JP4090112B2 - 摺動機構の停止装置とこれを利用した保育器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、案内軸に案内されて摺動する摺動体を該案内軸の任意の位置で停止させることができるようにした、または案内部材に案内された摺動軸を該摺動軸の任意の位置で停止させることができるようにした摺動機構の停止装置と、この停止装置を児を寝かせるベッドの傾斜角度調整機構に応用した保育器に関する。
【0002】
【従来の技術】
新生児を温度や湿度等が最適な環境下に置くことは重要である。殊に、低出生体重児やハイリスク児にとっては、さらに高精度な環境の維持が要求される。そこで、保育器内の環境要素たる温度、湿度、酸素濃度等を高精度に制御できる閉鎖式保育器が用いられる。しかしながら、この閉鎖式保育器は前記環境要素を容易に制御できるようにするため患児の周囲をフードで包囲しているものである。このフードの存在は、患児に対する迅速な処置を阻害するものである。また、この種の保育器は環境が整うまでのウォーミングアップに時間がかかるという欠点もある。そこで、迅速な処置を可能にし、ウォーミングアップに要する時間を僅かにするため、フードを用いず輻射熱によって直接患児を温め所望の体温に維持する開放式保育器も提供されている。さらに、他の医療施設への患児の運搬を目的にした携帯式保育器等も提供されており、使用目的に応じて選択できるようになっている。また、前記閉鎖式保育器及び開放式保育器には、児を寝かせるベッド部を傾けられるという機構が備っている。すなわち、児をほぼ水平に保持して寝かせたり、また例えばミルクを与える場合には飲用し易い状態に、あるいは飲用したミルクを嘔吐する場合には嘔吐しやすい状態になど、状況や児の容態等に応じて適宜に傾けた状態とすることができるようにしてある。
【0003】
児を傾けた状態は、児の容態等に合せて調整される必要があるから、ベッドの傾き状態を無段階に選択できるようにすることが望まれる。開放式保育器のベッドを任意の状態に傾ける従来のこの種の傾斜角度調整機構として、例えば特公平2−47222号公報に記載されたものがある。
【0004】
前記公報に記載されたものは、児を寝かせるベッドと該ベッドを揺動自在に保持するフレームとの間に、傾斜させて複動式液圧シリンダを設け、このシリンダの端部と該シリンダ内を摺動するピストンロッドの先端部とをそれぞれベッドとフレームに回動自在に支持させ、シリンダのピストンを挟んだ両室のそれぞれに可撓性を備えた液圧ラインを接続し、この液圧ラインをリザーバに接続するとともに、その途中をベッドの操作ノブに連動したロック機構部を経由させた構造としてある。そして、操作ノブをベッドを傾けることができる位置まで操作すると、前記液圧ラインが開放されてシリンダとリザーバとが連通する。この状態で、ベッドを任意に傾けるとピストンがシリンダ内で摺動し、作動液が一方の室からリザーバに流れ、他方の室にはリザーバから流れ込み、ベッドが停止した位置で両室が均衡する。操作ノブを原位置まで復帰させると、前記ロック機構によって液圧ラインが圧潰されて閉塞され、シリンダの両室からの作動液の流出入が阻止され、当該時の傾き状態にベッドが維持されるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の傾け機構では、液圧を利用しているため、次のような問題がある。前記液圧ラインの開閉は該液圧ラインを圧潰した状態と圧潰しない状態とによって行なっているため、液圧ラインが経年変化によって疲労した場合には、亀裂が生じたり破損してしまうおそれがある。液圧ラインに亀裂が生じたり破損してしまうと、作動液が破損部から流出してしまうから、保育器周辺を汚してしまうことになる。しかも、傾いた状態で作動液が流出してしまうと、ベッドが水平位置まで復帰してしまい、処置を行なっている場合には不都合であり、またベッドに寝かされた児にとっても好ましくない。また、液圧ラインの破損はロック機構で異物を咬んでしまった場合などにも生じてしまう。
【0006】
