JP4086904B2 - 造血幹細胞増殖因子(scgf) - Google Patents

造血幹細胞増殖因子(scgf) Download PDF

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Description

発明の技術分野
本発明は、造血幹細胞に作用して、その生存維持、増殖、分化を誘導する造血幹細胞増殖因子(stem cell growth factor、以下「SCGF」という)という新規の造血増殖因子タンパク質に関するものであり、またSCGFをコードする遺伝子、その遺伝子を含むベクター、そのベクターで形質転換された形質転換体およびSCGFの製造と分離精製法に関するものである。さらに各種造血器疾患や癌患者の放射線照射または化学療法などによる造血不全に対する治療薬として、また検査、診断のための試薬としてのSCGFの使用、且つ造血回復治療に必要な骨髄移植に際して採取した少量の骨髄細胞にSCGFを作用させ生体外で造血幹細胞を増幅させたり、遺伝子治療のためにSCGFにより造血幹細胞への遺伝子導入効率を高めることに関するものである。また、SCGF遺伝子を単離するために開発されたベクターや遺伝子単離法に関するものであり、これらは他の新たな物質遺伝子を解明する有力な手段として応用できる。
発明の背景技術
生体骨髄における造血は、それ自体自己複製能を有する造血幹細胞、それから供給され各分化経路に運命づけられた造血前駆細胞および両者間の連続的な分化段階の細胞群と、それら一連の細胞を取り巻く造血微小環境としての支持間質細胞との直接相互作用あるいは後者の分泌する液性造血調節因子との間接相互作用により調節されている。腎、肝などの髄外組織からも多くの液性造血調節因子が分泌されるなど、全身に及ぶ造血ネットワークにより末梢における有限寿命の血液細胞は絶えず補充され、生体における血球系の恒常性が保たれている。この複雑な造血機構の解析は主としてマウス、イヌ、ヒツジなどの哺乳動物を用いて、放射線照射や5−フルオロウラシル(5-fluorouracil)などの細胞毒投与による造血抑制からの回復過程を検討する生体内研究と、ヒトも含めて採取した骨髄細胞を培養増殖させ、各種細胞や因子との相互作用を検討する生体外研究によるところが大きい。
遺伝子工学の進歩により、造血調節因子のうち造血幹細胞や前駆細胞の増殖を刺激する造血増殖因子として、エリスロポイエチン(erythropoietin、以下「Epo」という)やスロンボポイエチン(thrombopoietin)、また顆粒球−コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor、以下「G-CSF」という)、マクロファージ−コロニー刺激因子(macrophage colony-stimulating factor、以下「M-CSF」という)、顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor、以下「GM-CSF」という)などのCSF類、インターロイキン(interleukin; IL)−1、3、4、5、6、9、11、12などのIL類および最近発見されたステムセルファクター(stem cell factor;SCF)やflk-2/flt3リガンド(ligand)など多くのサイトカイン遺伝子がクローン化された(Lin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 7580-7584, 1985; de Sauvage et al., Nature 369, 533-538, 1994; Nagata et al., EMBO J. 5, 575-581, 1986; Wong et al., Science 235, 1504-1508, 1987; Miyatake et al., EMBO J. 4, 2561-2568, 1985; Clark et al., Nucleic Acids Res. 14, 7897-7914, 1986; Dorssers et al., Gene 55, 115-124, 1987; Yokota et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 5894-5898, 1986; Campbell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 6629-6633, 1987; Yasukawa et al., EMBO J. 6, 2939-2945, 1987; Yang et al., Blood 74, 1880-1884, 1989; Paul et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 7512-7516,1990; Wolf et al., J. Immunol. 146, 3074-3081, 1991; Anderson et al., Cell 63, 235-243, 1990; Lymanet al., Cell 75, 1157-1167, 1993)。これらサイトカインについては生物学的、化学的性状が解明され、工業生産も可能となって来ている。中でも、遺伝子組換え型造血増殖因子製剤として、G-CSF、M-CSFが放射線照射または化学療法などによる造血不全に対する治療薬として、Epoが腎性貧血などの治療薬として臨床に使用されている。しかし、量的、質的造血幹細胞異常に起因する造血器疾患をはじめとする造血不全をこれら遺伝子組換え型造血増殖因子製剤で治療する場合、一過性に末梢血状態の好転を来すに過ぎず、投与を中止すると元の造血不全状態に戻ることが多い。すなわち造血幹細胞異常の根本的な改善という面では未だ満足の行く結果が得られていない。
造血不全の一治療手段として自己あるいは同種骨髄移植、末梢血造血幹細胞移植、臍帯血造血幹細胞移植が行われているが課題も多く、他方少量採取した骨髄、末梢血、臍帯血各細胞に生体外で造血増殖因子を作用させ、増幅した造血幹細胞を移植する方法が試みられている。造血幹細胞や未熟前駆細胞の増幅には、上記因子のうち、とりわけSCF、IL-3、G-CSF、IL-6などが主要な役割を果たしているが、これらは単独よりも組み合わせて使用する事により一層増幅効果を高める、いわゆる「協調作用」を発揮する事が知られている。事実このようにしてマウスでは造血幹細胞レベルで10倍、前駆細胞レベルで1,000倍に増幅が可能である。しかしながら、ヒトの場合、マウスで有効なSCF、IL-3、G-CSF、IL-6の組み合わせでは期待された程の増幅効果が達成されていない(Bernstein et al., Blood 77, 2316-2321, 1991; Brandt et al., Blood 79, 634-641, 1992; Srour et al., Blood 81, 661-669, 1993)。この事は、これら因子に対する受容体の発現細胞がマウスとヒトで異なっている事に起因している可能性もさる事ながら、ヒト造血に関わる未知の因子の存在を強く示唆している。
さらに、遺伝子治療に際して正常あるいは目的遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを宿主細胞へトランスフェクトないし感染させる場合、宿主細胞が細胞周期に入っていないとレトロウイルスベクターの感染効率は極端に悪く、結果として遺伝子の機能発現は認められない。また寿命の短い成熟血液細胞に遺伝子を導入してもその遺伝子発現は一時的であるため、遺伝子治療を何回も繰り返さなければならない。従って造血幹細胞に一度遺伝子を導入し以後遺伝子を発現した細胞が恒久的に供給される方が治療上優れているという理由から、遺伝子導入の標的としては造血幹細胞が好ましい。しかしながら造血幹細胞は通常静止期にあるためSCF、IL-3、G-CSF、IL-6など複数の造血増殖因子により細胞を細胞周期に導入しようと試みられているが、依然としてレトロウイルスベクターの感染効率は40%前後と低く遺伝子治療の最大の問題点となっている(Nolta et al., Hum. Gene Therapy 1, 257-268, 1990; Stoeckert et al., Exp. Hematol. 18, 1164-1170, 1990; Dick et al., Blood 78, 624-634, 1991; Cournoyer et al., Hum. Gene Therapy 2, 203-213, 1991; Hughes et al., J. Clin. Invest. 89, 1817-1824, 1992)。
一方、平岡らは健常ヒト末梢血単核細胞培養上清やヒト慢性骨髄性白血病急性転化末梢血白血球由来骨髄球系未分化芽球細胞株KPB-M15培養上清にヒト造血幹細胞増殖活性を見い出し、その活性因子を造血幹細胞増殖因子(SCGF)と命名して、その分離精製を試みて来た(Hiraoka et al., Cell Biol. Int. Rep. 10, 347-355, 1986; Hiraoka et al., Cancer Res. 47, 5025-5030, 1987)。SCGFの造血幹細胞増殖活性としては、コロニー刺激活性(colony-stimulating activity、以下「CSA活性」という)は欠如するものの、ヒト骨髄細胞に対する、Epo存在下での赤芽球バースト増強活性(burst-promoting activity、以下「BPA活性」という)およびGM-CSF存在下での顆粒球−マクロファージコロニー増強活性(granulocyte macrophage colony-promoting activity以下「GPA活性」という)などがあげられる。
しかしながら、ヒトSCGFは、ヒト骨髄細胞にのみ活性を示しマウス造血幹細胞あるいは前駆細胞には活性を示さないという、厳格な種特異性を有しているため、同因子の精製、解明を進める上で入手に限りのあるヒト骨髄細胞しか利用できず、それゆえ研究の進展にも限界があり既知因子との異同も曖昧なままであった。
発明が解決しようとする課題
本発明は、SCGFタンパク質因子の分離精製、遺伝子のクローニングを通して新規の造血増殖因子の分子特性を明らかにし、遺伝子組換え技術により同因子を製造提供する事を目的にしている。これにより、従来あまり効率的でなかったヒト造血幹細胞や前駆細胞の生体外における増幅、各種造血不全の回復、遺伝子治療や疾患の診断などに役立てる。また種特異性の面から考えて、従来マウスにおける造血研究から明らかになりヒトに敷衍された造血機構に欠落していた、SCGFの関与する重要な造血機序を審らかにする。
発明の開示
遺伝子組換え技術の進歩は目覚ましく、極めて微量の生理活性物質でさえその遺伝子の単離同定が可能になって来ている(Huynh et al.著,DNA Cloning I, Apractical approach, Glover編,オックスフォード,ワシントン: IRL出版, 49-78頁, 1985; Sambrook, Fritsch, Maniatis著, Molecular Cloning, A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory出版, 1989)。遺伝子単離法には大きく分けて二種類の方法がある。一つはタンパク質を精製し、アミノ酸の部分配列を決定して、この情報をもとに作製したオリゴDNAプローブと相補的に結合する塩基配列を有する遺伝子、すなわち精製したタンパク質と同じアミノ酸配列をコードしていると推定される遺伝子を大規模なcDNAライブラリーからスクリーニングしてくる方法である。もう一つの方法は、発現クローニングと呼ばれる方法で、cDNAライブラリーを適当な遺伝子発現系で翻訳して得られるタンパク質を活性測定系や特異抗体によって検出する方法である。従って、後者は前者と異なりタンパク質を高度に精製しなくても遺伝子を単離できる利点がある。反面、遺伝子単離の成否は活性測定系や特異抗体に依存しているので、その精度、感度および特異性の高さが要求されるという制約もある。
そこで、本発明者らは、この制約を克服するため、発現クローニング法に改良を加えて検討して来た。まず、cDNAライブラリーの中で明らかに目的のSCGF遺伝子とは異なると判断できる遺伝子の除去を試みた。すなわち、SCGFを発現している細胞と発現していない細胞からそれぞれ調製したcDNAをプローブとして用いて、KPB-M15細胞cDNAライブラリーの中から前者に結合して後者に結合しない遺伝子だけを選び出すディファレンシャル(differential)スクリーニングを実施した。二次的な小規模のディファレンシャルライブラリーを調製することで活性測定系にかける検体数が少なくなるので、多少の精度や感度の低さは補えると考えた。しかし、このディファレンシャルスクリーニングの段階では、cDNAはハイブリダイゼーションを行うためファージベクターに結合する必要がある一方で、cDNAを発現、翻訳させたタンパク質の活性を調べる段階では哺乳動物細胞で発現可能なプラスミドベクターに結合する必要がある。そこで、同一ベクター上でファージベクターからプラスミドベクターに変換できるベクターを開発した。すなわち、λファージベクター内にフィラメンタスファージの複製開始領域と終止領域を分離して繋ぎ、この領域の間に大腸菌で複製可能な遺伝子と哺乳動物細胞で発現可能な遺伝子群を導入したベクターを構築するというものである。このλファージベクターをパッケージングしてフィラメンタスファージと同時に大腸菌に感染させると、大腸菌内でフィラメンタスファージの複製機構がλファージDNA上に働き、フィラメンタスファージの複製開始領域と終止領域の間の領域が環状となり複製される。さらに、フィラメンタスファージのコートタンパク質が複製された環状DNAを取り込み、感染力のあるファジミドを形成する。このファジミドを大腸菌に感染させれば、大腸菌へファジミド内の環状DNAが導入されて大腸菌は形質転換される。すなわち、λファージベクター内のフィラメンタスファージの複製開始領域と終止領域間のDNAがプラスミド状になって大腸菌内に移行したことになる。このプラスミド状の環状DNAは大腸菌内での複製能と哺乳動物細胞での発現能を有しているので、結果として、遺伝子組換えをせずにλファージベクターから哺乳動物細胞で発現可能なプラスミドベクターに変換したことになる。
