、加熱処理することにより、後の洗浄およびゾル化を速やかに行うことが可能になることから、加熱処理することが望ましい。
【0017】
洗浄工程における固液分離法に特に規定はなく、デカンテーション、遠心分離、濾過など何れの方法を用いても良い。
【0018】
次に、酸化スズ超微粒子含有スラリーをゾル化する工程に移る。ゾル化工程は、酸化スズ固形分とゾル媒体、分散安定剤を混合し、撹拌、加温することからなる。なお、酸化スズ固形分とゾル媒体、分散安定剤との混合順序は任意であり、固形分をスラリー化した後、分散安定剤を添加し混合・分散・加温しても良いし、または分散安定剤を添加したゾル媒体中に酸化スズ固形分を添加、混合・分散・加温しても良い。
【0019】
本発明において、ゾルの媒体には水以外に水と親水性有機溶媒との混合溶媒も用いることができる。親水性有機溶媒としては、メチルアルコールやエチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの酸アミド類、また後述するアミン類を挙げることができる。
【0020】
本発明において、ゾル化する酸化スズ超微粒子含有スラリー中の固形分濃度は5.0wt%〜15wt%が必要で、好ましくは8wt%〜12wt%である。固形分濃度が低いと出来上がった際の無色透明酸化スズゾルの濃度も低くなるため、塗布加工液組成物として十分な導電性を発揮するためには濃縮工程が必要となる。一方で固形分濃度が15wt%を超えると、酸化スズ超微粒子含有スラリーの粘度が高くなるため取り扱いにくく、ゾル化が困難になる。また、解膠が不十分になり、シャープな粒度分布を得ることが困難になる。
【0021】
本発明においてゾル化に用いられる分散安定剤として、アルキルアミンを用いることが必要である。本発明におけるアルキルアミンとは、一般式RNH2、R2NHまたはR3Nで表される塩基性を示す化合物であり、ここでRはアルキル基であるが、ゾル媒体との相溶性、取り扱いの点から鎖状アルキル基を主とするものが好ましい。そのようなアルキルアミンの具体例としては、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン,sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミンなどを挙げることができ、中でも沸点が30〜200℃のものが好ましく、50〜100℃のものが特に好ましい。このようなアルキルアミンの中でもジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンが工業的に入手しやすいので特に好ましい。
【0022】
アルキルアミンのゾル媒体への混合量としては、得られる混合溶媒のpHが8.5〜10.0になるよう添加することが必要で、8.5〜9.5であることが好ましい。pHが8.5未満では超微粒子の解膠が不完全になり透明なゾルが得られない場合があるうえ、ゾルの安定性が悪くなる場合がある。しかも、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性が乏しくなる場合がある。一方でpHが9.5を超えるとコストアップの原因となる。
【0023】
pHが上記範囲を逸脱すると、分散性に優れたゾルは得られない。なお、この場合必要なアルキルアミンの添加量は、酸化スズ超微粒子含有スラリーに残存する不純物の量や種類、あるいは酸化スズ超微粒子濃度によっても若干異なるが、酸化スズ超微粒子1モルに対して0.15〜0.50モルになるよう添加することが必要であり、好ましくは0.20〜0.40モルである。
【0024】
本発明のゾル化工程においては通常、攪拌することが行われるが、撹拌方法に特に規定はなく、一般的な撹拌子や撹拌羽を用いる撹拌方法以外に、ホモミキサーやホモジナイザーを用いる分散法や、高圧分散器や超音波分散器などを用いることも可能である。
【0025】
酸化スズ固形分とゾル媒体、分散安定剤とを混合した後、ゾル化の加速と出来上がった際の酸化スズゾルの透明性確保から、25℃以上、より好ましくは30℃以上に加温することが好ましい。これにより無色透明酸化スズゾルを得ることができるが、さらに必要に応じて濃縮することも可能である。
【0026】