また、作動液を利用しているため、動作の応答時間が長くなり、ベッドが所望の角度位置に傾くまで時間を要してしまう。このため、迅速な処置を施さなければならない場合など、管理者が不本意な姿勢で作業を行なわなければならないおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、液圧などを利用することなく、機械的な構造でベッドを任意に傾けた状態で停止させることができ、しかも迅速な作動を行なわせることができる開放式保育器を提供するものであり、この保育器に用いるのに適した摺動機構の停止装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る摺動機構の停止装置は、案内部材と、該案内部材に案内されて軸方向に摺動自在な摺動軸とからなる摺動機構の、前記摺動軸を任意の位置で停止させる停止装置において、前記摺動軸を挿通させた挿通孔を備え、前記摺動軸の中心軸から偏倚した中心軸を中心として揺動するロック部材からなることを特徴としている。
【0009】
前記ロック部材を揺動させると、前記挿通孔が前記摺動軸の周面に当接して押圧される。この押圧力によって摺動軸が拘束されてその摺動が停止する。しかも、摺動軸の任意の位置でロック部材を揺動でさせられるから、摺動軸を任意の位置で停止させることができる。
【0010】
また、請求項2の発明に係る摺動機構の停止装置は、案内軸と、この案内軸を挿通した挿通孔を備えて該案内軸の軸方向に摺動する移動部材とからなる摺動機構の、前記移動部材を任意の位置で停止させる停止装置において、前記移動部材を前記案内軸の中心から偏倚した中心軸を中心として揺動自在に支持したことを特徴としている。
【0011】
前記移動部材を揺動させると、該移動部材の前記挿通孔が前記案内軸の周面に当接して押圧される。この押圧力によって移動部材が拘束されてその摺動が停止する。しかも、案内軸の任意値の位置で移動部材を揺動させられるから、移動部材を任意の位置で停止させることができる。
【0012】
請求項3の発明は、前記摺動機構の停止装置を利用した保育器に係るもので、特に児を寝かせるベッドの傾斜角度調整機構に応用したもので、児を寝かせるベッドを主フレームに対して揺動自在に支持した保育器において、案内部材と、前記案内部材に案内されて軸方向に摺動自在な摺動軸と、前記摺動軸を挿通させたロック孔を備え、前記摺動軸の中心軸から偏倚した中心軸を中心として揺動するロック部材とからなり、前記案内部材又は前記摺動軸のいずれか一方を、前記主フレーム又はベッドのいずれか一方に連繋させて設け、前記案内部材又は摺動軸の他方を、前記主フレーム又はベッドの他方に連繋させて設けたことを特徴としている。
【0013】
例えば、前記案内部材を主フレームに、前記摺動軸をベッドなどに揺動自在に支持させる。ベッドを主フレームに対して揺動させる場合には、摺動軸が案内部材に対して摺動して、案内部材の主フレームとの連繋位置と摺動軸のベッドとの連繋位置との距離が変更される。このため、ベッドが主フレームに対して揺動することが許容される。適宜角度まで揺動したならば、すなわち摺動軸が案内部材に対して適宜位置まで摺動したならば、前記ロック部材を揺動させる。この揺動によってロック孔が摺動軸を押圧するから、該摺動軸が当該位置で停止され、ベッドが傾斜した状態に維持される。
【0014】
また、請求項4の発明に係る保育器は、児を寝かせるベッドを主フレームに対して揺動自在に支持した保育器において、案内部材と、前記案内部材に案内されて軸方向に摺動自在な摺動軸と、前記摺動軸を挿通させたロック孔を備え、前記摺動軸の中心軸から偏倚した中心軸を中心として揺動するロック部材とからなり、前記ロック部材又は前記摺動軸のいずれか一方を、前記主フレーム又はベッドのいずれか一方に連繋させて設け、前記ロック部材又は摺動軸の他方を、前記主フレーム又はベッドの他方に連繋させて設けたことを特徴としている。
【0015】
