JP4092850B2 - インクジェット記録用及び再生可能な無塵紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクリーンルームで使われる無塵紙や低発塵紙に関するものであり、特にインクジェットプリンタによる印字適性が良好であり、且、離解性が良いという特徴を有する無塵紙や低発塵紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クリーンルーム内では、塵で空気を汚染しないような低発塵紙や無塵紙が使用される。無塵紙は、一般的に填料を含まない、又は、発塵性が許される範囲で不透明度向上を目的として微量の填料を含む原紙に、発塵を抑えるための樹脂を含浸した紙からなる物が一般的である。
【0003】
無塵紙や低発塵紙に要求される特性としては、無塵紙や低発塵紙がクリーンルーム内のあらゆる用途に用いらる。例えば、コピー用紙、フォーム用紙、レポート・メモ用紙、計測記録紙、伝票などとしての用途であることから、発塵性が低いことはもちろんのこと、水性ペン、油性ペンによる筆記性、印刷適性、PPC適性、インクジェット適性、帯電防止性などが挙げられる。
【0004】
特に、インクジェット適性に関しては、近年のインクジェットプリンタの普及にともない、無塵紙にもインクジェットプリンタ適性、すなわち、水性インクの滲みがなく、吸収性がよいことが求められるようになった。
【0005】
無塵紙は前記のごとくバインダーとなる樹脂を含浸しているため、一般的にはインクの吸収性と定着性に劣る。そのため、インクが吸収、乾燥するまでに時間がかかることがあった。一方、親水性の高いバインダーを使用した場合はインクの浸透ムラが起こり、滲みやベタ印字部に濃淡ムラが起こることがあった。
【0006】
一般のインクジェット記録紙は、上質紙などの紙にクレーなどの顔料とバインダーからなる塗工層をもうけて、インクの吸収性を付与している。さらにアニオン性のインクの定着性を良好にするために、塗工層にカチオン樹脂を含有させて、インクを定着させるのが一般的になっている。しかし、インクジェット記録紙は、破いたり、擦ったりしたときの塗工層から顔料の脱落や紙からの塵の脱落には特別に配慮がなされていない。すなわち、破いたり擦れたりしたときにクリーンルーム内の空気を汚染するので、クリーンルームでの使用はできない。
【0007】
無塵紙にインク吸収性を付与するために、特開平4−355183号公報では低発塵紙または無塵紙に水溶性高分子などからなるインク吸収層をもうけた無塵紙が開示されている。又、インクの定着性を改善するために、特開平9−11611号公報では低発塵紙または無塵紙に3級アミンまたは4級アンモニウム塩を含むカチオン性樹脂からなるインク固着層を設けたことを特徴とするインクジェット用記録用紙が開示されている。ところが、特開平4−355183号公報および特開平9−11611号公報に開示された技術では、無塵紙の離解性については改善がなされていない。又、通常の発塵性を抑えるためのベースになる樹脂を一度含浸した後、さらに含浸または塗工によって、インク定着層を設ける必要があり、製造工程が多くなるという欠点があった。
【0008】
一方、近年の環境問題、リサイクル促進の動きの中で、事務用途として使用される無塵紙や低発塵紙においても、再生可能化の要求が強くなってきている。又、半導体産業や電子・電気産業においても、塵が発生しないという無塵紙の特徴を生かし、部品や基板等の層間紙として使用される場合があり、無塵紙からなるまとまった量の産業廃棄物が発生するため、再生可能化のニーズが高まっている。
【0009】
しかしながら、無塵紙や低発塵紙は、前述のごとく樹脂エマルジョンを含浸しているため、離解性が極端に悪く再生はできないという問題があった。又、無塵紙や低発塵紙のように樹脂エマルジョンを含浸してなる紙の場合は、古紙を回収する製紙産業においては純粋な紙の離解性が問題になるだけでなく、樹脂エマルジョンに起因する離解時の発泡、粘着性の発現等は、パルパーから抄紙機系内の汚れやスクリーン処理時のトラブルの原因となり、回収古紙として使用できない範囲の物であった。
【0010】
この問題に対応するために特開平11−107196号公報では、原紙内添薬品として湿潤紙力増強剤の替りに乾燥紙力増強剤を使用することにより原紙の離解性を改良した物であるが、本質的に無塵紙や低発塵紙は樹脂エマルジョンを含浸しているため、樹脂エマルジョン自体の離解性、再分散性を改良しなければ問題の解決にはならず、離解時の発泡、粘着性の発現については解決されていない。
【0011】
