以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は、本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載の内容を限定するものではない。
本実施の形態は、家庭用の電気ポットの場合の一例であり断熱容器を内容器に用いている。図1に示す例の断熱容器はステンレス鋼製の真空二重容器3を外装ケース2に内容器として収容した器体1を持ち、ヒータ11によって内容液を加熱して貯湯し、内容液を電動ポンプ26および手動ベローズポンプなどの手動ポンプ10のいずれかによって、管路タイプの吐出系25を通じ外部に吐出して給湯し使用に供する構成を有している。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、内容液をヒータ11により加熱して湯沸しや通常保温、省エネ保温をしながら貯湯し、使用に供するものであれば足り、吐出は必ずしも電動や手動のポンプによらなくても器体1を傾けて行うことも含め本発明は有効であるし、湯沸しを行わないものでも対象として有効である。もっとも、ステンレス鋼は金属の中で熱伝導性が低く、かつ曲げ剛性、強度が十分であり、しかも防錆効果を持ち、Cuを含有するなどで抗菌性をも発揮させやすいので、飲食用の電気貯湯容器には好適であり、真空二重容器3を提供するのに適している。また、真空二重容器3は必ずしも外装ケース2に収容する必要はなく外装体に共用することができる。また、電源・駆動系基板27と操作部Dや初期設定にて設定された動作モードに従った動作制御を行うのにマイクロコンピュータ33aを搭載した制御基板33を用いているが、これもハード回路を含めた種々な機器を採用した制御手段とすることができる。操作部Dは器体1の上端部前方へ例えば嘴状に突出した突出部31の上面に設けた操作パネル32で構成してあり、その内側に設けられる制御基板33上の各種スイッチ類48を、操作パネル32に一体形成した樹脂ばねや別体に設けられたキー部材による操作手段によって個々に押動してオン操作できるようにしているが、これも、本発明の本質的なものではなく具体的な構成は特に問うものではない。マイクロコンピュータ33aは湯沸しや通常保温、省エネ保温のために内容液の温度を検知する内容液温度検知手段29からの温度情報を用いるようにしている。内容液温度検知手段29は内容器としての真空二重容器3におけるヒータ11を当てがっている一重底部の中央に、個別に当てがった内容器センサ29としてある。
なお、操作パネル32は図3に示すように、中央部に設定保温温度や現在温度、現在動作モード、あるいは危険報知や必要操作の促しなどを画面表示する液晶表示部81、そのまわりに貯湯内容液71を吐出して給湯を行う吐出キー82、吐出キー82による吐出操作をロックまたはロック解除するロック・解除キー83、省エネモードを手動設定する省エネキー84、通常保温、省エネ保温中に再沸騰を行う再沸騰キー85、98度保温や90度保温の別、タイマ設定時間の別などを選択する選択キー86、吐出操作があったときの吐出量を設定する計量カップキー87、および設定数値をアップダウンするアップキー88、ダウンキー89を有している。また、ランプ表示としてはロック解除ランプ91、給湯報知ランプ92、省エネランプ93などがLEDなどを利用して設けてある。
本実施例の電気貯湯容器としての電気ポットは、特に、省エネ保温方法として、図10に示すように、上記のような電気貯湯容器としての電気ポットにて、貯湯内容液71を使用時間帯Y1に対応した通常保温時間帯R1、R2などでの通常保温や、不使用時間帯X1に対応した省エネ時間帯Z1での通常保温温度T0よりも低い省エネ保温温度T1、あるいはヒータ11をオフしたままのいわゆる魔法瓶保温での省エネ保温をしながら使用状態を継続して吐出操作による実使用に供するのに、省エネ保温の継続中に吐出操作があったとき、貯湯内容液71が所定の温度T2以上、または通常保温温度T0から所定の温度範囲TX内であればそのまま吐出できるようにする。ここに、通常保温温度T0はユーザによって選択されるなどした例えば98℃または90℃であり、省エネ保温温度T1は魔法瓶保温以外では既述した従来例での60℃でも、その前後でもよいが、それを下回った温度としてよく、55℃、50℃あるいはそれ以下でもよい。所定の温度T2は通常保温温度T0に対し3℃程度低い温度にすればユーザが気付かない範囲といえる。しかし、ユーザが気付いても我慢できる程度であれば4℃、5℃程度低い温度に設定してもよい。さらに、環境温度の高低によって所定の温度T2に高低差を付けるようにしてもよい。