上記ベクターを用いてKPB-M15cDNAライブラリーを調製した。このうち約60,000クローンのKPB-M15cDNAライブラリーから約6,800クローンのディファレンシャルライブラリーを得て、BPA活性を指標にして、COS-1細胞で発現された遺伝子産物をスクリーニングした結果、SCGFcDNAとしてクローン番号116-10Cを単離することができた。塩基配列の解析から、このcDNAは1,196塩基からなり、最長のオープンリーディングフレーム(open reading frame)にはN末端側約20残基の疎水性アミノ酸に富む領域を含んだ245アミノ酸残基からなるタンパク質がコードされていることがわかった。塩基配列をGenBankおよびEMBLなどのデータベースに登録されている遺伝子と比較したところ、部分的に3’非コーディング領域と高い相同性を示す短い遺伝子断片が僅かに一つあったものの全配列や大半のコーディング領域で一致したり、高い相同性のあるものは認められなかった。一方Swiss−Protデータベースでアミノ酸配列を比較してみたが、やはり同一または高い相同性を示すものはなかった。BPA活性を指標にしてクローニングされたcDNAクローン番号116-10Cは新規の造血増殖因子SCGFをコードする遺伝子であることを確認し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一は、哺乳動物に由来するポリペプチドであって、その哺乳動物の骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチドである。
本発明の第二は、哺乳動物に由来する遺伝子であって、その哺乳動物の骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子である。
本発明の第三は、上記記載の遺伝子を含むベクターである。
本発明の第四は、上記記載のベクターで形質転換された形質転換体である。
本発明の第五は、上記記載のポリペプチドと特異的に反応する抗体である。
本発明の第六は、上記記載の抗体を産生する微生物、動物細胞又は動物である。
本発明の第七は、上記記載の遺伝子を含む細胞を培養し、培養物から上記記載のポリペプチドを採取することを特徴とする上記記載のポリペプチドの製造方法である。
本発明の第八は、陰イオン交換担体、疎水性交換基を有する担体、ゲル濾過担体、色素交換基を有するアフィニティー担体、レクチンアフィニティー担体又は金属キレート担体からなる群から選択された一つまたは二つ以上の担体を用いて上記記載のポリペプチドを分離精製することを特徴とする上記記載のポリペプチドの分離精製法である。
本発明の第九は、上記記載のポリペプチドを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物である。
本発明の第十は、そのベクター内にフィラメンタスファージの複製開始領域と終止領域が分離して存在し、且つこの複製開始領域と終止領域の間に大腸菌で複製可能な機能を有するDNA領域と哺乳動物細胞で発現可能な機能を有するDNA領域の少なくとも二つの機能領域を有することを特徴とするλファージベクターである。
本発明の第十一は、上記記載のλファージベクターを用いた遺伝子の単離法である。
(1)本発明のポリペプチド(第一発明)
本発明のポリペプチドは、哺乳動物に由来し、その哺乳動物の骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有する。
BPA活性を検出する方法は、軟寒天中で骨髄細胞がEpoと被検ポリペプチドに応答、分化増殖して形成する赤芽球バーストを観察することによる。例えば、骨髄細胞を0.3%寒天培地に5×104個/mlとなるよう播種し1単位/ml Epoおよび被検ポリペプチドを添加して14日間培養した後、赤芽球の集塊からなる赤芽球バーストの数を倒立顕微鏡下で計測する。また、GPA活性を検出する方法は、軟寒天中で骨髄細胞がGM-CSFと被検ポリペプチドに応答、分化増殖して形成するGMコロニー数の増加を観察することによる。例えば、骨髄細胞を0.3%寒天培地に5×104個/mlとなるよう播種し5ng/mlGM-CSFおよび被検ポリペプチドを添加して10日間培養した後、顆粒球−マクロファージ系細胞の集塊からなるGMコロニーの数を倒立顕微鏡下で計測する。骨髄細胞は、哺乳動物の胸骨や腸骨から骨髄穿刺により採取された骨髄液を培地、例えば、10%牛胎児血清(fetal calf serum; FCS)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s modified Dulbecco’s medium;IMDM)に懸濁したのち高密度等張溶液、例えばフィコール上に重層し遠心分離して得られる。
本発明のポリペプチドは、後述する本発明の遺伝子(第2発明)を導入した細胞を培養し、その培養物を採取し、それを精製することにより得ることができる。
本発明の遺伝子を含む細胞としては、ヒト胎盤細胞、KPB-M15細胞などあげられる。また、本発明の遺伝子を遺伝子工学的に導入した細胞もあげられる。
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。
本発明のポリペプチドは、後述する医薬組成物としての用途のほか、自己あるいは同種骨髄移植、末梢血造血幹細胞移植、臍帯血造血幹細胞移植に際して、採取した骨髄、末梢血、臍帯血各細胞に生体外で本発明のポリペプチド単独あるいはG-CSF、GM-CSF、SCF、flk-2/flt3リガンド、IL-1、IL-3、IL-6などの造血増殖因子と組み合わせて作用させ、造血幹細胞を増幅させる事が出来る。従って、ヒト造血幹細胞を増幅させる場合、骨髄採取を手術室で行う必要はなく、外来で簡単な手技で短時間のうちに移植用細胞を少量採取すれば十分足りる事から、細胞提供者の肉体的負担、採取者の労力および医療財政上の負担を軽減する事が出来る。
本発明のポリペプチドの中でも特に好ましいポリペプチドとしては、下記の4種類のポリペプチドを例示することができる。
イ)以下の(a)又は(b)のポリペプチド;
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつヒト骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ロ)以下の(a)又は(b)のポリペプチド;
(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつヒト骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ハ)以下の(a)又は(b)のポリペプチド;
(a)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号8に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつマウス骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ニ)以下の(a)又は(b)のポリペプチド;
(a)配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号12に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつラット骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ここでいう「欠失、置換若しくは付加」は、本願の出願時において常用される技術、例えば、部位特異的変異誘発法(Zoller et al., Nucleic Acids Res. 10, 6487-6500, 1982)により生じさせることができる。
なお、上記イ)のポリペプチド生産能を有するKPB-M15細胞株は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、受託番号FERM BP-5850として寄託されている(寄託日:平成9年3月5日)。
(2)本発明の遺伝子(第二発明)
本発明の遺伝子は、哺乳動物に由来し、その哺乳動物の骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチドをコードする。
BPA活性の検出及びGPA活性の検出は、上記と同様の方法で行い得る。
本発明の遺伝子は、哺乳動物から抽出したmRNAからcDNAを合成し、これを鋳型とし、配列番号1に記載の塩基配列に基づき合成された正方向プライマー及び逆方向プライマーを用いてPCRを行うことにより得られる。哺乳動物としては、ヒト、マウス、などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。PCRに用いるプライマーとしては、配列番号6に示されるプライマーと配列番号7に示されるプライマーを例示することができるが、これらに限定されない。mRNAの抽出、cDNAの合成、PCRは常法に従って行うことができる。
本発明の遺伝子は、遺伝子組換え技術を用いた組換え型哺乳動物SCGFの大量生産の際の不可欠の鋳型となるばかりでなく、また、そのDNAの一部をプローブとしてSCGF産生細胞の同定に有用である。同様にSCGFのジェノミック(genomic)DNAの分離同定も可能である。このようにして本発明の遺伝子の欠損、変異、発現抑制、過剰発現の有無を検討する事により各種造血器疾患の診断や病態解明に寄与できる。この事はとりもなおさず欠損遺伝子の補充、変異遺伝子の正常遺伝子による置換、アンチセンスDNA(RNA)による遺伝子過剰発現の抑制停止など遺伝子治療への応用を意味するものである。
本発明の遺伝子の一部をプローブとして用い、マウスやヒト以外の哺乳動物における相同性の高いSCGF遺伝子を分離同定する事も可能である。SCGF遺伝子を欠くノックアウト(knock-out)哺乳動物や同遺伝子を構成的に発現するトランスジェニック(transgenic)哺乳動物の作成は病態モデル動物の点からも、造血機構そのものの解析の点からも極めて有意義である。
本発明の遺伝子の中でも特に好ましい遺伝子としては、下記の4種の遺伝子を例示することができる。
イ)以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする遺伝子;
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつヒト骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ロ)以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする遺伝子;
(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつヒト骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ハ)以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする遺伝子;
(a)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号8に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつマウス骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ニ)以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする遺伝子;
(a)配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)配列番号12に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつラット骨髄細胞に対するBPA活性またはGPA活性を有するポリペプチド。
ここで、「欠失、置換若しくは付加」は、上記と同様に、部位特異的変異誘発法により生じさせることができる。
なお、上記イ)の遺伝子を含む大腸菌(Escherichia coli SHDM11610C)は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に受託番号FERM BP-5849として寄託されており(寄託日:平成9年3月4日)、上記ロ)の遺伝子を含む大腸菌(Escherichia coli HSCGF)は、同研究所に受託番号FERM BP-5986として寄託されており(寄託日:平成9年6月19日)、上記ハ)の遺伝子を含む大腸菌(Escherichia coli MSCGF)は、同研究所に受託番号FERM BP-5987として寄託されており(寄託日:平成9年6月19日)、また、上記ニ)の遺伝子を含む大腸菌(Escherichia coli RSCGF)は、同研究所に受託番号FERM BP-6063として寄託されている(寄託日:平成9年8月19日)。
(3)本発明のベクター(第三発明)
本発明のベクターは、上記の本発明の遺伝子を含む。該遺伝子の他には、例えば、複製開始領域、選択マーカー遺伝子、本発明の遺伝子の発現を制御するプロモーター領域、ポリ(A)(polyadenylation)付加信号領域などを含むことができる。