次に本発明の第一の酸化スズゾルについて説明する。本発明の無色透明酸化スズゾルは、分散安定剤としてアルキルアミンを含有するものである。このものは、上記の製造法により取得することができるものであり、ここで含まれるアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン,sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミンなどを挙げることができ、これらは上記ゾル中で塩を形成していても良い。これらの中でも沸点が30〜200℃のものが好ましく、50〜100℃のものが特に好ましい。このようなアルキルアミンの中でもジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンが工業的に入手しやすいので特に好ましい。
【0027】
本発明のゾル中に含まれるアルキルアミン量は、モル数としては、酸化スズのモル数に対して0.15〜0.50倍であることが必要で、好ましくは0.20〜0.40倍である。0.15倍未満ではゾルの安定性が悪くなる場合があるうえ、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性が乏しくなる場合がある。一方、0.50倍を超えて入れるのはコストアップにつながり好ましくない。
【0028】
本発明の無色透明酸化スズゾルは、酸化スズ超微粒子の体積平均粒子径(mv)および数平均粒子径(mn)が15nm未満で、かつ、mv/mnが1.0〜1.1の範囲にあるシャープな粒度分布を有するものである。mv/mnが1.1を越えると、コロイド色が強くなり、塗布加工液組成物として用いたとき、得られた塗布膜のヘイズが大きくなる場合があるので好ましくない。
【0029】
また、本発明の無色透明酸化スズゾルはアニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性に優れたものである。本発明の無色透明酸化スズゾルに含まれる酸化スズ超微粒子は負に帯電していることから、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体と安定に混合することができる。
【0030】
このような水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等を挙げることができ、これらは2種以上を混合して使用しても良い。
【0031】
また、水分散性高分子の水性分散体としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができ、これらは2種以上を混合して使用しても良い。
さらに、水溶性高分子の水溶液と水分散性高分子の水性分散体とを組み合わせて2種類以上混合して使用しても良い。
【0032】
本発明の無色透明酸化スズゾルは、塗布加工液組成物として用いたとき、得られた塗布膜の表面固有抵抗が1010Ω/□未満であるものである。ここでの塗布加工液の調製方法、塗布膜の作成および表面固有抵抗の測定方法は、実施例の項で記載したものと同様である。
【0033】
本発明の無色透明酸化スズゾルは、透明帯電防止材料など、様々な分野での用途が期待できるものである。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、塗布加工液の調製方法、塗布膜の作成、表面固有抵抗および透明性(ヘイズ)の測定方法は下記のとおりである。
【0035】
[塗布加工液の調製]
本発明の無色透明酸化スズゾルと水分散性ポリエステル樹脂水性分散体(ユニチカ株式会社製、製品名エリーテルKA5034)とを固形分重量比8:1で混合し、さらにイソプロピルアルコールを全重量の10wt%になるよう添加した後、よく混ぜ合わせて塗布加工液とした。
【0036】
[塗布膜の作成]
得られた塗布加工液を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ株式会社製、製品名エンブレット、厚さ12μm)の片面にフィルムアプリケーター(株式会社安田精機製作所製、542−AB)を用いて塗布した後、130℃で30秒間乾燥して、フィルム面に厚さ0.1−0.2μmの塗布膜を形成した。
【0037】
[表面固有抵抗の測定]
JIS−K6911に基づき、デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト製、R8340)を用いて、塗布膜の表面固有抵抗測定を行った。なお、試料は温度20℃、湿度60%の条件下で24時間調湿した後、同条件下で測定した。
【0038】
[透明性(ヘイズ)の測定]
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて、コートフィルムのヘイズ測定を行った。ただし、この評価値は、実施例で用いた、ヘイズが2.8%の2軸延伸PETフィルムにコートしたフィルム全体のヘイズの値である。
