JP4082008B2 - シート基材に結晶性化合物薄膜を形成する方法およびそのための装置 - Google Patents

シート基材に結晶性化合物薄膜を形成する方法およびそのための装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートまたはロール形状基材への結晶性化合物薄膜の製造方法およびその製造装置に関してである。
シートまたはロール型の結晶性化合物薄膜は、電子回路、光回路、高機能デバイス等に必要な機能素子作製の基礎技術である。特に、この薄膜を設けたシートまたはロール基材の応用は、軽量・高機能で、各種回路ボード、CCDカメラや液晶表示素子等の各種表示装置、カラーイメージセンサー等、特に携帯電話やシート型パソコン等の携帯端末の部品に好適である。
【0002】
【従来の技術】
現在シート型パソコンやシート型表示素子のため、シート型半導体回路基板の研究・技術開発が盛んに行われている。主にこれらの研究・開発で検討されている薄膜形成方法は、スパッタリング法、イオンプレーテイング法、印刷法、スピンコート法やゾルゲル法などである。しかし、これらの方法による薄膜形成方法では、得られる薄膜は結晶性が低く、良い電気特性や光学特性が得られず実用化には多くの課題を抱えている。また後記ゾルゲル法は高温加熱処理が必要なため基材の制限が厳しくフレキシブルなフイルム基材への展開が得られず、実用に耐えられる特性が出ていない。
【0003】
一方、光触媒作用あるいは光起電力作用を有する光半導体は近年その特異な応用により注目されている。たとえば光触媒膜材料である二酸化チタンは、その光触媒作用に基づく酸化作用により、表面に付着した有機材料物質の付着汚れ、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、悪臭物質等の空気汚染物質吸着、付着細菌等が酸化分解されるといわれており、具体的な応用例として建物等の外壁に二酸化チタン光触媒を貼りつけ、太陽光のもとで空気汚染物質を除去する方法(特開平6−315614号公報)、病院内の壁や手摺等に二酸化チタン触媒を貼りつけ、細菌等を死滅させる方法(特開平7−102678号公報)、排水中に二酸化チタン触媒の粉末を分散させ、紫外線ランプの光を照射して水中の汚物を分解する方法(特開平5−92192号公報)等、数多くの応用が提案されている。
【0004】
また、光触媒薄膜は、その光反応に基づき、その表面が高度に親水化されることも知られており、鏡(浴室、自動車)、レンズ、ガラス窓等の防曇への応用が種々考えられている。
たとえば、高圧送電線、列車外装部、建物外壁、自動車ガラス、窓ガラスの表面に光半導体薄膜を形成すると、その膜の表面の親水性に基づき、疎水性の汚れが付着しにくいというほか、汚れが付着しても分解され、かつ、前記の光触媒薄膜により、その汚れあるいはその分解物が、雨あるいは水洗等により容易に洗い流されるという自浄作用が得られることも知られている。
以上の電気特性、光学特性、光起電力特性、光触媒特性の良いものは、高い結晶性を有する化合物薄膜であることが必要である。
【0005】
これらの薄膜の形成方法について、酸化チタン薄膜を例にして説明する。
酸化チタン薄膜は、結晶性薄膜でないと光起電力、光触媒性、超親水性等の機能は得られない。結晶性薄膜を得るためには、アモルファスまたは低結晶性酸化チタン薄膜を、400℃以上に加熱する必要があり、たとえば、チタンアルコキシド、チタンアセテート等のチタン化合物を加水分解し、これを基材の表面に塗布し乾燥させた後、500℃以上で燒結させてアナターゼ型二酸化チタン膜を得る方法や、蒸着法によりアモルファスの二酸化チタン層を形成した後、得られたアモルファスまたは低結晶性二酸化チタン層を400℃以上でアニールしてアナターゼ型二酸化チタンを含む層とする方法や、金属チタンの表面を500℃以上で酸化させ結晶化させる方法や、基材を350℃以上に加熱した状態でRFスパッタリング法によりアナターゼ型二酸化チタン膜を得る方法等が知られている。
【0006】
このような従来方法において、アモルファス酸化チタン膜を焼成して高結晶性酸化チタン薄膜を形成する方法は、基材を長時間高温に加熱する必要があるので工程を稼動させる際の維持費が高く、また、後述のプラスティック基材にこの方法で高結晶性酸化チタン薄膜を形成することは、基材の耐熱性の点から実際には使用不可能である。
RFスパッタリング法は、光起電力の高いアナターゼ型酸化チタンを得る方法として優れた方法であるが、400℃以上の基材の耐熱性が必要であり、また高価な装置を用いる必要があり、この方法によりプラスティック基材上に高結晶性酸化チタン薄膜を作製することは困難である。さらに、プラスティック基材として350℃以上の耐熱性を有するものもまったくないわけではないが、RFスパッタリング法に適用するには耐熱性は不充分であり、さらに、光透過性を備え、かつコストの点をも両立させるプラスティック基材は現在のところ知られていない。
【0007】
ところで、高結晶性酸化チタン薄膜は、前記のごときその表面の光触媒反応に基づく、防汚、抗菌、防曇等の特性の他、光起電力作用も注目されている。光起電力は、導電性薄膜と高結晶性酸化チタン薄膜を設けた基板を、水または電解作用を有する液の中に浸漬し、前記薄膜に紫外線を照射すると、その照射部分に光起電力が発生する現象である。この現象を利用することにより、たとえば、照射部分に選択的に電着膜を形成することができる。すなわち、膜形成性の電着物質を含む電着液に、前記基材を浸漬し、前記導電性薄膜と液中に設けた対向電極との間にバイアス電圧を印加しあるいは印加しない状態で、前記薄膜に紫外線のパターン照射すると、前記薄膜の光パターン照射部分に光起電力が発生し、光電流が流れ、その部分に膜形成物質が電着される。前記薄膜の光起電力が小さい場合には、バイアス電圧を印加することも可能である。
本発明者等は、先に、前記光起電力を利用した、カラーフィルター等の極めて微細なパターンを解像度よく形成する方法を提供した(特開平11−174790号公報、特開平11−133224号公報、特開平11−335894号公報等)。
【0008】
液晶カラーディスプレイパネルには、最近では、(1)薄膜トランジスタ(以下、「TFT」ということがある。)等の駆動素子と画素電極とをマトリックス状に配列した駆動側基板と、カラーフィルタおよび対向電極を備えるフィルタ側基板とをスペーサを介在させて位置合わせしながら対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入してなるもの、(2)カラーフィルタが前記駆動側基板に直接形成されたカラーフィルタ一体型駆動基板と、電極を備える対向基板とをスペーサを介在させて簡易に対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入してなるものとがあり、いずれの場合のカラーフィルターも、前記のごとき公報に記載の光半導体薄膜を用いる光電着法により作製することが可能である。
【0009】
前記(1)の液晶ディスプレイパネルでは、カラーフィルター作製時に露光マスクが必要であること、駆動側およびフィルタ側の両基板間の位置合わせ精度に誤差が生じやすく、表示品質や歩溜まりの低下を招くといった問題がある。一方、(2)は、光電着時に、駆動側基板に設けたTFTにより選択的にバイアス電圧を印加すること(アドレッシング)ができるので、カラーフィルターを作製する際に露光マスクが必要でなく、かつ、両基板の位置合わせの必要がないので、現在では後者によるものが注目されている。しかし、後者の方法においては、スルーホールなどを用いてカラーフィルターを導電化する必要があるのでコストアップとなる。
【0010】
特に最近は、携帯電話や小型パソコン等の携帯端末となる小型機器の需要が急速に伸び、それに伴ないモバイルの観点から様々な検討がなされている。特に、携帯を目的とした機器の場合、軽量薄型で、屋外等への運搬性や外力に対する耐衝撃性が重要視され、かつ落下等に対する破損を生じ難いことが要求される。