本発明のベクターは、公知のプラスミド、コスミド、ファージ、およびウイルスベクターなどを適当な制限酵素で切断し、そこに上記の本発明の遺伝子を挿入することにより製造できる。ここで使用する公知のプラスミド等としては、例えばpBR322、pACYC系、pUC系、pGEM系、pBC系、pGA系、Bluescript系、pK21、pRSV系、pcD系、pGEX系、CDM8、SHDM、pBV系、pSV系、pMT2、pYAC系、pWE15、PHEBo、EMBL系、Charon系、M13、λzap、λSHDM、λgt10、λgt11ベクターなどがあげられるが、本発明のベクターがこれらに限定されるわけではない。
(4)本発明の形質転換体(第四発明)
本発明の形質転換体は、上記の本発明のベクターで形質転換されたものである。本発明の形質転換体は、該ベクターで形質転換されたものであれば生物の種類は問わない。
本発明の形質転換体は、上記ベクターで適当な宿主を形質転換することにより得られる。ここで使用する宿主としては、例えば、大腸菌、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞などがあげられる。より具体的には、例えば、大腸菌としてはHB101、JM109、MC1061、BL21、XL1-Blue、SURE、DH1、DH5株、酵母としてはHIS/LI、HF7c株、昆虫細胞としてはBmN、Sf細胞、哺乳動物細胞としてはCHO、COS、MOP、c127、Jurkat、WOP、Hela、Namalwa細胞などがあげられるが、これらに限定されるわけではない。形質転換方法としては例えば大腸菌ではカルシウム形質転換法および電気穿孔法、酵母では酢酸リチウム法、スフェロプラスト融合法および電気穿孔法、昆虫細胞ではウイルス感染法、哺乳動物細胞ではリン酸カルシウム沈澱法、プロトプラスト融合法、リポフェクション法、赤血球ゴースト法、リポソーム融合法、DEAE−デキストラン法、電気穿孔法、ウイルス感染法など宿主に応じて適用する。
(5)本発明の抗体(第五発明)
本発明の抗体は、上記本発明のポリペプチドと特異的に反応する。本発明の抗体は、該ポリペプチドと特異的に反応し得るものであればモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。
本発明の抗体は、常法に従って調製することができ、例えば、アジュバントとともに抗原で動物を一回あるいは数週間をはさんで複数回追加免疫する生体内(in vivo)の方法、免疫細胞を分離して適当な培養系で感作させる生体外(in vitro)の方法のいずれかの方法によって調製し得る。本発明の抗体を産生し得る免疫細胞としては、例えば脾細胞、扁桃腺細胞、リンパ節細胞などがあげられる。抗原として使用するポリペプチドは、必ずしも上記の本発明のポリペプチド全体を使用する必要はなく、該ポリペプチドの一部分を抗原として使用してもよい。抗原が短いペプチド、特にアミノ酸20残基前後の場合は、キーホールリンペットヘモシアニンや牛血清アルブミンのような抗原性の高いキャリアタンパク質と化学修飾などによって結合させて用いるか、あるいは、キャリアタンパク質のかわりに分枝骨格を持つペプチド、例えばリジンコアMAPペプチド(Posnett et al., J. Biol Chem. 263, 1719-1725, 1988; Lu et al., Mol. Immunol. 28, 623-630, 1991; Briand et al., J. Immunol. Methods 156, 255-265, 1992)と共有結合させて用いる。アジュバントは、例えば、フロイントの完全、または不完全アジュバントや水酸化アルミニウムゲルなどが用いられる。抗原を投与する動物としては例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ウシ、ウマ、モルモットなどが用いられる。ポリクローナル抗体はこれらの動物から血液を採取して血清を分離し、硫安沈澱および陰イオン交換クロマトグラフィーまたはプロテインAまたはGクロマトグラフィーで免疫グロブリンを精製して得られる。ニワトリの場合卵より抗体を精製することもできる。モノクローナル抗体は、例えばin vitroで感作した、あるいは上記動物の免疫細胞を培養可能な親細胞と融合させて作製したハイブリドーマ(hybridoma)細胞の培養上清から、もしくは同ハイブリドーマ細胞を動物腹腔内接種して得られる腹水から精製して調製することができる。親細胞としては、例えばX63、NS-1、P3U1、X63.653、SP2/0、Y3、SKO-007、GM1500、UC729-6、HM2.0、NP4-1細胞などがあげられる。また、in vitroで感作した、あるいは上記動物の免疫細胞にEBウイルスなどの適当なウイルスを感染させ、得られる不死化抗体産生細胞を培養することにより調製することもできる。これら細胞工学的手法とは別に、in vitroで感作した、あるいは上記動物の免疫細胞から抗体遺伝子をPCR(polymerase chain reaction)反応によって増幅して取り出し大腸菌に導入して抗体を産生させたり、抗体を融合タンパク質としてファージ表面に発現させるなど、遺伝子工学的手法により得ることもできる。
本発明の抗体を用いて、生体におけるSCGFを定量する事により、SCGFの各種疾患の病態との係わりを解明する事が出来、さらに同抗体は疾患の診断ひいては治療、且つSCGFの効率的なアフィニティー精製に資する事が出来る。
(6)本発明の抗体産生生物(第六発明)
本発明の微生物、動物細胞又は動物は、上記の本発明の抗体を産生する。このような微生物、動物細胞又は動物としては、例えば、本発明のポリペプチドに対する特異的抗体遺伝子で形質転換した大腸菌や本発明のポリペプチドに対する特異的抗体遺伝子を表面タンパク質として発現しているファージ、あるいは上記ハイブリドーマ細胞などが例としてあげられるが、これらに限定されるわけではない。
(7)本発明のポリペプチドの製造方法(第七発明)
本発明のポリペプチドは、上記の本発明の遺伝子を含む細胞を培養し、培養物から本発明のポリペプチドを採取することにより製造できる。
ここで、本発明の遺伝子を含む細胞としては、ヒト胎盤細胞、KPB-M15細胞などもともと本発明の遺伝子を含む細胞を使用できるほか、本発明の遺伝子を遺伝子工学的に導入した細胞も使用できる。遺伝子を導入する細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などを例示することができる。培養物から本発明のポリペプチドを採取する方法としては、例えば、後述する本発明の分離精製法に従って、培養上清を分離精製することにより採取することができ、また、細胞を破砕して抽出することによっても採取することができる。細胞を破砕して抽出する手段としては、ホモジナイザーや超音波による機械的処理、あるいは例えばトリトン(Triton)X-100,ノニデット(Nonidet)P-40,ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)といった界面活性剤による化学的処理で破砕して抽出する方法があげられる。
(8)本発明のポリペプチドの分離精製法(第八発明)
本発明のポリペプチドは、陰イオン交換担体、疎水性交換基を有する担体、ゲル濾過担体、色素交換基を有するアフィニティー担体、レクチンアフィニティー担体又は金属キレート担体からなる群から選択された一つまたは二つ以上の担体を用いて分離精製することができる。
陰イオン交換担体としては、例えばDEAE−セファセル(Sephacel)に負荷吸着させ、非吸着分子を洗浄除去した後、塩化ナトリウム(NaCl)濃度を上昇させて溶出することにより精製する。疎水性交換基を有する担体としては、例えばオクチル−セファロース(Octyl−Sepharose)に負荷し、非吸着分画を集めて精製する。ゲル濾過担体としては、例えばセファクリル(Sephacryl)S-200 HRにより分画する。色素交換基を有するアフィニティー担体としては、例えばレッドセファロース(Red Sepharose)あるいはブルーセファロース(Blue Sepharose)に負荷し、それぞれ非吸着分画よりやや遅れた洗浄分画と非吸着分画を集めて精製する。レクチンアフィニティー担体としては、例えば小麦胚芽凝集素(wheat germ agglutinin; WGA)アガロースあるいはコンカナバリンA(Concanavalin A; ConA)セファロースに負荷し、非吸着分画を集めて精製する。金属キレート担体としては、例えば銅イオン固定化キレーティング(Chelating)セファロースに負荷吸着させ、非吸着分子を洗浄除去した後、グリシン濃度を上昇させて溶出することにより精製する。
(9)本発明の医薬組成物(第九発明)
本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチドを有効成分として含有する。
本発明の医薬組成物は、単独または他の造血増殖因子とともに全身的あるいは局所的に、経口あるいは非経口投与される。投与はSCGFの造血幹細胞増殖活性として造血不全を回復させるのに効果的な量で行われるが、投与量は患者の年齢、体重、病状、治療反応性、投与方法など種々の条件により変動するため適宜設定する必要がある。
本発明の医薬組成物は、経口投与のためには、錠剤、ソフトおよびハードカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤などの固体組成物として、液剤、シロップ剤、懸濁液剤などの液体組成物として、一方非経口投与のためには、液剤、懸濁液剤、乳液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、エアロゾル剤などの経皮外用剤として、坐剤として、また静脈、筋肉あるいは皮下注射剤として用いられる。
医薬組成物の薬学的不活性担体として精製水、乳糖、ブドウ糖、デンプン、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アラビアゴム、タルク、植物油、黄色ワセリンなどの希釈剤のほか、薬学的活性添加剤として潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムなど)、崩壊剤(線維素グリコール酸カルシウムなど)、安定剤(ヒト血清アルブミンなど)、溶解補助剤(アルギニン、アスパラギン酸など)など従来から薬学的に許容されるものは全て利用できる。
経口投与のための固体組成物は、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの一つ以上の層で被膜し胃溶あるいは腸溶錠としてもよい。経口投与のための液体組成物は精製水、エタノールや液剤、シロップ剤、懸濁液剤、乳濁剤、エリキシル剤などを含んでいてもよい。さらに香味剤、防腐剤などが適切な薬品配合基準に従って添加されていてもよい。
非経口投与のための静脈、筋肉あるいは皮下注射剤には、薬学的不活性担体として注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール類などの希釈剤の他、薬学的活性添加剤として防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、分散剤、溶解補助剤などが適切な薬品配合基準に従って添加されていてもよい。これら注射剤は濾過滅菌、殺菌剤の配合、放射線照射により無菌化されるか、または凍結乾燥品など固体組成物を投与前に無菌の注射用蒸留水他の溶媒により再生して使用する。
本発明の医薬組成物は、これまで既存の造血増殖因子を利用した医薬では治療出来なかった造血不全を回復させるために、単独あるいはEpo、G-CSF、GM-CSF、SCなど他の造血増殖因子を利用した医薬とともに治療薬として用いられる。対象となる造血不全としては再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、慢性骨髄性白血病、真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症、骨髄異型性症候群、急性白血病などの量的、質的造血幹細胞異常に起因する造血器疾患や巨赤芽球性貧血、AIDS、多発性骨髄腫、癌骨髄転移、薬剤による骨髄抑制などの血液疾患があげられる。また、悪性リンパ腫やその他固型癌患者の放射線照射または化学療法による造血不全の予防ならびに回復治療にも効力を発揮する。
また、本発明の医薬組成物は、アデノシンデアミナーゼなどの酵素欠損症やヘモグロビン異常症などの遺伝子異常に基づく疾患の正常遺伝子による補充や置換、また癌細胞の増殖阻止物質遺伝子の導入など遺伝子治療に利用できる。すなわち、本発明の医薬組成物単独あるいは他の造血増殖因子を利用した医薬と組み合わせて作用させる事により、通常静止期にある造血幹細胞を細胞周期に導入し、正常あるいは目的遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターの同細胞へのトランスフェクトないし感染効率を格段に高めることが出来る。遺伝子を組み込まれた造血幹細胞を患者に移植すると、その遺伝子を持った成熟血液細胞を補充供給し続け、遺伝子疾患は軽快治癒する事になる。
(10)本発明のλファージベクター(第十発明)
本発明のλファージベクターは、そのベクター内にフィラメンタスファージの複製開始領域と終止領域が分離して存在し、且つこの複製開始領域と終止領域の間に大腸菌で複製可能な機能を有するDNA領域と哺乳動物細胞で発現可能な機能を有するDNA領域の少なくとも二つの機能領域を有する。
