以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は、本発明の具体例であって、特許請求の範囲を限定するものではない。
本実施の形態は、家庭用の電気ポットの場合の一例であり断熱容器を内容器に用いている。図1に示す例の断熱容器はステンレス鋼製の真空二重容器3を外装ケース2に内容器として収容した器体1を持ち、ヒータ11によって内容液を加熱して貯湯し、内容液を電動ポンプ26および手動ベローズポンプなどの手動ポンプ10のいずれかによって、管路タイプの吐出系25を通じ外部に吐出して給湯し使用に供する構成を有している。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、内容液をヒータ11により加熱して湯沸しや通常保温、省エネ保温をしながら貯湯し、使用に供するものであれば足り、吐出は必ずしも電動や手動のポンプによらなくても器体1を傾けて行うことも含め本発明は有効であるし、湯沸しを行わないものでも対象として有効である。もっとも、ステンレス鋼は金属の中で熱伝導性が低く、かつ曲げ剛性、強度が十分であり、しかも防錆効果を持ち、Cuを含有するなどで抗菌性をも発揮させやすいので、飲食用の電気貯湯容器には好適であり、真空二重容器3を提供するのに適している。また、真空二重容器3は必ずしも外装ケース2に収容する必要はなく外装体に共用することができる。また、電源回路基板27と操作部Dや初期設定にて設定された動作モードに従った動作制御を行うのにマイクロコンピュータ33aを搭載した制御基板33を用いているが、これもハード回路を含めた種々な機器を採用した制御手段とすることができる。操作部Dは器体1の上端部前方へ例えば嘴状に突出した突出部31の上面に設けた操作パネル32で構成してあり、その内側に設けられる制御基板33上の各種スイッチ類48を、操作パネル32に一体形成した樹脂ばねや別体に設けられたキー部材による操作手段によって個々に押動してオン操作できるようにしているが、これも、本発明の本質的なものではなく具体的な構成は特に問うものではない。マイクロコンピュータ33aは湯沸しや通常保温、省エネ保温のために内容液の温度を検知する内容液温度検知手段9からの温度情報を用いるようにしている。内容液温度検知手段9は内容器としての真空二重容器3におけるヒータ11を当てがっている一重底部の中央に、個別に当てがった内容器センサ29としてある。
なお、操作パネル32は図3に示すように、中央部に設定保温温度や現在温度、現在動作モード、あるいは危険報知や必要操作の促しなどを画面表示する液晶表示部81、そのまわりに貯湯内容液71を吐出して給湯を行う吐出キー82、吐出キー82による吐出操作をロックまたはロック解除するロック・解除キー83、省エネモードを手動設定する省エネキー84、通常保温、省エネ保温中に再沸騰を行う再沸騰キー85、98度保温や90度保温の別、タイマ設定時間の別などを選択する選択キー86、吐出操作があったときの吐出量を設定する計量カップキー87、および設定数値をアップダウンするアップキー88、ダウンキー89を有している。また、ランプ表示としてはロック解除ランプ91、吐出ランプ92、省エネランプ93などがLEDなどを利用して設けてある。
本実施の形態の電気貯湯容器としての電気ポットは、特に、省エネ保温方法として、電気ポットにて貯湯内容液71を通常保温や通常保温よりも低い温度での省エネ保温をしながら使用状態を継続して吐出操作による実使用に供するのに、実使用の実績経過を判定し、判定した実使用の実績経過における不使用時間帯X1・・Xmのうち、所定値Yを超える不使用時間帯につき以降の省エネ時間帯Z1・・Znに設定し、設定した省エネ時間帯Z1・・Znになると省エネ保温を行うようにしている。
前記のような操作パネル32によると、貯湯内容液71を吐出するには必ず吐出キー82が操作されるし、ロック・解除キー83の操作もこれがあると次に吐出操作を行う意思表示となるので、ほぼ100%の確率で吐出操作が行われる筈であり、いずれによっても吐出操作に関係する電気信号が得られる。また、手動ポンプ10による吐出であってもこれをスイッチやセンサにて検出すれば吐出操作の電気信号が得られる。