このモバイルの観点から、最近では、液晶カラーディスプレイパネルを構成する基板として、従来のガラス基板に代えてフレキシブルなプラスティック基板の使用が注目されている。一般に、液晶フレキシブル基板は、透明で耐熱性が高く、ガスバリアー性に優れたプラスティック基材が求められるが、現在、最も優れた耐熱性を有しているとされるポリイミド材でも、耐熱性は300℃程度しかないので、プラスティック基板に前記のごとき結晶性光半導体薄膜を設けることは難しく、またポリイミド材フィルムは延伸処理があるため偏光性があったり着色しているため使用が難しく、またプラスティック基板に光電着法によりカラーフィルターを形成することは、商業的には実現されていない。
【0011】
また、現在、プラスティック基板を用いる液晶パネルは、TFT駆動回路が要らないSTN方式が知られているだけである。その理由は、TFT等に用いられるキャリア濃度の高い多結晶の半導体薄膜を形成するには、高温処理工程が必要であり、プラスティック基板にTFT駆動回路を作製することは、現状では不可能となっているからである。しかし、社会の要求は高画質化を目指しているため、プラスティック材のTFT液晶表示素子の実現は遅かれ早かれ実現化せねばならない目標である。そして、プラスティック基板を用いる液晶パネルに用いるカラーフィルターの作製法としては、(1)インクジェット法 (2)電着法が実用化されているだけである。インクジェット法は、フォトリソグラフィ工程を経ないというメリットを有するが、混色を生じ易く、解像度や位置精度の点で劣っている。また、電着法は、画素に対応して連続的電極を形成する必要があるため、パターン形状がストライプ型等に限定され、TFT駆動回路を備えた液晶パネルには用いることができない。
そのために、前記の光半導体薄膜だけでなく、TFT回路に用いるごとき半導体薄膜を低温で効率よく作製することが求められている。
【0012】
シート状プラスティック基材に半導体薄膜を形成する方法としては、特開平6−11738号公報に、MIM装置の半導電性結晶性シリコン膜を作製する方法として、絶縁性シリコンベース化合物材料の薄膜表面を、レーザ光等のエネルギービームで照射し、表面層を溶融し、表面層を結晶性シリコン膜に変換し、その下層に絶縁性シリコンベース化合物材料を残す方法が記載されている。また、特開平5−315361号公報には、プラスティックフィルム上に半導体薄膜を形成する方法として、プラスティックフィルムに非晶質材料膜と酸化物絶縁膜をこの順に形成し、酸化物絶縁膜側からレーザ光を照射し、非晶質材料膜と酸化物絶縁膜の界面近傍において非晶質材料膜を溶融し結晶化させるという、プラスティックフィルムにレーザ光による熱的ダメージを与えず、結晶化した半導体膜を作製する方法が記載されている。さらに、特開平5−326402号公報には、同様に、プラスティックフィルムにレーザ光による熱の影響をなくすため、プラスティックフィルムに熱バリア層を形成した後、アモルファスシリコン層をこの上に形成し、次いでレーザ光を照射して多結晶シリコン層を形成する方法が記載されている。
前記の方法は、いずれも、アモルファスの半導体膜をレーザ光でアニールすることにより結晶化させる方法であるが、レーザ光による熱(1000℃になることがある)の影響がプラスティックフィルムに及ぼさないように、アモルファス半導体層の表面だけを溶融して結晶化させるか、あるいは、熱バリア層を設ける方法である。したがって、これらの方法は、アモルファス層全体を結晶化させることは不可能である。耐熱性を設ける為の制約が大きく実用上大きな問題と成っている、そして高価なレーザ光照射装置が必要であることも大きな課題となっている。その上、レーザ光スポットをフィルム全体に走査することが必要であるので、フィルムを大面積化することが難しく、また、全体を結晶化させるのに長時間処理を要しかかるという生産効率からも不利な点となっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、アモルファスまたは低結晶性薄膜の形成工程および該薄膜を結晶性薄膜に変換する工程を連続的に、かつ前記各工程を低温でかつ簡便に実施することができる、結晶性薄膜の形成方法、およびそのための装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記課題は、以下のプラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法およびそのための装置を提供することにより解決される。
(1)連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、光の波長が薄膜の膜厚の3倍以下である紫外光ランプからの光を照射する第2の工程を有する、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
(2)連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光をプラスチックシート基材の温度に従って光量制御しつつ照射する第2の工程を有し、第2の工程においてプラスチックシート基材の温度に従って光量制御をする、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
【0015】
(3)連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光をパルス状に照射する第2の工程を有する、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
(4)連続的に搬送されるプラスチックシート基材を洗浄および/または脱気する洗浄および/または脱気工程、洗浄および/または脱気されたプラスチックシート基材に真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光を照射する第2の工程を有する、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
(5)前記洗浄および/または脱気が、プラスチックシート基材に対する加熱処理および/または放電処理により行われることを特徴とする前記(4)に記載のプラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のシート基材に結晶性薄膜を形成する方法は、少なくとも、次ぎの2つの工程、すなわち、(1)連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜(以下において、アモルファスおよび低結晶性薄膜を含めて、単に「アモルファス薄膜」ということがある。)を形成する第1の工程、および(2)水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光を照射する第2の工程を有し、第1の発明は第2の工程において光の波長が薄膜の膜厚の3倍以下であることを特徴とし、第2の発明は第2の工程においてプラスチックシート基材の温度に従って光量制御をすることを特徴とし、第3の発明は第2の工程において光をパルス状に照射することを特徴とし、第4の発明は第1の工程の前にプラスチックシート基材を洗浄および/または脱気する工程を行うことを特徴とする。本願発明は、アモルファス薄膜を形成する工程と、アモルファス薄膜を結晶性薄膜に変換する工程を連続的に行うことで、結晶性薄膜の用途に応じた種々の機能性の薄膜を簡便に作製することができる。
【0021】
特に、本発明の第2の工程では、アモルファス薄膜が形成されたシート基材を50〜300℃温度範囲に維持しながら、該薄膜が吸収する波長の波長の光を該薄膜に照射するだけで高結晶性薄膜が得られるので、従来の、アモルファス薄膜をレーザ光照射により1000℃近い温度でアニールして結晶性の薄膜を得る方法に比較し、加熱温度は非常に低くてもよい。また、レーザ光スポットを走査する必要がなく、ランプ型光照射装置により全面に特定光線を照射するだけでよい。したがって、従来の方法に比較して、短時間で、かつ大掛かりな装置も必要とせず大面積の面型結晶性薄膜を製造することが可能であり、製造装置コストや製造価格も格段に低くなる。