ここで、フィラメンタスファージとは、F因子を発現している大腸菌に特異的に感染する一本鎖の環状DNAを持つバクテリオファージで、例えばM13、fl、fdファージなどがあげられる。フィラメンタスファージの複製開始領域とは、フィラメンタスファージが認識しDNAの複製を開始する塩基配列を含む領域で、例えばM13ファージ複製起点(ori)遺伝子のNheI−DraIII領域の配列があげられる。フィラメンタスファージの複製終止領域とは、フィラメンタスファージが認識し複製を停止する塩基配列を含む領域で、例えばM13ファージori遺伝子のAvaI−RsaI領域の配列があげられる。フィラメンタスファージの複製開始領域と終止領域の間には大腸菌で複製可能な機能を有するDNA領域と哺乳動物細胞で発現可能な機能を有するDNA領域の少なくとも二つの機能領域が存在しなければならない。大腸菌で複製可能な領域とは、大腸菌の複製開始領域oriを含む領域で、例えばColE1のoriなどがあげられる。哺乳動物細胞で発現可能な機能を有するDNA領域とは、哺乳動物細胞に感染可能なウイルス由来DNAをもとに,外来遺伝子を効率よく発現するために少なくともプロモーター領域やポリ(A)付加信号領域を含むDNA領域のことをいう。哺乳動物細胞に感染可能なウイルスとは、例えば、ポリオーマウイルス、SV40ウイルス、BKウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、EBウイルスなどがあげられる。λファージベクターとは、バクテリオファージλ由来のDNAをもとにしたベクターで、例えば本発明の実施例記載のλSHDMやλCDMあるいはλgt10、λgt11、EMBL3、EMBL4、Charon4Aなどがあげられる。
本発明のベクターや後述する本発明の遺伝子単離法は他の新規遺伝子の解明にも応用可能で、この方法により単離された新規遺伝子の関連分野を含む遺伝子工学やバイオテクノロジーの分野全体における技術的発展に貢献することが出来る。
(11)本発明の遺伝子単離法(第十一発明)
本発明の遺伝子の単離法は、上記の本発明のλファージベクターを用いるものである。具体的な方法としては、以下の第一〜第四工程からなる方法を例示することができるが、この方法に限定されるわけではない。
A)第一工程
目的タンパク質を産生する細胞株からmRNAを調製し、これからcDNAを合成し、このcDNAを上記本発明のλファージベクターの複製開始領域と終止領域の間に挿入し、この組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、ファージcDNAライブラリーを作成する。
ここで、目的タンパク質としては、本発明のポリペプチド(SCGF)を例示することができるが、何らかの活性や機能を有し、それを指標としてスクリーニングできるものであればどのようなタンパク質であってもよい。このようなタンパク質を産生する細胞株としては、SCGFを産生するKPB-M15細胞株をあげることができるが、これに限定されるわけではない。また、目的タンパク質に対する特異抗体が利用できる場合は、該抗体により目的タンパク質を検出することもできる。mRNAの調製、cDNAの合成は常法に従って行い得る。形質転換する宿主細胞としては、大腸菌など一般に用いられるものでよい。
B)第二工程
上記ファージcDNAライブラリーについて、例えば陽性プローブと陰性プローブを用いてディファレンシャルクローニングを行い、陽性プローブとハイブリダイズし、陰性プローブとはハイブリダイズしないクローンを選抜する。
ここで、陽性プローブとは、上記の目的タンパク質を産生する細胞株のmRNAから合成された一本鎖cDNA(sscDNA)のうち、その細胞株と近似する細胞であって、上記の目的タンパク質を産生しない細胞株のmRNAとハイブリダイズしないsscDNAを標識したものをいい、陰性プローブとは、当該目的タンパク質を産生しない細胞株のmRNAから合成されたsscDNAを標識したものをいう。このように、陽性プローブと陰性プローブを用いたディファレンシャルクローニングを行うことにより、目的タンパク質の産生と関係のないcDNAが挿入されているクローンを排除できるので、スクリーニングに供する母集団を大幅に減少させることができるが、この方法に限定されるわけではなく、他の方法によってクローンを絞り込んでもよい。
C)第三工程
上記選抜クローンから上記本発明のλファージベクター由来のプラスミドを採取し、これを上記目的タンパク質を発現し得る宿主細胞に導入し、タンパク質の活性や機能の測定系あるいは特異抗体を用いてスクリーニングを行い、目的タンパク質を産生する宿主細胞クローンを同定する。
発現可能な宿主細胞としては、例えば、COS-1細胞などをあげることができるが、これに限定されるわけではない。
D)第四工程
同定発現宿主細胞クローンに導入されたプラスミドを含む組換えλファージベクターで形質転換された大腸菌などの宿主細胞からプラスミドを採取し、遺伝子を単離する。
実施例
以下により具体的な実施例をあげて説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
実施例1:KPB-M15細胞由来mRNAの調製
本発明のポリペプチドを産生することが知られているKPB-M15細胞からChomczynskiとSacchiの方法(Anal. Biochem. 162, 156-159, 1987)に従ってRNAを調製した。
先ず、KPB-M15細胞集塊を4Mグアニジンチオシアネート、0.5%ザルコシルおよび0.1M 2−メルカプトエタノール(2-ME)を含む25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(Solution D)により溶解した。酸性条件下でフェノール/クロロホルム抽出し、2−プロパノールを加えて水層中のRNAを沈澱させ、溶解して全RNAとした。
次に、全RNA溶液にOligotex dT30ビーズ(Takara、大津市)懸濁液を加え、37℃でNaCl濃度を0.5M以上に保ちmRNAを結合させた。ビーズを洗浄後、1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)(TE)でmRNAを遊離させた。
実施例2:KPB-M15細胞由来cDNAの合成
cDNA合成はZAP-cDNA合成キット(Stratagene社、カリフォルニア州、ラホヤ市)を用いて行った。
KPB-M15mRNA溶液にMe−dCTPを含む核酸混液、リンカープライマー(図1)およびリバーストランスクリプターゼ(RTase)を加え37℃でファーストストランド(1st Str)DNAを、次いでRNAse HおよびDNAポリメラーゼI(DNApolyI)を加え16℃でセカンドストランド(2nd Str)DNAを合成した。合成されたcDNA末端をT4 DNA polyにより平端に整形した後、T4 DNAリガーゼ(ligase)により8℃でEcoRIアダプター(図1)を結合させ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNKinase)でリン酸化した。XhoIを加え37℃でプライマー側のXhoIサイトで切断した。0.1M NaClを含むTE(STE)で平衡化したバイオゲル(BioGel)A50mカラム(バイオラド社、カリフォルニア州、ヘラクレス)により約500塩基対(base pair; bp)以上の分画を集めKPB-M15cDNA溶液とした。
実施例3:λCDMおよびλSHDMベクターの構築
λCDMおよびλSHDMベクターは、CDM8(Seed, Nature 329, 840-842, 1987)から構築したCDMflitおよびSHDMプラスミドベクターを直鎖状にし、λファージベクターに組み込んで構築した。
λCDMは以下の手順で構築した。まず、CDM8のスタッファー(stuffer)XbaI-HindIII領域をpRC/CMV(Invitrogen社、カリフォルニア州、サンディエゴ市)由来のポリリンカーで置換し、CDMmcsを構築した。次に、ポリリンカー内のEcoRV−EcoRI断片をpBS(Stratagene社)のポリリンカーSmaI−EcoRI断片に入れ替え、EcoRVサイトを消去したCDMmcs(-v)を構築した。図2に示すようにM13の複製開始領域と終止領域の重なった領域の一部に相当し、5’端にEcoRVサイトを導入した配列番号3に示すDNAを合成した。この合成DNAをHinfI−RsaIDNA断片とともに、CDMmcs(-v)のDraIII−SacII DNA断片に結合し、EcoRVサイトの両側に複製開始領域と終止領域が並んだM13 ori遺伝子を持つCDMflitを構築した。一方、λベクターはλBluemid(Clontech社、カリフォルニア州、パロアルト市)を改良して用いた。まず、NotI消化により中央部分のNotI−NotI DNA断片を除去し、左アームと右アームをNotIサイトで再結合した。次に、XhoI消化後T4 DNApolyで埋め再結合することでXhoIサイトを消去した。このベクターをλb-xとした。上記CDMflitをEcoRVで直鎖状にし、λb-xのNotIサイトに結合してλCDMを構築した(図4)。
SHDMは以下の手順で構築した。まず、CDMflitをAatI消化により開環し、BamHIリンカー(CGGATCCG)を結合して閉環し、BamHIサイトを導入した。このプラスミドをBamHIで切断して得られた三断片のうち、SV40 oriおよびPy ori領域を含む断片を除き、残りの二断片を結合閉環してCDMflit(-sv,py)を構築した。次に、CDMflitからNcoI消化により切り出したPy ori領域をT4 DNApolyで平端化し、CDMflit(-sv,py)のNheIサイトへ導入してCDMflit(-sv)を構築した。CDMflit(-sv)からCMVプロモーターをNruIおよびHindIIIで切り出し、かわりにpSV2neo(Southern and Berg, J. Mol. Appl. Genet. 1, 327-341, 1982)からHindIIIおよびPvuII消化により調製したSV40初期プロモーター断片を導入してSDMflitを得た。SDMflitのHindIIIサイトに、HTLV−1 LTRのRとU5領域の一部約300bpを合成して導入し、SHDMflitを構築した。pL2からXhoI−BanIII消化により調製したSV40 16Sスプライシング配列断片をSHDMflitのSpeIサイトに導入してSHDMを得た(図3)。SHDMをEcoRVで直鎖状にし、λb-xのNotIサイトに結合してλSHDMを構築した(図4)。
λSHDMベクターとλCDMベクターに以下実施例4から7に示す方法でEpo cDNAを挿入し、COS-1細胞で発現させ産生されるEpoを定量比較してみると、前者の方が後者より約25%発現量がまさっていたため以下の実施例ではλSHDMを使用することにした。
実施例4:KPB-M15細胞由来cDNAのλSHDMベクターへの挿入
λSHDMベクターをXhoIおよびEcoRIで消化し、cDNA挿入サイトを形成した。STEで平衡化したバイオゲルA50mカラムでベクターアームとXhoI−EcoRI断片を分画し、後者を除去した。ベクターアームを含む分画を牛腸由来アルカリフォスファターゼ(calf intestine alkaline phosphatase; CIAP)で脱リン酸化した。このXhoI、EcoRI消化脱リン酸化λSHDMベクター溶液に実施例2で得られたKPB-M15cDNA溶液を加え、T4 DNAリガーゼで両者を結合させた。
実施例5:KPB-M15細胞由来cDNA結合λSHDMベクターのファージパッケージングとpSHDMプラスミドへのトランスファー
実施例4のベクターcDNA結合反応液にGigapack−Goldパッケージングエキストラクトキット(Stratagene社)の凍結融解抽出液と超音波抽出液を加えてファージパッケージングを行った。0.1M NaCl、8mM塩化マグネシウム(MgCl2)および0.01%ゼラチンを含む50mMトリス塩酸保存液(SM)と少量のクロロホルムを加えてファージcDNAライブラリーとした(以下、「λSHDM(KPB)ファージ溶液」という)。10mM硫酸マグネシウム(MgSO4)溶液に懸濁した大腸菌SUREにλSHDM(KPB)ファージ溶液を加えて感染させ、熱溶解アガロースを含むNZYM(0.5%NaCl、0.5%イーストエキストラクト、0.2% MgSO4および1% NZアミンからなる培地)に混ぜLuria−Bertani培地(LB; 0.5% NaCl、1%バクトトリプトンおよび0.5%イーストエキストラクトからなる)寒天プレート上に播種した。一晩培養し、形成されるプラークの数を計測してファージの力価を求めた。λSHDM(KPB)ファージ溶液全体で1.67×106pfuであった。
各プラークからランダムにクローンを選びファージ溶液を調製し、10mM MgSO4に懸濁した大腸菌XL1-Blueおよび微量のヘルパーファージR408溶液を加えて培養しファジミド溶液を調製した。NZYMに懸濁した大腸菌MC1061/P3/PCJにファジミド溶液を微量加えて感染させ、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(TC)選択LB寒天プレート上で培養し、pSHDM(KPB)プラスミドを有する大腸菌コロニーを形成させた。得られた大腸菌を一晩培養後集菌し、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, Nucleic Acids Res. 7, 1513-1523, 1979; Ish-Horowicz and Burke, Nucleic Acids Res. 9, 2989-2998, 1981)によりプラスミドDNAを調製した。XhoIおよびEcoRIでプラスミドを消化しアガロースゲル電気泳動で解析したところ、約70%のクローンに500bp−3kbpのcDNAの挿入が確認された。
実施例6:ディファレンシャルcDNAライブラリーの構築
実施例5に従い調製したLB寒天上のプラークからλSHDM(KPB)ファージをニトロセルロースフィルターにトランスファーした。アルカリ処理によりファージを溶解し、中和後80℃で約2時間熱処理してファージDNAをフィルターに固定した。同一寒天プレートから同じフィルターを二枚調製し、それぞれ32P標識陽性プローブまたは陰性プローブとハイブリダイズし、未結合プローブを洗浄除去してオートラジオグラフィーを行った。陽性プローブで陽性、陰性プローブで陰性となるクローンを選び、ファージ溶液を調製しディファレンシャルファージライブラリー溶液とした。