また、電気ポットでの吐出系25内の吐出系内容液71aは通常、図1に示すように湯沸し後や保温中の貯湯内容液71と同じ液量を保っている。しかし、吐出系内容液71aはヒータ11によって加熱されないので貯湯内容液71よりも温度が低い。このため、貯湯内容液71の吐出によってそれが吐出系25に吐出されてくる都度、吐出系25およびそのまわりの温度が上昇する。図5に98度保温の場合の吐出系25各部の温度変化、図6に90度保温の場合の吐出系25各部の温度変化の実験例を示している。図5、図6のいずれも囲い数字1は制御基板33の裏面、囲い数字2は突出部31の制御基板33を収容したボックス101の内側、囲い数字3は吐出口部25cの表面、囲い数字4は電源・駆動系基板27の裏面、囲い数字5は電動ポンプ26の表面である。98度保温では保温温度が高い分だけ吐出の影響が大きく、囲い数字1〜囲い数字5のどの個所でも貯湯内容液71の吐出によってはっきりした1つの温度ピークが得られ、90°保温では囲い数字4を除いてはっきりした1つの温度ピークが得られ、囲い数字4の場合でもその数やタイミングは不定であるが、保温時にはなかった温度ピークが得られている。
したがって、吐出系25またはその近傍の温度を吐出系センサ72などによって貯湯内容液71が吐出された実使用の有無を、吐出が電動ポンプ26によって行なわれるか、手動ポンプ10によって行われるか、あるいは器体1を傾けて行われるかといった別なく、単純に判定することができる。
以上から、吐出に関したいずれか1つの電気信号によって実使用の信号が確実に得られる。このように得られた実使用の信号とそれを得た時点の時間情報とから、実使用の実績経過を単純に判定することができる。この単純に判定した実使用の実績経過における不使用時間帯X1・・Xmから省エネ保温の対象時間帯Z1・・Znを容易かつ的確に設定して省エネを図ることができる。その上で、上記したように判定した不使用時間帯X1・・Xmの全てを省エネ時間帯に設定するのではなく、所定値Yを超える不使用時間帯につき以降の省エネ時間帯Z1・・Znに設定し、設定した省エネ時間帯Z1・・Znになると省エネ保温を行うので、飲食時など短い時間間隔で繰り返し使用される際の不使用時ないしは不使用時間帯X0について省エネ保温を行うことによるユーザ側に与える不満や不便を解消することができる。
以上のように単純な電気信号による実使用の実績経過の判定によると、不揮発メモリなどを用いたより長期に亘る実使用の経過実績から省エネ時間帯Z1・・Znを判定するのにも大きな容量を必要としないし、判定も簡単な操作にて行えるので低コストで済む。
このような方法を達成する電気貯湯容器としては、既述した貯湯内容液71をヒータ11により加熱して湯沸しや通常保温、通常保温よりも低い温度での省エネ保温をしながら使用状態を継続して吐出操作による使用に供する電気ポットにおいて、図2に示すように吐出に関する電気信号とこれを得た時間情報とから実使用の実績経過を判定する実使用経過判定手段73と、判定した実使用の実績経過における不使用時間帯X1・・Xmのうち、所定値Yを超える不使用時間帯につき以降の省エネ時間帯Z1・・Znに設定し、設定した省エネ時間帯Z1・・Znになると省エネ保温を行う省エネ保温制御手段74とを備えたもので足りる。
なお、吐出系センサ72はサーミスタなどを用いたもので、吐出系25またはその近傍の温度を検出できる、例えば図1に示すような位置に設けた吐出系センサ72としてあり、実使用経過判定手段73、省エネ保温制御手段74はそれぞれ単独の回路ないしは機器によって、あるいは複数の回路ないしは機器の組合せによって構成することはできる。しかし、本実施の形態では図2に示すように前記動作制御用のマイクロコンピュータ33aの内部機能として設けてある。
本実施の形態では、また、図2に示すように前記検出された実使用の実績データ、つまり実使用があった時間の情報を蓄積する記憶手段75を備え、省エネ保温は記憶手段75に蓄積された実使用の経過実績に応じて、異なった温度またはおよび温度変化を持って行うようにしている。これにより、実使用のない時間が短い場合は、次の使用への影響を考えてやや高めの省エネ保温温度とし、実使用のない時間が長い場合は、加熱停止を含むより低温保温によるより省エネ保温を図りながら、復帰間近では次の使用のための湯沸しモードなどによる所定温度への立ち上げを図って使用の不便を無くすなど、実使用の経過実績の違いを利用して使用に不便がなく、省エネに有利な保温状態を設定することができる。記憶手段75は図2に示すようにバックアップ電源76を持つなどした不揮発メモリを用いることにより、電気ポットが電源をオフされた後も記憶内容を保持し続けられるので、内容液の入れ替えや洗浄などで電源がオフされるようなことがあった前後の記憶データを併せた数日間サイクル、1週間サイクル、数週間サイクル、1ケ月間サイクル、数ケ月間サイクル、四季サイクルを通じた長期データからユーザの実使用の経過実績、ないしは使用パターンを用意かつ的確に判定することができる。
