JP4088995B2 - 機能性無機塗膜の形成方法および機能性塗装品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌性、防カビ性、防曇性、帯電防止性、防汚性、耐候性、耐久性等の各種機能に優れた機能性塗膜を形成する方法と、この方法により得られる機能性塗装品に関する。
【0002】
【従来の技術】
光半導体に紫外線が当たると活性酸素が発生すること(光触媒性)が知られている。活性酸素は有機物を酸化して分解することができるため、光半導体を含む塗膜を基材の表面に形成させた材料には、その表面に付着したカーボン系汚れ成分(たとえば、自動車の排気ガス中に含まれるカーボン留分や、タバコのヤニ等)を分解する自己洗浄効果;アミン化合物、アルデヒド化合物に代表される悪臭成分を分解する消臭効果;大腸菌、黄色ブドウ球菌に代表される菌成分の発生を防ぐ抗菌効果;防カビ効果等が期待される。また、光半導体を含む塗膜に紫外線が当たると、光半導体がその光触媒作用で、空気中の水分または塗膜表面に付着した水分を水酸化ラジカル化し、この水酸化ラジカルが、塗膜表面に付着した、水をはじく有機物等の汚れを分解除去することにより、塗膜表面に対する水の接触角が低下して塗膜表面が水に濡れ(馴染み)やすくなるという親水性(水濡れ性)向上効果もある(特開昭61−83106号公報、WO96/29375公報等参照)。この親水性向上効果から、屋内の部材においては、ガラスや鏡が水滴で曇りにくい防曇効果が期待され、屋外の部材においては、付着した汚れが雨水によって洗浄される防汚効果が期待される。また、光半導体を含む塗膜を基材の表面に形成させた材料には、光半導体の光触媒作用による帯電防止機能もあり、この機能によっても防汚効果が期待される。
【0003】
しかし、上述した、光半導体を含む塗膜が表面に形成された材料は、光半導体が効果を発揮するまでにある程度の時間がかかるため、製膜後、光半導体の効果が発揮されるまでの間は、汚れが付着しやすい、効果がわかりにくい等の問題がある。また、紫外線の当たらない場所では光半導体が効果を発揮するのにさらに長い時間がかかるため使用しにくい等の問題点がある。
【0004】
これらの問題点を解消するため、本発明者らは、先に、シリコーンレジンを主成分とする無機塗料中に光半導体と界面活性剤を含有してなる機能性無機塗料を開発し、すでに特許出願している(特願平9−96260号)。この機能性無機塗料は、界面活性剤が添加されているため、該塗料の硬化被膜に紫外線が照射されなくても製膜当初から、界面活性剤が該被膜に高い親水性(水濡れ性)を付与して防曇性と雨水洗浄による防汚性とを発揮させることができる。光半導体は、その効果を発揮するまである程度の時間がかかるが、界面活性剤を併用すると、光半導体が効果を発揮するまでの期間は、その機能(特に塗膜表面の親水性)を界面活性剤が補完するので、光半導体と界面活性剤を併用した塗料から得られる塗膜は、製膜当初から親水性等に優れた理想的な機能性塗膜になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本発明者らのその後の検討により、光半導体と界面活性剤を併用した上記従来の機能性無機塗料には、下記1)〜2)の問題点があることがわかった。
1)光半導体は+の電位を有しているため、カチオン系または両性の界面活性剤のような電荷を持つ界面活性剤と併用した場合は、光半導体同士が凝集して、その分散が不均一になりやすいため、光半導体による各種機能の発現が不充分になりやすい。
【0006】
2)光半導体の含有量が少ない場合、大部分の光半導体の表面が塗膜に覆われて塗膜表面に露出していないので、光半導体が空気中の水分または塗膜表面に付着した水分と接触しにくいため、水酸化ラジカルが発生しにくい。そのため、光半導体による上記親水性向上効果が充分発揮されない。光半導体の含有量を増やせば、このような問題は避けられると考えられるが、光半導体の含有量の増大は、クラックが発生しやすくなる等、塗膜強度等の塗膜性能を低下させる傾向があるとともに、コスト上不利である。それゆえ、塗膜強度等の塗膜性能およびコストの点からは、光半導体の含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
【0007】
そこで、本発明の課題は、光半導体が均一に分散しているとともに、光半導体の含有量が少なくても充分な親水性を有する機能性無機塗膜を形成することのできる方法と、この方法により得られる機能性塗装品とを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは種々検討を重ねた。その結果、光半導体と界面活性剤を併用した上記機能性無機塗料に関し、以下の2つのことを見出し、本発明を完成するに至った。
まず、第1に、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を用いるようにすると、ノニオン系界面活性剤は電荷を持たないので、光半導体の凝集が起こりにくくなって、光半導体を均一に分散させることが可能になるため、光半導体による各種機能を充分発揮させることができるということである。
【0009】
第2に、上記機能性無機塗料を用いて塗膜を形成させる際に、界面活性剤を塗膜から飛散させるようにすると、飛散した界面活性剤が存在していた部分が微細な空隙になって塗膜が微細に多孔質化する。その結果、得られる塗膜が透湿(水)性を有するようになって、空気中の水分または塗膜表面に付着した水分を透過するようになるため、光半導体が効果を発揮するまで時間がまだ経過していない製膜当初であっても、塗膜表面が親水性を有して水に濡れやすくなる。また、塗膜が微細に多孔質化して透湿性を有するようになると、光半導体の含有量が少なくて光半導体が塗膜表面に充分露出していなくても、光半導体が塗膜を透過した水分と接触して水酸化ラジカルを発生させることができるので、高親水性が発揮されるということである。
【0010】
すなわち、本発明にかかる機能性無機塗膜の形成方法は、シリコーンレジンを主成分とする無機塗料中に光半導体と界面活性剤を、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100重量部に対し、それぞれ、1〜80重量部、0.1〜20重量部含有してなる機能性無機塗料を基材に塗装することにより前記基材の表面に機能性無機塗膜を形成するにあたり、前記界面活性剤として100〜1,000の重量平均分子量を有するノニオン系界面活性剤を用いるとともに、前記界面活性剤を前記塗膜から飛散させることにより前記塗膜が微細な空隙を有するようにすることを特徴とする。
【0011】
なお、本明細書中、機能性無機塗料におけるシリコーンレジンの各成分、光半導体および界面活性剤の配合量は、すべて固形分基準である。
本発明の機能性無機塗膜の形成方法において、界面活性剤の飛散は、たとえば、90〜350℃の加熱により行われる。
【0012】
本発明で用いられるシリコーンレジンは、下記シリコーンレジン(1)または(2)であることが好ましい。
シリコーンレジン(1)は、下記(A)成分を含む。
(A)成分:
(A1 )一般式R2 Si(OR1 )3 で表されるケイ素化合物100重量部に対し、(A2 )一般式Si(OR1 )4 で表されるケイ素化合物および/またはコロイダルシリカ5〜30000重量部と、(A3 )一般式R2 2 Si(OR1 )2 で表されるケイ素化合物0〜60重量部とを含む加水分解性混合物(ここでR1 、R2 は1価の炭化水素基を示す)の加水分解重縮合物であって、この加水分解重縮合物の重量平均分子量がポリスチレン換算で900以上になるように調整されているオルガノシロキサン(以下、これを「オルガノシロキサン(A)」と称することがある)。
【0013】
シリコーンレジン(2)は、下記(B)、(C)、(D)および(E)成分を含み、(B)成分の原料の加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がm=1のオルガノシランである。
(B)成分:
一般式R3 m SiX4-m …(I)
で表される(ここでR3 は同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、mは0〜3の整数、Xは加水分解性基を示す。)加水分解性オルガノシランを、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒中で、前記加水分解性基(X)1モル当量当たり水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなるオルガノシランオリゴマー(以下、これを「オルガノシランオリゴマー(B)」と称することがある)。
(C)成分:
平均組成式R4 a Si(OH)b O(4-a-b)/2 …(II)
で表され(ここでR4 は同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)、分子中にシラノール基を含有するポリオルガノシロキサン(以下、これを「(シラノール基含有)ポリオルガノシロキサン(C)」と称することがある)。
(D)成分:
シリカ(以下、これを「シリカ(D)」と称することがある)。
(E)成分:
硬化触媒(以下、これを「硬化触媒(E)」と称することがある)。
【0014】
シリコーンレジン(2)の前記(B)成分は、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒に前記(D)成分が分散してなるコロイダルシリカ中で、前記加水分解性オルガノシランを、前記加水分解性基(X)1モル当量当たり水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなり、前記(D)成分を、前記(B)成分と前記(D)成分との合計量に対し固形分として5〜95重量%含有するシリカ分散オルガノシランオリゴマーであることが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる光半導体は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケルおよび酸化レニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物であることが好ましい。
【0016】
本発明で用いられる光半導体は、粉末状またはゾル状であってもかまわない。
本発明で用いられる光半導体の表面には、金属が担持されていることが好ましい。担持される前記金属は、銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、白金、金、パラジウム、カドミウム、コバルト、ロジウムおよびルテニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
本発明の機能性無機塗膜の形成方法では、前記基材の表面に前記機能性無機塗料を、たとえば厚さ0.01〜10μmに塗装する。
本発明で用いられる基材は、金属、ガラス、ホ−ロ−、セラミックス、セメント、コンクリ−ト、木、木材、プラスチック、無機繊維強化プラスチック、これらの基材のうちのいずれかの表面に少なくとも1層の無機物被膜および/または少なくとも1層の有機物被膜を有する塗装基材の各単独材料、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる複合材料、および、これらのうちの少なくとも2つを積層してなる積層材料からなる群より選ばれていることが好ましい。
【0018】
前記塗装基材が表面に有する前記被膜はプライマー層であってもよい。
本発明にかかる機能性塗装品は、本発明の機能性無機塗膜の形成方法により得られたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる機能性無機塗料に含まれるシリコーンレジンは、造膜成分として用いられる。
シリコーンレジンとしては、光半導体を混入させても経時劣化しない点と、得られる塗膜の耐候性、硬度の点で、前記(A)成分を含むシリコーンレジン(1)であることが好ましく、光半導体を混入させても経時劣化しない点と、室温(常温)硬化性の点と、得られる塗膜の耐候性、硬度の点で、前記(B)、(C)、(D)および(E)成分を含むシリコーンレジン(2)であることが好ましい。これらシリコーンレジン(1)および(2)のうちでもシリコーンレジン(1)が、より高い硬度の塗膜が得られる点で特に好ましい。