一方、特開平5−295200号公報、特開平6−313295号公報、特開平10−278189号公報、特開平11−189996号公報等に示される同様に樹脂加工を行なう防湿紙においては離解性の良い紙や材料の提案が成されている。しかしながら、これらの発明は、無塵紙や低発塵紙のような樹脂含浸加工ではなく表面に樹脂層を塗工しており、原紙と樹脂の分離が容易であること、又、無塵紙や低発塵紙の場合はその用途から一般的な上質系の事務用紙と一緒に回収される可能性があり、更に高いレベルの離解性が要求されているため、無塵紙や低発塵紙には対応できないものであった。又、特開平5−247894号公報に示されるようにアルカリ下で水溶性アクリル系合成樹脂を含浸し離解性を改良した加工紙が提案されているが、アルカリ下による含浸という限定条件が付き、アルカリ下では不安定なエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂は使用できない。また、評価方法として、更に1%のNaOH水溶液中で離解試験を行ない、離解性の判定を行なっているが、この方法では本質的な離解性は明確になっていない。更に、実際の古紙回収工場においては離解時にアルカリを使用すると離解後のパルプスラリーや排水のpH調整の負荷が高まるためコストアップにつながったり、配管やチェスト等からの異物発生・剥離のトラブルが発生し、現実的に対応できるものではない。
【0012】
以上のように、インクジェット適性が優れ、且、離解性が良い無塵紙や低発塵紙は完成されていない状況にあり、両特性を兼揃えた無塵紙や低発塵紙の早期開発が望まれていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インクジェット適性及び離解性の両特性に優れ、再生可能な無塵紙あるいは低発塵紙を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、インクジェットプリンタに用いられるインクの定着方法と無塵紙への液体浸透性に着目し、インクジェット適性の優れた樹脂エマルジョンについて、及び含浸加工後の離解性が良い樹脂エマルジョンについて、ステキヒト・サイズ度に着目して鋭意検討した結果、主な樹脂エマルジョンとして、ポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂を使用し、無塵紙表面の親水性の調整、即ちインクの浸透抑制効果のある樹脂エマルジョンの選択、又は樹脂エマルジョンに親水性を抑制できる添加剤を配合し、無塵紙中のパルプ繊維表面の親水性を制御することにより、発塵性を損なわずにインクジェット適性と離解性の両特性を改良できることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は次の発明を包含する。
(1)天然パルプを主成分とする基紙に樹脂エマルジョンを含浸してなる無塵において、無塵紙の含浸加工に使用する樹脂の主な配合組成がポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂であり、JIS P−8122で規定されているステキヒト・サイズ度が8〜40秒以下であるインクジェット記録用及び再生可能な無塵紙。
【0016】
(2)前記ポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂にはっ水剤、表面サイジング剤またはサイズ発現効果のある樹脂エマルジョンの少なくとも1種を配合したことを特徴とする(1)記載のインクジェット記録用及び再生可能な無塵紙。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明においては、JIS P−8122で規定されているステキヒト・サイズ度が8〜40秒以下であることが重要である。
一般的に無塵紙として市販されているものをJIS P−8122に従い測定したステキヒト・サイズ度は、未サイズ或いは45秒以上であった。これらの無塵紙にインクジェット印刷を施した場合、未サイズの無塵紙では、インクの吸収が速く、極端なフェザリングやインクの裏抜けに伴う印字濃度の低下が生じる。また45秒以上では、インクの浸透性が悪いためにフェザリングに起因する滲みは発生しないがモトリングが生じる、又は部分的に浸透性の良い空隙に沿ってインクが浸透し、斑点状の色濃度の低下が生じる。
【0018】
一方、市販されているインクジェット用紙のステキヒト・サイズ度は20秒以下が一般的である。インクジェット用紙の品質設計上、インクを受容層に速やかに吸収することにより、インクの滲みをなくし色濃度を向上する狙いがあるため、インクジェット用紙のステキヒト・サイズ度は低いものとなっている。
【0019】
本発明者等は、無塵紙の場合は、インクジェット用紙と異なり、インク受容層を持たず、又、発塵を抑えるために樹脂エマルジョンが含浸されていることから、インクジェット用紙のように低サイズ度にするとフェザリングに起因する滲みが強くなること、また、インク受容層を持たずにインクを定着する必要があることから、ステキヒト・サイズ度が40秒よりも高くするとインクの吸収や乾燥が遅く、モトリングの原因になったり、インクジェットプリンタを汚すというトラブルの原因になることを見出した。
【0020】
