JP4081179B2 - コンピュータネットワークによる航行支援システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基地局に設置するホストコンピュータと、このホストコンピュータとネットワークを介してデータ通信するための端末無線機に接続し、受信データ処理及び送信データ作成を行うための船舶に設置するパソコンと、このパソコンに接続し、人工衛星を利用して自船の位置を検出するためのナビゲーション装置とによって構築するコンピュータネットワークによる航行支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の航行支援システムとしては、VTS(Vessel Traffic Services:船舶通航業務)が知られており、このVTSは、管制センターの管制官がレーダー画面を監視し、衝突等の危険がある場合、その船舶に他船の動向を知らせるというものである。
【0003】
また、船舶側において自船の周囲海域に存在する他の船舶に係るデータを把握するためのシステムとしては、AIS(Automatic Identification System:自動識別システム)が国際的に提唱されている。このAISは、放送方式とも呼ばれるもので、各船舶において、人工衛星を利用したナビゲーション装置により得た位置データ、船速データ、進路データ、船名等の船舶認識データ等を所定の時間間隔で自動放送し、この放送されたデータを他の船舶が把握することにより、緊急事態が発生する前に各船舶側の判断で相手船舶と交信を行って危険を回避する、というものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、船舶の衝突や座礁事故の大半は操船者の過信や錯誤等の人為的原因に起因するものである。そして、上記VTSだけでは、その表示画面の情報からでは近辺を航行する他の船舶の識別ができず(他船情報の取得不足)、連絡設定がしにくく意思の疎通を欠き、思い込みや錯誤に陥りやすい、という問題と、危急な事態下で相手船舶の進路・速力データが得られず、冷静、的確な判断を下すことができない(他船情報の即時性不足)だけでなく、該相手船舶の周囲に存在する遠方の船舶データも把握不能(他船情報把握範囲の狭さ)で相手船舶の動作予想が立たず、衝突を回避しにくい、という問題とを有していた。さらに、レーダーを用いて船舶を捕捉する方式であるため、島影や豪雨で起こるシャドウイングによる位置誤認や、物標や船舶動向を示す情報把握が遅れるため、物標接近時にスワップが発生しやすい(他船情報の信頼性不足)という情報環境面の問題と、陸上局の指示で事故が発生した場合の責任の所在が明確ではない(責任体制の不明瞭)、という問題と、レーダーの探知範囲に制約があるため、広い海域では適用が困難であるうえ、レーダー設置にかかる建設費と維持費が膨大なものになる(経済性の課題)、という問題があった。加えて、陸上局はレーダーによって各船舶の位置を認識することは可能でも、陸局においてレーダーで捉えた船舶の船舶番号や船名を確認するには各船舶と交信しなければならないうえ、船舶側では、自船周囲の他船舶の船舶データを素早く把握することもできない、という問題があった。
【0005】
また、AISは、位置データ、船速データ、進路データ、船名等の船舶認識データ等を自動放送するための設備費が高価なので、所定以上の総トン数の船舶、例えば300トン以上の船舶なら設置できてもプレジャーボート等の小船は経費的に設置しにくいもので、小船どうしあるいは小船と大型船間で発生する事故を防止するために不向きであるほか、電波法等で定められた使用可能な周波数を分割して各船舶に割り当てるという周波数割り当て放送方式であるため、輻輳海域に進入した船舶数が前記割り当て数の限界を越えると、システムに参加できない船舶が生じる、という問題があった。
【0006】