また、吐出系温度検知手段としての吐出系センサ72は、図1に示すように吐出系25の近傍にある既設の回路基板としての制御基板33に搭載してある。このように、吐出系センサ72を用いるのに、既設の制御基板33に搭載することによって、特別な取付け部材や配線部材なしに設けられるので、特にコスト上昇の原因にはならない。
さらに、前記制御基板33は、前記器体1の肩部6前部へ突出し吐出系25の吐出口部25cを内蔵した突出部31の上面の内側に位置している。これにより制御基板33は、前記器体1の突出部31に内蔵した吐出系25の吐出口部25cの直ぐ上にあって、それに搭載している吐出系センサ72を前記吐出口部25cの近傍に位置させられるので、吐出系25の近傍の温度を検出しやすい。
しかも、吐出系センサ72は、図に示すように制御基板33の裏面に設けられるなどして、吐出系25の上方、より具体的には吐出口部25cの上方に位置しているので、吐出系25からの熱を受けやすく、吐出系25の温度をより検出しやすい。
ここで、制御基板33の上に向いた表面は前記スイッチ類48や図示しない表示ランプなどのハード部品を搭載しているのに対し、制御基板33の裏面はチップ型のマイクロコンピュータ33aなどのチップ部品を面実装してあり、吐出系センサ72をチップ型のサーミスタなどによるものとすることで、部品コストおよび搭載コスト共に低減することができる。
図4に示す例では、制御基板33を収容している操作部ボックス101と吐出口部25cとの間に熱伝導部材102を挟みこんである。これによって、吐出系25の吐出口部25cの貯湯内容液71の吐出による温度上昇に対する吐出系センサ72の応答性能を高めることができる。熱伝導部材102は例えば熱伝導用のシリコンシートを利用するのが好適で、少し厚めのものを弾性を利用して挟み込むと特別な成形を必要とすることなく操作部ボックス101と吐出口部25cとの双方に密着させられる。
上記の方法において、不使用時間帯X1・・Xmのうち所定値Yよりも短い不使用時ないしは不使用時間帯については、図7(b)〜(d)の例、図8(d)の例で示すようにその始点よりも所定のT時間前から通常保温時間帯R1・・Rnとする。これにより、所定値Yよりも短い不使用時ないしは不使用時間帯は省エネ時間帯Z1・・Znとせず通常保温を行うのに、その所定時間T前から通常保温時間帯R1・・Rnとするので、短い時間間隔で実使用されるタイミングが短い通常保温時間帯R1・・Rnからそのときどきでずれるような場合にも対応でき、ユーザに不満や不便を与えない利点がある。これは前側へのずれに対応するものであるが、後側へのずれにも同様に対応することができる。
これは、また、図7(b)〜(d)の例で示すように通常保温は、実使用時点Pよりも所定時間T前から行うことでもある。省エネ時間帯Z1・・Znとの関係から設定した保温時間帯R1・・Rmと重なった場合は無視すればよい。つまり省エネ時間帯Z1・・Znを通常設定よりも所定時間Tだけ短くすることを意味している。これにより、実使用時点Pよりも所定時間T前から通常保温を行うことにより、この実使用時点Pが省エネ時間帯Z1・・Znから通常保温への切り換え時点であって、しかもその通常保温時間帯R1・・Rnが短いような場合に、短い時間間隔で実使用されるタイミングが短い通常保温時間帯R1・・Rnからそのときどきでずれるような場合にも対応でき、ユーザに不満や不便を与えない利点がある。これは前側へのずれに対応するものであるが、後側へのずれにも同様に対応することができる。
ところで、上記のような実使用の実績経過は、吐出に関した電気信号と時計機能やカレンダ機能による時間管理とで容易かつ正確に判定することができる。しかし、既述したように製品コストが上昇するし、使用初期にユーザ側で日時などを設定することになり不便である。
