JP4083407B2 - 加工装置の主軸支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工装置の主軸に予圧を与えながら当該主軸を支持するための構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、加工装置に設けられる主軸は、その前部及び後部が例えば転がり軸受を介してケーシング側に回転可能に支持される。このような加工装置では、前記転がり軸受に適正な剛性を付与すべく前記主軸に予圧を付与することが好ましい。その一方、前記主軸その他の装置要素が加工時に熱膨張することによって大きな応力が生じないように、その熱膨張を逃がす構造を採用する必要がある。
【0003】
そこで従来は、例えば特開平10−225802号公報に示されるように、ケーシングに対して軸方向に変位可能な回転保持部を設け、この回転保持部に前記主軸の後部を軸受を介して回転可能に保持するとともに、当該回転保持部に予圧付与用のばねの弾発力を作用させるようにした構造が用いられている。この構造によれば、前記ケーシングに対する回転保持部の相対変位によって主軸等の熱膨張を吸収するとともに、前記ばねの弾性係数を適当に設定することによって前記主軸及び軸受にその特性に見合った好適な予圧を付与することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記加工装置では、主軸を保持する回転保持部がケーシングに対して軸方向に相対変位可能であり、かつ、ばねによって弾性的に付勢された構造となっているので、加工中、前記主軸が高速回転しながら工作物に押付けられるときに前記ばねの伸縮を伴って主軸に軸方向の振動(いわゆるビビリも含む)が発生しやすく、かかる振動によって加工面の面精度が著しく低下するおそれがある。
【0005】
このような振動を抑制する方法として、前記ばねの弾性係数を高くすることが考えられるが、このように弾性係数を高くすると主軸及び軸受に付与される予圧も高くなるので、軸受の特性に見合った好適な予圧が得られなくなる。また、前記予圧を過度に高くすると軸受の寿命をいたずらに低下させる結果を招く。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、主軸及びこれを支持する軸受に好適な予圧を与えながら、主軸の軸方向の振動を有効に抑制することができる加工装置の主軸支持構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、前端に工具装着部をもつ主軸が軸受を介してケーシングに回転可能に支持される加工装置において、前記ケーシングに前記主軸と平行な方向に相対変位可能に設けられ、前記主軸を軸受を介して回転可能に保持する回転保持部と、この回転保持部と前記ケーシングとの間に設けられ、当該回転保持部に弾発力を伝えることにより前記主軸及び軸受に予圧を与える予圧付与ばねとを備えるとともに、前記回転保持部とケーシングとの間に当該ケーシングに対する回転保持部の軸方向の振動に抵抗を与える制振部材が設けられているものである。
【0008】
この構成によれば、予圧付与ばねの弾発力によって回転保持部さらには主軸及び軸受に好適な予圧が付与されるとともに、主軸及び回転保持部が軸方向に振動する際には制振部材によってその振動に抵抗が与えられることにより、当該振動が抑制される。
【0009】
さらに、本発明では、前記制振部材が、前記回転保持部とケーシングのいずれか一方に固定され、他方に前記主軸の軸方向と平行な方向に相対変位可能となるように圧接するものであり、この制振部材の圧接による摩擦抵抗で前記ケーシングに対する回転保持部の軸方向の振動が抑制されるように構成されている。
【0010】
この構成によれば、ダンパ等の特別な機械要素を用いることなく、摩擦抵抗を利用した簡素な構成で回転保持部及び主軸の振動を抑制できる。
【0011】
例えば、前記制振部材は前記主軸の軸方向と平行な方向に延びる圧入部を有し、前記回転保持部またはケーシングに前記主軸の軸方向と平行な方向に開口する圧入孔が設けられ、この圧入孔に前記圧入部が前記主軸の軸方向と平行な方向に相対変位可能となるように圧入されている構成とすれば、コンパクトな構造で、前記圧入部と圧入孔との間に大きな摩擦力を生じさせることが可能となる。しかも、前記圧入孔内への圧入部の圧入により、回転保持部の回転を防止する回り止め効果も得ることが可能である。
【0012】
ここで、前記圧入部の少なくとも外周部を弾性部材で構成し、この弾性部材が弾性変形した状態で前記圧入孔内に圧入されるようにすれば、圧入部の圧入が容易でかつ十分な摩擦力を得ることが可能である。
【0013】