例えば、前記ロック部材を主フレームに、前記摺動軸をベッドなどに揺動自在に支持させる。ベッドを主フレームに対して揺動させる場合には、摺動軸がロック部材に対して摺動して、ロック部材の主フレームとの連繋位置と摺動軸のベッドとの連繋位置との距離が変更される。このため、ベッドが主フレームに対して揺動することが許容される。適宜角度まで揺動したならば、すなわち摺動軸がロック部材に対して適宜位置まで摺動したならば、前記ロック部材を揺動させる。この揺動によってロック孔が摺動軸を押圧するから、該摺動軸が当該位置で停止され、ベッドが傾斜した状態に維持される。
【0016】
また、請求項5の発明に係る保育器は、児を寝かせるベッドを主フレームに対して揺動自在に支持した保育器において、前記主フレームに揺動自在に支持させた前記ベッドを保持するベッドフレームと、案内軸と、前記案内軸を挿通する挿通孔を備えて該案内軸の軸方向に摺動し、該案内軸の中心から偏倚した中心軸を中心として揺動自在に支持された移動部材とからなり、前記移動部材又は前記案内軸のいずれか一方を、前記主フレーム又はベッドフレームのいずれか一方に連繋させて設け、前記移動部材又は案内軸の他方を、前記主フレーム又はベッドフレームの他方に連繋させて設けたことを特徴としている。
【0017】
例えば、前記移動部材を主フレームに、前記案内軸をベッドなどに揺動自在に支持させる。ベッドを主フレームに対して揺動させる場合には、移動部材が案内軸に対して摺動して、移動部材の主フレームとの連繋位置と案内軸のベッドとの連繋位置との距離が変更される。このため、ベッドが主フレームに対して揺動することが許容される。適宜角度まで揺動したならば、すなわち移動部材が案内軸に対して適宜位置まで摺動したならば、前記移動部材を揺動させる。この揺動によって挿通孔が案内軸を押圧するから、該案内軸が当該位置で停止され、ベッドが傾斜した状態に維持される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る摺動機構の停止装置を、開放式保育器のベッドの角度調整機構に実装した場合について具体的に説明する。
【0019】
図8は前記開放式保育器1の外観を示す斜視図で、キャスター2を備えて移動自在とされた台車3に起立させて主フレーム4が設けられており、この主フレーム4の上部にはヒータユニット5が取り付けられている。主フレーム4の下部には児を寝かせるベッド6が設けられており、その下部には各種備品を収納する抽斗7が設けられている。また、主フレーム4のベッド6とヒータユニット5との間位置には、児の体温を計測する体温プローブからの信号を受けて体温を表示したりヒータユニット5の温度調整などの制御を行なう体温計測ユニット8や、SpO2 計測ユニット9などが取り付けられている。なお、前記ヒータユニット5の熱源の輻射によってベッド6に寝かされた児を加温するようにしてある。
【0020】
前記ベッド6は、児の容態等に対処し易いように適宜に傾けることができるようにしてある。この傾きを調整する機構を図1〜図7に基づいて説明する。
【0021】
前記ベッド6は図4に示すベッドフレーム10に着脱自在に取り付けられており、このベッドフレーム10はその中央部で、同図及び図5に示すように、前記主フレーム4に設けられたベッド支持部11の両端部に固定されたブラケット11a に軸10a によって回動自在に支持されている。ベッド支持部11の中央部には前方を指向させて支持アーム11b が設けられている。この支持アーム11b の先端部に、摺動軸としての又は案内軸としてのステー12の基端部が揺動自在に支持されている。なお、このステー12の基端部には支持補助部材12a が着脱自在に止着されており、この支持補助部材12a を介して軸12b を中心として揺動自在に支持されている。そして、後述するように、このステー12にスライダアッセンブリ20が摺動自在で、且つ、これらステー12とスライダアッセンブリ20とは任意の位置に固定できるように組み合わされている。
【0022】
前記スライダアッセンブリ20は、案内部材としての一対のスライダブロック21とこのスライダブロック21の間位置に設けられた移動部材でもあるロック部材22と、一対のスライダブロック21を連結させた摺動体フレーム23を主体として構成されており、この摺動体フレーム23の基端部が、ベッドフレーム10のサイドメンバ10b に後方を指向させて突設された支持ブラケット10c に、軸23a を介して回動自在に支持されている。
