JP4092546B2 - アクリルシラップおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリルシラップとその製造法、及びアクリルシラップを使用して得られるアクリル樹脂成形品に関するものであり、さらに詳しくは、人工大理石の製造に適した耐衝撃性を有するアクリルシラップとその製造方法、及び耐衝撃性に優れたアクリル樹脂成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、アクリル樹脂の市場拡大に伴い、建材の内装部材等としても用途開発が行われ、例えばアクリル系人工大理石が広く用いられている。
アクリル系人工大理石は、通常メタクリル酸メチルを主成分とした重合性粘調液体(アクリルシラップ)に、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、架橋剤、装飾材および重合開始剤等を混合し、セルキャスト法または連続キャスト法により所望の形状に重合固化せしめた後、所定の寸法に切断することにより製造されている。これらのアクリル系人工大理石の具体的用途として、キッチンカウンター、洗面化粧台、バスタブ、床材、壁材等が挙げられる。
【0003】
アクリル系人工大理石は、高級感、意匠性において高い評価を得ているが、その反面、脆く、衝撃に弱いといった欠点を有している。このような人工大理石から製造される成形品は、輸送時や加工組み立て時あるいは使用時などに破損するおそれがあり、衝撃による成形品の破損防止対策を講じる必要がある。
このような人工大理石の耐衝撃性を改善すれば、該物品の運搬時や各種加工時等の取り扱い性に当たっての不都合を軽減でき、さらに該成形品の厚みを少なくすることが可能となる。すなわち人工大理石の軽量化を図ることによるコストおよび輸送運搬費等の低減を達成することが可能となる。従って、従来のアクリル系人工大理石を改良して、耐衝撃性の優れたアクリル系人工大理石を開発することが望まれていた。
【0004】
プラスチック成形品に耐衝撃性を付与するために、樹脂組成物中にゴム状重合体を配合して重合することが一般的に行われている。このようなゴム状重合体の配合によって耐衝撃性を付与された熱可塑性樹脂として、ABS樹脂、HIPS樹脂が広く知られており、ゴム状重合体(以下、ゴム成分と呼ぶことがある)を単量体に溶解して重合する方法、すなわちゴム成分にアクリロニトリル、スチレンなどの単量体をグラフト重合することにより製造されている。また、ゴム成分を配合して重合により耐衝撃性を向上させるためには、一般に、グラフト化されたゴム成分(グラフト化ゴム)が樹脂中に粒状分散することが必要である。例えば、上述したゴム成分の単量体溶液を用いて塊状重合を行う場合、この単量体溶液が重合の進行に伴って相分離し、かつ、ある重合転化率を超えると相転換を起こすことによって、グラフト化ゴムが粒状に分散することが知られている。このように分散したグラフト化ゴム粒子の形状や大きさが、製品樹脂の耐衝撃性、透明性、加工性などに影響を及ぼす。塊状重合法で製造されたABS樹脂やHIPSでは、ゴム相の中に樹脂相を包含した特殊なミクロ構造を形成している。
【0005】
上記のようなグラフト化ゴムによる耐衝撃性の向上は、アクリルシラップを用いたアクリル樹脂の製造にも試みられており、例えば特公昭55−25215号公報には、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体にゴム状重合体を溶解せしめ、回分式塊状重合によりゴム強化アクリルシラップを合成し、減圧下にて残留単量体を除去することにより、ゴム強化アクリル樹脂を製造する方法が開示されている。ゴム状重合体としては、室温においてゴム状を呈しており且つ単量体とグラフト共重合可能な物質、例えばポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体などが用いられる。
【0006】
しかしながら、上記の方法でゴム強化アクリルシラップを合成する場合、反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために反応の制御が困難である。つまり、ゲル効果と呼ばれる重合の異常加速現象が特に顕著となり、反応系が暴走して反応器内の内容物が急激に固化してしまったり、反応器の内壁面に重合体が付着して徐々に成長し且つ不溶性の重合体に変化して反応器内を閉塞させるなど、いずれも安定な運転を不可能にする問題が発生する。また、一旦重合開始剤を加えた後に昇温を行い還流下で反応させるため、昇温速度や還流量、僅かな温度変化の影響などにより安定した製品の製造を行うことは困難である。
【0007】
上記問題点を改善するため、例えば、特開昭55−147514号公報には、連続流通式塊状重合によるゴム強化アクリルシラップを製造する方法が開示されている。この製造方法では、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体にゴム状重合体を溶解した重合原料とラジカル重合開始剤を溶解した単量体原料とを単一の反応槽に連続的に供給し、溶液を連続的に攪拌しながら、温度を90℃〜200℃に、平均滞留時間を0.5〜30分に制御して重合を行うことにより、ゴム強化アクリルシラップが得られる。ゴム状重合体としてはポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどが用いられる。しかしながら、この方法では、反応槽が常に満液に満たされているため、反応槽の内壁面に重合物が付着して徐々に成長するといった問題が発生する。さらに重合温度が高いために低分子量の共重合体が多く生成し、この結果、このようなアクリルシラップから得られたアクリル樹脂を成形加工すると、樹脂の変色や成形を引き起こしてしまう。
【0008】
また特開平09―302010号公報には、アクリルシラップ中にゴム状重合体を添加し、高速攪拌機を用いて10000rpm程度の攪拌速度で撹拌して、ゴム状重合体を粒子径が5nm〜800μmの粒子として分散させることにより、アクリル樹脂製造における硬化時の体積収縮率を小さくする方法が開示されている。この方法によれば、ゴム状重合体がアクリルシラップ中に分散しているが、グラフト化されていないため(仮にゴム状重合体がグラフト化されたとしても、極めてわずかである)、硬化時の収縮率を小さくするという利点はあるものの、耐衝撃性を向上させることができない。即ち、ゴム状重合体の粒子の界面接着性が低く、界面剥離が生じてしまうからである。またアクリル樹脂表面に分散したゴム状重合体が析出し、この結果、樹脂の表面硬度が低下するといった問題も生じる。
【0009】
さらに、ゴム状重合体をアクリルシラップに単に溶解させる場合には、完全に溶解するまでに長時間を要したり、静置時に徐々にアクリルシラップとゴム状重合体とが分離を起こし不均一となるといったシラップの保存安定性に問題が生じる。このようなゴム状重合体を溶解したシラップを使用し、例えばアクリル樹脂板を作製すると、耐衝撃性向上が全く認められないばかりか、ゴム状重合体の無添加品と比較して表面硬度が低下するといった問題も生じる。
【0010】