本発明は、前記各問題を解消することを課題とし、この課題を解決した航行支援システムの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の航行支援システムは、基地局に設置するホストコンピュータと、このホストコンピュータとネットワークを介してデータ通信するための端末無線機に接続し、受信データ処理及び送信データ作成を行うための船舶に設置するパソコン及びディスプレイと、このパソコンに接続し、人工衛星を利用して自船の位置を検出するためのナビゲーション装置とによって構築するコンピュータネットワークによるもので、所定海域に進入した各船舶では、前記端末無線機を介して、船舶認識情報を含む船舶データと、前記ナビゲーション装置によって得た位置データとを、各船舶の速度に応じて各別に所定の時間間隔で前記基地局に送信する一方、基地局では、各船舶に、各船舶周囲海域に存在する他の船舶から受信した、位置データ、船舶認識情報を含む船舶データと、順次変化する前記位置データに基づいて算出した他の船舶の船速データ及び進路データと、前記周囲海域の物標等の位置情報を含む海域データとを、各船舶の速度に応じて各別に所定の時間間隔で送信するものである。
【0008】
また、請求項2記載の本発明の航行支援システムは、前記請求項1に記載の発明の構成に加えて、ネットワークとして公衆電話回線を用い、データ通信用の端末無線機として携帯電話を用い、また、ナビゲーション装置としてGPSを用いるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここにおいて、添付図面の図1は航行支援システムを実行するための設備の概略的構成図、図2は船舶と基地局間で行うデータ通信手順を示すフロー図、図3はパソコンのディスプレイに表示された自船周囲海域図である。
【0010】
図1に示すように、航行支援システムに用いるコンピュータネットワークは、複数の電話局1aを有するネットワークである公衆電話回線1に接続した陸上(a)の基地局2(図3参照)に設けるホストコンピュータ3と、前記公衆電話回線1を介してホストコンピュータ3との間でデータ通信するための端末無線機である船舶4側に設ける携帯電話5と、衛星によるGPS(Global Positioning System)を利用した、各船舶4に設けるナビゲーション装置6と、前記携帯電話5、前記ナビゲーション装置6及びディスプレイ7aを接続したパソコン7とにより構築する。
【0011】
そして前記航行支援システムにあっては、多数の船舶4が輻輳する所定海域である湾内(b)に進入した各船舶側において前記携帯電話5で所定の基地局2を呼び出しホストコンピュータ3に回線を接続した後、前記ナビゲーション装置6によって得た位置データと、船舶番号あるいは船名等の船舶を認識するための船舶認識情報、船種情報、船体長情報、目的地情報、積荷情報、乗客数情報等とからなる船舶データをパソコン7で処理して所定の時間間隔でホストコンピュータ3に送信し、基地局2は、各船舶4から得た各データを記憶するとともに、解析し、各船舶4の周囲半径10キロ海域(c)内に存在する他の船舶4の前記位置データと、この位置データにリンクさせた前記船舶データと、前記位置データ及びその前の位置データに基づいて算出した他の船舶4の船速データおよび進路データと、を送信するように構成する(図3参照)。また、基地局2からは、魚網8、ブイ9等の物表に関する、別途情報源からの情報に基づいて入力しておいた保持資料情報や潮情報(図示せず)からなる海域データを送信するように構成する。
【0012】
図1、図3に示すように、船舶4から基地局2への送信あるいは基地局2から船舶4への送信の時間間隔は、ホストコンピュータ3が各船舶4の船速に応じて自動的に決めるもので、例えば、高速船の場合は位置変化が急激であり、船舶4どうしの衝突回避がむずかしいため、前記時間間隔を短く設定する。例えば、14ノット以下では12秒、14ノット〜23ノットでは6秒、23ノット以上では3秒、というように変更する。
【0013】
また、初期接続時に送信するデータは、初期接続時に前記全データを送信するが、2次送信以降の定時データ送信は位置データのみを更新送信する。なお、船舶4がその目的地を変更した場合は、その都度変更したデータを送信する。
【0014】
図3に示すように、船舶4側のパソコン7は、そのディスプレイ7aに自船4aの周囲半径10キロ海域(c)以内の他の船舶4の進路及び船速を海図上にベクトル10の向き及びベクトル10の長さでそれぞれ表示し、該ベクトル10が表示されていない船舶4は停止状態にあることを示す。また、前記ディスプレイ7aに表示された魚網8、ブイ9等の物標は、あらかじめ決められた記号で表示する。さらに、他の船舶4の船名、船種、船体長、目的地、積荷、乗客数は、前記ベクトル10の基端部分に、マウス(図示せず)により誘導したカーソル(図示せず)を合わせてクリックすることで他の表示画面(図示せず)を呼び出し、この画面上に文字や数値で表示するように構成してある。