省エネ保温は一般に図10に示すような不使用時間帯X1などに対応して自動設定またはユーザの選択によって行い、使用時間帯Y1、Y2などに対応した通常保温での通常保温温度T0よりも低い省エネ保温温度T1ないしは魔法瓶保温状態に保つので、省エネ保温時の保温温度が低い分だけ省エネになる。特に、省エネ保温の継続中に吐出操作があると、貯湯内容液71が所定の温度T2以上、または通常保温温度T0からの所定温度範囲TX内であればそのまま吐出できるようにするので、ユーザは特別な操作をしないまま、従って、省エネ保温中であることの認識なしにも、省エネ保温開始から内容液温度が図10に破線で示すように経時的に低下する過程における、まだ実使用に耐え得る温度の貯湯内容液71でありながら、省エネ保温中の実使用を一律に禁止する不都合、不便をなくすことができる。同時に、その吐出に際して、省エネ中の吐出に対応した報知を伴ってかえってユーザに戸惑いを与えたり、不要な昇温操作を伴って省エネ効果を低減したりするようなことを回避することができる。
なお、魔法瓶保温は、電気ポットが本実施例のように真空二重容器3といった断熱構造を有したものであることによって、長時間の保温効果があり冷めにくいので、省エネには勿論、省エネ保温中に貯湯内容液71を吐出できる時間が長くなるのでユーザに不便となりにくい利点がある。通常保温から省エネ保温へ移行するのに、魔法瓶保温以外では、通常、所定の省エネ保温温度T1に降温するまでヒータ11の通電を停止することになり、以降は省エネ保温温度T1を保つためにヒータ11のオン、オフや所定容量での加熱を行う。
以上のような省エネ保温方法を達成するのに、本実施例の電気ポットは、図2に示すように通常保温と省エネ保温とを自動設定または人為選択に従い実行する保温制御手段74を備えている。この保温制御手段74は、省エネ保温の継続中に吐出操作があるとき、内容液温度が所定の温度T2以上、または通常保温温度T0から所定温度範囲TX内であればそのまま吐出できるように自動的に対応する。具体的には、通常省エネ保温中に吐出操作があっても吐出ロックによって吐出できなくしておくところを、内容液温度が所定の温度T2以上、または通常保温温度T0から所定温度範囲TX内であればその吐出ロックを解除して電動ポンプ26などによる吐出が行われるようにする。
また、省エネ保温の継続中に吐出操作があったとき、貯湯内容液71が所定の温度T2未満、または通常保温温度T0からの所定温度範囲TX下限未満であっても、吐出できるようにしてもよい。この場合、図2に示すブザー121や図3に示す液晶表示部110、あるいは表示ランプなどによる報知を伴い、電動ポンプ26を働かせて吐出できるようにする。
なお、以上のような吐出規制や吐出規制解除は、手動ポンプ10などであっても吐出操作をロックしたりロックを解除したりすることができるので、電動ポンプ26に限らず必要に応じ実現する。
以上のように、省エネ保温の継続中に吐出操作があったとき、貯湯内容液71が所定温度T2未満、または通常保温温度T0からの所定温度範囲TX下限未満であっても、報知を伴って吐出させることで、ユーザは省エネ保温中の低温の貯湯内容液71であることを知った上で、戸惑いなどなく、そのまま、あるいは他の容器にて温め直したり、沸騰させたりして有効利用されるようにすることができる。
また、省エネ保温の継続中に吐出操作があったとき、貯湯内容液71が所定の温度未満であればヒータ11の通電や通電容量のアップによる昇温操作を伴い吐出できるようにもしている。このように、省エネ保温の継続中に吐出操作があったとき、貯湯内容液71が所定の温度T2未満、または所定保温温度範囲TX下限未満であれば昇温操作を伴って吐出させることにより、省エネ保温の継続にて貯湯内容液71の温度が実使用に耐えない程度にまで低下していても、それを回復させて使用に供することができる。