このように、耐衝撃性が向上したアクリル樹脂の製造に適したゴム強化アクリルシラップを、回分式塊状重合法や連続流通式塊状重合法などを用いて製造する方法が従来から提案されているものの、最終的に得られるアクリル樹脂の耐衝撃性が満足する程度に向上するには至っておらず、また、簡便な装置を用いて安定した品質のゴム強化アクリルシラップを安定して製造する方法は未だ開発されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来法の問題点を解決し、人工大理石の製造に適した耐衝撃性を有するアクリルシラップとその製造方法、及び耐衝撃性に優れたアクリル樹脂成形品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アクリルシラップを製造する際に、ビニル単量体にゴム状重合体を配合していわゆる半回分法により重合を行うことにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、(i)少なくとも85重量%のメタクリル酸メチルを含有するビニル単量体(A)に、ゴム状重合体(B)を溶解して原料液を調製し、( ii )前記原料液を非酸化性雰囲気中で加熱し、次いで、還流下で該原料液に連鎖移動剤を添加し、( iii )連鎖移動剤の添加後、還流下において、少なくとも85重量%のメタクリル酸メチルを含有する後添加用のビニル単量体(A’)と、重合開始剤とを0.5〜8時間かけて連続的または分割して後添加することで重合を行い、( iv )後添加用のビニル単量体と重合開始剤との添加終了後、さらに還流を継続し0.01〜10時間加熱を続行して重合を行い、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量が3万〜200万の高重合物(C)を得る、工程からなることを特徴とするアクリルシラップの製造方法に関する発明である。
【0014】
また本発明は、前記製造方法により得られるアクリルシラップに関する発明である。
【0015】
さらに本発明は、樹脂成分として前記アクリルシラップを使用して得られるアクリル樹脂成形品に関する発明である。
【0016】
本発明においては、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル単量体に、ゴム状重合体を溶解することにより原料液を調製し、この原料液に、予め、還流下で連鎖移動剤の添加を行っておき、この状態で、残りのビニル単量体及び重合開始剤を一定速度で添加する、いわゆる半回分式重合により重合が行われる。このような重合の際に、ゴム状重合体にビニル単量体が重合する、いわゆるグラフト重合により、グラフト化されたゴム状重合体(グラフト化ゴム)が生成するが、このグラフト化ゴムのグラフト相は単量体成分との親和性が良好である。従って、得られるアクリルシラップ中には、上記のグラフト化ゴムの粒子が均一に安定して分散され、しかも、このようなアクリルシラップから製造される成形品においては、アクリル樹脂相と上記のグラフト化ゴムとの密着性が良好であり、優れた耐衝撃性を示す。更に、アクリルシラップ中に生成した上記グラフト化ゴムは分岐度が高いという特性を有しており、このようなグラフト化ゴムの高い分岐度も関連して、最終的に得られるアクリル樹脂成形品の耐衝撃性を一層向上させることができる。例えば、このアクリルシラップに充填剤、架橋剤および硬化剤などを添加して成形することによって得られる人工大理石は、その本来の特性が損なわれることなく、優れた耐衝撃性を示す。
【0017】
上記半回分法により得られるグラフト化ゴムの分岐度は、回分法又は連続重合法により得られるものと比較して、グラフト化ゴムの分岐度は、極めて高い。
グラフト化ゴムの分岐度は、GPC−MALLS測定により算出される。
RMS半径とモル分子量とを両対数プロットして得られる直線(以下、「RMS半径−モル分子量両対数直線」ということがある)の傾きにより示される。この傾きが0.33、0.50及び1.00(nm/(g/mol))のとき、それぞれ、分子鎖が球状、ランダムコイル状、線状に対応し、この傾きが小さいほど、分岐度が高いこと、即ち、ゴム一分子に形成されるグラフト鎖の数が多いことを意味する。本発明の半回分法で得られる、アクリルシラップ中に生成しているグラフト化ゴムは、後述する実施例から明らかな通り、このようなRMS半径−モル分子量両対数直線の傾きが0.35〜0.65(nm/(g/mol))、好ましくは0.35〜0.55(nm/(g/mol))と低く、極めて高い分岐度を有しており、その結果、このような分岐度を有するアクリル樹脂成形品は耐衝撃性が一層向上するのである。
【0018】
また、アクリルシラップ中の重合成分(C)は、ビニル単量体(A)(主としてメタクリル酸メチル)の高重合物(重量平均分子量が3万〜200万)であり、例えば、アクリルシラップを大量(通常、アクリルシラップ100重量部当り、1000重量部以上)の冷ヘキサン(通常、20℃以下)中に投入し、生じた沈殿物を減圧乾燥してビニル単量体(A)を除去することにより、アクリルシラップ中の重合成分(C)の含有量を算出することができる。この重合成分(C)には、ビニル単量体(A)同士の重合体のみならず、ビニル単量体(A)がゴム状重合体にグラフト重合したグラフト化ゴム(D)も含まれる。このような重合成分(C)は、アクリルシラップの25℃における粘度が0.1〜50Pa・sの範囲となるような量割合でシラップ中に含まれている。
以下に、本発明におけるアクリルシラップの製造について説明する。
【0019】
アクリルシラップの製造
本発明では、半回分法によりアクリルシラップを製造することを特徴とする。
半回分方法によると、供給原料の顕熱と蒸発潜熱を利用することで重合熱の除去を行うことができ、重合開始剤を含んだ単量体成分の添加速度によって重合速度を制御することが可能であるため、回分式塊状重合で見られた重合開始剤一括添加による重合の異常加速重合反応を有効に回避することができる。また汎用の重合装置で合成を行うことができ、連続流通式塊状重合法においてみられた重合条件制御に要する多大な労力及びコストを軽減し、特殊な反応装置を必要とせずに安定した合成が行える利点がある。
【0020】
本発明では、このような半回分法の採用により、得られるアクリルシラップ(C)中に分岐度の高いグラフト化ゴム(D)を生成させることができる。本発明のアクリルシラップ(C)は、このような分岐度の高いグラフト化ゴム(D)を含有しているため、アクリル樹脂成形品の耐衝撃性を顕著に向上させることが可能となるものである。
【0021】
(i)原料液の調製:
本発明においては、少なくともメタクリル酸メチルを含有するビニル単量体(A)に、ゴム状重合体(B)を溶解して原料液を調製する。
上記のビニル単量体(A)の85重量%以上はメタクリル酸メチルであるのが望ましい。即ち、メタクリル酸メチルの量が85重量%よりも少ないと、アクリル樹脂に特有の性質が損なわれるおそれがあり、例えば、このようなアクリル樹脂からなる人工大理石は、その高級感や意匠性が不満足となってしまう。従って、本発明では、メタクリル酸メチルとの組み合わせで、これと共重合可能な他のビニル化合物を使用することができるが、その量は、ビニル単量体の15重量%以下とするのが望ましい。
【0022】
また、メタクリル酸メチルと共重合可能な他のビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸;これら不飽和カルボン酸のエステル(メタクリル酸メチルを除く)、ニトリルアミド、イミド、酸無水物;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニル等のエチレン性二重結合を有する化合物を、それぞれ単独で或いは2種以上の組み合わせで、メタクリル酸メチルと併用することができる。
【0023】