また、従来、プラスティック基材の上に化合物薄膜を形成するためには特別な工程や装置が必要であったのに対し、本発明により、簡便なプロセスおよび装置によって、プラスティック基材の上に高結晶性薄膜を作製することが可能になった。
【0022】
また、以前では、ミラー、ガラス等の表面に光触媒薄膜を設ける防曇処理、防汚処理、親水化処理等を施すには、ミラー、ガラス等の表面にまず酸化チタンのアモルファス薄膜を形成した後、これを400℃以上で焼成し結晶化度を制御する必要があり、高温処理のため複雑で高精度な制御手段を伴う方法であった。本発明の製造方法により、低耐熱性プラスティック基材に高結晶性薄膜を設けた基板が容易に得られる様になり、簡便に所望の高結晶性化合物膜を得ることができるようになった。
【0023】
特に、シート状プラスティック基材上にTFT駆動回路を作製したり、あるいは、さらにこれに光起電力発生用高結晶性薄膜を設けたものを電着基板とし、光電着法によりカラーフィルター膜を形成することも可能になった。カラーフィルターの場合、基材に光透過性が要求されるが、光透過性があるプラスティック基材でかつ偏光性のない特性の基材としては現在のところ、耐熱温度が200℃前後のものしかないので、200℃前後の加熱処理により、光電変換効率(光起電力)が充分大きい高結晶性薄膜の形成は不可能であったが、本発明により可能となった。したがって、ますます軽量化や耐衝撃性の改良が要求される、携帯液晶表示パネルへの応用が期待される。
【0024】
先ず、本発明の第1工程について説明する。
本発明の方法に用いられるプラスチックシート基材(以下においてプラスチックシート基材を単に「シート基材」ということがある。)は、連続的に搬送可能であることが必要であるので、シート基材は可撓性を有するフィルム、シートあるいは板からなる連続シート基材であるか、あるいは、可撓性を有していなくても、搬送手段、たとえば搬送ベルトの上に載せられ連続的に搬送可能であるような形状および大きさを有しているものであればよい。
前記プラスティック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアラミド、ノルボルネン樹脂(JSR社製、商品名:アートン)等が挙げられる。上記の樹脂の中でノルボルネン樹脂は、広い波長範囲において光透過率が高くかつ耐熱性に優れた樹脂として近年注目されているものである(月刊「化学経済」1997年12月号別冊)。
【0025】
本発明において用いるシート基材は、光透過性材料であることが、作製される結晶性薄膜形成シート基材の用途を、種々拡大する意味において好ましい。
さらに、光電着法において用いる光電変換効率の高い半導体薄膜を形成するには、加熱温度を比較的高くする方が好ましいため、基材としてプラスティック基材を用いる場合は、耐熱性がより高いプラスティック基材が必要である。耐熱性が高いプラステック基材としては、ポリイミドが代表的な材料であるが、液晶表示素子に用いる場合には透明性が求められ、この場合には、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリサルフォン(PS)などが用いられる。特に、耐熱性PCやPESは透明性が高くて、耐熱性が230度程度まで得られること、また、光学異方性が少ないことから、液晶部品用の薄膜着膜用基材としては最適である。
プラスティックの耐熱性はガラス転移点で表すことができ、本発明のシート基材に用いるプラスティック材料のガラス転移点は10〜250℃程度のものを用いることができる。
【0026】
シート基材として連続したプラスティックシート基材を用いる場合の厚さは、シート基材の安定な搬送性やハンドリング、シート基材自体の剛性力により成膜した薄膜を安定に維持することなどを考慮して、7〜500μm程度が適しており、75〜260μmの厚さがより好ましい。また、非連続のプラスティックシート基材を搬送ベルトなどの搬送手段により搬送する場合においても、ハンドリングの点を考慮すると、前記のような厚さを有するシート基材を用いることが好ましい。
シート基材の熱安定性を高くするため、シート基材に極く薄い熱絶縁性あるいは耐熱性の薄膜を、結晶性薄膜を設ける側に形成することができる。この薄膜は、耐熱性が180℃以上、好ましくは300℃以上で、熱伝導率が0.02cal/sec・℃・cm3以下、好ましくは0.008cal/sec・℃・cm3以下である低熱伝導性の材料から形成でき、膜厚は0.01から50μm、好ましくは0.07から1.9μm程度が適切である。このような薄膜としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化ジルコニア、酸化アルミ等のセラミックス等が用いられる。
【0027】
また、シート基材にさらにITO等の光透過性導電性薄膜を設けたものを用いて本発明の結晶性半導体薄膜形成を行うことができる。得られる光透過性導電性薄膜と結晶性半導体薄膜が形成されたシート基材を用いて、光電着法によりカラーフィルターを作製する場合には、シート基材も光透過性であることが必要である。なお、後述のように、前記ITO等の導電性薄膜を、本発明の方法により形成することもできる。
また、得られる結晶性薄膜の機能・用途に応じて、シート基材に酸化珪素、酸化ジルコニア、窒化珪素等の光透過性薄膜、シリコーン、炭化珪素、窒化ガリウム等の半導電性薄膜、ITO等の光透過性導電性薄膜、パターン化膜、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の光反射防止膜、酸化ケイ素あるいは窒化ケイ素等のガスバリアー膜を設けたものも、本発明の結晶性薄膜の形成に用いることができる。
【0028】
本発明の第1工程で形成するアモルファス薄膜は、Tiの酸化物を主成分として含む。
iO2は結晶化させた場合(金属酸化物半導体)、バンドギャップが大きく透明で、光照射効率(光起電力効率)も優れ、また、TiO2は電着液に浸漬した時の安定性に優れ、吸収が400nm以下にしかなく、光透過性であるので、カラーフィルタ作製用の光半導体薄膜としてはそのまま使用することが可能であり、また、前記のごとき防曇あるいは防汚の用途に適用することも好ましい。
【0030】
本発明におけるアモルファス薄膜の「アモルファス」とは、完全にアモルファス状の薄膜だけをさすものではなく、アモルファス部分と結晶部分が混在しているものも前記「アモルファス」の範疇に含まれる。わずかにアモルファス部分を含む薄膜でも、本発明の処理を行うことにより結晶性が増し、光触媒効果や光電変換効果が増すことが確認されている。また、本発明の結晶性薄膜の「結晶性」には、多結晶および単結晶のいずれも含まれる。
【0031】
本発明の方法において、アモルファス薄膜の形成法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、RFスパッタリング法、EB蒸着法、イオンプレーティング法等が用いられる。これらの薄膜形成法は、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下で行われ、その条件は、前記各薄膜形成法により、公知の条件が適宜採用される。たとえば真空蒸着法であれば、1.33×10-3Pa(10-5Torr)以下の範囲の真空度で薄膜形成を行い、また、スパッタリング法であれば、不活性ガスを導入した真空度1.33×10-3Pa〜1.33×10-1Pa(10-5から10‐3 Torr)の範囲の雰囲気下で成膜を行う。
本発明におけるアモルファス薄膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択され、たとえば、光電着に用いる二酸化チタン等の光半導体薄膜の場合では170〜370nm程度であり、ITOのごとき酸化物導電性薄膜の場合には170〜350nm程度である。
