JP4092989B2 - ポリエステル樹脂およびフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明でかつ機械特性に優れたポリエステルフィルムを形成し得るポリエステル樹脂およびそれを用いたフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性を有しているため、様々な用途に幅広く使用されている。具体的には、ガラス部位などに適用される保護フィルム用、コンデンサー用、インクリボン用、印刷用(白色フィルム)、包装用、金属ラミネート用、磁気記録媒体用、光学用、プリペードカード用等多岐にわたる。
【0003】
しかしながら、電化製品などの小型化、磁気記録容量の高密度化、他部材との貼合せなどによる高機能化などの要求により、より薄く、より高強度のフィルムが求められている。
【0004】
一方、ビスフェノール型エポキシ樹脂はポリエステルの改質剤として使用されており、例えば、特許文献1〜4にはビスフェノールA型エポキシ樹脂などを含有する樹脂組成物に関する記載があり、特許文献5には臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いて難燃性を付与することなどが記載されている。
【0005】
しかしながら、これらのビスフェノール系エポキシ樹脂はポリエステルに添加すると増粘し、ポリマーの流動性を損なうため、可塑剤と併用したり、加工性を優先するために添加量が制限されるなど、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0006】
また、従来から種々の方法でフィルムの高強度化が検討されてきた。例えば、ポリエステルは延伸により高弾性フィルムとなるため、フィルムの高強度化の手法として、縦横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸し、縦方向を高強度化する、いわゆる再縦延伸法が提唱されている(例えば、特許文献6〜9参照)。しかし、これらの技術のみによるフィルムは、最近の各用途におけるフィルムの薄膜化の要求に応えられるだけの十分な強度を有していなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−181489号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−234044号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−234045号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−234046号公報
【0011】
【特許文献5】
特開2002−128998号公報
【0012】
【特許文献6】
特公昭42−9270号公報
【0013】
【特許文献7】
特公昭43−3040号公報
【0014】
【特許文献8】
特公昭46−1119号公報
【0015】
【特許文献9】
特公昭46−1120公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記した従来技術の問題を解決し、高強度のポリエステルフィルムを形成し得るポリエステル樹脂およびそれを用いたフィルムを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するための本発明は、ポリエチレンテレフタレートに、下記一般式(1)
【化4】
(式中、Ar 1 〜 6 は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは整数を表す。)で示されるアルコキシシランと、下記一般式(2)
【化5】
(式中、nは1以上の整数を表す。)で示されるビスフェノールA型エポキシ化合物との反応物であるアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物を0.1〜40重量%共重合したポリエステル樹脂を特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートにアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物が共重合されている。アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物をポリエステルに共重合することによりフィルムなどに成形したときの強度を改善することができる。
【0019】
本発明のポリエチレンテレフタレートとしては、特に構成単位の50モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが、耐薬品性、耐熱性、成形性、コストパフォーマンスの点から好ましい。
【0020】
ポリエチレンテレフタレートへのアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物の共重合量は、成形性、成形後の強度、耐熱性などの点から、0.1〜40重量%であり、好ましくは1〜20重量%である。共重合量が0.1重量%未満である場合、成形したときに十分な強度が得られず、40重量%を超えると、増粘やゲル化などにより成形が困難になったり、耐熱性が低下する。
【0021】
本発明におけるアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物は、フェノールまたは2,6−ジハロフェノールとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノンなどのアルデヒド類もしくはケトン類との反応の他、ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸による酸化、ハイドロキノン同士のエーテル化反応などにより得ることができるビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリンなどのハロエポキシドとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ化合物と、加水分解性アルコキシシランまたはこれの縮合物との脱アルコール反応物であることが成形後の強度、透明性、耐熱性の点から好ましい。特に透明性、耐熱性の点から、加水分解性アルコキシシランが下記式(1)であることが重要である。
【0022】
【化4】
