JP4083393B2 - 津波実験装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、津波実験装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、津波等の長周期の波に対する構造物の安定性等を検討する実験には、フロート式津波実験装置や空気圧室式津波実験装置が用いられている。図6は、フロート式津波実験装置の平面図、図7は、フロート式津波実験装置の断面図である。フロート式津波実験装置では、水槽101に設置した鋼製のフロート103を上下動させる。この上下動により、A方向に、水面109に津波107が発生する。
【0003】
図8は、空気圧室式津波実験装置の平面図、図9は、空気圧室式津波実験装置の断面図である。空気圧室式津波実験装置では、エアコンプレッサ213を用いて、管215を介して空気圧室211内の空気圧を変化させる。空気圧室211内の水面209は、空気圧を増圧すると水面209bまで低下し、減圧すると水面209aまで上昇する。この上下動により、空気圧室211の外部の水面209に、B方向に津波207が発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フロート式津波実験装置では、フロート103が主に鋼製であるため、大型の駆動装置が必要となる。また、発生する津波107の高さは、フロート103による排除体積分であり、効率が悪い。
空気圧室式津波実験装置では、エアコンプレッサ213や空気圧室211等の大型の施設が必要となる。また、空気圧で津波207を発生させるため、効率が悪く、波形の精度が悪い。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは簡便・安価に作製でき、任意の波形の津波を高精度で効率良く発生できる津波実験装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するための第1の発明は、水が満たされた水槽と、前記水槽を貯水槽と実験槽とに分けるように前記水槽内に設けられる仕切り板と、前記しきり板に設けられ、前記水槽内に津波を起こすポンプと、を具備し、前記ポンプが、プロペラと、前記プロペラを回転するモーターと、水位変動の目標波形から求められたポンプの出力波形に、ポンプの稼働開始時と造波開始時の間に時間差を設けた改良後の出力波形によって、前記モーターを制御する制御部と、を有することを特徴とする津波実験装置である。
【0007】
また、前記制御部が、前記貯水槽と前記実験層との水位差から、前記プロペラの隙間を通過する水の移動量を算出し、算出した水量を補うように、前記モーターを制御することが好ましく、前記実験層側の前記ポンプ近傍に、多孔性の整流板を設けることが望ましい。尚、仕切り板に孔等を設け、この孔の近傍にポンプを設置するようにしてもよい。この場合、ポンプは仕切り板には直接取り付けない。
【0008】
第1の発明では、水槽に仕切り板を設置して2つの部分に分け、水槽内にポンプを設置して水流を発生させる。仕切り板とポンプのみを用いるので簡便に作製でき、可搬性がある。また、水流発生部の出力を変化させることで、任意の波形の波を、高精度で効率よく発生させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、津波実験装置1の平面図、図2は、津波実験装置1の断面図、図3は、ポンプ部9周辺の拡大断面図を示す。津波実験装置1は、ポンプ部9、仕切り板11、整流板13、拡幅管17等で構成される。水槽3は、底面2に側面4a、側面4b、側面4c、側面4dが設けられた直方体形状であり、上部は開放され、内部に水が満たされる。
【0010】
水槽3には、仕切り板11が設置される。仕切り板11は、両端が側面4c、側面4dに接触し、下方が底面2に接触するように設置され、水槽3を、貯水槽5と実験槽7に分ける。仕切り板11は、不透水性で、貯水槽5および実験槽7からの水圧に耐えられる部材である。
【0011】
仕切り板11に複数の円形の穴を開け、円筒状のポンプ部9を設置する。ポンプ部9には、プロペラ37式のポンプが内蔵される。ポンプ部9付近には、プロペラ37を駆動させるモータ39が設置され、モータ39は、ケーブル41等を介してコンピュータ43に接続される。コンピュータ43は、モータ39の稼動を制御する。
【0012】
ポンプ部9の、貯水槽5側の端部には、円錐台形状の拡幅管17aが取り付けられ、実験槽7側の端部には、円錐台形状の拡幅管17が取り付けられる。ポンプ部9、拡幅管17a、拡幅管17は、水流12および水流12aの圧力に耐えられる材質とし、流量や設置数は、実験槽7の大きさや発生させたい波の波形によって決定する。
【0013】
ポンプ部9は水流12および水流12aを発生させ、拡幅管17aは、実験槽7からポンプ部9を介して貯水槽5へ流れ込む水流12aを拡散させる。拡幅管17は、貯水槽5からポンプ部9を介して実験槽7へ流れ込む水流12を拡散させる。
【0014】
貯水槽5の側面4aには、越波防止工19が設けられる。越波防止工19は、複数の長方形の板から成る。それぞれの板は、長辺の一辺が側面4aに接触し、短辺が側面4dおよび側面4cに接触し、側面4aから底面2の方向に傾斜するように、平行に設置される。越波防止工19は、水流12aにより発生した波が、側面4aを越えて水槽3の外部に流出するのを防ぐ。
【0015】
