JP4088747B2 - クラッチ機構、該機構を備えた給紙装置及び記録装置 - Google Patents
クラッチ機構、該機構を備えた給紙装置及び記録装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチ機構、該クラッチ機構を備えた給紙装置及び記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、インクジェット式記録装置の給紙装置においては、側面視略D型の給紙ローラから紙送りローラへ向けて記録用紙を給紙し、その記録用紙の先端が紙送りローラに引き渡された後に、給紙ローラの駆動を停止すると共に紙送りローラの駆動を継続して、記録ヘッドの存する搬送路に用紙を送り出す機構が採用されている。そして、小型の給紙装置においては、装置の小型化と低価格化を図るために、単一の駆動モータによりこの2つのローラの所要の動作を行えるように工夫されている。
【0003】
具体的には、単一の駆動モータからの駆動力を給紙ローラ及び紙送りローラへ伝える歯車列ないしはベルト機構等の動力伝達機構を設け、該動力伝達機構中に、給紙ローラ係歯車への駆動力の伝達を断続するクラッチ機構を設けている。このクラッチ機構は、給紙ローラを駆動する歯車にラチェット機構を設け、該歯車が1回転をすると別途設けたトリガレバーが該ラチェット機構を構成する一部材に係合して該部材と前記歯車とのラチェット機構による係合を解除することにより、給紙ローラがそれ以上回転しないようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のクラッチ機構は、前記トリガレバーに前記ラチェット機構の前記部材と前記歯車との係合を解除させる動作を行わせるために、前記駆動モータを逆回転させ、該係合を解除する動作を行わせるようなっていた。そのため、給紙装置の給紙シーケンスが複雑となり、また、給紙に要する時間も長くなり、スループットが低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、モータを逆回転させることなく前記係合を解除でき、したがって給紙シーケンスが簡単となり、スループットも向上できるクラッチ機構、該クラッチ機構を備えた給紙装置及び該給紙装置を備えた記録装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本願第1の態様のクラッチ機構は、給紙ローラと連動して回転する第1の回転部材とモータの駆動力により回転する第2の回転部材の係合をトリガレバーの動作により断続するクラッチ機構であって、前記トリガレバーがキャリッジの移動によって動くことにより前記第1及び第2の回転部材の係合を断続することを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、トリガレバーがキャリッジの移動により回動又はスライド等の動作をすることにより前記第1及び第2の回転部材の係合を断続するので、モータを逆回転することなく第1及び第2の回転部材の係合を断続できる。したがって、シーケンスが複雑化することがなく、スループットも向上できる。
【0008】
また、本願第2の態様の発明は、第1の態様において、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とはラチェット機構により係合することを特徴とするものである。本発明によれば、簡単な構成で前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との係合を断続できる。
【0009】
また、本願第3の態様の発明は、第1または第2の態様において、前記トリガレバーは一端に係止鉤が形成されており、前記トリガレバーの動きにより前記係止鉤が前記第1の回転部材又は第2の回転部材に係合又は係合からの離脱を行うことにより前記第1及び第2の回転部材の係合を断続することを特徴とするものである。本発明によれば、簡単な構成で前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との係合を断続できる。
【0010】
また、本願第4の態様の発明は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記クラッチ機構は1回転クラッチであることを特徴とするものである。本発明によれば、給紙ローラが1回転する毎にクラッチ機構の断続を行うことができ、機構の簡素化ができる。
【0011】