上記のビニル単量体(A)に溶解させるゴム状重合体(B)は、室温においてゴム状を呈している物質であり、メタクリル酸メチルや必要に応じて使用されるその他のビニル単量体とグラフト共重合可能なものである。例えば、アクリルゴム;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系ゴムまたはその水素添加物;エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、ポリイソブチレンゴムなどのオレフィン系ゴム;シリコンゴム;フッ素ゴム;ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;等をゴム状重合体として使用することができ、これらは、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては特に、共役ジエン系ゴムが好適に使用される。
【0024】
上述したゴム状重合体(B)は、通常、後述する工程で後添加されるビニル単量体分も含めて、用いるビニル単量体(A)の全量100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部の範囲で使用することが好適である。即ち、ゴム状重合体の使用量が上記1重量部より多いと、アクリルシラップから製造されるアクリル樹脂成形品の耐衝撃性を向上する効果が現れ、上記20重量部以下の割合で使用すると、アクリル樹脂成形品の優れた特性が維持できる。
【0025】
本発明においては、必要により、上記の原料液中に消泡剤を添加することができ、これにより、アクリルシラップを用いて最終成形品を製造する際に、気泡の発生を抑制し、且つ成形時の脱泡性を向上させることができる。例えば、アクリル人工大理石などの最終製品においても、外観不良率や機械的欠陥を低減させることができる。かかる消泡剤としては、重合反応および得られた製品に悪影響を及ぼさず、気泡を安定化させる物質の活動を抑制し、液体の気泡を成長させるもの、表面の泡を破泡するもの、かつ液体粘度を低下させる性質を有する物質が選択的に使用される。
【0026】
このような消泡剤としては、例えば、炭素数30以下の脂肪酸とグリセリンとのエステル化物(例えばカプリル酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ミリスチン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、リノレン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ベヘニン酸モノグリセリドなど)等が挙げられるが、これらを単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。消泡剤添加量は、通常、本発明の製造プロセスで用いる全ビニル単量体及びゴム状重合体の合計量当り、0.3重量%以下とすることが望ましい。0.3重量%よりも多量に添加しても消泡効果は向上せず、かえってコストの点で不利となる。
【0027】
(ii)連鎖移動剤の添加、重合反応の開始:
本発明においては、上記で調製された原料液を、還流器を備えた反応装置(重合槽)内に仕込み、窒素等の非酸化性雰囲気中で加熱し、還流が始まった時点で連鎖移動剤を添加する。
連鎖移動剤としては、重合反応を阻害せず所望の分子量の製品が得られるものが好ましく、メルカプタン類が一般的に用いられ、例えば、1−ブタンチオール、2,2−ジメチルエタンチオール、1−オクタンチオール、2,2−ジメチルヘキサンチオール、1−ドデカンチオール、2,2−ジメチルデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオール、ベンゼンチオール、チオクレゾール、チオナフトールなど炭素数4〜20のメルカプタン類の少なくとも1種を選択する。連鎖移動剤の添加量は、所望の分子量が得られるように設定されるが、一般に、本発明の製造プロセスで用いる全ビニル単量体及びゴム状重合体の合計量当り、2重量%以下、特に0.01〜1重量%の範囲とするのがよい。
【0028】
連鎖移動剤を単量体成分中に加えた場合には、僅かずつ重合が進行することが知られており、特にメルカプタン類を用いた場合には、この傾向が大きい。従って、連鎖移動剤を原料液中に加えた状態で昇温すると、昇温速度の大小により重合率が変動するため、安定した性状のアクリルシラップやアクリル樹脂を得ることが困難となってしまう。従って、本発明では、予め、ビニル単量体の一部を用いた原料液を調製し、この原料液を反応装置内に仕込んで、原料液を昇温し、還流が開始した時点で、後述する重合開始剤や残りのビニル単量体を後添加するに先立って、連鎖移動剤を添加するわけである。
【0029】
(iii)ビニル単量体及び重合開始剤の後添加、重合反応の継続:
本発明では、半回分法により重合が行われる。具体的には、連鎖移動剤の添加終了後に、ビニル単量体(A’)及び重合開始剤を、還流下において、0.5〜8時間、好ましくは1〜6時間かけて、連続的または間欠的に後添加することで重合反応が進行する。これらを一括で添加すると、重合率や分子量の変動が大きく、安定した品質のアクリルシラップを得ることが困難となるばかりか、分岐度の高いグラフト化ゴムを生成させることが困難となってしまう。即ち、上記のような半回分法により重合を行うと、重合中にゴム状重合体の分子にビニル単量体のグラフト鎖が新たに形成されていき、ゴム状重合体の一分子当りに多くのグラフト鎖が形成され、この結果、本発明のアクリルシラップ中に生成するグラフト化ゴムは、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きが0.35〜0.65(nm/(g/mol))と、高い分岐度を示す。
【0030】
また、後添加について、上記範囲よりも短時間でビニル単量体や重合開始剤を添加すると、重合率や分子量の変動を回避することができず、安定した品質のアクリルシラップを得ることが困難となってしまうばかりか、分岐度の高いグラフト化ゴムを生成させることができない。事実、後述する比較例1で示されているように、所謂連続法で重合を行った場合には、生成するグラフト化ゴムのRMS半径−モル分子量両対数直線の傾きは0.74(nm/(g/mol))であり、本発明に比してかなり低い分岐度を示している。また、上記範囲よりも長時間かけてビニル単量体や重合開始剤を添加しても、格別のメリットはなく、生産性が低下するに過ぎない。
【0031】
本発明において、ビニル単量体と重合開始剤とは、それぞれ別個に後添加することも可能であるが、通常は、両者を同時に、例えば重合開始剤をビニル単量体に溶解させて後添加することが、生産性を高める上で好適である。
後添加に用いるビニル単量体(A’)も、原料液の調製に用いるビニル単量体と同様、少なくとも85重量%以上のメタクリル酸メチルを含有するものであり、15重量%以下の量で、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル化合物を含有していてよい。
前記工程(ii)で使用される原料液中に含まれるビニル単量体の量(a)と工程(iii)で後添加されるビニル単量体の量(b)とが、a/b=20/80〜90/10の重量比を満足することが望ましい。当該重量比とすると重合反応の制御がより容易となり、かつ高いより分岐度を有するグラフト化ゴムを得ることが可能になる。
【0032】
重合開始剤としては、それ自体公知の種々のラジカル重合開始剤、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、1,1、3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ[4−t−ブチルシクロヘキシル]パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートおよび/またはビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等を、単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