なお、省エネ保温中の吐出操作に際し昇温操作を伴って吐出できるようにするのに、所定の昇温があって後、吐出できるようにすると、貯湯内容液71を吐出できるようにするときの回復温度T3を規定することができ、ユーザに便利となる。所定の回復温度T3は実使用に耐えられる前記所定の温度T2以上とすればよいが、強制昇温であることから通常保温温度T0程度、あるいは沸騰温度などどのようにも設定することができる。しかし、回復温度T3が高いほど回復時間が長くなる。そこで、ユーザが回復温度を選択できればより便利である。ここに回復温度T3は通常保温温度T0程度でよいが、それ以上でも以下でもよい。
また、省エネ保温中の実使用は、ユーザの生活事情や条件、生活習慣の変化などによるもので、ある時間の間繰り返される確率が高い。これに対応して、所定の昇温状態、つまり回復温度T3は図10に示すように所定時間tだけ継続するようにしている。これにより、前記のように繰り返される実使用に対して省エネ保温中にかかわらず貯湯内容液71の温度保証を図ることができる。従って、省エネ保温はヒータ11による加熱停止を含めた十分に低い温度で行ってもユーザに与える不便は軽く、省エネ効果の高いものとすることができる。
なお、省エネ保温での途中吐出操作による昇温操作への移行時の温度の立ち上げや、省エネ保温から通常保温への移行時の温度の立ち上げ時に、図10に示すように湯沸しモードでの高い通電容量での加熱を行うことにより、早期立ち上げができるのでユーザに便利である。
また、省エネ保温中の吐出操作への対応による昇温状態がその後長時間継続されるのでは、通常保温程度またはそれに近い状態の継続になって省エネ効果を損ないかねない。そこで、保温制御手段74は、省エネ保温中の吐出操作に伴い回復温度T3への昇温操作をして所定時間tだけ継続した後は、このような昇温操作による対応前に戻す。このように所定時間t後に、対応前に戻ることによって、省エネ保温中の吐出操作への対応によって省エネ効果が損なわれることはない。もっとも、対応前に戻るとは、戻った時点に設定されている保温モードに移行することをいい、図10に示すように省エネ時間帯Zが残っていればそれを実行し、通常保温時間帯Rに入っていればそれを実行することになる。これは割り込み制御によって簡単に実行できる。
しかし、省エネ保温中に吐出操作があると、それ以降、ある間繰り返される可能性が高いものの、前記のような対応を一律に継続するのではその時々で異なるであろう実使用Pの実態に対し、省エネ効果に過不足が生じやすい。そこで、上記のような操作に代えて、所定の温度T2での省エネ高温保温から省エネ保温温度T1での省エネ保温に戻るのに、省エネ保温の継続中に吐出操作があって回復温度T3への昇温操作とその維持を図って以降、当該省エネ時間帯Zの終了時点か、その時点までにおいて実使用Pが所定時間t以上継続して行われなくなったときに、対応前に戻るようにすることができる。このように、吐出操作が所定時間t以上継続して行われなくなったときに、対応前に戻ることによって、省エネに過不足が生じるようなことを防止しながら、前記対応前に戻った後の吐出操作に対しては繰り返し対応できるので特に問題とはならない。しかも、吐出操作のあった当該省エネ時間帯Zの終了時点を限度とするので、回復温度T3でのいわば省エネ高温保温状態とはいいながら通常保温時間帯Rにまで影響して、実使用の邪魔になるのを回避することができる。もっとも、回復温度T3が図10に示す例のように通常保温温度T0とほぼ同等であれば実害はない。