【0020】
以下では、まず、シリコーンレジン(1)の各成分について説明する。
シリコーンレジン(1)に含まれる前記(A)成分すなわちオルガノシロキサン(A)の原料としては、前記ケイ素化合物(A1 )〜(A3 )を含む加水分解性混合物が用いられる。
コロイダルシリカ以外のケイ素化合物(A1 )〜(A3 )は、
一般式R2 p Si(OR1 )4-p …(III)
で総体的に表すことができる(ここでR1 、R2 は1価の炭化水素基を示し、pは0〜2の整数)。
【0021】
R2 としては、特に限定はされないが、たとえば、置換または非置換で炭素数1〜8の1価の炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、合成の容易さ或いは入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基およびフェニル基が好ましい。
【0022】
また、R1 としては、特に限定はされないが、たとえば、炭素数1〜4のアルキル基を主原料とするものが用いられる。
特に、p=0のテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示でき、p=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。また、p=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示できる。
【0023】
これらR1 、R2 は、ケイ素化合物(A1 )〜(A3 )の間で同一のものであってもよいし、違うものであってもよい。
オルガノシロキサン(A)は、たとえば、前記加水分解性混合物を適当な溶剤で希釈し、そこに硬化剤としての水および必要に応じて触媒(たとえば、塩酸、酢酸、ハロゲン化シラン、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸および無機酸等の1種または2種以上)等を必要量添加して(必要に応じ加温(たとえば、40〜100℃)してもよい)、加水分解および重縮合反応を行わせてプレポリマー化させることにより調製することができる。その際、得られるプレポリマー(加水分解重縮合物)の重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で900以上、好ましくは1000以上になるように調整する。プレポリマーの分子量分布(重量平均分子量(Mw))が900より小さいときは、シリコーンレジン(1)の縮重合の際の硬化収縮が大きくて、硬化後に塗膜にクラックが発生しやすくなったりする。
【0024】
オルガノシロキサン(A)を調製する際の原料(A1 )〜(A3 )の使用量は、固形分基準で、(A1 )100重量部に対して、(A2 )5〜30000重量部(好ましくは10〜25000重量部、より好ましくは20〜20000重量部)、(A3 )60重量部以下(好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下)の割合である。(A2 )の使用量が上記範囲より少ないか、あるいは、(A3)の使用量が上記範囲より多いと、硬化被膜の所望の硬度が得られない(硬度が低くなる)という問題がある。また、(A2 )の使用量が上記範囲より多いと、硬化被膜の架橋密度が高すぎて硬度が高くなりすぎ、そのためクラックを発生しやすいという問題がある。
【0025】
原料(A2 )としては、前記一般式Si(OR1 )4 で表されるケイ素化合物およびコロイダルシリカのうちのいずれか一方のみまたは両方が用いられる。シリカは、機能性無機塗料の塗布硬化被膜の硬度を高くし、平滑性と耐クラック性を改善する効果がある。使用できるコロイダルシリカとしては、特に限定はされないが、たとえば、水分散性あるいはアルコール等の非水系の有機溶媒分散性コロイダルシリカが使用できる。一般に、このようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50重量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定できる。また、水分散性コロイダルシリカを使用する場合、固形分以外の成分として存在する水は、後に示すように硬化剤として用いることができる。水分散性コロイダルシリカは、通常、水ガラスから作られるが、市販品として容易に入手することができる。また、有機溶媒分散性コロイダルシリカは、前記水分散性コロイダルシリカの水を有機溶媒と置換することで容易に調製することができる。このような有機溶媒分散性コロイダルシリカも水分散性コロイダルシリカと同様に市販品として容易に入手することができる。有機溶媒分散性コロイダルシリカにおいて、コロイダルシリカが分散している有機溶媒の種類は、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;およびジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上のものを使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等も用いることができる。
【0026】
なお、原料(A2 )の少なくとも一部としてコロイダルシリカを用いる場合、(A2 )の前記使用量に含まれるコロイダルシリカの量は、シリカ分としての重量部である。
また、シリカを全く用いずに調製されたオルガノシロキサン(A)に必要に応じシリカを添加混合してもよいし、あるいは、オルガノシロキサン(A)の調製にシリカを用いた場合でも、調製後のオルガノシロキサン(A)に必要に応じシリカを追加混合してもよい。それらの場合に使用できるシリカとしては、特に限定されず、公知のものを使用できる。また、その際のシリカの形態は、特に限定されず、たとえば、粉体の形でも前記コロイダルシリカの形でもよい。
【0027】
シリカは、前述の効果があるが、配合量が多すぎると、機能性無機塗料の硬化被膜が硬くなりすぎて同被膜のクラックの発生を招来する原因となる恐れがある。そのため、シリコーンレジン(1)を用いた塗料全量中でのシリカの配合量は、前記(A)成分との合計量に対する固形分として、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%の範囲内で含有される。この含有量が1重量%未満であると、所望の被膜硬度が得られなくなる傾向がある。一方、50重量%を越えると、クラックの発生を招来しやすくなる。
【0028】
オルガノシロキサン(A)の原料である前記加水分解性混合物の加水分解重縮合反応の際に用いられる硬化剤としては、水が用いられるが、この量としては、加水分解性混合物中に含まれるOR1 基1モル当量当たり、水0.01〜3.0モルが好ましく、0.3〜1.5モルがさらに好ましい。
加水分解性混合物の加水分解重縮合反応の際に用いられる希釈溶剤としては、コロイダルシリカの分散溶媒として前述した、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;およびジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上のものを使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用してトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども例示することができる。
【0029】
また、オルガノシロキサン(A)のpHは3.8〜6の範囲内に調整されていることが好ましい。pHがこの範囲内であれば、前記の分子量の範囲内で、安定してオルガノシロキサン(A)を使用することができる。pHがこの範囲外であると、オルガノシロキサン(A)の安定性が悪いため、塗料調製時からの使用できる期間が限られてしまう。ここで、pH調整方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、オルガノシロキサン(A)の原料混合時、pHが3.8未満となった場合は、たとえば、アンモニア等の塩基性試薬を用いて前記範囲内のpHに調整すればよく、pHが6を超えた場合も、たとえば、塩酸等の酸性試薬を用いて調整すればよい。また、pHによっては、分子量が小さいまま逆に反応が進まず、前記分子量範囲に到達させるのに時間がかかる場合は、オルガノシロキサン(A)を加熱して反応を促進してもよいし、酸性試薬でpHを下げて反応を進めた後、塩基性試薬で所定のpHに戻してもよい。
【0030】
シリコーンレジン(1)は、硬化触媒を含む必要はないが、(A)成分の縮合反応を促進することによって、塗布被膜の硬化を促進させる目的で必要に応じて、さらに硬化触媒を含むことができる。硬化触媒としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルチタン酸塩類;オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン塩類;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミン等のアミン類、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物;酢酸リチウム、酢酸カリウム、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン類等が挙げられる。しかし、これらの他に、(A)成分の縮合反応の促進に有効なものであれば特に制限はない。
【0031】
シリコーンレジン(1)が硬化触媒をも含む場合、その量は、固形分基準で、オルガノシロキサン(A)の全縮合化合物換算量に対し、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8%以下である。10重量%を超えると、機能性無機塗料の貯蔵安定性を損なう可能性がある。
機能性無機塗料中に含まれるシリコーンレジンがシリコーンレジン(1)である場合、機能性無機塗料は、低温加熱するか、あるいは、常温放置することにより、(A)成分の有する加水分解性基同士が縮合反応して硬化被膜を形成する。したがって、このような機能性無機塗料は、常温で硬化するときにも湿度の影響をほとんど受けない。また、加熱処理を行えば、縮合反応を促進して硬化被膜を形成することができる。
次に、シリコーンレジン(2)の各成分について説明する。
【0032】
シリコーンレジン(2)に含まれる前記(B)成分すなわちオルガノシランオリゴマー(B)は、機能性無機塗料の硬化被膜形成に際して、硬化反応に預かる官能性基としての加水分解性基(X)を有するベースポリマーの主成分である。これは、たとえば、有機溶媒または水(有機溶媒と水との混合溶媒でもよい)に、前記一般式(I)で表される加水分解性オルガノシランの1種あるいは2種以上を加え、水(溶媒中に予め含まれていた水および/または別途添加された水)を前記加水分解性基(X)1モル当量当たり水0.001〜0.5モル使用する条件下で、該加水分解性オルガノシランを部分加水分解することで得られる。
【0033】
前記一般式(I)で表される加水分解性オルガノシラン中の基R3 としては、同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基であれば特に限定はされないが、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、合成の容易さ或いは入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基およびフェニル基が好ましい。
【0034】
前記一般式(I)中、加水分解性基Xとしては、特に限定はされないが、たとえば、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さおよびオルガノシランオリゴマー(B)を調製しやすいことから、アルコキシ基が好ましい。
【0035】
