JP4080244B2 - 活性炭シート及びその製造方法、並びに分極性電極及び電気二重層キャパシタ - Google Patents
活性炭シート及びその製造方法、並びに分極性電極及び電気二重層キャパシタ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性炭シート及びその製造方法、並びに分極性電極及び電気二重層キャパシタに関する。さらに詳しくは、炭素質材料を炭化し、賦活して得た活性炭と、該活性炭100重量部に対して0.01〜50重量部のフッ素含有バインダーを用いて成型したフッ素含有活性炭からなるシートに低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理した活性炭シート及びその製造方法、並びに分極性電極及び電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、バックアップ電源、補助電源として電気二重層キャパシタが注目を集めており、活性炭の電気二重層キャパシタの電極としての性能に着目した開発が広くなされている。活性炭を分極性電極として使用した電気二重層キャパシタは静電容量に優れるため、エレクトロニクス分野の発展と共に、需要も急成長している。また、最近では、従来のメモリーバックアップ電源等の小型化に加え、モーター等の補助電源に使われるような大容量製品の開発も行われている。
【0003】
電気二重層キャパシタの原理は古くから知られていたが、実際にデバイスとして使用され始めたのは近年に至ってからである。電気二重層キャパシタの静電容量は、電気二重層の形成される分極性電極の表面積、単位面積当たりの電気二重層容量や電極の抵抗等によって主に支配されている。実用面では、単位体積当たりの静電容量を高くし、電気二重層キャパシタの体積を小さくするために、電極自体の密度を高めることも重要である。
【0004】
従来、電気二重層キャパシタ用電極向け活性炭としては、(1)樹脂材料、椰子殻、ピッチおよび石炭などを水蒸気、ガスなどの酸性条件下で賦活した活性炭(大容量キャパシタ技術と材料、シーエムシー社刊行(1998) 参照)、(2)上記(1)で適用された材料をKOHなど強酸化力を有する薬品によって賦活した活性炭(WO91/12203号公報、特開平10−199767号公報)などが使用されてきた。
【0005】
一方、活性炭をプラズマ処理して比表面積を大きくし、高い静電容量を示す電気二重層キャパシタ用の分極性電極とすることも知られており、例えば、特開平9−22834号公報に酸素存在下にプラズマ処理する方法が開示されており、特開平9−266143号公報にイオンプラズマ処理する方法が開示されている。そして、特開2000−223121号公報に熱プラズマ処理する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したプラズマ処理する方法では、いずれも漏れ電流は小さくなるものの静電容量の向上は見られないことから、本発明者らは、さらに活性炭のプラズマ処理について検討し、フッ素化合物を含むプラズマで処理した活性炭が有効であることを見出し、先に特願2002−26272として特許出願した。この活性炭は、テトラフルオロメタンなどのフッ素化合物を含有するアルゴンガスで処理されたもので高い静電容量を示し、ハイレート特性にも優れているが、含フッ素プラズマ処理は煩雑で、費用も高くなるので、さらに簡便な操作が望まれる。したがって、本発明の第1の目的は、静電容量が高い電気二重層キャパシタ用分極性電極を与えることのできる活性炭シート及び操作性に優れる製造方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、このような活性炭シートを用いた分極性電極であり、さらに本発明の第3の目的は、このような分極性電極を用いた電気二重層キャパシタを得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明の第1の発明は、炭素質材料を炭化し、賦活して得た活性炭と、該活性炭100重量部に対して0.01〜50重量部のフッ素含有バインダーを用いて成型したフッ素含有活性炭からなるシートに低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理した活性炭シートである。また、本発明の第2の発明は、炭素質材料を炭化し、賦活して得た活性炭と、該活性炭100重量部に対して0.01〜50重量部のフッ素含有バインダーを用いてシート化し、低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理する活性炭シートの製造方法である。そして、本発明の第3の発明は、このような活性炭シートを用いた分極性電極であり、本発明の第4の発明は、このような分極性電極を用いた電気二重層キャパシタである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる活性炭の原料である炭素質材料としては、炭化、賦活などにより活性炭を生成するものであればよく、木材、鋸屑、木炭、ヤシ殻、クルミ殻などの果実殻、果実種子などの植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などの石炭、石油ピッチ、石炭ピッチなどのピッチ、コークス、コールタール、石油タールなどのタール、石油蒸留残渣などの鉱物系、木綿、レーヨンなどのセルロース系繊維などの天然素材、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルなどの合成素材などを例示することができる。形状としては、粉末状、粒状、繊維状いずれでもよい。
