JP4086225B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体中に熱伝導率の異なる部分を形成し、記録領域とその両側で熱伝導率が異なる構造とすることでクロストークなどを低減した高密度光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報記録媒体としては、コンパクトディスクに代表されるようにディスク状情報記録媒体が良く知られているが、マルチメディア、情報ネットワークの時代になりさらなる大容量の記録システムが必要とされている。情報記録媒体には読み出し専用、追記型、書き換え型があるが、読み出し専用としてはCD−ROM、DVD−ROM、追記型としてCD−Rなど、書き換え型としてCD−RWのような相変化記録方式、またはMOのような光磁気記録方式のものが実用化されている。
【0003】
情報技術の進歩に伴い、情報量が飛躍的に増加し、情報記録媒体に対する高密度化および大容量化への要求は高まっている。高密度化の方法として、同じ情報量が記録される面積を小さくする方法、つまり記録ピットを小さくする方法がある。記録ピットを小さくするには、光をより小さく絞り光のスポットを小さくする必要がある。光のスポット径は波長をλ、レンズの開口率をNAとするとλ/NAに比例するため、スポット径を小さくするには、波長を小さくするか開口率を大きくすることが行なわれている。最近では波長0.65μmの光を利用したDVDが実用化を迎え、更に波長0.4μm程度の光を用いて高密度化を目指す開発が盛んに行なわれている。
【0004】
記録ピットを小さくするとともにピットの間隔を小さくし、線記録密度、トラック密度を大きくすることも同時に行なう必要がある。しかし、トラック方向の密度を大きくすることにより、となりのトラックに記録されている情報を消してしまったり(クロスイレース)、となりのトラックにまで情報を書きこんでしまったり(クロスライト)することが起こり、問題となっている。そこで隣接トラックのマークが消去されにくくするために、隣接トラックにあるマークが光吸収し発熱するのを押さえる層構成にするなどの方法が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらは層構成が複雑になり記録特性とクロストークの抑制を両立することが難しくなる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−90491号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題に鑑み、本発明の目的は、記録領域の両端に熱伝導率の異なる領域を設けることにより隣接トラックへの影響を防ぎ、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的としている。
具体的には、請求項1では、熱伝導率の異なる領域を陽極酸化アルミニウムの構造を用いて作り、光記録媒体内の熱伝導率分布を生じさせ、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項2では、陽極酸化アルミニウムの構造を用いて、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項3では、陽極酸化アルミニウムの構造を用いて、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項4では、陽極酸化アルミニウムの孔中に金属を入れることで熱伝導率の違いを大きくし、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項5では、Agを用いることで、より特性の向上を図ることを目的とする。
請求項6では、相変化材料を記録層に用いることにより、記録特性のより優れた光記録媒体で、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項7では、層構成を限定することで、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項8では、記録層材料の限定により、記録特性のより優れた光記録媒体で、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
請求項9では、基板を限定し、クロストーク、クロスイレースなどを抑制することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、ディスクの構成要素として熱伝導率の異なる構造を有する層を設けることにより、記録部分に隣接する部分に影響が及ぶのを防ぐことを可能とした。