KPB-M15特異的陽性プローブはKPB-M15cDNAからサブトラクション(subtraction)法により作製した。すなわち、SCGFを産生しないことが確認されているMOLT−4細胞のmRNAと結合するKPB-M15cDNAを両細胞に共通する遺伝子として除き、残ったcDNAを陽性プローブとして用いた。
実施例1に示した方法により得られたKPB-M15mRNAを鋳型としてオリゴdTプライマーを用いてスーパースクリプト(SuperScriptTM)リバーストランスクリプターゼ(GIBCO-BRL社、ニューヨーク州、グランドアイランド)で1st Str cDNAを合成した。アルカリ処理で鋳型mRNAを加水分解し、STEで平衡化したセファデックス(Sephadex)G−50カラム(ファルマシア社、スウエーデン、ウプサラ市)に負荷してKPB-M15 sscDNAを集めた。KPB-M15 sscDNAに大過剰のMOLT−4 mRNAを加えて65℃で40時間以上アニーリングした。0.12Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)で平衡化したハイドロキシアパタイトカラム(バイオラド社)の素通り分画を集めた。アルカリ処理後セファデックスG−50カラムでゲル濾過して、ボイドボリュウム付近の分画を陽性プローブとして集めた。MOLT−4 mRNAは、実施例1で示した方法によりMOLT−4細胞から全RNAを調製し、0.5M塩化カリウム(KCl)を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したオリゴdTセルロースカラムに吸着させ、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で溶出して調製した。
陰性プローブは実施例1で示した方法によりMOLT−4細胞から調製したmRNAを鋳型としてsscDNAを上記のごとく調製した。
プローブの標識はマルチラベリングキット(アマシャム社、英国、バッキンガムシャー州、アマシャム)を用いて行った。KPB-M15特異的sscDNAまたはMOLT−4 sscDNA溶液を95℃で熱変性後氷上で急冷し、ランダムプライマー、32P標識dCTPおよびクレノー(Klenow)酵素を添加して32P標識プローブを合成した。続いて、STEで平衡化したセファデックスG−50カラムで未反応32P標識dCTPを除いた。
実施例7:SCGFcDNAの発現クローニング
実施例6で調製したディファレンシャルファージライブラリーの各クローンから、pSHDM(KPB)を有する大腸菌を液体培養した。培養液を48クローン分まとめてプールし、アルカリ溶解法により粗プラスミドDNAを調製後、塩化セシウム−エチジウムブロマイド密度勾配平衡遠心法にて精製ミックスプラスミドDNAを得た。
サル腎臓由来SV40形質転換線維芽様細胞株、COS-1細胞(受託番号ATCC CRL-1650)に3.3μg/mlミックスプラスミドDNA、100μg/mlDEAE−デキストラン(dextran)および100μMクロロキンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle medium; DMEM、ニッスイ、東京都)(トランスフェクション用培地)を添加して、37℃、5%CO2の環境下でトランスフェクトした。反応後培地を捨て10%ジメチルスルフォキシド(dimethylsulfoxide; DMSO)を含むDMEM−10%FCS培地で処理し、新鮮なDMEM−10%FCS培地に交換して一晩培養した。二日目、トランスフェクション用培地に交換し、以下一日目と同じ操作を繰り返しダブルトランスフェクションを行った。三日日、無血清DMEM培地に交換して3ないし5日間培養し、培養上清を採取した。得られたCOS-1細胞培養上清は以下の手順で濃縮した。7倍量以上の0.01%ツイーン(Tween)80を含む20mM HEPES緩衝液(pH6.0)で希釈したCOS-1細胞培養上清を、20mM NaClおよび0.01%ツイーン80を含む20mM HEPES緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE−セファセルカラム(ファルマシア社)に負荷した。十分洗浄後、少量の0.25M NaClおよび0.01%ツイーン80を含む20mM HEPES緩衝液(pH6.0)で溶出した。
COS-1細胞発現濃縮試料はBPA活性を指標にスクリーニングした。ヒト骨髄細胞に対するBPA活性の測定は次のように行った。予め承諾を得た健常成人骨髄提供者の胸骨から、骨髄2.5mlを採取した。フィコールパック(ファルマシア社)により分離される低比重細胞をIMDM培地(GIBCO社)により3回洗浄後、10%FCS(CSL社、オーストラリア、メルボルン市)を含むIMDM培地10mlに再浮遊し、37℃、75分間インキュベートした。回収した非付着細胞を、COS-1細胞発現試料、1単位/m1組換え型ヒトEpo(エスポー;キリン−三共(株)、東京都)、20%FCS、5×10-5M 2-MEおよび0.3%バクト寒天を含むIMDM培地により最終的に5×104個/mlとなるよう調製し14日間培養した。培養後、倒立顕微鏡下で赤芽球バーストの数を計測した。
137プール試料のスクリーニングの結果、プール番号71、86、116および130が比較的高い活性を示した。そこで、各プールのディファレンシャルファージ各クローンからシングルプラスミドDNAを上記の方法に従って調製し、再度COS-1細胞にトランスフェクトした。これらCOS-1細胞発現試料のBPA活性を二次スクリーニングしたところクローン番号116−10Cに強い活性を認めた。373ADNA自動シークエンサー(パーキンエルマー社、アプライドバイオシステムズバイオ事業部、コネチカット州、ノーウオーク市)による解析で、このクローンには配列番号2に示した塩基配列からなるcDNAが挿入されていることがわかった。この塩基配列をGenBankおよびEMBLなどのデータベースに登録されている遺伝子と比較したところ(Lipman and Pearson, Science 227, 1435-1441, 1985)、部分的に3’非コーディング領域と高い相同性を示す短い遺伝子断片が僅かに一つあったものの、全配列や大半のコーディング領域で一致したり高い相同性のあるものは認められなかった。塩基配列の解析から最長のオープンリーディングフレームには、配列番号1に示すようにN末端側約20残基の疎水性アミノ酸に富む領域(Hopp and Wood, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78, 3824-3828, 1981)を含んだ245アミノ酸残基からなるタンパク質がコードされていることがわかった。このアミノ酸配列をSwiss−Protデータベースで検索してみたが、やはり同一または高い相同性を示すものは見当らなかった。
実施例8:SCGFcDNAクローン番号116−10C発現COS-1細胞培養上清の造血幹細胞増殖活性の測定
COS-1細胞へのトランスフェクションは実施例7記載の方法により行った。ただし、プラスミドDNAは1.3μg/mlの濃度で用いた。
採取した培養上清について、BPA活性は実施例7記載の方法に従って測定した。GPA活性の測定は次のように行った。実施例7で得られた細胞を、COS-1細胞発現試料、5ng/m1組換え型ヒトGM-CSF(ジェンザイム社、マサチューセッツ州、ケンブリッジ市)、20% FCS、5×10-5M 2-MEおよび0.3%バクト寒天を含むIMDM培地により最終的に5×104個/mlとなるよう調製し10日間培養した。培養後、倒立顕微鏡下で顆粒球−マクロファージ系細胞の集塊からなるGMコロニーの数を計測した。用量に依存したBPA活性およびGPA活性が認められた(図5)。
実施例9:無血清KPB-M15細胞培養上清の造血幹細胞増殖活性の測定
KPB-M15細胞をRPMI-1640(GIBCO社)−10%FCS培地中で3ないし4日間増殖させ、培地を除き、1ないし2×106個/mlとなるよう無血清RPMI-1640培地を添加、さらに3ないし4日間培養した。得られた培養上清について、BPA活性およびGPA活性をそれぞれ実施例7、8記載の方法に従って測定した。用量に依存したBPA活性およびGPA活性が認められた(図6)。一方、同じ条件で調製されたK562およびMOLT−4細胞の培養上清には活性はほとんど認められなかった。
実施例10:SCGFタンパク質免疫による抗SCGFポリクローナル抗体の作製
NotIで消化したpGEX−2Tベクター(ファルマシア社;図7)の切断面をT4 DNApolyで平滑化し、BamHIで切断して挿入サイトを形成した。NcoI−Bam HIリンカー(図7)および116−10C NcoI−XbaIDNA断片を加えてT4 DNAリガーゼで結合して環状化pGEX−2T(116−10C)を得た。116−10C NcoI−XbaIDNA断片は、XbaIで消化したpSHDM(116−10C)プラスミドDNAの切断面をT4 DNApolyで平滑化し、NcoIで消化してアガロースゲル電気泳動で分離調製した。pGEX−2T(116−10C)を導入した大腸菌JM109を培養増殖させ、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(isopropylβ−D−thiogalactoside; IPTG)を加えてグルタチオンSトランスフェラーゼ/116−10C(GST/116−10C)融合タンパク質の産生を誘導した。インクルージョンボディを尿素で可溶化し、グルタチオンセファロースカラム(ファルマシア社)に負荷してGST/116-10C融合タンパク質を精製した。トロンビン消化によりGSTと116−10Cタンパク質を切断し、MonoQカラム(ファルマシア社)で116−10Cタンパク質を分離回収した。得られた抗原をフロイントの完全アジュバント(DIFCO社、ミシガン州、デトロイト市)とともにウサギに2週間間隔で3回投与して免疫した。最終投与後2週目に抗血清を得た。プロテインAセファロースカラム(ファルマシア社)で抗体を精製し、酵素免疫抗体法(enzyme−linked immunosorbent assay; ELISA)で抗体が116−10Cタンパク質と反応することを確認した。
実施例11:抗SCGFモノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体はOiとHerzenbergの方法(Selected Methods in Cellular Immunology, Misheli and Shiigi編、サンフランシスコ:WH Freeman出版、351-372頁、1981)に従って作製した。実施例10に示す操作で得られた116−10Cタンパク質、マイトジェン刺激ヒト末梢血単核細胞培養上清由来部分精製SCGF、もしくは実施例20に示す操作で得られた部分精製SCGFをフロイントの完全アジュバントとともにBALB/cマウスに投与して免疫した。3週間間隔で2回免疫後3日目に脾細胞を採取した。マウス骨髄腫細胞株P3X63−Ag8.653(Koehler and Milstein, Nature 256, 495-497, 1975)と上記脾細胞を1.5×108個ずつ混合し、50%ポリエチレングリコール4,000を加えて融合させた。HAT培地(hypoxanthine、aminopterin、thymidineを含む)で11日目までハイブリドーマ細胞を選択し、23日目に抗SCGF抗体産生ハイブリドーマ細胞に胸腺細胞を加えてHT培地(hypoxanthine、thymidineを含む)へ移した。2週間後、限界希釈法により胸腺細胞フィーダー(feeder)上でハイブリドーマ細胞をクローン化した。抗SCGF抗体産生クローン化ハイブリドーマ細胞を、予めプリスタン(pristane; 0.5ml/匹)処理したBALB/cマウスに腹腔内注入し、13日目以後腹水を採取した。ハイブリドーマ細胞培養上清あるいは腹水中の抗体をプロテインGセファロースカラムで精製し、ELISAで抗体がSCGFと反応することを確認した。また、この精製抗SCGFモノクローナル抗体の連続2倍希釈系列に部分精製SCGFを加えて37℃、2時間次いで4℃一晩反応させ、同抗体のSCGF活性に及ぼす影響を検討した。その結果、このモノクローナル抗体はSCGFのBPA活性とGPA活性を特異的に中和した(図8)。
実施例12:SCGFのDEAE−セファセルによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清に6.5倍量の20mMリン酸緩衝液(pH6.0)と1/100量の1%ツイーン80を加え希釈する事により塩濃度を下げpHを調整した。20mM NaClおよび0.01%ツイーン80を含む20mMリン酸緩衝液(pH6.0)(以下SCGFの分画、精製に用いたすべての緩衝液は0.01%ツイーン80を含む)で平衡化したDEAE−セファセルカラムに負荷した。十分洗浄後、0.02〜0.5M NaCl直線濃度勾配で溶出した。各分画を0.15M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したPD−10カラムに負荷して緩衝液交換を行い、実施例7記載の方法に従ってBPA活性を測定した。約0.1M NaClで溶出される分画に活性を認めた(図9)。
