JP4087498B2 - 定着装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば静電複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、加熱ローラ型の定着装置は、粉体現像剤からなる現像剤像を坦持した記録媒体たとえば用紙を加熱する加熱ローラおよび加圧しつつ搬送する加圧ローラとを備え、これら加熱ローラと加圧ローラとの圧接部( ニップ部) である定着ポイントを用紙が通過することで、この用紙上の現像剤を融着圧着して定着するようになっている。
【0003】
従来の電子写真装置の定着装置では加熱源として、ハロゲンランプ等を用いこれを金属ローラの内側に設置し、このローラを輻射熱によって加熱し、記録媒体をこのローラに加圧接触させるために弾性ローラを押し当て、これらのローラを回転させ、上述のように記録媒体を通過させる方式が一般的で、その他にフラッシュ加熱方式、オーブン加熱式、熱板加熱方式など種々のものが実用化されている。
【0004】
また、近年では、円筒状の耐熱性のフィルム材を用いた加熱式の定着装置も実用化されている。これは、加熱体と上記加熱体に密着して移動する耐熱性フィルムを有し、このフィルムを介して被加熱材を加熱体に密着させてフィルムと一緒に移動させ加熱体の熱エネルギーをフィルムを介して被加熱体に付与する加熱装置である。
【0005】
また、電磁誘導加熱の手法を用いた定着装置としては、特開昭59−33476号公報、特開平8−76620号公報等に示されるものがある。
特開昭59−33476号公報に記載のものは、円筒状のセラミックスの外周に薄厚金属層を持つローラで、このローラの薄厚金属層に誘導コイルを用いて誘導電流を流して加熱する方式である。
【0006】
また、特開平8−76620号公報のものは、磁場発生手段によって導電フィルムを加熱して密着させた記録媒体を定着する装置であり、磁場発生手段をアセンブリしている部材と加熱ローラの間に発熱ベルトを挟ませてニップを形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような電磁誘導加熱を利用する定着装置には、以下のような問題があった。
加熱用コイルが巻かれているコア材が切削あるいは型を用いて一体成型されているため、長手方向に関して寸法精度を出すのが困難であった。特にコア材料にフェライト材を用いた場合は、複雑なコア形状を一体で作成するのは困難であり、寸法精度を要求すると製造コストが大幅に上がってしまう。また、コア材を一体で作成する場合にコア材料として導電材料( 鉄芯、パーマロイ、アモルファス) を用いるとコア材自体に渦電流が発生し、コア材そのものが熱を発生してしまう。つまり、熱効率が落ちてしまう。
【0008】
また、一体成形の場合、長手方向において発熱量を調整することが不可能であり、このためニップ部において中央部よりも端部の方が空気中への放熱量が多くなり、端部で加熱不足を生じる等の問題がある。さらに、定着ニップ幅に対して小さい用紙が通された場合には、通紙部分と非通紙部分との間で温度差が生じてしまい、これが温度履歴として残ったまま定着ムラが生じてしまうという問題も発生していた。
【0009】
この問題を解決する手段として例えば、特開平8−16005号公報に示されるものでは、複数のコア材を1方向に配列してその配列状態をホルダーで保持している。この方法によれば、コア材自体に渦電流が発生する事態を防ぐことが可能である。しかし、コア材を単に1方向に配列する構成はトランス等のコアではよく行われることであり、渦電流をコア材自体に発生させないための基本的なものである。また、コア材の配列をホルダーで保持しているが、配列を保持するだけでは強度不足となり被加熱材との距離を正確に維持することが難しい。また、回転物がコアと近接しているため構造材としての強度が必要となり、ホルダーによる配列保持の構成では強度不足となる。また、回転による振動で個々のコア材がホルダの中で振動してしまう問題があった。さらにコア材の周囲にホルダーを設けることになるためコア材を含めた磁場発生手段が大型化してしまい、小型化していくのが難しい等の問題があった。
【0010】
そこで本発明は誘導加熱方式を用いた定着装置において上記の問題を解決する。すなわち、コア材の加工精度、寸法精度を向上させ、製造コストを下げること、また、上記条件を保ちながら、一体成形した場合と同等の強度を維持すること、さらに局部的な加熱不足、定着不良、温度ムラ等の発生をなくすことを目的とする。
