JP4083044B2 - 電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造 - Google Patents

電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造に係わり、更に詳しくは道路標識(例えば、規制標識,指示標識,警戒標識,案内標識及びこれらの補助標識),ガードレール,道路に付設された識別標識等の構造物に電波吸収機能を具備させることを可能とした電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の走行支援道路システム(AHS:Advanced Cruise-Assist Highway System)では、路車間通信や車々間通信の電磁波を利用して行われており、この走行支援道路システムを目的とした路車間通信ゾーン内において、道路付帯設備に電波吸収性能を具備させた発明が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、近年の電波利用が進むにつれて電波障害,誤動作等が発生しており、これらの問題の対策の一つとして、例えば、抵抗皮膜及び電波反射体を透明な材料で構成し、光を通す構造にした電波吸収体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−61130号公報(第7〜第8頁、図4(イ)〜(ハ))。
【特許文献2】
特開平6−120689号公報(第2〜第3頁、図1)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記走行支援道路システムにおける車間距離測定用の自動車車載レーダにおいては、道路付帯設備としての道路標識やガードレール等からの電波の散乱波により、偽像やノイズの発生、通信や探知に異常を来す等、電波障害が発生する可能性があった。しかし、現在の道路付帯設備の構造物には、特に光の反射機能と電波吸収機能とを具備させることにより、電波障害を防止するような手段は提案されていない。
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、道路付帯設備の構造物に光の反射機能を備え、かつ電波の散乱波を防止し、電波障害が発生するのを未然に防止させるようにした電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の第1の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造は、道路付帯設備構造物の金属板の表面に、順に、電波を透過する材料で構成した光反射層と、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料からなる層状のスペーサと、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜とを積層させて一体的に構成したことを要旨とするものである。
【0008】
また、この発明の第2の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造は、道路付帯設備構造物の金属板の表面に、順に、光反射層と、光を透過する電波反射層と、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料からなる層状のスペーサと、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜とを積層させて一体的に構成したことを要旨とするものである。
【0009】
ここで、前記抵抗皮膜とスペーサとを交互になるように積層させて多層構造にすることも可能である。また、前記抵抗皮膜が、金属酸化物、金属窒化物ないしはこれらの混合物で形成した膜であり、前記電波反射層が、金属酸化物、金属窒化物ないしはこれらの混合物で形成した膜にすることもできる
【0010】
更に、周波数60GHzおよび76GHzの2つの周波数において、電波吸収性能がピークを有するように設定することもでき、また前記道路付帯設備構造物が、道路標識,ガードレール,道路に付設された識別標識から選ばれた一つである。
【0011】
このように、道路付帯設備構造物に電波吸収機能を具備させることで、道路付帯設備の構造物からの電波の散乱波を防止し、電波障害が発生するのを未然に防止させることが出来るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0013】
図1は、この発明の第1実施形態を示す道路標識,ガードレール,道路に付設された識別標識等の道路付帯設備構造物の分解した一部断面図を示し、この道路付帯設備構造物1は、アルミニウム板,鉄板等の金属板2と光反射層3とで構成された標識板と、接着剤を介して一体的に形成した電波吸収層6とで構成され、この電波吸収層6は、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜4cと、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料等の光を透過する材料で構成したスペーサ5cとを一体的に積層させた1層構造になっており、標識板と組み合わされて電波を吸収する特性を発揮する。
【0014】
