JP4092739B2 - アゾエステル化合物の新規な製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子化合物製造に於ける重合開始剤として有用なアゾグアニル化合物やアゾエステル化合物の重要中間体であるアゾイミノエーテル塩酸塩の製造方法と、このアゾイミノエーテル塩酸塩を用いたアゾエステル化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アゾイミノエーテル塩酸塩の製造方法としては、相当するアゾニトリル化合物を非水反応系中で、アルコール類及び塩化水素と反応させる方法(米国特許第2599299号)が知られており、ここでは、使用アルコール類に対して飽和となるように塩化水素を導入させ、反応を行っている。しかし、この方法では、反応が急激に進行し、小実験スケールに於いてすら、冷却等による反応の制御は極めて困難であり、スケールアップによる工業的スケールでの製造では大きな危険性が伴い、大規模生産が不可能な状態であった。
【0003】
そこで、この問題点を解決する手段として、塩化水素の溶解性が低い溶媒とアルコール類の混合溶媒中に塩化水素を導入する方法(特公昭58−2230号公報)や、酸を導入したアルコール類溶液中にアゾビスニトリル類を逐次添加する方法(特開昭64−26545号公報)が開示されている。しかしながら、これらの方法に於いてもなお、問題点を有していた。
【0004】
即ち前者では、反応終了後に反応系からトルエン等の塩化水素溶解性の低い溶媒を完全に除去することが困難であるため、例えば、得られたイミノエーテル塩をそのまま加水分解してアゾエステル化合物を製造する場合などには、アゾエステル化合物が、残存するトルエン等に溶解するため、これを除く操作が必要となり、単離回収操作が煩雑になるという問題点がある。
【0005】
又、後者では、アゾビスニトリル類を、粉末状態或いはアルコール類やその他の溶媒を用いて溶液ないしはスラリー状にして逐次反応系に添加する必要があるが、大規模生産に於いて粉末状固体を反応系に逐次添加することは作業性が悪い上に、作業員が常に系内の塩化水素に曝される危険性を伴うため実用的ではなく、又アゾビスニトリル類は、アルコール類やその他の一般的な溶媒には溶けにくいため、スラリー状で添加するとしても投入装置内で結晶が閉塞し、一定速度で結晶を添加できず反応を十分に制御できないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き状況に鑑みなされたなされたもので、トルエン等の塩化水素溶解性の低い溶媒を使用せず、反応の制御が容易で、且つ作業性が良く危険性の少ないアゾイミノエーテル塩酸塩及びアゾエステル化合物の製造方法を提供することをその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)一般式[1]
【0008】
【化5】
【0009】
(式中、R1,R2,R3及びR4は、夫々独立して、置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していても良いフェニル基を示し、R1とR2及び/又はR3とR4とがアルキレン鎖を形成する場合を含む。)で表されるアゾニトリル化合物をR5-OH(R5は低級アルキル基を示す。)で表されるアルコール類に懸濁させ、これに塩化水素を、その濃度が反応系中のアルコール類に対して飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らない値に維持されるように導入して反応を行わせる事を特徴とする、一般式[2]
【0010】
【化6】
【0011】
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は前記に同じ。)で表される、アゾイミノエーテル塩酸塩の製造方法、及び
(2)上記(1)の方法により、一般式[2]
【0012】
【化7】
【0013】
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は前記に同じ。)で表される、アゾイミノエーテル塩酸塩を製造し、次いでこれを加水分解することを特徴とする一般式[3]
【0014】
【化8】
【0015】
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は前記と同じ。)で表されるアゾエステル化合物の製造方法、の発明である。
【0016】
即ち、本発明者等は、上記の問題点を解決するため、アゾイミノエーテル塩酸塩を生成する反応に必要な塩化水素の濃度(使用するアルコール類に対する)について種々検討した。その結果、塩化水素の濃度が反応系中に存在するアルコール類に対して30%W/W未満であると、反応が完結しない。また、塩化水素の濃度が30%W/W以上であれば反応は完結するが、飽和状態に近づくほど反応が激しくなり反応の制御が難しくなる。更に塩化水素を過剰に導入した場合は、反応が急激に進行することは言うまでもなく、過剰な塩化水素により作業環境が著しく悪化してしまう。即ち、イミノエーテル化反応を安全に制御しつつ進行及び完結させるには、反応開始時から反応終了時にかけての反応系内に於いて、反応に使われるアルコール類を考慮しても、塩化水素の濃度を系内に存在するアルコール類に対して飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らないように導入すれば良いということを見出し本発明を完成させるに到った。