また、本願第5の態様の発明は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記トリガレバーは1枚の用紙の終端が前記給紙ローラから所定の距離だけ離れたときに前記第1回転部材及び第2の回転部材を係合することを特徴とするものである。本発明によれば、1枚目の用紙の終端と2枚目の用紙の先端との距離を位置検出上必要な最小限の距離に設定することができ、スループットを向上させることができる。
【0012】
本願第6の態様の給紙装置は、第1から第5のいずれか一の態様のクラッチ機構を備えて成るものである。本発明によれば、クラッチ機構を動作させるためにモータを反転させる必要がないので、シーケンスが複雑化することがなく、スループットも向上できる給紙装置が得られる。
【0013】
本願第7の態様の記録装置は、給紙ローラを回転させて複数枚セットされた用紙から1枚ずつ給紙する給紙装置と、該給紙装置から給紙された用紙を副走査方向にその送り量をコントロール下で紙送りする紙送りローラを備えた紙送り機能部と、記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に往復動させて前記記録ヘッドに対向する用紙に記録データに基づく記録を実行する記録実行部と、前記給紙装置の給紙ローラと前記紙送り機能部の紙送りローラとの間に配置され用紙の先端通過及び終端通過を検出可能な紙検出器とを備え、前記紙送り機能部による副走査方向への所定量の紙送り動作と、前記記録実行部による停止状態の用紙に対する記録実行動作とを交互に行って全記録を実行する記録装置であって、前記給紙装置は、前記第1の回転部材を前記給紙ローラと一体に回転する部材とし、前記第2の回転部材を前記紙送りローラと一体に回転する部材とした上で、第1から第5のいずれか一の態様のクラッチ機構を備えて成ることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、紙送りローラを回転させるためのモータの動力を給紙ローラの動力源としても利用し、その動力伝達の断続をクラッチ機構によって行う構成の記録装置において、給紙装置のクラッチ機構を動作させるために前記モータを紙送り方向を正転として逆転させる必要がないので、シーケンスが複雑化することがなく、スループットも向上できる記録装置が得られる。
【0015】
また、本願第8の態様の発明は、第7の態様において、前記記録実行部は、そのキャリッジの各動作の基礎となる位置として、記録の1桁側に位置するホームポジションと、記録の多桁側に位置する待機ポジションと、該待機ポジションより外側に位置するトリガーポジションとを有し、記録実行動作は、キャリッジが前記ホームポジションと待機ポジションの間の両折り返し点間で往復動して実行され、前記クラッチ機構の断続動作は、キャリッジが前記ホームポジション側から前記トリガーポジションにまで移動して前記トリガレバーを押すことにより該クラッチを動力非伝達状態から動力伝達状態に移行させることにより実行されるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、キャリッジの各動作の基礎となる位置として、ホームポジション、待機ポジション及びトリガーポジションを有し、キャリッジをその往復動作において、これらの位置に至らせることによって、簡単にその意図する動作を実行させることができる。そして、給紙装置における前記クラッチ機構の断続動作も前記待機ポジションの外側に設けたトリガーポジションにキャリッジを至らせることによって容易に実現することができる。
【0017】
また、本願第9の態様の発明は、第8の態様において、前記クラッチ機構の断続動作は、1枚の用紙への記録終了前において、前記ホームポジションと待機ポジションの間での記録実行のためのキャリッジの往復動作の内、前記待機ポジションに向かう移動の1動作を該待機ポジションを越えて前記トリガーポジションまで移動しつつ記録を実行する動作に設定することで実行されるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、1枚の用紙への記録終了前において、記録実行のためのキャリッジの往復動作の内、前記待機ポジションに向かう移動の1動作を該待機ポジションを越えて前記トリガーポジションまで移動しつつ記録を実行する動作に設定できるので、すなわち一連の記録動作の中でクラッチを動力伝達状態(接続状態)に移行させることができるので、記録終了を待たずに次位の用紙の給紙を開始させることができる。従って、次位の用紙の給紙開始を先に用紙の記録終了前の速いタイミングで行うことができ、記録装置としてスループットを向上することができる。