前記加水分解性オルガノシランの具体例としては、前記一般式(I)中のmが0〜3の整数であるモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−の各官能性のアルコキシシラン類、アセトキシシラン類、オキシムシラン類、エノキシシラン類、アミノシラン類、アミノキシシラン類、アミドシラン類などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さおよびオルガノシランオリゴマー(B)を調製しやすいことから、アルコキシシラン類が好ましい。
【0036】
アルコキシシラン類のうち、特に、m=0のテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示でき、m=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。また、m=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示でき、m=3のトリオルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどが例示できる。さらに、一般にシランカップリング剤と呼ばれるオルガノシラン化合物もアルコキシシラン類に含まれる。
【0037】
これらの前記一般式(I)で表される加水分解性オルガノシランの内、50モル%以上(好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上)は、m=1で表される三官能性のものである。これが、50モル%未満では、十分な塗膜硬度が得られないとともに、塗膜の乾燥硬化性が劣りやすい。
オルガノシランオリゴマー(B)を調製する際に用いられる水の量は、前述のように、前記加水分解性オルガノシランが持つ加水分解性基(X)1モル当量当たり0.001〜0.5モルの範囲内、好ましくは0.01〜0.4モルの範囲内である。水の使用量が0.001モル未満であると、十分な部分加水分解物が得られず、0.5モルを超えると、部分加水分解物の安定性が悪くなる。ここで、加水分解性オルガノシランの部分加水分解反応における水の上記使用量は、反応溶媒として有機溶媒のみを用いた場合は別途に添加された水の量であり、反応溶媒として水のみまたは有機溶媒と水との混合溶媒を用いた場合は、反応溶媒中に予め含まれていた水および別途添加の水のうちの少なくとも反応溶媒中に予め含まれていた水の量である。水の量が反応溶媒中に予め含まれていた水だけで上記使用量に足りるならば別途に水を添加しなくてもよいのであるが、水の量が反応溶媒中に予め含まれていた水だけでは上記使用量に足りない場合は、別途に水を上記使用量に達するまで添加する必要がある。その場合、上記水の使用量は、反応溶媒中に予め含まれていた水と別途添加された水の合計量である。なお、反応溶媒中に予め含まれていた水だけで上記使用量に足りる場合でも、別途に水を添加してもよく、その場合も、上記水の使用量は、反応溶媒中に予め含まれていた水と別途添加された水の合計量である。ただし、この合計量が上記上限(加水分解性基(X)1モル当量当たり0.5モル)を超えないように別途に水を添加する。
【0038】
加水分解性オルガノシランを部分加水分解する方法は、特に限定されず、たとえば、加水分解性オルガノシランと反応溶媒とを混合すればよい(反応溶媒に水が全く含まれていないかあるいは必要量含まれていない場合はここで水を添加配合する)。その際、部分加水分解反応は常温で進行するが、部分加水分解反応を促進させるために、必要に応じ、加温(たとえば、60〜100℃)するか、あるいは、触媒を用いてもよい。この触媒としては、特に限定はされないが、たとえば、塩酸、酢酸、ハロゲン化シラン、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸および無機酸等の1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
オルガノシランオリゴマー(B)は、その性能を長期にわたり安定して得るために、そのpHを、好ましくは2.0〜7.0、より好ましくは2.5〜6.5、さらに好ましくは3.0〜6.0にすると良い。pHがこの範囲外であると、特に水の使用量が加水分解性基(X)1モル当量当たり0.3モル以上の条件下で(B)成分の性能持続性の低下が著しい。(B)成分のpHが上記範囲外にあるときは、この範囲より酸性側であれば、アンモニア、エチレンジアミン等の塩基性試薬を添加してpHを調整すれば良く、塩基性側であれば、塩酸、硝酸、酢酸等の酸性試薬を用いてpHを調整すればよい。しかし、その調整方法は特に限定されるものではない。
【0040】
シリコーンレジン(2)に含まれる前記(C)成分すなわちシラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C)は、硬化反応に預かる官能性基としての加水分解性基を有するベースポリマーである前記(B)成分と縮合反応して硬化被膜中に3次元架橋を形成するための架橋剤であり、前記(B)成分の硬化収縮による歪みを吸収してクラック発生を防止する効果のある成分である。
【0041】
シラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C)を表す前記平均組成式(II)中のR4 としては、特に限定はされず、前記式(I)中のR3 と同じものが例示されるが、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などの置換炭化水素基、より好ましくはメチル基およびフェニル基である。また、前記式(II)中、aおよびbはそれぞれ前記の関係を満たす数であり、aが0.2未満またはbが3を超えると、機能性無機塗料の硬化被膜にクラックを生じる等の不都合がある。また、aが2を超え且つ4以下の場合またはbが0.0001未満では硬化がうまく進行しない。
【0042】
シラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C)は、特に限定されるわけではないが、たとえば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、もしくは、これらに対応するアルコキシシランの1種もしくは2種以上の混合物を公知の方法により大量の水で加水分解することにより得ることができる。シラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C)を得るために、アルコキシシランを用いて公知の方法で加水分解した場合、加水分解されないアルコキシ基が微量に残る場合がある。すなわち、シラノール基と極微量のアルコキシ基とが共存するようなポリオルガノシロキサンが得られることもあるが、本発明においては、このようなポリオルガノシロキサンを用いても差し支えない。
【0043】
シリコーンレジン(2)の(D)成分すなわちシリカ(D)は、機能性無機塗料の塗布硬化被膜の硬度を高くし、平滑性と耐クラック性を改善する効果がある。シリカ(D)としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。なお、シリカ(D)は、特に限定されるわけではないが、前記(B)成分の調製の際に用いられる反応溶媒中にコロイダルシリカの形で分散させておくことで塗料に導入することが、造膜性、工程の簡素化の点で好ましい。しかし、これに限定されない。たとえば、シリカ(D)抜きで調製して得られた(B)成分にシリカ(D)を混合した後、得られた混合物を塗料に導入してもよいし、あるいは、シリカ(D)を(B)成分とは別途に塗料に導入してもよい。
【0044】
塗料に導入する際のシリカ(D)の形態は、特に限定されず、たとえば、粉体の形でもコロイダルシリカの形でもよい。上記コロイダルシリカとしては、特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン(A)の原料(A2 )として前述したものが使用できる。なお、水分散性コロイダルシリカを使用する場合には、同コロイダルシリカ中に固形分以外の成分として存在する水は、(B)成分の原料である前記加水分解性オルガノシランの加水分解に用いることができる(加水分解の際の水の前記使用量に加算される)とともに、機能性無機塗料の硬化剤として用いることができる。
【0045】
シリカ(D)は、前述の効果があるが、配合量が多すぎると、機能性無機塗料の硬化被膜が硬くなりすぎて同被膜のクラックの発生を招来する原因となる恐れがある。そのため、シリカ(D)は、前記(B)成分との合計量に対する固形分として、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは20〜85重量%の範囲内で含有される。この含有量が5重量%未満であると、所望の被膜硬度が得られなくなる傾向がある。一方、95重量%を越えると、クラックの発生を招来しやすくなる。
【0046】
シリコーンレジン(2)に含まれる前記(E)成分すなわち硬化触媒(E)は、前記(B)成分と(C)成分との縮合反応を促進し、機能性無機塗料の塗布被膜を硬化させる成分である。硬化触媒(E)としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルチタン酸塩類;オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン塩類;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミン等のアミン類、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物;酢酸リチウム、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン類等が挙げられる。しかし、これらの他に、(B)成分と(C)成分との縮合反応の促進に有効なものであれば特に制限はない。
【0047】
シリコーンレジン(2)中、(B)成分および(C)成分の配合割合は、特に限定はされないが、たとえば、全縮合化合物換算固形分基準で述べると、(B)成分と(C)成分の合計100重量部に対し、(B)成分0.5〜99.5重量部、(C)成分99.5〜0.5重量部が好ましく、(B)成分2.5〜97.5重量部、(C)成分97.5〜2.5重量部がより好ましく、(B)成分5〜95重量部、(C)成分95〜5重量部がさらに好ましい。(B)成分が0.5重量部未満である((C)成分が99.5重量部を超える)と、常温硬化性に劣り、また、十分な被膜硬度が得られない傾向がある。一方、(B)成分が99.5重量部を超える((C)成分が0.5重量部未満である)と、硬化性が不安定であり、かつ、良好な塗膜が得られないことがある。
【0048】
シリコーンレジン(2)中、(E)成分の配合割合は、特に限定はされないが、たとえば、固形分基準で、(B)成分の全縮合化合物換算量と(C)成分の全縮合化合物換算量との合計100重量部に対し、好ましくは0.0001〜10重量部の範囲内、より好ましくは0.0005〜8重量部の範囲内、さらに好ましくは0.0007〜5重量部の範囲内である。(E)の配合量が0.0001重量部未満では常温硬化性が低下し、また、十分な被膜硬度が得られない傾向がある。10重量部を超えると、硬化被膜の耐熱性や耐候性が低下したり、硬化被膜の硬度が高くなりすぎてクラックを生じたりする恐れがある。
【0049】
機能性無機塗料中に含まれるシリコーンレジンがシリコーンレジン(2)である場合、機能性無機塗料は、オルガノシランオリゴマー(B)の有する加水分解性基とポリオルガノシロキサン(C)の有するシラノ−ル基とが硬化触媒(E)の存在下で、常温放置もしくは低温加熱することにより縮合反応して硬化被膜を形成する。従って、このような機能性無機塗料は、常温で硬化するときにも湿度の影響をほとんど受けない。また、加熱処理により縮合反応を促進して硬化被膜を形成することもできる。
【0050】
機能性無機塗料に含まれる光半導体としては、特に限定はされないが、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化レニウム等の金属酸化物の他、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。これらの中でも、上記金属酸化物が、実用的に容易に利用可能な点で好ましく、金属酸化物の中でも特に酸化チタンが、その光触媒性能、安全性、入手の容易さおよびコストの面で好ましい。なお、酸化チタンを光半導体として用いる場合は、結晶型がアナタース型(アナターゼ型)であるものを用いる方が、光触媒性能が最も強く、しかも長期間発現する点で好ましい。