そこで、図7の例、図8の例では、省エネ時間帯Z1・・Znの設定操作に際して計時を開始し、以降この計時を基に、所定の単位時間範囲Mにおける実使用、つまり実使用時点Pの経過時間別の実績経過を図7(a)、図8(a)〜(c)に示すように判定する。判定した前記単位時間範囲Mでの実使用時点Pの経過時間別の実績経過における図7(a)に示す例の不使用時間帯X1・・X9、図8(c)に示す例の不使用時間帯Z1・・X12につき、図7、図8に示すような省エネ時間帯Z1・・Znの設定に供する。図7(b)の例はM=1日、T=3時間としてZ1・・Z5を設定し、図7(c)の例はM=1日、T=2時間としてZ1・・Z7を設定し、図7(d)の例はM=1日、T=6時間としてZ1、Z2を設定し、図8(d)の例はM=3日、T=3時間としてZ1・・Z5を設定している。
この結果、図7(b)の例での通常保温時間帯はR1・・R4、図7(c)の例での通常保温時間帯はR1・・R6、図7(d)の例での通常保温時間帯はR1、図8(d)の例での通常保温時間帯はR1・・R8となっている。
省エネ時間帯Z1・・Znの設定後は、その再設定時点まで前記計時を基にした所定の単位時間範囲Mごとの時間経過に従い設定した経過時間別の省エネ時間帯になると省エネ保温を行うことを繰り返す。
このようにすると、省エネ時間帯Z1・・Znの設定操作に際して計時を開始すればよいので、時計機能やカレンダ機能が不要であり低コストで実現するし、初期使用の際にユーザが日時を設定するような操作が不要になり、使用しやすいものとなる。計時を開始した時点からの所定の単位時間範囲Mにおける実使用の実績経過は、それ以降の実使用の信号と、これを得るまでの経過時間の情報との組合せの蓄積から、実使用の経過時間別の実績経過として判定することができ、この判定した前記単位時間範囲Mでの実使用の経過時間別の実績経過における不使用時間帯X1・・Xmにつき前記省エネ時間帯の設定に供し、省エネ時間帯の再設定時点まで前記計時を基にした所定の単位時間範囲ごとの時間経過に従い設定した経過時間別の省エネ時間帯になると省エネ保温を行うことによって、時計機能やカレンダ機能による時刻の特定のない経過時間管理だけでユーザの実使用の実績経過に合った省エネ保温ができる。
特に、所定の単位時間範囲Mは図7に示す1日を含む24時間の整数倍とすることにより、どの時点から計時を開始しても、以降の経過時間に基づき設定した省エネ時間帯Z1・・Znのパターンは、毎日の同じ時刻に対応しずれは生じない。このような24時間の経過を1日とした図8に示す3日などの複数日分とすると、複数日分のより多い蓄積データからユーザの実使用の実績経過をより的確に判定することができるし、このようにするのにも、省エネ時間帯の設定操作に際して開始した計時を基にした経過時間管理だけで、時計機能やカレンダ機能なしに達成することができる。
このような方法を達成するのに、上記電気ポットとしては、図2に示すように省エネ時間帯Z1・・Znの設定操作に際して計時を開始する計時手段77を備えればよい。この計時手段77もマイクロコンピュータ33aの内部機能としてあるがこれに限られることはない。一方、実使用経過判定手段73は、計時手段77による計時を基に、所定の単位時間範囲Mにおける実使用の経過時間別の実績経過を判定し、省エネ保温制御手段74は、判定された前記単位時間範囲Mでの実使用の経過時間別の実績経過における不使用時間帯X1・・Xnにつき前記省エネ時間帯Z1・・Znの設定を行い、省エネ時間帯Z1・・Znの再設定時点まで前記計時を基にした所定の単位時間範囲Mごとの時間経過に従い設定した経過時間別の省エネ時間帯Z1・・Znになると省エネ保温を行うことを繰り返すようにすればよい。
省エネ時間帯Z1・・Znの再設定時点は、所定の周期時点またはおよび省エネ保温中に吐出操作が所定回数以上あった時点などとすればよい。所定の周期時点で省エネ時間帯Z1・・Znの再設定を行うと、ウイークデーと土日との違い、時節の違いなどから予想される定型的なタイミングでのユーザの実使用パターンの変化に対し、経過時間管理を基にした自動での省エネ時間帯の再設定により対応することができ、短い周期時点で行うと予測できない変化にも短期で対応することができる。また、省エネ保温中に吐出操作が所定回数以上あった時点で省エネ時間帯Z1・・Znの再設定を行うと、理由を問わず実態に合わない事実に対して対応することができ、所定回数を少なくすると精度が上がるが省エネ時間帯Z1・・Znの設定操作の回数が増大し、所定回数を多くすると、省エネ時間帯Z1・・Znの設定操作の回数が少なくてよいが、ユーザの使用実態とずれる回数が多くなる。