【0017】
一般式[1]及び[2]に於いて、R1,R2,R3及びR4で示されるアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でもさらには環状の何れにても良く、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,s-ブチル基,t-ブチル基,n-ペンチル基,イソペンチル基,2-メチルブチル基,1-メチルブチル基,ネオペンチル基,1-エチルプロピル基,n-ヘキシル基,イソヘキシル基,シクロプロピル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基等が挙げられる。また、その置換基としては反応に不活性なものであれば如何なるものでも良いが、例えばフェニル基,トリル基,キシリル基等が挙げられる。置換基を有していても良いフェニル基としては、例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基等が挙げられる。アルキレン鎖としては、直鎖状でも分枝状でも何れにても良く、例えばn−プロピレン基,n−ブチレン基,n−ペンチレン基等の好ましくは炭素数3〜10更に好ましくは3〜6の直鎖状アルキレン基、例えば、イソブチレン基,2−エチルプロピレン基等の好ましくは炭素数4〜10更に好ましくは4〜6の分枝状アルキレン基等が挙げられる。
【0018】
又、R5-OHで表されるアルコール類におけるR5で示される低級アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも何れにても良いが、好ましくは炭素数1〜6の低級アルキル基、より好ましくはメチル基,エチル基,プロピル基、更に好ましくはメチル基が挙げられる。
このアルコール類は反応物質であると同時に反応溶媒としても働くため、他に反応溶媒を使用しなくとも良い。
尚、反応溶媒という点を考慮するとアルコール類の使用量はアゾニトリル化合物の重量に対して1〜2倍量程度は必要である。
【0019】
本発明方法に於いては、先ずアゾニトリル化合物をアルコール類に懸濁させ、次いでこれに塩化水素を導入する。
塩化水素の導入方法は、反応開始時から反応終了時までの反応系内の塩化水素の濃度が、存在するアルコール類に対して飽和未満且つ30%W/Wを下回らないような量を反応開始時に反応系に添加しても良いし、或いは反応開始時に、その時の塩化水素の濃度が反応系内のアルコール類に対して飽和未満且つ30%W/Wを下回らないような量を先ず添加して反応を行い、更に反応の進行に合わせて、塩化水素の濃度が飽和未満且つ30%W/Wを下回らないよう適宜塩化水素の導入を繰り返すのも良い。即ち、導入方法の如何を問わず、反応系内のアルコール類に対する塩化水素の濃度が反応開始時から反応終了後までの間、常に飽和未満且つ30%W/Wを下回らないよう、好ましくは30%W/W以上ではあるが30%W/Wにより近い濃度で保たれていればよい。
【0020】
又、反応系内への塩化水素の導入時の温度は、通常0℃〜30℃、好ましくは0℃〜20℃であり、導入後の反応温度は、通常0℃〜40℃、好ましくは10℃〜30℃である。
【0021】
反応後は、常法に従って後処理を行うことによりアゾイミノエーテル塩酸塩を単離すればよい。また、かくして得られたアゾイミノエーテル塩酸塩を単離後或いは単離せずに、常法に従いアンモニア或いはアミン類と反応させれば各種アミジン類を高収率、高品質(残存溶媒を殆ど含まない)で得ることができるし、更に、前記アゾイミノエーテル塩酸塩を単離後或いは単離することなく反応液のままで、加水分解処理に付すことにより、対応するアゾエステル化合物を容易に且つ高収率で得ることができる。
尚、加水分解に用いる水の使用量は副生成物として析出する塩化アンモニウムが全て溶解する量であれば良い。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0022】
【実施例】
実施例1
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素120g(塩化水素濃度37.5%W/W,反応終了時の塩化水素濃度30%W/W)を導入した。25〜30℃で6時間攪拌を行ったところ、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることが確認できた。次いで反応液を15℃に冷却して一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−プロピオネート)の黄色液体140gを得た。(収率83%)