また、本実施例の電気ポットでの省エネ保温方法では、省エネ保温継続中に吐出操作があることによる上記のような対応操作の実績を記憶手段75に記憶しながら、保温制御手段74が以降に省エネ保温を行う省エネ時間帯Zを決定するデータに利用する。これは、一旦自動設定し、またはユーザが選択した省エネ時間帯Zでの省エネ保温の継続中に吐出操作があることに対し、繰り返し対応しながら、そのような省エネ保温中の吐出操作が生活事情や条件、習慣の変化などからあるパターンをなしてくると、それを、保温制御手段74などにて、記憶手段75に記憶された対応操作の実績から判定できる。そこで、この判定結果を省エネ設定手段73などにて以降の省エネ時間帯Zを決定するデータに利用することで、省エネ保温中に吐出操作が行われる確率の少ない省エネ時間帯Zを設定することができ、ユーザに最も不便がなく省エネ効果が最も不足なく得られる。なお、省エネ保温中の吐出操作の実績は、吐出の有無、昇温操作の有無にかかわりなく以降の省エネ時間帯Zを決定するデータに利用すると、吐出操作をユーザの吐出意志の現われとして捉え反映させられるので好適である。なお、省エネ保温はユーザによる解除操作によって解除することができ、実使用状態に移行する1つの手法となる。この場合、通常保温状態に復帰させるか、再沸騰後通常保温に移行するようにするのが好適である。
ところで、吐出による実使用Pの実績から省エネ時間帯Zを自動設定するには、実使用Pを検出して記憶手段75に蓄積していき、それを省エネ設定手段73などにて判定する必要がある。前記のような操作パネル32によると、貯湯内容液71を吐出するには必ず吐出キー82が操作されるし、ロック・解除キー83の操作もこれがあると次に吐出操作を行う意思表示となるので、ほぼ100%の確率で吐出操作が行われる筈であり、いずれによっても吐出操作に関係する電気信号が得られる。また、手動ポンプ10による吐出であってもこれをスイッチやセンサにて検出すれば吐出操作の電気信号が得られる。
また、電気ポットでの吐出系25内の吐出系内容液71aは通常、図1に示すように湯沸し後や保温中の貯湯内容液71と同じ液量を保っている。しかし、吐出系内容液71aはヒータ11によって加熱されないので貯湯内容液71よりも温度が低い。このため、貯湯内容液71の吐出によってそれが吐出系25に吐出されてくる都度、吐出系25およびそのまわりの温度が上昇する。図5に98度保温の場合の吐出系25各部における温度変化、図6に90度保温の場合の吐出系25各部における温度変化の実験例を示している。図5、図6のいずれも囲い文字1は制御基板33の裏面、囲い文字2は突出部31の制御基板33を収容したボックス101の内側、囲い文字3は吐出口部25cの表面、囲い文字4は電源・駆動系基板27の裏面、囲い文字5は電動ポンプ26の表面である。98度保温では保温温度が高い分だけ吐出の影響が大きく、囲い文字1〜囲い文字5のどの個所でも貯湯内容液71の吐出によってはっきりした1つの温度ピークが得られ、90°保温では囲い文字4を除いてはっきりした1つの温度ピークが得られ、囲い文字4の場合でもその数やタイミングは不定であるが、保温時にはなかった温度ピークが得られている。
したがって、吐出系25またはその近傍の温度を吐出系センサ72などによって貯湯内容液71が吐出された実使用Pの有無を、吐出が電動ポンプ26によって行なわれるか、手動ポンプ10によって行われるか、あるいは器体1を傾けて行われるかといった別なく、吐出に関した1つの電気信号によって実使用Pの信号が確実に得られる。なお、吐出系センサ72はサーミスタなどを用いたもので、吐出系25またはその近傍の温度を検出できる、例えば図1に示すような位置に設けた吐出系センサ72としてある。さらに、吐出系センサ72は、図1に示すように吐出系25の近傍にある既設の回路基板としての制御基板33に搭載してある。このように、吐出系センサ72を用いるのに、既設の制御基板33に搭載することによって、特別な取付け部材や配線部材なしに設けられるので、特にコスト上昇の原因にはならない。
また、前記制御基板33は、前記器体1の肩部6前部へ突出し吐出系25の吐出口部25cを内蔵した突出部31の上面の内側に位置している。これにより制御基板33は、前記器体1の突出部31に内蔵した吐出系25の吐出口部25cの直ぐ上にあって、それに搭載している吐出系センサ72を前記吐出口部25cの近傍に位置させられるので、吐出系25の近傍の温度を検出しやすい。