ここで、本実施の形態のマイクロコンピュータ33aによる制御例について説明すると、図9に主な制御のメインルーチンを示しているように、電源オンによって初期設定が行われた後、各種センサや操作による入出力の処理が行われる。次いで、入出力およびそれに伴う動作制御に関した表示処理が行われる。続いて、初期沸騰や再沸騰を図る沸騰処理、98度や90度での通常保温や、それよりも低く、加熱停止をも含む手動設定および設定での省エネ保温を行う保温処理が行われる。さらに、吐出操作による吐出処理、および前記自動省エネ設定のための省エネ設定処理、その他の処理が行われる。そこで、何らかの異常による異常信号がなく、電源がオフされない限り、それ以降、入出力処理以下の処理が繰り返される。
上記省エネ設定処理を行うサブルーチンは図10に示すように、専用キーの操作ないしは省エネキー84など他のキーの長押し操作などの省エネ設定操作があると省エネ設定フラグを0とし、これが次に判定されることによって計時を開始し省エネ設定操作を自動的に行う。ここで、省エネフラグを初期設定によって0にしておくと、人による省エネ設定操作なしに電気ポットの使用初期に自動的に行うことができる。省エネ設定後は省エネ設定フラグが1とされ、これが省エネ設定操作による手動解除や特別な理由による自動解除があるまで、その省エネ設定状態のままリターンする。
省エネ設定処理は計時開始に併せ、吐出に関する電気信号がある都度、貯湯内容液の吐出を伴い実使用された実績時点Pとして経過時間を記憶手段に記憶することを繰り返す。この繰り返しに伴い計時結果から省エネ判定の日時、周、月、季節など所定期間が経過したかどうかを判定し、経過した時点でそれまで記憶手段に記憶された吐出実績、つまり実使用の実績経過から、それ以降に適用する省エネ時間帯Z1・・Znを図11に示す省エネ時間帯設定サブルーチンに示すような処理によって設定し、省エネ設定フラグを1にする。図11に示す処理では既述したように不使用時間帯X1・・Xmのうち所定値Yよりも小さな不使用時間帯のみを省エネ時間帯Z1・・Znとして設定し、かつ、実使用時点、つまり吐出時点PのT時間前は省エネ時間帯であってもそれを解除し、通常保温時間帯に組み入れるようにしている。
上記保温処理サブルーチンは図12に示しているように、1つあるいは複数設定された省エネ時間帯Z1・・Znにおける省エネ開始時点かどうかを、前記計時を基に判定し、そうでなければ、省エネ保温の手動操作があったかどうかを判定し、これもなければ選択された温度での通常保温を行う。省エネ保温の手動操作があると設定された省エネ保温を行うが、省エネ保温中に吐出があると省エネ保温を解除し、通常保温に戻る。設定された省エネ時間帯Z1・・Znにおける省エネ開始時点になると、省エネ保温に移行してヒータ11をオフし断熱容器としての真空二重容器3によるいわゆる魔法瓶保温を行って省エネ保温を開始し、時間経過とともに保温温度は通常保温の場合よりも低下していく。しかし、魔法瓶保温であることによって急激な温度低下はなく、内容液71の量や直前での湯温の違いなどによって異なるが8時間程度では60〜70℃程度の温度を保持することができる。
省エネ終了時点になると省エネ保温中に通常保温温度よりも低くなっているので、湯沸しモードなどによる通常保温への立ち上げ処理を行って後通常保温に復帰する。もっとも、この立ち上げ処理は内容液温度を判定した結果行うようにすることができる。
省エネ開始時点から省エネ終了時点までの間に吐出があると、省エネ設定処理でのやり直し制御とは別に、前記同様湯沸しモードなどによる立ち上げ処理をして通常保温に復帰させ、とりあえず吐出による実使用に対応する。図14にこのような制御例とその場合の内容液の温度変化を示している。通常保温の加熱モードによる設定温度を保っている通常保温時間帯R1から省エネ時間帯Z1が設定された不使用時間帯R1に移行すると、次の通常保温時間帯R2まで加熱が停止されて魔法瓶保温による完全な省エネ保温状態となる。
しかし、内容液温度は図14に破線で示すように、次の通常保温時間帯R2に移行して通常保温の加熱モードによる立ち上げ時点まで低下し続ける。このため、図14に示すように省エネ時間帯Z1の途中でユーザが吐出操作を行うと、通常保温での設定温度よりも低い温度の内容液が吐出され、ユーザに不満を与えたり、不満度によっては温度立ち上げのための再沸騰操作を行うといった措置を行わせるなどユーザに不便を与える。そこで、このような省エネ時間帯Z1中に吐出操作があった場合、湯沸しモードによる設定保温温度への早期立ち上げを行い、かつ、所定の時間tの間通常保温での加熱モードで設定保温温度に保ち、飲料用などで複数回繰り返し使用されるようなことに自動的に対応するようにしている。所定の時間tはそのときの吐出回数や吐出量によって吐出操作が外れないように変更するのが好適である。