【0019】
また、本願第10の態様の発明は、第9の態様において、前記クラッチ機構の断続動作は、サイズ既知の用紙先端が紙検出器を通過し、その用紙先端検出と用紙サイズに基づいて用紙の終端位置を演算により求めて把握し、その求めた用紙終端位置が紙送り動作を経て演算上において次位の用紙から離れ、且つ該用紙終端が前記紙検出器の検出位置に至る前に、キャリッジが前記ホームポジション側から前記トリガーポジションにまで移動して前記トリガレバーを押すように設定可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、従来は1枚目の用紙の終端が紙検出器の検出位置を通過してから、次位の用紙の給紙が開始できる構成であったのに比して、1枚目の用紙終端が紙検出器の検出位置に至る前に次位の用紙の給紙を開始するので、記録装置としてのスループットを大幅に向上することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の一形態のクラッチ機構を示す分解斜視図であり、該クラッチ機構は、インクジェットプリンタの給紙装置に搭載されている。
【0022】
このインクジェットプリンタは、給紙ローラ7を回転させて複数枚セットされた用紙から1枚ずつ給紙する給紙装置と、該給紙装置から給紙された用紙を副走査方向にその送り量をコントロール下で紙送りする紙送りローラを備えた紙送り機能部と、記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に往復動させて前記記録ヘッドに対向する用紙に記録データに基づく記録を実行する記録実行部と、前記給紙装置の給紙ローラ7と前記紙送り機能部の紙送りローラとの間に配置され用紙の先端通過及び終端通過を検出可能な紙検出器とを備えている。そして、前記紙送り機能部による副走査方向への所定量の紙送り動作と、前記記録実行部による停止状態の用紙に対する記録実行動作とを交互に行って全記録を実行するように構成されている。以上の構成は従来公知の構成であるので詳しい説明は省略する。
【0023】
本実施の形態においては、図8に概略的に示すように、前記記録実行部は、そのキャリッジの各動作の基礎となる位置として、記録の1桁側(図1の右端側)に位置するホームポジションと、記録の多桁側(図1の左端側)に位置する待機ポジションと、該待機ポジションより外側に位置するトリガーポジションとを有している。そして、記録実行動作は、キャリッジが前記ホームポジションと待機ポジションの間の両折り返し点間で往復動して実行されるようになっている。
【0024】
図1において、歯車装置1は同軸上に固定された径の異なる歯車1aと歯車1bとから成り、その中心軸が給紙装置のフレーム2に回動自在に軸支されている。歯車1aには図示しないベルト機構を介して動力が伝達される歯車(図示せず)が噛合し、図示しない紙送り用のモータからの駆動力が伝達される。該モータの駆動力は図示しない紙送りローラに該ベルト機構を介して伝達されるように構成されている。
【0025】
歯車1bは、太陽歯車となる歯車3と噛合しており、歯車3の中心軸31はフレーム2に植立されている。歯車3は該中心軸31に回動自在に軸支されている。該中心軸31は遊星機構4の孔41に嵌合し、遊星機構4は孔41を中心として回動自在に中心軸31に軸支されている。遊星機構4は前記孔41を中心とする略L字形の板部42と、該板部42の一方の端部42aに植立された支持軸43と、該支持軸43に回動自在に軸支された遊星歯車44とから構成される。
【0026】
歯車3は、フレーム2に植立された図示しない支持軸上に回動自在に軸支された歯車5及び遊星歯車44に噛合している。歯車5は、第2の回転部材としての歯車6と噛合している。歯車6は、紙送りローラと一体に連動して回転するものであると共に、側面視略D型の給紙ローラ7を固着した給紙軸8の細径化された先端部81に回動自在に遊嵌されている。歯車6のフレーム2側の端面には歯車6より小径のラチェット歯61が形成されている。
【0027】
給紙軸8の先端部81は、フレーム2に形成された図示しない孔に回動自在に嵌挿されている。先端部81のフレーム2近傍の給紙ローラ7側には、第1の回転部材としての歯車9が給紙軸8と一体的に回動するように、先端部81に固着されている。歯車9の歯車6側の端面には軸91が植立され、歯車9と歯車6との間に間挿される、同じく第1の回転部材としての環状体10の中空円盤部10bの歯車9側の端面に凸設された円環部101に挿貫されている。一方、歯車9の歯車6側の端面にはもう1本の軸92が植立されており、該軸92にはスプリング11の一端が懸架されている。スプリング11の他端は、環状体10の中空円盤部10bの歯車9側の端面に植立された軸102に懸架されている。すなわち、環状体10は軸91を中心として回動し得ると同時に、スプリング11により図1の右側から見て時計方向に付勢されている。
