JP4080824B2 - 非ハロゲン系床材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマンションや住宅等の建築物に用いられる床材に関し、さらに詳しくは非ハロゲン系樹脂を用いた床材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マンションや住宅等の建築物に用いられる床材は、施工作業性の点から柔軟性が、耐久性の点から耐摩耗性および耐汚染性が、そして装飾性の点から意匠性が重要な機能として求められ、これらの機能を個々に満足させるものとして従来では、ポリ塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン系樹脂を用いた床材がある。
しかし、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系樹脂を使用した床材は、柔軟性に優れているので施工性は良いが、焼却時に塩酸ガス等の有害ガスを発生したり、使用中に可塑剤が滲み出す等の問題があった。
更に、ハロゲン系樹脂を用いた床材は、揮発性有機化合物(以下、VOCと称する。)が比較的多く含まれているため、シックハウス症候群等の問題も指摘されている。
一方、ポリオレフィン系樹脂を単独またはブレンドした床材の研究も数多くされている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、特許文献1のものは、耐摩耗性は優れているが柔軟性に劣るために施工しずらく、特許文献2のものでは、柔軟性および透明性には優れているが、耐摩耗性および耐光性が悪いという問題があった。
【0003】
【先行技術文献の開示】
【特許文献1】
特開平4−347633号公報
【特許文献2】
特開平7−89013号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消し、耐摩耗性、柔軟性、意匠性および耐光性に優れた非ハロゲン系床材を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明に係る非ハロゲン系床材は、曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層と、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマーまたはゴムを50〜20重量部の合計100重量部に対して、密度が0.902〜0.922(g/cm3)である直鎖状低密度ポリエチレン3〜90重量部を添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層とからなることを特徴としたものである(請求項1)。
この際、前記上層を透明な層に形成し(請求項2)、前記下層と透明な上層の間に意匠層を積層することが好ましい(請求項4)。また、前記上層を透明な層に形成する場合、ポリプロピレンとしてランダムポリプロピレン共重合体を用い、熱可塑性エラストマーとして水素添加スチレン系共重合体を用いることが好ましい(請求項3)。
更に、耐光性を向上させるために、前記ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーの合計100重量部に対して光安定剤を0.01〜5重量部添加しても良い(請求項5)。前記光安定剤としては、N−水素型置換ヒンダードアミン化合物またはN−メチル置換ヒンダードアミン化合物の少なくとも1種以上を含むものを用いることが好ましい(請求項6)。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に係る非ハロゲン系床材は、基本的に、非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層と、ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムに直鎖状低密度ポリエチレンを添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層とから形成されるが、下層と上層の間に意匠層を設けるなど、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他の機能層を積層してもよい。
【0007】
本発明の非ハロゲン系床材を構成する下層に用いられる非ハロゲン系樹脂としては、ハロゲン原子を実質的に含まない樹脂であれば特に制限はない。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE),超低密度ポリエチレン(VLDPE),ポリプロピレン(PP),ポリブテン(PB),非晶性α−オレフィンの共重合体,エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンの共重合体,エチレンプロピレンゴム,ポリブタジエンゴム,ポリイソプレンゴム,ブチルゴム,二トリルゴム,エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA),エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA),エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA),エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA),スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等),水素添加スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS),スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBBS),水素添加スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等),メタクリル酸メチル(PMMA),ポリエチレンテレフタレ−ト(PET),オレフィン系熱可塑性エラストマー,スチレン系熱可塑性エラストマー,ウレタン系熱可塑性エラストマー,ポリエステル系熱可塑性エラストマー、等から選ばれた一種または二種以上をブレンドしたものを挙げることができる。