実施例13:SCGFのオクチル−セファロースによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清に4MとなるようにNaCl 25.6gおよび0.01%となるように1%ツイーン80を加えて、4M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したオクチル−セファロースCL−4Bカラム(ファルマシア社)に負荷した。十分洗浄後、4〜0.02M NaCl直線濃度勾配で溶出した。実施例12同様各分画のBPA活性を測定すると、素通り分画に活性を認めた(図10)。
実施例14:SCGFの銅キレーティングセファロースによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清を0.5M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.4)で透析し、同緩衝液で平衡化した銅イオン固定化キレーティングセファロースCL−4Bカラム(ファルマシア社)に負荷した。十分洗浄後、0〜0.1Mグリシン直線濃度勾配で溶出した。実施例12同様各分画のBPA活性を測定すると、活性はグリシン濃度約35mM付近に溶出された(図11)。
実施例15:SCGFのConAセファロースによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清を0.15M NaClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で透析し、同緩衝液で平衡化したConAセファロースCL−4Bカラム(ファルマシア社)に負荷した。十分洗浄後、0〜0.5Mα−メチルマンノース直線濃度勾配で溶出した。実施例12同様各分画のBPA活性を測定すると、素通り分画に活性を認めた(図12)。
実施例16:SCGFのWGAアガロースによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清を0.15M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.4)で透析し、同緩衝液で平衡化したWGAアガロースカラム(生化学工業、東京都)に負荷した。十分洗浄後、0〜0.2M N−アセチルグルコサミン直線濃度勾配で溶出した。0.01%ツイーン80を含むIMDM培地で透析し、実施例7記載の方法に従って各分画のBPA活性を測定すると、素通り分画に活性を認めた(図13)。
実施例17:SCGFのブルーセファロースによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清を50mM NaClを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で透析し、同緩衝液で平衡化したブルーセファロースCL−6Bカラム(ファルマシア社)に負荷した。十分洗浄後、0.05〜1.5M NaCl直線濃度勾配で溶出した。実施例12同様各分画のBPA活性を測定すると、素通り分画に活性を認めた(図14)。
実施例18:SCGFのレッドセファロースによる分画
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清を50mM NaClを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で透析し、同緩衝液で平衡化したレッドセファロースCL−6Bカラム(ファルマシア社)に負荷した。十分洗浄後、0〜1.5M NaCl直線濃度勾配で溶出した。実施例12同様各分画のBPA活性を測定すると、素通り分画後半から洗浄分画に活性を認めた(図15)。
実施例19:SCGFのセファクリルS−200HRによる分画
実施例14に示す銅イオン固定化キレーティングセファロースカラムで溶出されたBPA活性分画を、0.15M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したセファクリルS−200HRカラム(ファルマシア社)に負荷して分画した。実施例7記載の方法に従って各分画のBPA活性を測定すると、活性は分子量20kD〜80kDの広範囲にわたって二相性のピークとして認められた(図16)。
実施例20:SCGFの連続精製
実施例9に示す操作で得られたKPB-M15細胞培養上清に6.5倍量の蒸留水を加え希釈する事によりイオン強度を調整した。20mM NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE−セファセルカラムに負荷し、十分洗浄後、0.02〜0.5M NaCl直線濃度勾配で溶出した。0.1〜0.25M NaClで溶出される分画を貯留した。
DEAE−セファセル分画を、0.5M NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.4)で平衡化した銅イオン固定化キレーティングセファロースカラムに負荷し、十分洗浄後、0〜0.2Mグリシン直線濃度勾配で溶出した。グリシン濃度35mM付近で溶出される分画を貯留した。この貯留分画を20mM NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH6.0)で透析し、同緩衝液で平衡化したDEAE−セファセルミニカラムに負荷し、十分洗浄後、0.5M NaClを含む同緩衝液で溶出した。
この濃縮分画を、0.15M NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)で平衡化したセファクリルS−200HRカラムに負荷して分画し、SCGF活性分画を回収した。各分画のBPA活性は実施例19と同様二相性のピークを認めた。
上記ゲル濾過で得られた精製分画を、50mM NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)で平衡化したブルーセファロースCL−6Bカラムを上流に、DEAE−セファセルカラムを下流になるよう直列に重連して負荷した。十分洗浄後、切り離したDEAE−セファセルカラムから0.5M NaClを含む同緩衝液により溶出した。第1表は一連の精製過程におけるBPA活性とタンパク質回収をまとめたものである。
Figure 0004086904
実施例21:ヒトSCGFヴァリアントの逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応による増幅、同定
配列番号2に記載されるSCGF遺伝子のうち、成熟タンパク質のN末端及びC末端部分をコードすると推測されるDNAをプライマーとして合成し、ヒト骨髄由来のmRNAを鋳型として、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptase-polymerase chain reaction; RT-PCR)を行った。正方向プライマーとして配列番号6に記載のオリゴヌクレオチドを、逆方向プライマーとして配列番号7に記載のオリゴヌクレオチドを使用した。合成オリゴヌクレオチドは固相法を原理とする全自動DNA合成機を使用して作製した。各オリゴヌクレオチドの精製は、OPCカートリッジを使用して行った。ヒト骨髄由来のpoly A+RNA(Clontech社)1μgから、SuperScriptTM Preamplification Systemキット(GIBCO/BRL社)のプロトコールに従って、20μl反応液中でオリゴdTプライマーを用いて一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖cDNAの一部を鋳型として、100μl反応液中でTaq DNA polymerase(2.5単位; 宝酒造社)によるPCRを実施した。PCRは、10% DMSO存在下、それぞれ正方向プライマー、逆方向プライマー50μMを使用し、PCR工程(1サイクルは変性94℃;1分間、アニーリング55℃;2分間、ポリメラーゼ反応72℃;2分間からなる)を30サイクル行い、最後に72℃で5分間反応させた。得られたRT-PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分画し、ゲルから960bp付近のDNA断片を切り出した。QIA quick Gel Extractionキット(Qiagen社)のプロトコールに従って精製し、TE緩衝液30μl[10mMトリス緩衝液(pH8)、1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)(pH8)]で溶出した。精製したDNA断片9μlをT-Vectorキット(Novagen社)のプロトコールに従ってpT7Blue(R)ベクター1μlに挿入し、大腸菌XL-1 Blueを形質転換後、生じたアンピシリン耐性コロニーのうちcDNAが組み込まれているものをクローン化した。pT7Blue(R)ベクターに挿入されたRT-PCR産物の塩基配列は、DNAシーケンサーモデル4000(LI-COR社)によって決定した。塩基配列決定のための具体的試薬としては、SequiTherm EXCELTM Long-Read DNAシーケンスキット-LC(Epicentre Technologies社)を使用し、方法についてはキットの指示に従った。塩基配列を決定した5クローンすべてが同一で、成熟タンパク質をコードすると推測される塩基配列を配列番号5、及びそのアミノ酸配列を配列番号4に示す。このcDNAは、配列番号1に記載のSCGFの195番目と196番目のアミノ酸残基の間に、配列番号4に記載の196番目から273番目までの78個のアミノ酸残基が付加されたSCGFヴァリアントであった。
実施例22:マウスSCGFのクローン化
(1)マウスストローマ細胞株MC3T3-G2/PA6 cDNAライブラリーの作製
1×108個のマウス頭蓋冠由来ストローマ細胞株MC3T3-G2/PA6(受託番号 理研ジーンバンク細胞開発銀行RCB 1127)からFast Track mRNA抽出キット(Invitrogen社)を用いて、mRNA約30μgを取得した。具体的試薬および方法はキットの説明書に従った。得られたmRNA5μgから、cDNA合成システム(cDNA Synthesis System;GIBCO/BRL社)を用いて、オリゴdTをプライマーとして二本鎖cDNAを合成した。逆転写酵素としてはキット中のMoloney Murine Leukemia Virus(M-MLV)reverse transcriptaseの代わりに、同社のSuperScriptTM RNase H- Reverse Transcriptaseを使用した。cDNAの両末端に下記SfiIリンカーを付与し、アガロースゲル電気泳動により分画した約1.5kb〜2.2kbのcDNA断片を回収した。SfiIリンカーの11量体(配列番号10)と8量体(配列番号11)の一本鎖DNAは380A/DNA合成機(アプライド・バイオシステムズ社)を用いて合成した。合成DNA 50μgは別々にT4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造社)を加えてリン酸化した。上記で合成した二本鎖cDNAおよびリン酸化したリンカー(11量体のものを4μgと8量体のものを2.9μg)を結合し、アガロースゲル電気泳動により約1.5kb〜2.2kbのcDNA断片を回収した。クローニングベクターとしてpAMoPRC3Sc(特開平06-823021;Sasaki et al., J. Biol. Chem. 268, 22782-22787, 1993)を使用した。ベクターDNA 24μgをSfiIで消化し、アガロースゲル電気泳動により約8.8kbのDNA断片を回収した。このpAMoPRC3Sc由来のSfiI断片(8.8kb)2μgと上記で精製したcDNAを連結し、トランスファーRNA(tRNA)5μgを添加し、エタノール沈殿後、TE緩衝液20μlに溶解した。該反応液を用いて大腸菌LE392株(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Mannual, Cold Spring Harbor Lab.出版、プレーンビュー、ニューヨーク、第2版、1989)をエレクトロポレーション法(William et al., Nucleic Acids Res., 16, 6127-6145, 1988)により形質転換し、約25万個のアンピシリン耐性AMo(PA6)cDNAライブラリーを得た。
(2)マウスSCGFのクローン化
AMo(PA6)cDNAライブラリーを、約2万個のアンピシリン耐性株からなるプール50個に分け直し、各プールからプラスミドをアルカリ変性法で調製した。得られたDNAを鋳型として、配列番号6記載の正方向プライマーと配列番号7記載の逆方向プライマーを用いてPCRを実施した。PCR反応は、Taq DNA polymerase(宝酒造社)を用いて、PCR工程(1サイクルは変性94℃;1分間、アニーリング55℃;2分間、ポリメラーゼ反応72℃;2分間からなる)を30サイクル行い、最後に72℃で5分間反応させた。得られたRT-PCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、約960bpの増幅を認めたプール番号21に含まれるアンピシリン耐性株を約300個/穴になるよう複数の96穴プレートにまき直した。各サブプールに含まれる大腸菌を鋳型として上記のPCRを行ったところ、プール番号1C4に約960bpの増幅を認めたので、さらに1個/穴になるようにアンピシリン耐性株をまき直し上記の条件でPCRを行った。クローン番号21-1C4-5H6に増幅を認めたので、実施例21記載の方法に従いこのクローンの塩基配列をDNAシーケンサーモデル4000(LI-COR社)を用いて決定した。成熟タンパク質をコードすると推測される塩基配列を配列番号9、及びそのアミノ酸配列を配列番号8に示す。このcDNAはヒトSCGFヴァリアントと高い相同性を示すマウスSCGFであった。
実施例23:ラットSCGFのクローン化
