JP4080553B2 - ブチルアルデヒドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブチルアルデヒドの製造方法に関し、詳しくは、プロピレンのヒドロホルミル化反応により生成した混合アルデヒド生成物を、蒸留によりn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとに分離精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレンのヒドロホルミル化反応によって混合ブチルアルデヒド生成物を得、これを蒸留によりn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとに分離し、得られたn−ブチルアルデヒドのアルドール縮合により2−エチルヘキセナールを得、更に水添反応を行って2−エチルヘキサノールを製造するプロセス、又はn−ブチルアルデヒドをそのまま水添反応させてn−ブタノールを製造するプロセスは世界的に工業化されている。
【0003】
従来のブチルアルデヒド異性体の分離技術としては、例えば、特開平4−273841号には、分岐鎖及び直鎖アルデヒドを含む粗アルデヒド生成物を、単一蒸留カラム内で蒸留して3種の別々の生成物流を同時に得るための方法が開示されている。この方法での蒸留条件としては、約115〜140℃の温度で、塔頂圧力0.07〜2.1kg/cm2Gの加圧状態で操作されることが記載されており、また、実施例は、塔頂圧力0.6〜0.7kg/cm2G、塔底温度99〜129℃で実施され、このときの塔底圧力をn−ブチルアルデヒドの蒸気圧から算出すると約1.08〜3.4kg/cm2Gとなる。
【0004】
また、米国特許第5227544号では、アルデヒドの蒸留塔に少量の水分を添加することにより、粗ブチルアルデヒド中に含まれるイソブチルアルデヒドのオリゴマーを、加水分解してモノマーとして全量流出させて、純度の高い2−エチルヘキサノールを製造する方法が開示されている。この場合のアルデヒド蒸留塔の塔頂温度は70〜90℃が好適であると記載されており、イソブチルアルデヒドの蒸気圧から算出すると、塔頂圧力は約0.2〜約1.3kg/cm2Gとなる。
【0005】
このn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドの分離を行うアルデヒド蒸留塔は、分離対象であるアルデヒド異性体の沸点が非常に近接しているため、高段数と大還流量を必要とし、その炊き上げ(リボイリング)はプロセス中で最も大きなエネルギーを必要とする部分の一つである。
ここで、廃熱利用に関するプロセス熱収支について論ずるために、プロセスを熱の発生側と消費側に分けて以下に整理して説明する。
【0006】
まず、熱の発生側について文献を参照して説明すると、INDICATIONS Winter 1982/83(The international Journal of Davy Mackee)には、ロジウム触媒とトリフェニルホスフィン配位子の存在下、アルデヒド重縮合物を溶媒として反応器内に均一触媒液をため込み、約20atm、約100℃にてヒドロホルミル化反応を行うことが記載されている。
【0007】
また、特開平2−242038号の実施例には、INDICATIONSと同様の触媒を用い、1段目の完全混合型反応器で100℃にて反応を行い、未反応ガスを2段目の気泡塔型反応器に導いて、90℃でさらに反応を行う方法が記載され、特開昭60−112733号の実施例には、水溶性ロジウム−ホスフィン錯体を触媒とし、120℃にてヒドロホルミル化反応を行う方法が記載されている。
【0008】
また、WO93/20034には、NaOH水溶液を触媒とするn−ブチルアルデヒドの縮合反応を63〜120℃にて行う実施例が開示されており、特表平3−501483号には、アルデヒドの接触水素添加反応を120〜125℃にて行う実施例が開示されている。特開昭58−39632号には、反応器の出口温度が195℃で実施される気相水添プロセスがに開示されているが、このような高温反応では反応熱の再利用は容易であり、ボイラー水や水添工程内の予熱等に有効に使用される。
【0009】
次に、熱の消費側について説明する。プロセス中の主な回収熱の使用先としては、アルコールの精製蒸留塔やn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドの分離を行うアルデヒド蒸留塔等がある。蒸留塔では、釜の炊き上げが熱の消費側であると同時に塔頂の凝縮器が熱の放散を行う、つまり熱の発生側と見なすことができる。
【0010】