【0008】
下層は、上に挙げた非ハロゲン系樹脂において、その曲げこわさが1〜300MPaの範囲にあるものを使用する。下層の主成分である非ハロゲン系樹脂の曲げこわさは床材としての強度に影響し、曲げこわさが1MPa未満では床材としての強度が劣り使用に耐えなくなり、300MPaを超えると下層(床材)として硬くなりすぎて施工にかかわる納まり性が悪くなるので、10〜100MPaの範囲とすることが好ましい。
ここで、曲げこわさは、JIS K 7106(片持ちばりによるプラスチックの曲げこわさ試験方法)に準じて、オルゼン曲げ試験機を用いて測定した。ちなみに曲げこわさは、床材の評価項目としてJISにはないが、本発明では折り曲げを含んだ施工性の評価をする上での指標として曲げこわさを評価項目としたものである。すなわち、床材としては、椅子や机、棚などによる荷重を受けたときに凹みが発生したり、荷重を掛けた状態で引きずったときに変形するようでは使用上問題があるので、荷重に対する強度の指標として床材の曲げこわさを評価項目としたものである。従って、曲げこわさが小さ過ぎると強度が小さくなるため、床材として使用に耐えなくなる。
【0009】
本発明の非ハロゲン系床材を形成する上層は、ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムに、直鎖状低密度ポリエチレンを添加してなる樹脂組成物を主成分としてなり、好ましくは透明な層として形成される。ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムをブレンドしたものに直鎖状低密度ポリエチレンを添加することにより、床材としての柔軟性を維持しながら、耐摩耗性、耐傷付き性、耐汚染性を向上させることができる。ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムをブレンドしたものでは、耐摩耗性、耐傷付き性、耐汚染性の面から使用場所としては室内等の軽歩行部分に限られていたが、直鎖状低密度ポリエチレンを添加することにより耐摩耗性、耐傷付き性、耐汚染性が向上するため、屋外等の重歩行部分にも使用することが可能になる。
【0010】
床材の上層を形成するのに用いられる上記ポリプロピレンとしては、プロピレンモノマーからなるホモポリプロピレンや、プロピレンモノマーにエチレン,ブチレン等の他のオレフィンモノマーをランダムに共重合させたランダムポリプロピレン共重合体、或いはブロックに共重合させたブロックポリプロピレン共重合体などを挙げることができる。
【0011】
また、上層を形成するのに用いられる上記熱可塑性エラストマーまたはゴムとしては、エチレンプロピレンゴム,ポリブタジエンゴム,ポリイソプレンゴム,ブチルゴム,二トリルゴム,エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA),エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA),エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA),エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA),スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等),水素添加スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS),スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBBS),水素添加スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等),オレフィン系熱可塑性エラストマー,スチレン系熱可塑性エラストマー,ウレタン系熱可塑性エラストマー,ポリエステル系熱可塑性エラストマー、などから選ばれた一種または二種以上をブレンドしたものを挙げることができる。この中で、透明性の面からポリプロピレンとしてはランダムポリプロピレン共重合体を用い、熱可塑性エラストマーとしては水素添加スチレン系共重合体を用いることが望ましい。
【0012】
そして、上層を形成するのに用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンとα−オレフィンを共重合させることにより得られる。α−オレフィンとしては、ブテン−1,ヘキセン−1,4−メチルペンテン−1,オクテン−1、等が挙げられる。
【0013】
