JP4086748B2 - 水田作業車 - Google Patents

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本発明は、前車輪と後車輪を有する走行機体の後方に作業装置を備えて、前車輪を、ボス部と、タイヤを有するリム部と、ボス部とリム部とに亘って連結される複数のスポークとを備えて構成してある水田作業車に関する。
従来、上記のような水田作業車においては、走行時に田面下に車輪の下部が没しており、前車輪のスポークとリム部の連結部分が田面から上昇する際に、前車輪のスポークとリム部の連結部分に泥が付着することがある。走行とともに付着した泥が増加し、付着した泥が土塊となって上方から田面に落下し田面を荒らしたり、土塊が、前車輪の外側に落下すると既植の苗を倒すといったことがある。このような課題に対して、以下のような水田作業車が考えられている。すなわち、例えば特許文献1では前車輪の外側にホイールキャップ(特許文献1の図1,3中の29)を設けることで、前車輪の外側に泥が付着しにくいようにしている。この構成であれば、前車輪のスポークとリム部の連結部分には泥が付着しにくいが、ホイールキャップには依然として泥が付着しやすいものとなっていた(特許文献2の図6)。この問題に対して、特許文献2に開示されているように、前車輪のホイールキャップに通気口(特許文献2の図1,3,4,5の23)を複数個形成して、泥の付着を防止したものがある。
実開平1−107602号公報(図1,3の29)
特開2000−4617号公報(図1,3,4,5の23)
上記従来の構成によれば、前車輪の舵取り作用によって走行機体が旋回動作する際には、田面下に没した前車輪のホイールキャップにより泥が押し分けられるため、走行負荷が増大するといった不具合が発生するとともに、条間を押し広げたり、田面を大きく荒らしてしまうことがあった。特に、深い圃場ではこのような傾向が強くなるものであった。
そこで本発明は、前車輪と後車輪を有する走行機体の後方に作業装置を備えて、前車輪を、ボス部と、タイヤを有するリム部と、ボス部とリム部とに亘って連結される複数のスポークとを備えて構成しながら、スポークとリム部の連結部分に泥が付着しにくく、かつ、機体旋回時の田面下の泥に対して泥押し作用が生じにくい水田作業車を提供することを目的としている。
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、前車輪と後車輪を有する走行機体の後方に作業装置を備えて、前車輪を、ボス部と、タイヤを有するリム部と、ボス部とリム部とに亘って連結される複数のスポークとを備えて構成してある水田作業車において、前記各スポーク間の空間に板状部材を前記リム部とボス部から離れて取り付けてあるとともに、
前記板状部材を、各スポークの回転軌跡に沿う板面を有した平板状に形成して、その板状部材の、各スポーク同士の間に位置する板部分を、車輪軸線方向におけるスポークの幅内に位置するように配設してあることにある。
(作用)
本発明の第1特徴によると、前車輪の各スポーク間の空間に板状部材をリム部から離れて取り付けてあるので、走行時に田面下に前車輪の下部が没した状態で旋回しようとするときに舵取りのため前車輪を進行方向に対して斜めに向くように操舵すれば、リム部と板状部材との空隙を泥が通り抜けることになり、泥押し作用が少なくなる。また、リム部とスポークの連結部分に板状部材が隣設するように、例えば図3に示すように構成されていれば、前車輪のリム部とスポークの連結部分に泥が付着しにくい。
また、板状部材を前車輪のボス部からも離れて取り付けてあるので、ボス部と板状部材との間に空隙が存在することになり、前車輪の側面に付着した泥が前車輪の回転とともに前車輪のボス部へ向って移動した場合、泥が空隙を介して前車輪の内部側に抜け落ちることも可能となり、前車輪のボス部周辺に泥が堆積して土塊となるおそれが少なくなる。
泥が付着しやすい空間が板状部材によってリム部の幅方向に2分割されるので、泥が付着できる領域が細分化されることになり、前車輪の内側、外側ともに比較的大きな泥が付着しにくくなる。