前記抵抗皮膜4cを構成する光を透過する材料としては、例えば、酸化錫や酸化錫ドープ酸化インジウムや酸化亜鉛等の金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物の内の一つまたはこれらの混合物であり、これらの材料を用い、真空蒸着膜、スパッタリング膜、CVD(化学的気相成長)膜をPETフィルム上に形成することが好ましい。更に好ましくは、金属蒸着等により表面抵抗を調節した透明なプラスチックフィルムで形成する。
【0015】
また、スペーサ5cの材料としては、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料(例えば、PC:ポリカーボネート,PET:ポリエチレンテレフタレート)から選ばれた一つを使用するものである。
【0016】
また、光反射層3は、電波を透過すれば特に材料,形状には限定されず、例えば、封入レンズ型、カプセルレンズ型、プリズムレンズ型等の光反射シート(例えば、住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)6060ホワイト、住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)3924Gや住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)983−10等)を使用することが出来る。
【0017】
この第1実施形態では、道路標識に用いる電波吸収体として、自動車搭載レーダで使用される周波数60GHz 及び76GHz の2周波数に対応した透明電波吸収体とするために、以下のような寸法の2周波対応の透明電波吸収機能を備えた道路付帯設備を製作して実験を行った。
光反射層3:厚さ0.3mm、住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)6060ホワイトを使用した。
スペーサ5c(PC)の厚さ:4.8mm
抵抗皮膜4cの面抵抗値:370 Ω/□
【0018】
このような構成から成る第1実施形態の電波吸収性能を、反射電力法で50〜110GHzにおいて、入射角度4°、TE波(偏波)で測定した結果、図2の電波吸収性能の周波数特性に示すように、周波数60GHz 及び76GHz において、目的とする2周波数に整合していることが判った。従って、上記のような抵抗皮膜4cとスペーサ5cとを用いて光反射層を組合せることにより、2周波数に対応した整合型透明電波吸収体とすることが出来るのである。
【0019】
図3は、この発明の第2実施形態を示す道路標識,ガードレール,道路に付設された識別標識等の道路付帯設備構造物の分解した一部断面図を示し、この道路付帯設備構造物1は、表面に文字,図形等の標識が表示された光反射層3と、アルミニウム板,鉄板等の金属板2で構成された標識板と、この標識板の光反射層3の表面に、金属酸化物、金属窒化物ないしはこれらの混合物を蒸着した膜から成る電波反射層7と、更に電波反射層7の表面に光を透過する透明な材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜4a及び4bとスペーサ5a及び5bとを交互に積層させて一体的に構成した電波吸収層6とを接着剤等を介して一体的に構成してある。
【0020】
なお、上記の各層の接着は、抵抗皮膜を形成したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、スペーサ5a,5bまたは標識板同士は、両面に接着剤や粘着剤を塗布したPETフィルム等を用いて行う。
【0021】
前記光反射層3としては、電波を透過すれば特に材料,形状には限定されず、例えば、封入レンズ型、カプセルレンズ型、プリズムレンズ型等の光反射シート(例えば、住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)6060ホワイト、住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)3924Gや住友スリーエム社製のスコッチライト反射シート(商標名)983−10等)を使用することが出来る。
【0022】
この第2実施形態では、上述したように電波反射層7と、抵抗皮膜4a及び4bと、二枚のスペーサ5a及び5bとを交互に積層させて一体的に形成したものを電波吸収層6とし、これを既存の道路付帯設備構造物1である標識板の表面に接着剤や粘着剤を介して一体的に構成したものである。
【0023】
また、この実施形態では、抵抗皮膜4a及び4bを形成したPETフィルムと、スペーサ5a及び5bとを、前記光反射層3上に接着剤(例えば、AC(アクリル)−PET−AC)を介して交互に積層させた多層構造(この実施形態では2層であるが特に限定されない)にしてあり、スペーサの厚さとしては電波吸収性能に対応して任意の厚さに設定するものである。
【0024】
前記抵抗皮膜4a及び4bを構成する光を透過する材料としては、例えば、酸化錫や酸化錫ドープ酸化インジウムや酸化亜鉛等の金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物の内の一つまたはこれらの混合物であり、これらの材料を用い、真空蒸着膜、スパッタリング膜、CVD(化学的気相成長)膜をPETフィルム上に形成することが好ましい。更に好ましくは、金属蒸着等により表面抵抗を調節した透明なプラスチックフィルムで形成する。
【0025】
また、前記スペーサ5a及び5bとしては、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料(例えば、PC:ポリカーボネート,PET:ポリエチレンテレフタレート)から選ばれた一つを使用するものである。