【0023】
スライダブロック21は、図6に示すように、ステー12を挿通させる挿通孔21a が軸211 を中心として穿設されている。スライダブロック21の一方の底面には、ころがり軸受やすべり軸受などの軸受を保持する軸受ハウジング21b が、前記軸211 から適宜距離で偏倚した軸212 を中心とした円形の溝によって形成されている。また、図6に示すように周面の一部が平面に面取され、この平面に雌ねじ部21c が形成されている。
【0024】
他方、前記ロック部材22は、図7に示すように、両端部に前記スライダブロック21に支持されるジャーナル部22a が軸221 を中心とした円形断面で形成されている。なお、このジャーナル部22a は、スライダブロック21の軸受ハウジング21b に保持される軸受に挿入されて支持されるようにしてある。そして、ロック部材22の中央部には、前記軸221 から適宜距離で偏倚した軸222 を中心として、前記ステー12を挿通させることができる径でロック孔22b が穿設されている。なお、このロック孔22b の径は、前記挿通孔21a の径と等しくしてステー12を挿通できるようにしても構わないが、挿通孔21a よりも僅かに大きくしてあればステー12を挿通孔21a とロック孔22b とに挿通させる作業が容易となって好ましい。また、図7(b)に示すように、ロック部材22の周面の一部には、ロック孔22b の軸と直交する方向に沿った方向を長手方向とした半円形の保持溝部22c が形成されており、その底部に雌ねじ部22d が形成されている。
【0025】
そして、図1及び図2に詳細を示すように、一対の前記スライダブロック21をそれぞれの軸受ハウジング21b を対向させて位置させ、それぞれの軸受ハウジング21b に収容させた軸受24にロック部材22の両端部のジャーナル部22a がそれぞれ挿入されている。また、それぞれのスライダブロック21は、前記面取された面に摺動体フレーム23が前記雌ねじ部21c に螺合する止めネジによって固定されて、これらスライダブロック21とロック部材22、摺動体フレーム23とが一体に組み合わされている。
【0026】
上述のようにスライダブロック21とロック部材22とが組み合わされた状態においては、スライダブロック21の軸受ハウジング21b の軸212 と、ロック部材22のジャーナル部22a の軸221 とは一致して共通軸となる。そして、ロック部材22はスライダブロック21の軸受ハウジング21b の軸212 を中心として回動することになる。また、ロック孔22b の軸222 は軸212 から偏倚しているから、ロック部材22の回動によってロック孔22b は軸212 を中心として旋回することになる。他方、スライダブロック21に形成された挿通孔21a の軸211 は前記軸212 から偏倚している。このため、ロック孔22b の軸222 の共通軸221 に対する偏倚量と偏倚方向及び挿通孔21a の軸211 の共通軸212 に対する偏倚量と偏倚方向とを適宜なものとすることにより、ロック孔22b の旋回途中で該ロック孔22b と挿通孔21a とが一致するようにしてある。そして、前記ステー12がこれら挿通孔21a とロック孔22b とに挿通されている。なお、ステー12の前記支持補助部材12a を取り付けた側と反対側の端部には、拡径されたフランジ部12c が形成されており、支持補助部材12a は、ステー12を挿通孔21a とロック孔22b とに挿通させた後に止着する。
【0027】