一方、ステキヒト・サイズ度が離解性に与える影響について、鋭意検討した結果、一般的にはサイズ度が低いほど、親水性が高いことにより、離解が容易と考えられるが、TAPPI T−227に従った標準離解機による離解、或いは古紙回収工場のパルパーによる離解のような機械的なシェアにより、無塵紙表面が強いはっ水性を有している場合を除いて、ステキヒト・サイズ度が8〜40秒以下であればステキヒト・サイズ度の影響を受けず離解可能であることを見出した。
【0021】
即ち本発明では、ステキヒト・サイズ度が8〜40秒以下、好ましくは15〜35秒以下の範囲を満たす場合、インクジェット適性と離解性の両特性を満足することができる。
ステキヒト・サイズ度が8秒より小さいとインクジェットプリンタで印字した際にインクの浸透が速すぎるため、インクの裏抜けだけでなく平面方向へのインクの拡散が発生するため滲みが強く使用できない。ステキヒト・サイズ度が40秒よりも大きいとインクジェットプリンタで印字した際のインクの吸収が遅いことにより、フェザリングに起因する滲みは少ないが、モトリングに起因する色濃度ムラ、地合等の紙層構造に起因して存在する浸透性の良い部分に沿ってインクが浸透し生じる斑点状の色濃度の低下、インクジェットプリンタの汚れや印字部のコスレによる汚れの問題が生じる。又、親水性が悪化することにより離解時の濡れ性、膨潤性が極端に悪化し、初期のパルプ繊維の緩みが遅くなるため離解性が悪化する。
【0022】
以下に本発明の無塵紙用原紙について説明する。本発明に使用する無塵用原紙の原料パルプは、広葉樹、針葉樹の木材パルプに加え、マニラ麻、楮、三椏、雁皮などの非木材パルプ等の天然パルプ、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等の合成繊維を使用することができるが、基紙の強度、地合及びコストの面から広葉樹と針葉樹の混合使用が好ましい。本発明においては、これらの原紙の原料に何等制限されるものではない。又、通常、地合改善のため、叩解機によりカナダ標準ろ水度300〜500mlC.S.F.に叩解調成し使用することが一般的だが、本発明では叩解機及びろ水度により限定を受けるもでのはない。又、抄紙方法としては、公知のあらゆる抄紙方法が採用でき、限定を受けるものではない。
【0023】
本発明の無塵紙は、不透明度を高める目的で発塵性が許される範囲、即ち2%以下で、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の填料を内添することができる。
【0024】
あらゆる紙の離解性において公知の通り、湿潤紙力増強剤の量は離解性に大きく影響し、パルプに対する定着率が高い程、離解性が悪化する。本発明者らは、無塵紙の原紙の湿潤強度と実際の古紙回収ラインにおけるパルパー等の離解設備における離解性について鋭意検討を行い、湿潤裂断長が0.6km前後で大幅に離解性が変化し、0.6km以下であれば離解性に影響を与えないレベルであるが、0.6kmを超えると急激に離解性が悪化することを見出した。よって、本発明では、湿潤裂断長が0.6kmを超えないように、湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤の添加量を調整することが重要である。
【0025】
本発明において、抄紙時の内添薬品としては、樹脂エマルジョンの含浸のためにある程度の湿潤紙力が必要になるため、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂、尿素/ホルマリン樹脂等の湿潤紙力増強剤を使用する。又、湿潤紙力増強剤の他に、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉等の乾燥紙力増強剤を併用することができ、何等制限されるものではないが、薬品歩留の向上、薬品硬化速度の向上の効果によって、湿潤紙力増強剤の添加量を削減することが可能になるため、カチオン系の湿潤紙力増強剤とアニオン系の乾燥紙力増強剤の併用が好ましい。
【0026】
次に本発明の樹脂エマルジョン及び含浸方法について説明する。本発明の再生可能な無塵紙に使用されるエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンは公知の技術により製造される。
【0027】
重合はエチレン加圧下で行われ、最終生成物のエチレン含量は酢酸ビニルに対して5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。5重量%未満では、樹脂が硬いため発塵しやすくなり、本用途である無塵紙には適さない。50重量%を超えると、含浸紙を水で離解した場合に粘着性が発現し、古紙として使用できない。
【0028】
重合時に保護コロイドとして使用するポリビニルアルコールの種類は特に限定されないが、含浸紙の離解性の面からポリ酢酸ビニルのケン化度が85〜90%の部分ケン化ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールの使用量は、酢酸ビニルに対して2〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。2重要%未満では樹脂エマルジョンの機械安定性に問題があり、含浸加工時、ロール上にガムを生じやすい。20重量%を超えると、樹脂エマルジョンの粘度が高くなり製造に困難を要する。又、水相中に存在するフリーのポリビニルアルコールにより紙への含浸性が大幅に悪化する。
