JP4082558B2 - 摩擦駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は駆動軸を回転させることにより従動軸に固定された処理対象物を進退させることができる摩擦駆動装置に関し、特に、光ディスクの原盤露光装置や精密工作機械などにおいて、処理される物品(処理対象物)を正確に移動し、また、位置決めする際に用いられる摩擦駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば光ディスク原盤露光装置では、トラックピッチを正確に露光するため、静圧軸受を介してテーブルを進退自在に移動することができるエアスライド式のスライドテーブル装置が用いられている。テーブルの駆動は、ボイスコイル型のリニアモータが一般的に用いられ、位置検出器としては干渉レーザ測長器やリニアスケールを使用した閉ループ制御方式が採用されている。
また、半導体検査装置等の静止状態を必要とするものでは送り方向の剛性を必要とするのでテーブルの駆動にボールネジ等を用いるのが一般的である。
近年、光ディスクの高密度化のために高解像度の露光が必要となり、レーザービームによる露光に代わり電子線等を用いた露光を行う光ディスク原盤露光装置が登場し、真空環境への対応や、より高精度な送り制御が必要となってきた。このうち、高精度な送り制御は摩擦駆動機構のツイストローラー方式が用いられ、この方式では、駆動軸と従動軸との間の交差角を微小にすることで、他の機構では得られない小さなリードを実現でき、高い位置決め分解能が期待できることから次世代の送り機構として文献、特許等で様々な機構提案がなされている。
【0003】
特開平8−184360号公報に記載された摩擦進退駆動装置では、軸体と、この軸体を相対的に回転および進退自在に貫通させた進退部品とを備え、進退部品は、その本体内に、軸体に転接する樽形のローラを周方向に複数個並べて設け、これらローラは、両端面でボールを介して進退部品本体と予圧板との間に回転自在に支持する。進退部品本体とローラ端面の少なくとも一方、および予圧板とローラ端面との少なくとも一方は、ボールが回転自在に嵌まる円すい面状のボール支持凹部でボールの支持を行わせる。また、予圧板をローラ側へ付勢すると共に円周方向に付勢する弾性体を設けて、耐外乱性が高く、速度むらがなく、安定送りが行え、また駆動源が停止時の静止性能の向上を図っている。
しかしながら、ローラ端面を支持している固定板及び対向板に各々形成される円すい面状のボール支持凹部の機械的な位置誤差のために各ローラ軸芯と駆動軸とのなす角度にばらつきを生じるという問題点がある。すなわち、ローラ軸芯と駆動軸とのなす角度を大きく(リードLを比較的大きく取る場合(例えば、数mm))する場合は問題とならないが、ローラ軸芯と駆動軸とのなす角度を小さく(リードLを小さく取る場合(例えば、数百μm))する場合は、各ローラ軸芯と駆動軸とのなす角度にばらつきがあると駆動軸と従動軸のローラ間でリード誤差によるすべりを生じ、これが、閉ループ制御の外乱となるため制御上好ましくないとともに光ディスク原盤露光等に適用するとトラックピッチ精度等が悪くなり露光品質上好ましくないという問題点がある。
また、進退部品本体に設けた穴部と予圧板に設けた穴部とを連通した状態で軸方向予圧用弾性体を挿入し、該弾性体が抜け落ちることを防止するため、該連通した穴の開口部をネジにより封止しており、ローラの軸体に対する予圧量の調整は前記弾性体の圧縮変形力を利用しているが、ローラの軸体に対する現在予圧量が定量的に確認できないので、適正な予圧量にするのに試行錯誤が必要となり、又、ローラや軸体の磨耗による経年変化に伴う予圧の再調整も困難となり、部品交換時の予圧量再現性もなく組立性が悪いという問題点もある。
【0004】
一方、特開平11−195247号公報には、光ディスクマスタリング装置用スライドテーブル装置であって、テーブルを基台に対して静圧直動軸受で静圧支持し、基台に対してテーブルをスライド自在に駆動する摩擦進退駆動装置が記載されている。この摩擦進退駆動装置は、回転駆動される主軸と、この主軸の回りに複数設けられ各々傾き角度を持って接するローラとを備え、このローラに主軸に対する予圧を与える予圧手段を設けて、速度むらが生じることなく、安定した送りが行え、外乱にも強く、分解能の向上が図れ、これにより高密度の書き込みを可能としている。
しかし、特開平11−195247号公報に開示されたスライドテーブル装置は基台に固定される静圧直動軸受固定部の真直と摩擦進退駆動装置主軸の真直間には、誤差を生じて組み立てられる可能性があり、誤差が生じた場合にはスライド体が送り方向に動作すると、予圧をかけられて固定されているだけの剛性が最も低いローラと主軸間でその真直誤差を吸収することになり、ローラの主軸に対する予圧量が移動位置とともに変化する。駆動軸とひとつのローラ間に働く駆動軸方向の駆動力は、駆動軸外周とローラ間の動摩擦係数をμ、予圧をNとするとF=μNとなる。従って、各々のローラと駆動軸外周で発生する駆動力にもばらつきを生じ各々の駆動力にもばらつきを生じるため、各ローラ軸芯と駆動軸とのなす角度のばらつきと相乗して駆動軸と従動軸のローラ間ですべりを生じ、これが、閉ループ制御の外乱となるため制御上好ましくないとともに光ディスク原盤露光等に適用するとトラックピッチ精度等が悪くなり露光品質上好ましくないという問題点がある。
【0005】
さらに、特開平11−195248号公報には、主軸と、この主軸の外周に傾き角度をもって転がり接触するローラと、主軸の回転に伴い、ローラと共に移動するスライド体とを有し、モータの回転は減速機で減速して主軸に伝達し、この減速機は、第1、第2の駆動側軸から摩擦車への回転伝達で減速するものとして、回転駆動源の回転むらの影響を少なくすると共に、回転伝達系における位相ずれを少なくし、精密な位置決めを可能としている。
なおさらに、「ツイストローラー摩擦駆動装置を用いた超精密位置決めシステムの開発:著者 水本 他、1995年度精密工学会秋期大会論文集」では、空気静圧軸受により案内されたテーブルを、両端を空気静圧軸受にて支持された駆動軸とその駆動軸線とわずかな交差角にて設けた従動軸に複数の玉軸受にて従動軸回りに回動支持されたローラを設けて、約70μmのリードで位置決め分解能2nmを実現している。