なお、省エネ保温の場合、手動設定、自動設定にかかわらず、省エネランプ93やまほうびん保温表示110を点灯させておくのがよい。また前記のような立ち上げにおいても、手動設定、自動設定にかかわらず省エネランプ93またはおよび設定保温温度111、あるいは現時点の温度表示112を点滅させておくと特別なモードでの昇温中であることを告知でき好都合である。
以上のように省エネ時間帯Z1・・Znの途中に吐出操作があって、立ち上げ処理する場合、液晶表示している現在湯温を数秒間点滅させて告知したり、設定保温温度111の点滅と省エネランプ93とを点滅させて告知したり、また、それらとともに、あるいは単独でブザーにより100msを3回働かせるといった告知をしたりすることでユーザに制御を特別な立ち上げ処理であることを認知させることができる。
また、省エネ時間帯Z1・・Znの途中における吐出操作に代えて、吐出のロック解除操作があったときに立ち上げ処理をしてもよい。吐出ロックは一定時間吐出がないことによって自動設定され、ロック解除は吐出操作に先立って行われるので、吐出に対する温度の立ち上げを早期に開始することができる。
また、最初の途中吐出には温度の立ち上げが間にあいにくい場合、最初の吐出があって後に立ち上げ処理して所定時間tの間通常保温するようにもできる。
これら、途中吐出や吐出ロックの解除によって立ち上げ処理し、所定時間t通常保温した後は、再度途中吐出がある再度省エネ保温に戻すのが省エネ上望ましい。省エネ保温に戻すには途中吐出などがある時間の間途絶えることで行うと、途中の使用実態に対応したものとすることができる。
また、図12の制御において、省エネ時間帯Z1・・Zn中の吐出操作があったときは、省エネ設定カウンタを+1し、カウントが1回、あるいはそれ以上の所定回数に達したとき、省エネフラグを0にする。これによって、実情に合わなくなった省エネ設定を図10に示す制御にて再度やり直すことになる。この再設定は、設定済の省エネ時間帯の全体について行ってもよいが、そのような省エネ保温中の実使用に関連する特定の省エネ時間帯についてだけ補正するように行い、これが複数、ないしは所定数の省エネ時間帯について行うときは設定済の省エネ時間帯の全体について再設定するようにしてもよい。
具体的には、途中吐出が省エネ時間帯Z1・・Znにおけるどのタイミング時点かによって該当する時間帯を補正することが考えられる。例えば、前記タイミング時点が該当する省エネ時間帯における通常保温時間帯と隣接する境目近くであるときは、そのタイミング時点が通常保温時間帯に含まれるように隣接する通常保温時間帯を隣接側に増加し、該当する省エネ時間帯を前記隣接側で短くする。また、省エネ時間帯Z1・・Znにおける吐出タイミングが該当する省エネ時間帯のほぼ中間時点であると、該当する省エネ時間帯の全体または途中所定時間の間、下限温度を設定した省エネ保温を設定して、設定保温温度への立上がりが早まるようにして以降の使用に対応することもできる。
また、別に、途中吐出タイミングでの前後所定時間、例えば1時間を通常保温時間帯に設定して以降の使用に対応することもできる。
図13に省エネキー84を長押しすることによって設定済みの省エネ時間帯Z1・・Znを変更できるようにした場合の例を示している。省エネキー84の長押しがあると、タイマ1をスタートさせて計時を行い、省エネランプ93を点滅させて設定変更の操作中であることを告知する。同時に、現在時点での省エネ設定時間帯を表示する。次いで、タイマ1が終了していると、操作続行なしとしてリターンし、タイマ1の終了なしにアップ、ダウンキー88、89のいずれかの操作があると、変更操作と判定し、タイマ2をスタートさせるとともに、現在時点での省エネ時間帯の開始時点またはおよび終了時点を表示し、表示した時点をアップ、ダウンキー88、89の操作に従ってアップまたはダウンさせる。このときの表示は所定の時間範囲Tの開始時点からの経過時間となる。しかし、時計機能やカレンダ機能を省エネ設定に用いる場合は時刻として表示することができる。続いて、タイマ2の終了があると操作続行なしとしてリターンし、タイマ2の終了なしに省エネキー84の長押しがあると、変更操作終了として、設定済みの該当省エネ時間帯を最終表示された時点ないしは時刻に