【0028】
環状体10の歯車6側の円筒部10aの内面には歯車6のラチェット歯61と係合する突起103が凸設されている。また、環状体10の中空円盤部10bの歯車6側の面上には、係止片104が凸設されている。
【0029】
フレーム2に凸設された軸21には、トリガレバー12が遊嵌されており、該トリガレバー12の上部には円環部121が凸設され、該円環部121にはトーションスプリング13が捲設されている。トリガレバー12は、このトーションスプリング13により、係止鉤122の設けられた端部が常時フレーム2側に付勢されている。トリガレバー12の他端部123は、フレーム2の印字領域と給紙領域とを区切る図示しないメインフレーム(隔壁)に設けられた図示しない開口部から印字領域に突出し、図示しないキャリジが図1のフレーム2に隣接するトリガーポジション(図8参照)に移動したときに該キャリッジの押圧部により図1の左方向に押圧されるようになっている。
【0030】
次に、このように構成された本実施の形態の動作を説明しつつその構造を説明する。図2は本実施の形態のクラッチ機構の動作開始以前の状態を、分かり易いように、ラチェット歯61、円筒部10a及び歯車9の部分の相互の位置関係を図1の右側から透視して見た模式図である。図3は、この状態を上方から見た平面図である。
【0031】
図2及び図3に示すように、この状態では、トリガレバー12はトーションスプリング13の付勢力により歯車9と平行な状態にあり、トリガレバー12の先端部の係止鉤122が環状体10の円筒部10aの係止片104に係合している。そのため、円筒部10aはスプリング11の付勢力に抗して図2の左上方に引き上げられ、突起103はラチェット歯61から離脱した状態にある。この状態では、図示しないモータから歯車装置1に駆動力が伝達されても、歯車装置1の歯車1b、歯車3及び歯車5を介して歯車装置1の回転力が伝達されて歯車6は回転するが、ラチェット歯61と円筒部10aの突起103とが離脱しているため、環状体10は回転せず、したがって、環状体10に一体的に係合されている歯車9も回転せず、そのため歯車9と一体的に固着されている給紙軸8も回転しない。このとき、言うまでもないが紙送りローラは回転する。なお、この状態では、遊星機構4は、図1の右側面から見た要部側面図図4に示すように、遊星歯車44が歯車9から遊離した状態にある。
【0032】
この状態で、給紙装置の図示しないホッパー部分に用紙が積み重ねて置かれ、本実施の形態のクラッチ機構を備えた給紙装置を有する、インクジェットプリンタに印刷開始信号が供給されると、図示しないキャリッジが、図1の右側のホームポジションから、図1の左端のフレーム2の近傍のトリガーポジションまで移動する(図8参照)。このとき、トリガレバー12の端部123がキャリッジの押圧部に押圧され、トリガレバー12はトーションスプリング13の付勢力に抗して円環部121を中心に回動し、係止鉤122が環状体10の係止片104との係合位置から離脱して、図5の平面図に示すように、歯車6の上方に移動する。
【0033】
この状態では、係止鉤122と係止片104との係合が解除されるため、図2と同様にラチェット歯61、円筒部10a及び歯車9の部分の相互の位置関係を図1の右側から透視して見た模式図図6に示すように、環状体10はスプリング11の付勢力により図6の右下方に引き寄せられ、突起103がラチェット歯61に係合し、クラッチ機構が接続された状態になる。
【0034】
従って、モータの駆動力は、歯車装置1の歯車1b、歯車3、歯車5及び歯車6を介してラチェット歯61に伝達され、ラチェット歯61に円筒部10aの突起103が係合していることから、歯車6が図1の右側から見たときに時計方向に回転するようにモータが歯車6を駆動するときには、ラチェット歯61と突起103とから成るラチェット機構により、環状体10が時計方向に回転される。環状体10の円環部101には歯車9の軸91が嵌挿されているため、歯車9も環状体10と一体的に回転し、したがって、歯車9に一体的に固定されている給紙軸8も同様に時計方向に回転する。
【0035】
