JP4089998B2 - 熱安定性に優れた縮合型芳香族ホスフェート組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定性および経時安定性が改善された縮合型芳香族ホスフェート組成物に関する。特に、本発明は、天然または合成樹脂、特に合成樹脂用の添加剤として有用な縮合型芳香族ホスフェート組成物に関する。より詳細には、樹脂の難燃剤、可塑剤などの樹脂添加剤として有用な縮合型芳香族ホスフェート組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
縮合型芳香族ホスフェートは、合成樹脂の難燃剤または可塑剤などとして、樹脂に難燃性や熱的安定性および/または良好な成形加工性を付与することができることが知られている。このことから、縮合型芳香族ホスフェートは、各種樹脂に有用な添加剤として利用されてきた。一方、近年、難燃剤等の高分子添加剤を添加した各種樹脂の成形加工において、その製造コストを下げるために、成形温度を300℃付近まで上げることによって樹脂の流動性を向上させ、成形サイクルの短縮を行うようになってきている。
【0003】
しかしながら、縮合型芳香族ホスフェートは、このような高い温度で成形すると、著しく着色を呈し易く、各種樹脂に添加した場合、その商品価値を低下させ易いという問題がある。特に、透明な合成樹脂用途の場合、例えば、縮合型芳香族ホスフェートをポリカーボネート樹脂に添加した場合にはその透明性を低下させてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記問題点を解決することであり、即ち、高温下においても着色や酸価の上昇のない熱安定性および経時安定性が改善された縮合型芳香族ホスフェート組成物を提供することである。
【0005】
ここでいう「高温」とは、室温よりも高い温度を意味する。例えば、40℃以上、あるいは60℃以上、さらには、80℃以上というような温度において良好な性能を示す組成物を提供することを、本発明は目的とする。
【0006】
さらに本発明は、合成樹脂の成形温度においても安定な縮合型芳香族ホスフェート組成物を提供することを目的とする。具体的には、縮合型芳香族ホスフェートの融点を超える温度における性能において、従来のホスフェート組成物よりも格段に優れた組成物を提供することを目的とする。具体的には、例えば、芳香族ホスフェートの融点〜350℃までの温度範囲で、従来の組成物よりも極めて優れた性能を示す組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討を重ねた結果、縮合型芳香族ホスフェート(以下単に、「芳香族ホスフェート」ともいう)にエポキシ化合物およびホスファイトを添加することによって上記問題点を改善できることを見いだし本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明はエポキシ化合物およびホスファイトを含有する熱安定性および経時安定性に優れた縮合型芳香族ホスフェート組成物(以下単に、「ホスフェート組成物」ともいう)を提供する。
【0009】
本発明はまず、エポキシ化合物およびホスファイトを含有する、縮合型芳香族ホスフェート用安定化剤を提供する。
【0010】
また、本発明の組成物は、縮合型芳香族ホスフェート、エポキシ化合物およびホスファイトを含有する、樹脂添加剤用の縮合型芳香族ホスフェート組成物である。
【0011】
1つの実施態様では、前記縮合型芳香族ホスフェートが、一般式(I):
【0012】
【化4】
【0013】
[式中、R1〜R4は同一または異なって低級アルキル基、Xは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−、nは0または1の整数、n1〜n4はそれぞれ独立して0から5の整数、mは1から10の整数を示す。]で表される化合物である。
【0014】
1つの実施態様では、前記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ構造を有するエポキシ化合物である。
【0015】
1つの実施態様では、前記エポキシ化合物が、一般式(II):
【0016】
【化5】
【0017】
[式中、A1〜A3は同一または異なって炭素数1〜10のアルキレン基、Y1およびY2は同一または異なって脂環式エポキシ基を示し、zは0または1を示す。]で表される化合物である。
【0018】
1つの実施態様では、前記一般式(II)で表される化合物が、下記エポキシ化合物(1)および/またはエポキシ化合物(2)である:
【0019】
【化6】
【0020】
1つの実施態様では、前記ホスファイトが、ペンタエリスリトールジホスファイト誘導体である。
【0021】
1つの実施態様では、前記ペンタエリスリトールジホスファイト誘導体が、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0022】
1つの実施態様では、前記縮合型芳香族ホスフェート100重量部に対して、前記ホスファイト0.00005〜10重量部、および前記エポキシ化合物0.00005〜10重量部がそれぞれ添加されている。
【0023】
【発明の実施の形態】
(縮合型芳香族ホスフェート)
本発明に用いることのできる芳香族ホスフェートとは、公知の製造法で得られる、粉末状または油状の外観を呈する化合物であって、一分子中に燐原子を2個以上有する芳香族ホスフェートを意味する。具体的には、例えば一般式(I)で表される化合物が挙げられる:
【0024】
【化7】
【0025】