2−エチルヘキサノールの精製蒸留においては、通常塔頂圧力として数10mmHgA〜約100mmHgAの範囲が使用され、その蒸気圧より算出すると、塔頂温度は約100〜122℃であり、塔底温度は更に約10〜30℃高温で操作される。n−ブチルアルコールの精製蒸留は、通常塔頂圧力が常圧で実施され、その塔頂温度は約118℃であり、塔底温度は更に約10〜30℃高温である。
このように、熱の発生側と消費側の温度レベルは非常に近接しており、直接の熱交換による安価な熱回収は従来では困難であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアルデヒド蒸留塔においては、混合アルデヒド生成物中の高沸点物を分解させて有価物として回収し、また、加圧することで塔頂温度を上げ、冷却水との温度差を大きくして塔頂コンデンサの伝熱面積を削減するために、前述したように比較的高圧条件下で操作されていた。また、その結果必然的に塔底温度も高くなるため、リボイリングの際のエネルギー消費量が大きくなり、プロセス内の他の発熱工程からの廃熱を効率よく回収することも困難であった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、アルデヒド蒸留塔を最も効率的に操作する条件を与え、更には、プロセスの廃熱を有効に利用してエネルギーコストの削減を図る方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討を重ねた結果、アルデヒド蒸留塔を特定範囲の低圧条件下で操作することにより、比較的高圧条件下で実施していた従来法とほぼ同様の純度を有するアルデヒドを、熱負荷を低く抑えた状態で得ることができ、また、塔底温度を低く維持することができるため、他工程からの廃熱を効果的に回収することができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、プロピレンのヒドロホルミル化反応により生成した混合ブチルアルデヒド生成物を、蒸留塔を用いてn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとに分離精製するブチルアルデヒドの製造方法において、塔頂圧力が0.001〜0.5kg/cm2G、塔底圧力が0.05〜1.0kg/cm2Gの範囲内で蒸留塔を操作することを特徴とするブチルアルデヒドの製造方法、に存する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる原料のプロピレンは、通常特別な前処理などすることなく用いられるが、触媒毒として知られるイオウ分やハロゲン分、ジエン、アセチレン類、更には過酸化物類などを公知の吸着、抽出、蒸留、熱処理、膜分離などの方法により除去したものを用いることもできる。
【0016】
また、ヒドロホルミル化反応で使用する触媒としては、通常、3価の有機燐化合物を配位子とするロジウム触媒が用いられるが、3価の有機燐化合物としては、単座配位子又は多座配位子としての能力をもつ3価の有機燐化合物等が挙げられる。単座配位子となる有機燐化合物としては、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、スルホン基やハロゲン原子などで置換されたトリフェニルホスフィン又はトリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン、モノブチルジフェニルホスフィン、ジプロピルフェニルホスフィンなどのアルキルアリールホスフィン、さらには、シクロヘキシルジフェニルホスフィン等のシクロアルキルアリールホスフィン、シクロヘキシルジメチルホスフィン等のアルキルシクロアルキルホスフィン等の3置換ホスフィン類が挙げられる。
【0017】
また、トリアルキルホスファイト、置換基を有していてもよいトリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト等のトリアリールホスファイト及びアルキルアリールホスファイト等が挙げられる。
また、多座配位子となる有機燐化合物としては、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等のビスホスフィン化合物、一般式(1):
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、R1 〜R4 はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基又はアリールオキシ基であり、Yは2価の架橋基であり、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含有していてもよい2価の炭化水素基等である)等で示されるビスホスフィンモノオキシド化合物及びビスホスファイト化合物等が挙げられる。