【0029】
本発明の再生可能な無塵紙に使用するエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの特徴は、保護コロイドにポリビニルアルコールを使用する点である。重合安定剤としてノニオン性、アニオン性又はカチオン性界面活性剤のみを使用した場合、ポリビニルアルコールを保護コロイドとして使用した場合と比較して、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの粒子径が小さくなり、機械安定性が大幅に低下することで、含浸加工時、ロール上に多量のガムを発生し、使用が困難である。更に、粒子径が小さくなることで樹脂の成膜性が向上し、結果として含浸紙の耐水性が良くなるため、満足する含浸紙の離解性が得られない。以上の問題点を克服できる場合は、必要に応じて他の保護コロイドや各種界面活性剤を少量併用しても良い。他の保護コロイドとしては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、水溶性澱粉等が挙げられる。
【0030】
本発明で使用するポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂への添加剤としては、サイズ性発現効果のあるアクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂エマルジョン、親水性抑制効果のある各種ワックス、高級脂肪酸誘導体、クロム錯塩、ジルコニウム塩、シリコン樹脂等のはっ水剤、スターチ、カゼイン、ワックス類、カルボキシメチルセルロース、ジアルデヒドスターチ、マンナンガラクタン誘導体などの半合成物、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、メラミン/ホルマリン樹脂等の表面サイジング剤が使用できるが、使用するエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンと相溶性が良い物を選択する必要がある。中でも、サイズ性を発現する樹脂ではアクリル酸エステル樹脂、はっ水剤の中ではオレフィン系ワックス、表面サイズ剤では完全鹸化ポリビニルアルコールがエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンとの相溶性良く、サイズ度の微調整も可能であることから特に好ましい。
はっ水剤添加率が多い場合ははっ水性が発現し、カラー印字の悪化やインク吸収が遅いことによるプリンタを汚すトラブルの原因になるだけでなく、離解性が大幅に悪化する。
【0031】
一方、内添紙力増強剤、内添湿潤紙力増強剤の選択、内添サイズ剤の使用により原紙本来のサイズ度を高め、無塵紙のステキヒト・サイズ度をある程度調整することが可能だが、樹脂エマルジョンの浸透性を阻害するため、発塵性が悪化するという欠点を有し、更には実際の樹脂エマルジョンの含浸工程において含浸量の調整ができないため使用できない。
【0032】
樹脂の含浸量は含浸前の基紙100重量部に対して、8〜20重量部であり、好ましくは10〜15重量部である。これより含浸量が少ないと、発塵を抑える効果が十分ではなく、これより多くても発塵を抑える効果は変わらず、樹脂分増加の影響によって離解性は悪化する。樹脂の含浸方法は、オンマシンでのサイズプレス、スプレーによる塗工やオフマシンでのディッピング含浸、各種コーティングマシンなどがあるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の無塵紙はインクジェット適性が良い及び再生可能という問題を解決するものであるが、次の効果も有する。無塵紙や低発塵紙は、樹脂を含浸して製造されるため一般的に不透明度が低く、一般的に70〜78%のレベルにあるため、印刷や筆記した際に次ページが透けて見づらいという問題があった。本発明の無塵紙は、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂を使用しており、不透明度が高いという特徴を持つ。
【0034】
本発明で用いたステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の評価方法は以下の通りである。
【0035】
(ステキヒト・サイズ度)
JIS P−8122に従って測定を行った。
【0036】
(インクジェット適性)
A4サイズに断裁した無塵紙にインクジェットプリンタ(EPSON MJ−3000CU)で、約3cm角のべた塗り、及び大きさを変えた文字パターンを黒とカラーで印字し、べた塗り部分の濃淡ムラと文字印字部分の滲みの状態を評価した。濃淡ムラ、滲み共に5段階評価とし、点数が高い程インクの滲みがなく良好であることを示す。