しかも、吐出系センサ72は、図に示すように制御基板33の裏面に設けられるなどして、吐出系25の上方、より具体的には吐出口部25cの上方に位置しているので、吐出系25からの熱を受けやすく、吐出系25の温度をより検出しやすい。
ここで、制御基板33の上に向いた表面は前記スイッチ類48や図示しない表示ランプなどのハード部品を搭載しているのに対し、制御基板33の裏面はチップ型のマイクロコンピュータ33aなどのチップ部品を面実装してあり、吐出系センサ72をチップ型のサーミスタなどによるものとすることで、部品コストおよび搭載コスト共に低減することができる。
図4に示す例では、制御基板33を収容している操作部ボックス101と吐出口部25cとの間に熱伝導部材102を挟みこんである。これによって、吐出系25の吐出口部25cの貯湯内容液71の吐出による温度上昇に対する吐出系センサ72の応答性能を高めることができる。熱伝導部材102は例えば熱伝導用のシリコンシートを利用するのが好適で、少し厚めのものを弾性を利用して挟み込むと特別な成形を必要とすることなく操作部ボックス101と吐出口部25cとの双方に密着させられる。
以上のような吐出操作、ないしは吐出の検出によって本実施例の電気ポットは、実使用Pの実績を記憶手段75に記憶し、記憶された実使用Pの実績からそれ以降の省エネ時間Zを省エネ設定手段73によって自動的に設定するようにしている。省エネ設定手段73による省エネ時間帯Zの自動設定は例えば、1日単位の時間長さ24時間を分割した複数の各時間ブロックB1〜Bmに対応する時刻間、図7(a)に示す摸式例では4つの時間ブロックB1〜B4に対応する時刻間t1〜t2、t2〜t3、t3〜t4、t4〜t1ごとに吐出操作のあった実使用Pの実績を判定して行う。図7に示す例では(a)〜(c)の3日分の実績を各時間ブロックB1〜B4ごとの累積結果として判定している。判定は1日分の実績経過にて成立するが、累積回数が多くなるほど判定精度は向上する。次いで、判定した各時間ブロックB1〜B4において、所定の実使用の実績Sがある時間ブロックB、図7(d)の例ではB1、B2、B3の時刻間については以降の通常保温時間帯R1、R2、R3とし、所定の実使用の実績がない時間ブロックB、図7(d)例ではB4の時刻間については以降の省エネ時間帯Z1とし、通常保温時間帯R1、R2、R3の時刻になると通常保温を行い、省エネ時間帯Z1の時刻になると省エネ保温を行う。
このように得られた実使用Pの信号とそれを得た時点の時刻情報とから、1日単位の時間長さを分割した各時間ブロックB1〜B4に対応するどの時刻間に属した実使用であるかが特定する。これによって、各時間ブロックB1〜B4に対応する時刻間t1〜t2、t2〜t3、t3〜t4、t4〜t1ごとの実使用の実績を単純に抜けなく容易かつ低コストにて判定することができる。この場合、前記のように数日分の実使用Pのデータを不揮発メモリによって蓄積して判定するにも取り扱いデータ数が少ないので容量が小さくてよいし、判定手順も簡単になるのでコスト上昇の原因にはならない。
そこで、各時間ブロックB1〜B4における所定の実使用の実績Sがある時間ブロック各B1〜B3での時刻間t1〜t2、t2〜t3、t3〜t4については以降の通常保温時間帯R1〜R3とし、所定の実使用の実績がない時間ブロックB4の時刻間t4〜t1については以降の省エネ時間帯Z1とし、以降各時間ブロックB1〜B4を時刻によって特定できる特徴、1日の生活、実使用のパターンに合わせた的確な省エネ保温を図りやすく、ユーザに不満や不便を与えないものとすることができる。また、飲食時などの短い間隔で実使用が繰り返される間の短い時間帯にも省エネ保温を行って、ユーザに不満や不便を与えるようなことを回避することができるし、深夜などで実使用があってもほとんど繰り返されることのない時間帯につき実使用Pに基づいた通常保温を行ってしまって無駄が生じるのを回避することができる。