プラスティック基材にアモルファス薄膜または低結晶性薄膜を作製する場合には、比較的低温、たとえば、現在、透明性のよいプラスティックスとして種々知られているものの耐熱温度以下(230℃以下)においても成膜が可能で、また、基材に対する損傷が少ない、スパッタリング法やRFスパッタリング法が好ましく用いられる。その時は、シート基材の裏面に冷却水や冷媒を通す工夫をした冷却機構を設けて、シート基材の昇温し過ぎるのを抑えることもできる。
【0032】
また、前記第1の工程において、異なる2層以上のアモルファス薄膜をシート基材に積層して設けることも可能である。たとえば、シート基材にまず、結晶性の低い透明導電膜を形成し、次いで、その上に、アモルファス状の半導体用薄膜を形成する。第2の工程における光アニールにより、導電膜および半導体用薄膜がともに、より結晶性の高い薄膜に変換される。
【0033】
次ぎに、本発明の方法の第2工程について説明する。第2工程では、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記シート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光を照射することにより、アモルファス薄膜を結晶性の薄膜に変換する。(本発明における第2工程を、以下で「光アニール工程」と、この工程の処理を「光アニール処理」いうことがある。)
前記維持温度は、シート基材の温度であるが、その上に形成されているアモルファス薄膜は非常に薄い膜であるので、基材温度が50〜300℃になるように制御すると、アモルファス薄膜はこの温度に極めて近い温度となる。
【0034】
本発明の方法においてアモルファス薄膜を有する基材の温度を、50℃以上とすれば充分にアモルファス状態を結晶あるいは多結晶の状態に変化させることができる。シート基材をこの温度に維持するには通常加熱する。加熱の上限温度は特に制限はないが、シート基材の耐熱性、加熱方法の選択、加熱温度の制御、エネルギーロス等の観点から、300℃以下である。結晶性の高い(たとえば光電変換効率が高い)薄膜を作製する観点からは、前記温度範囲においてより高い温度が好ましいが、シート基材の耐熱温度を考慮することも必要であり、前記加熱温度はシート基材の耐熱温度を越えないことが好ましく、特に、シート基材の耐熱温度より少なくとも10℃以下まで加熱することが好ましい。
シート基材の材料がプラスティック材料の場合には、そのプラスティック材料のガラス転移温度、または融点、流動開始点以下の温度を適用することが好ましい。
なお、後述の光の照射によりアモルファス薄膜の温度が上昇するが、この温度上昇がシート基材を損なう程の場合は、適宜冷却手段を用いてシート基材温度を調節することができる。
【0035】
アモルファス薄膜が吸収を有する光の波長は、薄膜の化学組成により異なるが、たとえば、酸化チタンの場合では170〜370nmであり、また、ITOの場合では170〜350nmである。
アモルファス薄膜が吸収を有する波長の光を照射する手段は、吸収波長の光を出す光源が適宜用いられる。光照射効率を上げるために、ランプ状の光源を用いると均一に大きな面積を短時間で光照射できる。光源の光波長域については、短波長領域、特に400nm以下の波長域の場合、エネルギー密度が高く、エネルギー選択性により、光吸収箇所における加熱効率が高くより好ましい。たとえば、紫外線を照射する場合では、市販の高圧水銀灯を光源としてピーク波長を取り出した紫外線照射装置により十分可能であるが、中でもエキシマランプが好ましく用いられる。
また、前記の光の波長が、アモルファス薄膜の膜厚の3倍以下、より好ましくは薄膜厚みの2倍以下になるようにすると、薄膜内だけを特定して急激に昇温させることが可能となるので、シート基材の昇温が抑制され、かつ、光の吸収効率が上がるので光アニ−ル効率が上がる。
さらに、照射光の波長帯域は、中心吸収波長を中心とする狭い波長域が、他の部分を加熱せずにすむため好ましい。
光照射光量は、作製すべき化合物薄膜の厚み、透過する材料種類にもよるが、たとえば、0.1から1000W・秒好ましくは20から300W・秒範囲の光量が適切である。
前記光照射は、連続照射だけでなく、パルス状照射も可能である。パルス間隔を適宜調節することにより、光の照射量を細かく制御することが可能となるため、光照射のない間にシート基材等の放熱を行わせ、基板の温度上昇を抑制することができ、また、シート基材の温度制御が難しい場合に、パルスの数を制御することにより高精度な温度制御を行うことが可能となる。
【0036】
本発明の第2の工程における雰囲気は、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気である。
また、ガスの種類は、たとえば、水素ガス窒素ガス、アルゴンガス等の1種以上が用いられる。これらのガスは、反応気体または活性気体として作用し、アモルファス薄膜が光の照射下高温状態で反応し、還元されたりする(また、その際、前記膜内はかなりの高温になるため、結晶化度の変化を生じる。)。ガス雰囲気の圧力は、1.33×10-3Pa(10-5Torr)〜133000Pa(103 Torr)、好ましくは1.33×10-2Pa(10-4Torr)〜13.3Pa(10‐1Torr)程度である。
【0037】
たとえば二酸化チタンのような酸化物半導体の場合には、たとえば、水素を2〜5%(爆発限界以下)を、純度の高い不活性気体(例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)に混合した還元性ガス雰囲気下(たとえば1lの内容量を有する装置を用いる場合、流量を0.5〜2 l/minとし、ガス圧は大気圧程度)で、光照射下アニール処理を行う。酸化物半導体薄膜の場合、酸素分圧を低くすることにより加熱温度をより低温にすることができるので、あらかじめ、雰囲気を真空処理して酸素分圧を下げることが好ましい。
前記のごとき雰囲気下において、光照射しながらアニールを行うと、酸化チタンのアモルファス薄膜は多結晶化するし、また酸素の格子欠陥が生じて半導体のキャリアー濃度が増加し、半導体の光電流特性が大きく向上する。アニール後の酸化チタン薄膜の結晶構造は、微結晶型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンおよびアモルファス型酸化チタンの1種または2種以上の混合物であり、たとえばアナターゼ型結晶、アナターゼ型とルチル型混晶、または非晶質とアナタ―ゼ型結晶の混晶等である。
【0038】
また、ITO等の光透過性酸化物導電膜を低抵抗化するする場合にも、酸化チタンと同様な雰囲気下で光アニール処理を行う。この場合も、酸素分圧を低くすることにより透明酸化物導電膜の加熱温度をより低温にすることができる。
【0039】
本発明の方法により得られる結晶性薄膜の物性は、光照射時間、光強度、雰囲気ガスの種類、雰囲気圧力、シート基材加熱温度等を種々変化させることにより制御をすることが可能である。
【0040】
前記第1工程の前に、さらに、シート基材を洗浄および/または脱気する工程を設けることが好ましい。特に、プラスティックシート基材は、その表面に汚れ、気体や水分の吸着などがあり、これらを表面に保持したままアモルファス薄膜の形成を行うと、膜の接着性が悪くなったり純度の高い薄膜の形成が妨げられる。洗浄工程は、シート基材を水洗浴中に通しながらの超音波洗浄や、アセトン等の有機溶剤の浴中を通過させることによる洗浄などの洗浄の後、乾燥を行って水分や有機溶剤を除去することにより行なうことができる。また、脱気工程は、シート基材表面に対する加熱処理、たとえば、電熱加熱による加熱処理や、加熱下あるいは非加熱下での、放電処理により行われる。また、単に真空下においてロール状のシート基材を数回巻き直すことにより脱気を行うこともできる。これらの洗浄および/または脱気工程は、真空雰囲気で実施することが好ましい。真空度は1.33×10-8Pa(10-10Torr)〜1.33×10-1(10-3Torr)の程度の範囲が適用される。