【0051】
塗膜の透明性が必要とされる場合は、光半導体の平均一次粒子径が50μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
光半導体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
光半導体は、粉末、微粒子粉末、溶液分散ゾル粒子等、塗料に分散可能なものであれば、いかなる形態のものでも構わないが、ゾル状、特にpH7以下のゾル状であれば、硬化がより短時間で進み、使用する上で利便性に優れる。ゾル状のものを使用する場合、分散媒は水でも有機溶媒でも構わないが、有機溶媒の方が塗料調製の点で好ましい。
【0053】
さらに、光半導体の原料となるものも、最終的に光半導体の性質を示す物であれば、制限されない。
光半導体は、紫外線を照射されると、活性酸素を発生すること(光触媒性)は公知である。活性酸素は、有機物を酸化、分解させることができるため、その特性を利用して、塗装品に付着したカーボン系汚れ成分(たとえば、自動車の排気ガス中に含まれるカーボン留分や、タバコのヤニ等)を分解する自己洗浄効果;アミン化合物、アルデヒド化合物に代表される悪臭成分を分解する消臭効果;大腸菌、黄色ブドウ球菌に代表される菌成分の発生を防ぐ抗菌効果;防カビ効果等を得ることができる。また、光半導体を含む塗膜に紫外線が当たると、光半導体がその光触媒作用で水を水酸化ラジカル化し、この水酸化ラジカルが、塗膜表面に付着した、水をはじく有機物等の汚れを分解除去することにより、水に対する塗膜の親水性(濡れ性)が向上して、防曇性や、雨水洗浄による防汚性等が得られるという効果もある。
【0054】
なお、本発明では、機能性無機塗料を用いて塗膜を形成させる際に、界面活性剤を塗膜から飛散させるので、飛散した界面活性剤が存在していた部分が微細な空隙になって塗膜が微細に多孔質化する。その結果、得られる塗膜が透湿(水)性を有するようになって、空気中の水分または塗膜表面に付着した水分を透過するようになるため、光半導体が効果を発揮するまで時間がまだ経過していない製膜当初であっても、塗膜表面が親水性を有して水に濡れやすくなる。また、塗膜が微細に多孔質化して透湿性を有するようになると、光半導体の含有量が少なくて光半導体の表面が塗膜にすっかり覆われていても、光半導体が塗膜を透過した水分と接触することができるので、光半導体の作用による上記親水性向上効果が充分発揮される。
【0055】
さらには、光半導体の光触媒作用による帯電防止機能もあり、この機能によっても防汚効果が得られる。たとえば、機能性無機塗料の塗膜に光を照射すると、この塗膜に含まれる光半導体の作用により塗膜の表面抵抗値が下がることで帯電防止効果が発現されて、塗膜表面が汚れにくくなる。光半導体含有塗膜に光が照射されたとき、どのようなメカニズムで塗膜の表面抵抗値が下がるのかはまだ明確には確認されていないが、光照射により生成した電子とホ−ルが作用することで塗膜の表面抵抗値が下がるものと考えられる。
【0056】
光半導体の表面に金属が担持されていると、光半導体の光触媒効果がより高くなる。そのメカニズムは、まだ明確には確認されていないが、光半導体の表面に金属が担持されることにより光半導体の電荷分離が促進されて、電荷分離により生成した電子とホ−ルの消失確立が小さくなることが関係していると考えられる。
【0057】
光半導体の表面に担持してよい金属としては、たとえば、銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、白金、金、パラジウム、カドミウム、コバルト、ロジウム、ルテニウム等が、光半導体の電荷分離をより促進させる点で好ましい。担持される金属は、1種のみでも2種以上でもよい。
金属の担持量は、特に限定はされないが、たとえば、光半導体に対し、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%であることがより好ましい。担持量が0.1重量%未満だと、担持効果が充分に得られない傾向があり、10重量%を超えて担持しても、効果はあまり増加せず、逆に変色や性能劣化等の問題が起きる傾向がある。
【0058】
金属の担持方法としては、特に限定するわけではないが、浸積法、含浸法、光還元法等が挙げられる。
また、光半導体を層間に担持した粘土架橋体を用いても良い。光半導体を層間に導入することで、光半導体が微粒子に担持されて光触媒性能が向上する。
機能性無機塗料中、光半導体の配合量は、特に限定はされないが、たとえば、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100重量部に対する光半導体の重量部として述べると、光半導体の表面に金属が担持されていない場合は、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部であり、光半導体の表面に金属が担持されている場合は、好ましくは1〜75重量部、より好ましくは3〜45重量部である。光半導体の配合量が上記範囲より少ないと、充分な光触媒機能が得られにくくなる等の傾向があり、上記範囲より多いと、クラックが発生しやすくなる等、塗膜性能が低下する傾向がある。なお、光半導体の表面に金属が担持されている場合の光半導体の上記配合量は、担持金属を含めない量である。
【0059】
本発明で用いられる機能性無機塗料は、さらに界面活性剤を含有する。この界面活性剤は、塗膜形成時に飛散されるため、得られる塗膜が微細に多孔質化し透湿(水)性を有するようになって、空気中の水分または塗膜表面に付着した水分を透過するようになるので、光半導体が効果を発揮するまで時間がまだ経過していない間や塗膜に紫外線がまだ照射されない製膜当初であっても、塗膜表面が親水性を有するようになって防曇性と雨水洗浄による防汚性とを発揮させることができる。本発明で用いられる光半導体は、その効果を発揮するまである程度の時間がかかるが、界面活性剤を併用し、それを塗膜形成時に飛散させて塗膜を微細に多孔質化すれば、光半導体が効果を発揮するまでの期間は、その機能(特に塗膜表面の親水性)を塗膜の微細な多孔質化による親水性付与効果が補完するので、光半導体と界面活性剤を併用し、かつ、塗膜形成時に界面活性剤を飛散させる本発明の塗膜形成方法から得られる塗膜は、製膜当初から親水性等に優れた理想的な機能性塗膜になる。
【0060】
界面活性剤は、さらに帯電防止性をも付与できる機能を持つものであることが好ましい。
なお、光半導体を用いずに界面活性剤だけを用い、それを塗膜形成時に飛散させても、親水性(および帯電防止性)以外の光触媒性能は発揮されない。また、その場合は、製膜当初こそ親水性が発揮されるが、その後は、水をはじく有機物等の汚れの付着等が原因で表面親水性が低下する傾向がある。このような汚れを除去して表面親水性を保つためには光半導体の使用が不可欠である。
【0061】
界面活性剤としては、ノニオン系のものが用いられる。光半導体は+の電位を有しているため、カチオン系または両性の界面活性剤のような電荷を持つ界面活性剤と併用した場合は、塗膜中において、光半導体同士が凝集して、その分散が不均一になりやすいため、光半導体による各種機能の発現が不充分になりやすい。これに対し、ノニオン系界面活性剤を用いると、ノニオン系界面活性剤は電荷を持たないので、塗膜中において、光半導体の凝集が起こりにくくなって、光半導体を均一に分散させることが可能になるため、光半導体による各種機能を充分発揮させることができるのである。
【0062】
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリオキシエチレン型、アルキルフェノール型、エステル型、ソルビタンエステル型、ソルビタンエステルエーテル型等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤は、その効力を長く続かせるためには、反応性界面活性剤であることが好ましい。
【0063】
ノニオン系反応性界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエ−テル等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤のHLB値は、特に限定はされないが、シリコーンレジンとの相溶性の点で、好ましくは15以下、より好ましくは5〜15、さらに好ましくは5〜10である。
【0064】
界面活性剤の重量平均分子量は、特に限定はされないが、好ましくは100〜1,000、より好ましくは100〜800、さらに好ましくは100〜600である。これらの範囲内であると、界面活性剤が塗膜から比較的飛散しやすく、かつ、飛散した界面活性剤が存在していた部分が、塗膜に透湿性を付与して親水性を向上させる上で適度な大きさの細孔になる。
【0065】
機能性無機塗料中、界面活性剤の配合量は、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。界面活性剤の配合量が上記範囲より少ないと、製膜当初からの親水性が発揮されなかったり、塗膜の多孔質化が不充分になったりする恐れがあり、逆に多すぎると、塗膜の造膜性に悪い影響が出たり、塗膜が過度に多孔質化して塗膜強度が低下したりする恐れがある。
【0066】
本発明で用いられる機能性無機塗料は、必要に応じ、顔料、染料等の着色剤をさらに含むことにより、調色可能である。
使用できる顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。顔料の分散は、特に限定はされず、通常の方法、たとえば、ダイノーミール、ペイントシェーカー等により顔料粉を直接分散させる方法等でよい。その際、分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等の使用が可能である。顔料の添加量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。顔料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0067】
使用できる染料としては、特に限定はされないが、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系等の染料が挙げられる。これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。染料の添加量は、染料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。染料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0068】
なお、レベリング剤、金属粉、ガラス粉、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等も、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で機能性無機塗料に含まれていてもよい。
機能性無機塗料は、取り扱いの容易さから必要に応じて各種有機溶媒で希釈して使用できるし、また、同有機溶媒で希釈したものであってもよい。有機溶媒の種類は、シリコーンレジンの各成分の有する1価炭化水素基の種類、または、シリコーンレジンの各成分の分子量の大きさ等に応じて適宜選定することができる。このような有機溶媒としては、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;および、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。有機溶媒での希釈割合は特に制限はなく、必要に応じて希釈割合を適宜決定すれば良い。
【0069】
機能性無機塗料を製造する方法は、特に限定はされず、各成分を通常の方法および装置等を用いて混合すればよい。塗料に導入する際の各成分の形態についても、それ自身液状のものや、溶媒に溶解してなる溶液、分散媒中に分散してなる分散液等の液状、粉体等の固体状等を問わず、特に限定はされない。各成分を溶液または分散液の形で導入する場合、その溶媒または分散媒としては、たとえば、水、上述の有機溶媒、または、水と上述の有機溶媒との混合物を使用できる。また、各成分は、別個に添加してもよいし、あるいは、2成分以上を予め混合しておいてから残りの成分と混合したり、全成分を同時に混合したりしてもよく、その添加や混合の時機等についても特に限定はされない。
