JP4081588B2 - N−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、殊に合成抗菌剤の原料等として有用な、N−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンの製造方法及びその前駆体となるN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンに関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでに2−メチル−3,4−ジフルオロアニリンの製造方法として、3,4−ジフルオロアニリンにジ−t−ブチルジカーボネートを反応させて得たN−t−ブトキシカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンに、2モル当量のt−ブチルリチウムを反応させジリチウム化物とし、次いでヨウ化メチルでメチル化しN−(t−ブトキシカルボニル)−2−メチル−3,4−ジフルオロアニリンとし、更に加水分解をして目的物とする方法が知られており、ここにN−(t−ブトキシカルボニル)−3,4−ジフルオロアニリンがその中間体として記載されている〔テトラヘドロン(Tetrahedron)、第48巻、第7373頁(1992年)〕。
【0003】
しかし、このテトラヘドロン記載の方法では、不安定で工業的に取扱いが難しい上に高価なジ−t−ブチルジカーボネートを使用しなければならず、工業的生産を行うには操作性や経済性の点で不利であり、満足ゆくものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は3,4−ジフルオロアニリンの選択的アルキル化により2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンを製造する方法において、従来より工業的な方法を提供することを課題としてなされた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、3,4−ジフルオロアニリンの2−アルキル化の方法について種々の方法を検討した。その結果、アニリンN位の保護基として、カルボニル基に隣接する原子が第三級炭素であって、工業的にも取り扱いが容易でかつ安価な試剤によりトリアルキルメチルカルボニル基を用いるとt−ブチルリチウムの様な強いアルキルリチウムを用いることなく工業的に取り扱いやすいn−ブチルリチウムを含む広い範囲のアルキルリチウムでN−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンの合成が可能であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成した。
【0006】
すなわち本発明は、下記〔1〕〜〔4〕項に記載の事項を提供する事により上記課題を解決したものである。
【0007】
〔1〕一般式(1)
【0008】
【化3】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は相異なるアルキル基を示す。)
【0009】
で表されるN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンにアルキルリチウムを反応させた後、アルキル化剤を反応させることを特徴とする一般式(2)
【0010】
【化4】
(式中、R、R1、R2及びR3は、同一又は相異なるアルキル基を示す。)
【0011】
で表されるN−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンの製造方法。
【0013】
〔2〕〔1〕項記載の一般式(2)で表されるN−トリ(C1〜C6アルキル)メチルカルボニル−2−(C1〜C6アルキル)−3,4−ジフルオロアニリン。
【0014】
〔3〕3,4−ジフルオロ−2−メチル−ピバロイルアニリン。
【0015】
以下、本発明方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明方法では、メタ位にハロゲン原子を有するピバロイルアニリドの様なN−トリアルキルメチルカルボニルアニリン類とアルキルリチウムとの反応において通常起きるとされている脱ハロゲン及びベンザインの生成が起きずに選択的アルキル化が可能である。本発明方法を経ることにより、従来の方法のように工業的に取り扱いが難しく、かつ高価な原料を使用することなく、副生物もなく、2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンが製造できる。
【0017】