しかし、特開平11−195248号公報に記載されたスライドテーブル装置では、スライド体を基台に対して静圧直動軸受で静圧支持し、又、上記文献に記載されたツイストローラー摩擦駆動装置を用いた超精密位置決めシステムでは空気静圧軸受により案内されたテーブルを、両端を空気静圧軸受にて支持する構成としており、送り、回転構成要素である静圧軸受は非常に高価であり装置コストが高くなるという問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を生じることなく高精度送りを実現できる光ディスク原盤露光装置等に用いる摩擦駆動装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る摩擦駆動装置の請求項1記載の発明では、光ディスク用原盤露光装置に用いる送り装置であって、駆動軸と、該駆動軸に対して傾き角度をもって傾斜する複数の従動軸に設けられ前記駆動軸の外周にころがり接触するローラと、前記駆動軸の回転により上記従動軸、ローラとともに移動する移動体と、移動体を駆動軸の軸線方向に案内する案内機構と移動体の送り位置を検出する位置検出手段を設けた摩擦駆動装置において、前記駆動軸の軸線に対して円周方向に等角配置され、該駆動軸の外周にころがり接触するローラを設けた複数の従動軸の片端を球面軸受にて支持し、その回動中心である回動支持点を設け、他端を従動軸に設けたローラが駆動軸外周から回動支持点を支点として離間する方向に押圧する第1押圧手段と、駆動軸外周の接線方向に押圧する第2押圧手段とにより前記ローラを自由支持し、前記回動支持点を挟んで前記ローラと反対側に、前記移動体に固定され、駆動軸の軸線と直角方向で前記第1押圧手段の押圧力による回動支持点回りのモーメント力を相殺する方向に従動軸を押圧する第3押圧手段と、駆動軸外周の接線方向で前記第2押圧手段の押圧力による回動支持点回りのモーメント力を相殺する方向に従動軸を押圧する第4押圧手段と、CPUと、動作プログラムが記憶されたROMと、データの書き込み/読み出しを行うRAMと、前記CPUの指令により前記第3押圧手段の複数の圧電素子への印加電圧を独立にON/OFFする第1出力手段と、送りの設定リード量に対して従動軸の傾き角度を算出する角度算出手段と、その算出角度に相当する出力電圧を前記第4押圧手段の複数の圧電素子に印加する第2出力手段と、送り駆動モータの回転角度を検出するロータリーエンコーダの1回転当たりの原点検出信号と位置検出手段の位置検出信号に基づいて現在リード量を算出する現在リード量算出手段と、現在リード量と設定リード量を比較して第4押圧手段の圧電素子への印加電圧を増減する電圧補正手段を設けた角度調整手段とを備える。
【0008】
本発明に係る摩擦駆動装置の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明に加え、前記第1出力手段は、定電圧回路と、一方の端子を0V、他方の端子に定電圧回路の出力信号が接続され外部信号によりON/OFFする切換スイッチと、第3押圧手段の押圧板の変形部に設けた変形量測定手段と、切換スイッチの出力信号である押圧伸縮設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧伸縮量とを比較してサーボ制御する第1サーボ制御手段から構成した。本発明に係る摩擦駆動装置の請求項3記載の発明は、上記請求項記載の発明に加え、前記第2出力手段は、D/A変換器と、第4押圧手段の押圧板の変形部に設けた変形量測定手段と、D/A変換器の出力信号である押圧伸縮設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧伸縮量を比較してサーボ動作を行う第2サーボ制御手段から構成した。本発明に係る摩擦駆動装置の請求項4記載の発明は、上記請求項記載の発明に加え、前記角度調整手段は、第3押圧手段と、該第3押圧手段の押圧板に設けた調整ネジによって従動軸を押圧する方向に前記第3押圧手段の押圧板を位置調整可能となるように構成し、かつ、第4押圧手段と、該第4押圧手段の押圧板に設けた調整ネジによって従動軸を駆動軸外周の接線方向に押圧する方向に前記第4押圧手段の押圧板を位置調整可能となるよう構成した。本発明に係る摩擦駆動装置の請求項5記載の発明は、上記請求項記載の発明に加え、第1出力手段は、可変電圧回路と、一方の端子を0V、他方の端子に可変電圧回路の出力信号が接続され外部信号によりON/OFFする切換スイッチと、第3押圧手段の押圧板と回動支持点とローラとの間であって、従動軸の外周部に従動軸の押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段と、前記切換スイッチの出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第3サーボ制御手段から構成した。
【0009】
本発明に係る摩擦駆動装置の請求項6記載の発明は、上記請求項記載の発明に加え、第1出力手段は、一つのD/A変換器と、第3押圧手段の押圧板と回動支持点とローラ間であって、従動軸の外周部に従動軸の押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段と、D/A変換器の出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第4サーボ制御手段から構成した。本発明に係る摩擦駆動装置の請求項7記載の発明は、上記請求項記載の発明に加え、第1出力手段は、第3押圧手段の複数の圧電素子への押圧設定信号を独立に与える複数のD/A変換器と、第3押圧手段の押圧板と回動支持点とローラ間であって、従動軸の外周部に従動軸の押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段と、複数のD/A変換器の出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第5サーボ制御手段から構成した。本発明に係る摩擦駆動装置の請求項8記載の発明は、上記請求項記載の発明に加え、従動軸は、押圧手段の押圧点と回動支持点間距離をL1、回動支持点とローラ間距離をL2とした時にL2>L1として変位拡大機構を形成していることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は本発明に係る摩擦駆動装置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側側面図、(c)は部分破断面図である。また、図2は本発明に係る摩擦駆動装置の細部を示す図であり、(a)は図1におけるA−A’断面図、(b)は図1におけるB−B’断面図、(c)は図1におけるC−C’断面図、(d)は弾性体部の詳細を示す図である。