【0037】
(離解性)
離解性の評価方法は、古紙回収を行なっている製紙工場の評価方法を参考に次のように実施した。
▲1▼ 2cm各に断裁した試験片を絶乾24g分採取し、離解用サンプルとした。
▲2▼ ▲1▼の離解用サンプルを使用して、TAPPI T−227に従って、濃度1.2%、温度20℃の条件で標準離解機によって25分間離解を行った。発泡性の評価として、この時、発泡がない、又は即座に消える場合を「○」、発泡し泡が短時間では消えない場合を「△」、発泡が多く標準離解機のバットから泡が溢れる場合を「×」とした。
▲3▼ ▲2▼で離解したパルプスラリーから60g/m2の手抄きシートを作製し、上下をろ紙ではさみ、130±5℃に調整したシリンダードライヤーにて3分間乾燥を行った。粘着性の評価として、乾燥後の手抄きシートをろ紙から剥離する際に、容易に剥がれる場合を「○」、剥がれるが少し毛羽立ちが出る場合を「△」、剥離が困難な場合を「×」とした。
▲4▼ 6カットのプレートをセットしたフラットスクリーンを使用して、水量10リットル/分、処理時間5分間の条件で、処理▲2▼で離解したパルプスラリーのスクリーン処理を行い、未離解分の割合をリジェクト率として次の式によって算出した。
リジェクト率(%)=リジェクト分の重量(g)/処理したパルプ量(g)
よって、リジェクト率が小さい程、離解性は良好である。
【0038】
(発塵性)
試験片をクリーンベンチ内で、揉んだとき、擦ったとき、引裂いたときの3パターンの発塵量を測定した。試験条件を以下に記す。それぞれの試験条件で発生する塵を吸引管で集め、光散乱型微粒子計数計(リオン製、KC−14)で、吸引体積0.02立方フィート中の存在する0.3μm以上の塵の数を記録した。揉み、擦り試験は5個/0.02立方フィート以下、引裂試験は10個/0.02立方フィート以下であれば発塵性が実用レベルの低さであるといえる。
<揉み試験>A4サイズ(29.7×21cm)の試験片を5秒毎に1回、2分間揉む。
<擦り試験>直径14cmの円型と10cm角に切った試験片を用意する。円形の試験片を円盤に貼り付け、回転数500rpmで回転させる。10cm角の試験片を回転する円盤に貼り付けた試験片と接触させ、2分間擦りつける。
<破り試験>A4サイズの試験片2枚を用意し、長さ21cmの片を20mm間隔で20mm分破る。1枚で9カ所破るので合計18カ所の切れ目を2分間で引き裂く。
【0039】
(不透明度)
JIS P8138に従って測定した。
【0040】
本発明を下記実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において表示する「%」は、特記のないかぎり「固形分重量%」を示す。
【0041】
実施例、比較例に使用した無塵紙用の原紙の製造方法は次の通り。針葉樹クラフトパルプ30%と広葉樹晒クラフトパルプ70%をカナダ標準ろ水度400mlまで叩解し、酸化チタンを対原料固形分1%、WS−570(日本PMC社製、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、湿潤紙力増強剤)を対パルプ0.1%、ポリストロン117(荒川化学工業社製、ポリアクリルアミド系紙力剤)を対パルプ0.05%添加し、通常に抄紙して、64g/m2の原紙を得た。
【0042】
実施例、比較例に使用したエチレン/酢酸ビニル共重合体の製造方法は次の通り。イオン交換水780gに部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度88、重合度500)42gと部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度88、重合度1700)18gを分散させ、加熱溶解したものを3Lの高圧反応釜に仕込んだ。エチレンで釜内の空気を置換した後、エチレン圧を3.9MPaに調整し、攪拌しながら65℃に昇温した。酢酸ビニルモノマー98g、2%の過硫酸アンモニウム水溶液20g及び2%の重亜硫酸ナトリウム16gを釜内にフィードし、プレ反応を行った。プレ反応終了後、酢酸ビニルモノマー882g、2%の過硫酸アンモニウム水溶液80g及び2%重亜硫酸ナトリウム64gを一定の速度で5時間添加した。反応終了まで、釜の内温を65℃、エチレン圧を3.9MPaに保ち、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)を作製した。エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)の不揮発分は56%、Tg0℃、エチレン含量は酢酸ビニルに対して20重量%であった。
エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)で用いた部分ケン化ポリビニルアルコールの代わりにHLB18.9のノニオン性界面活性剤(花王製エマルゲン985)40g、アニオン性界面活性剤(花王製レベノールWZ)62gを使用した以外はエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)と同様の方法で反応を行い、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(B)を作製した。エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の不揮発分は54%、Tg10℃、エチレン含量は酢酸ビニルに対して19重量%であった。
【0043】
実施例1
前記坪量64g/m2の原紙にポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)95%とアクリル酸エステル樹脂(昭和高分子株式会社製AM−507SG)5%を配合した樹脂液をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
前記坪量64g/m2の原紙にポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)90%と完全けん化ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA117)10%を配合した樹脂液をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
前記坪量64g/m2の原紙にポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)97%とオレフィン系樹脂(大和化学工業株式会社製、コートサイザーMS115)3%を配合した樹脂液をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
前記坪量64g/m2の原紙に乳化剤として界面活性剤を使用したエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(B)をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0047】
比較例2
前記坪量64g/m2の原紙にポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(A)90%とアクリル酸エステル樹脂(昭和高分子株式会社製AM−507SG)10%を配合した樹脂液をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
比較例3
前記坪量64g/m2の原紙にアクリル酸エステル樹脂(昭和高分子株式会社製AM−507SG)をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
比較例4
前記坪量64g/m2の原紙にアクリル酸エステル樹脂(昭和高分子株式会社製AM−277)をディッピング含浸機にて含浸量が9g/m2になるように含浸し無塵紙を得た。この無塵紙のステキヒト・サイズ度、インクジェット適性、離解性、発塵性、不透明度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(評価)
表1から明らかなように、実施例1〜3で得られる無塵紙は発塵性も良好で不透明度も高く、インクジェット適性においては黒、カラー共に優れている。さらに離解性においてはリジェクト率22%以下と良好で実際の古紙パルプ製造においては問題のないのレベルである。
【0052】
【発明の効果】
前述したごとく、本発明は、無塵紙の含浸加工に使用する主な樹脂としてポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂を使用し、ステキヒト・サイズ度を一定範囲内に調整することにより、発塵性が良好で、インクジェット適性と離解性の両特性が良好な無塵紙あるいは低発塵紙を提供するという効果を奏する。
Claims (2)
- 天然パルプを主成分とする基紙に樹脂エマルジョンを含浸してなる無塵紙において、無塵紙の含浸加工に使用する樹脂の主な配合組成がポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂であり、JIS P−8122で規定されているステキヒト・サイズ度が8〜40秒以下であるインクジェット記録用及び再生可能な無塵紙。
- 前記ポリビニルアルコールを保護コロイドとするエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂にはっ水剤、表面サイズ剤、又はサイズ性発現効果のある樹脂エマルジョンの少なくとも1種以上を配合したことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用及び再生可能な無塵紙。
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