本発明方法はN−位保護を実験室的には一般的ではあるが工業的には使用し難いt−ブトキシカルボニル基(tBoc基)からトリアルキルメチルカルボニル基(カルボニル基に隣接する原子が第三級炭素である。)に代えて行えること、及びアルキルリチウムとの反応を、従来用いられていたものより弱いアルキルリチウム(例えばn−ブチルリチウム等)にて行える等、従来よりも広い範囲のアルキルリチウムが使用可能であることが特徴的であり、これにより工業的にN−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンを経て、2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンの製造をすることができる様になったものである。
【0018】
本発明方法の概略は、3,4−ジフルオロアニリンにトリアルキルメチルカルボニル化剤を反応させてN−位をトリアルキルメチルカルボニル基で保護して得たN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンにアルキルリチウムを反応させた後、アルキル化して目的物を得るものである。
【0019】
まず、原料となるN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンの製造について説明する。当化合物は例えば3,4−ジフルオロアニリンとトリアルキルメチルカルボニル化剤との反応により製造できる。
【0020】
当N−トリアルキルメチルカルボニル化に使用できるトリアルキルメチルカルボニル化剤としては、トリアルキルメチルカルボニル基のトリアルキルメチル部位のアルキル(一般式(化5)中のR1、R2及びR3に相当する。)が各々独立に炭素数1〜6(本明細書においては、この様な炭素数の限定を「C1〜C6」の様に略して表現することがある。)のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等であるものを用いてよいが、好ましくはR1、R2及びR3が同じアルキル基、より好ましくはR1、R2及びR3が全てメチル基であるトリアルキルメチルカルボニルハライド類、トリアルキルメチルカルボン酸無水物及びトリアルキルメチルカルボン酸エステルを用いることができる。具体的にはピバリン酸ハライド類、より具体的にはピバリン酸クロリド、ピバリン酸ブロミド等;無水ピバリン酸;ピバリン酸エステル類、より具体的にはピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル等;更には2,2−ジメチルペンタン酸、2−エチル−2−メチルヘキサン酸、ネオオクタン酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2−エチル−2−メチルブタン酸、2,2−ジエチルブタン酸等の、クロリド、ブロミド等のハライド、酸無水物及びエステルを使用可能なものとして例示できる。好ましくは、前記のとおりトリアルキルメチル基がピバロイル基であるピバリン酸誘導体である。これらは公知の方法で例えば対応するカルボン酸から製造することができる。また、本発明方法においては、これら以外のものでもトリアルキルカルボン酸アミドの形成できるものであれば何でも使用して良い。トリアルキルメチルカルボニル化剤は3,4−ジフルオロアニリンに対して1.0〜1.5倍モル、好ましくは1.0〜1.1倍モル用いればよい。
【0021】
当トリアルキルメチルカルボニル化において用いる溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。当トリアルキルメチルカルボニル化における反応温度は、0〜100℃、好ましくは10〜60℃の範囲を例示できる。又、反応時間は1〜24時間、好ましくは2〜10時間である。
【0022】
当N−トリアルキルメチルカルボニル化においては必要に応じ塩基を使用してよい。使用できる塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を含む、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を含むアルカリ金属の炭酸塩あるいは重炭酸塩、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物等の無機塩基;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン等を包含する三級アミン類、ピリジン類、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等を包含する有機塩基を挙げることができる。好ましくは有機塩基を用いる。塩基の使用量は、3,4−ジフルオロアニリンに対して0.5〜1.5倍モル、好ましくは1.0〜1.1倍モルの範囲であればよい。
【0023】
次に、本発明方法について説明する。
【0024】
本発明方法ではN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンにアルキルリチウムを反応させた後、アルキル化剤と反応させてN−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンを製造する。
