JP4078474B2 - 高分子発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子蛍光体を含む発光層を有する高分子発光素子(以下、高分子LEDということがある。)に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機蛍光体を発光材料として用いた無機エレクトロルミネッセンス素子(以下、無機EL素子ということがある。)は、例えばバックライトとしての面状光源やフラットパネルディスプレイ等の表示装置に用いられているが、発光させるのに高電圧の交流が必要であった。
【0003】
近年、有機蛍光色素を発光層とし、これと電子写真の感光体等に用いられている有機電荷輸送化合物とを積層した二層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子ということがある。)が報告されている(特開昭59−194393号公報)。有機EL素子は、無機EL素子に比べ、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという特徴があることから素子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多くの試みが報告されている〔ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第27巻、L269頁(1988年)〕、〔ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Appl.Phys.)第65巻、3610頁(1989年)〕。
【0004】
また、主に低分子の有機化合物を用いる有機EL素子とは別に、高分子量の発光材料を用いる高分子LEDについては、WO9013148号公開明細書、特開平3−244630号公報、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)などで提案されており、またWO9013148号公開明細書の実施例には、可溶性前駆体を電極上に成膜し、熱処理を行うことにより共役系高分子に変換されたポリ(p−フェニレンビニレン)薄膜が得られることおよびそれを用いた素子が開示されている。
【0005】
さらに、特開平3−244630号公報には、それ自身が溶媒に可溶であり、熱処理が不要であるという特徴を有する共役系高分子が例示されている。アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)にも、溶媒に可溶な高分子発光材料およびそれを用いて作成した高分子LEDが記載されている。
【0006】
高分子LEDは、塗布により容易に有機層を製膜することができるので、低分子蛍光体を蒸着する場合と比較して、大面積化や低コスト化に有利であり、高分子であることから膜の機械的強度も優れていると考えられる。
【0007】
従来、これら高分子LEDに用いられる高分子蛍光体としては、上記ポリ(p−フェニレンビニレン)以外にも、ポリフルオレン(ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第30巻、L1941頁(1991年))、ポリパラフェニレン誘導体(アドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)第4巻、36頁(1992年))などが報告されている。
【0008】
このように高分子LEDにおいて、溶解性が良くて成膜性に優れ、発光特性または電荷輸送特性などの優れた高分子材料が求められていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成膜性に優れ、かつ発光特性の優れた高分子蛍光体を用いて、低電圧、高効率で駆動できる高分子LEDを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このような事情をみて鋭意検討した結果、特定の繰り返し単位を有する高分子蛍光体を用いることにより、低電圧、高効率で駆動できる高分子LEDが得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、発光層を有する高分子発光素子において、該発光層が下記式(1)および下記式(2)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、かつ下記式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以上99.9モル%以下であり、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体を含む高分子LEDに係るものである。
【0012】
【化11】
・・・・・(1)
〔式中、Ar1は、主鎖部分に含まれる炭素原子の数が6〜60からなるアリーレン基または主鎖部分に含まれる炭素原子の数が4〜60からなる複素環化合物基である。ここで、該Ar1は、X1−R1−X2以外の置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキルシリル基;炭素数6〜60のアリール基およびアリールオキシ基;炭素数4〜60の複素環化合物基;炭素数8〜60のアリールエテニル基からなる群から選ばれた基を1つ以上有していてもよい。X1、X2はそれぞれ独立に、O、S、Se、
【0013】
【化12】
、
【0014】
【化13】
、
【0015】
【化14】
、
【0016】
【化15】
−CR7=CR8−、
炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜60のアリーレン基、または炭素数4〜60の2価の複素環化合物基からなる群から選ばれる基を示す。X1とX2はAr1中の2つの炭素原子にそれぞれ結合しており、それら2つの炭素原子は互いに隣接しているか、または間に1個の炭素原子を挟んでいる。R1は、 O、S、Se、
【0017】
【化16】
、
【0018】
【化17】
、
【0019】
【化18】
、
【0020】
【化19】
−CR12=CR13−、
炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜60のアリーレン基、または炭素数4〜60の2価の複素環化合物基からなる群から選ばれる基を1つ以上連結した基を示す。ただし、X1−R1−X2において、炭素原子以外のヘテロ原子が2個以上連続して連結することはない。R2、R3は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。R4〜R13は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基からなる群から選ばれる基を示す。nは0または1である。〕
【0021】
【化20】
−Ar2−(CR14=CR15)m− ・・・・・(2)
〔ここでAr2は、主鎖部分に含まれる炭素原子の数が6〜60からなるアリーレン基または主鎖部分に含まれる炭素原子の数が4〜60からなる2価の複素環化合物基である。 Ar2は、式(1)のX1−R1−X2で示される置換基を有していない。R14、R15は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。mは0または1である。〕
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高分子LEDについて詳細に説明する。
本発明の高分子LEDの構造としては、式(1)および式(2)で示される繰り返し単位を所定量含む高分子蛍光体を発光層に用いることを特徴とする。
また、本発明の高分子LEDとしては、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設けた高分子LED、陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた高分子LED、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた高分子LED等が挙げられる。
【0023】
例えば、具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
ここで、発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。
発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0024】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