【0020】
これらの3価の有機燐化合物は、その2種以上を混合配位子として用いることも可能であり、また3価の有機燐化合物とトリフェニルホスフィンオキシド等の5価の有機燐化合物とを混合して用いることもできる。
ロジウム錯体触媒のロジウム源としては、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、アセトキシビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム錯体の他に、ロジウムアセチルアセトナート、酢酸ロジウム等の有機塩、硝酸ロジウム等の無機塩、酸化ロジウム等の酸化物等も用いられる。
【0021】
上記ロジウム源は直接ヒドロホルミル化反応器に供給してもよいが、反応器外で一酸化炭素、水素及び3価の有機燐化合物と共に、溶媒中で高い温度・圧力の条件下で反応させて、あらかじめロジウム錯体触媒を調製しておくこともできる。この触媒調製の際に使用する溶媒は、通常後述する反応溶媒の中から選ばれるが、必ずしも反応溶媒と同一の溶媒でなくてもよい。調製条件は、通常、ロジウム濃度が1重量ppm〜2重量%、3価の有機燐化合物とロジウムとの比率がP/Rh=10〜10000(モル比)、温度が60〜200℃、圧力が常圧〜200kg/cm2 G、処理時間が5分〜12時間の範囲内で選択される。触媒調製の際の反応形式は回分式でも連続式でもよい。
【0022】
ヒドロホルミル化の反応溶媒としては、オレフィン自身を溶媒にしても良いし、生成アルデヒドや副生する高沸点生成物を使用することもできる。その他ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、トリグライム等のエーテル類、ジオクチルフタレート等のエステル類、または水等の、触媒を溶解し反応に悪影響を与えない各種の溶媒が使用できる。
【0023】
ヒドロホルミル化反応条件は、通常、水素分圧0.1〜200kg/cm2 、一酸化炭素分圧0.1〜200kg/cm2 、全圧1〜300kg/cm2 G、水素分圧/一酸化炭素分圧=0.1〜10、反応温度60〜200℃、ロジウム濃度(金属Rh換算)は1重量ppm〜2重量%、P(遊離有機燐配位子中のP原子)/Rh=10〜10000(モル比)、反応時間5分〜12時間の範囲内で適宜選択される。
【0024】
プロピレンのヒドロホルミル化反応は、通常連続式の反応器に原料であるオレフィン、オキソガス(一酸化炭素及び水素)及び触媒液を連続的に供給し、上記ヒドロホルミル化反応条件下にて実施されるが、回分式の反応器を使用することもできる。また、反応器の種類としては、撹拌槽型、気泡塔型又はガスストリッピング型等を用いることができる。
【0025】
本発明は、以上のようにして得られた混合ブチルアルデヒド生成物から、n−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドを蒸留分離する際の蒸留条件を規定するものである。
該蒸留塔としては、約40段から約200段の理論段数を有するものを使用するのが好ましい。蒸留塔がトレイ塔の場合には、実段数で50段から200段のトレイを有するものが好ましく、充填塔の場合には、充填物の全高さで15mから100mの充填物を有するものが好ましい。
【0026】
トレイ段数でも充填物高さでもこの範囲を越えると多大な加熱用水蒸気コストや、不必要な設備コストを生じるので実用には不利である。また、塔の一部にトレイ、一部に充填物を用いる場合もその組み合わせ方法については、合計高さが前述のような理論段数を満足しているならば十分同様な分離精製能力を有する。
本発明は、該アルデヒド蒸留塔の蒸留条件として、従来法に比べて比較的低圧の条件、即ち塔頂圧力が0.001〜0.5kg/cm2G、好ましくは0.001〜0.3kg/cm2G、更に好ましくは、0.001〜0.2kg/cm2Gを用い、また塔底圧力が0.05〜1.0kg/cm2G、好ましくは0.05〜0.8kg/cm2G、更に好ましくは、0.05〜0.4kg/cm2Gを用いることを特徴とするものである。本発明は、熱負荷を低く抑えた状態で高純度のアルデヒド異性体を得ることができ、他工程からの廃熱を効果的に回収することができる。上記蒸留塔の塔頂又は塔底圧力が低すぎると、留出液を凝縮液化させるのに用いる凝縮器の伝熱面積を大きくすることにつながり好ましくない。一方、蒸留塔の塔頂又は塔底圧力が高すぎると分離性能が低下し、且つ、蒸留熱源が増加するので好ましくない。
【0027】