【0023】
実施例2
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素98g(塩化水素濃度33%W/W)を導入した。25〜30℃で3時間攪拌を行った後、塩化水素22gを再び導入(反応終了時の塩化水素濃度30%W/W)し4時間攪拌を行った。2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることを確認後、反応液を15℃に冷却して一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−プロピオネート)の黄色液体135gを得た。(収率80%)
【0024】
実施例3
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素98g(塩化水素濃度33%W/W)を導入した。25〜30℃で1.5時間攪拌した後、塩化水素11gを再び導入した。更に25〜30℃で1.5時間攪拌した後、塩化水素11gを導入(反応終了時の塩化水素濃度30%)し4時間攪拌を行った。2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることを確認後、反応液を15℃に冷却し一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の黄色液体133gを得た。(収率79%)
【0025】
比較例1
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素180g(飽和濃度)を導入した。途中、反応が急激に進行し、発熱を抑えるために大量の氷水を用いて冷却したが温度制御ができず、内温が40℃以上に上昇し多量の塩化水素の揮散が認められた。塩化水素導入後、6時間攪拌反応させた後、反応液を水420gに注入して加水分解を行い、水層を除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の黄色液体120gを得たが、この黄色液体中には原料の2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)が8%存在していた。
【0026】
比較例2
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素105g(塩化水素濃度34.4%W/W、反応終了時の塩化水素濃度25%)を導入した。25〜30℃で6時間攪拌を行ったところ、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることが確認できた。次いで15℃に冷却して一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の黄色液体128gを得たが、得られた黄色液体中には未反応の2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)が5%残存していた。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
(1) 従来、アルコール類に対する塩化水素の濃度を飽和としていたが、本発明では、反応時の反応系中の塩化水素濃度を、飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らないように調整すること、好ましくは30%W/W以上ではあるが30%W/Wにより近い濃度に調整することで反応が円滑に進行及び完結し、且つ反応を容易に制御できる。
(2)塩化水素の濃度を、アルコール類に対して30%W/Wにより近い濃度に調整することで塩化水素の使用量を大幅に減らすことができ作業環境が著しく改善されると共に、トルエン等他の溶媒の使用が不必要となった。
(3)本発明では、原料であるアゾニトリル化合物をアルコール類に懸濁させ、そこに塩化水素を導入するという方法であるため、アゾニトリル化合物を固体若しくはスラリー状で反応系に添加する際にみられた投入装置内での結晶による閉塞が生じない。
(4)反応系にはトルエン等の塩化水素の溶解性の低い溶媒が含まれていない為、イミノエーテル化反応終了後は、反応液をそのまま加水分解処理に付すことによりアゾエステル化合物の単離回収に当たって煩雑な操作が回避できる。
上記のような多くの優れた効果が期待できるため、本発明は工業的に極めて有用なアゾイミノエーテル塩酸塩及びアゾエステル化合物の製造方法であるということができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子化合物製造に於ける重合開始剤として有用なアゾグアニル化合物やアゾエステル化合物の重要中間体であるアゾイミノエーテル塩酸塩の製造方法と、このアゾイミノエーテル塩酸塩を用いたアゾエステル化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アゾイミノエーテル塩酸塩の製造方法としては、相当するアゾニトリル化合物を非水反応系中で、アルコール類及び塩化水素と反応させる方法(米国特許第2599299号)が知られており、ここでは、使用アルコール類に対して飽和となるように塩化水素を導入させ、反応を行っている。しかし、この方法では、反応が急激に進行し、小実験スケールに於いてすら、冷却等による反応の制御は極めて困難であり、スケールアップによる工業的スケールでの製造では大きな危険性が伴い、大規模生産が不可能な状態であった。