(効果)
本発明の第1特徴によると、泥押し作用が低減することから、機体旋回時の田面の荒らしや走行負荷の増大が抑制され、水田作業車の旋回操作性が向上する。また、前車輪のリム部とスポークの連結部分に泥が付着しにくくなるので、付着した泥が土塊となって上方から田面に落下し田面を荒らしたり、土塊が前車輪の外側に落下して既植の苗を倒すといった不具合が少なくなる。
泥が前車輪の内部側に抜け落ちることも可能となり、前車輪のボス部周辺で泥が堆積して土塊となるおそれが少なくなるので、前車輪のボス部周辺から土塊が落下して田面を荒らしたり、既植の苗を倒すといった不具合が少なくなる。
前車輪の内側、外側ともに比較的大きな泥が付着しにくくなるので、リム部付近に付着する泥やボス部周辺に付着する泥は比較的小さな泥となるので、土塊となりにくく、前車輪のリム部とスポークの連結部分やボス部周辺から土塊が落下して田面を荒らしたり、既植の苗を倒すといった不具合が少なくなる。
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴において次のように構成することにある。
板状部材を前車輪に対して着脱自在に構成してある。
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
板状部材を前車輪に対して着脱自在に構成してあるので、前車輪に板状部材を装備しない状態を設定することができる。これにより、本発明の第2特徴によると、比較的硬質で粘りある土質の圃場において水田作業車で走行作業をする場合、旋回操作性を優先させたい時などに、前車輪に板状部材を装備しない状態が好ましい場面では、板状部材を装備しない状態を設定すればよい。
(効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
圃場の状態に対応した水田作業車の前車輪の設定を選択することができ、作業性を向上させることができた。
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に水田作業車の代表例である乗用型田植機を示している。乗用型田植機は、駆動操向型の前車輪1、駆動型の後車輪2で支持された走行機体5の前部にエンジン6、ミッションケース7、運転操縦部8を配するとともに、操縦席9を挟んで後部に施肥装置10及び、リンク機構3を介して昇降自在に4条植型式の苗植付け装置4(本発明の作業装置に相当)を設けて構成されている。
図2に示すように、前車軸ケース11を、前車軸12及び第1ベベルギヤ伝動機構13を収納する横向きケース14と、縦向き伝動軸15及び第2ベベルギヤ伝動機構16を収納する縦向きケース17と縦向きケース17の内面開口を塞ぐ蓋材18とで構成してある。縦向きケース17の上端部にナックルアーム19が取り付け固定されており、縦向きケース17が横向きケース14に対して縦向き伝動軸15の軸芯周りで左右揺動可能に構成してある。縦向き伝動軸15の軸芯Pの下向き延長線が前車輪1の接地点Gに一致又は略一致するように、前車輪1を取り付けてある。
前輪駆動軸20を蓋材18と縦向きケース17とに亘って架設するとともに、縦向きケース17から外側に突出した部分にボルト21によってボス部22を介してディスク状のハブ23を取り付け固定している。
駆動操向型の前車輪1は、前輪駆動軸20にボス部22を介して取り付け固定される略三角ディスク状のハブ23と、そのディスク状のハブ23の外周側に位置するゴム製のラグ付きソリッドタイヤ24と、そのソリッドタイヤ24を外側に装着したパイプ製のリム部25と、ハブ23とリム部25とを連結するパイプ状の複数本のスポーク26と、で構成されている。
図3及び図5に示すように、前車輪1にはハブ23とリム部25との間に存在する空隙を部分的に塞ぐ複数枚に分割された板状部材29がボルト27及びナット28を介して着脱自在に取り付けられている。それぞれの板状部材29は図5に示すように、その直線部分30の両端に取り付け部分31を有しており、両端の取り付け部分31の幅方向に断面視V字状の2つの突部32,32が板状部材29の裏表方向に互いに逆向きに突出するように設けてある。各V字状の突部32の周辺には取り付け穴33が設けてある。隣接する板状部材29の突部32,32を向い合わせた状態で、スポーク26を前車輪1の内側及び外側から挟み込んだ状態で取り付け穴33を介してボルト27及びナット28により締め付け固定している。