【0070】
機能性無機塗料を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、刷毛塗り、スプレー、浸漬(ディッピング)、ロール、フロー、カーテン、ナイフコート、スピンコート等の通常の各種塗布方法を選択することができる。
機能性無機塗料の塗膜の硬化方法については、公知の方法を用いればよく、特に限定はされない。また、硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化被膜性能や光半導体の耐熱性等に応じて常温〜加熱温度の広い範囲をとることができる。
【0071】
なお、本発明では、機能性無機塗料の塗膜から界面活性剤を飛散させる。その方法としては、特に限定はされないが、たとえば、塗膜を90〜350℃(好ましくは150〜250℃)の温度で加熱する方法等が挙げられる。加熱温度が低すぎると、界面活性剤が充分に飛散せず、塗膜中に残る傾向があり、高すぎると、界面活性剤が一瞬にして飛散し、塗膜強度が低下する傾向がある。また、加熱時間は、好ましくは30分〜5時間、より好ましくは1時間〜4時間、さらに好ましくは2時間〜3時間である。加熱時間が短すぎると界面活性剤の飛散が不充分になり、塗膜親水性が得られなくなる傾向がある。
【0072】
機能性無機塗料から形成される塗布硬化被膜の厚みは、特に制限はなく、たとえば、0.01〜10μm程度であればよいが、塗膜の各種機能をより効果的に発揮させるとともに、塗布硬化被膜が長期的に安定に密着、保持され、かつ、クラックや剥離が発生しないためには、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0073】
機能性無機塗料が塗布される基材(本発明の機能性塗装品に用いられる基材でもある)としては、特に限定はされないが、たとえば、無機質基材、有機質基材、無機有機複合基材、および、これらのうちのいずれかの表面に少なくとも1層の無機物被膜および/または少なくとも1層の有機物被膜を有する塗装基材等が挙げられる。
【0074】
無機質基材としては、特に限定はされないが、たとえば、金属基材;ガラス基材;ホーロー;水ガラス化粧板、無機質硬化体等の無機質建材;セラミックス等が挙げられる。
金属基材としては、特に限定はされないが、たとえば、非鉄金属〔たとえば、アルミニウム(JIS−H4000等)、アルミニウム合金(ジュラルミン等)、銅、亜鉛等〕、鉄、鋼〔たとえば、圧延鋼(JIS−G3101等)、溶融亜鉛めっき鋼(JIS−G3302等)、(圧延)ステンレス鋼(JIS−G4304、G4305等)等〕、ブリキ(JIS−G3303等)、その他の金属全般(合金含む)が挙げられる。
【0075】
ガラス基材としては、特に限定はされないが、たとえば、ナトリウムガラス、パイレックスガラス、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
前記ホーローとは、金属表面にガラス質のホーローぐすりを焼き付け、被覆したものである。その素地金属としては、たとえば、軟鋼板、鋼板、鋳鉄、アルミニウム等が挙げられるが、特に限定はされない。ホーローぐすりも通常のものを用いればよく、特に限定はされない。
【0076】
前記水ガラス化粧板とは、たとえば、ケイ酸ソーダをスレートなどのセメント基材に塗布し、焼き付けた化粧板などを指す。
無機質硬化体としては、特に限定はされないが、たとえば、繊維強化セメント板(JIS−A5430等)、窯業系サイディング(JIS−A5422等)、木毛セメント板(JIS−A5404等)、パルプセメント板(JIS−A5414等)、スレート・木毛セメント積層板(JIS−A5426等)、石膏ボード製品(JIS−A6901等)、粘土瓦(JIS−A5208等)、厚形スレート(JIS−A5402等)、陶磁器質タイル(JIS−A5209等)、建築用コンクリートブロック(JIS−A5406等)、テラゾ(JIS−A5411等)、プレストレストコンクリートダブルTスラブ(JIS−A5412等)、ALCパネル(JIS−A5416等)、空洞プレストレストコンクリートパネル(JIS−A6511等)、普通煉瓦(JIS−R1250等)等の無機材料を硬化、成形させた基材全般を指す。
【0077】
セラミックス基材としては、特に限定はされないが、たとえば、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
有機質基材としては、特に限定はされないが、たとえば、プラスチック、木、木材、紙等が挙げられる。
プラスチック基材としては、特に限定はされないが、たとえば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性もしくは熱可塑性プラスチック、および、これらのプラスチックをナイロン繊維等の有機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。
【0078】
無機有機複合基材としては、特に限定はされないが、たとえば、上記プラスチックをガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。
前記塗装基材を構成する有機物被膜としては、特に限定はされないが、たとえば、アクリル系、アルキド系、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリルシリコーン系、塩化ゴム系、フェノール系、メラミン系等の有機樹脂を含むコーティング材の硬化被膜等が挙げられる。
【0079】
前記塗装基材を構成する無機物被膜としては、特に限定はされないが、たとえば、シリコーン樹脂等の無機樹脂を含むコーティング材の硬化被膜等が挙げられる。
機能性無機塗料を基材に塗布する際に、基材の材質や表面状態によっては、そのまま機能性無機塗料を塗布すると密着性や耐候性が得にくい場合があるので、必要に応じ、基材の表面に、機能性無機塗料の塗布硬化被膜を形成させる前に予めプライマー層を形成させておいてもよい。プライマー層としては、有機、無機を問わず、特に限定はされないが、有機プライマー層の例としては、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機変性シリコーン樹脂(たとえば、アクリルシリコーン樹脂等)、塩化ゴム樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の有機樹脂を固形分として10重量%以上含有する有機プライマー組成物の硬化樹脂層等が挙げられ、無機プライマー層の例としては、シリコーン樹脂等の無機樹脂を固形分として90重量%以上含有する無機プライマー組成物の硬化樹脂層等が挙げられる。
【0080】
プライマー層の厚みは、特に限定はされないが、たとえば、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着性や耐候性が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。
なお、表面に上記のような有機プライマー層および/または無機プライマー層を少なくとも1層有する基材は、前記塗装基材の範疇に含まれる。すなわち、前記塗装基材が表面に有する前記被膜は上記プライマー層であってもよいのである。
【0081】
また、プライマー層には、必要に応じ、調色のために顔料、染料等の着色剤が含まれていてもよい。使用可能な着色剤としては、機能性無機塗料に添加可能なものとして前述したものが挙げられる。プライマー層への着色剤の配合量の好ましい数値範囲についても、前述の、機能性無機塗料の場合と同様である。ただし固形分基準ではあるが、全縮合化合物100重量部に対してではなくて、プライマー組成物全量中での全樹脂100重量部に対して規定される。
【0082】
基材の形態については、特に限定はされず、たとえば、フィルム状、シート状、板状、繊維状等が挙げられる。また、基材は、これらの形状の材料の成形体、または、これらの形状の材料もしくはその成形体の少なくとも1つを一部に備えた構成体等であってもよい。
基材は、上述した各種材料単独からなるものでもよいし、上述した各種材料のうちの少なくとも2つを組み合わせてなる複合材料または上述した各種材料のうちの少なくとも2つを積層してなる積層材料でもよい。
【0083】
本発明の機能性無機塗膜の形成方法により形成される塗膜および本発明の機能性塗装品の有する塗膜には光半導体が含まれているため、紫外線が照射されると、光半導体による前述の様々な光触媒効果が発揮される。また、上記塗膜は界面活性剤の飛散により微細な多孔質構造を有するため、紫外線が照射されなくても、製膜当初から、表面親水性(水濡れ性)による雨水洗浄性、防曇性などの機能が発現され、塗膜の耐候性が高まり、汚れの付着を低減する効果もでる。そのため、該塗膜を各種材料または物品の少なくとも一部に装備させることにより、たとえば、下記の用途に好適に用いることができる。
【0084】
建物関連の部材または物品、たとえば、外装材(たとえば、外壁材、平板瓦・日本瓦・金属瓦等の瓦等)、塩ビ雨とい等の樹脂製雨とい・ステンレス雨とい等の金属製雨とい等の雨とい、門およびそれに用いるための部材(たとえば、門扉・門柱・門塀等)、フェンス(塀)およびそれに用いるための部材、ガレージ扉、ホームテラス、ドア、柱、カーポート、駐輪ポート、サインポスト、宅配ポスト、配電盤・スイッチ等の配線器具、ガスメーター、インターホン、テレビドアホン本体およびカメラレンズ部、電気錠、エントランスポール、縁側、換気扇吹き出し口、建物用ガラス等;窓(たとえば、採光窓、天窓、ルーバー等の開閉窓等)およびそれに用いるための部材(たとえば、窓枠、雨戸、ブラインド等)、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、機械装置、道路周辺部材(たとえば、防音壁、トンネル内装板、各種表示装置、ガードレール、車止め、高欄、交通標識の標識板および標識柱、信号機、ポストコーン等)、広告塔、屋外または屋内用照明器具およびそれに用いるための部材(たとえば、ガラス、樹脂、金属およびセラミックスからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の材料からなる部材等)、太陽電池用ガラス、農業用ビニールおよびガラスハウス、エアコン用室外機、VHF・UHF・BS・CS等のアンテナ等。
【0085】
なお、本発明に従って機能性無機塗膜を上記の各種材料または物品の少なくとも一部に直接形成してもよいが、これに限定されず、たとえば、本発明に従って機能性無機塗膜をフィルム基材の表面に形成してなる機能性フィルムを上記の各種材料または物品の少なくとも一部に貼るようにしてもよい。このようなフィルムの基材の材質としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂およびそれらの複合樹脂等の樹脂が挙げられるが、特に限定はされない。
【0086】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。実施例及び比較例中、特に断らない限り、「部」はすべて「重量部」を、「%」はすべて「重量%」を表す。また、分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、測定機種として東ソー(株)のHLC8020を用いて、標準ポリスチレンで検量線を作成し、その換算値として測定したものである。なお、本発明は下記実施例に限定されない。
【0087】
まず、(A)成分を含むシリコーンレジン(1)を用いた実施例と比較例を述べる。
<実施例1>
原料(A1 )としてメチルトリメトキシシラン100部に、原料(A2 )としてテトラエトキシシラン10部、同じく原料(A2 )として酸性コロイダルシリカであるIPAオルガノシリカゾル(商品名「OSCAL1432」、触媒化成工業(株)製、固形分30%)90部、原料(A3 )としてジメチルジメトキシシラン30部、希釈溶媒としてイソプロピルアルコール(本明細書中、IPAと略すことがある)100部を混合し、更に、水90部を添加し、攪拌した。得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物のオルガノシロキサン(A)の重量平均分子量(Mw)を1500に調整してオルガノシロキサンのアルコール溶液を得た。