前記ロック部材22の保持溝部22c には入力レバー31の基端部が、前記雌ねじ部22d に螺合する止めネジによって固定されており、先端はステー12の軸に対して側方に伸長させてある。この止めネジの入力レバー31の先端側に位置したものは、ばね掛止用ロッド32の基端部に形成されたものとしてあり、このばね掛止用ロッド32の先端部は、ベッド6の方向を指向して適宜長さ伸長させてある。他方、前記摺動体フレーム23の先端部の側面であって前記入力レバー31が伸長した方向と反対側の側面には、側方を指向させてばね掛止板33が突設されている。なお、このばね掛止板33は適宜なブラケット33a を介して摺動体フレーム23に取り付けてあり、該ばね掛止板33の先端部が前記ばね掛止用ロッド32の先端部とほぼ等しい高さ位置となるようにしてある。そして、これらばね掛止用ロッド32の先端部とばね掛止板33の先端部とに付勢手段として引張りコイルばねからなる戻しばね34が掛け渡されており、その復元力の方向を、前記ロック孔22b が挿通孔21a と一致しない状態となるようにロック部材22を回動させる方向としてある。
【0028】
ベッドフレーム10の前方には、図4に示すように、サイドメンバ10b とほぼ平行に操作部材としての把持レバー35が配されており、この把持レバー35に後方を指向させて一対の支持アーム36a 、36b が植設され、この支持アーム36の中間部がベッドフレーム10に軸36c によって揺動自在に支持されている。なお、この支持アーム36は、図5に示すように、ほぼへ字形状に屈曲した形状に形成されてベッドフレーム10やサイドメンバ10c に干渉しないようにしてある。そして、一対の支持アーム36のうちの一方の支持アーム36a の先端部に、該支持アーム36a に対して回動自在で、かつ摺動自在であるジョイント部材37を介して、該ジョイント部材37に対して前記入力レバー31の先端部が回動自在で、かつ摺動自在に連繋させてある。
【0029】
以上により構成したこの発明に係る摺動機構の停止装置とこれを利用した開放式保育器の実施形態について、以下にその作用を説明する。
【0030】
通常時にあっては、前記戻しばね34の復元力によって前記ロック部材22が、そのロック孔22b を前記スライダブロック21の挿通孔21a に一致させない位置まで回動させられている。この状態では、挿通孔21a とロック孔22b とに挿通させたステー12は、挿通孔21a の内壁とロック孔22b の内壁とに押圧され、せん断力を受けて挟持された状態にあるから、該ステー12とスライダアッセンブリ20とは位置が固定されている。このため、ステー12を支持させた主フレーム4とスライダアッセンブリ20を支持させたベッドフレーム10とは一定の位置を保った状態にあり、ベッドフレーム10に保持させたベッド6は当該時の状態を維持している。
【0031】
ベッド6を傾けたり、傾いた状態にあるベッド6を元の水平な状態に戻す場合には、前記把持レバー35を図5に示す位置から引き上げる。把持レバー35が引き上げられると、支持アーム36が軸36c を中心として図5上時計回り方向に回動する。支持アーム36a の先端には前記入力レバー31が連繋されているから、支持アーム36a のこの回動によって入力レバー31は、この入力レバー31が固定されたロック部材22と共に、該ロック部材22のジャーナル部22a の共通軸221 を中心として第3図上反時計回り方向に、戻しばね34の復元力に抗して回動することになる。ロック部材22が同方向に回動すると、該ロック部材22に形成されたロック孔22b が前記共通軸221 を中心として同方向に旋回する。このとき、ロック部材22は、図3に示すように、前記入力レバー31が摺動体フレーム23に干渉する位置まで回動する。そして、ロック部材22が当該位置まで回動した状態において、そのロック孔22b がスライダブロック21の挿通孔21a と一致した状態となる。この状態にあっては、ステー12はロック孔22b 及び挿通孔21a のいずれからも押圧されないから、ステー12とスライダブロック21とは相対的に摺動自在な状態となる。
【0032】
ステー12が、ロック部材22による拘束が解除された状態となると、前記ベッド6の角度を変更することが可能となる。すなわち、把持レバー35を把持した状態でベッド6を押し下げたり引き上げたりすると、ベッドフレーム10が回動軸10a を中心として回動し、ステー12を支持したベッド支持部11側の軸12b と、摺動体フレーム23を支持したベッドフレーム10側の軸23a との距離が変更されることになるが、ステー12とスライダアッセンブリ20とが相互に摺動すると共に、ステー12がベッド支持部11に対して回動し、スライダアッセンブリ20がベッドフレーム10に対して回動することにより、この距離の変更が許容されて、ベッド6を傾けることができる。しかも、ステー12とスライダアッセンブリ20とは連続して無段階で摺動するから、ベッド6の傾き角度を任意とすることができる。