とくに、本発明の大きな目的は、誘導加熱方式を用いた定着装置における異常加熱を防ぐことである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1に係る発明の定着装置は、回転駆動される導電性の加熱ローラと、この加熱ローラに対し加圧状態で転接しその転接部に現像剤像が形成された記録媒体を通過させる加圧ローラと、上記加熱ローラの側に配置され加熱ローラにおける上記転接部を磁場の作用により局部的に誘導加熱する誘導加熱装置とを備え、上記転接部を通る記録媒体上の現像剤像を加熱ローラの発熱により定着させる定着装置において、上記加熱ローラの回転を検知する検知手段と、この検知手段の検知結果に応じて上記誘導加熱装置の動作を制御することにより、上記加熱ローラの局部的な異常加熱を防ぐ制御手段、を備えている。
【0042】
【発明の実施の形態】
[1]以下、この発明の第1参考例について説明する。
図3に示すように、上面に現像剤像Tが形成された記録媒体たとえば用紙Pの搬送路を上下に挟む位置に、導電性の加熱ローラ2(発熱部材または第1の転接部材;φ40mm)、およびこの加熱ローラ2に対し加圧機構(図示せず)からの偏倚力をもって加圧状態で転接する加圧ローラ3(第2の転接部材;φ40mm)が配設される。ローラ2,3の転接部は一定のニップ幅を持つように維持される。
【0043】
加熱ローラ2は駆動モータ( 図示せず) により矢印方向に駆動され、加圧ローラ3は従動で矢印方向に回転するようになっている。加熱ローラ2の材質は鉄を用いており、肉厚0.6mmとしている。ローラ表面には、テフロン等の離型層2aが被覆されている。加圧ローラ3は、芯金の周囲にシリコンゴム、フッ素ゴム等の部材3aを被覆して構成されている。これら加熱ローラ2と加圧ローラ3との転接部( ニップ部) である定着ポイントを用紙Pが通過し、かつ用紙Pが加熱ローラ2から熱を受けることで、用紙P上の現像剤像Tが融着圧着されて用紙Pに定着するようになっている。定着が終わった用紙Pは排紙トレイ4に排出される。
【0044】
加熱ローラ2の周囲には、加熱ローラ2と加圧ローラ3との転接部よりも回転方向下流側に、用紙Pを加熱ローラ3から剥離させる剥離爪5、加熱ローラ2上にオフセットされたトナーや紙屑等のごみを除去するクリーニング部材6、加熱ローラ2の温度検出をするサーミスタ7、オフセット防止用離型剤を塗布する離型剤塗布装置8が配設される。また、加熱ローラ2の表面において、ローラ2,3の回転に支障が生じない位置に、温度ヒューズとしてサーモスタット9が取付けられる。
【0045】
そして、加熱ローラ2の内部に磁場発生手段として誘導加熱装置10が収容される。誘導加熱装置10は、E形のコア11およびそのコア11の内脚部11aに巻回した励磁コイル12からなる。励磁コイル12は、線形0.5mmの銅線材を用いており、リッツ線として構成される。リッツ線にすることで交流電流を有効に流すことが可能となる。また、励磁コイル12は耐熱性のポリイミドアミドで被覆される。
【0046】
図示しない励磁回路( インバータ回路) から励磁コイル12に高周波電流が供給されることにより、励磁コイル12から磁界が発生する。この磁界はコア11によって上記転接部付近に集中し、加熱ローラ2に磁束と渦電流が発生する。この渦電流と加熱ローラ抵抗によって熱が発生する。とくに、コア11および励磁コイル12の形状により、加熱ローラ2の転接部だけを局部的に加熱する構成となっている。
【0047】
本実施例では、励磁コイル12に周波数20kHz、出力900Wの高周波電流を供給するとともに、加熱ローラ2の表面温度として180℃を設定し、その設定温度とサーミスタ7の検知温度とを比較しながら上記高周波電流をフィードバック制御する。このとき、ローラ2,3の温度分布を均一にするため、ローラ2,3は回転している。ローラを回転させることでローラ全面に一定の熱量を与えている。加熱ローラ表面温度が180℃に達するとコピー動作が開始され、用紙Pが加熱ローラ2と加圧ローラ3との転接部(ニップ部)である定着ポイントを用紙Pが通過することで、この用紙上の現像剤を融着圧着して定着する。また、インバータ回路への電流は加熱ローラ表面に圧接された温度ヒューズであるサーモスタット9を介して供給される。このサーモスタット9は加熱ローラ2の表面温度があらかじめ設定されている異常温度に達すると回路に供給する電流を遮断するものである。
【0048】