また、前記圧入孔は前記回転保持部の後端面に後方に開口するように設けられ、前記ケーシングは、前記圧入孔の後方に前記主軸の軸方向と平行な方向の貫通孔を有し、前記制振部材は前記貫通孔を塞ぐ蓋部材に固定されており、この蓋部材が前記貫通孔に後方から挿入されることにより前記制振部材が前記圧入孔内に圧入される構成とすれば、前記蓋部材を前記貫通孔内に後方から挿入するだけの簡単な作業で制振部材の組付けが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図1には内面研削盤における主軸ヘッドを示すが、本発明はこれに限らず、その他の研削盤やボーリング盤、ミーリング盤等、主軸をもつ各種加工装置について適用が可能である。
【0015】
図1に示す主軸ヘッドは、ケーシング10を備え、このケーシング10の後端にはオイルミスト供給口11が設けられている。ケーシング10内には、前記オイルミスト供給口11から延びるオイルミスト供給通路12が形成され、ケーシング10内の適所にオイルミストが供給されるようになっている。
【0016】
このケーシング10内には、前後方向(図1では左右方向)に延びる主軸20が回転可能に支持されている。
【0017】
この主軸20は、その前端側から順に、前側軸受固定部20a、前側軸受位置決め部20b、ロータ位置決め部20c、ロータ固定部20d、テーパー部20e、及びスリーブ装着部20fを有している。前側軸受固定部20aは、ケーシング10の前壁を突き抜けて前方に突出するとともに、その前端面に前方に開口する工具装着用ねじ孔20gを有し、この工具装着用ねじ孔20gに適当な工具(図1に示す例では研削用砥石21aをもつ砥石軸21)の後端がねじ込まれることにより、当該工具が主軸の前端に固定されるようになっている。
【0018】
この加工装置は前記主軸20を回転駆動する回転駆動手段が設けられている。この実施の形態では、ケーシング10内に主軸駆動用のいわゆるビルトインモータが組み込まれている。具体的には、前記ロータ固定部20dの外側にロータ24が固定される一方、ケーシング10側に前記ロータ24を取り囲むステータ14が固定され、このステータ14の通電によって主軸20及びこれに装着された工具が一体に高速回転駆動されるようになっている。
【0019】
主軸20は、前後の軸受(図例では転がり軸受)22,28を介してケーシング10側に回転可能に支持されている。
【0020】
前側軸受22は、主軸20の前部とケーシング10の前壁との間に介在している。詳しくは、軸受22の内輪が前側軸受位置決め部20bに対して前方から当たる位置で前側軸受固定部20aの外側に固定される一方、軸受22の外輪がケーシング10の前壁内周面に固定されている。
【0021】
これに対して後側軸受28は、主軸20の後部に固定されたスリーブ26と、ケーシング10に対して軸方向に相対変位可能な回転保持スリーブ16との間に介在している。すなわち、主軸20の後部は軸受28を介して回転保持スリーブ16に保持されている。
【0022】
前記スリーブ26は、主軸20のテーパー部20eの後端に対して後方から当たる状態でスリーブ装着部20fの外側に固定されている。このスリーブ26は、その前部26aの外径が後部26bの外径よりも大きく、これら前後部26a,26bの境界に段部が形成された形状となっており、この段部に対して後側軸受(図例では転がり軸受)28の内輪が後方から当たる状態で当該内輪がスリーブ26に固定されている。
【0023】
前記回転保持スリーブ16は、前記スリーブ26の外周面とケーシング10の内周面との間に介在するとともに、この回転保持スリーブ16の外周面とケーシング10の内周面との間に介在する玉軸受15によって軸方向に移動可能に支持されている。そして、この回転保持スリーブ16の内周面に前記後側軸受28の外輪が固定されている。
【0024】
この回転保持スリーブ16には、図例では圧縮コイルばね(予圧付与ばね)18の弾発力を受けて前方に付勢され、その付勢力によって前記主軸20及び軸受22,28に適当な予圧が付与されている。前記圧縮コイルばね18は、ケーシング10の後壁17に設けられたばね支持用孔17b内に前方から挿入され、当該孔17bの底面と前記回転保持スリーブ16の後端面との間に圧縮状態で介在している。
【0025】
さらに、この構造の特徴として、前記回転保持スリーブ16とケーシング後壁17との間に制振部材30が設けられ、この制振部材30によって前記ケーシング10に対する回転保持スリーブ16の軸方向の振動に抵抗が与えられるようになっている。
【0026】
詳しくは、前記ケーシング後壁17にこれを前後に貫通する貫通孔17aが設けられ、この貫通孔17aを塞ぐように当該貫通孔17a内に蓋軸40が後方から挿入されるようになっており、この蓋軸40の前端と前記回転保持スリーブ16との間に前記制振部材30が介在している。