ここで、所定の実使用の実績Sは実使用Pの回数基準値Nが所定値以上かどうかで判定すれば有効であり、図7の模式例ではN=2としてある。時間ブロックB1ではN=4、B2ではN=4、B3ではN=10であり、いずれもN≧2であるので、通常保温時間帯R1〜R3と設定し、時間ブロックB4ではN=1であり、N<2であるので、省エネ時間帯Z1と設定してある。
このような模式例では、実使用Pの実績を判定してユーザの実使用経過ないしはパターンを導き出せるようにしながら、N値の設定によって、時刻の認識から予想される通常生活パターンでの就寝時間帯となる時間ブロックBでは稀な吐出操作をイレギュラーとして取り扱って通常保温時間帯Rには設定しにくく、省エネ時間帯Zには設定しやすくし、就寝時間帯を除く実生活時間帯となる時間ブロックBでは吐出操作が繰り返されやすいのを利用して通常保温時間帯Rには設定しやすく、省エネ時間帯Zには設定されにくくして、ユーザの1日の生活パターンに好適に対応することができ、ユーザに不満や不便を掛けることなく省エネが図れる。
特に、食事時の実使用の回数基準値Nは、深夜などその他の時間ブロックでの回数基準値Nよりも低く設定することもできる。例えば、食事時を含む時間ブロックB1〜B3でのN値を2、食事時を含まない時間ブロックB4のN値を3とすると、食事時を含む時間ブロックB1〜B3であるのに実使用の回数が2回と少ないために、通常は省エネ時間帯Zに設定されてしまうのを、N≧2であることにより、実使用の回数が少なくても食事時を含む時間帯に実使用されたもので、食事時に係る実使用パターン、生活パターンが一般と異なるものではないとする、通常保温側に高い優先度で通常保温時間帯Rに設定して、省エネ時間帯Zに設定してしまうことによりユーザに不満や不便を与えるようなことを回避することができる。また、食事時を外れた時間ブロックB4であるのに複数回繰り返し実使用されたからといって省エネ時間帯に設定され勝ちなところを、N≦3であることにより、実使用が3回であっても食事時でない時間帯にかかる実使用パターン、生活パターンが異なるものではないとする、省エネ保温側に高い優先度で省エネ時間帯Zを設定して、いたずらに通常保温時間帯Rを設定して省エネ効果が低下するようなことを防止することができる。
なお、ブロックBごとの使用実態の異なりに合わせた省エネまたは通常保温の優先度が得られるように前記Sは最大ブロック単位で異ならせることができる。また、数日のデータを蓄積するには、途中内容液の入れ替えや洗浄といったことで電源が落とされることが考えられる。これに対応するにはバックアップ電源76を持つなどした不揮発メモリを記憶手段75として採用するのが好適である。特に、数日間サイクル以外にも、1週間サイクル、数週間サイクル、1ケ月間サイクル、数ケ月間サイクル、四季サイクルを通じた長期の記憶データからユーザの実使用の実績経過、ないしは使用パターン、生活パターンを容易かつ的確に判定し対応することができる。曜日ごと以上のパターンサイクルに対応するには計時手段77としてカレンダ機能を採用するのが好適である。また、省エネ時間帯Zを自動設定するのに、実使用Pの実績を前記以外の各種の評価方式にて行うことができる。なお、省エネ設定手段73、保温制御手段74、および計時手段77はそれぞれマイクロコンピュータ33aの内部機能としてあるが、それ単独の機器、あるいはそれ以外の機器と共用するものでもよいのは勿論である。
ここで、本実施例のマイクロコンピュータ33aによる保温制御例について、図8に示すフローチャートに従い説明すると、電気ポットが最初の使用であるかなどによる省エネ時間帯Zの自動設定要求があるかどうか、省エネキーの操作による手動設定要求があるかどうかに応じて、実使用Pの状態のデータ蓄積を伴う自動での省エネ時間帯の設定か、そのようなデータの蓄積なしでの手動省エネ時間帯の設定かを行う。電気ポットの最初の使用に際して省エネ時間帯が設定済みで自動設定の要求がなく、かつ、手動設定の要求もなければ、省エネ時間帯の開始時点ないしは時刻かを判定し、そうでなければ温度T0での通常保温を継続してリターンする。