まず、本発明に係る摩擦駆動装置の第1の実施例を図1および図2等を用いて説明する。
図示しない除振機構(例えば、空気圧によるサーボマウンタ)上に設けたベース90には、送り方向に対して直交する方向に離間して片端をベース90に固定した支柱89a、89bが設けられており、支柱89a、89bの上端には例えば球体や円筒ローラ等を送り方向に配置した案内機構としての第1ころがり軸受14を介して移動体13が固定されている。
移動体13の上部にはターンテーブル18が固定され、該ターンテーブル18には外部より供給される圧縮空気によりラジアル、スラスト方向に静圧浮上するエアスピンドル19が固定されている。エアスピンドル19には回転駆動モータ20を介して、一般的にその出力が一周を数千等分割したA相、B相パルスと、一周に1回発生するZ相パルスから構成される第1光学式ロータリーエンコーダ21が固定されており、回転駆動モータ20への通電信号により前記ターンテーブル18は回転自在に構成されている。
移動体13の送り位置を検知する位置検出手段16は移動方向をある分解能のA相、B相パルスにより出力する光学式リニアエンコーダ(受光部15a、スケール15b)により構成し、受光部15aは取付板17を介してベース90に固定され、また、スケール15bは移動体13の送り方向に平行する側面下部に取付板15cを介して取り付けられている。
なお、スケール15bが移動体13に固定され、受光部15aがベース90に固定した例を挙げたが、受光部15aを移動体13に固定し、スケール15bをベース90に固定する構成としても構わない。
【0011】
駆動軸1が貫通する穴部を設けた固定板22と固定板23の上端面は移動体13の送り方向突出部13aの下部に固定され、該固定板22と23間には同心状に設けた3つの従動軸7a〜7cが駆動軸1の軸線に対して円周方向に等角配置されている。また、駆動軸1の外周にころがり接触するローラ8a〜8cは例えばアンギュラ軸受等を対向したころがり軸受9a〜9cを介して従動軸7a〜7cに取り付けられている。
従動軸7a〜7cの右側端部には、図2(b)に示すように、固定板23の凹部が設けられ、該凹部には従動軸7a〜7cに設けたローラ8a〜8cが駆動軸1の外周から離間する方向に押圧する3つの第1押圧手段44a、44b、44cと従動軸7a〜7cに設けたローラ8a〜8cが駆動軸1の外周接線方向に押圧する3つの第2押圧手段44a’、44b’、44c’が駆動軸1の軸線に対して円周方向に等角配置されて固定されている。
前記第1押圧手段44a〜44cの各々は第1弾性体35a〜35cおよび第1押圧板36a〜36cを含み、第2押圧手段44a’〜44c’の各々は第2弾性体38a〜38cおよび第2押圧板40a〜40cを有し、従動軸7a〜7cの右側端部を自由支持する構成となっている。
上記第1弾性体35a〜35cは、図2(d)に示すように、例えば、球35d〜35fとコイルスプリング35g〜35iとにより構成し、また、第2弾性体38a〜38cも球38d〜38fとコイルスプリング38g〜38iとにより構成し、各球35d〜35f、38d〜38fが各従動軸7a〜7cを押圧する構成となっている。
なお、本発明の実施例では、第1押圧板36a〜36cおよび第2押圧板40a〜40cが固定板23と分離され、第1弾性体35a〜35cおよび第2弾性体38a〜38cをそれぞれ構成しているが、固定板23に各弾性体を直接設けてもかまわない。
固定板22の右側面には、図1及び図2(c)に示すように、従動軸7a〜7cの左側端部外周とその内周が勘合する、例えば球面軸受等の軸受26a〜26cが駆動軸1の軸線に対して円周方向に等角配置されて固定されており、従動軸7a〜7cは、その軸受26a〜26cの回動支持点24a〜24cを含む平面内に回動可能な構成となっている。
【0012】
図1および図2(a)に示すように、固定板22の凹部であって、回動支持点24a〜24cを挟んでローラ8a〜8cの反対側には、駆動軸1の軸線と直角方向で第1弾性体35a〜35cの押圧力による回動支持点回りのモーメント力を相殺する方向に従動軸7a〜7cを押圧する押圧板28a〜28cおよび圧電素子27a〜27cからなる第3押圧手段47a〜47cと、駆動軸1外周の接線方向で第2弾性体38a〜38cの押圧力による回動支持点回りのモーメント力を相殺する方向に従動軸7a〜7cを押圧する押圧板32a〜32cおよび圧電素子31a〜31cからなる第4押圧手段48a〜48cを備える。
図3(a)に示すように第3押圧手段47a〜47cは押圧板28a〜28cと圧電素子27a〜27cとからなる。押圧板28a〜28cは従動軸を押圧する側の固定端に変形部28d〜28fが設けられ、圧電素子27a〜27cは押圧板28a〜28cと変形部28d〜28fとの間に跨るよう固定し、圧電素子の伸縮により変形部28d〜28fが従動軸7a〜7cを押圧する。
また、第4押圧手段48a〜48cは図3(b)に示すように、押圧板32a〜32cと、圧電素子31a〜31cにより構成し、各押圧板32a〜32cは従動軸を押圧する側の固定端に変形部32d〜32fが設けられ、圧電素子31a〜31cは押圧板32a〜32cと変形部32d〜32fとの間に跨るよう固定し、圧電素子の伸縮により変形部32d〜32fが従動軸7a〜7cを押圧する。
さらにベース90には駆動軸1が貫通する穴を有したハウジング10が固定され、該ハウジング10には例えば、アンギュラ軸受等の対向するころがり軸受2の外輪が固定されている。このころがり軸受2の内周部には駆動軸1の第1段付き部が勘合した状態で軸受止め3により固定されている。
さらに、駆動軸1の第2段付部外周はハウジング10の右側円筒穴部に同心状に固定され、例えば、オルダム式等のカップリング4を介して送り駆動モータ5と連結している。送り駆動モータ5には一般的にその出力が一周を数千等分割したA相、B相パルスと、一周に1回発生するZ相パルスから構成されるロータリーエンコーダ6が固定されている。