【0025】
当アルキルリチウムとの反応において使用できるアルキルリチウムとしては単素数1〜6の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を有するアルキルリチウム(C1〜C6アルキルリチウム)、より具体的にはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、メチルリチウム等を例示できる。本発明方法では、従来のt−ブチルリチウムの様に強いアルキルリチウムを用いずとも目的の反応が進行するので、反応性が良く、かつ工業的に取り扱いも容易であるという点からn−ブチルリチウムが適している。このアルキルリチウムの使用量は、原料となるN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンに対して2モル当量以上を必要とするが、2.0〜2.5モル当量の範囲で使用するのが好ましい。
【0026】
当アルキルリチウムとの反応において使用できる溶媒としては、エーテル系溶媒、より具体的にはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等;炭化水素系溶媒、より具体的にはヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素溶媒,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を例示できる。当溶媒は、安定かつ不活性であって、原料のN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンが溶解するものであれば何れのものでも使用できるので例示溶媒に限定される事なく、また混合溶媒であっても差し支えないが、テトラヒドロフランが最も好ましい。溶媒の使用量としては原料のN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンに対し、0.3〜10l/mol、好ましくは0.5l〜5l/molである。
【0027】
当アルキルリチウムとの反応は、アルキルリチウムの添加時の温度も含めて−40〜−100℃、好ましくは−50〜−80℃の温度範囲で行う。この時の反応温度が高いと、系内で脱ハロゲンによるベンザインが発生しベンゾオキサゾール誘導体を副生するので、結果的に目的物の収率を低下させるのこととなり好ましくない。当アルキルリチウムとの反応は、水分および酸素の混入を防ぐという点から、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気で行うのが好ましい。
【0028】
上記のごとくアルキルリチウムとの反応の後、アルキル化剤によるアルキル化を行う。
【0029】
当アルキル化で使用できるアルキル化剤としては、炭素数1〜6のアルキル基(C1〜C6アルキル)、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を有するアルキル化剤、具体的にはハロゲン化アルキル、より具体的には塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化プロピル、ヨウ化ブチル等;ジアルキル硫酸、具体的にはジメチル硫酸、ジエチル硫酸等;アルキルトシラート、具体的にはメチルトシラート、エチルトシラート等を例示できる。アルキル化剤の使用量は原料のアルキルリチウムとの反応に用いたN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンに対し1.0〜1.1モル当量程度が好ましく、この過剰量が多くなると副生成物としてN−アルキル化された化合物が生成するのでアルキル化剤の過剰量はできる限り抑えることが望ましい。
【0030】
当アルキル化においては、アルキル化剤の添加をアルキルリチウムとの反応と同様の−40〜−100℃、好ましくは−50〜−80℃の温度範囲で行うが、アルキル化剤の添加終了後は、昇温して室温付近に戻して反応を完結させることができる。
【0031】
アルキル化の後、プロトン化剤、例えば水;希塩酸、希硫酸等の希酸;塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機塩の水溶液等を滴下し、次いでエーテル、トルエン、ジクロロメタン等で抽出し、通常の後処理を行うことにより目的物を取り出す。このプロトン化処理時に使用する水の量は反応スケールや後処理時の操作性等に応じ任意に設定してよい。又、酸や無機塩を用いる場合、その濃度も任意に設定できるが5〜10%程度が好ましい。又、この処理時の温度は−10〜40℃、好ましくは0〜20℃である。
【0032】
【発明の効果】