【0088】
オルガノシロキサンのアルコール溶液の調製条件:
・〔水〕/〔OR1 〕モル比 1.73
・重量平均分子量 1500
・全縮合化合物換算固形分 23.3%
この溶液に、光半導体として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィ−ンタイタニック11−1020G」)と、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤「アデカトールNP638」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約350、HLB値8.6とを、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100部に対し、光半導体が20部、界面活性剤が1部になる量添加混合することにより、機能性無機塗料(1)を得た。
【0089】
この機能性無機塗料(1)を、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で5時間乾燥硬化させた後、200℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(1)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.5μmであった。
<実施例2>
実施例1において、光半導体として、酸化チタンゾルの代わりに酸化チタン粉末(石原産業(株)製酸化チタン:商品名「ST−01」)を同じ量用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性無機塗料(2)を得た。
【0090】
この機能性無機塗料(2)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(2)を得た。
<実施例3>
実施例1において、光半導体として、酸化チタンゾルの代わりに白金を担持した酸化チタンを同じ量用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性無機塗料(3)を得た。
【0091】
なお、白金担持は、酸化チタン粉末(石原産業(株)製酸化チタン:商品名「ST−01」)に光電着法で行い、酸化チタンに対して0.5%担持した。
次に、機能性無機塗料(3)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(3)を得た。
<実施例4>
実施例1において、ノニオン系界面活性剤「アデカトールNP638」の代わりにノニオン系反応性界面活性剤「アデカトールNP−1100」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約900、HLB値14.1)を同じ量用いたこと以外は実施例1と同様の作業を行って機能性無機塗料(4)を得た。
【0092】
この機能性無機塗料(4)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(4)を得た。
<実施例5>
実施例1において、ノニオン系界面活性剤「アデカトールNP638」の代わりにノニオン系反応性界面活性剤「アデカトールNP620」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約600、HLB値12.4)を同じ量用いたこと以外は実施例1と同様の作業を行って機能性無機塗料(5)を得た。
【0093】
この機能性無機塗料(5)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(5)を得た。
<比較例1>
実施例1において、ノニオン系界面活性剤「アデカトールNP638」の代わりにカチオン系反応性界面活性剤「アデカミン4MAC−30」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約300)を同じ量用いたこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(1)を得た。
【0094】
この比較用無機塗料(1)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(1)を得た。
<実施例6>
原料(A1 )としてメチルトリメトキシシラン100部に、原料(A2 )として酸性コロイダルシリカであるIPAオルガノシリカゾル(商品名「OSCAL1432」、触媒化成工業(株)製、固形分30%)60部、原料(A3 )としてジメチルジメトキシシラン30部、希釈溶媒としてIPA100部を混合し、更に、水120部を添加し、攪拌した。得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物のオルガノシロキサン(A)の重量平均分子量(Mw)を1200に調整してオルガノシロキサンのアルコール溶液を得た。
【0095】
オルガノシロキサンのアルコール溶液の調製条件:
・〔水〕/〔OR1 〕モル比 2.46
・重量平均分子量 1200
・全縮合化合物換算固形分 20.9%
この溶液に、光半導体として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィ−ンタイタニック11−1020G」)と、界面活性剤としてノニオン系反応性界面活性剤「アデカトールNP620」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約300、HLB値5.7)とを、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100部に対し、光半導体が20部、界面活性剤が1 部になる量添加混合することにより、機能性無機塗料(6)を得た。
【0096】
この機能性無機塗料(6)を、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で5時間乾燥硬化させた後、200℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(6)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.1μmであった。
<実施例7>
実施例6において、塗膜の焼成を500℃で1時間行ったこと以外は実施例6と同様の作業を行って機能性塗装品(7)を得た。
<実施例8>
実施例6において、塗膜の焼成を60℃で1時間行ったこと以外は実施例6と同様の作業を行って機能性塗装品(8)を得た。
<実施例9>
実施例6において、ノニオン系界面活性剤「アデカトールNP620」の代わりにノニオン系反応性界面活性剤「アデカプルロニックF−88」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約400、HLB値10.0)を10部用いたこと以外は実施例6と同様の作業を行って機能性無機塗料(9)を得た。
【0097】
この機能性無機塗料(9)を用い、実施例6と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(9)を得た。
<実施例10>
実施例6において、機能性無機塗料中、「アデカトールNP620」の配合量を0.2部に変更したこと以外は実施例6と同様の作業を行って機能性無機塗料(10)を得た。
【0098】
この機能性無機塗料(10)を用い、実施例6と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(10)を得た。
<実施例11>
実施例6において、基材としてガラス基板の代わりにアルミ基板を用いたこと以外は実施例6と同様の作業を行って機能性塗装品(11)を得た。
<実施例12>
実施例6において、光半導体として用いた酸化チタンゾルの添加量を5部に変更したこと以外は実施例6と同様にして機能性無機塗料(12)を得た。
【0099】
この機能性無機塗料(12)を、アセトンで洗浄したアルミ基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で4時間乾燥硬化させた後、200℃で2時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(12)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.05μmであった。
<実施例13>
実施例6において、光半導体として用いた酸化チタンゾルの添加量を80部に変更したこと以外は実施例6と同様にして機能性無機塗料(13)を得た。
【0100】
この機能性無機塗料(13)を用い、実施例6と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(13)を得た。
<実施例14>
原料(A1 )としてメチルトリメトキシシラン100部に、原料(A2 )としてテトラエトキシシラン10部、同じく原料(A2 )として酸性コロイダルシリカであるIPAオルガノシリカゾル(商品名「OSCAL1432」、触媒化成工業(株)製、固形分30%)90部、希釈溶媒としてイソプロピルアルコール100部を混合し、更に、水90部を添加し、攪拌した。得られた液を60℃恒温槽中で5時間加熱することにより、反応生成物のオルガノシロキサン(A)の重量平均分子量(Mw)を1000に調整してオルガノシロキサンのアルコール溶液を得た。
【0101】
オルガノシロキサンのアルコール溶液の調製条件:
・〔水〕/〔OR1 〕モル比 2.08
・重量平均分子量 1000
・全縮合化合物換算固形分 20.3%
この溶液に、光半導体として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィ−ンタイタニック11−1020G」)と、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤「アデカトールNP−660」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量450、HLB値10.9)とを、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100部に対し、光半導体が20部、界面活性剤が2部になる量添加混合することにより、機能性無機塗料(14)を得た。
【0102】
この機能性無機塗料(14)を、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で4時間乾燥硬化させた後、200℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(14)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.2μmであった。
次に、以下の実施例に先立ち、それらに用いるシリコーンレジン(2)の(B)、(C)成分を以下のようにして調製した。その際、コロイダルシリカ(D)を(B)成分の調製溶液中に分散することにより導入するようにした。
(B成分の調製例):
<調製例B−1>
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー及び温度計をつけたフラスコ中に、IPA分散コロイダルシリカゾルIPA−ST(粒子径10〜20nm、固形分30%、水分0.5%、日産化学工業(株)製)100部と、メチルトリメトキシシラン68部と、水10.8部とを投入し、攪拌しながら65℃で約5時間かけて部分加水分解反応を行った後、冷却することにより、オルガノシランオリゴマー(B−1)のシリカ分散溶液を得た。このものは、室温で48時間放置したときの全縮合化合物換算固形分が36%であった。
【0103】
B−1のシリカ分散溶液調製条件:
・加水分解性基1モル当量に対する水のモル数 0.4モル
・B−1のシリカ分散溶液中のシリカ分含有量 47.2%