【0003】
そこで、この問題点を解決する手段として、塩化水素の溶解性が低い溶媒とアルコール類の混合溶媒中に塩化水素を導入する方法(特公昭58−2230号公報)や、酸を導入したアルコール類溶液中にアゾビスニトリル類を逐次添加する方法(特開昭64−26545号公報)が開示されている。しかしながら、これらの方法に於いてもなお、問題点を有していた。
【0004】
即ち前者では、反応終了後に反応系からトルエン等の塩化水素溶解性の低い溶媒を完全に除去することが困難であるため、例えば、得られたイミノエーテル塩をそのまま加水分解してアゾエステル化合物を製造する場合などには、アゾエステル化合物が、残存するトルエン等に溶解するため、これを除く操作が必要となり、単離回収操作が煩雑になるという問題点がある。
【0005】
又、後者では、アゾビスニトリル類を、粉末状態或いはアルコール類やその他の溶媒を用いて溶液ないしはスラリー状にして逐次反応系に添加する必要があるが、大規模生産に於いて粉末状固体を反応系に逐次添加することは作業性が悪い上に、作業員が常に系内の塩化水素に曝される危険性を伴うため実用的ではなく、又アゾビスニトリル類は、アルコール類やその他の一般的な溶媒には溶けにくいため、スラリー状で添加するとしても投入装置内で結晶が閉塞し、一定速度で結晶を添加できず反応を十分に制御できないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き状況に鑑みなされたなされたもので、トルエン等の塩化水素溶解性の低い溶媒を使用せず、反応の制御が容易で、且つ作業性が良く危険性の少ないアゾイミノエーテル塩酸塩及びアゾエステル化合物の製造方法を提供することをその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)一般式[1]
【0008】
【化5】
【0009】
(式中、R1,R2,R3及びR4は、夫々独立して、置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していても良いフェニル基を示し、R1とR2及び/又はR3とR4とがアルキレン鎖を形成する場合を含む。)で表されるアゾニトリル化合物をR5-OH(R5は低級アルキル基を示す。)で表されるアルコール類に懸濁させ、これに塩化水素を、その濃度が反応系中のアルコール類に対して飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らない値に維持されるように導入して反応を行わせる事を特徴とする、一般式[2]
【0010】
【化6】
【0011】
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は前記に同じ。)で表される、アゾイミノエーテル塩酸塩の製造方法、及び
(2)上記(1)の方法により、一般式[2]
【0012】
【化7】
【0013】
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は前記に同じ。)で表される、アゾイミノエーテル塩酸塩を製造し、次いでこれを加水分解することを特徴とする一般式[3]
【0014】
【化8】
【0015】
(式中、R1,R2,R3,R4及びR5は前記と同じ。)で表されるアゾエステル化合物の製造方法、の発明である。
【0016】
即ち、本発明者等は、上記の問題点を解決するため、アゾイミノエーテル塩酸塩を生成する反応に必要な塩化水素の濃度(使用するアルコール類に対する)について種々検討した。その結果、塩化水素の濃度が反応系中に存在するアルコール類に対して30%W/W未満であると、反応が完結しない。また、塩化水素の濃度が30%W/W以上であれば反応は完結するが、飽和状態に近づくほど反応が激しくなり反応の制御が難しくなる。更に塩化水素を過剰に導入した場合は、反応が急激に進行することは言うまでもなく、過剰な塩化水素により作業環境が著しく悪化してしまう。即ち、イミノエーテル化反応を安全に制御しつつ進行及び完結させるには、反応開始時から反応終了時にかけての反応系内に於いて、反応に使われるアルコール類を考慮しても、塩化水素の濃度を系内に存在するアルコール類に対して飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らないように導入すれば良いということを見出し本発明を完成させるに到った。
【0017】