【0015】
次に、図2に基づいて各船舶4と基地局2との間のデータ通信手順を説明する。船舶4は湾内(b)に進入すると、基地局2を呼び出し回線を接続するとともに、前記ナビゲーション装置6によって得た位置データ、船舶認識情報、船種情報、船体長情報、目的地情報、積荷情報、乗客数情報等からなる船舶データを、携帯電話5で公衆電話回線1を介して前記基地局2のホストコンピュータ3に送信する(ステップ101)。一方、基地局2側では、前記進入船舶4の位置データ、船舶データを受信し(ステップ102)、ホストコンピュータ3で処理する。次に、前記進入船舶4には、その周囲半径10キロ海域(c)内に存在する他の船舶4の船舶データ、船速データ、進路データ、あらかじめ入力しておいた海域データを抽出し(ステップ103)、送信する(ステップ104)。
【0016】
前記進入船舶4では、前記各データを携帯電話5で受信し(ステップ105)、パソコン7で回線接続の確認を行うとともにデータ処理し、ディスプレイ7a上に自船4aの周囲半径10キロ海域(c)内の他の船舶4の位置をベクトル10の基端位置の記号で、進路をベクトル10の向きで、船速をベクトル10の長さでそれぞれ表示し、魚網8、ブイ9等の物標をあらかじめ決められた記号で表示する。また、他の船舶4の船名、船種、船体長、目的地、積荷、乗客数等は、前記各ベクトル10の基端部分に、マウス(図示せず)によりカーソル(図示せず)を合わせてクリックすることで他の表示画面(図示せず)を呼び出し、この画面上に文字や数値で表示する。
【0017】
次に、所定時間、例えば12秒が経過すると、前記進入船舶4側では、2次の位置データをホストコンピュータ3に送信し(ステップ106)、基地局2では、ホストコンピュータ3により、前記2次の位置データを受信し(ステップ107)、この位置データ及び前記初期位置データに基づいて算出した船速データ及び進路データを算出するとともに、該船舶4に、その周囲半径10キロ海域(c)内に存在する他の船舶4の船舶データ、船速データ、進路データ、あらかじめ入力しておいた海域データを抽出し(ステップ108)、各船舶4に送信する(ステップ109)。そして、この基地局2からの送信は、他の各船舶4にも同様に行われ、各船舶4で周囲半径10キロ海域(c)内の他の船舶4の各データを受信する(ステップ110)。
【0018】
各船舶4では、このようにして受信した各データをパソコン7でデータ処理し、ディスプレイ7a上に自船4aの周囲半径10キロ海域(c)内の他の船舶4の位置をベクトル10の基端位置の記号で、進路をベクトルの向きで、船速をベクトル10の長さでそれぞれ表示し、魚網8、ブイ9等の物標をあらかじめ決められた記号で表示する。また、他の船舶4の船舶データである船名、船種、船体長、目的地、積荷、乗客数等は、前記各ベクトル10の基端部分に、マウス(図示せず)によりカーソル(図示せず)を移動しクリックすることで他の表示画面(図示せず)を呼び出し、この画面上に文字や数値で表示するのである。
【0019】
そしてこれ以後も、各船舶4と基地局2との間で、前記と同様のデータ通信を、各船舶4が目的地に到着して回線を切断するまで継続する。
【0020】
このように、上記航行支援システムは、各船舶4において、半径10キロ範囲内の他の船舶4の位置データ、船速データ、進路データ、船舶データ、海域データをディスプレイ7a上に明示し、例え危急事態になっても冷静で的確な判断を下すための状況把握が容易にできるとともに、相手船舶4を回避するための意思決定をする際に、相手船舶4の船舶認識情報を直ちに視認できるので、無線連絡設定(無線機は従前より設備してあるものを用いる)が容易で、思い込みや錯誤に陥りにくいほか、相手船舶4の位置データ及び船舶データだけでなく、相手船舶4の周囲に存在する他の船舶4の動向をも把握でき、船舶4どうしの衝突事故を回避しやすく、接近時のスワップも発生しにくい。また、従来のようにレーダーを必要としないから、基地局2のインフラ整備に多大の設備費がかからない、という利点がある。
【0021】