配列番号9に記載されるマウスSCGF遺伝子のうち、非翻訳領域をコードすると推測されるDNAをプライマーとして合成し、ラット骨肉腫細胞株ROS-17/2.8-5細胞(受託番号 理研ジーンバンク細胞開発銀行RCB0462)のRNAより調製した一本鎖cDNAを鋳型として、RT-PCRを行った。60mm培養ディッシュ中でコンフルエント状態まで培養したROS-17/2.8-5細胞から、1mlのISOGEN溶液(ニッポンジーン社、富山県)を用いてトータルRNAをマニュアルに従って調製した。このうちトータルRNA5μgから、SuperScriptTM Preamplification Systemキット(GIBCO/BRL社)のプロトコールに従って、20μl反応液中でオリゴdTプライマーを用いて一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖cDNAの一部を鋳型として、100μl反応液中でEX Taq DNA polymerase(2.5単位; 宝酒造社)によるPCRを実施した。正方向プライマーとして配列番号14に記載のオリゴヌクレオチドを、逆方向プライマーとして配列番号15に記載のオリゴヌクレオチドを使用した。合成オリゴヌクレオチドは固相法を原理とする全自動DNA合成機を使用して作製した。各オリゴヌクレオチドの精製は、OPCカートリッジを使用して行った。PCRは、それぞれ正方向プライマー、逆方向プライマー50μMを使用し、PCR工程(1サイクルは変性94℃;1分間、アニーリング55℃;2分間、ポリメラーゼ反応72℃;2分間からなる)を30サイクル行い、最後に72℃で5分間反応させた。得られたRT-PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分画し、ゲルから980bp付近のDNA断片を切り出した。QIA quick Gel Extractionキット(Qiagen社)のプロトコールに従って精製し、TE緩衝液30μlで溶出した。精製したDNA断片9μlをT-Vectorキット(Novagen社)のプロトコールに従ってpT7Blue(R)ベクター1μlに挿入し、大腸菌XL-1 Blue株を形質転換後、生じたアンピシリン耐性コロニーのうちcDNAが組み込まれているものをクローン化した。pT7Blue(R)ベクターに挿入されたRT-PCR産物の塩基配列は、DNAシーケンサーモデル4000(LI-COR社)によって決定した。塩基配列決定のための具体的試薬としては、SequiTherm EXCELTM Long-Read DNAシーケンスキット-LC(Epicentre Technologies社)を使用し、方法についてはキットの指示に従った。塩基配列を決定した5クローンすべてが同一で、成熟タンパク質をコードすると推測される塩基配列を配列番号13、及びそのアミノ酸配列を配列番号12に示す。このcDNAはヒトSCGFヴァリアントと高い相同性を示すラットSCGFであった。
実施例24 動物細胞で発現したヒトSCGFポリペプチドの構造解析
(1)動物細胞でのヒトSCGF発現用プラスミドpAGE-SCGFβの構築
既に報告のある動物細胞用発現ベクターpAGE210(WO96-34016)のHindIII/KpnI処理断片を配列番号1記載のSCGFポリペプチドをコードするDNAと連結することにより、ヒトSCGF発現ベクターpAGE-SCGFβの構築を以下のように行った(図17参照)。
3μgのpAGE210を制限酵素HindIIIとKpnIで消化し、アガロースゲル電気泳動により分画し、約9kbのバンドを切り出した。QIA quick Gel Extractionキット(Qiagen社)のプロトコールに従って精製し、TE緩衝液30μlで溶出し、pAGE210のHindIII/KpnI処理断片を得た。
実施例7記載のヒトSCGF cDNA(クローン番号116-10C)のうち、配列番号1で表される成熟タンパクのみをコードするcDNAをPCR法を利用して調製した。正方向プライマーとして配列番号14に記載のオリゴヌクレオチドを、逆方向プライマーとして配列番号15に記載のオリゴヌクレオチドを使用した。合成オリゴヌクレオチドは固相法を原理とする全自動DNA合成機を使用して作製した。各オリゴヌクレオチドの精製は、OPCカートリッジを使用して行った。クローン116-10C約100ngを鋳型として、50μl反応液中でNative Pfu polymerase(1.25単位;STRATAGENE社)によるPCRを実施した。PCRは、10% DMSO存在下、それぞれ正方向プライマー、逆方向プライマー50μMを使用し、PCR工程(1サイクルは変性94℃;1分間、アニーリング50℃;1分間、ポリメラーゼ反応72℃;2分間からなる)を30サイクル行い、最後に72℃で5分間反応させた。得られたRT-PCR産物をフェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行い、制限酵素HindIIIとKpnIで消化した。該反応液をアガロースゲル電気泳動により分画し、ゲルから770bp付近のDNA断片を切り出し、精製し、TE緩衝液に溶出した。該PCR増幅物のHindIII/KpnI処理断片と上記pAGE210のHindIII/KpnI処理断片とを連結し、大腸菌DH5α株(Clontech社)を形質転換し、図17に示したプラスミドpAGE-SCGFβを得た。なお、図中のpSEはシミアン・ウィルス(simian virus)40(SV40)初期遺伝子プロモーターを示し、Hygはハイグロマイシン耐性遺伝子を示し、dhfrはジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を示し、P1はpBR322由来P1プロモーターを示し、Ptkはヘルペス・シンプレックス・ウイルス(Herpes simlpex virus;HSV)チミジンキナーゼ(tk)遺伝子のプロモーターを示し、SP.BGはラビットβグロビン遺伝子スプライシングシグナルを示し、ABGはラビットβグロビン遺伝子ポリA付加シグナルを示し、ASEはシミアン・ウィルス(simian virus)40(SV40)初期遺伝子ポリA付加シグナルを示す。
(2)動物細胞におけるヒトSCGFポリペプチドの発現
動物細胞へのプラスミドの導入は、宮地らの方法に従い、エレクトロポレーション法(Miyajiet al., Cytotechnology, 3, 133-140, 1990)を用いて行った。上記(1)で得られたpAGE-SCGFβを、dhfr遺伝子を欠損したCHO細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,77, 4216-4220, 1980)4x106個あたり4μg導入後、10mlのMEMα2000-dFCS(5)[dFCSを5%、7.5% NaHCO3を1/40量、200mML−グルタミン溶液(GIBCO/BRL社)を3%、ペニシリン・ストレプトマイシン溶液(GIBCO/BRL社、5000単位/mlペニシリンおよび5000μg/mlストレプトマイシン含有)を0.5%含むMEMα2000培地(GIBCO/BRL社)]に懸濁し、10cmプレート(イワキガラス社)に入れた。37℃の5% CO2インキュベーター中で24時間培養した後、ハイグロマイシン(GIBCO/BRL社)を0.3mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。該培養により生育してきた形質転換株がコンフルエントになった状態で、該形質転換株の細胞を回収した。該細胞をハイグロマイシンを0.3mg/ml、メソトレキセート(MTX)を50nM含むMEMα2000-dFCS(5)培地に1〜2x105細胞/mlになるように懸濁し、F75フラスコ(Greiner社)に2m1分注した後、37℃のCO2インキュベーター中で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性クローンを誘導した。該クローンを、ハイグロマイシンを0.3mg/ml、MTXを200nM含むMEMα2000-dFCS(5)培地に1〜2x105細胞/mlになるように懸濁し、F75フラスコに2ml分注した後、37℃のCO2インキュベーター中で1〜2週間培養して、200nM MTX耐性クローンを誘導した。該200nM MTX耐性クローンを、MTXを200nM含むMEMα2000-dFCS(5)培地に1〜2x105細胞/mlになるように懸濁し、F75フラスコに15ml分注した後、37℃のCO2インキュベーター中で5〜7日間培養し、耐性クローンが80〜100%コンフルエントになった時点でCHO細胞用無血清培地EX-cell 301培地(JRH Biosciences社)15mlと交換し、さらに4日間培養した。細胞を遠心操作により分離し、SCGFポリペプチドを含む培養上精サンプルを得た。
(3)抗SCGFポリクローナル抗体の作製
配列番号1記載のSCGFポリペプチドのうち27番目〜46番目のアミノ酸を含む合成ペプチドAc-Arg-Glu-Trp-Glu-Gly-Gly-Trp-Gly-Gly-Ala-Gln-Glu-Glu-Glu-Arg-Glu-Arg-Glu-Ala-Leu-Cys(Ac-Argは、アセチルアルギニンを表す)を作製した。ペプチドの合成はFmoc法(Fields and Noble, Int. J. Peptide Protein Res., 35: 161-214, 1990)による固相合成法で、自動ペプチド合成機PSSM-8(島津製作所)を用いて同社の合成プログラムに基づき行った。
合成ペプチドは、免疫原性を高める目的で、MBSを架橋剤としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH、CALBIOCHEM社)とコンジュゲートし、免疫原とした。MBSとの反応のため、ペプチドにはあらかじめC末にCysを加えて合成してある。以下に簡単にコンジュゲート作製方法を示す。KLHをPBSに溶かして10mg/mlに調製し、1/10容量の25mg/ml m-マレイミド-ベンゾイル-n-ハイドロキシサクチル(MBS、ナカライテスク社)を滴下して室温で攪拌下30分間反応させた。あらかじめPBSで平衡化したセファデックスG-25カラムでフリーのMBSを除いて得られたKLH-MBS 2.5mgを0.1Mりん酸ナトリウムバッファー(PH7.0)に溶解した合成ペプチド1mgと混合し、室温で3時間、攪拌反応した。反応後、塩化ナトリウム0.5Mを加えたPBSで透析したものを免疫原とした。
以上のように作製したKLH-ペプチド100μgを初回のみアルミニウムゲル2mgおよび百日咳ワクチン(千葉県血清研究所)1×109細胞とともに5週令雌ラット(SD)に投与し、2週間後100μgのKLH-ペプチドを1週間に1回、計4回投与した。最終免疫3日後に全採血し、ポリクローナル抗体を取得した。
(4)ウエスタンブロッテイング
上記(2)で取得されたCHO培養上清をSDS-PAGEにより泳動、分離された蛋白質のゲルからの転写膜への移行は、セミドライブロット法により行い、100%メタノールに20秒、10mM CAPS-10%メタノール-0.03% SDS(pH11.0)溶液に30分以上浸した転写膜(Immobilon Transfer Membranes, Millipore社)を使用し、2mA/cm2電流で2時間行った。転写膜はブロッキング溶液(1% BSAを含むPBSバッファー[137mM NaCl-2.7mM KCl-9.6mM Na2HPO4KH2PO4(pH7.2)]200ml中で1時間振盪させ、PBSバッファーで一度洗った後、PBSにて1/500に希釈した上記(3)で作製した抗SCGFポリクローナル抗体(抗血清)とともにビニールバッグに入れてシールをし、2-3時間室温で振盪させた。さらに、転写膜を0.05% Tween 20を含むPBSバッファーで5分間、2度、PBSバッファーで5分間洗浄した後、パーオキシダーゼ標識された抗ラットIgG抗体(anti-rat immunoglobulin 1.3g/L, DAKO-immunoglobulins a/s社)を2次抗体として用い、0.65g/ml2次抗体を含むPBSバッファー4ml(1/2000)に浸し、ビニールバックに入れ、シールをした後1時間室温にて振盪させた。その後0.05%Tween20を含むPBSバッファーで5分間、2度、PBSバッファーで5分間洗浄した後、発光法(ECL Western blotting detection reagents, Amersham社)により抗体との交叉の見られる蛋白質の検出を行ったところ、分子量43kDa付近に特異的バンドが検出できた。
(5)CHO細胞培養上清からのSCGFの精製
第1段階:硫安分画
上記(2)で得られたCHO細胞培養上清98mLに17.25gの硫酸アンモニウムを添加して撹拌後(硫安終濃度30%)、4℃で2時間放置した。18800Gで30分間遠心し、得られた上清液に硫酸アンモニウムを13.44g添加して撹拌後(硫安終濃度50%)、4℃でさらに2時間放置した。18800Gで30分間遠心して得られた沈殿を9mLの0.5M塩化ナトリウム含有20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)で溶解し、以下に示す亜鉛キレーティングセファロースクロマトグラフィーで精製した。
第2段階:亜鉛キレーティングセファロースクロマトグラフィー
第1段階で得られた50%硫安分画の沈殿溶解液は、0.5M塩化ナトリウム含有20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)で平衡化した亜鉛イオン固定化キレーティングセファロースFastFlowカラム(5mm x 50mm、ファルマシア社)に負荷した。平衡化液で十分洗浄後、0〜0.25Mヒスチジン直線濃度勾配で溶出した。溶出分画について上記(4)で示す抗SCGF抗体結合活性を測定したところ、0.06M〜0.15Mヒスチジンで溶出される分画に活性を認めた。