一般式[1]及び[2]に於いて、R1,R2,R3及びR4で示されるアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でもさらには環状の何れにても良く、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,s-ブチル基,t-ブチル基,n-ペンチル基,イソペンチル基,2-メチルブチル基,1-メチルブチル基,ネオペンチル基,1-エチルプロピル基,n-ヘキシル基,イソヘキシル基,シクロプロピル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基等が挙げられる。また、その置換基としては反応に不活性なものであれば如何なるものでも良いが、例えばフェニル基,トリル基,キシリル基等が挙げられる。置換基を有していても良いフェニル基としては、例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基等が挙げられる。アルキレン鎖としては、直鎖状でも分枝状でも何れにても良く、例えばn−プロピレン基,n−ブチレン基,n−ペンチレン基等の好ましくは炭素数3〜10更に好ましくは3〜6の直鎖状アルキレン基、例えば、イソブチレン基,2−エチルプロピレン基等の好ましくは炭素数4〜10更に好ましくは4〜6の分枝状アルキレン基等が挙げられる。
【0018】
又、R5-OHで表されるアルコール類におけるR5で示される低級アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも何れにても良いが、好ましくは炭素数1〜6の低級アルキル基、より好ましくはメチル基,エチル基,プロピル基、更に好ましくはメチル基が挙げられる。
このアルコール類は反応物質であると同時に反応溶媒としても働くため、他に反応溶媒を使用しなくとも良い。
尚、反応溶媒という点を考慮するとアルコール類の使用量はアゾニトリル化合物の重量に対して1〜2倍量程度は必要である。
【0019】
本発明方法に於いては、先ずアゾニトリル化合物をアルコール類に懸濁させ、次いでこれに塩化水素を導入する。
塩化水素の導入方法は、反応開始時から反応終了時までの反応系内の塩化水素の濃度が、存在するアルコール類に対して飽和未満且つ30%W/Wを下回らないような量を反応開始時に反応系に添加しても良いし、或いは反応開始時に、その時の塩化水素の濃度が反応系内のアルコール類に対して飽和未満且つ30%W/Wを下回らないような量を先ず添加して反応を行い、更に反応の進行に合わせて、塩化水素の濃度が飽和未満且つ30%W/Wを下回らないよう適宜塩化水素の導入を繰り返すのも良い。即ち、導入方法の如何を問わず、反応系内のアルコール類に対する塩化水素の濃度が反応開始時から反応終了後までの間、常に飽和未満且つ30%W/Wを下回らないよう、好ましくは30%W/W以上ではあるが30%W/Wにより近い濃度で保たれていればよい。
【0020】
又、反応系内への塩化水素の導入時の温度は、通常0℃〜30℃、好ましくは0℃〜20℃であり、導入後の反応温度は、通常0℃〜40℃、好ましくは10℃〜30℃である。
【0021】
反応後は、常法に従って後処理を行うことによりアゾイミノエーテル塩酸塩を単離すればよい。また、かくして得られたアゾイミノエーテル塩酸塩を単離後或いは単離せずに、常法に従いアンモニア或いはアミン類と反応させれば各種アミジン類を高収率、高品質(残存溶媒を殆ど含まない)で得ることができるし、更に、前記アゾイミノエーテル塩酸塩を単離後或いは単離することなく反応液のままで、加水分解処理に付すことにより、対応するアゾエステル化合物を容易に且つ高収率で得ることができる。
尚、加水分解に用いる水の使用量は副生成物として析出する塩化アンモニウムが全て溶解する量であれば良い。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0022】
【実施例】
実施例1
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素120g(塩化水素濃度37.5%W/W,反応終了時の塩化水素濃度30%W/W)を導入した。25〜30℃で6時間攪拌を行ったところ、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることが確認できた。次いで反応液を15℃に冷却して一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−プロピオネート)の黄色液体140gを得た。(収率83%)
【0023】
実施例2
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素98g(塩化水素濃度33%W/W)を導入した。25〜30℃で3時間攪拌を行った後、塩化水素22gを再び導入(反応終了時の塩化水素濃度30%W/W)し4時間攪拌を行った。2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることを確認後、反応液を15℃に冷却して一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−プロピオネート)の黄色液体135gを得た。(収率80%)