[式中、R1〜R4は同一または異なって低級アルキル基であり、Xは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−であり、nは0または1の整数であり、n1からn4はそれぞれ独立して0から5の整数であり、mは1から10の整数を示す。]
一般式(I)の置換基R1〜R4の「低級アルキル基」とは、炭素数1〜5の直鎖または分枝状のアルキル基であって、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、tert−ペンチル、neo−ペンチル等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0026】
一般式(I)の芳香族ホスフェートの例としては、具体的には、m=1の場合、下記化合物(A)〜化合物(D)等が好ましい例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
【化8】
【0028】
一般式(I)の芳香族ホスフェートは、従来公知の任意の方法で製造することができる。例えば、特開昭63−227632号公報および特開平5−1079号公報に記載の製造方法等により合成することができる。
▲1▼具体的には、例えば、
芳香族モノヒドロキシ化合物とオキシハロゲン化燐(例えば、オキシ塩化燐)とを、触媒(例えば、ルイス酸)の存在下で、溶媒(例えば、有機溶剤)中で、反応させてジアリールホスホロハリデートを合成する工程、
次いで、触媒(例えば、ルイス酸)の存在下で、上記工程の生成物に芳香族ジヒドロキシ化合物を反応させる工程、および
得られる反応混合物から溶媒および触媒を除去する工程
を包含する方法も使用可能である。
▲2▼また例えば、
触媒(例えば、ルイス酸)の存在下で、芳香族ジヒドロキシ化合物とオキシハロゲン化燐(例えば、オキシ塩化燐)とを反応させる工程、
次いで、触媒(例えば、ルイス酸)の存在下で、上記工程の生成物に芳香族モノヒドロキシ化合物を反応させる工程、および
上記工程で得られる反応混合物から触媒を除去する工程
を包含する方法も使用可能である。
▲3▼また例えば、
触媒(例えば、ルイス酸)の存在下で、オキシハロゲン化燐(例えば、オキシ塩化燐)と芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族モノヒドロキシ化合物とを同時に反応させる工程、および
得られる反応混合物から触媒を除去する工程
を包含する方法も使用可能である。
【0029】
これらの方法により、一般式(I)で示される芳香族ホスフェートを得ることができる。このようにして得られる芳香族ホスフェート組成物は、一般的に一分子中に燐原子を1個有する単量型の芳香族ホスフェート(以下、単量型燐酸エステルという)を含み得る。従って、単量型燐酸エステルが存在しないことが要求される合成樹脂用途に用いられる場合、またはその存在量が一定量以下に限定される合成樹脂用途に用いられる場合には、芳香族ホスフェート組成物から、単量型燐酸エステルを除去する工程を設けてもよい。しかし、芳香族ホスフェートを添加した樹脂材料の必要性能が達成される限り、単量型燐酸エステルを除去する工程を設けなくてもよい。
【0030】
芳香族モノヒドロキシ化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とのモル比は特に限定されないが、芳香族モノヒドロキシ化合物/芳香族ジヒドロキシ化合物=1.3〜5.0が好ましく、2.5〜4.0がより好ましい。このような範囲であれば、上記式(I)中のmを好ましい範囲に制御することが容易になる。
【0031】
ここで、上記式(I)中のmは、1〜10であることが好ましい。より好ましくは、m=1〜5である。最も好ましくは、m=1である。mが小さすぎる場合には、組成物が揮散性の低いトリアリールホスフェートを含み易い。逆にmが大きすぎる場合には、分散性が低下しやすくなり、そのため、樹脂にホスフェート組成物を分散しにくくなり、ホスフェート組成物を添加して得られる樹脂材料の難燃性改良などの効果が十分に得られにくい。
【0032】
(芳香族モノヒドロキシ化合物)
本発明の芳香族ホスフェートの製造に用いられる芳香族モノヒドロキシ化合物とは、フェノールおよびフェノール置換体であって1つのフェノール性水酸基を有する化合物をいう。
【0033】
好ましい芳香族モノヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。
【0034】
(芳香族ジヒドロキシ化合物)
芳香族ホスフェートの製造に用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、フェノール性水酸基を分子内に2個有する任意の化合物が使用可能である。好ましい芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールFおよび4,4−ビフェノールなどが挙げられる。これらの化合物のフェノール性水酸基以外の部分は、必要に応じて、任意の置換基で置換され得る。
【0035】
(エポキシ化合物)