省エネ時間帯の開始時点ないしは時刻であると、ヒータをオフして魔法瓶保温または省エネ保温温度T1での省エネ保温を開始し、省エネ時間帯の終了時点ないしは時刻になるまで繰り返し、省エネ時間帯の終了時点ないしは時刻であると一旦湯沸しモードにして通常保温温度T0までの立ち上げ操作を行い、温度T0になると湯沸しモードから温度T0を保つ通常保温操作に移行してリターンする。
省エネ保温中に吐出操作があると割り込み制御に入り、貯湯内容液71が所定の温度T2以上、または通常保温温度T0からの所定温度範囲TX内であると、吐出ロックを解除して吐出による実使用Pが行われるようにするが、そうでないと吐出ロック状態にして実使用に耐えない温度の貯湯内容液71が吐出されるのを禁止する(この状態をウエイト表示やランプ、ブザーなどでユーザ告知し、温度回復まで待機させるのが好適である。)。次いで、省エネ保温途中の吐出操作に対応するため昇温操作を行い所定の回復温度T3への昇温を図り、30分タイマをスタートさせて、これが終了するまで省エネ高温保温を行い、省エネ保温途中に行われた実使用Pがそれ以降繰り返されることに対応し、タイマが終了すると割り込みを解除して先に設定された省エネ時間帯Zかどうかによる自動省エネモードに戻る。つまり、省エネ保温中の実使用に対する対応前に戻る。
また、別の制御例を図9に示すフローチャートに基づき説明する。省エネ設定要求があると省エネ表示をした後、実使用Pの取り込みを行いその3日分のデータから6時間以上継続して実使用Pがない不使用時間帯を省エネ時間帯Zに設定し、実使用Pの間隔が6時間未満である時間帯を通常保温時間帯Rに設定する。以降、省エネ時間帯Zになる都度、ヒータをオフした魔法瓶保温ないしは温度T1での省エネ保温を開始し、省エネ保温中に実使用のためのユーザによる吐出操作ロックについてのロック解除操作があると、通常の場合同様に20秒間だけ吐出操作を可能として吐出による実使用Pを待ち、吐出操作がなければ再度吐出操作ロック状態に戻す操作を行いながら、前記ロック解除操作を吐出操作とみなしてそれへの対応制御に入り、貯湯内容液71が所定の温度T2以上、または通常保温温度T0から所定温度範囲TX内であれば省エネ吐出のロックを解除し、そうでなければ省エネ吐出をロックして、回復温度T3への昇温操作を行う。このような昇温操作を、前記のような吐出操作に先立ったロック解除操作時に吐出操作とみなしていち早く実行することで、回復温度T3への昇温を早めることができ、実使用Pに便利である。
次いで、30分タイマをスタートさせるとともに、タイマ終了までに実使用Pがある都度タイマをリセットして省エネ高温保温を継続し、30分タイマをスタートさせることを繰り返し、タイマが終了するまで実使用Pがないときそれまでの省エネ保温中の実使用Pの実績を蓄積しながら所定の条件を満たした省エネ時間帯Z、例えば、6時間未満の間隔で実使用Pがあった省エネ時間帯Zについては、通常保温時間帯Rにする再設定を行いリターンする。
省エネ開始時点ないしは時刻でないか、省エネ終了時点または時刻であるとき通常保温を行いリターンする。
以上は、省エネ保温途中で実使用Pがあるのに対応した制御例であるが、通常保温中であるのに実使用Pの実績がないことが繰り返されると、ユーザの生活事情や条件、習慣の変化によるものと考えられ、これが定着した使用パターンとなるとき省エネ保温時間帯Zとし設定し直すように対応するのが省エネ上好適である。
以下、本実施例の電気ポットの具体的な構成について、さらに詳述すると、真空二重容器3はステンレス鋼製の内筒4と外筒5により構成され、ヒータ11は既述したように真空二重容器3の一重底部3cに当てがって加熱効率が低下しないようにしている。ヒータ11は容量の違う湯沸しヒータと保温ヒータに分けて併用したり、個別使用したりすることができるが、1つのものを湯沸しモードと保温モードとでデューティー比を変えるなど既に知られた方法で発熱容量を違えて使用するようにもできる。真空二重容器3を収容した外装ケース2は合成樹脂製であって、底部および胴部が一体形成され、胴部の上端に別体の肩部6を嵌め合わせ一体にすることで、真空二重容器3を収容し保持している。真空二重容器3の一重底部には吐出系25が接続され、この吐出系25は真空二重容器3と外装ケース2との間を立ち上がり、器体1の前部に吐出口25dが臨んでいる。