Ar1〜6:炭素数1〜6のアルキル基。それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0023】
m:整数
なお、mは化合物の平均として1〜7であることが好ましい。
【0024】
また、耐熱性とコストパフォーマンスの点からビスフェノール型エポキシ化合物が下記式(2)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物であることが重要であり、特に耐熱性と透明性の点から、下記式(3)で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0025】
【化5】
n:1以上の整数
【0026】
【化6】
l:1以上の整数
m:整数
R1〜5:メチル基および/または水素原子。それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0027】
なお、mは化合物の平均として1〜7であることが好ましい。
【0028】
このようなアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物はアルコキシ基部分(アルコキシシラン)を加水分解させて用いることができる。加水分解の方法としては、添加前にあらかじめ加水分解しても、反応系中で加水分解させても構わない。
【0029】
また、アルコキシ基を加水分解させることによりシリカ粒子を形成させることができる。このとき、下記一般式(1)および(3)の繰り返し単位数mが大きすぎると粒子径の大きいシリカ粒子を形成し、成形物の透明性が低下したり、粗大突起の原因となることがある。繰り返し単位数mの好ましい範囲としては、成形物の透明性、粗大突起抑制の点から平均として1〜7である。
【0030】
【化7】
Ar1〜6:炭素数1〜6のアルキル基。それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0031】
m:整数
【0032】
【化8】
l:1以上の整数
m:整数
R1〜5:メチル基および/または水素原子。それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0033】
アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物に対するSi元素の含有量としては4,600〜300,000ppm(重量基準)であることが耐熱性、成形性、成形後の透明性および強度の点から好ましく、さらには10,000〜200,000ppm(重量基準)であることが好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂中のSi元素の含有量は5〜120,000ppm(重量基準)であることが、耐熱性と成形後の強度の点から好ましく、さらには50〜100,000ppm(重量基準)であることが好ましい。
【0035】
また、アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物のアルコキシシラン部分をシリカ粒子に変性させる場合は、ポリエステル樹脂に対するSi元素の含有量は、シリカ粒子の分散性の点から好ましくは100〜80,000ppm(重量基準)であり、さらに好ましくは300〜50,000ppm(重量基準)である。
【0036】
このとき、シリカ粒子の粒子径はアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物に対するSi元素の含有量で制御が可能であり、例えば小粒径化する場合にはSi元素の含有量を少なくし、大粒径化する場合には含有量を多くすることで制御が可能である。
【0037】
また、シリカ粒子の個数(密度)はアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物の分子量とポリエステルに対する共重合量で制御することが可能であり、個数(密度)を増やしたいときは、分子量を小さくする、共重合量を多くする、などが効果的であり、粒子数を減らしたいときは分子量を大きくする、共重合量を少なくする、などが効果的である。
【0038】
例えば、小粒径のシリカ粒子を多く分散させたい場合は、Si元素含有量が少なく、分子量の小さいアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物をポリエステル反応系内に適当量添加し、共重合反応を行いつつ、アルコキシシラン部分をシリカ粒子に変性させることで、微小なシリカ粒子が高度に分散したポリエステル樹脂を得ることができる。
【0039】
また、アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物のアルコキシシラン部分をシリカ粒子へと変性させるには、加水分解反応を用いることができるが、アルコキシ基としてメトキシ基を選択することにより、加水分解反応を経ることなく、加熱のみでシリカ粒子に変性させることも可能である。
【0040】
このようなポリエステル樹脂は、ビスフェノール型エポキシ化合物を主鎖とする化合物を共重合することにより、フィルムなどに成形した後の機械的強度が向上するだけでなく、ビフェノール型エポキシ化合物の欠点である耐熱性をアルコキシシランで変性する事で改良し、さらにアルコキシシラン部分をシリカ粒子に変性させることによりポリエステル中においても十分な耐熱性を示すため、透明性にも優れる。さらに、アルコキシシラン部分を変性させて得られるシリカ粒子は、ビスフェノール型エポキシ化合物と結合を有しているため、ポリエステル樹脂中においても高度に分散し、面形成用、および地肌補強用フィラーとしても有用であり、かつ、非晶質であるためポリエチレンテレフタレートと擬似的な架橋構造を形成し、機械強度向上にも寄与している。
【0041】
また、本発明の請求の範囲内において他の共重合成分を用いることができる。
【0042】