以下、本発明の構成例を示し、詳細に説明する。
請求項1記載の発明は、光を照射することにより記録層に記録を行なう光記録媒体において、記録される部分の両端に熱伝導率の異なる領域を設けた光記録媒体に関する。光記録媒体は、円周状に形成されたトラックに沿って記録を行なうが、そのトラックの幅よりも光のスポット径が大きくなると、記録時に隣接トラックにも光が照射されることになり、また、隣接トラックも温度上昇することにより隣接トラックの情報が消去されてしまったり(クロスイレース)、隣接トラックにも記録されてしまったり(クロクライト)という影響を及ぼすようになる。そこで、隣接トラックとの境目である記録部分の両端に熱伝導率の異なる領域を設けることにより、熱が隣接トラックに影響を及ぼしにくくすることにより、クロスイレース、クロスライトを防ぐことができる。記録される部分の両端には、記録部分とは異なる物質を配置するなどして熱伝導率の異なる領域を形成する。
【0008】
そして、熱伝導率の異なる領域を陽極酸化アルミニウムの層としたものである。陽極酸化アルミニウムは六角柱状の構造(セル)が集まった多孔質の膜である。図1に示したように上面から見ると六角形状の構造(セル(10))の中心に孔(2)が開いているものが集まっている。図2に断面図を示したが、柱状構造で中心に孔(2)が開いている。また、断面はこのような基板上に形成し、その上に記録層などを形成する。陽極酸化アルミニウム層は六角柱状構造の中心に孔が開いた構造をしているため、その上面に記録層などを形成すると微細な孔の場合は、孔をふさぐように膜が形成される。また、あらかじめ孔中に金属などを充填し孔をふさいでおいても良い。陽極酸化アルミニウム層の孔の部分と酸化物の部分とで熱伝導率が異なるため、その上面に形成された記録層に記録することにより放熱状態が異なる。例えば、孔の上に位置する記録層に記録すると孔から外れた部分では、陽極酸化膜が放熱層として作用するため記録マークが広がることなく記録が可能である。
【0009】
請求項2記載の発明は、陽極酸化アルミニウムのセルの上または下に形成された領域を一つの記録領域とする光記録媒体に関する。陽極酸化アルミニウム膜は、セルという柱状構造が存在する。その柱状構造同士の境界は熱伝導率が境界以外の部分とは異なるため熱の拡散を押さえることが可能となる。セルの上、または下に記録層を形成しセルの一つ分の領域を一つの記録領域とすることにより、隣接部分への影響を抑えることが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明は、陽極酸化アルミニウムの孔上に形成された記録層に記録する光記録媒体に関する。陽極酸化アルミニウム層の上面に記録層を形成し、陽極酸化アルミニウムの微細孔上に光を集束させて記録を行なう。微細孔上とそれ以外の部分は、熱伝導率が異なるため熱が拡散しにくく、隣接部分への影響を抑えることができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、陽極酸化アルミニウムの孔に金属を充填した光記録媒体に関する。陽極酸化アルミニウム膜の孔に電気化学的な方法により金属を析出させることができる。孔の中に金属を充填し、その上面に記録層などを形成する。その記録層に記録することができる。陽極酸化アルミニウム層は金属が充填された孔の部分と酸化アルミニウムの部分とで熱伝導率が大きく異なる。そのためその上面に形成した記録層からの熱伝導の状態も大きく変化することになり、孔の周辺の酸化アルミニウム部分の上面は、記録されにくくなる。そのため隣接トラックへの影響を抑えることが可能となる。
【0012】
請求項5記載の発明は、孔の金属がAgである光記録媒体に関する。Agは熱伝導率が高いため、Agを孔に充填することにより孔の部分と孔以外の部分とで熱伝導率が大きく異なる。その上面に記録層などを形成することにより情報を記録するトラック部分と隣接トラックの部分との間に熱伝導率の大きく異なる部分を形成することができ、クロスイレース、クロスライトを抑制することが可能となる。
【0013】
請求項6記載の発明は、記録層として相変化材料の層を用いた光記録媒体に関する。相変化記録は、到達温度、冷却速度などが記録特性に大きく影響を及ぼす。急冷状態を作ることでアモルファス構造を実現している。そのため、記録領域の中で熱伝導率が異なる部分があると熱伝導率の異なる部分では、記録状態が異なることになる。そのため隣接トラックへの影響を抑制することが比較的容易に可能である。
【0014】