変更し、省エネランプ93の点滅を終了する。
図15に省エネ時間帯Z1・・Znの別の設定方法を示している。前記所定の時間範囲Mを複数のブロックM1・・Mnに分けている。具体的には24時間を4時間ずつの6つのブロックM1・・M6に分けている。各ブロックM1・・M6において、3日分の吐出を伴う実使用の実績経過から、どの日に限らず吐出があったブロックM1、M3、M5、M6を通常保温時間帯R1・・R3、として、それ以外を省エネ時間帯Z1、Z2に設定している。これによると省エネ時間帯の設定操作が至極単純化する。
以下、本実施の形態の電気ポットの具体的な構成について、さらに詳述すると、真空二重容器3はステンレス鋼製の内筒4と外筒5により構成され、ヒータ11は既述したように真空二重容器3の一重底部3cに当てがって加熱効率が低下しないようにしている。ヒータ11は容量の違う湯沸しヒータと保温ヒータに分けて併用したり、個別使用したりすることができるが、1つのものを湯沸しモードと保温モードとでデューティー比を変えるなど既に知られた方法で発熱容量を違えて使用するようにもできる。真空二重容器3を収容した外装ケース2は合成樹脂製であって、底部および胴部が一体形成され、胴部の上端に別体の肩部6を嵌め合わせ一体にすることで、真空二重容器3を収容し保持している。真空二重容器3の一重底部には吐出系25が接続され、この吐出系25は真空二重容器3と外装ケース2との間を立ち上がり、器体1の前部に吐出口25dが臨んでいる。吐出系25の途中には遠心ポンプなどである電動ポンプ26が設けられ、吐出系25に流入する内容液を吐出口25dに向け送り出し、吐出するようにしている。しかし、電動ポンプの方式はくみ上げ式、加圧式などを問わず自由に選択することができる。併せ、真空二重容器3の口部に通じる器体1の器体開口12を開閉できるように覆う蓋13にベローズポンプなどの手動ポンプ10が設けられ、押圧板61による押圧操作で真空二重容器3内に加圧空気を吹き込み貯湯内容液71を加圧して吐出系25を通じ押し出し外部に吐出させられるようにしている。手動ポンプ10は電源なしのところで貯湯内容液71を手動吐出して給湯できる利点がある。
吐出系25の立上がり部25aは透明管としてそこでの液量が器体1の透明な液量表示窓62から透視できるようにしている。しかし、内容液の液量は立上がり部25aの液量をフォトカプラなどによって段階的に検出して表示し、また各種の制御のための液量データとして用いることもできる。また液量の自動検出は静電容量方式によってもよいし、貯湯内容液71をヒータ11で加熱するときの昇温特性や、ヒータ11の加熱を停止したときの降温特性によっても液量を自動検出することができる。
蓋13は真空二重容器3からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路17が形成され、蓋13の真空二重容器3内に面する位置の内側開口17aと、外部に露出する外面に形成された外側開口17bとの間で通じている。蒸気通路17の途中には、器体1が横転して貯湯内容液71が進入してきた場合にそれを一時溜め込み、あるいは迂回させて、外側開口17bに至るのを遅らせる安全経路17cを設けてある。これにより、器体1が横転して内容液が蒸気通路17を通じて外部に流出するまでに器体1を起こすなどの処置ができるようになる。また、蒸気通路17には器体1の横転時に、蒸気通路17に進入しようとし、あるいは進入した内容液が先に進むのを阻止するように自重などで働く転倒時止水弁18が適所に設けられている。図示する実施の形態では内側開口17aの直ぐ内側の一か所に設けてある。
蓋13の前部には閉じ位置で肩部6側の係止部19に係合して蓋13を閉じ位置にロックするロック部材21が設けられ、蓋13が閉じられたときに係止部19に自動的に係合するようにばね22の付勢によってロック位置に常時突出するようにしている。これに対応して蓋13にはロック部材21を後退操作して前記ロックを解除するロック解除部材23が設けられている。ロック解除部材23は図1に示すように軸24によって蓋13に枢支されたレバータイプのものとされ、前端23aを親指などで押し下げて反時計回りに回動させることでロック部材21をばね22に抗して後退させてロックを解除し、続いてロック解除操作で起き上がった後端23bを他の指で引き上げることによりロックを解除された蓋13を持ち上げこれを開くことができる。