【0009】
炭素質材料に、炭化、賦活などの処理を行うことにより活性炭が製造されるが、炭化は、炭素質材料を400℃〜600℃程度に加熱乾留することによって行われる。また、賦活法としては、塩化亜鉛、燐酸、硫酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどによる薬剤賦活、水蒸気、、炭酸ガス、酸素ガス、燃焼排ガス、これらの混合ガスなどによるガス賦活が採用される。
【0010】
次いで、活性炭はシート化される。シート化する方法は、特に制限されるものでなく一般的な方法を採用することができる。例えば、活性炭、導電材およびバインダーを混練し、ロールプレスなどのプレス機を使用して、延伸することによって作製することができる。シートの厚みも特に制限されるものではないが、電気二重層キャパシタに使用する際に、電解液の含浸性等を考慮して、通常10μm〜3μmの範囲である。
【0011】
本発明では、静電容量に影響を及ぼさない範囲で、導電性材料を活性炭に添加してシート化することも可能である。使用される導電材料としては、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性樹脂、フラファイト、カーボンブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができる。使用量としては、あまり多すぎると静電容量の低下をきたすことがあり、あまり少なすぎると導電性が機能しないことがあるので、通常、活性炭100重量部に対して0.01〜50重量部、経済性を考慮して、0.1重量部〜30重量部、より好ましくは、0.5重量部〜20重量部の範囲で使用される。
【0012】
本発明の特徴は、得られた活性炭シートをアルゴンプラズマ処理または窒素プラズマ処理することにある(以下、単にプラズマ処理という)。アルゴンプラズマ処理および窒素プラズマ処理を併用してもよい。活性炭シートにかかるプラズマ処理をすることにより、静電容量を大幅に向上させることができる。プラズマ処理することによって、炭素材料の燃焼及び大幅な酸化を防止することができる。プラズマ処理する温度は、50℃〜300℃の低温で実施するのが炭素材料の高温燃焼による重量減少の防止の点で好ましい。
【0013】
本発明において、活性炭は、フッ素含有バインダーを使用してシートに成型し、アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理されるが、かかる方法によれば、含フッ素化合物プラズマ処理する方法よりも操作が簡便である。フッ素含有バインダーとしては、フッ素を含有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどを例示することができる。シート化する場合の使用量としては、あまり多すぎると活性炭シートの抵抗が増大する傾向があり、あまり少なすぎると、プラズマ処理による効果が低下することがあるので、本発明では、活性炭100重量部に対して、0.01〜50重量部で実施される。バインダーとしての効果、経済性を考慮して、0.1〜30重量部とするのが好ましく、0.5〜20重量部とするのがより好ましい。
【0014】
プラズマ処理は、通常0.00001〜1Torrの範囲、プラズマの発生効率などを考慮して、0.00002〜1Torr、より好ましくは0.00005〜1Torrの範囲で実施される。低温アルゴンおよび/または窒素プラズマガスは、1〜1000ml/分で供給され、操作性の観点からは1〜100ml/分で実施するのが好ましい。プラズマ処理における使用電源は、パルス電源、連続電源の何れを使用してもよい。この場合、出力は、パルス電源の場合、一般に1〜50kW、好ましくは5〜15kW程度が好適である。また、連続電源の場合は、一般に10〜500W、好ましくは20〜200W程度が好適である。
【0015】
本発明において、プラズマ処理は、公知のプラズマ処理装置を使用して行うことができる。図1は、本発明において好適に使用することができるプラズマ処理装置(プラズマCVD装置)の代表的な態様を示す概略図である。1は高周波電源 、2はガス供給口である。図1に示すように、該プラズマ処理装置は、ガス供給口2とガス排出口7とを有する反応器内に高周波電源1に接続する電極4と該電極4に対向し、被処理物6であるカーボン成形体の支持台を兼ねた電極3とを備えており、電極3はアース8に接続され、排出口7は真空ポンプに接続されている。反応器内を0.2Torr以下程度の真空に保った後、不活性気体ガスを導入すると共に電源を入れるとアルゴンおよび/または窒素プラズマ5が発生し、被処理物表面をプラズマ処理することができる。
【0016】
本発明で得られたプラズマ処理活性炭は、室温下で取り出し、不活性ガス気体中で保存することが好ましい。プラズマ処理された活性炭シートは、好ましくは成形して電極化する。電極に成形する方法は、通常知られた方法を適用することが可能である。例えば、ポリ四フッ化エチレンなどバインダーとして知られた物質を必要に応じて、0〜数%加えてよく混合した後、金型に入れて加圧成形したり、圧延し、必要な形状に打ちぬくことで電極に成形することができる。分極性電極は、好ましくは電気二重層キャパシタに組み込まれ、キャパシタとして使用される。