重合開始剤は、所望の重合率を得るために必要な量で使用される。この使用量は、ビニル単量体の組成や重合開始剤の種類によっても異なるが、一般に、本発明の製造プロセスで用いる全ビニル単量体及びゴム状重合体の合計量当り、0.0001〜2.0重量%以下、特に0.001〜1.0重量%の量で使用するのがよい。即ち、重合開始剤を上記範囲内とすることにより、所定の重合率でのビニル単量体の重合やビニル単量体とゴム状重合体とのグラフト重合が行われ、一定範囲の重量平均分子量を有する重合固形分を一定の量で含み、25℃における粘度が0.1〜50Pa・sの範囲にあるアクリルシラップを得ることができる。
【0034】
(iv)還流の継続、後反応の実施:
本発明では、上記のように、後添加用のビニル単量体(A’)と重合開始剤との添加終了後、還流を継続しさらに0.01〜10時間、特に0.05〜5時間加熱を続行して重合反応を行う。即ち、重合開始剤の添加を開始した時点で実質的に重合反応が始まるが、本発明では、ビニル単量体と重合開始剤との後添加が終了した後、さらに、上記の時間、還流を継続して重合を行う。このような後重合により、重合開始剤が不活性化され、得られるアクリルシラップの貯蔵安定性が向上する。即ち、このような後重合の時間が上記範囲よりも短いと、アクリルシラップ中に活性な重合開始剤が残存するため、アクリルシラップの貯蔵安定性が低下してしまう。一方、重合時間が上記範囲よりも長いと、生産性が低下するのみで格別の利点はない。
【0035】
本発明においては、上記のように、一定時間加熱を継続し重合反応を完結させた後に、重合禁止剤を添加することが好ましく、重合禁止剤を添加した後に、冷却して得られたアクリルシラップを取り出すのがよい。
即ち、重合禁止剤の使用により、得られたシラップの重合及び着色を確実に防止することができ、安定した品質のアクリルシラップを得ることができる。また、得られたアクリルシラップの貯蔵安定性は更に向上し、例えばアクリルシラップ中に僅かに残存するメルカプタン類(連鎖移動剤)の不活性化処理を行う必要はないという利点もある。
【0036】
このような重合禁止剤としては、これに限定されるものではないが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系重合禁止剤が好ましく、これらのヒンダードフェノール系重合禁止剤は単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、重合禁止剤の添加量は、一般に、本発明の製造プロセスで用いる全ビニル単量体及びゴム状重合体の合計量当り、0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%の範囲が適当である。
【0037】
(アクリルシラップ)
かくして得られるアクリルシラップ(E)は、重合が原料液の沸点(約100℃程度)と比較的低い温度で行われていることから、前述したビニル単量体(A)(主としてメタクリル酸メチル)を40〜90重量%、好ましくは45〜88重量%と比較的多量に含み、高重合物(C)を10〜60重量%、好ましくは12〜55重量%の量で含んでおり、そのアクリルシラップ(E)の25℃における粘度は0.1〜50Pa・sの範囲にある。アクリルシラップ中のビニル単量体(A)および高重合物(B)の濃度が上記範囲内にあると、アクリルシラップの25℃における粘度が0.1〜50Pa・sとなり、良好な成形作業性が維持でき、かつ最終成形品が外観不良となるのを避けることができる。
【0038】
また、アクリルシラップ中の高重合物(C)は、一般に、GPCで測定した重量平均分子量が3万〜200万、好ましくは5万〜150万の範囲にあり、この高重合物(C)中には、ビニル単量体によりグラフト化されたゴム状重合体(グラフト化ゴム(D))が含まれている。かかるグラフト化ゴム(D)は、一般的に、0.1〜50μm、特に、0.5〜30μm、もっとも好適には1〜10μmの平均粒子径でアクリルシラップ中に分散している。また、このグラフト化ゴム(D)は、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きが0.35〜0.65、特に0.35〜0.60、もっとも好適には0.35〜0.55(nm/(g/mol))と極めて高い分岐度を示し、このような分岐度の高いグラフト化ゴム粒子がアクリルシラップ中に均一に分散していることから、かかるアクリルシラップを用いて製造されるアクリル樹脂成形品、例えば人工大理石等は、アクリル樹脂本来の特性を有しているとともに、優れた耐衝撃性を示す。即ち、グラフト化ゴム粒子の分岐度が上記範囲よりも低いと、耐衝撃性の向上効果は、極めて希薄となってしまう。
【0039】
尚、アクリルシラップ中に生成したグラフト化ゴム粒子は、成形時の硬化等によっては粒子成長しないため、グラフトゴム粒子が上記の平均粒子径で分散していることは、後述する実施例に示すように、アクリルシラップから製造されるアクリル樹脂成形品(例えば樹脂板)の超薄切片をオスミウム酸で染色し、その表面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影することにより確認することができる。
例えば、本発明により得られたアクリルシラップから作製した樹脂板のTEM観察から、グラフト化されたゴム状重合体は、HIPSでみられる、ゴム相中に樹脂が含まれたミクロ構造を形成していた。このようなミクロ構造を有する樹脂は一般的に耐衝撃性の発現が高いことが知られている。
【0040】
アクリル樹脂成形品中のアクリル樹脂に対するグラフト化ゴムの割合は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて赤外吸収スペクトル法により求めた。例えばアクリル樹脂成形品中のブタジエンゴムの割合は、標準試料を基にして、測定試料の赤外吸収スペクトルにおける966cm-1のブタジエンゴムに基づく特性吸収の強度比から求めることが可能である。
【0041】
本発明のアクリルシラップは、その用途に応じて、硬化促進剤、架橋剤、充填剤、離型剤等を配合し、それ自体公知の手段により、種々のアクリル樹脂成形品を製造することができ、耐衝撃性を向上することができることから、特に、人工大理石の製造に極めて有用である。
例えば、硬化促進剤としては、これに限定されるものではないが、アクリルシラップを製造する際に用いられる重合開始剤を用いることができ、その添加量は、その用途によっても異なるが、一般に、アクリルシラップ100重量部当り、0.1重量部〜5重量部の範囲内が好適である。
【0042】
また、架橋剤としては、アクリルシラップ中に含まれる重合成分が有する官能基と反応する官能基を複数含有する化合物、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等を、単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。架橋剤の添加量は、その種類やシラップ等との組み合わせ、成形品の用途や所望される物性等に応じて設定すればよい。
【0043】