拡幅管17の出口の前方には、2枚の整流板13が設置される。整流板13は、多数の孔35を有する部材である。各整流板13は、下部が底面2に接触し、両端部が側面4c、側面4dに接触するように設置される。整流板13は、拡散した水流12を、実験槽7の横断方向14にさらに均一化する。
【0016】
整流板13の前方には、複数の波高計15が、整流板13と平行して等間隔に設けられる。波高計15は、水流12により水面31に発生し、整流板13を通って均一化した波の高さを測定する。
【0017】
次に津波実験装置1の動作について説明する。
まず、モータ39を稼動させ、ポンプ部9のプロペラ37を回転させる。図4は、造波開始時の位相調整を示す図である。図4(a)は、水面31の水位変動の目標波形47であり、縦軸は水位、横軸は時間を表す。図4(b)はポンプ部9の出力電圧の波形49、図4(c)は改良後の出力電圧の波形51を示し、いずれも縦軸は電圧、横軸は時間を表す。
【0018】
水面31に図4(a)の目標波形47を発生させるには、ポンプ部9のモータ39を図4(b)の出力電圧の波形49で稼動させるのが理想的である。しかし、ポンプ部9の出力を時間t=0で最大出力まで上げることは不可能なため、図4(c)に示すように、時間差53を設け、改良後の出力電圧の波形51でポンプ部9を稼動させる。これにより、目標波形47に近い波形の水位変動を得ることができる。
【0019】
ポンプ部9のモータ39を稼動し、プロペラ37の回転方向を変化させると、水流12または水流12aが発生する。また、プロペラ37の回転数を調節することにより、貯水槽5と実験槽7との間を移動する水量が変化し、水流12または水流12aの強さが変化する。コンピュータ43は、ケーブル41を介してモータ39に信号を送信し、プロペラ37の回転方向や回転数を制御する。
【0020】
図5は、仕切り板11の両側での水位差45を示す断面図である。造波時に、プロペラ37の隙間から多量の水が水位の高い槽から低い槽へと流入するのを防ぐため、予め実験槽7の水面31と、貯水槽5の水面31aとの水位差45を算出する。
【0021】
そして、水位差45からベルヌーイの式によりプロペラ37の隙間からの水の移動量を算出し、算出した水量を補うように、コンピュータ43でプロペラ37の回転を制御する。これにより、目標とする波高と周期を有する波を精度良く発生させることができる。
【0022】
プロペラ37の回転により、貯水槽5からポンプ部9を介して実験槽7へ水が流入し、水流12が生じる。水流12は、拡幅管17を通って拡散する。さらに、多孔性の整流板13を通りぬけることにより、水槽3の横断方向14に均一化された波となる。波高計15は、発生した波の横断方向14の均一性を確認する。
【0023】
このように、仕切り板11とポンプ部9を用いるので、津波実験装置1は、設備が小規模で容易に設置でき、移設も簡便である。また、ポンプ部9で波を発生させることにより、ポンプ部9の流量に見合った大きな波を造波できる。そして、コンピュータ43でモータ39を制御してプロペラ37の回転方向および回転数を変化させることにより、任意の波形の長周期波を精度良く発生させることができる。
【0024】
尚、本実施の形態では、仕切り板11に穴を設けてポンプ部9を設置したが、ポンプ部9は仕切り板11に直接取り付けなくてもよい。また、整流板13を2枚設置したが、設置枚数はこの限りではない。貯水槽5側の拡幅管17aは設置しない場合もある。
【0025】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、簡便・安価に作製でき、任意の波形の津波を高精度で効率良く発生できる津波実験装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】津波実験装置1の平面図
【図2】津波実験装置1の断面図
【図3】ポンプ部9周辺の拡大断面図
【図4】造波開始時の位相調整を示す図
【図5】仕切り板11の両側での水位差45を示す断面図
【図6】フロート式津波実験装置の平面図
【図7】フロート式津波実験装置の断面図
【図8】空気圧室式津波実験装置の平面図
【図9】空気圧室式津波実験装置の断面図
【符号の説明】
1………津波実験装置
3………水槽
5………貯水槽
7………実験槽
9………ポンプ部
11………仕切り板
13………整流板
17、17a………拡幅管
31………水面
35………孔
37………プロペラ
39………モータ
43………コンピュータ

Claims (3)

  1. 水が満たされた水槽と、
    前記水槽を貯水槽と実験槽とに分けるように前記水槽内に設けられる仕切り板と、
    前記しきり板に設けられ、前記水槽内に津波を起こすポンプと、
    を具備し、
    前記ポンプが、
    プロペラと、
    前記プロペラを回転するモーターと、
    水位変動の目標波形から求められたポンプの出力波形に、ポンプの稼働開始時と造波開始時の間に時間差を設けた改良後の出力波形によって、前記モーターを制御する制御部と、
    を有することを特徴とする津波実験装置。
  2. 前記制御部が、前記貯水槽と前記実験層との水位差から、前記プロペラの隙間を通過する水の移動量を算出し、算出した水量を補うように、前記モーターを制御することを特徴とする請求項1記載の津波実験装置。
  3. 前記実験層側の前記ポンプ近傍に、多孔性の整流板を設けることを特徴とする請求項1または2記載の津波実験装置。
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