また、蒸留塔の塔頂圧力と塔底圧力の差(塔差圧)は、0.05〜0.4kg/cm2、好ましくは0.05〜0.2kg/cm2、更に好ましくは0.05〜0.15kg/cm2とするのがよく、塔差圧をこの範囲とするためには、蒸留塔の内容物(インターナル)として充填物を用いるのが好ましい。塔頂温度は60〜74℃、好ましくは60〜72℃、更に好ましくは60〜69℃を用いるのがよく、塔底温度は、76〜98℃、好ましくは76〜93℃が好ましい。本発明においては、蒸留塔の圧力条件として上記特定範囲内を使用することにより、蒸留塔の塔底温度を従来法に比べて低く維持することが可能となり、その結果、プロセス内の他の発熱工程からの廃熱を有効に回収することが可能となる。還流比は20〜50、好ましくは25〜40を用いるのがよい。
【0028】
本発明で蒸留条件を規定する蒸留塔としては、n−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとを直接分離するものであれば、蒸留方式は限定されない。 本発明の方法により分離されたn−ブチルアルデヒドは、そのまま水添されてn−ブタノールとする場合と、アルカリ触媒を用いてアルドール縮合反応させ、更に水添反応を経て2−エチルヘキサノールとする場合とがある。
【0029】
本発明の方法により分離されたn−ブチルアルデヒドの縮合反応は、液相でも気相でも実施できるが、液相で実施する場合には、苛性ソーダ水溶液等のアルカリ触媒水溶液が用いられ、通常、温度が80〜120℃、圧力は常圧〜6kg/cm2 Gの範囲内であり、設定された温度での液の飽和圧力以上であればよい。更に、縮合反応器は、プラグ型、混合槽型等のアルデヒドと水相に含まれる触媒との混合が均一に保たれる反応器であればよい。
【0030】
また、水添反応には、Ni,Cr,Cu等の金属を担持させた固体触媒が使用でき、気相でも液相でも実施できる。水添条件は、通常、温度が60〜200℃、水素圧力が1〜200kg/cm2 Gの範囲内が用いられる。
本発明においては、前述したように、アルデヒド蒸留塔の塔底温度を従来法よりも比較的低く維持することができるため、プロセス内の他の発熱工程からの廃熱を有効に回収することが可能であるが、この廃熱回収の具体的な実施態様は非常に多岐にわたる。以下にその代表的な態様を図面を用いて説明する。
【0031】
図1aはヒドロホルミル化反応器(108)の反応熱の一部をアルデヒド蒸留塔(101)の炊き上げ熱量の一部として回収するフローの例である。ヒドロホルミル化反応液はポンプ(109)にて導管(120)を経由して熱回収用リボイラー(107)に供給され、アルデヒド蒸留塔塔底液流(119)と熱交換される。冷却されたヒドロホルミル化反応液は導管(121)を経由し、ヒドロホルミル化反応器(108)へ再循環される。
【0032】
同様の熱回収は図1bによっても達成される。即ち、アルデヒド蒸留塔(101)の塔底液をポンプ(106)にて導管(122)を通じ、ヒドロホルミル化反応器(108)の内部に設けられたコイル状のパイプ群から構成される伝熱帯(110)に通じて熱交換を行わせ、ヒドロホルミル化反応器(108)の除熱を行うと同時に、加熱された塔底液流を導管(123)によりアルデヒド蒸留塔(101)へ再循環させることによりアルデヒド蒸留塔(101)の炊き上げエネルギーとして使用する。
【0033】
また図1a,bは、縮合反応器からの熱回収にも適用される。即ち、反応器(108)を縮合反応器とすることで、縮合反応器からアルデヒド蒸留塔への熱回収を行うことができる。
図2aは、液相水添プロセスからの熱回収の例である。原料アルデヒド流(241)は受入れ槽(208)に循環アルコール溶剤流(240)と共に仕込まれ、ポンプ(209)にて水添反応器(211)に仕込まれる。水添反応器(211)は、固定床多段反応器であり、原料水素ガス流(244)と循環水素ガス流(245)とともに並流接触により反応を行う。反応生成液の一部は循環アルコール溶剤流(240)として使用され、残りは脱ガス槽(217)経由で導管(248)を通じ精製系へ送られる。反応後の水素ガスは循環圧縮機(216)にて再循環される。反応熱の除去は、循環アルコール溶剤ライン(240)に設けられた熱交換器(207)、循環水素ガスライン(245)に設けられた熱交換器(214、215)、反応器中間熱交換器(212、213)等の何れか、又は複数の組み合わせにより行われる。アルデヒド蒸留塔(201)の塔底液はポンプ(206)により管路(238)を経由し、熱交換器(207,212,213,214の何れか)へ供給され、加熱されたアルデヒド塔底流(239)はアルデヒド蒸留塔(201)へ再循環され、炊き上げエネルギーの一部として使用される。
【0034】