【0041】
次に、本発明の方法におけるシート基材の搬送について説明する。以下においては、連続状のシート基材について説明するが、非連続状のシート基材についても同様である。
シート基材の搬送の態様は、第1工程および第2工程を完了させるための時間、第1および第2工程を実施する領域の大きさ、第1工程および第2工程の真空度等を考慮して適宜決めることができる。
たとえば、シート基材を、ある特定の速度で第1工程(第1工程が2以上の異なるアモルファス薄膜を設ける工程を有する場合は、その全工程を含む)および第2工程の実施領域を搬送した場合、各領域を通過する時間の範囲内において、それらの工程を完了させることが可能な場合には、その速度でそれらの領域を一定の速度で連続的に移動させればよい。また、一定速度で搬送した場合、たとえば第2工程が終了しない場合には、第2工程の実施領域を通過する速度を小さくし、第2工程の前にシート基材を貯留する領域を設けて、第1工程と第2工程における搬送速度の違いを吸収すればよい。さらに、第1工程および/または第2工程を実施する領域において、搬送速度を零にすることも可能である。この場合には、搬送速度を0にする工程領域の前に、シート基材を貯留するための手段を設ければよい。この際、シート基材の搬送に余分な負荷をかけないことが必要である。
前記態様において、速度差を吸収するための貯留手段としては、公知のものが用いられる。図3(A)および(B)にその一例を示す。図3(A)に示すものは、チャンバーAとチャンバーB内の搬送速度VAおよびVBが、VA>VBのような速度差を有する場合、多段ロール機構を用いてチャンバーAからのシート基材をルーパ部で累積させる(たるませる)タイプのものである。また、図3(B)に示すものは、R11ないしR14で示す上下に可動のロール(ダンサーロール)を用いるダンサーロール機構を利用するものであり、両チャンバー内の搬送速度にVA>VBのような速度差をもたせた場合、R11およびR12のダンサーロールを上昇させ、一方、R13およびR14のダンサーロールを下降させることにより、シート基材をルーパ部に累積させるタイプのものである。
【0042】
本発明においては、前記の第1工程および第2工程はともに真空あるいは低ガス圧雰囲気で行われることが多いので、第1工程および第2工程を実施する領域、さらに、洗浄および/または脱気工程を実施する領域を、共通の真空系内に配置することが好ましい。共通の真空系内の真空度は、1.33×10-8Pa(10-10Torr)から1.33×10-1Pa(10‐3 Torr)程度に調節される。
【0043】
次ぎに、本発明のシート基材に結晶性薄膜を形成する方法に用いる装置について説明する。この装置は、Tiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1のチャンバーと、プラスチックシート基材を50〜300℃に維持しつつ紫外光ランプからの光を光照射する第2のチャンバーと、プラスチックシート基材を第1のチャンバー内と第2のチャンバー内をこの順に搬送する手段を備え、前記第1のチャンバーは、Tiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する手段と、チャンバー内を真空または低ガス圧雰囲気に保持する手段と、プラスチックシート基材の搬入部と搬出部を備え、前記第2のチャンバーは、プラスチックシート基材を50〜300℃に維持する手段と、紫外光ランプと、チャンバー内を水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気に保持する手段と、プラスチックシート基材の搬入部と搬出部を備えている。
【0044】
前記第1のチャンバーと、第2のチャンバーと、シート基材を搬送する手段は、同一の真空系内にあることが、第1のチャンバーおよび第2のチャンバーの真空雰囲気あるいは低ガス圧雰囲気を維持する点から好ましい。
【0045】
さらに、前記装置には、同一の真空系内に、シート基材を第1チャンバーに搬入する前に洗浄および/または脱気する手段を備えることが有利である。前記洗浄手段は、水浴中の超音波洗浄手段や有機溶剤洗浄浴による洗浄手段が挙げられ、また、脱気手段としては、加熱手段および/または放電処理手段を挙げることができる。
また、本発明のシート基材に結晶性薄膜を形成する方法において、第1工程で複数の異なるアモルファス薄膜を積層形成する場合には、第1のチャンバーは、形成すべきアモルファス薄膜の種類に応じて複数のチャンバーから構成される。
【0046】
また、第1および第2のチャンバーにおいて、シート基材の搬送速度を異ならせるためには、各チャンバー内の搬送速度をそれぞれ独立に制御するための手段が必要である。また、速度差を吸収するための貯留手段としては前記のごとき他段ロール機構やダンサーロール機構が適宜用いられる。
【0047】
図を用いて、本発明の装置の一例を示す概念図を示す。
図1は、2つの異なるアモルファス薄膜を順次、積層形成するための2つの薄膜形成チャンバー10と20、光アニール処理を行う光アニールチャンバー30を、共通の真空系40に配置した装置の概念図を示す。
薄膜形成チャンバー10には、アモルファス薄膜形成手段12、シート基材温度制御手段(通常は加熱手段、場合によりこれに加え冷却手段)14が備えられ、薄膜形成チャンバー20には、アモルファス薄膜形成手段22、シート基材温度制御手段(通常は加熱手段、場合によりこれに加え冷却手段)24が備えられている。また、図示していないが、薄膜形成チャンバー10および20には、シート基材温度検出手段、真空排気手段、雰囲気ガス導入および排出手段等が設けられる。
光アニールチャンバー30は、紫外光ランプ32、シート基材を50〜300℃に維持する手段34(通常は加熱手段、場合によりこれに加え冷却手段)が備えられ、さらに、図示しないシート基材温度検出手段、真空排気手段、雰囲気ガス導入および排出手段等が設けられる。前記冷却手段は、シート基材の温度が光照射により本発明の維持温度範囲を逸脱するような場合などに用いられる。
【0048】
50はロール状に巻かれたシート基材を繰り出すロール、52はシート基材を巻き取るロールであり、図示しない駆動手段により駆動される。また、60はシート基材を脱気処理するための放電処理手段を示す。
チャンバー10、20および30で用いる温度維持手段としては、加熱の場合、たとえば電気的に加熱するヒーターが、冷却の場合、たとえば冷却水や冷媒等による冷却手段が用いられる。また、チャンバー30で用いる光照射手段としては、たとえばエキシマランプが用いられる。
【0049】
次に、図1に記載のような装置を用いてプラスチックシート基材の上に、高電気抵抗のITOと結晶性の低い酸化チタンの薄膜を順次形成し、次いで光アニール処理により、ITO薄膜および酸化チタン薄膜を結晶性の高い薄膜に変換する方法について説明する。この場合、チャンバー10、20および30のシート基材搬送方向における長さは、特定の一定速度で連続的にシート基材を搬送した場合、アモルファス薄膜の形成、光アニール処理が充分達成されるに充分な長さを有している。
まず、ロール状のプラスチックシート基材Aを図1のようにセットし、チャンバー10、20および30が配置された共通の真空系40の真空度を調節する。また、チャンバー10をあらかじめ真空処理(10-2Pa程度)をして酸素を除去した後、水素ガスを含む高純度窒素ガス雰囲気あるいはアルゴンガス雰囲気等に調節し、チャンバー20も同様に真空処理し雰囲気を調節する。図示しないロール駆動手段によりシート基材を搬送させる。最初に放電処理手段60によりプラスティックシート基材表面を処理し、次いでシート基材をチャンバー10内に搬送し、温度制御手段によりシート基材の温度を薄膜形成に適した温度に調節し、RFスパッタリング装置等の薄膜形成手段によりシート基材の上にITO薄膜を形成する。ITO薄膜が形成されたシート基材は、チャンバー20に送られ同様にして低結晶性の酸化チタン膜が形成される。その後、シート基材はチャンバー30に搬送され、シート基材を50〜300℃の温度範囲に維持しながら、エキシマランプ等の光照射手段により光照射される。光アニール処理が終了したシート基材はロール52に巻き取られる。