このような構成において、コア11は、図1に示すように、フェライト材を用い少なくとも1つ以上の断面形状を有する複数のコア部材111が加熱ローラ2の回転軸方向に沿って積層され且つ接着剤112により相互に接着されて一体化構成される。この一体化の後、励磁コイル12が内脚部11aに巻回される。このコア11の形状により、加熱ローラ2における転接部を集中的に加熱することができる。
【0049】
なお、コア部材111の材料としては、フェライトに限らず、鉄心やパーマロイ等を用いてもよい。ただし、鉄心やパーマロイの場合は、フェライトと異なり、導電性部材であるため、材料そのものを一体成形で製作するとコア自体に渦電流が生じて熱損失を起こしやすい。しかし、上記のように積層および接着して一体化する構成であれば、渦電流が閉ループを描きにくくなり、渦電流の発生を防ぐことが可能となる。また、積層および接着しているので、コア11の機械的強度は従来の一体成形のものと同等であり、コア11を特別のホルダーやボビン等で保持する必要がない。さらにフェライトコアの場合、本実施例で用いるようなコア形状(約20mm×15mm×370mm)を一体成型で作成すると正確な寸法精度を出すことが困難である。特にコアの長手方向の平面度、寸法精度が出しにくい。コアにそりが発生する原因になる。仮に寸法精度を維持するとしても製造に大幅なコストUPの要因となる。しかし、本実施例のように積層接着で一体化すれば、個々のコア材要素は安価に寸法精度出すことが可能である。それぞれのコア部材111を一体化することでコストアップも押さえることができる。また、上記で述べたように一体化してあるので機械的強度も得られる。
【0050】
また、図2に示すように、コア11の両端部にそれぞれ支持部材13が取付けられ、その両支持部材13が装置本体の固定用板金(図示しない)に固定される。これら支持部材13によって誘導加熱装置10が加熱ローラ2とは別に支持される。この支持構成の採用により、また上記したようにホルダーやボビン等が不要になることにより、加熱ローラ2内の限られたスペースであっても、それにかかわらず、誘導加熱装置10の適切な配置が可能となっている。ひいては、加熱ローラ2のローラ径の縮小化が図れる。また、ホルダ、ボビン等を用いることによるコストアップを回避できる。
【0051】
さらに、加熱ローラ2の内側に誘導加熱装置10を配置しているので、磁束の漏れが少なく、熱効率が良くなる。しかも、小型化を行うために加熱ローラ2の径を小さくしていくとコア11と加熱ローラ2の内面とが接近していくことになり、ひいては磁束の発生が大きくなって発熱量を増すことができる。コア11と加熱ローラ2との位置決めは、各支持部材13と装置本体の固定用板金との固定位置調整によって可能である。これにより、位置寸法公差を維持することが可能である。
【0052】
なお、誘導加熱装置10は必ずしも加熱ローラ2内に配置する必要はなく、 図4に示すように、加熱ローラ2の外周面に対向する任意の位置に誘導加熱装置10を配置することももちろん可能である。
【0053】
[2]第2参考例について説明する。
図5に示すように、コア11は、複数のコア部材111a、111bが加熱ローラ2の回転軸方向に沿って積層され且つ接着剤112により相互に接着されて一体化構成される。これらコア部材111a、111bを積層および接着して一体化した後、励磁コイル12を内脚部11aに巻回してセンブリしている。
【0054】
コア部材111a、111bは脚部の長さが互いに異なり、脚部の長い方のコア部材111aがコア11の長手方向両端に配置され、脚部の短い方のコア部材111bがコア11の長手方向内側に配置される。
【0055】
他の構成は第1実施例と同じである。
このような構成によれば、コア11と加熱ローラ2との距離が、コア11の長手方向両端において長手方向中央側よりも近くなる。よって、加熱ローラ2を横切る磁束は加熱ローラ2の軸方向中央側よりも軸方向両端部で多くなり、その軸方向両端の発熱量が軸方向中央側の発熱量より大きくなる。
【0056】
すなわち、加熱ローラ2の軸方向両端部に対応する個所のコア形状と加熱ローラ2の軸方向中央側に対応する個所のコア形状とを互いに異ならせることにより、コア11と加熱ローラ2との間の距離を加熱ローラ2の軸方向両端部と軸方向中央側とで可変調節することが可能であり、加熱ローラ2の軸方向両端部からの放熱を補償することができる。
【0057】
十分な機械的強度、良好な寸法精度、コスト削減等の効果が得られる点は第1参考例と同じである。
[3]第3参考例について説明する。
【0058】