吐出系25の途中には遠心ポンプなどである電動ポンプ26が設けられ、吐出系25に流入する内容液を吐出口25dに向け送り出し、吐出するようにしている。しかし、電動ポンプの方式はくみ上げ式、加圧式などを問わず自由に選択することができる。併せ、真空二重容器3の口部に通じる器体1の器体開口12を開閉できるように覆う蓋13に手動ポンプ10が設けられ、押圧板61による押圧操作で真空二重容器3内に加圧空気を吹き込み貯湯内容液71を加圧して吐出系25を通じ押し出し外部に吐出させられるようにしている。手動ポンプ10は電源なしのところで貯湯内容液71を手動吐出して給湯できる利点がある。
吐出系25の立上がり部25aは透明管としてそこでの液量が器体1の透明な液量表示窓62から透視できるようにしている。しかし、内容液の液量は立上がり部25aの液量をフォトカプラなどによって段階的に検出して表示し、また各種の制御のための液量データとして用いることもできる。また液量の自動検出は静電容量方式によってもよいし、貯湯内容液71をヒータ11で加熱するときの昇温特性や、ヒータ11の加熱を停止したときの降温特性によっても液量を自動検出することができる。
蓋13は真空二重容器3からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路17が形成され、蓋13の真空二重容器3内に面する位置の内側開口17aと、外部に露出する外面に形成された外側開口17bとの間で通じている。蒸気通路17の途中には、器体1が横転して貯湯内容液71が進入してきた場合にそれを一時溜め込み、あるいは迂回させて、外側開口17bに至るのを遅らせる安全経路17cを設けてある。これにより、器体1が横転して内容液が蒸気通路17を通じて外部に流出するまでに器体1を起こすなどの処置ができるようになる。また、蒸気通路17には器体1の横転時に、蒸気通路17に進入しようとし、あるいは進入した内容液が先に進むのを阻止するように自重などで働く転倒時止水弁18が適所に設けられている。図示する実施例では内側開口17aの直ぐ内側の一か所に設けてある。
蓋13の前部には閉じ位置で肩部6側の係止部19に係合して蓋13を閉じ位置にロックするロック部材21が設けられ、蓋13が閉じられたときに係止部19に自動的に係合するようにばね22の付勢によってロック位置に常時突出するようにしている。これに対応して蓋13にはロック部材21を後退操作して前記ロックを解除するロック解除部材23が設けられている。ロック解除部材23は図1に示すように軸24によって蓋13に枢支されたレバータイプのものとされ、前端23aを親指などで押し下げて反時計回りに回動させることでロック部材21をばね22に抗して後退させてロックを解除し、続いてロック解除操作で起き上がった後端23bを他の指で引き上げることによりロックを解除された蓋13を持ち上げこれを開くことができる。
外装ケース2の底と真空二重容器3の底部との間の空間には、前記電動ポンプ26とともに、電源・駆動系基板27を収容する回路ボックス28が設置されている。図示する実施例では回路ボックス28は外装ケース2の底の開口部に一体形成して設けてある。また、回路ボックス28は下向きに開口しこれを閉じる蓋60を設けてある。
吐出系25の上部は器体1の突出部31と外装ケース2側のパイプカバー部2dとの間に入った部分で逆U字状のユニットである吐出口部25cを構成し、この吐出口部25cに転倒時止水弁34aおよび前傾時止水弁34bと吐出口25dを設けている。吐出口25dはパイプカバー部2dを通じて下向きに外部に開口している。
外装ケース2の底部にある開口には下方から蓋板36を当てがってねじ止めや部分的な係合により取付け、蓋板36の外周部には回転座環37が回転できるように支持して設けられ、器体1がテーブル面などに定置されたときに回転座環37の上で軽く回転して向きを変えられるようにしてある。
また、制御基板33に設けた吐出系センサ72は、吐出温度を検出していない間の検出温度を室温としてモニタし、貯湯内容液の湯沸し制御や保温制御、液量判定など各種の制御に用いることができる。