【0033】
ベッド6を所望の角度に傾けたならば、把持レバー35から手を放して該把持レバー35を解放する。把持レバー35が解放されると、ロック部材22は拘束を解かれるから、前記戻しばね34の復元力を受けて、該ロック部材22が図3上時計回り方向に回動することになる。このロック部材22の回動によってロック孔22b も共通軸221 を中心として同方向に旋回し、挿通孔21a と一致しない状態となる。このため、ステー12が挿通孔21a とロック孔22b のそれぞれの内壁に押圧されて、該ステー12とスライダアッセンブリ20との摺動が阻止された状態となり、ベッド6が当該時の傾きを維持した状態で固定されることになる。
【0034】
したがって、ベッド6は把持レバー35を把持して引き上げることにより、該ベッド6を適宜角度で傾けたり、水平な元の状態に戻したり容易に行なうことができる。
【0035】
以上に説明した実施形態においては、ステー12とスライダアッセンブリ20とからなる摺動機構の停止装置を、開放式保育器のベッド6の角度調整機構に利用した構造について説明したが、他の装置においても利用することができ、特に必要に応じて適宜摺動体の位置を変更する機構を要する装置にとっては好適である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る摺動機構の停止装置によれば、ロック部材を揺動させるだけで摺動軸を停止させることができるので、僅かな力で摺動軸を停止させることができる。しかも、摺動軸のいずれの位置においてもロック部材を揺動させることができるから、任意に位置で摺動軸を停止させることができる。
【0037】
また、請求項2の発明に係る摺動機構の停止装置によれば、移動部材を揺動させるだけで該移動部材を停止させることができるので、僅かな力で移動部材を停止させることができる。しかも、案内軸のいずれの位置においても移動部材を揺動させることができるから、任意の位置で移動部材を停止させることができる。
【0038】
また、請求項3の発明に係る保育器によれば、ロック部材を揺動させるだけでベッドを主フレームに対して所望の傾斜角度に固定できるので、僅かな力により簡単な操作でベッドを傾けることができる。このため、ベッドを患児にとって最適な傾斜状態とすることができ、容態等に応じて適切な処置を行いやすい。
【0039】
また、請求項4の発明に係る保育器によれば、ロック部材を揺動させるだけでベッドを所望の傾斜角度に固定することができる。
【0040】
また、請求項5の発明に係る保育器によれば、移動部材を揺動させるだけでベッドを所望の傾斜角度に固定することができので、ベッドを患児にとって最適な傾斜状態とすることができ、容態等に応じて適切な処置を行いやすい。しかも、移動部材の揺動は僅かな力で行うことができるから、簡単な操作でベッドを傾斜させることができる保育器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る摺動機構の停止装置を説明する図で、この停止装置を開放式保育器のベッドの角度調整機構に実装した場合の当該機構部の側面図で、一部を切断して示してある。
【図2】この発明に係る摺動機構の停止装置を説明する図で、この停止装置を開放式保育器のベッドの角度調整機構に実装した場合の当該機構部の平面図である。
【図3】この発明に係る摺動機構の停止装置を説明する図で、この停止装置を開放式保育器のベッドの角度調整機構に実装した場合の当該機構部の正面図である。
【図4】この発明に係る摺動機構の停止装置を説明する図で、この停止装置を開放式保育器のベッドの角度調整機構に実装した場合のベッドフレームの平面図である。
【図5】この発明に係る摺動機構の停止装置を説明する図で、図4におけるA−A線に沿って示す断面図である。