第3段階:MonoQ陰イオン交換クロマトグラフィー
第2段階で得られた活性分画をセントリコン−10限外ろ過膜(ミリポア社)で遠心濃縮後、濃縮液の10倍容積の10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したMonoQPC1.6/5カラム(1.6mm x 50mm、ファルマシア社)に負荷した。平衡化液で十分洗浄後、0〜1M塩化ナトリウム直線濃度勾配で溶出した。溶出分画について上記(4)で示す抗SCGF抗体結合活性を測定したところ、約0.5M塩化ナトリウムで溶出される分画に活性を認めた。活性分画を2-メルカプトエタノール還元下でドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)後、銀染色(2D-銀染色試薬-II「第一」、第一化学薬品)を行ったところ、図18に示すように分子量43kDa付近にバンドを検出した(レーン1は分子量マーカーで、数字は分子量の大きさを示す。レーン2は、精製したヒトSCGFの蛋白位置を示す(矢印)。)。
(6)CHO細胞培養上清中の精製SCGFの構造解析
精製SCGFのN末端アミノ酸配列はタンパク質化学の常法に従って決定した。即ち、上記(5)で示した精製分画を2-メルカプトエタノール還元下でSDS-PAGEを行った後、P.Matsudairaの方法(J.B.C.262、10035−10038、1987)に従いPVDF膜(ProBlott、PERKIN ELMER社)へ電気的に転写した。転写した膜をクマジーブルー染色し、上記(4)で示したウェスタンブロッティングで陽性の43kDa付近のバンドを切り出し、気相プロテインシーケンサー(Procise Mode1494、PERKIN ELMER社)を用いてメーカー推奨の方法によりN末端アミノ酸配列を解析した。得られたアミノ酸配列は配列番号16に記載したように、遺伝子配列から推定される配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端から22残基目からの配列に一致した。
発明の効果
本発明は、造血幹細胞に対する増殖活性を示す新規のポリペプチド、該ポリペプチドをコードする遺伝子、及び該ポリペプチドと特異的に反応する抗体、並びに前記遺伝子を単離するための方法及びそれに使用するベクターを提供する。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:245
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:2
配列の長さ:1196
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:Homo Sapiens
組織の種類:末梢血白血球
細胞の種類:骨髄系芽球細胞
セルライン:KPB-M15
直接の起源
ライブラリー名:λSHDM(KPB)
クローン名:116−10C
生物的活性:赤芽球バースト増強活性(BPA活性)
顆粒球−マクロファージコロニー増強活性(GPA活性)
配列の特徴
特徴を表わす記号:polyA signal
存在位置:1097..1102
特徴を決定した方法:S
特徴を表わす記号:polyA site
存在位置:1129
特徴を決定した方法:E
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:3
配列の長さ:45
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:4
配列の長さ:323
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直線状
配列の種類:タンパク質
配列:
Figure 0004086904
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:5
配列の長さ:969
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:Homo Sapiens
組織の種類:骨髄
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:6
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:7
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:8
配列の長さ:328
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:9
配列の長さ:1399
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:マウス
組織の種類:頭蓋冠
細胞の種類:ストローマ細胞
セルライン:MC3T3-G2/PA6
直接の起源
ライブラリー名:AMoPR(PA6)
クローン名:21-1C4-5H6
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:10
配列の長さ:11
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:11
配列の長さ:8
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:12
配列の長さ:328
配列の型:アミノ酸
鎖の数:直鎖状
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:13
配列の長さ:984
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:ラット
細胞の種類:骨芽細胞腫瘍細胞
セルライン:ROS-17/2.8-5
配列
Figure 0004086904
Figure 0004086904
Figure 0004086904
配列番号:14
配列の長さ:24
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:15
配列の長さ:24
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004086904
配列番号:16
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質のN末端部分
配列
Figure 0004086904
【図面の簡単な説明】
図1:cDNA合成の概要を示す図。
図2:CDMflitの構築過程を示す図。
図3:SHDMの構築過程を示す図。
図4:λCDMおよびλSHDMの構築過程を示す図。
図5:COS-1細胞により発現された本発明のポリペプチドの活性を示す図。
図6:KPB-M15細胞により産生された本発明のポリペプチドの活性を示す図。
図7:CST/116-10C融合タンパク質発現ベクターの構築を示す図。
図8:抗SCGFモノクローナル抗体の、本発明のポリペプチドの活性に対する中和効果を示す図。
図9:本発明のポリペプチドのDEAE−セファセルによる分画を示す図。
図10:本発明のポリペプチドのオクチル−セファロースによる分画を示す図。
図11:本発明のポリペプチドの銅キレーティングセファロースによる分画を示す図。
図12:本発明のポリペプチドのConAセファロースによる分画を示す図。
図13:本発明のポリペプチドのWGAアガロースによる分画を示す図。
図14:本発明のポリペプチドのブルーセファロースによる分画を示す図。
図15:本発明のポリペプチドのレッドセファロースによる分画を示す図。
図16:本発明のポリペプチドのセファクリルS-200HRによる分画を示す図。
図17:pAGE-SCGFβの構築過程を示す図。
図18:ヒトSCGFをCHO細胞で発現した培養上清を精製し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った図。

Claims (25)

  1. ヒトに由来するポリペプチドであって、ヒトの骨髄細胞に対する赤芽球バースト増強活性または顆粒球−マクロファージコロニー増強活性を有、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で示される分子量が約43kDaであって、配列番号1もしくは4で表されるアミノ酸配列、または、配列番号1もしくは4で表されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
  2. マウスに由来するポリペプチドであって、マウスの骨髄細胞に対する赤芽球バースト増強活性または顆粒球−マクロファージコロニー増強活性を有、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で示される分子量が約43kDaであって、配列番号8で表されるアミノ酸配列、または、配列番号8で表されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
  3. 請求項において、配列番号1で表されるアミノ酸配列の22−245残基を含む、請求項記載のポリペプチド。
  4. 請求項において、配列番号4で表されるアミノ酸配列の22−323残基を含む、請求項記載のポリペプチド。
  5. 請求項において、配列番号8で表されるアミノ酸配列の22−328残基を含む、請求項記載のポリペプチド。
  6. 請求項1、およびのいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする遺伝子。
  7. 請求項または記載のポリペプチドをコードする遺伝子。
  8. 配列番号2で表される塩基配列を有する請求項記載の遺伝子。
  9. 配列番号5で表される塩基配列を有する請求項記載の遺伝子。
  10. 配列番号9で表される塩基配列を有する請求項記載の遺伝子。
  11. 請求項記載の遺伝子を導入したEscherichia coli SHDM11610C(FERM BP-5849)。
  12. 請求項記載の遺伝子を導入したEscherichia coli HSCGF(FERM BP-5986)。
  13. 請求項10記載の遺伝子を導入したEscherichia coli MSCGF(FERM BP-5987)。
  14. 配列番号2で表される塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ赤芽球バースト増強活性または顆粒球−マクロファージコロニー増強活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
  15. 配列番号5で表される塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ赤芽球バースト増強活性または顆粒球−マクロファージコロニー増強活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
  16. 配列番号9で表される塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ赤芽球バースト増強活性または顆粒球−マクロファージコロニー増強活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
  17. 請求項6〜16のいずれか1項に記載の遺伝子を含むベクター。
  18. 請求項17記載のベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
  19. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドと特異的に反応する抗体。
  20. 請求項19記載の抗体を産生する微生物、動物細胞又はヒトを除く動物。
  21. 請求項6〜16のいずれか1項に記載の遺伝子を含む細胞を培地に培養し、培養物中に請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物からポリペプチドを採取することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
  22. 陰イオン交換担体、疎水性交換基を有する担体、ゲル濾過担体、色素交換基を有するアフィニティー担体、レクチンアフィニティー担体又は金属キレート担体からなる群から選択された一つまたは二つ以上の担体を用いて、請求項21記載の方法で得られた培養物から請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドを分離精製することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドの分離精製法。
  23. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
  24. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリペプチドと、G−CSF、GM−CSF、SCF、flk−2/flt3リガンド、IL−1、IL−3およびIL−6の少なくとも1のサイトカインとを有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
  25. ヒトから骨髄、末梢血または臍帯血から造血幹細胞を採取し、請求項1からのいずれか1項に記載のポリペプチドと、G−CSF、GM−CSF、SCF、flk−2/flt3リガンド、IL−1、IL−3およびIL−6の少なくとも1のサイトカインとを用いて、採取された造血幹細胞を増殖することを特徴とする造血幹細胞の増殖方法。
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