給紙軸8の回転に伴い、給紙軸8に一体的に固定されている給紙ローラ7も時計方向に回転し、同じく回転している紙送りローラ方向へ用紙の搬送が開始される。環状体10の回転に伴い中空円盤部10b上の係止片104も回転し、トリガレバー12の係止鉤122が円筒部10a上に復帰しても該係止鉤122と係合しない位置に移動する。本実施の形態では、給紙軸8が約45度回転した後、キャリッジは前記トリガーポジションより少し右側の待機ポジションに移動し、用紙の搬送と印字データの到来を待って印字動作を開始するようになっている。なお、キャリッジの移動は本プリンタの図示しない制御回路により制御される。
【0036】
給紙ローラ7は、紙送り方向に回転して用紙の搬送を継続し、前記給紙ローラ7と前記紙送りローラとの間に配置され用紙の先端通過及び終端通過を検出可能な紙検出器(図示せず)により、用紙の先端位置が当該プリンタの用紙搬送制御系によって正確に把握され、紙送りローラ位置での用紙の所定の頭出しが行われる。
【0037】
用紙が給紙ローラ7により紙送りローラに向かって搬送されるときに用紙が紙送りローラに対して斜めになった状態で搬送されてしまうことがある。このような場合に対応していわゆるスキュー取りを行えるようになっている。
【0038】
すなわち、トリガレバー12は、図3に示すように、円筒部10aの上部に復帰してはいるが、係止鉤122は係止片104との係合状態にはなく、したがって、図6に示すように、突起103はラチェット歯61に係合し、クラッチ機構が接続された状態にある。しかし、突起103とラチェット歯61とはラチェット機構を構成しているので、歯車6が時計方向(紙送り方向)に回転するときには歯車6の回転力は環状体10に伝達されるが、逆方向(反時計方向)に回転するときには、歯車6の回転力は環状体10には伝達されず、したがって給紙ローラ7は逆回転しない。
【0039】
このように、用紙を戻す方向にモータを逆転させて紙送りローラを逆転させたとき、給紙ローラ7にはその動力が伝達されないため、給紙ローラ7は停止状態となる。すなわち、給紙ローラ7を停止した状態で紙送りローラだけ逆転するため、用紙先端部分にスキュー取りに必要な撓みを形成することができ、再び紙送りローラを正転するようにモータの回転方向を変えることにより、スキュー取りが実行される。
【0040】
ここで、遊星機構4について説明する。印刷終了後に間もなく給紙装置のホッパーをレリース(下降退避)させる等の動作をさせる場合があり、本実施の形態では、給紙ローラを逆転動作させることでカム機構を介して前記ホッパーをレリースさせるように構成されている。従って、このホッパーレリースを実行する場合は、モータの逆転により、紙送りローラを逆転させると共に、給紙ローラも逆転させる必要がある。この場合、単に紙送りローラを逆転させるだけでは、前述の如く、クラッチ機構を介して動力が給紙ローラ側に伝達されない。また、通常の状態(キャリッジがトリガーポジション以外にいる)では、トリガレバー12の遊星規制部124によって、板部42の回転を規制している為、遊星歯車44の動力が歯車9へ伝達されない構成となっている。従って、ホッパーをレリースさせることができない。
【0041】
そこで、本実施の形態では、モータ逆転による紙送りローラの逆転に先立って、キャリッジを前記トリガーポジションにまで至らせ、これによりトリガレバー12を回動させて遊星機構4の動作規制状態を解除し、該遊星機構4の板部42を反時計方向に回動可能な状態とするように構成されている。次いでモータを逆転させることにより、遊星機構4の板部42が反時計方向に回動し、遊星歯車44が歯車9と歯合状態となり、これにより紙送りローラの逆転駆動力が給紙ローラ7側に伝達可能となり、該給紙ローラ7の逆転により前記ホッパーレリースを実行できるようになっている。
【0042】
すなわち、給紙ローラ7を逆回転させるモータの駆動力は、歯車3を反時計方向に回転させるので、遊星機構4の遊星歯車44が時計方向に回転しながら持ち上げられることにより、板部42が孔41を中心として反時計方向に回転し、図7に示すように、遊星歯車44が歯車9と噛合する。これにより、歯車3の反時計方向の回転力が遊星歯車44の時計方向の回転力として歯車9に伝達され、歯車9が反時計方向に回転する。したがって、給紙ローラ7は反時計方向に回転して、給紙装置のホッパーのレリース(下降退避)を行うことができる。
【0043】
スキュー取り動作の後に、用紙は紙送りローラにより記録実行のための搬送が開始される。