【0050】
前記のごとき工程により結晶性薄膜が形成された、シート基材の応用例について幾つか挙げる。
図2(A)は後述の光電着に用いられる電着基板の一例を示すもので、100はPESフィルム(100μm)100aと二酸化ケイ素からなるガスバリアー膜(1000Å)100bから構成されるシート基材、102はITO膜(800Å)の導電性薄膜、104は結晶性酸化チタン薄膜(2000Å)を表す。
図2(B)は表面の防汚に用いる親水性光触媒皮膜を設けた防汚シートの一例を示すもので、200はポリカーボネートフィルム(150μm)200aと窒化ケイ素からなるガスバリアー膜200b(800Å)から構成されるシート基材、202は酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる反射防止膜(1200Å)、204は結晶性酸化チタン薄膜(1000Å)を表す。
図2(C)は、防汚シートの他の一例を示すもので、300はポリイミドフィルム(75μm)からなるシート基材、302は防汚シートを他の面に貼るための粘着層(25μm)、304は結晶性酸化チタン薄膜(500Å)を表す。
【0051】
次に、前記図2(A)で挙げたような、プラスティックシート基材の上に光透過性の導電膜と光半導体薄膜を設けた光電着基板を用いてカラーフィルターを作製する方法について説明する。
光電着基板におけるプラスティックシート基材の厚みは、0.4mm以下好ましくは0.07mmから0.2mm、より好ましくは0.12mmから0.18mmの範囲であると、光の回折の影響を小さくできるため、光電着装置において、結像光学系やミラー反射光学系を有する露光装置を備えた装置を用いる必要がなく、以下で説明するような装置により着膜させることができる。
【0052】
本発明において用いる電着装置の一例を、概念図として図4に示す。図4で示される電着装置は、前記のように光の回折が起こらない程度に薄い基材(プラスチック基材等)を用いた基板に電着を行なうのに適した装置であり、フォトマスク71、電着液を収納した電着槽80、ポテンショスタットのごとき電圧印加のための手段90、白金黒のごとき対向電極91、飽和カロメル電極のごときリファレンス電極92およびHg−Xeの均一照射光源73を備えている。フォトマスク71は、プラスチック基材12に密着させて用いる。
【0053】
また、電着装置の他の例を図5に示す。図5で示すカラーフィルター製造装置は、プロジェクション型露光装置を備えたものであり、紫外線を照射するための光源(図示せず)、第一の結像光学レンズ72と、第二の結像光学レンズ73を有する結像光学系、第一の結像光学レンズと第二の結像光学レンズの間に挿入したフォトマスク71、電着液を収納した電着槽80、ポテンショスタットのごとき電圧印加のための手段90、対向電極91、飽和カロメル電極のごときリファレンス電極92を備えている。また、前記のカラーフィルター製造装置において前記結像光学系に代え、ミラー反射光学系を使用することも可能である。
電着の際、図5で示すように、電着槽の電着液に基板の半導体薄膜が接触するように基板を電着装置に配置させ、露光装置からの光が半導体薄膜の表面に結像するように調節する。
前記結像光学系の結像光学レンズと光透過性の基板面との距離を1mm〜50cmにすることが取り扱いの点からみて好ましく、結像光学系の焦点深度は±10〜±100μmの範囲であることが精度と取り扱いの点から好ましい。
【0054】
また、電着液については、特開平11−174790号公報の段落0017から0041までの技術をすべて利用することができる。さらに電着性高分子材料として、架橋性基を導入したものを用い、着色膜形成後に熱処理をして、カラーフィルター膜の耐熱性、耐溶剤性等を向上させることができる。架橋性基を導入した電着性高分子材料を用いる電着液は、特願2000−227721号の段落0037から0050までに記載されている電着液を用いることができる。
【0055】
図4または図5に示すようにフォトマスクを用いて、光半導体薄膜に選択的に紫外線を照射すると、選択領域に光起電力が生成し、電着液中の電着材料が光半導体薄膜の上に着膜する。この際、発生する起電力が、電着を生じさせる程度に充分大きければ、電圧印加装置によりバイアス電圧を印加する必要がないが、不充分な場合には、電圧印加装置により数V程度のバイアス電圧を印加する。
なお、前記電着基板は、プラスチック基材を用いるものを例にとって説明したが、プラスチック基材に代え、ガラス基材等の基材を用いることができるのは勿論である。
【0056】
また、前記のカラーフィルターの製造方法は、光電着法により着膜させる方法であるが、光触媒法により着膜させることも可能である。光触媒法は、光半導体が有している光触媒作用を利用するもので、光透過性の基板と導電膜(光透過性の場合がある)と光透過性の半導体薄膜を有する着膜基板を用い、半導体薄膜の選択領域に光を照射すると、半導体薄膜/導電膜/電解液の間に内部回路が形成され、半導体薄膜に接触している電解液に電気分解が生じ、半導体薄膜近傍の電解液の水素イオン濃度を変化させることができる。水素イオン濃度を変化させることにより、光電着法と同様に、電解液からの材料の沈殿すなわち、着膜が可能になるものである。電解液としては、前記光電着法において用いる電着液と同様の組成の水性液を用いることができる。また、光触媒法の場合には、導電膜が電解液に導通することと、半導体薄膜と導電膜が接していることが必要であるが、他方、対向電極は不要となる。光触媒法は、特願平11−322507号および特願平11−322508号に詳細に説明されている。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」は、気体の場合を除いて「質量%」を表す。
実施例1
第1工程を行うチャンバー(第1チャンバー)と、第2工程を行うチャンバー(第2チャンバー)と、放電処理装置を、共通の真空系内に配置した装置を用いた。
85μm厚さの、ロール状に巻いたポリエーテルスルホンフィルムを、共通の真空系(真空度:1.33×10-1Pa(10-3Torr))の中で巻き戻し、フィルム表面を150℃に加熱下、放電処理を施しながら、線速度10mm/秒でロールの巻き直しを行い、これを2回繰り返し、シート表面に付着しているガスや有機材料や水分を低減させた。次に、前記フィルムを65mm/分の搬送速度で第1チャンバーと第2チャンバー内を移動するように搬送速度を調節した。
【0058】
フィルムを、アルゴンガスをキャリアガスとし1.33×10-1Pa(10-3Torr)の真空度に調節した第1チャンバー内に搬送し、フィルムの表面温度を165℃に制御しつつ、高周波スパッタリング法によって、アモルファス状の二酸化チタンを250nmの膜厚になるように成膜した。
次いで、アモルファス状の二酸化チタンが成膜されたフィルムを、あらかじめ真空引きし(3.99×10-1Pa(3×10-3Torr)、その後、水素ガスを3体積%含む高純度窒素ガス雰囲気(第2チャンバーの内容積の1l当り、流量は1l/min)に調節した第2チャンバーに搬入し、フィルムが165℃になるように加熱し、その温度を保ちながら、照射部を面状にしたエキシマランプにより、紫外線(波長:172nm、光強度:50mW/cm2)を照射した(照射時間は1分に相当)。
第2チャンバーから搬出されたフィルムは、ロール状に巻き取られ、真空系から取り出した。
【0059】
得られた光アニール処理皮膜のX線回折強度を調べたところ、2θが25.260のところに回折ピークが計測され、光アニール前の同じ位置のピーク値の5倍となり、結晶性が高くなったことが示された。また、前記皮膜の接触角を調べた結果、2.5°であり、超親水性表面であることが確認された。