一方、ベース90上に固定されたハウジング11内にはその外周が固定された深溝玉軸受等のころがり軸受12が設けられ、該ころがり軸受12の内輪には駆動軸1の左側段付部が挿入、勘合し、駆動軸1を保持している。この深溝玉軸受等のころがり軸受12はその外輪が駆動軸の軸心方向に移動可能に設けられている。
【0013】
上記のように構成した摩擦駆動装置において、圧電素子27a〜27c、圧電素子31a〜31cに対し、圧電素子31a〜31c、圧電素子27a〜27cの順に適当な通電電圧を印加すると、図17の点線に示すように駆動軸1の軸心と従動軸7a〜7cの軸心はある角度θで交差した状態でローラ8a〜8cの外周と駆動軸1の外周とがころがり接触する。
この状態で、送り駆動モータ5に通電すればローラ8a〜8cの外周と駆動軸1の外周の接触点は螺旋状に移動し、移動体13が送り方向に移動自在となる。この時、従動軸7a〜7c自身は回転せず、ころがり軸受9a〜9cの外輪が回転する外輪回転である。又、駆動軸1が1回転当たりに移動体13を移動する移動量L(リード量)は、駆動軸1の外形寸法をDとすれば、
L=π・D・sinθ …▲1▼
θ=sin−1{L/(π・D)} …▲2▼
で表され、例えば、D=30mm条件での交差角度とリード量Lの関係は図16の両対数グラフに示すように線形である。
【0014】
次に、従動軸7a〜7cの角度を調整する制御ブロック図について図4を用いて説明する。
同図において、6はロータリーエンコーダ、16は位置検出手段、27a〜27cは第3押圧手段の圧電素子、31a〜31cは第4押圧手段の圧電素子であり、これらは図1〜図2に示したものと同じである。
角度調整手段51は第1出力手段64、第2出力手段50、CPU58、カウンタ59a、データ入力59b、ROM60、RAM61とからなり、第1出力手段64は定電圧回路55、圧電素子27a〜27cを駆動するための駆動アンプ57a〜57c、前記定電圧回路出力を駆動アンプ57a〜57cに供給するか否かを制御するスイッチ56a〜56cとを備え、第2出力手段50は圧電素子31a〜31cを駆動するための駆動アンプ57d〜57f、D/A変換器63a〜63cとを備える。
CPU58には駆動アンプ割り込み用信号としてロータリーエンコーダ6の一周に1回発生するZ相パルス信号49と図示を省略したホストコンピュータからの指令信号88aが入力する。また、該CPU58には、その動作プログラムを書き込むROM60と、データを記憶するRAM61と、例えば、同期型のカウンタ59aと、リード量データLとその設定許容誤差データεを入力するデータ入力59bと、デジタルデータをアナログ信号に変換するD/A変換器63a〜63cが接続されている。
【0015】
前記カウンタ59aはロータリーエンコーダ6からのZ相パルス信号49と送り位置を検出する位置検出手段16のA相パルス信号62とを入力し、Z相パルス信号49の立ち上がりをトリガー信号としてA相パルス信号62のパルス数をカウントし、その出力はD/A変換器63a〜63cを介して圧電素子31a〜31c用の駆動アンプ57d〜57fに供給される。
さらにCPU58はスイッチ56a〜56cに駆動信号を出力し、該スイッチ56a〜56cが駆動されると、定電圧回路55より駆動アンプ57a〜57cに出力信号が入力し、圧電素子27a〜27cが駆動される。
以上のように構成した角度調整手段について図5の動作フロー図を用いて説明する。
予め入力されたリード量データLとその設定許容誤差データεを読み込み(ステップS1)、図示しない装置全体のホストコンピュータよりの指令信号88a待ち(ステップS2)、送り駆動モータ5の回転開始後にホストコンピュータよりの指令信号を入力すると(ステップS2にてYES)、角度算出手段65にて上記式▲2▼にもとづいて交差角度θの計算を行う(ステップS3)。ホストコンピュータからの指令信号が入力しない場合(ステップS2にてNO)、指令信号が入力するまで待機する。
設定角度θを算出した後、3つの従動軸に対する制御が順次行われ(ステップS4)、その処理制御はサブルーチンとなっている(ステップS5)。
サブルーチン内処理は、まず、スイッチ56a〜56cの駆動信号がOFFされ、圧電素子27a〜27cへの信号がOFFとなり、圧電素子27a〜27cを含む第2押圧手段47a〜47cが開放される(ステップS5−1)。つづいて、D/A変換器63aに対して上記角度算出手段65によって計算された交差角度θに相当するデジタルデータθが送出され(ステップS5−2)、駆動アンプ57dを介して圧電素子31aに計算された交差角度θに相当する変位電圧が印加され押圧手段48aが従動軸7aを駆動軸1の外周の接線方向に押圧する。その後、スイッチ56aへの駆動信号がONされて圧電素子27aへ適当な電圧に設定された定電圧回路55の出力信号が駆動アンプ57aを介して通電され、押圧手段47aだけが従動軸7aを押圧する(ステップS5−3)。
【0016】
この状態で、Z相パルス信号49の立ち上がりをトリガー信号として位置検出手段のA相パルス信号62のパルス数Naをカウントしたカウンタ59のカウント出力データが取り込まれ(ステップS5−4)、現在リード量算出手段66にて上記カウント出力データと位置検出手段の出力パルス分解能と掛け算し、現在リード量Laを求める(ステップS5−5)。
その後、設定リードLとの差分データΔLaを算出し(ステップS5−7)、その差分データΔLaが設定された設定許容誤差データε以下であればその角度データθaをRAM61に記憶し(ステップS5−8)、差分データΔLaが0よりも大きい場合は計算された角度データを例えばD/A変換器63aの最小分解能等に設定された、微少量Δθhだけ逐次増加し(ステップS5−9)、又、ΔLaが0よりも小さい場合は計算された角度データを微少量Δθhだけ逐次減少させる電圧補正手段67にて逐次繰り返して行われ(ステップS5−10)、ε≧ΔLaとなるまで行われる。
【0017】
上記は、サブルーチンになっており、上記の動作がa、b、cの順で行われ全てが完了するとスイッチ56a〜56cの駆動信号がOFFとなり圧電素子27a〜27cへの信号がOFFされて第2押圧手段47a〜47cが開放される(ステップS6)。その後、記憶された角度データθa、θb、θcに相当するデジタルデータがそれぞれD/A変換器63a〜63cに出力された後(ステップS7)、スイッチ56a〜56cの駆動信号がONされ、圧電素子27a〜27cへの信号がONとなり、第2押圧手段47a〜47cが押圧する(ステップS8)。