外装ケース2の底と真空二重容器3の底部との間の空間には、前記電動ポンプ26とともに、電源・駆動系基板27を収容する回路ボックス28が設置されている。図示する実施の形態では回路ボックス28は外装ケース2の底の開口部に一体形成して設けてある。また、回路ボックス28は下向きに開口しこれを閉じる蓋60を設けてある。
吐出系25の上部は器体1の突出部31と外装ケース2側のパイプカバー部2dとの間に入った部分で逆U字状のユニットである吐出口部25cを構成し、この吐出口部25cに転倒時止水弁34aおよび前傾時止水弁34bと吐出口25dを設けている。吐出口25dはパイプカバー部2dを通じて下向きに外部に開口している。
外装ケース2の底部にある開口には下方から蓋板36を当てがってねじ止めや部分的な係合により取付け、蓋板36の外周部には回転座環37が回転できるように支持して設けられ、器体1がテーブル面などに定置されたときに回転座環37の上で軽く回転して向きを変えられるようにしてある。
前記のような操作パネル32によると、貯湯内容液71を吐出するには必ず吐出キー82が操作されるし、ロック・解除キー83の操作もこれがあると次に吐出操作を行う意思表示となるので、ほぼ100%の確率で吐出操作が行われる筈であり、いずれによっても吐出操作に関係する電気信号が得られる。また、手動ポンプ10による吐出であってもこれをスイッチやセンサにて検出すれば吐出操作の電気信号が得られる。
そこで、本実施の形態の電気ポットは、また、別の省エネ保温方法として、貯湯内容液71を通常保温や通常保温よりも低い温度での省エネ保温をしながら吐出操作による使用に供するのに、貯湯内容液71の吐出に関係する操作信号1つによって実使用の有無を判定し、この判定した実使用の有無の経過実績に基づき省エネに適した時間帯を判定して以降の省エネ時間帯に設定し、省エネ時間帯になると通常保温から保温温度を変更するようにする。
このように、貯湯内容液71の吐出に関係する操作信号1つによって、貯湯内容液71が吐出される実使用の有無を、単純に自動判定することができ、この判定した実使用の経過実績に係る単純でかつ少ない情報から省エネ保温に適した時間帯を容易かつ的確に判定することができる。従って、不揮発メモリなどを用いたより長期に亘る実使用の経過実績から省エネ時間帯を判定するのにも大きな容量を必要としないし、判定も単純に行えるので低コストで済む。このように判定した省エネに適した時間帯を以降の省エネ時間帯に設定し、省エネ時間帯になると通常保温から保温温度を変更することによって実使用の有無の経過実績に基づき過不足のない省エネが実現する。保温温度の変更は、長期不使用に対応した加熱の停止や、通常保温に戻る前の温度立ち上げ操作などを含むのが好適である。
ここに、既述した吐出温度の検知は、所定時間の間に急激な温度上昇を検知して行うと、図5、図6に示すどの個所の温度変化によっても、貯湯内容液71の吐出を確実に検出することができる。また、これにより、電気ポットを持ち運んで温度環境が変わる場合のようなピークを示さない温度データは除外し、不要なデータを取り扱わなくてよくなる。具体例としては、吐出系センサ72による検出温度は、実際に吐出があってからあるタイムラグがあって後、上昇し始めてほぼ吐出終了時点でピークを示し、昇温限度に至った場合はピークが連続する。そこで、吐出系センサ72が検出する温度をモニタしながら、最低温度を検知してから所定時間のタイマをスタートさせ、その間に検出温度が所定温度、例えば3℃以上昇温した場合に吐出あり、つまり実使用ありと判定する。この判定があると次の吐出判定のために最低温度検知をリセットし、制御を繰り返す。所定温度の昇温がなくタイムアップしたときは吐出がないものとして、次の吐出判定のために最低温度検知をリセットし、制御を繰り返す。
また、電動ポンプ26による吐出に絞った場合、吐出操作に係る信号と、吐出系センサ72による検出温度との2つの信号により吐出を判定すると、実使用の判定精度は向上する。例えば、吐出操作信号があるのに、吐出系センサ72の検出温度に所定のピークが生じないような場合、貯湯内容液が不足しているか、故障と判断して報知手段によりユーザに報知したり、異常信号を出して制御を停止したりして、電気ポット自体および使用上の安全が図れる。
また、制御基板33に設けた吐出系センサ72は、吐出温度を検出していない間の検出温度を室温としてモニタし、貯湯内容液の湯沸し制御や保温制御、液量判定など各種の制御に用いることができる。