ここでは、各コア部材111(または111a,11b)を接着するための接着剤112として、定着のための温度より高い耐熱温度たとえば180℃以上を有するエポキシ樹脂系あるいはセラミック系のものが採用される。他の構成は第1参考例と同じである。
【0059】
この採用により、定着動作中、コア11の特性を安定して引き出すことが可能となる。
すなわち、加熱ローラ2内に誘導加熱装置10が配置される場合、加熱ローラ2の内側面からの放射熱によってコア11自体が温度上昇していく。最終的には、コア11の温度が加熱ローラ2の表面温度に限りなく近づいてしまうため、各コア部材111の一体化を維持するためには、接着剤112の耐熱温度として180℃以上が要求される。この要求に応えることにより、コア11の強度維持および寿命向上が図れる。
【0060】
仮に、定着制御温度よりも低い耐熱温度の接着剤を用いた場合は、コア温度を一定温度以下に保つために加熱ローラ2内の空気層を移動させるようなファンを設けて空冷する必要があったが、本実施例ではその必要がなくなった。また、耐熱接着剤を使うことで、各コア部材111を保持するためのホルダ( ボビン)
等を使う必要がないため、小型化が可能となる。
【0061】
なお、本参考例では、コア部材として同一の形状を用いたが、形状の異なるコア部材や特性の異なるコア部材を用いても同様の効果を得られることは言うまでもない。
【0062】
[4]第4参考例について説明する。
コア11の内脚部11aに励磁コイル12が巻回された後、図6に点々で示す含浸剤14が励磁コイル12を被うように充填される。他の構成は第1参考例と同じである。
【0063】
この充填により、励磁コイル12がコア11に隙間なく強固に固定され、励磁コイル12とコア11の一体化構造の強度が増大する。加熱ローラ2の回転駆動などが原因の振動が生じても、励磁コイル12とコア11との位置ずれを防ぐことができ、励磁コイル12が加熱ローラ2に接触するといった不具合についても未然に防ぐことができる。
【0064】
含浸剤14としては、不飽和ポリエステル、エポキシエステル、ポリイミド等が用いられる。
また、各コア部材111の積層接着状態が含浸剤14の充填によってより強固となり、接着剤112のみを用いている場合よりも構造強度が増大する。
【0065】
誘導加熱装置10を加熱ローラ2内に配置する場合、耐熱温度が定着制御温度( 例えば180℃) より高い含浸剤14を採用することにより、ファンを設けて空冷するといった必要がなく、誘導加熱装置10の強度維持および寿命向上が図れる。
【0066】
なお、本参考例では、コア部材として同一の形状を用いたが、形状の異なるコア部材や特性の異なるコア部材を用いても同様の効果を得られることは言うまでもない。
【0067】
[5]第5参考例について説明する。
図7に示すように、コア11は、フェライト材からなる3つのコア部材121a、121b、121aがそれぞれ間隙形成部材たとえば耐熱樹脂層122を介しながら加熱ローラ2の回転軸方向に沿って積層され、且つ接着されて一体化構成される。これら121a、121b、121aおよび間隙形成部材を積層および接着して一体化した後、励磁コイル12を内脚部11aに巻回してセンブリしている。
【0068】
コア部材121bは加熱ローラ2の回転軸方向に沿う長さがA4縦紙サイズに相当し、各コア部材121aは加熱ローラ2の回転軸方向に沿う長さがコア部材121bよりも短い。
【0069】
2つのコア部材121aで1つのコア部材121bを挟み込むように積層および接着し、コア11の全体の長さとしてA3サイズ以上を得ている。
耐熱樹脂層122は、各コア部材間に一定の間隙を形成するためのもので、ポリイミド樹脂をコア部材121a,121bと同一形状に形成してなる。この耐熱樹脂層122の厚さ(つまり間隙)は10μm〜1mm程度が望ましい。これは、耐熱樹脂層122を入れない場合に比べ、磁気特性として大きな差異を生じない程度の間隙であり、十分な渦電流を発生させることが可能である。
【0070】
他の構成は第1参考例と同じである。
このように構成された誘導加熱装置10は、図8に示すように、加熱ローラ2内に収容される。
【0071】
作用を説明する。
A4縦サイズを連続通紙した場合、加熱ローラ2における非通紙領域(図8の斜線部分)の温度が通紙領域の温度よりも高くなっていく。加熱ローラ2の内部からの放射熱によってコア11の温度も上昇していき、コア11に関しても非通紙領域の温度上昇が通紙領域の温度上昇よりも大きくなる。