充填剤としては、特に限定されるものではなく、例えば水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉等の無機系充填剤、および、ポリマービーズ等の有機系充填剤が挙げられる。これらの充填剤は、単独でも良く、また、2種類以上を混合して用いることもできる。充填剤の平均粒径等は、アクリルシラップ中に均一に分散させることが可能である限り、特に制限されない。また、充填剤の配合量は、その種類やアクリルシラップの組成或いは用途によっても異なるが、例えば人工大理石の製造を目的とする場合には、一般に、アクリルシラップ100重量部当り、50〜400重量部、好ましくは100〜300重量部、さらに好ましくは150〜250重量部の範囲内が適当である。充填剤の配合量が50重量部未満であると、得られる人工大理石の表面硬度や剛性が不十分となり、充填剤の配合量が400重量部を越えると、成形時の作業性が悪くなる。
【0044】
離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、アルキルホスフェート、各種のワックス類、シリコーンオイル等を用いることができ、これらは、それ自体公知の量で、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上述したアクリルシラップ中には、それ自体公知の樹脂配合剤、例えば、繊維補強剤、低収縮剤、滑剤、可塑剤、増粘剤、有機溶剤等の希釈剤、レベリング剤、沈降防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤、顔料および/または染料等を添加することも勿論可能である。
【0045】
(アクリル樹脂成形品)
このように、本発明のアクリルシラップは、上述した各種の剤が配合され、SMCやBMC等の加圧成形材料、プレミックス材料、注型材料、引き抜き材料、押出成形材料等の成形材料として好適に使用される。
SMCは、いわゆるSMC製造装置を用いて容易に製造することができる。例えば60℃〜160℃で加熱加圧成形(プレス成形)あるいは射出成形することによって成形品とすることができる。BMCは、双腕型ニーダ等の混練機を用いて容易に製造することができる。例えば60℃〜160℃で加熱加圧成形(プレス成形)あるいは射出成形することにより成形品とすることができる。注型法により様々な形状を有する樹脂成形体あるいは樹脂板を製造するには、従来の方法がそのまま適用される。例えば注型板の製造法では連続式およびバッチ式による方法があるが、バッチ式を例示すれば、二枚の強化ガラス板間に、それらの周辺に沿って軟質ポリ塩化ビニル等のガスケットを締め付け金具によってはさんで組み立てたセル中に、シラップおよび硬化剤を攪拌混合、脱気したものを注入した後、該セルを所定の温度の水浴または空気浴で熱処理して重合を完結せしめた後冷却して板状重合物を取り出す方法である。
【0046】
このようにして得られたアクリル樹脂成形品は、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1200EX II、TEM)で測定可能なグラフト化ゴム(D)の粒子の70%以上が1〜10μmの範囲にあり、かつ成形品の赤外分光光度計(フーリエ変換赤外分光光度計(日本電子(株)製、JIR−5500))で測定されるグラフト化ゴム(D)の割合がアクリル樹脂中で2〜35重量%である。
【0047】
【発明の効果】
本発明の方法により、高い分岐度を有するグラフト化ゴムが均一に分散したアクリルシラップを安定して製造することができる。このアクリルシラップを使用して得られるアクリル樹脂成形品は、耐衝撃性に優れ、耐衝撃性が要求される用途に極めて有用である。例えば、このアクリルシラップから得られる人工大理石は、キッチンカウンター、洗面化粧台、バスタブ、床材、壁材等に好適に使用される。
【0048】
【実施例】
本発明を、次の例で説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において、アクリルシラップの各種性状の測定、及び樹脂成形品の評価は、以下の方法で行った。
【0049】
(1)重合固形分:試料のアクリルシラップ100重量部を、1000重量部の冷ヘキサン(15℃)中に滴下し、得られた沈澱物を、JIS K0067に準拠して恒量に到達するまで減圧乾燥して、アクリルシラップ中の重合固形分量(重量%)を求めた。また、この重合固形分の重量平均分子量を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(東ソー(株)製、8010型、GPC)により求めた。
【0050】
(2)粘度:アクリルシラップの粘度は、B形粘度計(東機産業(株)製 BM型)を用い25℃で測定した。
(3)グラフト化ゴムの平均粒子径:アクリルシラップから、セルキャスト法にて4mm厚の注型板を作製し、この注型板の超薄切片をオスミウム酸で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1200EX II、TEM)で撮影して、染色されたグラフト化ゴムの平均粒子径を求めた。
【0051】
(4)グラフト化ゴムの分岐度:ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(昭和電工(株)製、ショーデックス-11)と多角度光散乱検出器(ワイアット・テクノロジー社製、 Wyatt DAWN EOS)を用いて、以下の条件で、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線(縦軸:RMS半径、横軸:モル分子量)の傾きを求めた。この傾きの値が小さいほど、ポリマーの分岐度が高いことを意味する。
分離カラム;ショーデックス HFIP−806M×3本
カラム温度; 40℃
移動相溶媒; トリフルオロ酢酸ナトリウム(HFA)を2mmol含有するヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)
移動相流速; 0.96ml/min
【0052】
(5)グラフト化ゴムの割合:成形品中のアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本電子(株)製、JIR−5500)を用いて、赤外吸収スペクトル法によりゴム状重合体に基づく特性吸収から算出した。
(6)耐衝撃性及び表面硬度:上記の注型板の衝撃強度を、衝撃試験機(上島製作所(株)製)を用いてJIS K7110に準拠したアイゾット衝撃値(ノッチ付き)で評価し、また、その表面硬度を、JIS K5400の鉛筆引っ掻き法に基づいて測定した。
【0053】
実施例1
温度計、還流冷却器、定量ポンプ、撹拌装置を取り付けた2リットルセパラブル四つ口フラスコに、メタクリル酸メチル450g(初期仕込溶液)を投入し、この溶液に、スチレン・ブタジエンゴム(ゴム状重合体、日本ゼオン(株)製、NS−310S)50gを溶解し、100rpmで攪拌し、50ml/min.の吹き込み速度で30分間窒素置換した後、昇温した。
温度が100℃に達し還流が開始したところで、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)3.6gをすばやく加え、次いで、1,1,3,3―テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤)0.05gを溶解したメタクリル酸メチル500gの溶液(後添加溶液)を、定量ポンプを使用し、2.8g/分の速度で3時間かけて滴下した。
滴下終了後、1時間加熱を継続し、次いで、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(重合禁止剤)0.2gを加え、重合を停止し、その後、室温まで冷却しアクリルシラップを得た。
【0054】