上記の構成により、前車輪1におけるリム部25とハブ23との空隙を部分的に塞ぎながらもリム部25の近傍及びボス部22の周辺に空隙を形成することになるので、走行時に田面下に前車輪1の下部が没した状態で旋回しようとするときに舵取りのため前車輪1を進行方向に対して斜めに向くように操舵すれば、リム部25と板状部材29との空隙を泥が通り抜けることになり、泥押し作用が低減する。また、リム部25とスポーク26の連結部分に板状部材29が隣設されるように構成されているので、前車輪1のリム部25とスポーク26の連結部分によって持ち上がった泥は、前車輪の外側には落下しにくくなる。また、ボス部22周辺に空隙が存在するので、泥が前車輪1の内側に抜け落ちることも可能となり、また、ボス部22周辺は付着面が少なくなっているので、ボス部22周辺に泥が堆積して土塊となるおそれが少なくなる。
また、図4に示すように、板状部材29を、前車輪1の幅方向の中央部に位置するように取り付けてあるので、リム部25で泥が付着しやすい領域が板状部材29によってリム部25の幅方向に2分割されるので、泥が付着できる領域が細分化されることになり、前車輪の内側、外側ともに比較的大きな泥が付着しにくくなり、付着した泥は土塊となりにくい。
さらに、図4及び図5に示すように、板状部材29を前車輪1に対して取り付け穴33を介してボルト27及びナット28により締め付け固定しているので、ボルト33及びナット28を取り外せば、前車輪1に板状部材29を装備しない状態を設定することができる。比較的硬質で粘りある土質の圃場において乗用型田植機での走行作業時に、板状部材29が受ける泥の抵抗による負荷、あるいは舵取り操作された前車輪1が引き起こす掻き分け作用が問題となり旋回操作に不都合がある場合には、前車輪1に板状部材29を装備しない状態を設定することにより、旋回操作時に生じる上述の問題を回避することができる。このように、圃場の状態に対応して乗用型田植機の前車輪1の設定を選択することができるので、作業性の向上が図れる。
〔発明の実施の別形態〕
(1) スポーク26及びリム部25としては、パイプ状のものでもなくても良く、棒状のものでもよい。
(2) 縦向き軸芯Pを下向きに延長した線と前車輪1の接地点とが必ずしも一致するものでなくてもよく、接近するものでもよい。
(3) 板状部材29の両端の取り付け部分31の幅方向に沿った突部32は断面視V字でなくても他の断面視形状でもよい。
(4) 作業装置4としては苗植付け装置のほか、直播装置でもよいし、薬剤散布装置や除草装置などの中間作業装置でもよい。
水田作業車の全体側面図 前車輪の取り付け・伝動構造を示す縦断正面図 板状部材を取り付けた前車輪を示す側面図 板状部材の取り付け状態を示すスポークの断面図 板状部材の取り付け方法を説明する斜視図
符号の説明
1 前車輪
2 後車輪
4 作業装置
5 走行機体
22 ボス部
24 タイヤ
25 リム部
26 スポーク
29 板状部材

Claims (2)

  1. 前車輪と後車輪を有する走行機体の後方に作業装置を備えて、前記前車輪を、ボス部と、タイヤを有するリム部と、前記ボス部と前記リム部とに亘って連結される複数のスポークとを備えて構成してある水田作業車であって、
    前記各スポーク間の空間に板状部材を前記リム部とボス部から離れて取り付けてあるとともに、
    前記板状部材を、各スポークの回転軌跡に沿う板面を有した平板状に形成して、その板状部材の、各スポーク同士の間に位置する板部分を、車輪軸線方向におけるスポークの幅内に位置するように配設してある水田作業車。
  2. 前記板状部材を前記前車輪に対して着脱自在に構成してある請求項1記載の水田作業車。
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