【0072】
仮に、コア11の各コア部材間に耐熱樹脂層122が無いとすると、コア11の非通紙領域から通紙領域に熱が流れ込んでくる。コア材としてフェライトを用いているので、温度上昇と共にコア11がキューリ点を越えると磁束が減少してしまう。そうなると、加熱ローラ2に生じる渦電流が減少し、発熱量が下がってしまう。
【0073】
本実施例のように通紙領域と非通紙領域との間に耐熱樹脂層122による一定の間隙が存在すれば、非通紙領域と通紙領域との間の熱伝導率が低くなり、非通紙領域から通紙領域への熱の移動が少なくなる。これにより、加熱ローラ2における通紙領域の発熱量を均一にすることができる。一方、非通紙領域の温度は、熱の移動が少なくなるので、コア11の温度上昇を招く。しかし、キューリ点を越えると磁束が減少して加熱ローラ2の発熱量も減少するので、コア11の温度は自己的にキューリ点近辺で温度コントロールされることになる。すなわち本実施例においては、通紙領域の発熱量を均一にし、かつ非通紙領域の温度上昇を抑える効果がある。しかも、間隙の存在により、コア材料の削減が図れ、コストダウンが見込める。
【0074】
その他、第1参考例と同様の効果が得られる。
なお、本参考例において、用紙Pの最小サイズとしては、A4縦サイズに限らず、ハガキサイズ等でもよいことは言うまでもない。また、ハガキサイズ、A4縦サイズのそれぞれの端部位置に耐熱樹脂層122を設けても同様の効果が得られる。また、耐熱樹脂層122としてポリイミド樹脂を用いたが、非磁性材であるガラス等を用いることも可能である。
【0075】
[6]第6参考例について説明する。
図9に示すように、コア11の両端部に取付けられている各支持部材13の一方に、誘導加熱装置10の励磁コイル12から導出される配線(いわゆる引出線)12a,12bが加熱ローラ2に接触しないよう保護するための保護手段として、配線収容溝13a,13bが形成される。なお、各支持部材13は、非磁性材で構成される。
【0076】
配線12a,12bは配線収容溝13a,13bに嵌込み収容された後、誘導駆動回路(図示しない)へと接続される。このような構成により、配線12a,12bが加熱ローラ2の内面に接触する不具合が未然に防止され、配線12a,12bの接触不良、摩耗、電流リークなどを回避できる。
【0077】
また、支持部材13が非磁性材で構成されているので、支持部材13に渦電流が生じて熱が発生するというような不具合が解消される。
なお、配線12a,12bを流れる高周波電流の影響でノイズが発生するような場合は、図10に示すように、配線収容溝13a,13bをカバー部材15でカバーするのがよい。このカバーにより、ノイズをシールドすることができる。本装置では、磁場をシールドするためカバー15の材料としてフェライトシート材を用いた。
【0078】
また、支持部材13の端部にコネクタを設け、そのコネクタによって励磁コイル12と誘導加熱回路と直結するようにすれば、ノイズの影響が出ないようにすることもできる。本実施例では、一方の支持部材13に配線12a,12bを持ってきたが、両端の支持部材13にそれぞれ1本ずつ配線を引き出すようにしても構わないことは言うまでもない。
【0079】
他の構成および効果は第1参考例と同じである。
[7]本発明の第1実施例について説明する。
誘導加熱装置10の駆動用として図11に示す駆動回路を備える。すなわち、50/60Hzの交流電源電圧が順変換部21で直流電圧に変換され、それが逆変化部22により高周波電力に変換される。逆変換される高周波の周波数は周波数制御部23で決定され、それに応じた駆動信号(パルス信号)が駆動回路部24から逆変換部22におけるスイッチング素子のゲートに供給される。25は異常加熱防止用の保護回路である。
【0080】
この駆動回路に加熱ローラ制御回路を組合せたのが図12の回路である。すなわち、逆変換部22は、スイッチング回路22aおよび共振回路22bからなる。共振回路22bは、励磁コイル12に共振用コンデンサを接続して成る。スイッチング回路22aには、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)およびフライホイールダイオードが用いられる。
【0081】
共振回路22bへの入力電流が検知されてその検知信号(入力電流検知信号)が出力制御部26にフィードバックされる。出力制御部26は、フィードバック信号と出力設定部27からの出力設定信号との比較により、周波数制御部23を制御する。
【0082】