・m=1の加水分解性オルガノシランのモル% 100モル%
<調製例B−2>
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー及び温度計をつけたフラスコ中に、IPA分散コロイダルシリカゾルIPA−ST(粒子径10〜20nm、固形分30%、水分0.5%、日産化学工業(株)製)100部と、メチルトリメトキシシラン68部と、ジメチルジメトキシシラン18部と、水2.7部と、無水酢酸0.1部とを投入し、攪拌しながら80℃で約3時間かけて部分加水分解反応を行った後、冷却することにより、オルガノシランオリゴマー(B−2)のシリカ分散溶液を得た。このものは、室温で48時間放置したときの全縮合化合物換算固形分が39.5%であった。
【0104】
B−2のシリカ分散溶液調製条件:
・加水分解性基1モル当量に対する水のモル数 0.1モル
・B−2のシリカ分散溶液中のシリカ分含有量 40.2%
・m=1の加水分解性オルガノシランのモル% 77モル%
(C成分の調製例):
<調製例C−1>
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロート及び温度計を取り付けたフラスコに、メチルトリイソプロポキシシラン220部(1モル)がトルエン150部に溶解してなる溶液を仕込み、これに、1%塩酸水溶液108部を20分かけて滴下し、メチルトリイソプロポキシシランを攪拌下60℃で加水分解した。滴下終了から40分後に攪拌を止め、反応液を分液ロートに移し入れて静置したところ、二層に分離した。少量の塩酸を含んだ下層の水とイソプロピルアルコールの混合溶液を分液除去し、後に残ったトルエンの樹脂溶液中に残存している塩酸を水洗で除去し、更にトルエンを減圧除去した後、残留物をイソプロピルアルコールで希釈することにより、重量平均分子量(Mw)約2000のシラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C−1)のイソプロピルアルコール溶液を得た。この溶液中の全縮合化合物換算固形分は40%である。また、この溶液中のシラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C−1)は前記平均組成式(II)を満たすものであることが確認されている。
【0105】
<調製例C−2>
攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロート及び温度計を取り付けたフラスコに水1000部、アセトン50部を仕込み、更にメチルトリクロロシシラン44.8部(0.3モル)、ジメチルジクロロシラン38.7部(0.3モル)およびフェニルトリクロロシラン84.6部(0.4モル)がトルエン200部に溶解してなる溶液を攪拌下に滴下しながら60℃で加水分解した。滴下終了から40分後に攪拌を止め,反応液を分液ロートに移し入れて静置したところ、二層に分離した。下層の塩酸水を分液除去し、後に残ったオルガノポリシロキサンのトルエン溶液中に残存している水と塩酸を減圧ストリッピングにより過剰のトルエンとともに除去することにより、重量平均分子量(Mw)約3000のシラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C−2)のトルエン溶液を得た。この溶液中の全縮合化合物換算固形分は60%である。また、この溶液中のシラノール基含有ポリオルガノシロキサン(C−2)は前記平均組成式(II)を満たすものであることが確認されている。
【0106】
上記のようにして得られた(B)、(C)成分の各溶液を用い、以下の実施例を行った。
<実施例15>
B−1のシリカ分散溶液70部(全縮合化合物換算固形分としては約25部)と、C−1のイソプロピルアルコール溶液30部(全縮合化合物換算固形分としては12部)と、硬化触媒(E)としてN−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1部とを混合した後に、光半導体として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィ−ンタイタニック11−1020G」)と、界面活性剤としてノニオン系反応性界面活性剤「アデカトールNP675」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約450、HLB値12.0)とを、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100部に対し、光半導体が20部、界面活性剤が1 部になる量添加混合することにより、機能性無機塗料(15)を得た。
【0107】
この機能性無機塗料(15)を、アセトンで洗浄したステンレス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で4時間乾燥硬化させた後、350℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(15)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.1μmであった。
<実施例16>
実施例15において、光半導体として、酸化チタンゾルの代わりに酸化チタン粉末(石原産業(株)製酸化チタン:商品名「ST−01」)を同じ量用いたこと以外は実施例15と同様にして機能性無機塗料(16)を得た。
【0108】
この機能性無機塗料(16)を、アセトンで洗浄したステンレス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で4時間乾燥硬化させた後、90℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(16)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.1μmであった。
<実施例17>
松下電工(株)大阪門真敷地内の建物の窓ガラス(1m2 、厚み6mm)の窓ガラスに、実施例15で得られた機能性無機塗料(15)をスプレー塗装法で硬化塗膜厚0.1μmになるように塗布し、室温下で一昼夜乾燥硬化させた後、100℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(17)を得た。
<実施例18>
実施例1において、機能性無機塗料中、「アデカトールNP638」の配合量を20部に変更したこと以外は実施例1と同様の作業を行って機能性無機塗料(18)を得た。
【0109】
この機能性無機塗料(18)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(18)を得た。
<実施例19>
B−2のシリカ分散溶液50部(全縮合化合物換算固形分としては約20部)と、C−2のトルエン溶液50部(全縮合化合物換算固形分としては30部)と、硬化触媒(E)としてN−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン2部とを混合した後に、光半導体として酸化チタンゾル(触媒化成(株)製酸化チタンゾル:商品名「クィ−ンタイタニック11−1020G」)と、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤「アデカトールNP−720」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量約900、HLB値14.1)とを、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100部に対し、光半導体が20部、界面活性剤が1部になる量添加混合することにより、機能性無機塗料(19)を得た。
【0110】
この機能性無機塗料(19)を、アセトンで洗浄したガラス基板にスプレー塗装法により塗布し、塗膜を室温下で5時間乾燥硬化させた後、300℃で1時間焼成して界面活性剤を塗膜から飛散させることにより、機能性塗装品(19)を得た。なお、塗膜の硬化後の膜厚は0.2μmであった。
<実施例20>
調製例B−1において、コロイダルシリカを全く使用しないこと以外は調製例B−1と同様にしてシリカを含有しないオルガノシランオリゴマー(B−3)の溶液を得た。このものは、室温で48時間放置したときの全縮合化合物換算固形分が70%であった。
【0111】
次に、実施例19において、B−2のシリカ分散溶液50部の代わりに上記で得られたオルガノシランオリゴマー(B−3)の溶液70部(全縮合化合物換算固形分としては49部)を用いるとともに、この溶液を、C−2のトルエン溶液、硬化触媒、光半導体および界面活性剤と混合する際にIPA分散コロイダルシリカゾルIPA−ST(粒子径10〜20nm、固形分30%、水分0.5%、日産化学工業(株)製)100部を添加するようにしたこと以外は実施例19と同様にして、機能性無機塗料(20)を得た。
【0112】
この機能性無機塗料(20)を用い、実施例19と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(20)を得た。
<実施例21>
実施例1において、光半導体として、酸化チタンゾルの代わりに酸化亜鉛(ナカライテスク(株)製、商品名「試薬ZnO」)を同量用いたこと以外は実施例1と同様にして機能性無機塗料(21)を得た。
【0113】
この機能性無機塗料(21)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、機能性塗装品(21)を得た。
<実施例22>
実施例1において、塗膜の硬化後の膜厚を9.5μmに変更したこと以外は実施例1と同様の作業を行って機能性塗装品(22)を得た。
<実施例23>
実施例1において、基材としてガラス基板の代わりにポリカーボネート板を用いたこと以外は実施例1と同様の作業を行って機能性塗装品(23)を得た。
<実施例24>
実施例1において、アセトン洗浄したガラス板の表面に予めエポキシ系プライマー(イサム塗料(株):商品名「E−1プライマ−」)を約10μmの膜厚で塗装した後、機能性無機塗料(1)を塗装するようにしたこと以外は実施例1と同様の作業を行って機能性塗装品(24)を得た。
<比較例2>
実施例1において、ノニオン系界面活性剤「アデカトールNP638」の代わりに両性界面活性剤「アデカアンホートPB−30L」(旭電化工業(株)製、重量平均分子量400)を同じ量用いたこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(2)を得た。
【0114】
この比較用無機塗料(2)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(2)を得た。
<比較例3>
実施例1において、塗膜の焼成を行わないこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用塗装品(3)を得た。
<比較例4>
実施例1において、機能性無機塗料中、光半導体の配合量を81部に変更したこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(4)を得た。
【0115】
この比較用無機塗料(4)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(4)を得た。
<比較例5>
実施例1において、機能性無機塗料中、光半導体の配合量を0.5部に変更したこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(5)を得た。
【0116】
この比較用無機塗料(5)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(5)を得た。
<比較例6>
実施例1において、光半導体を全く用いないこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(6)を得た。
【0117】
この比較用無機塗料(6)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(6)を得た。
<比較例7>
実施例1において、機能性無機塗料中、界面活性剤の配合量を25部に変更したこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(7)を得た。