その後、再度Z相パルス信号49の立ち上がりをトリガー信号として、位置検出手段のA相パルス信号62のパルス数Nkをカウントしたカウンタ59のカウント出力データが取り込まれ(ステップS9)、位置検出手段の出力パルス分解能と掛け算して現在移動量Lkが求められ(ステップS10)、設定リードLとの差分データΔLkを算出し(ステップS11)、その差分データΔLkが設定された設定許容誤差データε以下であることを確認し(ステップS12)、図示しないホストコンピュータへ設定完了信号88bをONにして送出して動作完了する(ステップS13)。なお、差分データΔLkが設定された設定許容誤差データε以外の場合(ステップS12にてNO)、再度ステップS4に戻り、処理が行われる。
以上の構成によれば、加工、組み付け誤差等による機械的な位置誤差のために各従動軸心と駆動軸とのなす交差角度にばらつきを生じても各従動軸の角度位置を補正できる。
【0018】
次に、本発明の第2、3の実施例について説明する。上述した第1の実施例と説明が重複する部分については、説明を省略する。
第1実施例の構成要素である第3押圧手段の圧電素子27a〜27cの印加電圧に対する変位量の関係は図13に示すように一般的に履歴特性をもっている。そのため圧電素子27a〜27cへの印加電圧が比較的小さい場合は第3押圧手段47a〜47cの開放時の残変位量Dpは非常に小さいので問題とならないが印加電圧が比較的大きい場合、言い換えるとローラ8a〜8cの駆動軸1に対する押圧量(これを一般的に予圧と呼ぶ)を大きくすると残変位量Dpが大きくなるため完全に開放できない場合を生じる。
そこで、実施例2では、図6(a)に示すように、第3押圧手段の押圧板28a〜28cの変形部28d〜28fに例えば、抵抗値の変化によってその変形量を検出する歪みゲージ等の第1変形量測定手段30a〜30cを設け、その変形量測定手段30の出力信号と定電圧回路の設定電圧を比較してサーボ制御する構成としている。
【0019】
図7にそのブロック図を示す。第1出力手段64は上記第1実施例と同様に定電圧回路55、スイッチ68a〜68cおよび第1サーボ制御手段76を備え、該第1サーボ制御手段76は駆動アンプ57a〜57c、差動アンプ69a〜69c、補償回路70a〜70c、ゲイン調整器71a〜71c、増幅器72a〜72c、ブリッジ回路73a〜73cを有す。また、27a〜27cが圧電素子、30a〜30cは変形量測定手段である。
前記スイッチ68a〜68cはONの時、定電圧回路55の出力信号が差動アンプ69a〜69cに供給され、OFFの時に接地(0V:GND)に接続する。
このように構成した第1サーボ制御手段76を含む第1出力手段64では、第3押圧手段に取り付けられた変形量測定手段30a〜30cの抵抗値をブリッジ回路73a〜73cにより検知し、その信号を増幅器72a〜72cにより増幅し、現在押圧伸縮量として差動アンプ69a〜69cに一方の入力端に供給する。該差動アンプ69a〜69の他方の入力端には押圧伸縮設定信号である定電圧回路55の出力信号もしくは回路の0V(GND)信号と引き算され、該差動アンプ69a〜69cの出力が補償回路70a〜70c、ゲイン調整器71a〜71cを介して駆動アンプ57a〜57cに供給され、圧電素子27a〜27cを駆動する。
駆動アンプ57a〜57cへの入力信号に対する第3押圧手段47a〜47c変位量の間の周波数特性は、図18に示すように2次系であり、補償回路70a〜70cを調整することにより一般的なサーボ系の安定指標値である位相余裕40度以上とゲイン余裕15dB以上に設けている。
以上の構成によれば、圧電素子27a〜27cの印加電圧が比較的大きくても、言い換えるとローラ8a〜8cの駆動軸1に対する押圧量が大きくてもサーボ制御手段76が目標値となる定電圧回路55の出力信号、回路の0V(GND)信号と変形量測定手段30a〜30cからの出力信号を比較して目標値に収束するので残変位量Dpを生じなくなる。
【0020】
第2の実施例2で説明したのと同様の理由で第4押圧手段の圧電素子31a〜31cにも履歴特性がある。そのため大きなリード量を設定した場合、実施例1の図5で説明した電圧補正手段67による補正動作の最に時間がかかってしまう。そこで、第3の実施例では、図6(b)に示すように第4押圧手段48a〜48cを構成する押圧板32a〜32cの変形部32d〜32fに実施例2と同様に抵抗値の変化によってその変形量を検出する歪みゲージ等の変形量測定手段34a〜34cを設け、図8に示すように第2出力手段50のD/A変換器63a〜63cの出力信号(押圧伸縮設定信号)74d〜74fを目標値とした第2サーボ制御手段77を設けている。
第2サーボ制御手段77は上述した第1サーボ制御手段77と同様に差動アンプ69a〜69c、補償回路70a〜70c、ゲイン調整器71a〜71c、増幅器72a〜72c、ブリッジ回路73a〜73c、駆動アンプ57d〜57fにより構成し、第4押圧手段に設けた変形量測定手段34a〜34cからの出力をブリッジ回路73a〜73c、増幅器72a〜72cを介して得た出力信号(現在押圧伸縮量)75a〜75cとD/A変換器63a〜63cの出力との差に応じて第4押圧手段に設けた圧電素子31a〜31cを駆動する。
以上の構成では、実施例2と同様に目標値となるD/A変換器63a〜63cの出力信号と変形量測定手段34a〜34cからの出力信号を比較して目標値に収束するので残変位量Dpを生じなくなる。
上述した第1実施例〜第3実施例では、従動軸7a〜7cと駆動軸1の押圧調整範囲及び交差角度調整範囲は、第3押圧手段47a〜47c、第4押圧手段48a〜48cに用いている圧電素子27a〜27cと圧電素子31a〜31cの最大伸縮量内に限定されるため例えば、大きなリード設定条件の時は対応できなくなる。そこで第4の実施例では、大きなリード設定条件に対しても対応できる構成を説明する。
【0021】
次に、本発明の第4実施例について図9及び図10にて説明する。図9は本発明に係る摩擦駆動装置の第4の実施例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側側面図、(c)は部分破断面図である。また、図10は本発明に係る摩擦駆動装置の細部を示す図であり、(a)は図9におけるAD−D’断面図、(b)は図9におけるE−E’断面図、(c)は図9におけるG−G’断面図、(d)は図9におけるH−H’断面図である。なお、上述した第1実施1と同じ構成の部位には同じ符号を付し、第1実施例の説明と重複する部分の説明は省略する。