さらに、上記入力電流検知信号により励磁コイル12への誘導電流の投入の有無が検出され、その検出結果に応じた定着駆動モータオン,オフ信号28が駆動モータ制御部29に供給される。この駆動モータ制御部29は、誘導電流の投入有りが検出されて定着駆動モータオン,オフ信号28がオン状態にあるとき、加熱ローラ2を回転駆動する。つまり、励磁コイル12に電流が流れて加熱可能な状態にあるとき、加熱ローラ2が常に回転する。この結果、加熱ローラ2の全体が均一に加熱され、ローラ表面温度を一定の値にすることが可能となる。これにより励磁コイル12で磁束が発生している時に加熱ローラ2の一部だけが局部的に異常加熱されるといった不具合が生じなくなる。
【0083】
他の構成および効果は第1参考例と同じである。
なお、本実施例では励磁コイル12に電流が流れている場合においてローラ2,3の両方が回転するが、ローラ2,3を互いに解離する機構を持っている場合は、ローラ同士を解離して、誘導加熱装置10を具備している側の加熱ローラ2のみが回転する制御でも上記と同様な効果を得ることができる。
【0084】
本実施例では、ローラニップ部分の加熱するE型コアを用いているが、ローラ全体を加熱するタイプの定着装置にも用いても同様の効果を得られることは言うまでもない。
【0085】
他の構成および作用は第1参考例と同じである。
[8]本発明の第2実施例について説明する。
図13において、31は加熱ローラ2を回転駆動するための定着駆動モータである。この定着駆動モータ31の動作状態がエンコーダ32で検知され、その検知信号が定着駆動モータオン,オフ信号33として出力設定部27にフィードバックされる。
【0086】
したがって、加熱ローラ2の回転がジャムやその他の原因によって停止してしまった場合、それがエンコーダ32を介して検知され、誘導加熱装置10の動作が停止される。定着駆動モータ31の回転をエンコーダ32で直接的に検知するので、定着駆動モータ31のハード的な故障にも対応することが可能である。
【0087】
これにより、加熱ローラ2が停止した場合に加熱ローラ2の一部のみを局所的に加熱してしまって加熱ローラ2の一部が異常加熱するといった問題が生じなくなる。本実施例によって加熱ローラ2が回転している時だけ、誘導加熱装置10が動作するようになる。
【0088】
なお、本実施例において、加熱ローラ2に非回転時に誘導加熱装置10の動作を停止する制御については、その制御モードを係員に操作によって選択できるようにしてもよい。
【0089】
また、加熱ローラ2の非回転時に誘導加熱装置10の動作電流つまり励磁コイル12に流れる電流を通常より低減する制御を採用すれば、誘導加熱装置10で転接部を集中的に加熱するタイプの場合、加熱ローラ2が回転を続けることにより加熱ローラ2の表面全体を加熱できる。
【0090】
加熱ローラ2が停止している場合に回転駆動時と同等の電流値を励磁コイル 12に流してしまうと加熱ローラ2の一部だけが異常加熱してしまうが、通常時よりも小さい電流を励磁コイル12に流すことで、加熱ローラ2の一部分が局部的な異常加熱を起こさず、加熱ローラ2の熱伝導で徐々に加熱ローラ2の外周面に向かって熱移動が起こるようになる。通常時よりも小さい電流値としては、加熱ローラ2がある温度に達すると空気への放射熱によって平衡が保たれ、それ以上温度上昇が起きないような条件を見いだし、決定している。
【0091】
他の構成および効果は第1参考例と同じである。
[9]本発明の第3実施例について説明する。
図12または図13に示す出力制御部26が次の制御手段を有する。
【0092】
装置起動時および定着動作待機時も定着動作実行時と同じく加熱ローラ2を回転させ、かつその回転速度を装置起動時および定着動作待機時の場合と定着動作実行時の場合とで異ならせる制御手段。具体的には、加熱ローラ2の回転速度を、装置起動時および定着動作待機時は定着動作実行時より低くする。
【0093】
ウォームアップ時(装置起動時)および定着動作待機時(レディー時)には、加熱ローラ2を回転させてローラ表面温度を均一化する必要がある。ウォームアップ時は、ローラ表面温度が制御目標温度に達するまで誘導加熱装置10により加熱ローラ2が加熱される。また、定着動作待機時は制御目標温度を維持するように誘導加熱装置10が制御される。
【0094】
すなわち、図14に示すように、加熱ローラ2の回転速度が、ウォームアップ時および待機時は定着動作実行時(コピー動作時)よりも、加熱ローラ2の回転速度が低く設定される。たとえば、1/3の速度に低減される。