【0118】
この比較用無機塗料(7)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(7)を得た。
<比較例8>
実施例1において、機能性無機塗料中、界面活性剤の配合量を0.05部に変更したこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(8)を得た。
【0119】
この比較用無機塗料(8)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(8)を得た。
<比較例9>
実施例1において、界面活性剤を全く用いないこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(9)を得た。
【0120】
この比較用無機塗料(9)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(9)を得た。
<比較例10>
実施例1において、光半導体と界面活性剤の両方とも全く用いないこと以外は実施例1と同様の作業を行って比較用無機塗料(10)を得た。
【0121】
この比較用無機塗料(10)を用い、実施例1と同様の作業を行うことにより、比較用塗装品(10)を得た。
以上のようにして得られた塗装品の塗膜性能を次のような方法で評価した。
<評価方法>
(密着性):
JIS−K5400に記載された煮沸試験により評価した。問題がない場合は「○」、外観に変化があった場合は「△」、剥離が生じた場合は「×」とした。
【0122】
(表面親水性(水に対する濡れ性)):
水と塗膜との接触角を、塗膜作製直後に測定することにより評価した。なお、実施例1、比較例6、比較例9および比較例10については、製膜直後だけでなく、製膜してから5日後と20日後にも接触角を測定して経時変化を見た。接触角の測定は、0.2ccの蒸留水を塗膜表面に滴下した後、拡大カメラで観察することにより行った。接触角が小さい程、親水性が高いことを示す。
【0123】
(物品などに塗装したものの評価):
塗装してから3ヶ月経過後の塗装部と未塗装部の汚れ方の違いで評価した。
結果を表1〜3に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表1〜2にみるように、実施例1〜16および実施例18〜24は、比較例1〜10と比べて、密着性および製膜直後の表面親水性のいずれも優れていることが確認された。
表3からは、以下のことが確認された。光半導体は用いたが界面活性剤は用いなかった比較例9では、界面活性剤不使用のため製膜直後は接触角が大きくて表面親水性が悪く、その後、光半導体の作用により接触角が低下して表面親水性が良くなるのに時間がかかっている。界面活性剤は用いたが光半導体は用いなかった比較例6では、界面活性剤の飛散により形成された塗膜の微細な多孔質構造による透湿性により製膜直後は接触角が低く表面親水性に優れるが、光半導体を用いなかったため、時間の経過とともに接触角が増加して表面親水性が悪くなっている。光半導体も界面活性剤も用いなかった比較例10では、製膜直後も、その後の時間経過後も接触角が大きく表面親水性が低い。これに対し、光半導体および界面活性剤を両方とも用いた実施例1では、界面活性剤の飛散により形成された塗膜の微細な多孔質構造による透湿性により製膜直後から接触角が低く表面親水性に優れ、その後、時間が経過すると光半導体の効果が発揮されて接触角が低いままで良好な表面親水性が保たれ、しかも表面親水性が若干さらによくなっていさえする。
【0128】
なお、物品に塗装を行った実施例17については、未塗装部に比較して塗装部での汚れ付着がほとんど見られなかった。
【0129】
【発明の効果】
本発明の機能性無機塗膜の形成方法では、塗膜の形成に使用される機能性無機塗料が光半導体を含むため、抗菌性、消臭性の他、表面親水性(水に対する濡れ性)向上による防曇性や雨水洗浄防汚性、さらには帯電防止機能による防汚効果等の、光半導体の光触媒作用に由来する種々の特性を充分発揮するとともに、無機系であるため、光半導体の添加により塗膜性能が損なわれることが少なく、紫外線で劣化しにくく、耐候性、耐久性等にも優れた機能性塗膜を形成することができる。また、この塗膜は、様々な色に調色可能であるため、デザイン性も高く、使用範囲が広い。
【0130】
本発明の機能性無機塗膜の形成方法で用いられる機能性無機塗料はさらに界面活性剤を含み、かつ、この界面活性剤が塗膜形成時に飛散されるため、得られる塗膜が微細に多孔質化し透湿(水)性を有するようになって、空気中の水分または塗膜表面に付着した水分を透過するようになるので、光半導体の効果が発揮され始めるまでの期間でも、製膜当初から表面親水性が高く防曇性や雨水洗浄防汚性等に優れた機能性無機塗膜を形成することができる。光半導体は、一度励起しておけばその後紫外線を当てなくても光触媒作用を発揮することができるため、それを含む塗膜は、紫外線が当たらないような部位でも使用可能であるとともに、光半導体が効果を発揮するまでの期間は、塗膜の微細な多孔質化による親水性付与効果が光半導体の機能(特に塗膜表面の親水性)を補完するので、本発明の塗膜形成方法から得られる塗膜は、理想的な機能性塗膜になる。
【0131】
さらには、上記界面活性剤の飛散により形成された塗膜の微細な多孔質構造による透湿性付与には、光半導体の含有量が少なくて光半導体が塗膜表面に充分露出していなくても、光半導体に、塗膜を透過した水分を接触させて水酸化ラジカルを発生させることにより、塗膜表面に高い親水性を付与できる効果もある。
本発明の機能性無機塗膜の形成方法では、上記界面活性剤としてノニオン系の界面活性剤を用いるため、カチオン系または両性の界面活性剤を用いた場合と異なり、光半導体の凝集が起こりにくく、光半導体を均一に分散させることが可能であるため、光半導体による各種機能を充分発揮させることができる。
【0132】
本発明の機能性無機塗膜の形成方法で用いられる機能性無機塗料に含まれる樹脂と光半導体と界面活性剤との割合を変えることにより、用途に応じて、光触媒作用による上記各種機能性や、塗膜特性等をコントロールすることができる。
本発明の機能性無機塗膜の形成方法で用いられる機能性無機塗料は、加熱硬化だけでなく、常温硬化も可能であるため、広い乾燥硬化条件範囲あるいは温度範囲での使用が可能である。従って、熱を均等にかけにくい形状を持つ基材、大きな寸法を持つ基材または耐熱性に劣る基材等に対しても塗装ができるのみでなく、屋外等で塗装作業を行ったりする場合等のように熱をかけにくい場合でも塗装できることから、その産業的価値が高い。
【0133】
本発明の機能性塗装品は、上記機能性無機塗膜の形成方法により得られたものであるため、同形成方法で用いられる機能性無機塗料や形成される機能性無機塗膜に由来する上記の優れた各種特性や利点を有する。
Claims (13)
- シリコーンレジンを主成分とする無機塗料中に光半導体と界面活性剤を、固形分基準で、塗料全量中での全縮合化合物と全光半導体成分と全界面活性剤成分との合計100重量部に対し、それぞれ、1〜80重量部、0.1〜20重量部含有してなる機能性無機塗料を基材に塗装することにより前記基材の表面に機能性無機塗膜を形成するにあたり、前記界面活性剤として100〜1,000の重量平均分子量を有するノニオン系界面活性剤を用いるとともに、前記界面活性剤を前記塗膜から飛散させることにより前記塗膜が微細な空隙を有するようにすることを特徴とする、機能性無機塗膜の形成方法。
- 前記界面活性剤の飛散は90〜350℃の加熱により行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記シリコーンレジンは、下記(A)成分を含むシリコーンレジンである、請求項1または2に記載の方法。
(A)成分:
一般式R2Si(OR1)3で表されるケイ素化合物100重量部に対し、一般式Si(OR1)4で表されるケイ素化合物および/またはコロイダルシリカ5〜30000重量部と、一般式R2 2Si(OR1)2で表されるケイ素化合物0〜60重量部とを含む加水分解性混合物(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示す)の加水分解重縮合物であって、この加水分解重縮合物の重量平均分子量がポリスチレン換算で900以上になるように調整されているオルガノシロキサン。 - 前記シリコーンレジンは、下記(B)、(C)、(D)および(E)成分を含み、(B)成分の原料の加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がm=1のオルガノシランであるシリコーンレジンである、請求項1または2に記載の方法。
(B)成分:
一般式R3 mSiX4−m …(I)
で表される(ここでR3は同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、mは0〜3の整数、Xは加水分解性基を示す。)加水分解性オルガノシランを、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒中で、前記加水分解性基(X)1モル当量当たり水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなるオルガノシランオリゴマー。
(C)成分:
平均組成式R4 aSi(OH)bO(4−a−b)/2 …(II)
で表され(ここでR4は同一または異種の置換もしくは非置換で炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)、分子中にシラノール基を含有するポリオルガノシロキサン。
(D)成分:
シリカ。
(E)成分:
硬化触媒。 - 前記(B)成分は、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒に前記(D)成分が分散してなるコロイダルシリカ中で、前記加水分解性オルガノシランを、前記加水分解性基(X)1モル当量当たり水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなり、前記(D)成分を、前記(B)成分と前記(D)成分との合計量に対し固形分として5〜95重量%含有するシリカ分散オルガノシランオリゴマーである、請求項4に記載の方法。
- 前記光半導体は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケルおよび酸化レニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物である、請求項1から5までのいずれかに記載の方法。
- 前記光半導体は粉末状またはゾル状である、請求項1から6までのいずれかに記載の方法。
- 前記光半導体の表面に金属が担持されている、請求項1から7までのいずれかに記載の方法。
- 前記光半導体の表面に担持されている前記金属は、銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、白金、金、パラジウム、カドミウム、コバルト、ロジウムおよびルテニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項8に記載の方法。
- 前記基材の表面に前記機能性無機塗料を厚さ0.01〜10μmに塗装する、請求項1から9までのいずれかに記載の方法。
- 前記基材は、金属、ガラス、ホ−ロ−、セラミックス、セメント、コンクリ−ト、木、木材、プラスチック、無機繊維強化プラスチック、これらの基材のうちのいずれかの表面に少なくとも1層の無機物被膜および/または少なくとも1層の有機物被膜を有する塗装基材の各単独材料、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる複合材料、および、これらのうちの少なくとも2つを積層してなる積層材料からなる群より選ばれている、請求項1から10までのいずれかに記載の方法。
- 前記塗装基材が表面に有する前記被膜はプライマー層である、請求項11に記載の方法。
- 請求項1から12までのいずれかに記載の方法により得られた機能性塗装品。
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