図10(a)に示すように第4実施例では、第3押圧手段47a〜47cの押圧板28a〜28cに雌ネジ部を設け、固定板22には調整ネジ29a〜29cを備えている。すなわち、第3押圧手段47a〜47cは押圧板28a〜28cと、圧電素子28a〜28cと調整ネジ29a〜29cにより構成している。
また、第4押圧手段48a〜48cは従動軸7a〜7cを駆動軸1外周の接線方向に押圧する方向に固定板122に設けた調整ネジ33a〜33cと、押圧板32a〜32cと、圧電素子31a〜31cにより構成し、従動軸7a〜7cを駆動軸1外周の接線方向の位置を調整可能としている。
また、押圧板28a〜28c、押圧板32a〜32cの位置調整後は、図10(c)に示すように、それぞれ固定具42a〜42c、43a〜43cにて送り方向に固定する構成としている。
なお、図10(b)に示したように、駆動軸1の軸線に対して円周方向に等角配置されて固定され、従動軸7a〜7cに設けたローラ8a〜8cが駆動軸1の外周から離間する方向に押圧する、例えば、押圧端部に球35d〜35fを設けたコイルスプリング等の3つの弾性体35a〜35cを有する第1押圧手段の押圧板36a〜36cと第2押圧手段の押圧板40a〜40cにもそれぞれ調整ネジ37a〜37c、41a〜41cを備え、駆動軸1の外周接線方向に押圧する位置を調整可能としているが、弾性体35a〜35c、弾性体38a〜38cの変形ストロークが十分に大きい場合は必要ない。これら押圧板36a〜36c、40a〜40cの位置調整後は図10(d)に示すようにそれぞれ固定具45a〜45c、46a〜46cにて送り方向に固定する構成としている。
以上の構成によれば、設定する大きなリード条件に対して上記第1実施例〜第3実施例で述べた角度補正動作を行う前に手動にて、押圧板28a〜28cと押圧板32a〜32cとを調整ネジ29a〜29c、調整ネジ33a〜33cにより設定リード近傍に位置調整して圧電素子27a〜27cと圧電素子231a〜31cの最大伸縮量内に入るようにした後、角度補正動作を行うことができる。
【0022】
上記第1〜第4実施例では、ローラ8a〜8cの駆動軸1に対する予圧を直接制御せず圧電素子27a〜27cの伸縮量を指令値通りに設定する実施例としてきた。この場合、従来技術の問題点で説明したように現在予圧量が定量的に確認できない。そこで、これから説明を行う第5〜第7実施例では、ローラ8a〜8cの駆動軸1に対する予圧を制御する構成を説明する。
まず、第5実施例について、図11の断面図と図12を用いて説明する。
第1出力手段64は、可変電圧回路78と、一方の端子を0V、他方の端子に可変電圧回路78の出力信号が接続され外部信号によりON/OFFする切換スイッチ68a〜68cと、第3サーボ制御手段83とからなる。また、第3サーボ制御手段83は差動アンプ69a〜69c、補償回路70a〜70c、ゲイン調整器71a〜71c、駆動アンプ57a〜57c、増幅器81a〜81c、ブリッジ回路82a〜82cを備える。さらに、押圧板28a〜28cと回動支持点24a〜24cとローラ8a〜8c間であって、従動軸7a〜7cの外周部に従動軸7a〜7cの押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段46a〜46cと、圧電素子27a〜27cを有す。第3サーボ制御手段83の差動アンプ69a〜69cでは切換スイッチ68a〜68cの出力信号である押圧設定信号79a〜79cと増幅器81a〜81cの出力信号80a〜80c(現在押圧量)とを比較する。
この構成では、従動軸7a〜7cに設けたローラ8a〜8cの駆動軸1への予圧量を従動軸7a〜7cの押圧方向の変形量として検出している。この時、押圧は従動軸7a〜7cの弾性変形内で行われ、圧電素子27a〜27cへの印加電圧に対する予圧量の関係は線形になることは言うまでもない。さらに、この実施例では、可変電圧回路78の出力を予圧設定信号としているので予圧量を手動にて自在に設定できる構成となっている。
【0023】
次に第6の実施例について図14を用いて説明する。実施例5の第1出力手段64の構成における可変電圧回路78と切換スイッチ(68)の部分をCPU58へ接続されたD/A変換器84として、その出力信号85である押圧設定信号と変形量測定手段46a〜46cの出力信号80a〜80cである現在押圧量とを比較してサーボ制御する第4サーボ制御手段86から構成している。
この構成では、角度調整時の押圧開放は、D/A変換器84の出力が0Vとなるデジタルデータが出力される構成であり、又、第1〜第5実施例で説明したCPU58からのスイッチ操作信号の構成はなく、例えば、適正な予圧設定条件データをROM60に格納されるプログラム内に定数として記述しておけば、適正な予圧を瞬時に設定でき、ローラや駆動軸の磨耗による経年変化に伴う予圧の再調整作業等を行わなくてよい。
実施例6の構成では、押圧手段47a〜47cの圧電素子27a〜27cへの押圧設定信号が一つしか与えられないので、例えば、従動軸7a〜7cの加工ばらつき等により押圧時の変形量にばらつきが生じたり、ブリッジ回路や変形量測定手段46a〜46cに用いている歪みゲージ等のばらつきがあると同一の予圧量が得られない場合がある。これを回避する構成を第7実施例にて説明する。
【0024】
第7実施例では、図15に示すように、上記第6実施例において単一のD/A変換器84を用いていたのに対し、複数の圧電素子27a〜27cへの押圧設定信号を独立に与える複数のD/A変換器84a〜84cを備え、複数のD/A変換器63a〜63c出力と各変形量測定手段34a〜34c出力とによって圧電素子31a〜31cをサーボ制御する第5サーボ制御手段を備えた点が第6実施例と異なる。この構成では、例えば、従動軸7a〜7cの押圧量と変形量の関係を予めデータ取りして把握しておき各々の異なる押圧設定信号を複数のD/A変換器84a〜84cより出力することで従動軸7a〜7cの加工ばらつきやブリッジ回路、変形量測定手段46a〜46cに用いている歪みゲージ等のばらつきによる予圧の変動を抑えることができる。