重合の進行に伴い、反応溶液の粘度が高くなり泡が発生したが、界面において直ちに破泡し、重合後期および終了時においても泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は30.6重量%で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は8.2万、25℃における粘度は2.3Pa・sであった。 また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.44(nm/(g/mol))であった。
【0055】
このシラップ100重量部に、平均粒径8μmのシラン処理済みの水酸化アルミニウム(住友化学工業(株)製、CW308B)200重量部、1,1、3,3―テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(硬化促進剤、日本油脂(株)製、パーオクタO)1重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(架橋剤)3重量部を添加し、攪拌混合し、その後減圧下に脱気した。
【0056】
得られたコンパウンドを、4mm厚の塩化ビニル製ガスケットを2枚のガラス板で挟んでセルを作製し、恒温水槽中で50℃/1時間、70℃/1時間、送風式乾燥機中で130℃で1時間加熱した。その後、室温で冷却を行い、4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は3.9kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEM観察により測定されたゴム状重合体(グラフト化ゴム)の平均粒径は3μm、赤外吸収スペクトル法により測定されたアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は4.3重量%であった。
【0057】
実施例2
実施例1と同じ装置を用い、初期仕込溶液中にステアリン酸モノグリセリド(消泡剤)0.10gを添加し、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を1.3gに変更し、且つ後添加溶液中の1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤)の量を0.025gに変更する以外は、実施例1と同様にして、アクリルシラップを得た。
重合後期および終了時においても反応液の粘度上昇に伴う泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は21.8重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は20.1万、25℃における粘度は3.5Pa・sであった。
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.54(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は4.2kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEM観察からのグラフト化ゴムの平均粒径は4μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は4.1重量%であった。
【0058】
実施例3
実施例1と同じ装置を用い、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を2.8gに、後添加溶液中の1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤)の量を0.075gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。
重合後期および終了時においても反応液の粘度上昇に伴う泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は35.1重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は10.4万、25℃における粘度は10.0Pa・sであった。
【0059】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.47(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は3.8kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEM観察からのグラフト化ゴムの平均粒径は2μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は4.3重量%であった。
【0060】
実施例4
実施例1と同じ装置を用い、初期仕込溶液のメタクリル酸メチル量を480gに変更し、スチレン・ブタジエンゴム量を20gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。重合後期および終了時においても反応液の粘度上昇に伴う泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は31.1重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は8.2万、25℃における粘度は2.1Pa・sであった。
【0061】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.47(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は2.7km2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEM観察からのゴム状重合体の平均粒径は2μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は3.1重量%であった。
【0062】
実施例5
実施例1と同じ装置を用い、初期仕込溶液のメタクリル酸メチル量を400gに変更し、スチレン・ブタジエンゴム量を100gに変更し、且つ1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を2.8gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。重合後期および終了時においても反応液の粘度上昇に伴う泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は29.7重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は10.1万、25℃における粘度は5.8Pa・sであった。
【0063】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.48(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は3.7kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEM観察からのグラフト化ゴムの平均粒径は16μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は9.5重量%であった。
【0064】
実施例6