これら上層を形成するのに用いるポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムおよび直鎖状低密度ポリエチレンは、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマー50〜20重量部の合計100重量部に対して、直鎖状低密度ポリエチレンを3〜100重量部の割合でブレンドする。
ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムをブレンドする場合、ポリプロピレンの配合割合が50重量部より少ないと、ポリプロピレンが有する耐摩耗性および耐汚染性の効果を十分に発揮しえなくなるので、上層(床材)としての耐摩耗性および耐汚染性等が劣ってしまい、80重量部をより多くなると上層(床材)として硬くなりすぎて施工にかかわる納まり性が悪くなる。よって、ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーまたはゴムをブレンドする場合、ポリプロピレン共重合体を60〜70重量部とし、熱可塑性エラストマーを40〜30重量部とすることがより好ましい。
【0014】
そして、直鎖状低密度ポリエチレンは、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマーまたはゴム50〜20重量部の合計100重量部に対して、後述する実施例の範囲(3〜90重量部)で添加することが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの添加量が少な過ぎると上層(床材)としての耐摩耗性が劣り、多すぎると硬くなって、納まり性が悪くなり施工上の問題が生じるので、耐摩耗性と施工性を考慮した場合、10〜70重量部の範囲で添加量することがより好ましい。
【0015】
また、使用する直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、後述する実施例の範囲(0.902〜0.922(g/cm 3 ))にあることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度が低すぎると少しべたつきが生じるため耐摩耗性および耐汚染性等が劣り、高すぎると硬くなって、納まり性が悪くなり施工上問題となる。ちなみに、この直鎖状低密度ポリエチレンでは、その密度が0.914(g/cm3)のときの曲げこわさは130(MPa)であり、密度が0.935(g/cm3)のときの曲げこわさは380(MPa)であった。尚、この直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、JIS K 7112(プラスチックの密度と比重の測定方法による)に準じて測定した。
【0016】
更に、本発明に係る非ハロゲン系床材では、前記した下層と透明な上層の間に意匠層を積層することができる。意匠層としては、適宜な着色を施してなる着色層や、適宜な模様を施してなる模様層、または適宜な印刷模様を施してなる印刷層などが挙げられる。
【0017】
模様層としては、例えばチップ模様、マ−ブル模様、インレイド模様等が模様の種類として挙げられる。
尚、模様層に使用される非ハロゲン系樹脂としては、ハロゲン原子を実質的に含まない樹脂であれば特に制限はない。具体的には、前述した下層を形成する非ハロゲン系樹脂として挙げたものと同じ非ハロゲン系樹脂を使用することができる。
また、印刷層とは下層に印刷を施してなる層であり、印刷方法としてはグラビア印刷、オフセット印刷、転写紙等が挙げられる。印刷層に用いる塗料としては、アクリル系、ウレタン系、スチレン系塗料等を挙げることができる。
【0018】
また、本発明の非ハロゲン系床材を構成する下層と上層および意匠層に使用される非ハロゲン系樹脂の樹脂の流動特性(MFR)は、加工性の面から、0.1〜100(g/10min)が好ましい。
【0019】
更に、本発明の非ハロゲン系床材には、耐光性を向上させるために光安定剤を添加することが望ましい。光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,トリアジン系紫外線吸収剤,ベンゾフェノン系紫外線吸収剤,ベンゾエート系紫外線吸収剤,ヒンダードアミン系光安定剤、などから選ばれた一種または二種以上をブレンドして使用することができる。なかでも、雨水等の影響も関係する耐候性が良好なヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
【0020】
ここで、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェニル、等が挙げられる。
【0021】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール、2−〔4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−5−(オクチルオキシ)−フェノール、等が挙げられる。
【0022】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、等が挙げられる。
【0023】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5,−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0024】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、N−水素置換ヒンダードアミン化合物(N−H型)、N−メチル置換ヒンダードアミン化合物(N−Me型)、N−アルコキシル置換ヒンダードアミン化合物(N−OR型)等が挙げられ、それぞれヒンダードアミン化合物中に含まれる窒素原子に水素原子、メチル基またはアルコキシル基が結合している公知の化合物を使用することができ、耐候性、コストの面からN−水素置換ヒンダードアミン化合物(N−H型)、N−メチル置換ヒンダードアミン化合物(N−Me型)が好ましい。