【0017】
キャパシタの概略図を図2に示す。10及び11は集電部材、12及び13は本発明の活性炭からなる分極性電極、14はポリプロピレン不織布などから構成されるセパレーター、15はステンレスなどの素材で構成される蓋である。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
本発明において、静電容量は次の方法により測定した。到達電圧2.5Vまで電極表面積あたり、1mA/平方センチメートルで低電流充電し、2.5Vで30分低電圧下補充電する。補充電完了後、1mA/平方センチメートルで放電する。その時1.2V〜1.0Vまでの放電傾きから静電容量を求めた。以下、部は全て重量部を表す。
【0019】
実施例1
フェノール樹脂を炭化し、燃焼ガスで賦活し、10μm程度に粉砕した活性炭8.1部に、導電性フィラー(電気化学工業製電化ブラック)0.9部、フッ素含有バインダーとしてテトラフロロエチレン(三井・デュポンケミカル製テフロン6J)1部を混合し、混練した。次いで、厚さ200μmにシート化し、直径110mmの円形に打ち抜き、シートを作製した。
【0020】
作製した活性炭シートを図1のプラズマ処理装置の支持台となる電極上に置き、対向する電極との距離が12.5cmとなるように調節した。次いで、反応器内を0.1Torrに減圧した後、アルゴンガスをガス供給口より連続的に8ml/分で供給すると共に、下記に示す連続電源より、表1に示す気体流量・組成を選択し、温度200℃でそれぞれ連続電源を出力50Wとし、30分間プラズマ処理を行った。
【0021】
プラズマ処理して得られた活性炭シートを直径1cmの大きさに切断したものを分極性電極とし、これに同じ大きさの導電性樹脂シートを介して直径1.2cmのニッケルメッシュ(200メッシュ)を集電体として積層し、熱プレスにより一体化した。上記積層体を一対作製し、それぞれの集電体にニッケルワイヤーを溶接した。
【0022】
得られた積層体を、内径13mmで、底面にニッケルワイヤーの取り出し、孔を有するポリテトラフルオロエチレン製セル内に、分極性電極がポリプロピレン不織布を介して対向するように組み込んだ。この場合、セル底面に設けたニッケルワイヤーの取り出し孔は、これよりニッケルワイヤーを露出させた後に封止した。
【0023】
次いで、電解質溶液として、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム(TEABF4)をプロピレンカーボネートに0.8mol/lの濃度となるように溶解させた溶液をセル内に供給して分極性電極間を電解質溶液で満たすことにより、電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタについて、放電容量を1.0〜2.0Vの駆動電圧域で測定した。繰り返し測定の回数で、取り出し電流値を変えて測定した結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
実施例1において、プラズマ処理を施していない活性炭シートを使用した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明により、炭素質材料を炭化し、賦活して得た活性炭からなるシートに低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理した活性炭シート及びその製造方法を提供することができる。活性炭をフッ素含有バインダーを用いてシートに成型し、低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理することにより、含フッ素化合物プラズマ処理よりも簡便な操作で活性炭シートを得ることができる。このようにして得られた活性炭シートは高い静電容量を示すので、分極性電極として電気二重層キャパシタに好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】電気二重層キャパシタの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 高周波電源
2 ガス供給口
3 電極
4 電極
5 プラズマ
6 被処理物
7 排出口
8 アース
10 集電部材
11 集電部材
12 分極性電極
13 分極性電極
14 セパレーター
15 蓋
Claims (4)
- 炭素質材料を炭化し、賦活して得た活性炭と、該活性炭100重量部に対して0.01〜50重量部のフッ素含有バインダーを用いて成型したフッ素含有活性炭からなるシートに低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理した活性炭シート。
- 炭素質材料を炭化し、賦活して得た活性炭と、該活性炭100重量部に対して0.01〜50重量部のフッ素含有バインダーを用いてシート化し、低温アルゴンおよび/または窒素プラズマ処理する活性炭シートの製造方法。
- 請求項1記載の活性炭シートを用いた分極性電極。
- 請求項3記載の分極性電極を用いた電気二重層キャパシタ。
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