実施例1と同じ装置を用い、ゴム状重合体として、スチレン・ブタジエンゴムの代わりにブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol BR−1220)を使用し、且つ1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を2.8gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。
重合後期および終了時においても反応液の粘度上昇に伴う泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は29.8重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は10.4万、25℃における粘度は1.9Pa・sであった。
【0065】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.50(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は3.1kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEM観察からのグラフト化ゴムの平均粒径は8μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は5.4重量%であった。
【0066】
実施例7
実施例1と同じ装置を用い、初期仕込溶液のメタクリル酸メチル量を480gに変更し、50gのスチレン・ブタジエンゴムを20gのブタジエンゴムに変更し、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を2.8gに変更し、更に重合開始剤量を0.075gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。
重合後期および終了時においても反応液の粘度上昇に伴う泡の相はみられず、安定に重合を行うことが可能であった。さらにフラスコ壁面へのスケールの発生もみられなかった。得られたシラップの重合固形分は30.9重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は9.1万、25℃における粘度は4.3Pa・sであった。
【0067】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.49(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は2.5kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は5H、TEMM観察からのグラフト化ゴムの平均粒径は3μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は2.4重量%であった。
【0068】
比較例1
ダブルヘリカルリボン翼を設置した0.2リットル槽型反応器に、スチレン・ブタジエンゴム100gをメタクリル酸メチル1800gに溶解した原料液を90℃に予熱して連続的に供給し、また、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート6gをメタクリル酸メチル200gに溶解した重合開始剤溶液(20℃)を連続的に供給し、該反応器中での反応混合物の平均滞留時間を180秒に維持して連続重合を行った。尚、反応器における攪拌速度は500rpm、温度は150℃、圧力は6.0気圧に、それぞれ維持した。反応終了後、ラップに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.4g加えて重合を停止し、その後、室温まで冷却してアクリルシラップを得た。得られたシラップの重合固形分は28.6重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は8.8万、25℃における粘度は1.2Pa・sであった。
【0069】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.74(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は1.8kJ/m2であった。また樹脂板の表面硬度は4H、TEM観察からのグラフト化ゴムの平均粒径は3μm、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は4.0重量%であった。
【0070】
比較例2
実施例1と同じ装置を用い、初期仕込溶液のメタクリル酸メチル量を500gに変更し、且つスチレン・ブタジエンゴムを添加しない以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。得られたシラップの重合固形分は32.5重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は8.1万、25℃における粘度は2.0Pa・sであった。
【0071】
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.81(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は1.6kJ/m2であった。樹脂板の表面硬度は8Hであった。
【0072】
比較例3
実施例1と同じ装置を用い、初期仕込溶液のメタクリル酸メチル量を500gに変更し、スチレン・ブタジエンゴムを添加せず、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を1.3gに変更し、且つ重合開始剤の添加量を0.025gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。
得られたシラップの重合固形分は22.3重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は20.2万、25℃における粘度は3.2Pa・sであった。また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.80(nm/(g/mol))であった。このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。樹脂板の表面硬度は8H、アイゾット衝撃値は2.0kJ/m2であった。
【0073】
比較例4
実施例1と同じ装置を用い、スチレン・ブタジエンゴムをブタジエンゴムに変更し、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の添加量を16.5gに変更し、更に重合開始剤量を0.125gに変更する以外は、実施例1と同様にしてアクリルシラップを得た。得られたシラップの重合率は43.1%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は1.9万、25℃における粘度は3.1Pa・sであった。また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.60(nm/(g/mol))であった。
このシラップを用いて実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は1.0kJ/m2に修正であった。また樹脂板のTEM観察からゴム状重合体の平均粒径は10μm、表面硬度は4H、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するグラフト化ゴムの割合は5.2重量%であった。
【0074】
比較例5