【図6】この発明に係る摺動機構の停止装置に使用するのに適した摺動体の構造を説明する図で、(a)は側面の断面図、(b)は正面図である。
【図7】この発明に係る摺動機構の停止装置に使用するのに適したロック部材の構造を説明する図で、(a)は平面図、(b)は側面の断面図、(c)は正面図である。
【図8】この発明に係る摺動機構の停止装置によるベッドの角度調整機構を実装するのに適した開放式保育器の概略の斜視図である。
【符号の説明】
1 開放式保育器
4 主フレーム
6 ベッド
10 ベッドフレーム
10a 軸
10b サイドメンバ
10c 支持ブラケット
11 ベッド支持部
11a ブラケット
11b 支持アーム
12 ステー(案内軸)
12a 支持補助部材
12b 軸
12c フランジ部
20 スライダアッセンブリ
21 スライダブロック
21a 挿通孔
21b 軸受ハウジング
211 軸
212 軸
22 ロック部材
22a ジャーナル部
22b ロック孔
221 軸
222 軸
23 摺動体フレーム
23a 軸
24 軸受
31 入力レバー
32 ばね掛止用ロッド
33 ばね掛止板
33a ブラケット
34 戻しばね(付勢手段)
35 把持レバー(操作部材)
36a、36b 支持アーム
36c 軸
Claims (5)
- 案内部材と、該案内部材に案内されて軸方向に摺動自在な摺動軸とからなる摺動機構の、前記摺動軸を任意の位置で停止させる停止装置において、
前記摺動軸を挿通させた挿通孔を備え、前記摺動軸の中心軸から偏倚した中心軸を中心として揺動するロック部材からなることを特徴とする摺動機構の停止装置。 - 案内軸と、この案内軸を挿通した挿通孔を備えて該案内軸の軸方向に摺動する移動部材とからなる摺動機構の、前記移動部材を任意の位置で停止させる停止装置において、
前記移動部材を前記案内軸の中心から偏倚した中心軸を中心として揺動自在に支持したことを特徴とする摺動機構の停止装置。 - 児を寝かせるベッドを主フレームに対して揺動自在に支持した保育器において、
案内部材と、
前記案内部材に案内されて軸方向に摺動自在な摺動軸と、
前記摺動軸を挿通させたロック孔を備え、前記摺動軸の中心軸から偏倚した中心軸を中心として揺動するロック部材とからなり、
前記案内部材又は前記摺動軸のいずれか一方を、前記主フレーム又はベッドのいずれか一方に連繋させて設け、前記案内部材又は摺動軸の他方を、前記主フレーム又はベッドの他方に連繋させて設けたことを特徴とする摺動機構の停止装置を備えた保育器。 - 児を寝かせるベッドを主フレームに対して揺動自在に支持した保育器において、
案内部材と、
前記案内部材に案内されて軸方向に摺動自在な摺動軸と、
前記摺動軸を挿通させたロック孔を備え、前記摺動軸の中心軸から偏倚した中心軸を中心として揺動するロック部材とからなり、
前記ロック部材又は前記摺動軸のいずれか一方を、前記主フレーム又はベッドのいずれか一方に連繋させて設け、前記ロック部材又は摺動軸の他方を、前記主フレーム又はベッドの他方に連繋させて設けたことを特徴とする摺動機構の停止装置を備えた保育器。 - 児を寝かせるベッドを主フレームに対して揺動自在に支持した保育器において、
前記主フレームに揺動自在に支持させた前記ベッドを保持するベッドフレームと、
案内軸と、
前記案内軸を挿通する挿通孔を備えて該案内軸の軸方向に摺動し、該案内軸の中心から偏倚した中心軸を中心として揺動自在に支持された移動部材とからなり、
前記移動部材又は前記案内軸のいずれか一方を、前記主フレーム又はベッドフレームのいずれか一方に連繋させて設け、前記移動部材又は案内軸の他方を、前記主フレーム又はベッドフレームの他方に連繋させて設けたことを特徴とする摺動機構の停止装置を備えた保育器。
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JP12955298A JP4090112B2 (ja) | 1998-04-23 | 1998-04-23 | 摺動機構の停止装置とこれを利用した保育器 |
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