【0095】
待機時やウォームアップ時はその他のプロセスに影響されることがないので加熱ローラ2の回転速度は、任意に設定できる。そこで待機時やウォームアップ時の回転速度を定着動作時よりも大幅に低くすることで、ウォームアップ時および待機時において加熱ローラ2の局部的な異常加熱が防止できるとともに、加熱ローラ2の全体において温度ムラが生じない。しかも、回転による発生音(騒音)をウォームアップ時および待機時において定着動作実行時の動作音より抑えることができて静かになり、騒音の問題を解消できる。また、回転速度の低下期間が存在する分、加熱ローラ2の寿命が向上する。
【0096】
その他の構成および効果は第1参考例と同じである。
[10]第7参考例について説明する。
ここでは、加熱ローラ2に対する加圧ローラ3の転接を解離するための解離手段として、図15および図16に示す構成が採用される。
【0097】
すなわち、加圧ローラ3の回転軸3bに対し、上方の加熱ローラ2側への偏倚力を与えるスプリング31が設けられる。さらに、スプリング31の偏倚力に抗しながら回転軸3bを下方に変位させるためのロッド32が設けられ、そのロッド32がソレノイド33のプランジャ33aに連結される。
【0098】
ソレノイド33の消勢時はスプリング31の偏倚力で回転軸3bが上方に変位し、図15のように加圧ローラ3が加熱ローラ2に加圧状態で転接し、そこに一定のニップ幅が確保される。ソレノイド33が付勢されると、図16のようにプランジャ33aが下降してロッド32が回転軸3bを押し下げ、加圧ローラ3が加熱ローラ2から解離される。
【0099】
また、図12または図13に示す出力制御部26が次の制御手段を有する。
装置起動時および定着動作待機時も定着動作実行時と同じく加熱ローラ2を回転させ、かつその回転速度を装置起動時および定着動作待機時の場合と定着動作実行時の場合とで異ならせる制御手段。具体的には、加熱ローラ2の回転速度を、装置起動時および定着動作待機時は定着動作実行時より低くする。
【0100】
作用を説明する。
ウォームアップ時間及び待機時には、加熱ローラ2を回転させてローラ表面温度を均一化する。このとき、ローラ表面温度を設定した温度にいち早く到達させるべく、図17のフローチャートに示すように、上記の解離機構をオンして加熱ローラ2と加圧ローラ3を解離する。この解離により、加熱ローラ2の熱が加圧ローラ3側に熱が逃げるのを防ぐことが可能となる。本実施例では、転接部を集中的に加熱するため、解離機構がない場合は、転接部を通じて加圧ローラ3側に熱が逃げてしまう。ハロゲンランプのようにローラ全体を加熱するシステムの場合よりも加圧ローラ3側への熱の逃げが大きくなり、ウォームアップ時間に影響を及ぼすことになる。これを解決するため、上記のような解離を行うようにしている。
【0101】
解離した状態では、加熱ローラ2が回転し、加熱ローラ2を均一に加熱することができる。さらに加圧ローラ3に熱が逃げないのでウォームアップ時間を短縮することができる。さらに、ウォームアップ時および待機時は、解離した状態のまま、加熱ローラ2の回転速度が定着動作時よりも低く設定される。これにより、上記第9実施例と同様の効果が得られる。
【0102】
定着動作時は、図18のフローチャートに示すように、上記の解離機構をオフして加熱ローラ2と加圧ローラ3の解離を解除する。
他の構成および効果は第1参考例と同じである。
【0103】
[11]この発明の第8参考例について説明する。
基本的な構成は第1参考例と同じであるが、図19に示すように、誘導加熱装置10が加熱ローラ2内に十分に収容された状態に配置される。
【0104】
E形のコア11から発せられる磁界によって加熱ローラ2に生じる渦電流のIの経路は、誘導加熱装置10が加熱ローラ2の両端部より内側に収容されている状態において、コア11の形状に沿った形となる。したがって、渦電流の経路を、加熱ローラ2の回転軸方向と直行する方向において一定幅の閉ループを描くように制御することができ、加熱ローラ2の回転軸方向における温度ムラを解消することが容易である。
【0105】
これに対し、例えば、C形のコア41に励磁コイル42が巻回された誘導加熱装置が採用された場合、加熱ローラ2に生じる渦電流Iの経路は、図20に示すように上記一定幅を越えて加熱ローラ2の表面全体に広がるループとなり、加熱ローラ2の回転軸方向における温度ムラを解消するのが難しくなる。
【0106】