その後、環状体10が1回転すると、中空円盤部10b上の係止片104は再びトリガレバー12の係止鉤122との係合位置に戻り、このとき既にトリガレバー12は円筒部10a上に復帰しているために、トリガレバー12の係止鉤122と係止片104とが図2に示すように係合し、円筒部10aはスプリング11の付勢力に抗して図2の左上方に引き上げられ、突起103とラチェット歯61との係合が解除され、クラッチ機構は切断される。すなわち、1回転クラッチからなるクラッチ機構により、歯車6の時計方向の回転力は環状体10には伝達されず、歯車9は回転を停止し、したがって給紙軸8及び給紙ローラ7も回転を停止する。
【0044】
なお、このとき遊星機構4は歯車3の時計方向の回転により板部42が孔41を中心として時計方向に回転して、図4に示すように、遊星歯車44が歯車9から離脱した状態にあり、歯車9に何の回転力も伝達しない。この状態では、用紙は紙送りローラにより搬送され、印字データに基づく通常の印字動作が行われる。
【0045】
次に、数ページの連続した印刷に関しての給紙について説明する。
用紙の終端位置は、前記紙検出器による用紙先端位置の把握に基づいて、用紙搬送制御系に制御回路により予め入力された用紙サイズデータから計算により求められる。本実施の形態では、その計算上の用紙終端が給紙軸8の位置を通過した後、該用紙後端が給紙軸8から約15mm離れた位置に到達したときに、すなわち、用紙終端が次位の用紙先端から所定の距離だけ離れる用紙搬送制御動作をしたときに、キャリッジが前記トリガーポジションにまで、ホームポジション側から記録動作を実行しつつ移動し、トリガレバー12の端部123を図1の左方向に押圧する。そして、トリガレバー12の係止鉤122が歯車6方向に回動して係止鉤122と係止片104との係合が解除され、上述した動作によりクラッチ機構が接続され、副走査方向の1行分の改行(紙送り動作)と共に、給紙ローラ7が時計方向に回転し始めて次の用紙の給紙動作を開始する。
【0046】
このとき1枚目の用紙は、まだ紙送りローラにより搬送されている途中であり、モータを逆回転することなく、1枚目の用紙を印刷しながら引き続き2枚目の用紙を紙送りローラ方向に給紙開始することができるので、スループットを向上させることができる。
【0047】
なお、1枚目の用紙が用紙の印刷範囲の最終位置まで印刷しないで、途中で印刷を終了し、残りを余白とする場合には、印刷終了後においては、用紙の搬送は1行ずつの印字動作ではなく、一連の排紙動作となるように構成されている。本実施の形態では、この場合にも、通常の印字動作時と同様に、計算上求められた1枚目の用紙の後端位置が給紙軸8から約15mm離れた位置に到達したときに、キャリッジが前記トリガポジションに移動し、係止鉤122と係止片104との係合が解除され、上述した動作によりクラッチ機構が接続され、給紙ローラ7が時計方向に回転し始めて次の用紙の給紙動作を開始するようになっている。
【0048】
言うまでもないが、1枚目の用紙の終端位置と2枚目の用紙の先端位置の間隔は15mmに限定されるものではなく、設計上適当な間隔に設定し得る。また、モータの駆動力の歯車装置1への伝達は、ベルト機構を用いるものでも、歯車列による駆動力の伝達機構を用いるものでもよい。さらに、本実施の形態においては、歯車列の数を歯車装置1、歯車3、歯車5の3個としたが、歯車列の数がこれに限定されるものでないことも言うまでもない。また、本実施の形態では、回動形のトリガレバーを使用したが、スライド式等その他の動きのものも同様に用いることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るクラッチ機構によれば、トリガレバーがキャリッジの移動により回動することにより、給紙ローラと連動して回転する第1の回転部材とモータの駆動力により回転する第2の回転部材の係合を断続するので、モータを逆回転することなく第1及び第2の回転部材の係合を断続することができ、シーケンスが複雑とならず、スループットも向上できるクラッチ機構が得られる。
【0050】
また、本発明の記録装置によれば、モータを逆回転させることなく断続できるクラッチ機構を備えているので、シーケンスが複雑でなく、スループットも高い記録装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になるクラッチ機構を示す分解斜視図である。
【図2】図1のクラッチ機構の動作開始以前の状態を、ラチェット歯、円筒部及び歯車の部分の相互の位置関係を図1の右側から透視して見た模式図である。
【図3】図2の状態を上方から見た平面図である。
【図4】図1のクラッチ機構の遊星歯車が、給紙ローラに固定された歯車から離れている状態を右側面から見た要部側面図である。