本明細書中において、エポキシ化合物とは、1分子中にエポキシ基を有し、室温下で液状または粉末状の外観を呈する任意の化合物をいう。1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物が好ましい。より好ましくは、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物である。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、ジメチルビスフェノールジグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、シクロペンテンオキサイド基を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンのエポキシ化物等を2個以上含む脂環式エポキシ樹脂、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは脂環式エポキシ構造を有するエポキシ化合物であり、その中でも特に好ましくは一般式(II)で表されるエポキシ化合物である:
【0036】
【化9】
【0037】
[式中、A1〜A3は同一または異なって炭素数1〜10のアルキレン基、Y1およびY2は同一または異なって脂環式エポキシ基を示し、zは0または1を示す。]
ここで、脂環式エポキシ構造とは、エポキシ環を構成する2個の炭素原子が脂肪族環の一部を構成する構造をいう。このような脂環式エポキシ構造の具体例としては、以下の式(E)、(F)、および(G)で表される構造などが挙げられる。
【0038】
【化10】
【0039】
もちろん、これらの環構造は、その脂環式エポキシ構造としての性能を失わない範囲で、必要に応じて任意の部位で任意の置換基により置換され得る。
【0040】
さらに、化合物(II)の中でも、熱着色や酸化による経時変化を防止する効果に優れる点で以下に示すエポキシ化合物(1)またはエポキシ化合物(2)が好ましい。
【0041】
【化11】
【0042】
これらのエポキシ化合物は単独で使用しても良く、または2種類以上を併用して使用しても差し支えない。
【0043】
これらのエポキシ化合物の添加量は、芳香族ホスフェート100重量部に対し、好ましくは0.00005〜10重量部であり、より好ましくは0.0001〜1重量部であり、さらに好ましくは0.001〜0.1重量部である。添加量が少なすぎる場合には、十分な安定化効果が得られにくい。逆に、上記の量を超える添加量を用いても、安定化効果が飽和してしまい、それ以上の安定化効果の向上は得られにくい。
【0044】
エポキシ化合物は、通常、芳香族ホスフェートの合成反応の後に添加される。好ましくは、芳香族ホスフェートの精製工程から製品化工程までのいずれかの時点に添加される。より好ましくは、系内に水の存在しない状態で添加される。系内に水が存在する状態では水がエポキシ化合物を分解する虞があるために水分を除去した精製後に添加することが好ましい。
【0045】
工業的な製造プロセスにおいては、通常、精製工程として、水、または酸性水溶液、中性水溶液、もしくはアルカリ性水溶液で洗浄して触媒または不純物を除去することが行われる。従って、これらの水を使用する工程の後に、水分を除去し、その後にエポキシ化合物を添加することが好ましい。
【0046】
(ホスファイト)
本明細書中において、ホスファイトとは、任意の亜燐酸エステルまたは亜燐酸塩をいう。好ましくは、亜燐酸エステルである。ここで、亜燐酸エステルとは、亜燐酸と、任意のモノヒドロキシ化合物とがエステル結合して形成された化合物をいう。ここで、モノヒドロキシ化合物としては、任意のモノヒドロキシ化合物が使用可能であり、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソデカノールなどの脂肪族モノヒドロキシ化合物であってもよく、前記したような芳香族モノヒドロキシ化合物であってもよい。
【0047】
本発明においては、上記のような任意のホスファイトが使用可能である。
【0048】
具体的には例えば、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−tert−フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−tert−5−メチルフェニル)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(3−tert−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタントリホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−フェニル)オクタデシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス〔2,2’−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)〕トリプロパノールアミンホスファイト、ビス〔2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−アミルフェニル)〕−2,2−ジフェニルプロパンジホスファイト、および上述した以外のペンタエリスリトールジホスファイト誘導体などが挙げられる。これらのホスファイトは単独で使用してもよく、または2種類以上を併用して使用しても差し支えない。
【0049】
これらホスファイトのなかでも熱着色の防止効果に優れる点でペンタエリスリトールジホスファイト誘導体が好ましい。ここで、ペンタエリスリトールジホスファイト誘導体とは、分子中に
【0050】
【化12】
【0051】
で表される分子構造を有してなる化合物をいう。そのなかでも特に好ましくは下記式(a)
【0052】
【化13】
【0053】
で表されるビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。特に好ましくはビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0054】