【0024】
実施例3
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素98g(塩化水素濃度33%W/W)を導入した。25〜30℃で1.5時間攪拌した後、塩化水素11gを再び導入した。更に25〜30℃で1.5時間攪拌した後、塩化水素11gを導入(反応終了時の塩化水素濃度30%)し4時間攪拌を行った。2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることを確認後、反応液を15℃に冷却し一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の黄色液体133gを得た。(収率79%)
【0025】
比較例1
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素180g(飽和濃度)を導入した。途中、反応が急激に進行し、発熱を抑えるために大量の氷水を用いて冷却したが温度制御ができず、内温が40℃以上に上昇し多量の塩化水素の揮散が認められた。塩化水素導入後、6時間攪拌反応させた後、反応液を水420gに注入して加水分解を行い、水層を除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の黄色液体120gを得たが、この黄色液体中には原料の2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)が8%存在していた。
【0026】
比較例2
2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)120gをメタノール200gに懸濁し、氷冷下18℃で塩化水素105g(塩化水素濃度34.4%W/W、反応終了時の塩化水素濃度25%)を導入した。25〜30℃で6時間攪拌を行ったところ、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−メトキシ−2−メチルプロパン)2塩酸塩が生成していることが確認できた。次いで15℃に冷却して一夜放置した後、水420gに注入して加水分解を行い、水層を分液除去してジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の黄色液体128gを得たが、得られた黄色液体中には未反応の2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)が5%残存していた。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
(1) 従来、アルコール類に対する塩化水素の濃度を飽和としていたが、本発明では、反応時の反応系中の塩化水素濃度を、飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らないように調整すること、好ましくは30%W/W以上ではあるが30%W/Wにより近い濃度に調整することで反応が円滑に進行及び完結し、且つ反応を容易に制御できる。
(2)塩化水素の濃度を、アルコール類に対して30%W/Wにより近い濃度に調整することで塩化水素の使用量を大幅に減らすことができ作業環境が著しく改善されると共に、トルエン等他の溶媒の使用が不必要となった。
(3)本発明では、原料であるアゾニトリル化合物をアルコール類に懸濁させ、そこに塩化水素を導入するという方法であるため、アゾニトリル化合物を固体若しくはスラリー状で反応系に添加する際にみられた投入装置内での結晶による閉塞が生じない。
(4)反応系にはトルエン等の塩化水素の溶解性の低い溶媒が含まれていない為、イミノエーテル化反応終了後は、反応液をそのまま加水分解処理に付すことによりアゾエステル化合物の単離回収に当たって煩雑な操作が回避できる。
上記のような多くの優れた効果が期待できるため、本発明は工業的に極めて有用なアゾイミノエーテル塩酸塩及びアゾエステル化合物の製造方法であるということができる。
Claims (5)
- 反応開始時から反応終了時までの反応系内に於ける塩化水素の濃度が、存在するアルコール類に対して、飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らない値に維持されるように、反応開始時に塩化水素の濃度を調整する請求項1に記載の方法。
- 反応開始時に反応系内に於けるその濃度が、存在するアルコール類に対して飽和未満であり且つ30%W/Wを下回らないように塩化水素を存在させ、且つ反応進行に伴い、必要に応じて塩化水素を導入してその濃度を飽和未満且つ30%W/Wを下回らない値に維持する請求項1に記載の方法。
- イミノエーテル化反応の反応液をそのまま加水分解処理に付す請求項4に記載の製造方法。
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