なお、上記第1〜第7実施例では説明を行わなかったが、図19に示すように従動軸7a〜7cは、押圧手段47a〜47cの押圧点と回動支持点24a〜24c間距離をL1、回動支持点24a〜24cとローラ8a〜8c間距離をL2とした時にL2>L1として変位拡大機構を構成している。この構成によれば、押圧手段47a〜47cに用いる圧電素子27a〜27cの伸縮量が小さくてもローラ8a〜8cと駆動軸1とのころがり接触端では大きな押圧ストロークが得られるので駆動軸回りに配置する機構を小さく構成できることは言うまでもない。
【0025】
【発明の効果】
請求項1記載の摩擦駆動装置においては、第3押圧手段および第4押圧手段を備えたので、加工、組み付け誤差等による機械的な位置誤差のために生じる各従動軸と駆動軸とのなす交差角度のばらつきを補正することができ、各ローラ軸芯と駆動軸とのなす角度が精密に設定され、駆動軸と各従動軸のローラ間でリード誤差によるすべりを発生せず、安定した送り制御が実現でき、送り精度の向上がはかれる。
請求項2、3記載の摩擦駆動装置においては、第1出力手段として押圧伸縮設定信号と変形量測定手段1の出力信号である現在押圧伸縮量とを比較してサーボ制御する第1サーボ制御手段1を設け、又、第2出力手段としてD/A変換器の出力信号である押圧伸縮設定信号と変形量測定手段2の出力信号である現在押圧伸縮量を比較してサーボ動作を行う第2サーボ制御手段を設けたので、ローラの駆動軸外周への押圧(予圧)動作と各従動軸と駆動軸との交差角度を補正する角度補正動作を再現性よく行えるので、上記請求項1の効果以上に安定した送り制御が実現でき、送り精度の向上がはかれる。
請求項4記載の摩擦駆動装置においては、角度調整手段に従動軸を駆動軸外周の接線方向に押圧する方向に位置調整可能となるよう押圧板および調整ネジを備えたので、大きな交差角度でも上記角度補正動作が行え、広いリード条件範囲において安定した送り制御が実現でき、送り構成要素としての汎用性を高くすることができる。
【0026】
請求項5、6記載の摩擦駆動装置においては、第1出力手段として切換スイッチの出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段3の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第3サーボ制御手段を設けて、あるいは、第1出力手段としてD/A変換器の出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段3の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第4サーボ制御手段を設けたので、ローラの駆動軸に対する予圧量を従動軸の変形量に置換した信号で予圧サーボを行い、適正な予圧条件に瞬時に設定でき、ローラや駆動軸の磨耗による経年変化に伴う予圧の再調整も容易となり、部品交換時の予圧量再現性も良好となり組立性の向上がはかれる。
請求項7記載の摩擦駆動装置においては、第1出力手段として、複数のD/A変換器の出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段3の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第5サーボ制御手段を設けて、ローラの駆動軸に対する予圧量を従動軸の変形量に置換した信号で予圧サーボを行い、かつ各々の押圧手段1への押圧設定値を独立に与えるようにしているので、ベースに固定される案内機構の固定部である支柱の送り方向真直と駆動軸の送り方向真直に誤差を生じて組み立てが行われても、移動体が送り方向に動作した時の組立誤差による予圧変動を生じることがなく、各々のローラと駆動軸外周で発生する駆動力にもばらつきを発生しないので、長ストロークの駆動でも安定した送り動作が実現でき送り制御精度及び組立性の向上がはかれるとともに簡便な案内機構で構成できるので装置が安価となる。
請求項8記載の摩擦駆動装置においては、従動軸は、押圧手段の押圧点と回動支持点間距離をL1、回動支持点とローラ間距離をL2とした時にL2>L1として変位拡大機構を設けて、押圧手段に用いる圧電素子の伸縮量が小さくても大きな押圧ストロークが得られるので駆動軸回りに配置する機構を小さくでき、装置の小型化がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦駆動装置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側側面図、(c)は部分破断面図である。
【図2】本発明に係る摩擦駆動装置の細部を示す図であり、(a)は図1におけるA−A’断面図、(b)は図1におけるB−B’断面図、(c)は図1におけるC−C’断面図、(d)は弾性体部の詳細を示す図である。
【図3】(a)は第3押圧手段の構成を示す図、(b)は第4押圧手段の構成を示す図である。
【図4】従動軸の角度を調整する制御ブロック図を示す図である。
【図5】角度調整手段の動作フローを示す図である。
【図6】(a)、(b)は本発明に係る摩擦駆動装置の第3および第4押圧手段の変形を示す図である。
【図7】本発明に係る摩擦駆動装置の第1サーボ制御手段を含む第1出力手段の構成を示す図である。
【図8】本発明に係る摩擦駆動装置の第2サーボ制御手段を含む第2出力手段の構成を示す図である。
【図9】本発明に係る摩擦駆動装置の第4の実施例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側側面図、(c)は部分破断面図である。
【図10】本発明に係る摩擦駆動装置の細部を示す図であり、(a)は図9におけるAD−D’断面図、(b)は図9におけるE−E’断面図、(c)は図9におけるG−G’断面図、(d)は図9におけるH−H’断面図である。
【図11】本発明に係る摩擦駆動装置の第5の実施例を示す図である。
【図12】本発明に係る摩擦駆動装置の第5の実施例における第3サーボ制御手段を含む可変押圧制御手段のブロック図である。
【図13】圧電素子の印加電圧と変位量特性を示す図である。
【図14】本発明に係る摩擦駆動装置の第4サーボ制御手段を含む第1出力手段の構成を示す図である。
【図15】本発明に係る摩擦駆動装置の第5サーボ制御手段を含む第1出力手段の構成を示す図である。