【図5】図1のクラッチ機構のトリガレバーが右方向に回動した状態を示す平面図である。
【図6】図1のクラッチ機構が接続された状態での該クラッチ機構のラチェット歯、円筒部及び歯車の部分の相互の位置関係を図1の右側から透視して見た模式図である。
【図7】図1のクラッチ機構の遊星歯車が、給紙ローラに固定された歯車に噛合した状態を右側から見た要部側面図である。
【図8】本発明に係る記録装置のキャリッジがとる、各動作の基礎となる位置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
6 歯車(第2の回転部材)
7 給紙ローラ
9 歯車(第1の回転部材)
10 環状体
12 トリガレバー
61 ラチェット歯
103 突起
104 係止片
122 係止鉤
Claims (4)
- 給紙ローラを回転させて複数枚セットされた用紙から1枚ずつ給紙する給紙装置と、
該給紙装置から給紙された用紙を副走査方向にその送り量をコントロール下で紙送りする紙送りローラを備えた紙送り機能部と、
記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に往復動させて前記記録ヘッドに対向する用紙に記録データに基づく記録を実行する記録実行部と、
前記給紙装置の給紙ローラと前記紙送り機能部の紙送りローラとの間に配置され用紙の先端通過及び終端通過を検出可能な紙検出器とを備え、
前記紙送り機能部による副走査方向への所定量の紙送り動作と、前記記録実行部による停止状態の用紙に対する記録実行動作とを交互に行って全記録を実行する記録装置であって、
前記給紙装置は、給紙ローラと連動して回転する第1の回転部材とモータの駆動力により回転する第2の回転部材の係合をトリガレバーの動作により断続するクラッチ機構を備え、
前記第1の回転部材を前記給紙ローラと一体に回転する部材とし、前記第2の回転部材を前記紙送りローラと一体に回転する部材とした上で、
前記トリガレバーがキャリッジの移動によって動くことにより前記第1及び第2の回転部材の係合を断続する構成であり、
前記記録実行部は、そのキャリッジの各動作の基礎となる位置として、記録の1桁側に位置するホームポジションと、記録の多桁側に位置する待機ポジションと、該待機ポジションより外側に位置するトリガーポジションとを有し、
記録実行動作は、キャリッジが前記ホームポジションと待機ポジションの間の両折り返し点間で往復動して実行され、
前記クラッチ機構の断続動作は、キャリッジが前記ホームポジション側から前記トリガーポジションにまで移動して前記トリガレバーを押すことにより該クラッチを動力非伝達状態から動力伝達状態に移行させることにより実行され、
1枚の用紙への記録終了前において、前記ホームポジションと待機ポジションの間での記録実行のためのキャリッジの往復動作の内、前記待機ポジションに向かう移動の1動作を該待機ポジションを越えて前記トリガーポジションまで移動しつつ記録を実行する動作に設定することで実行されるように構成されていることを特徴とする記録装置。 - 請求項1に記載の記録装置において、前記クラッチ機構の断続動作は、サイズ既知の用紙先端が紙検出器を通過し、その用紙先端検出と用紙サイズに基づいて用紙の終端位置を演算により求めて把握し、その求めた用紙終端位置が紙送り動作を経て演算上において次位の用紙から離れ、且つ該用紙終端が前記紙検出器の検出位置に至る前に、キャリッジが前記ホームポジション側から前記トリガーポジションにまで移動して前記トリガレバーを押すように設定可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
- 請求項1または2に記載の記録装置において、前記クラッチ機構の前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とはラチェット機構により係合し、
前記第1の回転部材と噛合うことが可能な遊星歯車を有する遊星機構と、
前記トリガレバーにおいて、前記遊星機構の動作を規制可能な遊星規制部と、を備え、
前記キャリッジが前記トリガーポジションにまで移動したとき、前記遊星規制部による前記遊星機構の動作規制状態が解除され、前記モータの動力が前記遊星機構を介して前記第1の回転部材へ伝達される構成である記録装置。 - 請求項3に記載の記録装置において、前記給紙ローラを逆転駆動させることでカム機構を介して用紙が載置されるホッパを、前記給紙ローラに対して退避させる構成である記録装置。
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