また、上記航行支援システムは、通信ネットワークとして公衆電話回線1を用い、船舶4側では、データ通信用の端末無線機として安価な携帯電話5を用いるとともに、現在普及しているGPSを利用したナビゲーション装置6及び商用パソコン7を用いるので、より経済性に優れている、という利点がある。加えて、参加船舶側の費用負担が小さいので、例えば300トン以下のプレジャーボート等の小船でも参加できて参加船舶の範囲が広がり、より衝突事故を減少しうる、という利点がある。さらに、上記航行支援システムは、船舶の積荷情報、目的地情報や乗客数情報を利用することによって、物流システムや交通システムに寄与することが可能である。また、従来のレーダーを用いたVTSと組み合わせることによって、基地局2のレーダーで捉えた、本システムに参加していない船舶や舟艇等のデータを各船舶に送信することによって、航行支援効果をさらに向上させることも可能である。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、例えば、船舶4側と基地局2側とのデータ通信は、公衆電話回線1、携帯電話5を用いず、他の無線設備を用いてもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載した本発明によれば、各船舶からのデータを基地局で受信及び処理をし、この処理したデータ及び海域データを各船舶に各別に送信するように構成したので、各船舶において容易に他の船舶の位置、進路、船速、船舶認識情報と、周辺海域の海域データをディスプレイ上に明示し、危急事態下で冷静、的確な判断を下すための状況把握が容易にでき、例えば衝突を回避するための意思決定をする際に相手船舶の船舶認識情報をもとに連絡設定が容易で、思い込みや錯誤に陥りにくいほか、相手船舶の位置データ及び船舶データだけでなく、相手船舶の周囲に存在する他の船舶の動向をも把握でき、接近時にスワップも発生しにくい、また、基地局と船舶間の送信の時間間隔は、各船舶の速度に応じて決めるので、例えば急激に位置変化する高速船の場合でも正確な位置確認が可能で衝突回避がし易いという効果を奏する。
【0024】
また、請求項2に記載した発明によれば、前記請求項1に記載した発明の効果に加えて、船舶側では、データ通信用の端末無線機として安価かつ加入容易な携帯電話を用いるとともに、現在普及しているGPSを利用したナビゲーション装置及び商用パソコンを用いるので経済性に優れており、小型船舶でも設置しやすく、例えば300トン以下のプレジャーボート等の小船でも参加できるから、より船舶衝突事故の防止効果を向上しうるほか、ネットワークとして公衆電話回線を用いるので、所定海域に進入した船舶数が多くても回線数を増やせば容易に対処でき、多数の船舶がシステムに参加できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 航行支援システムを実行するための設備の概略的構成図。
【図2】 船舶と基地局間で行うデータ通信手順を示すフロー図。
【図3】 パソコンのディスプレイに表示された自船周囲海域図。
【符号の説明】
(a)陸上
(b)所定海域
(c)周囲半径10キロ海域
1 公衆電話回線
1a 電話局
2 基地局
3 ホストコンピュータ
4 船舶
4a 自船
5 携帯電話
6 ナビゲーション装置
7 パソコン
7a ディスプレイ
8 魚網
9 ブイ
10 ベクトル
Claims (2)
- 基地局に設置するホストコンピュータと、このホストコンピュータとネットワークを介してデータ通信するための端末無線機に接続し、受信データ処理及び送信データ作成を行うための船舶に設置するパソコン及びディスプレイと、このパソコンに接続し、人工衛星を利用して自船の位置を検出するためのナビゲーション装置とによって構築するコンピュータネットワークによる航行支援システムであって、所定海域に進入した各船舶では、前記端末無線機を介して、船舶認識情報を含む船舶データと、前記ナビゲーション装置によって得た位置データとを、各船舶の速度に応じて各別に所定の時間間隔で前記基地局に送信する一方、基地局では、各船舶に、各船舶周囲海域に存在する他の船舶から受信した、位置データ、船舶認識情報を含む船舶データと、順次変化する前記位置データに基づいて算出した他の船舶の船速データ及び進路データと、前記周囲海域の物標等の位置情報を含む海域データとを、各船舶の速度に応じて各別に所定の時間間隔で送信することを特徴とするコンピュータネットワークによる航行支援システム。
- ネットワークとして公衆電話回線を用い、データ通信用の端末無線機として携帯電話を用い、また、ナビゲーション装置としてGPSを用いることを特徴とする請求項1に記載したコンピュータネットワークによる航行支援システム。
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