これらのホスファイトの添加量は、芳香族ホスフェート100重量部に対し、好ましくは0.00005〜10重量部であり、より好ましくは0.0001〜1重量部であり、さらに好ましくは0.001〜0.1重量部である。添加量が少なすぎる場合には、十分な安定化効果が得られにくい。逆に上記範囲を超える添加量を用いても、安定化効果が飽和してしまい、それ以上の安定化効果が得られにくい。
【0055】
ホスファイトは、任意のタイミングで芳香族ホスフェートに添加され得る。好ましくは、芳香族ホスフェートの合成反応後に添加される。
【0056】
工業的に製造する場合であれば、通常、芳香族ホスフェート合成時の溶媒を除去する工程、具体的には、例えば、水蒸気蒸留または減圧蒸留などの操作が行われる。この場合、溶媒除去工程において、添加したホスファイトが溶媒と伴に系外へ除去される虞があるため、溶媒除去工程後に、ホスファイトを添加することが好ましい。
【0057】
(他の添加剤)
本発明のホスフェート組成物には、所望により、その性能に悪影響を及ぼさない範囲内において公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、安定剤、無機充填剤、帯電防止剤などの樹脂添加剤を添加しても差し支えない。
【0058】
酸化防止剤の例としては、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ヒドロキノン系化合物、フェノール系化合物、イオウ系化合物などが挙げられる。
【0059】
無機充填剤の例としては、マイカ、タルク、アルミナなどが挙げられる。
【0060】
帯電防止剤の例としては、カチオン系活性界面活性剤または非イオン系活性界面活性剤などが挙げられる。
【0061】
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系化合物、サリチレート系化合物、またはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0062】
滑剤の例としては、脂肪酸系化合物、脂肪酸アミド系化合物、エステル系化合物、またはアルコール系化合物などが挙げられる。
【0063】
本発明のホスフェート組成物は、難燃剤または可塑剤などの添加剤として樹脂に添加することができる。ホスフェート組成物は、従来公知の任意の方法で添加され得る。ホスフェート組成物、樹脂および必要に応じて添加される各種樹脂添加剤は、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、またはニーダーミキサー等の公知の方法により混練され得、また所望の形態に成形され得る。各成分は、任意の配合順序および任意の混合方法で配合および混合され得る。例えば、樹脂を塊状重合により製造する際に、仕込まれる単量体にホスフェート組成物を添加してもよく、あるいは樹脂の塊状重合の反応終期にホスフェート組成物を添加してもよく、あるいは合成された樹脂を成形する際にホスフェート組成物を添加してもよい。
【0064】
ホスフェート組成物を添加された樹脂材料は、公知の方法により板状、シート状またはフィルム状などの所望の形状に成形加工して使用される。
【0065】
(樹脂)
ホスフェート組成物は、公知の任意の樹脂に添加され得る。樹脂は、天然樹脂であってもよく、合成樹脂であってもよい。好ましくは、合成樹脂である。合成樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0066】
好ましい合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂としては、以下の樹脂が挙げられる:
塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、スチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、変性ポリフェニレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、および液晶ポリマー。
【0067】
好ましい熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、およびジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。
【0068】
これらの樹脂は、単独で用いてもよく、任意の組合せの混合物として用いてもよい。
【0069】
これらの樹脂には、必要に応じて、ホスフェート組成物以外の添加剤を添加してもよい。例えば、着色料、または充填剤などである。さらに必要に応じて、これらの樹脂には、有機または無機の補強剤を用いていわゆる複合材料としてもよい。
【0070】
(作用)
本発明は、いかなる理論にも拘束されないが、本発明の作用メカニズムとしては、縮合型芳香族ホスフェートと、ホスファイトと、エポキシ化合物との相互作用により、縮合型芳香族ホスフェートの耐熱性が改良されると考えられる。
【0071】
【実施例】
次に実施例により本発明を詳細に説明する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
各種物性は下記の試験方法により測定した。色相測定(Hz):芳香族ホスフェートを希釈せずにハーゼン色数法により測定した。
酸価測定:JIS規格K−0070に準拠して行った。
【0073】