【0026】
この発明の実施例としては、道路付帯設備構造物からの乱反射を防止するため、道路標識に用いる電波吸収体として、自動車搭載レーダで使用される周波数60GHz 及び76GHz の2周波数に対応した透明電波吸収体とするために、以下のような寸法の2周波対応の透明電波吸収機能を備えた道路付帯設備を製作して実験を行った。
電波反射層7の面抵抗値:10 Ω/□
第1層のスペーサ5a(PC)の厚さ:3.4mm
第1層の抵抗皮膜4aの面抵抗値:390Ω/□
第2層のスペーサ5b(PC)の厚さ:1.7mm
第2層の抵抗皮膜4bの面抵抗値:680Ω/□
【0027】
このような構成から成る第2実施形態の電波吸収性能を、反射電力法で50〜110GHzにおいて、入射角度4°、TE波(偏波)を測定した結果、図4の電波吸収性能の周波数特性に示すように、周波数60GHz 及び76GHz において、目的とする2周波数に整合していることが判った。従って、上記のような抵抗皮膜4a,4bとスペーサ5a,5bを用いることにより、2周波数に対応した透明電波吸収体とすることが出来るのである。
【0028】
以上のように、道路付帯設備構造物1に光の反射機能を備え、かつ電波吸収機能を具備させることで、道路付帯設備1の構造物からの電波の散乱波を防止でき、電波障害が発生するのを未然に防止させることが出来るものである。
【0029】
【発明の効果】
この発明は、上記のように道路付帯設備構造物の金属板の表面に、順に、電波を透過する材料で構成した光反射層と、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料からなる層状のスペーサと、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜とを積層させて一体的に構成し、或いは、道路付帯設備構造物の金属板の表面に、順に、光反射層と、光を透過する電波反射層と、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料からなる層状のスペーサと、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜とを積層させて一体的に構成したので、道路付帯設備の構造物からの電波の散乱波を防止し、電波障害が発生するのを未然に防止させることが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態の道路標識,ガードレール,道路に付設された識別標識等の道路付帯設備構造物の分解した一部断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態における電波吸収体の吸収性能の測定結果を示すグラフ説明図である。
【図3】この発明の第2実施形態の道路標識,ガードレール,道路に付設された識別標識等の道路付帯設備構造物の分解した一部断面図である。
【図4】この発明の第2実施形態における電波吸収体の吸収性能の測定結果を示すグラフ説明図である。
【符号の説明】
1 道路付帯設備構造物 2 金属板
3 光反射層
4a,4b,4c 抵抗皮膜
5a,5b,5c スペーサ
6 電波吸収層 7 電波反射層

Claims (7)

  1. 道路付帯設備構造物の金属板の表面に、順に、電波を透過する材料で構成した光反射層と、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料からなる層状のスペーサと、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜とを積層させて一体的に構成したことを特徴とする電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
  2. 道路付帯設備構造物の金属板の表面に、順に、光反射層と、光を透過する電波反射層と、透明なガラスまたは透明な有機高分子材料からなる層状のスペーサと、光を透過する材料で構成した任意の表面抵抗を備えた抵抗皮膜とを積層させて一体的に構成したことを特徴とする電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
  3. 前記抵抗皮膜とスペーサとを交互になるように積層させて多層構造にした請求項1または2に記載の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
  4. 前記抵抗皮膜が、金属酸化物、金属窒化物ないしはこれらの混合物で形成した膜である請求項1,2または3に記載の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
  5. 前記電波反射層が、金属酸化物、金属窒化物ないしはこれらの混合物で形成した膜である請求項1,2,3または4に記載の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
  6. 周波数60GHzおよび76GHzの2つの周波数において、電波吸収性能がピークを有するように設定した請求項1,2,3,4または5に記載の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
  7. 前記道路付帯設備構造物が、道路標識,ガードレール,道路に付設された識別標識から選ばれた一つである請求項1,2,3,4,5または6に記載の電波吸収機能を備えた道路付帯設備の構造。
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