なお、実験によれば、図21に示すように、加熱ローラ2の端部からコア11が出ている場合、加熱ローラ2の端部(図示斜線部分)に生じる渦電流Iの密度が大きくなり、そこでの発熱量が増大する事態を生じる。こうなると、加熱ローラ2の端部の温度コントロールができなくなり、温度ムラが生じてしまうことになる。
【0107】
加熱ローラ2の端部にコア11が十分に収まっている場合は、図22、図23、図24に示すように、加熱ローラ2の回転軸方向端部に渦電流が集中せず、渦電流Iの密度はどの位置でも同じとなり、よって加熱ローラ2の回転軸方向における中心部と端部との間に温度差が生じなくなって、加熱ローラ2における温度分布が均一になる。
その他の構成および効果は第1参考例と同じである。
【0108】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、異常加熱を未然に防ぐことが可能な定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各参考例および各実施例における誘導加熱装置の外観斜視図。
【図2】 各参考例および各実施例における誘導加熱装置および加熱ローラの外観斜視図。
【図3】 各参考例および各実施例の全体的な構成を断面して示す図。
【図4】 図3の変形例の構成を示す図。
【図5】 第2参考例の誘導加熱装置の外観斜視図。
【図6】 第4参考例の誘導加熱装置の外観斜視図。
【図7】 第5参考例の誘導加熱装置の外観斜視図。
【図8】 第5参考例における誘導加熱装置および加熱ローラの外観斜視図。
【図9】 第6参考例における誘導加熱装置および加熱ローラの外観斜視図。
【図10】 第6加熱例の変形例の外観斜視図。
【図11】 第1実施例における誘導加熱装置の駆動回路のブロック図。
【図12】 第1実施例における誘導加熱装置の駆動回路に加熱ローラ制御回路を組合せたブロック図。
【図13】 第2実施例における誘導加熱装置の駆動回路に他の制御回路を組合せたブロック図。
【図14】 第3実施例の作用を説明するためのフローチャート。
【図15】 第7参考例の解離機構の構成を示す図。
【図16】 図15の解離時の状態を示す図。
【図17】 第7参考例の起動時および待機時の作用を説明するためのフローチャート。
【図18】 第7参考例の定着動作時の作用を説明するためのフローチャート。
【図19】 第8参考例における誘導加熱装置と加圧ローラとの対応関係および渦電流のループを示す図。
【図20】 第8参考例に関わり、従来の誘導加熱装置と加熱ローラとの対応関係および渦電流のループを一例として示す図。
【図21】 第8参考例に関わり、誘導加熱装置と加熱ローラとの対応関係および渦電流のループを実験で確かめた例を示す図。
【図22】 第8参考例に関わり、誘導加熱装置と加熱ローラとの対応関係および渦電流のループを実験で確かめた他の例を示す図。
【図23】 第8参考例に関わり、誘導加熱装置と加熱ローラとの対応関係および渦電流のループを実験で確かめた別の例を示す図。
【図24】 第8参考例に関わり、誘導加熱装置と加熱ローラとの対応関係および渦電流のループを実験で確かめた例を示す斜視図。
【符号の説明】
2…加熱ローラ(発熱部材、第1の転接部材)
3…加圧ローラ(第2の転接部材)
P…用紙(記録媒体)
T…現像剤像
10…誘導加熱装置
11…コア
111…コア部材
112…接着剤
12…励磁コイル
13…支持部材

Claims (3)

  1. 回転駆動される導電性の加熱ローラと、この加熱ローラに対し加圧状態で転接しその転接部に現像剤像が形成された記録媒体を通過させる加圧ローラと、前記加熱ローラの側に配置され加熱ローラにおける前記転接部を磁場の作用により局部的に誘導加熱する誘導加熱装置とを備え、前記転接部を通る記録媒体上の現像剤像を加熱ローラの発熱により定着させる定着装置において、
    前記加熱ローラの回転を検知する検知手段と、
    この検知手段の検知結果に応じて前記誘導加熱装置の動作を制御することにより、前記加熱ローラの局部的な異常加熱を防ぐ制御手段
    を備えたことを特徴とする定着装置。
  2. 請求項1に記載の定着装置において、
    前記制御手段は、前記加熱ローラの非回転時に前記誘導加熱装置の動作を停止することを特徴とする定着装置。
  3. 請求項1に記載の定着装置において、
    前記制御手段は、前記加熱ローラの非回転時に前記誘導加熱装置の動作電流を通常より低減することを特徴とする定着装置。
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