例えば、N−水素置換ヒンダードアミン化合物としては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6−ヘキサジアミン,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)n−,2,4−ジクロロ−6−(4−モルフォリニル)−1,3,5−トリアジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−C12〜C21及びC18不飽和脂肪酸エステル、等が挙げられる。
N−メチル置換ヒンダ−ドアミン化合物としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6−ヘキサジアミン,N,N′−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)n−,モルフォリニル−2,4,6−トリクロロ−1,3,5トリアジン、等が挙げられる。
N−アルコキシル置換ヒンダードアミン化合物としては、ビス(1−オクチロオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、等が挙げられる。
その他のヒンダードアミン化合物としては、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、等が挙げられる。
【0025】
これらの光安定剤は、耐光性およびコストの面から、ポリプロピレンを主体とするランダムポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーの合計100重量部に対して、0.01〜5重量部を添加することが好ましい。
【0026】
また、本発明の非ハロゲン系床材には、非ハロゲン系樹脂の他に、各種樹脂改質剤(例えば、石油樹脂,変性石油樹脂,低分子量ポリエチレン系樹脂,低分子量ポリプロピレン系樹脂等)や、各種添加剤(例えば、抗菌剤,帯電防止剤,酸化防止剤,光安定剤,滑剤,防汚剤,蓄光剤,消臭剤等)などを加えることができる。その中で、VOCの影響によるシックハウス症候群等に対応する(居住者の健康に悪影響を及ぼす心配が極めて少ないレベル)ためには、非ハロゲン系樹脂に含まれる各種添加剤の分子量が300を超えるもの、各種樹脂改質剤の重量平均分子量が1000を超えるものが好ましい。分子量が低いと揮発しやすくなり、また床材として敷設後に日差しを受けて高温(例えば、40℃〜60℃位)になると一層のこと揮発しやすくなるからである。
【0027】
更に、本発明の非ハロゲン系床材には、床材としての寸法安定性と基礎床面に対する接着性を向上させるために、下層の下面または下層中或いは下層と上層の間のいずれかに基布を積層してもよい。基布としては、ガラス繊維,ポリオレフィン繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維,アクリル繊維等の合成繊維、或いは麻等の天然繊維からなる繊維の単独または混紡による織布または不織布を用いることができる。
基布には下層との接着性を向上させるために、アクリル系,スチレン系,アクリル−スチレン系,酢酸ビニル系,エチレン−酢酸ビニル系,ウレタン系,エポキシ系,スチレン−ブタジエン系,ポリエステル系等の各種処理剤を施すことができる。
【0028】
更に、本発明の非ハロゲン系床材の表面、すなわち上層の表面には、汚れ防止や耐摩耗性を向上させるために表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、アクリル系,ウレタン系,シリコーン系,フッ素系等のワックスや紫外線硬化塗料、電子線架橋塗料などの塗布が挙げられる。また、耐傷付性、汚れ防止、意匠性を向上させるために、フッ素樹脂系,アクリル樹脂系,ポリカーボネート系,ポリエステル系,ナイロン系,ポリオレフィン系等からなるフィルムを積層することができる。
【0029】
また、本発明の非ハロゲン系床材には、性能を害さない範囲で顔料や各種充填材(例えば、タルク,マイカ,炭酸カルシウム,ガラス繊維,ポリエステル繊維,木粉,竹粉,草粉,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウム等)を添加することができる。
尚、上述した光安定剤を含めて上記の顔料や各種充填材は、上層が透明層に形成されているか否かに応じて、上層だけでなく意匠層および/または下層にも添加される。すなわち、上層が透明層の場合は、上層に顔料を少量入れることもあるが、通常は顔料や充填材を添加しないし、上層が透明層ではない場合には、通常上層に顔料を添加し、更に、耐摩耗性を害さない範囲で少量の充填材を添加することもある。いずれの場合にも、意匠層および下層には添加することが可能である。
【0030】
更に、本発明の非ハロゲン系床材には、意匠性を向上させるためにエンボス加工を施したり、性能を害さない範囲で衝撃吸収性を付与するために一般の非ハロゲン系樹脂発泡体を積層することができる。発泡体に用いる非ハロゲン系樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,EVA等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0031】