このようなポリエステル樹脂はフィルムや繊維などにおいて好適に用いられ、ヤング率を14〜30GPaとした成形物を得ることができる。フィルムの薄膜化を行うにはヤング率は高いほどよいが、30GPaを超えると成形物の伸度や熱寸法安定性などの物性が低下する場合がある。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法および成形方法は、種々の方法を用いることができる。たとえば、ポリエチレンテレフタレートの製造方法としては、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、この反応生成物を減圧下で加熱して、余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造することができる。また、酸成分として上記のジアルキルエステルの代わりにジカルボン酸を用いた直接重合法により製造することもでき、アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物の添加時期としては、エステル化反応前またはエステル交換反応前から重縮合反応初期までの任意の段階で添加することができる。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂は、種々の溶融押出機により押出成形することができる。
【0045】
例えばフィルムの場合、溶融押出製膜方法により製膜し、フィルムとすることができる。すなわち、ポリマーを乾燥後、T型口金を備えた1軸もしくは2軸の溶融押出機に供給ポリエステル溶融温度にてキャスティングドラム上に押し出し、静電印加キャストして未延伸フィルムを得る。また、配向ポリエステルフィルムを得るためには、さらにこれを逐次2軸延伸、あるいは同時2軸延伸、熱処理することにより、配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0046】
また、積層を行う場合は複数の押出機と矩形積層部を備えた2層またはそれ以上の合流ブロックを用いたり、5層以上に積層を行う場合は押出機とT型口金の間にスタティックミキサーを組み込むなどの方法により積層フィルムが得られる。
【0047】
総積層数を4以上にするためには、例えば溶融押出機とT型口金の間にスタティックミキサーを組みこむことによっても達成できる。例えば、2層のものをスタティックミキサーで2分割し、上下に重ねることで4層となる。これを2回繰り返すと、8層、さらにもう一回行うと16層というように、簡単に偶数層の総積層数を有する複合フィルムを製造することが可能である。さらに、押出機をスタティックミキサーの前後に適宜追加して偶数・奇数を問わず任意の所望の総積層数を有するフィルムを得ることができる。特に、最表層に位置するフィルム層を、種々の機能性を有する層として内層とは異なる組成の層となるように構成することも可能である。
【0048】
延伸倍率は、とくに制限のあるものではないが、好ましくは縦、横それぞれ2〜5倍が適当である。横延伸後、縦、横方向のいずれかに再延伸してもよい。また、易接着層、粒子層等を形成する場合は、延伸前、または縦延伸と横延伸の間でコーティング成分をインラインで塗布してもよいし、延伸後オフラインコーティングしてもよい。
【0049】
本発明におけるポリエステルフィルムは透明性、成形後の強度に優れ、ガラス部材の貼り合わせ用途、偏光板保護フィルムなどの光学用部材、ラベル、金属ラミネート用途、製品の保護フィルムなど、透明性が要求される用途や、フィルムコンデンサーなどの電気絶縁用途、インクリボン用途、磁気記録媒体用ベースフィルムなど、薄膜化が進む一方で強度が要求される用途などに好適に用いることができる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性は、次の方法により測定した。
【0051】
A.ポリエステル樹脂の固有粘度
オルトクロロフェノールを用い25℃で測定した。
【0052】
B.ポリエステル樹脂のカルボン酸末端基量
Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
C.Si元素含有量
アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物、およびポリエステル樹脂について蛍光X線分析法によりSi元素含有量を測定した。
【0053】
D.分離粒子量
オルトクロロフェノールにポリエステルを100℃で溶解し、これを遠心分離器にて固形分を分離する。さらに固形分をオルトクロロフェノールに溶解したのち、遠心分離器で固形分を分離する作業を、遠心分離後の上澄み液を分取して、アセトンを数滴加えても白濁しなくなるまで繰り返し、最後に残った固形物をクロロホルムで洗浄し、乾燥した。
【0054】
この固形物について蛍光X線分析法によりSi元素含有量を測定し、SiO2換算した。
【0055】
E.粒子分散性
厚み0.2μmの超薄片にカッティング後(フィルムの場合は断面を0.2μmの超薄片にカッティング)、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し、50個当たりの平均値で評価した。このとき、凝集粒子は1個の粒子としてカウントする。
【0056】
凝集体の判定は、透過型電子顕微鏡写真で影が重なっている粒子を凝集体としてカウントした。
【0057】
A:凝集体がない、もしくは2〜3個の粒子からなる凝集体が1.0個未満。
【0058】
B:4個以上の粒子からなる凝集体はないが、2〜3個の粒子からなる凝集体が1.0個以上存在する。
【0059】
C:7個以上の粒子からなる凝集体はないが、4〜6個の粒子からなる凝集体が存在する。
【0060】
D:7個以上の粒子からなる凝集体が存在する。
【0061】
A、Bを合格とした。
【0062】
F.フィルムヘイズの測定(厚み50μm)
50μmのフィルムを作成し、JIS−K−6714により、日本精密光学株式会社製ヘイズメータSEP−H−2で測定した。フィルムヘイズが5.0%未満が特に透明性が必要な用途では好ましい。
【0063】
G.ヤング率、破断伸度の測定
ASTM−D882に規定された次の方法に従って、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”)を用いて測定した。幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度300mm/分の条件で引っ張る。得られた張力−歪曲線の立上がりの接線の勾配からヤング率を求め、また、破断伸度を求める。測定は25℃、65%RHの雰囲気下で行う。
【0064】
ヤング率については、10点測定を行い、最大値、最小値を除いた8点について平均値を算出し、幅方向、長手方向のヤング率の合計で評価した。
【0065】
破断伸度についても、10点測定を行い、最大値、最小値を除いた8点について平均値を算出し、幅方向、長手方向の平均値として評価した。
【0066】
次に、参考例としてアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物、および粒子の調製方法について述べる。