【0039】
実施例1
塩化第二スズ五水和物0.1モルを200mlの水に溶解して0.5Mの水溶液とし、アルカリ加水分解法によりスラリーを生成するために、撹拌しながら28%のアンモニア水を添加してpH1.5の白色スラリーを得た。得られたスラリーを75℃まで加熱した後、50℃前後まで自然冷却したうえで純水を加え1Lのスラリーとし、遠心分離器を用いて固液分離を行った。この含水固形分に800mlの純水を加えて、ホモジナイザーにより撹拌・分散を行った後、遠心分離器を用いて固液分離を行うことで洗浄を行った。洗浄後の含水固形分に純水を75ml加えてスラリーを調製した。
【0040】
得られたスラリーは酸化スズ超微粒子が凝集した状態にあり、この酸化スズ超微粒子の凝集をほぐして分散安定化するためにイソプロピルアミン3.0ml(酸化スズに対して0.35倍モル)を加え撹拌し、透明感が出てきたところで50℃まで昇温した後、加温をやめ自然冷却した。加温中に酸化スズ超微粒子の凝集がほぐれて分散安定化され、スラリーは無色透明の酸化スズゾルになった。この酸化スズゾルのpHは9.3であった。得られた無色透明酸化スズゾルを強熱乾燥させることで得られた固形分濃度は11.1wt%であった。また、ゾル中の酸化スズの体積平均粒子径(mv)は8.8nm、数平均粒子径(mn)は8.6nmで、mv/mnは1.02であった。このゾルは室温で6ヶ月以上放置しても安定であった。
【0041】
得られたゾルを用いて塗布加工液を前記の方法で調製し、フィルム上に塗布・乾燥した。コート面の表面固有抵抗を測定したところ、5×107Ω/□であった。また、ヘイズ値が3.0%であることが明らかになった。
なお、塗布加工液は室温で3ヶ月以上放置してもゲル化することなく安定であった。
【0042】
実施例2
実施例1と同様の方法で洗浄済みスラリーを調製した。得られたスラリーにトリエチルアミン3.0ml(酸化スズに対して0.2倍モル)を加え、実施例1と同様の方法でゾル化した。この酸化スズゾルのpHは8.7であった。得られた酸化スズゾルは無色透明で、これを強熱乾燥させることで得られた固形分濃度は10.9wt%であった。また、ゾル中の酸化スズの体積平均粒子径(mv)は8.9nm、数平均粒子径(mn)は8.4nmで、mv/mnは1.06であった。このゾルは室温で6ヶ月以上放置しても安定であった。
【0043】
実施例1と同様の方法で特性を評価した結果、表面固有抵抗が5×107Ω/□、ヘイズが3.1%であることが明らかになった。
なお、塗布加工液は室温で3ヶ月以上放置してもゲル化することなく安定であった。
【0044】
比較例1
実施例1と同様の方法で洗浄済みスラリーを調製した。得られたスラリーに分散安定化のためにアンモニア水(28%)25mlを加え、実施例1と同様の方法でゾル化を試みたが、ゾル化は進行せず白色スラリーのままであった。
【0045】
比較例2
実施例1と同様の方法で洗浄済みスラリーを調製した。得られたスラリーを純水で希釈して1.5Lのスラリーにした後、分散安定化のためにアンモニア水(28%)25mlを加え、実施例1と同様の方法でゾル化した。比較例1に比べてスラリー濃度を低くすることでゾル化に成功したが、実用性を考えると有効成分が希薄すぎるため、濃縮が必要であった。そこで得られたゾルを90℃に加熱して濃縮した。このとき随時アンモニア水を添加し、加熱濃縮に伴い蒸発するアンモニアを補う必要があり、操作は非常に煩雑なものであった(アンモニア水の添加を怠ると、液が白濁し、透明なゾルは得られなくなった)。4時間あまりもの長時間に渡る加熱濃縮の末に得られた無色透明の酸化スズゾルのpHは9.9であり、この酸化スズゾルを強熱乾燥させることで得られた固形分濃度は8.1wt%であった。また、ゾル中の酸化スズの体積平均粒子径(mv)は10.3nm、数平均粒子径(mn)は9.8nmで、mv/mnは1.05であった。このゾルは室温で6ヶ月以上放置しても安定であった。
【0046】
実施例1と同様の方法で特性を評価した結果、表面固有抵抗が2×109Ω/□、ヘイズが3.1%であったが、その製造過程は非常に煩雑なものであることが明らかになった。
【0047】
比較例3
実施例1と同様の方法で洗浄済みスラリーを調製した。得られたスラリーにN,N−ジメチルエタノールアミン5.5ml(酸化スズに対して0.55倍モル。酸化スズに対して0.3倍モル(3ml)ではゾル化が進行しなかった)を加え、実施例1と同様の方法でゾル化した。この酸化スズゾルのpHは9.4であった。得られた酸化スズゾルは無色透明で、これを強熱乾燥させることで得られた固形分濃度は11.2wt%であった。また、ゾル中の酸化スズの体積平均粒子径(mv)は9.8nm数平均粒子径(mn)は9.1nmで、mv/mnは1.08であった。このゾルは室温で6ヶ月以上放置しても安定であった。