また、上記樹脂発泡体の種類としては架橋タイプと非架橋タイプがあり、どちらも使用することができる。発泡体のセルの大きさとしては、衝撃吸収性の面から10〜1000μmがよい。発泡体の気泡構造は独立気泡、連続気泡のどちらでもよい。発泡体の厚さは0.5〜5mm程度のものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る非ハロゲン系床材は、従来のこの種の床材と同様に、カレンダー成形法や押出成形法等により成形することができ、その厚さも全体としてこの種の床材として通常に適用される厚さ、すなわち1.0〜3.0mm程度の厚さに形成される。この際、薄いと耐久性に問題が生じ、厚いと施工性に問題が生じるので、耐久性および施工性を考慮すると、1.5〜2.5mmが好ましい。また、幅については、特に限定されるものではなく、通常通り500〜2500mmの範囲で使用される。長さについても、特に限定されるものではなく、定尺に形成されたカットものでもよいし巻物でもよい。
【0033】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
表1から表3は、それぞれ本発明に係る下層と上層と意匠層(着色層)を形成する各成分の配合割合を示し、表4と表5は比較例として各成分の配合割合を示す。配合成分の配合割合を示す数字の単位は、重量部である。
【0034】
【表1】
下層の配合例
(重量部)
【0035】
【表2】
上層の配合例
(重量部)
【0036】
【表3】
意匠層(着色層)の配合例(No14、15)
意匠層(印刷層=転写紙:木目調転写紙)(No16)
(重量部)
【0037】
【表4】
比較例:下層の配合例
(重量部)
【0038】
【表5】
比較例:上層の配合例
(重量部)
【0039】
<実施例1〜9>
上記表1に示した配合No1〜4のものを、それぞれ180〜200℃でカレンダーにて幅1000mm、厚み1.7mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして下層となし、その上に表2に示した配合No5〜13のものをそれぞれ180〜200℃でカレンダーにて幅1000mm、厚み0.3mmに形成してなる上層をラミネートして床材を成形した。これら下層と上層とを組合せた実施例(実施例1〜9)を、表6に示す。
【0040】
<実施例10>
表1に示した配合No1のものを180〜200℃でカレンダーにて幅1900mm、厚み1.0mmに形成し、それをポリエステル繊維からなる基布にラミネートして下層となし、その上に、表3に示した配合No14のものをカレンダーにて幅1900mm、厚み0.8mmに形成してなる意匠層をラミネートし、更にその上に、表2に示した配合No7のものをカレンダーにて幅1900mm、厚み0.4mmに形成してなる上層をラミネートして床材を成形した。これら下層と意匠層および上層とを組合せた実施例(実施例10)を表7に示す。
【0041】
<実施例11>
実施例10と同様にして、表1に示した配合No2のものを幅1900mm、厚み1.5mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして下層となし、その上に、表3に示した配合No14のものを幅1900mm、厚み0.6mmに形成してなる意匠層をラミネートし、更にその上に表2に示した配合No8のものを幅1900mm、厚み0.4mmに形成してなる上層をラミネートして床材を成形した。これら下層と意匠層および上層とを組合せた実施例11を表7に示す。
【0042】
<実施例12>
実施例10と同様にして、表1に示した配合No3のものを幅1900mm、厚み1.3mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして下層となし、その上に、表3に示した配合No15のものを幅1900mm、厚み0.4mmに形成してなる意匠層をラミネートし、更にその上に表2に示した配合No8のものを幅1900mm、厚み0.3mmに形成してなる上層をラミネートして床材を成形した。これら下層と意匠層および上層とを組合せた実施例12を表7に示す。
【0043】
<実施例13>
実施例10と同様にして、表1に示した配合No3のものを幅1900mm、厚み1.3mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして下層となし、その上に表3に示した配合No16の幅1900mmに形成された印刷層としての転写紙をカレンダーでラミネートし、更にその上に、表2に示した配合No13のものを幅1900mm、厚み0.3mmに形成してなる上層をラミネートして床材を成形した。これら下層と意匠層および上層とを組合せた実施例12を表7に示す。
【0044】
<比較例1〜7>
実施例10と同様にして、表4に示した配合No17〜19のものを幅1900mm、厚み1.7mmに形成し、ポリエステル繊維からなる基布にラミネートして下層となし、その上に表5に示した配合No22〜28のものを幅1900mm、厚み0.3mmに形成してなる上層をラミネートして床材を成形した。これら下層と上層とを組合せた比較例1〜7を表8に示す。
【0045】
尚、表1〜8中における各配合成分の先頭に括弧書きの数字で記された配合物として、下記に示すものを使用した。
(1) EVA:三井・デュポン株式会社製
曲げこわさ:70.0(MPa)