【0027】
蓋軸40は、その後端に図2にも示すような大径のフランジ部42を有し、このフランジ部42がケーシング後壁17の後側面に当たる位置まで蓋軸40が貫通孔17a内に挿入された状態で、当該フランジ部42がケーシング後壁17にボルト44によって固定されるようになっている。
【0028】
一方、制振部材30は、主軸20の軸方向と平行な方向に延びる本体軸31を有している。そして、この本体軸31の後端(図では右端)が蓋軸40の前端に固定される一方、当該本体軸31の前端部は前記回転保持スリーブ16とつながる圧入部32とされている。
【0029】
具体的に、前記回転保持スリーブ16の後端面には、主軸20の軸方向と平行な方向(前後方向)に延び、かつ、後方に開口する圧入孔16aが設けられ、各圧入孔16aは前記貫通孔17aと中心軸が略合致する位置に配されている。そして、この圧入孔16a内に前記圧入部32が圧入可能となっている。
【0030】
この圧入部32は、前記圧入孔16a内に圧入可能でかつ当該圧入孔16a内で軸方向に移動可能なものであればよく、種々の形態が考えられる。
【0031】
例えば図3(a)に示す例では、本体軸31の前端部に前記圧入孔16aの内径よりも小径の前後一対のフランジ部33,34が形成され、両フランジ部33,34の間にゴム等からなる弾性リング(弾性部材)36が嵌め込まれており、この弾性リング36が弾性変形しながら圧入孔16aの内周面に圧接する。このように、圧入部32の少なくとも外周部(圧入部全体でもよい。)を弾性部材で構成することにより、圧入孔16a内への圧入部32の圧入を容易としながら、十分な摩擦力を得ることが可能である。
【0032】
また同図(b)に示す例は、本体軸31の前端に大径部37が設けられるとともに、本体軸31の前端から後方に向かってスリット38が形成されることにより前記大径部37が縮径可能に構成され、当該大径部37が弾性的に圧入孔16の内周面に圧接するようにしたものである。
【0033】
以上示した構造によれば、圧縮コイルばね18の弾性係数を適当に設定することにより、その弾発力を利用して主軸20及び軸受22,28に当該軸受22,28の特性に見合った好適な予圧を付与することができる。
【0034】
しかも、ケーシング10側に固定された制振部材30の圧入部32が回転保持スリーブ16側の圧入孔16aに圧入されており、前記回転保持スリーブ16がケーシング10に対して軸方向に振動する際には、その回転保持スリーブ16側の圧入孔16aの内周面と圧入部32の外周面との間に比較的大きな摩擦抵抗が生ずるため、この摩擦抵抗を利用して前記ケーシング10に対する回転保持スリーブ16及び主軸20の振動を有効に抑制することができ、当該振動に起因する加工精度の低下を防ぐことができる。
【0035】
また、前記圧入孔16a内への圧入部32の圧入により、回転保持スリーブ16の回転を防止する回り止め効果も得ることが可能となっている。
【0036】
さらに、この実施の形態では、前記ケーシング後壁17が回転保持スリーブ16の圧入孔16aの後方に前記主軸の軸方向と平行な方向の貫通孔17aを有し、この貫通孔17aに蓋軸40を後方から挿入することにより、当該蓋軸40に固定されている制振部材30の圧入部32がそのまま圧入孔16a内に圧入されるようになっているので、制振部材30の組み付けが非常に簡単であるという利点がある。
【0037】
図4に示す実施の形態は、回転保持スリーブ16の内周面に対して径方向内側から制振ピン50が圧接し、その摩擦抵抗で同スリーブ16及び主軸20の軸方向の振動が抑制されるようにしたものである。
【0038】
前記圧接の力を与える手段として、ケーシング後壁17内には軸方向に移動可能な押付け軸52が内蔵されている。この押付け軸52の前端部及び前記制振ピン50の内端部には互いに当接する円錐面が形成され、押付け軸52の前方への推進力が、制振ピン50を径方向外側に突出させる力に変換されるようになっている。
【0039】
前記押付け軸52の後端には大径のピストン部52aが形成され、このピストン部52aが前記ケーシング後壁17内に形成された油圧室54内に装填されている。この油圧室54において、前記ピストン部52aよりも前側の部分は油路55を介してケーシング後端面のポート56に連通され、前記ピストン部52aよりも後側の部分は油路57を介してケーシング後端面のポート58に連通されするようにしている。
【0040】
この構造によれば、ポート58から油圧室54の後側部分に適当な油圧を供給することにより、その圧力で押付け軸52が前側に推進し、前記油圧に対応する力で制振ピン50を回転保持スリーブ16の内周面に押付ける。従って、前記油圧の設定によって前記制振ピン50による回転保持スリーブ16の制振力を適宜調節することが可能である。