本発明方法により、工業的にも取扱い容易がでかつ安価に入手できる原料を用いて簡便にN−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンを製造できる様になった。このN−トリアルキルメチルカルボニル−2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンは加水分解する事により、合成抗菌剤の原料である2−メチル−3,4−ジフルオロアニリンを含む2−アルキル−3,4−ジフルオロアニリンを収率良く、簡便な操作により工業的に得る事が可能である。
【0033】
また、本発明方法においては原料として3,4−ジフルオロ体(3−位,4−位が共にフッ素であるアニリン誘導体)を使用するが、この化合物を用いる場合には、従来、類似の反応において知られている様な〔ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー、第47巻、2804頁(1962年)〕、メタ位にハロゲンを有するトリアルキルメチルカルボニルアニリドのアルキルリチウムとの反応においては脱ハロゲン反応(ベンザインの発生)が主反応として起きると云う事実は観測されない。従って、脱ハロゲンや閉環を伴わないN−トリアルキルメチルカルボニル−3,4−ジフルオロアニリンの選択的アルキル化が可能という知見に基づいてなされた本発明は、従来の技術常識からは決して予測できないものであるのみならず、応用性が広く、産業上の有用性も極めて高いものである。
【0034】
【実施例】
次に、本発明化合物およびその製造方法について、実施例により詳細に説明する。
【0035】
参考例1
還流冷却器、温度計、および攪拌機を備えた500ml容の四ツ口フラスコに3,4−ジフルオロアニリン25.8g(0.2mol)、トリエチルアミン20.2g、(0.2mol)、トルエン200mlを仕込み、攪拌しながらピバリン酸クロリド24.1g(0.2mol)を滴下した。ピバリン酸クロリドの滴下により発熱が起こり、反応系の液温が60℃まで上昇した。滴下終了後、室温で2.5時間攪拌を継続し反応終了とした。反応混合物に水200mlとエーテル200mlを加えた後、攪拌して析出していた結晶を全て溶解させた。次いで、分液してエーテル層を取り出し、これを5%−水酸化ナトリウム水溶液200mlで1回、水200mlで2回、順次洗浄した。得られたエーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮する事により3,4−ジフルオロピバロイルアニリドの粗結晶を得た。このものをトルエンおよびn−ヘキサンの混合溶媒で洗浄後、濾過、乾燥して33.7gのN−ピバロイル−3,4−ジフルオロアニリンを得た(収率79.0%)。
【0036】
(N−ピバロイル−3,4−ジフルオロアニリン)
融点:119〜122℃
Mass(m/e):213(M+),129(M+−COC4H9)
1H−NMR(δ値、CDCl3):1.30(s,9H,−C(CH3)3)、6.8−7.9(m,4H,aromatic protons+NH)
【0037】
実施例1
還流冷却器、温度計、および磁気攪拌子を備えた100ml容の四ツ口フラスコに、N−ピバロイル−3,4−ジフルオロアニリン2.13g(0.01mol)、無水テトラヒドロフラン30mlを仕込み、窒素気流下でドライアイス/アセトンで冷却しながら−60℃で攪拌した。次いでn−ブチルリチウム(20%−シクロヘキサン溶液)7.2g(0.023mol)を−60〜−50℃で滴下した後、−55℃で1時間攪拌を継続した。次いで、ここに−40〜−55℃で、ヨウ化メチル1.56g(0.011mol)をテトラヒドロフラン3mlに溶解した溶液を滴下した。同温度で1時間攪拌を継続した後、室温まで昇温し、2時間攪拌を続け反応終了とした。反応混合物に水100mlとエーテル100mlを加えて抽出操作を行った後エーテル層を取り出した。得られたエーテル層を水100mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥してから、エーテルを留去して2.46gのN−ピバロイル−3,4−ジフルオロ−2−メチルアニリンを得た(粗収率108%、純度88.2%)。このものを更にn−ヘキサンで再結晶して白色結晶1.76gを得た(収率77.4%、純度99.2%)。
【0038】
(2−メチル−3,4−ジフルオロピバロイルアニリド)
融点:112〜114℃
Mass(m/e):227(M+),143(M+−COC4H8)
1H−NMR(δ値、CDCl3):1.33(s,9H,−C(CH3)3)、2.19(d,3H,J=2.0Hz)、6.8−7.8(m,3H,aromatic protons+NH)
【0039】
実施例2