MFR :9.0(g/10min)
(2) SIS:KRATON株式会社製
曲げこわさ:36.3(MPa)
MFR :4.0(g/10min)
(3) TPO:株式会社トクヤマ製
MFR :20.0(g/10min)
(4) HSIS:クラレ株式会社製
MFR :0.7(g/10min)
(5) HSBR:JSR株式会社製
MFR :10.0(g/10min)
(6) LDPE:日本ポリオレフィン株式会社製
曲げこわさ:166.0MPa
MFR :4.0(g/10min)
LDPE:日本ポリオレフィン株式会社製
曲げこわさ:490.0MPa
MFR :9.5(g/10min)
(8) LLDPE:ダウ・ケミカル株式会社製
密度 :0.902(g/cm3)
MFR :3.0(g/10min)
(9) LLDPE:日本ポリオレフィン株式会社製
密度 :0.922(g/cm3)
曲げこわさ:220.0MPa
MFR :0.5(g/10min)
(10) LLDPE:ダウ・ケミカル株式会社製
密度 :0.857(g/cm3)
MFR :1.0(g/10min)
(11) LLDPE:日本ポリオレフィン株式会社製
密度 :0.943(g/cm3)
MFR :0.25(g/10min)
(12) HDPE:東ソー株式会社製
曲げこわさ :850.0MPa
MFR :0.15(g/10min)
(13) ブロックPP:日本ポリオレフィン株式会社製
MFR :30.0(g/10min)
(14) ランダムPP:日本ポリオレフィン株式会社製
MFR :7.0(g/10min)
(15) 樹脂改質剤:石油樹脂:日本石油化学株式会社製
重量平均分子量:800
(16) 樹脂改質剤:石油樹脂:日本石油化学株式会社製
重量平均分子量:3000
(17) 添加剤:酸化防止剤
チバ・スペシャリティーケミカルズ株式会社製
分子量 :531
(18) 光安定剤1(UVA):
チバ・スペシャリティーケミカルズ株式会社製
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)
分子量 :351.5
(19) 光安定剤2(HALS1):
チバ・スペシャリティーケミカルズ株式会社製
N−水素置換ヒンダードアミン化合物(N−H型)
分子量 :2000〜3100
(20) 光安定剤3(HALS2):
チバ・スペシャリティーケミカルズ株式会社製
N−メチル置換ヒンダードアミン化合物(N−Me型)
分子量 :2286
(21) 炭カル:炭酸カルシウム:白石カルシウム株式会社製
表面処理:脂肪酸処理
粒径 :10.5μm
(22) 水酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製
表面処理:脂肪酸処理
粒径 :0.6μm
(23) 木粉
(24) ポリエステル繊維
(25) 顔料:ブルー顔料:大日精化工業株式会社製
【0046】
実施例及び比較例における各床材の評価は、柔軟性、耐摩耗性、意匠性、耐光性、および低揮発性について行なった。その結果を、表9〜11に示す。
【0047】
各評価項目は、以下の試験方法で行なった。
[柔軟性]
成形した床材を施工しての納まり具合で評価した。
○:納まりが良い
×:納まりが悪い
[耐摩耗性]
成形した床材をテーバー摩耗試験機を用いて、1000回転後の摩耗した厚みで評価した。
○:0.15mm未満
×:0.15mmを超える
[意匠性]
成形した床材の意匠性を目視で上層の透明さで評価した。
○:透明である
△:不透明
[耐光性]
成形した床材をフェードメーター(ブラックパネル温度:63℃)による促進試験を1000時間実施後、表面をマイクロスコープ(200倍)で観察し評価した。
◎:クラックなし
○:クラック僅かにあり
△:クラックあり
[低揮発性]
23℃の環境下で、成形した床材の表面をチャンバーで覆い、窒素で48時間換気後に吸着剤(Tenax−TA)でVOCを1時間捕集し、捕集したガスを加熱濃縮導入装置(ATD400:パ−キンエルマ−株式会社製)を用いてGC−MS分析装置で分析をした。総揮発性有機化合物量(TVOC)はトルエン換算法により求めた。
○:200μg/m2・hr未満
(居住者の健康に悪影響を及ぼす心配が極めて少ないレベル)
×:200μg/m2・hrを超える
(居住者の健康に悪影響を及ぼす心配があるレベル)
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
【表11】
【0054】
表9、表10および表11から、実施例1〜13の方が比較例1〜2よりも柔軟性が良いことが理解される。これは、下層の曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とした効果である。
【0055】
表9、表10および表11から、実施例1〜13の方が比較例3、5、7よりも柔軟性が良いことが理解される。これは、曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層に、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマーまたはゴムを50〜20重量部の合計100重量部に対して、密度が0.890〜0.935(g/cm3)である直鎖状低密度ポリエチレン3〜100重量部を添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層を積層した効果である。
【0056】