【0048】
実施例1と同様の方法で特性を評価した結果、表面固有抵抗が4×108Ω/□、ヘイズが8.3%であり、ヘイズの大きなものであった。また、その製造工程における分散安定剤(アミノアルコール)の必要量は、アルキルアミンを分散安定剤とした場合に比べて、1.5倍以上必要であることが明らかになった。また、塗布加工液の液安定性が乏しく、1週間後にはゲル化が確認され、安定性を維持するためには全量の15wt%相当以上のイソプロピルアルコールを添加しなければならなかった。
【0049】
比較例4
実施例1と同様の方法で洗浄済みスラリーを調製した。得られたスラリーにトリエチルアミン2.0ml(酸化スズに対して0.14倍モル)を加え、実施例1と同様の方法でゾル化した。この酸化スズゾルのpHは8.1であった。得られた酸化スズゾルはコロイド色を有し、これを強熱乾燥させることで得られた固形分濃度は11.3wt%であった。また、ゾル中の酸化スズの体積平均粒子径(mv)は10.9nm、数平均粒子径(mn)は9.6nmで、mv/mnは1.14であった。このゾルは室温で6ヶ月以上放置しても安定であった。
【0050】
実施例1と同様の方法で特性を評価した結果、表面固有抵抗が8×107Ω/□、ヘイズが5.0%であり、ヘイズの大きなものであった。
なお、塗布加工液の安定性が乏しく、室温で1日放置したところゲル化した。
【0051】
以上の実施例および比較例で明らかなように、本発明の無色透明酸化スズゾルは、高い固形分濃度を有しながらシャープな粒度分布を有し、また、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性に優れ、良好な導電性と透明性を持つことが示された。また、本発明の製造法では、ゾル化の際にアルキルアミンを用いることで、煩雑な操作が不要であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、着色が無く、アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子および/または水分散性重合体水性分散体との混合安定性に優れ、導電性が良好な透明導電材料の用途に適した、無色透明酸化スズゾルおよびその酸化スズゾルを効率よく安価に得る製造方法を提供できる。
Claims (6)
- 分散安定剤としてアルキルアミンを含有することを特徴とする水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒を媒体とする無色透明酸化スズゾルであって、アルキルアミンのモル数が、酸化スズのモル数の0.15〜0.50倍であり、pHが8.5〜10.0の範囲にあることを特徴とする無色透明酸化スズゾル。
- ゾル中の酸化スズ超微粒子の体積平均粒子径(mv)および数平均粒子径(mn)がともに15nm未満で、かつ、mv/mnが1.0〜1.1の範囲にあるシャープな粒度分布を有することを特徴とする請求項1記載の無色透明酸化スズゾル。
- 塗布加工液組成物として用いたとき、得られた塗布膜の表面固有抵抗が1010Ω/□未満になることを特徴とする請求項1又は2記載の無色透明酸化スズゾル。
- アニオン性またはノニオン性の水溶性高分子の水溶液および/または水分散性高分子の水性分散体との混合安定性に優れていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無色透明酸化スズゾル。
- 酸化スズ超微粒子スラリーにアルキルアミンを分散安定剤として添加して水または水と親水性有機溶媒との混合溶媒を媒体とする無色透明酸化スズゾルを製造する方法において、酸化スズ超微粒子含有スラリーとして酸化スズ濃度が5wt%〜15wt%のものを用い、アルキルアミンの添加量を酸化スズに対して0.15〜0.50倍モルとし、pHが8.5〜10.0の範囲とすること特徴とする無色透明酸化スズゾルの製造法。
- 湿式法で酸化スズ超微粒子含有スラリーを得て、このスラリーを60℃以上に加熱した後洗浄し、次いでアルキルアミンを分散安定剤としてゾル化を行うことを特徴とする請求項5記載の無色透明酸化スズゾルの製造法。
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