還流冷却器、温度計、および磁気攪拌子を備えた100ml容の四ツ口フラスコにN−ピバロイル−3,4−ジフルオロアニリン2.13g(0.01mol)、無水テトラヒドロフラン30mlを仕込み、窒素気流下でドライアイス/アセトンで冷却しながら−70℃で攪拌した。次いでn−ブチルリチウム(20%−シクロヘキサン溶液)7.0g(0.022mol)を−65〜−70℃で滴下した後、−70℃で1時間攪拌を継続した。次いでここに−65〜−70℃で、ヨウ化メチル1.5g(0.011mol)をテトラヒドロフラン3mlに溶解した溶液を滴下した。その後、同温度で1時間攪拌を継続した後、室温まで昇温し、1時間攪拌を続け反応終了とした。反応混合物に水90mlとエーテル100mlを加えて抽出操作を行った後、エーテル層を取り出した。得られたエーテル層を水100mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エーテルを留去して、2.41gのN−ピバロイル−3,4−ジフルオロ−2−メチルアニリンを得た(粗収率106%、純度90.8%)。
【0040】
参考例2
還流冷却器および磁気攪拌子を取り付けた200ml容の丸底フラスコに、先に製造したN−ピバロイル−3,4−ジフルオロ−2−メチルアニリン2.41g( 0.0096モル)、エタノール30ml、35%−塩酸30mlを仕込み、オイルバス上で攪拌しながら24時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を冷却した後、10%水酸化ナトリウム100ml中に注ぎ、エーテル100mlで抽出した。得られたエーテル層を水100mlで2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥してからエーテルを留去し、1.69gの油状物質を得た。このものを更に減圧下で乾燥して、1.25gの2−メチル−3,4−ジフルオロアニリンを得た〔収率90.9%(N−ピバロイル−3,4−ジフルオロ−2−メチルアニリン基準)、純度94.2%〕。
【0041】
(2−メチル−3,4−ジフルオロアニリン)
沸点:40〜45℃/1mmHg
【0042】
比較例1(3−クロロ−4−フルオロ体原料による反応)
還流冷却器、温度計、および磁気攪拌子を備えた100ml容の四ツ口フラスコに、N−ピバロイル−3−クロロ−4−フルオロアニリン2.30g(0.01mol)、無水テトラヒドロフラン30mlを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら−70℃まで冷却した。ここにn−ブチルリチウム(20%−シクロヘキサン溶液)7.1g(0.022mol)を−70〜−65℃で滴下した後、−70℃で1時間攪拌を継続した。次いでここに−70〜−65℃で、ヨウ化メチル1.5g(0.11mol)をテトラヒドロフラン3mlに溶解した溶液を滴下した。同温度で1時間攪拌を継続した後、室温まで昇温し1.5時間攪拌を続け反応終了とした。反応混合物に水80mlとエーテル80mlを加え抽出操作を行った後、エーテル層を取り出した。得られたエーテル層を水100mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥してからエーテルを留去し、2.60gの油状物質を得た。このものを機器分析(ガスクロマトグラフィーおよびマススペクトル)したところ、閉環後にメチル化を受けた生成物である2−(t−ブチル)−6−フルオロ−7−メチルベンズオキサゾールが64.9%生成しており、原料のN−ピバロイル−3−クロロ−4−フルオロアニリンが25.1%残存していた。その他2−(t−ブチル)−6−フルオロベンズオキサゾールも3.0%生成していたが、比較対照目的物となるN−ピバロイル−3−クロロ−4−フルオロ−2−メチルアニリンは1.0%しか生成していなかった。
【0043】
比較例2(3−フルオロ体原料による反応)
還流冷却器、温度計、および磁気攪拌子を備えた100ml容の四ツ口フラスコに、N−ピバロイル−3−フルオロアニリン1.95g(0.01mol)、無水テトラヒドロフラン30mlを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら−70℃以下に冷却した。ここにn−ブチルリチウム(20%−シクロヘキサン溶液)7.2g(0.022mol)を−70〜−65℃で滴下した後、−70℃で1.5時間攪拌しを継続した。次いでここに−70〜−65℃で、ヨウ化メチル1.5g(0.11mol)をテトラヒドロフラン3mlに溶解した溶液を滴下した。同温度で1時間攪拌を継続した後、室温まで昇温し1時間攪拌を続け反応終了とした。反応混合物をサンプリングし、水で処理した後、機器分析(ガスクロマトグラフィーおよびマススペクトル)したところ、原料のN−ピバロイル−3−フルオロアニリンが85.1%残存しており、目的とするN−ピバロイル−4−フルオロ−2−メチルアニリンは5.1%しか生成していなかった。又、その他の生成物として2−(t−ブチル)−7−メチルベンズオキサゾールが7.3%生成していることが確認された。
Claims (3)
- 請求項1記載の一般式(2)で表されるN−トリ(C 1 〜C 6 アルキル)メチルカルボニル−2−(C 1 〜C 6 アルキル)−3,4−ジフルオロアニリン。
- N−ピバロイル−3,4−ジフルオロ−2−メチルアニリン。
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