この結果から、前記光アニール処理により、アモルファスまたは低結晶性の二酸化チタンが、高結晶性に変化したことが裏付けられた。
【0060】
実施例2
この例では、第1工程を行うチャンバー(第1チャンバー)と、第2工程を行うチャンバー(第2チャンバー)と、脱気のための加熱手段を、共通の真空系内に配置した装置を用いた。
ロール状に巻いた0.15mm厚の高耐熱性ポリカーボネートシートを、共通の真空系(真空度:1.33×10-3Pa(10-5Torr))の中で巻戻し、180℃の加熱処理を施しながら、線速度4mm/秒で4回、ロールの巻き直しを行い、シート表面に付着しているガスや有機材料や水分を低減させた。次に、前記シートを30mm/分の搬送速度で第1チャンバーと第2チャンバー内を移動するように搬送速度を調節した。
【0061】
シートを、アルゴンガスをキャリアガスとし1.33×10-1Pa(10-3Torr)の真空度に調節した第1チャンバー内に搬送し、シートの表面温度を165℃に制御しつつ、高周波スパッタリング法によって、アモルファス状の二酸化チタンを250nmの膜厚になるように成膜した。
次いで、アモルファス状の二酸化チタンが成膜されたシートを、あらかじめ真空引きし(3.99×10-1Pa(3×10-3Torr)、その後、水素ガスを3.8体積%含む高純度窒素ガス雰囲気(第2チャンバーの内容積の1l当り、流量は2.5l/min)に調節した第2チャンバーに搬入し、フィルムが145℃になるように加熱し、その温度を保ちながら、エキシマランプにより、紫外線(波長:330nm、光強度:80mW/cm2)を照射した(照射時間は150秒に相当)。
第2チャンバーから搬出されたフィルムは、ロール状に巻き取られ、真空系から取り出した。
【0062】
得られた光アニール処理皮膜のX線回折強度を調べたところ、2θが25.260のところに回折ピークが計測され、光アニ-ル前の同じ位置のピーク値の4.2倍となり、結晶性が高くなった事が示された。また、前記皮膜の接触角を調べた結果、接触角2.9°であり、強い親水性表面であることが観察された。
この結果から、前記アニール処理により、低結晶性の二酸化チタンが、高結晶性に変化したことが裏付けられた。
【0063】
実施例3
この例では、第1工程を行うチャンバー(第1チャンバー)と第2工程を行うチャンバー(第2チャンバー)、脱気のための加熱装置、および第1チャンバーと第2チャンバーの間にシート基材の貯留手段であるルーパを有し、これらを共通の真空系内に配置した装置を用いた。
厚さ205μmの、ITO付きポリカーボネートフィルムのロールを、共通の真空系に配置し、巻戻しながら超音波による水洗浴とアセトン浴による洗浄をし、再びロール状に巻き取った。その後、共通の真空系の真空度を1.33×10-3Pa(10-5Torr)に調節し、再度、ロールからシートを巻戻しながら、シートの表面温度が170℃になるようにシートを裏面から加熱し、ルーパにおけるループの長さを調節してシートを冷却し(ルーパ通過時間1分)、再びロール状に巻き取った。
次に、前記シートを巻戻し、60mm/分の搬送速度で第1チャンバーと第2チャンバー内を移動するように搬送速度を調節した。
【0064】
シートを、アルゴンガスをキャリアガスとし3.99×10-1Pa(3×10-3Torr)の真空度に調節した第1チャンバー内に搬送し、シートの表面温度を161℃に制御しつつ、RFスパッタリング法によって、ITO膜上に膜厚150nmの低結晶状態の二酸化チタンを成膜した。
次いで、アモルファス状の二酸化チタンが成膜されたシートを、あらかじめ真空引きし(3.99×10-1Pa(3×10-3Torr)、その後、水素ガスを2体積%含む高純度窒素ガス雰囲気(第2チャンバーの内容積1l当たり、流量は50ml/min)に調節した第2チャンバーに搬入し、シートが150℃になるように加熱し、その温度を保ちながら、エキシマランプにより、紫外線(波長:172nm、光強度:80mW/cm2)を100秒間照射した。
この際、第2チャンバー内において、シート基材は光アニール処理中移動せず、その間、第1チャンバーから送られるシート基材はルーパにより貯留した。
第2チャンバーから搬出されたシートは、ロール状に巻き取られ、真空系から取り出した。
【0065】
アニール処理前後の二酸化チタン薄膜について、紫外光(1KWHg−Xeランプ、365nm、110mW/cm2)を照射し、その時の電流電圧特性(光電変換効率)を調べた結果、紫外光照射部分で単位面積当り2.0mA/cm2の光電流を観測できた。結果を図6に示す。
図6から明らかなように、光アニール後では、光電流密度が著しく上昇しており、光アニール処理により、低結晶性二酸化チタンの結晶化度が高くなったことが裏付けられる。さらに、X線回折により、2θが25.260でd=3.52ÅのところにX線の回折ピークが約3倍高くなったこと観察された。このことは、アナターゼ型の(1、0、1)面を示す。
【0066】
参考例1(カラーフィルターの作製)
実施例3において作製した結晶性二酸化チタン薄膜を形成したシートを、カラーフィルター作製用基板として用いて、以下のようにしてカラーフィルターを作製した。光電着装置は、密接配置型電着装置を用いた。前記基板のITO膜を電着用の作用電極として利用した。
<レッド着色膜の形成>
スチレン−アクリル酸共重合体樹脂(重量平均分子量15,500、スチレンとアクリル酸のモル比65:35、酸価120)と、赤色超微粒子顔料とを、質量固形分比率で樹脂/顔料=1:1に分散させた、固形分濃度6質量%の電着液R(pH=7.8、導電率=7mS/cm)を調製した。
【0067】
図4に示すように、前記基板を、光半導体薄膜が電着液Rに接するように配置し、基板の光半導体薄膜の設けられていない側の表面(以下、「裏面」という。)にレッドフィルタ用のフォトマスクを密接させた。そして、ITO膜を作用電極とし、該作用電極のバイアス電位差が飽和カロメル電極に対しプラス1.7VとなるようにポテンショスタットからITO導電膜に電圧を印加した。
次いで、基板の裏面側からフォトマスクを通して、水銀キセノンランプ(山下電装製:波長365nm:光強度50mW/cm2)により10秒間光を照射したところ、光半導体薄膜の表面の照射された領域(選択領域)にのみ、膜厚1.0μmの均一厚の赤色パターンが形成された。
【0068】
<グリーンの着色膜の形成>
顔料をフタロシアニングリーン系超微粒子顔料に変更し、樹脂/顔料(質量比率)=1:0.7にするほかは、レッド着色膜と同様にして電着液Gを調製し、同様にしてグリーンの着色膜を形成し、純水で洗浄した。膜厚1.0μmの均一厚の緑色パターンが形成された。
<ブルー着色膜の形成>
顔料をフタロシアニンブルー系超微粒子顔料に変更するほかは、レッド着色膜と同様にして電着液Bを調製し、同様にしてブルーの着色膜を形成し、純水で洗浄した。膜厚1.0μmの均一厚の青色パターンが形成された。
【0069】
<ブラックマトリクスの形成>
レッド着色膜形成の際の顔料に代え、カーボンブラック粉末(平均粒子径80nm)を、体積比率で高分子材料/カーボンブラック=1/1に分散させた、固形分濃度7質量%の電着液K(pH=7.8、導電率=8mS/cm)を用い、フォトマスクを用いずに、同様の露光装置により全面に10秒間露光する他はレッド膜形成の場合と同様に電着を行ったところ、着色膜未形成の領域にブラックマトリクスが形成された。
微細な画素パターンからなる高解像度で、表面平滑性に優れたフレキシブルカラーフィルターが得られた。
【0070】
参考例2