請求項7記載の発明は、記録層を、アルミニウム層、陽極酸化アルミニウム層、保護層、前記記録層、保護層の順の層構成で設けてなる光記録媒体に関する。記録を行なう場合、記録層に光を照射することにより記録を行なう。相変化記録などでは熱の放熱速度も重要である。そこで記録層を最適な保護層ではさみこむことにより記録特性が向上し、制御しやすくなる。また、アルミニウム層の上面に陽極酸化アルミニウム層を設けその上面に保護層ではさみこんだ記録層を形成することにより隣接トラックへの影響を抑え、良好に記録が可能な光記録媒体が実現できる。
【0015】
請求項8記載の発明は、記録層材料としてSbおよびTeを含む相変化材料を用いた光記録媒体に関する。SbおよびTeを含む相変化材料は、記録マークの大きさを制御しやすく高密度記録に適した材料である。
【0016】
請求項9記載の発明は、基板がアルミニウムよりなる光記録媒体に関する。基板をアルミニウムとすることにより基板上に直接陽極酸化アルミニウム膜の形成が可能となり、また、基板自体が反射放熱の機能を有するため光記録媒体の層構成が簡素化できる。アルミニウム基板は剛性が高く、平滑性も高くできるので高密度の光記録媒体を実現するために適している。
【0017】
本発明における、例えば、酸化アルミニウムのセル状のパターンは、アルミニウムを陽極酸化することで形成することができる。具体的には、例えば硫酸浴中に陽極にアルミニウム、陰極に炭素を電極として用いて電極間に直流電圧を印加する。アルミニウムが陽極酸化され、中心に孔のあいた構造を持つセルが蜂の巣状に形成される。セルの中で孔の部分と酸化アルミニウムの部分では、熱伝導率が異なることを利用したものである。このような構造をあらかじめ作り、その上面などにスパッタ法により記録膜などを製膜することによりディスクを作成する。また、陽極酸化により形成した陽極酸化アルミニウムを陰極に、炭素などを陽極にし、例えば硫酸銅の水溶液中で直流電圧を印加することにより、メッキと同様の原理により陽極酸化アルミニウム膜の孔中に銅を析出させ、孔中に銅が充填された陽極酸化アルミニウムを形成できる。当然、銅の部分と酸化アルミニウムの部分とでは、熱伝導率が大きく異なるため、この構造の上などに記録層を形成し、熱伝導率の違いを利用することになる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。
実施例1
請求項1の実施例を示す。
図3には陽極酸化膜の表面から見た模式図を示すが、図の中で示したように陽極酸化アルミニウムの構造をトラック(4)として用いる。その上面にAgInSbTeからなる記録層を15nm形成し、さらにZnS・SiO2層を20nm形成し光記録媒体とした。その媒体に、波長405nm、開口率NA0.85のピックアップを用いて6mWの出力で記録、再生を行なった。隣接トラックには影響がなく記録を行なうことができた。一つのトラックのみ記録を行なった場合のジッターは7.2%であった。隣接トラックにも記録を行なった場合、ジッターは7.5%程度で隣接トラックにはほぼ影響を及ぼすことなく記録を行なうことができた。陽極酸化アルミニウム膜は、炭素板を負電極、アルミニウムを正電極として直流電圧を印加することにより形成した。
【0019】
実施例2
請求項2の実施例を示す。
図4に光記録媒体の層構成の断面図を示した。基板(5)上にアルミニウム層(6)を形成し、陽極酸化により陽極酸化アルミニウム層(7)を形成する。その上面にAgInSbTeからなる記録層(8)を15nm、ZnS・SiO2からなる保護層(9)を20nm形成する。図5に陽極酸化アルミニウム層(7)と記録層(8)の部分だけの拡大図を示した。陽極酸化アルミニウム層(7)のセル上に一つのマークを記録する。記録層の上面から見た状態を図6に示した。一つのセル上に一つのマーク(11)を記録するようにした。隣接トラックへの記録によるジッターの変化は1%以下で、これによりセル(10)の境界では熱障壁のような役割をすることにより隣接トラックにへ影響を与えないで記録を行なうことができた。
【0020】
実施例3
請求項3、4、5の実施例を示す。
陽極酸化アルミニウム層の孔の中に金属を析出させた。バイアスをかけた交流電圧を印加することにより孔中にAgを電解析出させた。その上面に記録層、保護層を形成させた光記録媒体に記録を行なった。記録層には相変化記録層を用いた。金属を析出させた孔上の部分のみ相変化がおきることが確認された。それによりマークの大きさを孔の大きさまで縮小することが可能となり、トラックピッチを小さくすることが可能となる。
【0021】
実施例4
請求項6、8、9の実施例を示す。