図2bは、気相水添プロセスからの熱回収の例である。原料アルデヒド(254)、原料水素(256)、循環水素流(262)は熱交換器(218,220,222)により加熱され、気化器(219)へ供給される。原料アルデヒドは気化器(219)にて気化され、水素ガスと共に管路(258)を経由し、水添反応器(221)へ供給される。水添反応器(221)は多管式の固定床型であり、反応熱の大部分はシェル側に供給されるボイラー水(259)の蒸発等により除去される。高温の反応生成ガス流は熱交換器群(222,223,224)により冷却され、生成アルコールを液化する。分離器(225)により気液分離し、得られた粗アルコールは管路(264)を経由して、蒸留系へ送られる。分離されたガスは循環圧縮機(226)により昇圧され、循環水素流として反応器へ再循環される。アルデヒド蒸留塔(201)の塔底液はポンプ(206)により管路(252)を経由し、熱交換器(223)へ供給され、加熱されたアルデヒド塔底流(253)はアルデビド蒸留塔(201)へ再循環され、炊き上げエネルギーの一部として使用される。
【0035】
図3aは、アルコール蒸留塔からの熱回収の例である。アルコール蒸留塔(308)の塔頂蒸気流(329)は、アルデヒド蒸留塔の熱回収用リボイラー(307)へ導かれる。熱回収用リボイラー(307)では、シェル側でアルコールの凝縮が起こり、チューブ側でアルデヒドの沸騰が起こり、アルコールの凝縮潜熱がアルデヒド蒸留塔(301)の炊き上げエネルギーの一部として回収される。熱回収用リボイラー(307)を出たアルコール流(330)は、さらにコンデンサー(309)にて冷却、凝縮を行い、還流槽(310)へ導かれる。凝縮液はポンプ(311)により還流(331)としてアルコール蒸留塔(308)へ戻されると同時に、留出物流(332)として取り出される。
【0036】
同様の熱回収は、図3bによっても達成される。アルデヒド蒸留塔(301)の塔底液はポンプ(306)により管路(337)を経由し、アルコール蒸留塔(308)の第一凝縮器(314)へ供給される。アルコール蒸留塔(308)の塔頂ガス流(329)が第一凝縮器(314)にて凝縮する際の凝縮熱により加熱されたアルデヒド流(338)は、アルデヒド蒸留塔(301)へ再循環され、炊き上げエネルギーの一部として使用される。
【0037】
縮合プロセスが、縮合生成物の蒸留塔を伴ったプロセスである場合、その蒸留塔の温度条件はアルコール蒸留等と同等であるので、図3a,bがそのまま適用できる。
以下同様にして、プロセス内の好ましくは100℃以上の流体から、その熱量をよく吟味すれば、種々の組み合わせが採用しうる。また、上述したような温度レベルの廃熱は、化学プラントのいたる所に存在するので、隣接プラントの廃熱をも広く対象に考えることができる。
廃熱によるリボイリングを設置する位置としては、フィード段より下で、できるだけ塔底に近い位置にするのがよい。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例は、塔頂からイソブチルアルデヒドを留出させ、塔底からn−ブチルアルデヒドを得る通常の1塔方式を採用し、理論段数で70段相当の蒸留塔を用いた。フィードする位置は、フィード組成により別途化学工学的手段で検討できるものであるため特定のものではないが、今回はその他の条件の差異を明確にするために、塔頂から理論段数で33段目相当位置に供給した。仕込み液は21.3kg/hで供給し、組成はイソブチルアルデヒド11.02重量%、n−ブチルアルデヒド88.07重量%、水分0.89重量%、ブタノール40重量ppm、トルエン0.02重量ppmとした。
【0039】
比較例1
従来の方法である、塔頂圧力4kg/cm2G、塔頂温度115.8℃の加圧条件下で(その他の条件は表−1に記載)蒸留を行ったところ、炊き上げの熱負荷は18.8Mcal/hであり、塔頂組成がイソブチルアルデヒド96.90重量%、塔底組成がn−ブチルアルデヒド99.93重量%であった。
【0040】
実施例1〜3及び比較例2〜5
塔頂及び塔底の組成を比較例1と等しくなるように蒸留条件を調節した結果を表−1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
まず、熱回収に望ましいように、低温低圧方向に操作条件を下げていくときの状況を比較例2及び3に示すが、この時驚くことに分離性能が向上していくという現象がみられ、これは従来法からは予想し得なかったことである。しかし、塔頂圧力が0.6kg/cm2Gである比較例3においても塔底温度は約99℃であり、100℃レベルの他工程の廃熱回収に十分な低温ではない。
【0043】
更に、圧力を下げて常圧付近とすると、比較例4では炊き上げ熱負荷が比較例1の半分以下となった。また、塔底温度は約93℃であり、プロセス廃熱の温度レベルを下回り、廃熱の回収が可能な領域となっている。