(製造例1)縮合型芳香族ホスフェートの製造
撹拌機、滴下ロート、温度計および水スクラバーを連結したコンデンサーを装着した4つ口フラスコに、ビスフェノールA250g(1.10モル)、オキシ塩化燐606g(3.95モル)、塩化マグネシウム3.0gを入れ、徐々に昇温しながら混合した。5時間後、反応液の温度が105℃に達した時点で、過剰のオキシ塩化燐を減圧下、回収した。次いで125℃にてフェノール417g(4.42モル)を加えた後、155℃まで7時間かけて昇温した。更に同温度で減圧下、2時間攪拌を行うことにより反応を完結させた。
【0074】
反応完結後、反応液にトルエン200gを添加し、燐酸水溶液240gで処理することにより残存する触媒などを除去した。次いで、得られたオイル相を130℃にて脱水した後、プロピレンオキシド8gを添加し120℃で2時間攪拌した。続いて約60℃の湯240gにて洗浄を行った。その後、再度、130℃で脱水した後、約60℃の湯240gで洗浄を行なった。
【0075】
得られたオイル相から、減圧下で、トルエン、未反応原料、および水などの低沸点物を除去した。次いで、得られたオイル相をセライト濾過して、化合物(A)を77%含む無色透明液体の芳香族ホスフェート782gを得た。この芳香族ホスフェートは、色相ハーゼン40、酸価(AV)0.008KOH mg/gであった。
【0076】
(実施例1)
製造例1で得られた芳香族ホスフェート500gに、ホスファイトとしてビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.5g、エポキシ化合物として前記エポキシ化合物(1)0.5gをそれぞれ添加し、100〜120℃で0.5時間かけて混ぜ合わせてホスフェート組成物を得た。該ホスフェート組成物を100℃×672時間(28日間)の条件で耐熱試験を行い、色相と酸価を測定した。
【0077】
(実施例2)
エポキシ化合物(1)に代えてエポキシ化合物(2)を使用した以外は、実施例1と同様にホスフェート組成物を調製し、同様の手順で耐熱試験ならびに色相および酸価の測定を行った。
【0078】
(比較例1)
ホスファイトおよびエポキシ化合物を使用しなかった以外は、実施例1と同様にホスフェート組成物を調製し、同様の手順で耐熱試験ならびに色相および酸価の測定を行った。
【0079】
(比較例2)
ホスファイトを使用しなかった以外は、実施例1と同様にホスフェート組成物を調製し、同様の手順で耐熱試験ならびに色相および酸価の測定を行った。
【0080】
(比較例3)
エポキシ化合物を使用しなかった以外は、実施例1と同様にホスフェート組成物を調製し、同様の手順で耐熱試験ならびに色相および酸価の測定を行った。
【0081】
各実施例および各比較例の結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1より、本発明のホスフェート組成物は、色相の数値が低く、かつ酸価が低いことが理解される。色相の数値が低いことは、着色しにくいことを意味し、酸価が低いことは、熱による分解が少ないことを意味すると考えられる。これらのデータから、本発明の組成物は、熱安定性および経時安定性に優れ、樹脂用の添加剤として有用であり、特に透明樹脂用の添加剤として使用した場合に良好な性能を発揮できることが理解される。
【0084】
【発明の効果】
本発明により提供されるホスフェート組成物は、熱安定性および経時安定性に優れるため樹脂添加剤として添加した際、成形加工時の高温下においても着色や分解を防止できる。従って、得られる樹脂組成物は難燃性だけでなく耐着色性や耐候性にも優れるため、VTR、分電盤、テレビ、エアコン、冷蔵庫、オーディオなどの家庭電化製品、パソコン、ワープロ、プリンター、ファックス、電話などのOA機器、コネクタ、スイッチ、モーター部品などの電気材料、コンソールボックス、バンパーなどの自動車部品および建築材料などの広い用途に好適に使用され得る。
【0085】
本発明によれば、上記のような用途に使用される樹脂材料用添加剤として有用な、高温下においても着色や酸価の上昇のない熱安定性および経時安定性が改善された縮合型芳香族ホスフェート組成物が提供される。
【0086】
ここでいう「高温」とは、室温よりも高い温度を意味する。本発明によれば、例えば、40℃以上、あるいは60℃以上、さらには、80℃以上というような温度において良好な性能を示す組成物が提供される。さらに本発明によれば、樹脂の成形温度においても安定な縮合型芳香族ホスフェート組成物が提供される。さらに本発明によれば、縮合型芳香族ホスフェートの融点を超える温度における性能において、従来のホスフェート組成物よりも格段に優れた組成物が提供される。具体的には、例えば、芳香族ホスフェートの融点〜350℃までの温度範囲で、従来の組成物よりも極めて優れた性能を示す組成物が提供される。
Claims (3)
- 縮合型芳香族ホスフェート、エポキシ化合物およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを含有する、樹脂添加剤用の縮合型芳香族ホスフェート組成物であって、
該縮合型芳香族ホスフェートが、一般式(I):
該エポキシ化合物が、下記エポキシ化合物(1)および/またはエポキシ化合物(2)である、組成物:
- 前記縮合型芳香族ホスフェート100重量部に対して、前記ホスファイト0.00005〜10重量部、および前記エポキシ化合物0.00005〜10重量部がそれぞれ添加されている、請求項2に記載の組成物。
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