【図16】交差角度とリードとの関係を示す図である。
【図17】従動軸の交差を示す図である。
【図18】駆動アンプへの入力信号と第3押圧手段の変位量との間の周波数特性(伝達関数)を示す図である。
【図19】本発明に係る摩擦駆動装置の従動軸の変位拡大機構を説明するための図である。
【符号の説明】
1 駆動軸、7 従動軸、8 ローラ、13 移動体、14 ころがり軸受け(案内機構)、15 光学式リニアエンコーダ(位置検出手段)、24 回動支持点、26 球面軸受、30a〜30c、34a〜34c、46a〜46c 変形量測定手段、29、33、37、41 調整ネジ、44a〜44c 第1押圧手段、44a’〜44c’ 第2押圧手段、47a〜47c 第3押圧手段、48a〜48c 第4押圧手段、50 第2出力手段、51 角度調整手段、58 CPU、60 ROM、61 RAM、64 第1出力手段、66 現在リード量算出手段、76 第1サーボ制御手段、77 第2サーボ制御手段、83 第3サーボ制御手段、86 第4サーボ制御手段、87 第5サーボ制御手段

Claims (8)

  1. 光ディスク用原盤露光装置等に用いる送り装置であって、駆動軸と、該駆動軸に対して傾き角度をもって傾斜する複数の従動軸に設けられ前記駆動軸の外周にころがり接触するローラと、前記駆動軸の回転により上記従動軸、ローラとともに移動する移動体と、移動体を駆動軸の軸線方向に案内する案内機構と移動体の送り位置を検出する位置検出手段を設けた摩擦駆動装置において、前記駆動軸の軸線に対して円周方向に等角配置され、該駆動軸の外周にころがり接触するローラを設けた複数の従動軸の片端を球面軸受にて支持し、その回動中心である回動支持点を設け、他端を従動軸に設けたローラが駆動軸外周から回動支持点を支点として離間する方向に押圧する第1押圧手段と、駆動軸外周の接線方向に押圧する第2押圧手段とにより前記ローラを自由支持し、前記回動支持点を挟んで前記ローラと反対側に、前記移動体に固定され、駆動軸の軸線と直角方向で前記第1押圧手段の押圧力による回動支持点回りのモーメント力を相殺する方向に従動軸を押圧する第3押圧手段と、駆動軸外周の接線方向で前記第2押圧手段の押圧力による回動支持点回りのモーメント力を相殺する方向に従動軸を押圧する第4押圧手段と、CPUと、動作プログラムが記憶されたROMと、データの書き込み/読み出しを行うRAMと、前記CPUの指令により前記第3押圧手段の複数の圧電素子への印加電圧を独立にON/OFFする第1出力手段と、送りの設定リード量に対して従動軸の傾き角度を算出する角度算出手段と、その算出角度に相当する出力電圧を前記第4押圧手段の複数の圧電素子に印加する第2出力手段と、送り駆動モータの回転角度を検出するロータリーエンコーダの1回転当たりの原点検出信号と位置検出手段の位置検出信号に基づいて現在リード量を算出する現在リード量算出手段と、現在リード量と設定リード量を比較して第4押圧手段の圧電素子への印加電圧を増減する電圧補正手段を設けた角度調整手段からなることを特徴とする摩擦駆動装置。
  2. 前記第1出力手段は、定電圧回路と、一方の端子を0V、他方の端子に定電圧回路の出力信号が接続され外部信号によりON/OFFする切換スイッチと、第3押圧手段の押圧板の変形部に設けた変形量測定手段と、切換スイッチの出力信号である押圧伸縮設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧伸縮量とを比較してサーボ制御する第1サーボ制御手段から構成されることを特徴とする請求項1記載の摩擦駆動装置。
  3. 前記第2出力手段は、D/A変換器と、第4押圧手段の押圧板の変形部に設けた変形量測定手段と、D/A変換器の出力信号である押圧伸縮設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧伸縮量を比較してサーボ動作を行う第2サーボ制御手段から構成されることを特徴とする請求項記載の摩擦駆動装置。
  4. 前記角度調整手段は、第3押圧手段と、該第3押圧手段の押圧板に設けた調整ネジによって従動軸を押圧する方向に前記第3押圧手段の押圧板を位置調整可能となるように構成し、かつ、第4押圧手段と、該第4押圧手段の押圧板に設けた調整ネジによって従動軸を駆動軸外周の接線方向に押圧する方向に前記第4押圧手段の押圧板を位置調整可能となるよう構成したことを特徴とする上記請求項記載の摩擦駆動装置。
  5. 第1出力手段は、可変電圧回路と、一方の端子を0V、他方の端子に可変電圧回路の出力信号が接続され外部信号によりON/OFFする切換スイッチと、第3押圧手段の押圧板と回動支持点とローラとの間であって、従動軸の外周部に従動軸の押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段と、前記切換スイッチの出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第3サーボ制御手段から構成されることを特徴とする上記請求項記載の摩擦駆動装置。
  6. 第1出力手段は、一つのD/A変換器と、第3押圧手段の押圧板と回動支持点とローラ間であって、従動軸の外周部に従動軸の押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段と、D/A変換器の出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第4サーボ制御手段から構成されることを特徴とする上記請求項記載の摩擦駆動装置。
  7. 第1出力手段は、第3押圧手段の複数の圧電素子への押圧設定信号を独立に与える複数のD/A変換器と、第3押圧手段の押圧板と回動支持点とローラ間であって、従動軸の外周部に従動軸の押圧方向の変形量を検出する変形量測定手段と、複数のD/A変換器の出力信号である押圧設定信号と変形量測定手段の出力信号である現在押圧量とを比較してサーボ制御する第5サーボ制御手段から構成されることを特徴とする上記請求項記載の摩擦駆動装置。
  8. 従動軸は、押圧手段の押圧点と回動支持点間距離をL1、回動支持点とローラ間距離をL2とした時にL2>L1として変位拡大機構を形成していることを特徴とする上記請求項記載の摩擦駆動装置。
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