そこで、フィード段より下で、塔頂から理論段で40段相当の位置に、ヒドロホルミル化反応工程の廃熱によるリボイリングを行ったところ、実施例1に示すように回収熱量の40%に相当する炊き上げエネルギーの節減効果が認められた。比較例4及び実施例1では塔頂温度は約63℃となっており、これ以上大幅に塔頂圧力を下げて減圧条件とすることは、凝縮器冷却水(通常30〜35)との温度差が小さくなり、凝縮器の伝熱面積をむやみに大きくしてしまうので好ましくない。
【0044】
そこで、蒸留塔の内容物をトレイに代えて、理論段数で70段相当の充填物とし、塔差圧を低下させることにより塔底温度を下げた結果を比較例5として示す。比較例4に比べて更に6%の炊き上げ熱量が減少し、塔底温度も約80℃と熱回収に好適な温度となった。
また、塔底で水添反応工程の廃熱によるリボイリングを行うと、実施例2に示すように回収熱量に等しい炊き上げ負荷の減少が見られた。実施例2では驚くべきことに、比較例1に対して60%以上のエネルギー削減が達成された。
塔頂圧力及び塔底圧力を更に低くし、2−エチルヘキサノール蒸留工程の廃熱によるリボイリングを行った実施例3では、比較例3に対して40%以上ものエネルギー削減が達成されたことになり、その経済効果は著しい。
【0045】
【発明の効果】
本発明に従って、アルデヒドの蒸留塔を特定範囲の低圧条件下で操作することにより、熱負荷を低く抑えた状態で高純度のアルデヒド異性体を得ることができ、結果として、塔底温度を従来法に比べて低く維持することができるため、従来は困難であった他工程からの廃熱を効果的に回収することが可能であり、エネルギーコストの削減となるため、工業的な利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒドロホルミル化反応器からの廃熱を回収するフローを示す図である。
【図2】 水添プロセスからの廃熱を回収するフローを示す図である。
【図3】 アルコール蒸留塔からの廃熱を回収するフローを示す図である。
【符号の説明】
101,201:アルデヒド蒸留塔
107,307:熱回収用リボイラー
108:ヒドロホルミル化反応器
211,221:水添反応器
308:アルコール蒸留塔
Claims (7)
- プロピレンのヒドロホルミル化反応により生成した混合ブチルアルデヒド生成物を、蒸留塔を用いてn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとに分離精製するブチルアルデヒドの製造方法において、蒸留塔を塔頂圧力が0.001〜0.5kg/cm2G、塔底圧力が0.05〜1.0kg/cm2G、塔頂圧力と塔底圧力の差が0.2kg/cm 2 未満の範囲内で操作し、かつ、蒸留塔の熱源の一部として、プロピレンのヒドロホルミル化反応で発生する廃熱、又は、ヒドロホルミル化反応から生成したn−ブチルアルデヒドをn−ブタノール若しくは2−エチルヘキサノールにする工程で発生する廃熱を、蒸留塔の塔内液との熱交換により直接回収して用いることを特徴とするブチルアルデヒドの製造方法。
- 塔頂圧力が0.001〜0.3kg/cm2G、塔底圧力が0.05〜0.8kg/cm2Gの範囲内である請求項1に記載のブチルアルデヒドの製造方法。
- 蒸留塔が充填塔である請求項1又は2に記載のブチルアルデヒドの製造方法。
- 蒸留塔の塔底温度が76〜98℃である請求項1〜3の何れかに記載のブチルアルデヒドの製造方法。
- 蒸留塔の熱源の少なくとも一部として、プロピレンのヒドロホルミル化反応の反応熱を回収して用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブチルアルデヒドの製造方法。
- 蒸留塔の熱源の少なくとも一部として、該n−ブチルアルデヒドを水添してn−ブタノールとする際に発生する反応熱又は生成したn−ブタノールを蒸留精製する蒸留塔の塔頂に設置された凝縮器で発生する凝縮熱を蒸留塔の塔内液との熱交換により直接回収して用いることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のブチルアルデヒドの製造方法。
- 蒸留塔の熱源の少なくとも一部として、該n−ブチルアルデヒドをアルドール縮合・水添して2−エチルヘキサノールとする際に発生する反応熱又は生成した2−エチルヘキサノールを蒸留精製する蒸留塔の塔頂に設置された凝縮器で発生する凝縮熱を蒸留塔の塔内液との熱交換により直接回収して用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のブチルアルデヒドの製造方法。
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