図7のように、基板としてアルミニウム基板(12)を用い、陽極酸化させることにより陽極酸化アルミニウム層(7)を形成した。陽極酸化アルミニウム層(7)の孔中にAg(13)を電界析出させ、その上面に保護層(9)としてZnS・SiO2層を20nm、記録層(8)としてGeSbTeを15nm、更に保護層(9)としてZnS・SiO2層を20nm形成することで光記録媒体とした。
【0022】
実施例5
請求項7の実施例を示す。
図8に示したように、基板(5)、アルミニウム層(6)、陽極酸化アルミニウム層(7)、保護層(9)、記録層(8)、保護層(9)の順で形成し光記録媒体とする。保護層(9)としてZnS・SiO2を用いた。SiNなどの窒化物を用いることもできる。記録層はSbTeにGe、Gaを添加した相変化材料を用いた。光を表面の保護層側から入射して記録、再生を行なった。
【0023】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明より明らかなように、請求項1の発明では、比較的簡単な構成で隣接トラックへの影響を防げることが可能となり、隣接トラックへの影響を抑制可能な光記録媒体を提供できる。また、請求項2の発明では、記録マークの広がりを防ぐことが可能となる。また、請求項3記載の発明では、形状を利用し隣接トラックへの影響をより抑えることができるようになる。また、請求項4の発明では、金属を用いることで熱伝導率差を大きくできる。また、請求項5の発明では、Agを用いることで熱伝導率の差が大きくなり、効果が高まる。また、請求項6の発明では、良好な記録再生特性が得られる。また、請求項7の発明では、層構成を限定することで記録特性の向上と記録マークの広がりを抑える効果が両立できる。また、請求項8記載の発明では、材料を限定することで良好な記録特性が得られる。また、請求項9記載の発明では、基板をアルミニウムとすることで構成する層数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陽極酸化アルミニウムの模式図である。
【図2】陽極酸化アルミニウムの断面を示す模式図である。
【図3】陽極酸化アルミニウムの模式図である。
【図4】光記録媒体の層構成の一例を示す断面図である。
【図5】光記録媒体の層構成の一例の断面の拡大図である。
【図6】記録層を上から観察した図である。
【図7】光記録媒体の層構成の他の例を示す断面の模式図である。
【図8】光記録媒体の層構成の他の例を示す断面の模式図である。
【符号の説明】
1 陽極酸化アルミニウム膜
2 孔
3 アルミニウム
4 トラック
5 基板
6 アルミニウム層
7 陽極酸化アルミニウム層
8 記録層
9 保護層
10 セル
11 マーク
12 アルミニウム基板
13 Ag
Claims (9)
- 照光を照射することにより記録層に記録を行なう光記録媒体であって、該記録層の上面または下面に熱伝導率の異なる部分が交互に存在する層が設けられ、
前記熱伝導率の異なる部分が交互に存在する層として、陽極酸化アルミニウムの層を含むことを特徴とする光記録媒体。 - 前記陽極酸化アルミニウムの六角柱状構造体の上または下に形成された領域を一つの記録領域とすることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記陽極酸化アルミニウムの孔上に形成された記録層に記録することを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- 前記陽極酸化アルミニウムの孔に金属を充填したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記孔の金属がAgであることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体。
- 前記記録層として相変化材料の層を用いたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記記録層を、アルミニウム層、陽極酸化アルミニウム層、保護層、前記記録層、保護層の順の層構成で設けてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記記録層材料として、SbおよびTeを含む相変化材料を用いたことを特徴とする請求項7に記載の光記録媒体。
- 前記記録層は基板上に設けられており、前記基板がアルミニウムよりなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の光記録媒体。
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