【0041】
なお、前記図1〜図4に示した構造では、ケーシング10側に制振部材30が固定され、この制振部材30が回転保持スリーブ16に対して軸方向に相対変位可能となるように圧接しているが、逆に、回転保持スリーブ16に制振部材30が固定され、この制振部材30がケーシング10に対して軸方向に相対変位可能となるように圧接するものであってもよい。また、制振部材30がケーシング10または回転保持スリーブ16にこれと一体に形成されたものでもよい。
【0042】
本発明では、主軸20を支持する軸受の総数や配置方向も問わず、例えば回転保持部と主軸との間に複数の軸受が介在していてもよい。また、前後の軸受22,28をその接触角が図示の接触角と逆向きになるように配置する場合には、予圧付与ばねの弾発力によって回転保持スリーブ16を後方に付勢することにより、前記と同様に適正な予圧を付与することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明は、ケーシングに対して軸方向に相対変位可能な回転保持部に主軸を軸受を介して回転可能に保持し、この回転保持部とケーシングとの間に予圧付与ばねを設けてその弾発力を回転保持部に伝えるとともに、前記回転保持部とケーシングとの間に当該ケーシングに対する回転保持部の軸方向の振動に抵抗を与える制振部材を設けたものであるので、主軸及びこれを支持する軸受に好適な予圧を与えながら、主軸の軸方向の振動を有効に抑制することができる効果がある。さらに、前記制振部材が、前記回転保持部とケーシングのいずれか一方に固定され、他方に前記主軸の軸方向と平行な方向に相対変位可能となるように圧接するものであり、この制振部材の圧接による摩擦抵抗で前記ケーシングに対する回転保持部の軸方向の振動が抑制されるように構成されているので、ダンパ等の特別な機械要素を用いることなく、摩擦抵抗を利用した簡素な構成で回転保持部及び主軸の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる主軸ヘッドの断面側面図である。
【図2】前記主軸ヘッドの背面図である。
【図3】(a)(b)は前記主軸へッドに設けられる制振部材の具体例を示す断面図である。
【図4】本発明の別の実施の形態にかかる主軸へッドの断面図である。
【符号の説明】
10 ケーシング
16 回転保持スリーブ(回転保持部)
17 ケーシング後壁
17a 貫通孔
18 圧縮コイルばね(予圧付与ばね)
20 主軸
22,28 軸受
30 制振部材
32 圧入部
36 弾性リング
40 蓋軸(蓋部材)
Claims (4)
- 前端に工具装着部をもつ主軸が軸受を介してケーシングに回転可能に支持される加工装置において、前記ケーシングに前記主軸の軸方向と平行な方向に相対変位可能に設けられ、前記主軸を軸受を介して回転可能に保持する回転保持部と、この回転保持部と前記ケーシングとの間に設けられ、当該回転保持部に弾発力を伝えることにより前記主軸及び軸受に予圧を与える予圧付与ばねとを備えるとともに、前記回転保持部とケーシングとの間に、当該ケーシングに対する回転保持部及び主軸の軸方向の振動に抵抗を与える制振部材が設けられ、前記制振部材は、前記回転保持部とケーシングのいずれか一方に固定され、他方に前記主軸の軸方向と平行な方向に相対変位可能となるように圧接するものであり、この制振部材の圧接による摩擦抵抗で前記ケーシングに対する回転保持部の振動が抑制されるように構成されていることを特徴とする加工装置の主軸支持構造。
- 請求項1記載の加工装置の主軸支持構造において、前記制振部材は前記主軸の軸方向と平行な方向に延びる圧入部を有し、前記回転保持部またはケーシングに前記主軸の軸方向と平行な方向に開口する圧入孔が設けられ、この圧入孔に前記圧入部が前記主軸の軸方向と平行な方向に相対変位可能となるように圧入されていることを特徴とする加工装置の主軸支持構造。
- 請求項2記載の加工装置の主軸支持構造において、前記圧入部の少なくとも外周部が弾性部材で構成されていることを特徴とする加工装置の主軸支持構造。
- 請求項2または3記載の加工装置の主軸支持構造において、前記圧入孔は前記回転保持部の後端面に後方に開口するように設けられ、前記ケーシングは、前記圧入孔の後方に前記主軸の軸方向と平行な方向の貫通孔を有し、前記制振部材は前記貫通孔を塞ぐ蓋部材に固定されており、この蓋部材が前記貫通孔に後方から挿入されることにより前記制振部材が前記圧入孔内に圧入されるように構成されていることを特徴とする加工装置の主軸支持構造。
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