表9、表10および表11から、実施例1〜13の方が比較例2、4、6よりも耐摩耗性が良いことが理解される。これは、曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層に、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマー(またはゴム)を50〜20重量部の合計100重量部に対して、密度が0.890〜0.935(g/cm3)である直鎖状低密度ポリエチレン3〜100重量部を添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層を積層した効果である。
【0057】
表9および表10から、実施例3〜4、10〜13の方が実施例2よりも意匠性が良いことが理解される。これは、上層に使用するポリプロピレンがランダムポリプロピレン共重合体であり、熱可塑性エラストマーまたはゴムを水素添加スチレン系共重合体とした効果である。
【0058】
表9および表10から、実施例5〜6の方が実施例1〜4、10〜11よりも耐光性が良いことが理解される。これは、ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーの合計100重量部に対して光安定剤を0.01〜5重量部添加した効果である。
【0059】
表9および表10から、実施例7〜9、12〜13の方が実施例5〜6よりも耐光性が良いことが理解される。このことから、光安定剤がN−水素型置換ヒンダードアミン化合物またはN−メチル置換ヒンダードアミン化合物の少なくとも1種以上を含むことにより耐光性がさらに良くなることがわかった。
【0060】
表9、表10および表11から、実施例1〜13の方が比較例7よりも低揮発性が良いことが理解される。これは、曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層とポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマーまたはゴムを50〜20重量部の合計100重量部に対して、密度が0.890〜0.935(g/cm3)である直鎖状低密度ポリエチレン3〜100重量部を添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層、下層および意匠層に使用する非ハロゲン系樹脂は含まれる添加剤の分子量が300を超えるもの、樹脂改質剤の重量平均分子量は1000を超えるもの、添加剤の分子量を300以上のものを使用した効果である。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る非ハロゲン系床材は、曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層と、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマーまたはゴムを50〜20重量部の合計100重量部に対して、密度が0.902〜0.922(g/cm3)である直鎖状低密度ポリエチレン3〜90重量部を添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層とからなるので、柔軟性および耐摩耗性に優れたものとなる。
【0062】
また、本発明の請求項2および3に係る非ハロゲン系床材によれば、上層を透明な層となし、その上層をポリプロピレンとしてランダムポリプロピレン共重合体を用い、熱可塑性エラストマーとして水素添加スチレン系共重合体を用いてなるので、表面の透明性に優れた非ハロゲン系床材が得られる。
【0063】
更に、本発明の請求項4に係る非ハロゲン系床材によれば、下層と透明な上層の間に意匠層を積層してなるので、意匠性に優れた非ハロゲン系床材が得られる。
【0064】
更に、本発明の請求項5に係る非ハロゲン系床材によれば、前記上層を形成するポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーの合計100重量部に対して光安定剤を0.01〜5重量部添加してなるので、耐光性に優れた非ハロゲン系床材が得られる。
Claims (6)
- 曲げこわさが1〜300MPaである非ハロゲン系樹脂を主成分とする下層と、ポリプロピレン50〜80重量部と熱可塑性エラストマーまたはゴムを50〜20重量部の合計100重量部に対して、密度が0.902〜0.922(g/cm3)である直鎖状低密度ポリエチレン3〜90重量部を添加してなる樹脂組成物を主成分とする上層とからなることを特徴とする非ハロゲン系床材。
- 前記上層が透明な層であることを特徴とする請求項1に記載の非ハロゲン系床材。
- 前記ポリプロピレンがランダムポリプロピレン共重合体であり、前記熱可塑性エラストマーが水素添加スチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の非ハロゲン系床材。
- 前記下層と透明な前記上層の間に意匠層を積層してなることを特徴とする請求項2または3に記載の非ハロゲン系床材。
- 前記ポリプロピレンおよび熱可塑性エラストマーの合計100重量部に対して光安定剤を0.01〜5重量部添加してなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非ハロゲン系床材。
- 前記光安定剤が、N−水素型置換ヒンダードアミン化合物またはN−メチル置換ヒンダードアミン化合物の少なくとも1種以上を含む請求項5に記載の非ハロゲン系床材。
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