参考例1における電着基板を、厚さ0.25mmのポリエーテルサルフォンシートに厚さ100nmのITOを設け、その上に実施例3と同様にして結晶性の二酸化チタンを形成した電着基板に変更し、かつ、参考例1の各電着液(レッド、グリーン、ブルーおよびブラックマトリクス用)の高分子材料を、架橋性基を導入した高分子材料であるスチレン・アクリル酸・メタクリル酸2−(O−〔1’メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノエチル)共重合体[分子量13,000、スチレン含有量65モル%、酸価125、メタクリル酸2−(O−〔1’−メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチル含有量3.3モル%]に代えた電着液R、電着液G、電着液Bおよび電着液Kを用いる他は、実施例4と同様にして、膜厚1.0μmの均一厚さのレッド、グリーン、ブルーの各着色膜とブラックマトリクスを基板に形成した。
<ベーキング>
着色膜およびブラックマトリクスが形成された基板に、170℃で30分間の加熱架橋を行った。微細な画素パターンからなる高解像度で、表面平滑性に優れ、耐溶剤性に優れたフレキシブルカラーフィルターが得られた。
基材厚さ0.25mmのポリエーテルサルフォンに厚さ100nmのITOを設けたものに変更し、かつ、実施例3の各電着液(レッド、グリーン、ブルーおよびブラックマトリクス用)の高分子材料を、架橋性基を導入した高分子材料であるスチレン・アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体[分子量13,000 親水基/(親水基+疎水基)のモル比65%#価125、]に代えた電着液R、電着液G、電着液Bおよび電着液Kを用いる他は、実施例3と同様にして、膜厚1.0μmの均一厚さのレッド、グリーン、ブルーの各着色膜とブラックマトリクスを基板に形成した。
<ベーキング>
着色膜およびブラックマトリクスが形成された基板に、170℃で30分間の加熱架橋を行った。微細な画素パターンからなる高解像度で、表面平滑性に優れ、耐溶剤性に優れたフレキシブルカラーフィルターが得られた。
【0071】
参考例3
この例では、電着装置として、図5で示すようなプロジェクション型露光装置を備えた電着装置(ウシオ電気(株)製)を用いてカラーフィルターを作製する例を示す。
電着基板は、参考例1で使用したものと同じものを、電着液は、参考例2におけるのと同じ組成の、電着液R、電着液G、電着液Bおよび電着液Kを用いた。電着装置(ウシオ電気(株)製)のプロジェクション型露光装置において、結像光学レンズと結像面(光起電力化合物薄膜の露出面)との焦点距離は15mmに、焦点深度は±70μmにした。
前記電着基板を、二酸化チタン薄膜が電着液に接するように配置し、結像光学レンズにより光が結像面に結像するように露光装置を調節した。
照射紫外線(波長365nm)の光強度を90mW/cm2に、照射時間を5秒間に変更する他は、参考例2と同様にして、電着液R、電着液G、電着液Bおよび電着液Kの順に順次電着液を変えて、膜厚が1.0μmの均一膜のR、GおよびB膜と、ブラックマトリクスを作製した。ただし、ブラックマトリクスを作製する場合には、裏面より全面に露光した。最後に、同様にベーキングをしてカラーフィルターを得た。
【0072】
【発明の効果】
本発明においては、アモルファス薄膜を形成する工程と、アモルファス薄膜を結晶性薄膜に変換する工程を連続的に行うので、結晶性薄膜の用途に応じた種々の機能性の薄膜を簡便に作製することができる。
特にアモルファス薄膜を結晶性薄膜に変換する工程においては、加熱温度を、非常に低い温度とすることができ、また、レーザ光を走査する必要がなく、光照射装置により全面に光を照射するだけでよいため、従来法に比較して、短時間の処理で、高価で精密な装置も必要とせずに、高結晶性薄膜を製造することが可能となり、その生産コストも低減できる。
また、従来はプラスティック基材上に結晶性薄膜を形成するためには特別な工程や装置が必要であったが、本発明により、簡便で精度の厳しくない工程および装置によって、プラスティック基材の上に高結晶性薄膜を作製することが可能になった。
また、従来、鏡、ガラス等の表面に防曇処理、防汚処理、親水化処理等を施すには、アモルファス性薄膜を形成した後、これを高結晶化させるため400℃以上の焼成処理が必要となり、基板の耐熱性が要求されたり、高度で複雑な方法となっていた。本発明の方法により、プラスティック基材に高結晶性な光半導体薄膜を設けた基板が容易に得られるので、防曇、防汚、親水化の処理が必要な面に、この基板を貼ることにより、極めて簡便に所望の表面性状を得ることができるようになった。
さらに、プラスティック基材上にTFT駆動回路を作製したり、あるいは、さらにこれに光起電力発生用の化合物薄膜を設けたものを電着基板とし、光照射による電着でカラーフィルター膜を形成することも可能になった。特に、カラーフィルターの場合、基材に光透過性が要求されるが、光透過性があるプラスティック基材としては、耐熱温度が200℃前後のものしかないので、200℃前後の加熱処理により、光電変換効率(光起電力)が充分大きい結晶性化合物薄膜の形成が可能であるという意義は大きい。したがって、ますます軽量化が要求される表示パネルのフレキシブル化の応用に期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実施するための装置の一例を示す概念図である。
【図2】 本発明の方法により結晶性薄膜を形成したシート基材の例を示す図である。
【図3】 本発明の方法に用いるシート基材の累積手段の例を示す図で、(A)は多段ロール機構を、(B)はダンサーロール機構を利用するものである。
【図4】 光電着法に用いる電着装置の一例を示す概念図である。
【図5】 光電着法に用いる電着装置の他の一例を示す概念図である。
【図6】 光アニ‐ル処理前後の酸化チタンのI−V特性を示すグラフである。
【符号の説明】
A シート基材
10、20 薄膜形成チャンバー
12、22 アモルファス薄膜形成手段
30 光アニールチャンバー
14、24、34 シート基材温度制御手段
32 光照射手段
40 共通の真空系
50、52 ロール
60 放電処理手段

Claims (5)

  1. 連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、光の波長が薄膜の膜厚の3倍以下である紫外光ランプからの光を照射する第2の工程を有する、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
  2. 連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光をプラスチックシート基材の温度に従って光量制御しつつ照射する第2の工程を有し、第2の工程においてプラスチックシート基材の温度に従って光量制御をする、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
  3. 連続的に搬送されるプラスチックシート基材に、真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光をパルス状に照射する第2の工程を有する、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
  4. 連続的に搬送されるプラスチックシート基材を洗浄および/または脱気する洗浄および/または脱気工程、洗浄および/または脱気されたプラスチックシート基材に真空下あるいは低ガス圧雰囲気下でTiの酸化物を主成分として含むアモルファスまたは低結晶性薄膜を形成する第1の工程、水素を2〜5%含む不活性気体雰囲気下において、薄膜が形成された前記プラスチックシート基材を、50℃以上で300℃以下である温度に維持しながら、前記第1の工程で形成された薄膜に、紫外光ランプからの光を照射する第2の工程を有する、プラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
  5. 前記洗浄および/または脱気が、プラスチックシート基材に対する加熱処理および/または放電処理により行われることを特徴とする請求項4に記載のプラスチックシート基材に結晶性薄膜を形成する方法。
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