実施例1で用いた2リットルセパラブル四つ口フラスコに、スチレン・ブタジエンゴム50g、および比較例2で得られたアクリルシラップ(重合固形分32.5重量%、重量平均分子量8.1万、粘度2.0Pa・s)1000gを入れ、ゴム成分が溶解するまで攪拌混合した。
溶解後のシラップの不揮発成分は37.7重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は8.9万、25℃における粘度は4.1Pa・sであった。また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.80(nm/(g/mol))であった。このシラップを冷暗所に長時間静置しておくとゴム成分が分離する現象が観られ、シラップ全体として不均一なものとなった。このシラップを再度攪拌して均一な状態とし、実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は1.9kJ/m2であった。また樹脂板のTEM観察からグラフト化ゴムは観察されなかった。樹脂板の表面硬度は3H、赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するゴム状重合体の割合は4.6重量%であった。
【0075】
比較例6
スチレン・ブタジエンゴム量を75gに変更した以外は、比較例5と同様にして、スチレン・ブタジエンゴムとアクリルシラップとの混合液を調製した。この混合液の不揮発成分は41.9%で、GPCによる重量平均分子量(Mw)は9.0万、25℃における粘度は4.7Pa・sであった。
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.81(nm/(g/mol))であった。この混合液を冷暗所に長時間静置しておくとゴム成分が分離する現象が観られ、全体として不均一なものとなった。
この混合液を再度攪拌して均一な状態とし、実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は2.4kJ/m2であった。また樹脂板のTEM観察からグラフト化ゴムは観察されなかった。樹脂板の表面硬度は1Hと非常に低いものであった。赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するゴム状重合体の割合は6.7重量%であった。
【0076】
比較例7
スチレン・ブタジエンゴムの代わりにブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol BR−1220)を用いた以外は、比較例5と同様にして、ブタジエンゴムとアクリルシラップとの混合液を調製した。この混合液の不揮発成分は36.7重量%で、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は14.3万、25℃における粘度は5.6Pa・sであった。
また、GPC−MALLS測定により、RMS半径−モル分子量両対数直線の傾きを算出したところ、その値は、0.83(nm/(g/mol))であった。上記の混合液を冷暗所に長時間静置しておくと、ゴム成分が分離する現象が観られ、全体として不均一なものとなった。
この混合液を再度攪拌して均一な状態とし、実施例1と同様にセルキャスト法にて4mm厚の樹脂板を作製した。この樹脂板のアイゾット衝撃値は2.3kJ/m2であった。また樹脂板のTEM観察からグラフト化ゴムは観察されなかった。樹脂板の表面硬度は2Hと非常に低いものであった。赤外吸収スペクトル法からのアクリル樹脂部分に対するゴム状重合体の割合は5.5重量%であった。
Claims (14)
- (i)少なくとも85重量%のメタクリル酸メチルを含有するビニル単量体(A)に、ゴム状重合体(B)を溶解して原料液を調製し、(ii)前記原料液を非酸化性雰囲気中で加熱し、次いで、還流下で該原料液に連鎖移動剤を添加し、(iii)連鎖移動剤の添加後、還流下において、少なくとも85重量%のメタクリル酸メチルを含有する後添加用のビニル単量体(A’)と、重合開始剤とを0.5〜8時間かけて連続的または分割して後添加することで重合を行い、(iv)後添加用のビニル単量体と重合開始剤との添加終了後、さらに還流を継続し0.01〜10時間加熱を続行して重合を行い、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量が3万〜200万の高重合物(C)を得る、工程からなることを特徴とするアクリルシラップの製造方法。
- 前記工程( i )において、ビニル単量体(A)100重量部に対してゴム状重合体(B)4〜25重量部を溶解する請求項1に記載のアクリルシラップの製造方法。
- 前記工程(ii)で使用されるビニル単量体(A)及び工程(iii)で使用される後添加用ビニル単量体(A’)は、何れも、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル化合物を15重量%以下の量で含有している請求項1または2に記載のアクリルシラップの製造方法。
- メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル化合物が、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、並びにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの不飽和カルボン酸のエステルから選ばれた少なくとも1種以上である請求項3に記載のアクリルシラップの製造方法。
- 前記工程(ii)で使用される原料液中に含まれるビニル単量体(A)の量(a)と工程(iii)で後添加されるビニル単量体(A’)の量(b)とが、a/b=20/80〜90/10の重量比を満足する請求項1〜4のいずれかに記載のアクリルシラップの製造方法。
- 前記工程(i)で使用されるゴム状重合体(B)は、前記ビニル単量体の合計量(a+b)100重量部当り1〜20重量部の量で使用される請求項1〜5のいずれかに記載のアクリルシラップの製造方法。
- ゴム状重合体(B)として、アクリルゴム、共役ジエンゴムまたはその水素添加物、オレフィン系ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンエラストマー及びポリエステルエラストマーから選択された少なくとも1種を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアクリルシラップの製造方法。
- 前記工程(iv)での加熱を終了したときに、重合禁止剤を添加する請求項1〜6のいずれかに記載のアクリルシラップの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られるアクリルシラップ。
- 25℃における粘度が0.1〜50Pa・ s の範囲である請求項9に記載のアクリルシラップ。
- 少なくともビニル単量体(A)40〜90重量%と、高重合物(C)10〜60重量%とを含有する請求項9または10に記載のアクリルシラップ。
- 樹脂成分として請求項9〜10のいずれかに記載のアクリルシラップを使用して得られるアクリル樹脂成形品。
- アクリルシラップ100重量部に対し、充填剤を50〜400重量部の割合で含む請求項12に記載のアクリル樹脂成形品。
- 充填剤が、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉、及びポリマービーズから選ばれた少なくとも1種以上である請求項13に記載のアクリル樹脂成形品。
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