【0067】
(参考例1)アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/eq)950重量部およびジメチルホルムアミド950重量部を加え、90℃で溶解した。さらにテトラメトキシシラン縮合物(平均4量体)304.6重量部と触媒としてテトラエトキシチタン2重量部を加え90℃で反応させた。
【0068】
(参考例2)粒子の調製
スチレン30mlと、乳化剤として“エマルゲン”920(花王アトラス(株)製)1.36gおよび“プロノン”208(日本油脂(株)製)1.36gとを170mlの水に溶解し、重合開始剤として過硫酸カリウム136mgとチオ硫酸ナトリウム136mg、さらに過酸化ベンゾイル204mgを加え、35℃で48時間、窒素雰囲気下で反応させ、スチレンのシード粒子の水分散液を作製した。次いで、この水分散液100mlに、水45ml、ジビニルベンゼン20ml、スチレン10mlを加え“エマルゲン”920と“プロノン”208とをそれぞれ0.9gずつ加えて、70℃で20時間、窒素雰囲気中で反応させ、シード粒子中でスチレンとジビニルベンゼンとが架橋した、平均粒子径0.6μmのスチレン−ジビニルベンゼン重合体粒子の水スラリーを得た。
【0069】
(実施例1)
250℃で溶解、攪拌しているビスヒドロキシエチルテレフタレート70重量部に対し、テレフタル酸43重量部とエチレングリコール19重量部の混合スラリーを供給しながらエステル化反応せしめた。その後、反応系に参考例1のアルコキシ基含有シラン変性ビスフェノールA型エポキシ化合物として5重量部を添加し、30分間攪拌反応後、リン酸を0.008重量部、二酸化ゲルマニウムをテトラエチルアンモニウムハイドライドで溶解しエチレングリコールで10重量%に稀釈、調製したものを得られるポリマーに対して二酸化ゲルマニウムとして0.015重量部となるように添加し、その後重縮合反応を行いポリエステルAを得た。
【0070】
次いで、アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物を添加しない以外はポリエステルAと同様にして作成したポリエステルBを得た。
【0071】
このポリエステルBと参考例2のスチレン−ジビニルベンゼン重合体粒子スラリーをポリエステルに対して粒子量が2重量%となるようにベント式二軸押出機に供給し、練り込みを行い、ポリエステルCを得た。
【0072】
ポリエステルA、B、Cを混合し、これを溶融押出し、縦延伸温度93℃で3.3倍、横延伸温度95℃で3.3倍に延伸後、200℃で3秒間ヒートセットを行い、二軸延伸フィルムを得た。
【0073】
(実施例2)
アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の添加量を10重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルDを得た。
【0074】
ポリエステルB、C、Dを混合し、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0075】
(実施例3)
アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の添加量を20重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルEを得た。
【0076】
ポリエステルB、C、Eを混合し、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
【0077】
(実施例4)
ポリエステルA、Bの混合物をI層として押出し、もう一方の押出機でポリエステルB、Cの混合物をII層として押出し、矩形積層部を備えた3層の合流ブロックを用いてI/II/Iの3層積層構造になるように溶融押出し、縦延伸温度90℃で3.5倍、横延伸温度90℃で3.0倍延伸後、リラックス率3%で200℃5秒間ヒートセットを行い、二軸延伸フィルムを得た。
【0078】
(実施例5)
ポリエステルA、Bの混合物をI層、ポリエステルB,Cの混合物をII層とし、スタティックミキサーを用いてI/II/I/II/I/IIの6層構造になるように溶融押出し、縦延伸温度90℃で3.8倍、横延伸温度95℃で3.5倍延伸後、リラックス率5%で205℃5秒間ヒートセットを行い二軸延伸フィルムを得た。
【0079】
(比較例1)
アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノールA型エポキシ化合物の代わりに参考例1で使用したビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量185g/eq)を添加する以外は実施例3と同様にしてポリエステルFを得た。
【0080】
しかしながら、溶融押出時に分解ガスに起因すると思われる気泡が発生し、製膜できなかった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、光学特性に優れた、ガラス部材の貼り合わせ用途、光学用部材、製品の保護フィルム、磁気記録媒体用ベースフィルムおよび繊維などに好適に用いることができるポリエステル樹脂を提供することができる。
Claims (8)
- ポリエチレンテレフタレートに、アルコキシ基含有シラン変性ビスフェノール型エポキシ化合物を加熱および/または加水分解してアルコキシシラン部分をシリカ粒子に変性させた化合物を共重合させてなる請求項1または2記載のポリエステル樹脂。
- Si元素の含有量がポリエステル樹脂に対して100〜80,000ppmである、請求項3記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂を二軸延伸してなるポリエステルフィルム。
- 請求項5記載のポリエステルフィルムを少なくとも1層積層してなる積層ポリエステルフィルム。
- 積層数が5以上であることを特徴とする請求項6記載の積層ポリエステルフィルム。
- 長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和が14〜30GPaである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムまたは積層ポリエステルフィルム。
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