また、積層する層の順番や数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0025】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LED、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LEDが挙げられる。
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が例示される。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0026】
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層;陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層;陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102以下がより好ましく、10-5S/cm以上101以下がさらに好ましい。
通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0027】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0028】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
【0029】
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LED、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDが挙げられる。
【0030】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が例示される。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
【0031】
本発明の高分子LEDの発光層に用いる高分子蛍光体は、前記式(1)および下記式(2)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、かつ前記式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以上99.9モル%以下であり、前記式(2)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の0.1モル%以上50モル%以下であり、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体である。
【0032】
該繰り返し単位の構造にもよるが、式(1)および式(2)で示される繰り返し単位の合計は、少なくとも全繰り返し単位の50.1モル%以上であり、全繰り返し単位の70モル%以上であることがより好ましい。
【0033】
該高分子蛍光体は、特性を損なわない範囲で、式(1)および式(2)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。また、式(1)および式(2)で示される繰り返し単位や他の繰り返し単位が、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを有する非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
【0034】
式(1)のAr1は、主鎖部分に含まれる炭素原子の数が6〜60からなるアリーレン基または主鎖部分に含まれる炭素原子の数が4〜60からなる2価の複素環化合物基であり、例えば米国特許5759709号公報の式(5)または式(20)に示された2価の芳香族化合物基もしくはその誘導体基、2価の複素環化合物基もしくはその誘導体基、またはそれらを組み合わせて得られる基などのうち主鎖部分に含まれる炭素原子数が6個以上のものが例示される。これらの中で、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセン−9,10−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基がさらに好ましい。
【0035】
式(1)のR2、R3が水素またはシアノ基以外の置換基である場合について述べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。
【0036】
アリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。
【0037】
複素環化合物基としては、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
【0038】
式(1)のAr1は、−X1−R1−X2−で示され、主鎖骨格と2カ所で結合して環を形成する置換基を1つ以上有する。X1とX2は、Ar1中の2つの炭素原子にそれぞれ結合しており、それら2つの炭素原子は互いに隣接しているか、または間に1個の炭素原子を挟んでいる。このように比較的近い位置に結合していることにより、該置換基による溶解性、発光や電荷輸送特性の改善効果を期待できる。
【0039】
R1の例としては、アルキレン基、アルキレン基の一部が、O、S、Se、アミノ基、アルキルシリル基、フェニレン基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、チエニレン基、ピリジレン基からなる群から選ばれた基で置換された基が例示される。
【0040】
該−X1−R1−X2−で示される基において、炭素原子以外のヘテロ原子が2個以上連続して連結することはない。ヘテロ原子を含む基の例としては、アルキレン基の一部が、O、S、Se、アミノ基、アルキルシリル基からなる群から選ばれた基で置換された基が例示される。
【0041】
より具体的には、下記に示される基、およびそれらに置換基がついた基などが例示される。
【0042】
【化21】
【0043】
R4〜R13が水素でない場合の例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソアミル基、2−エチルヘキシル基が例示され、アリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、 C1〜C12アルキルフェニル基、複素環化合物基としては、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
【0044】
式(1)のAr1は、−X1−R1−X2−で示される基以外にさらに1つ以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限はないが、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アリール基、アリールオキシ基、複素環化合物基、アリールエテニル基等が例示される。
【0045】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソアミル基、2−エチルヘキシル基が例示され、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソアミルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基が例示され、アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、イソアミルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基が例示され、アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、ジメチルオクチルシリル基などが挙げられる。
【0046】
アリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。
【0047】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが例示される。
【0048】
複素環化合物基としては、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。
【0049】
アリールエテニル基としては、フェニルエテニル基、C1〜C12アルコキシフェニルエテニル基、C1〜C12アルキルフェニルエテニル基、1−ナフチルエテニル基、2−ナフチルエテニル基などが例示される。
【0050】
これらの置換基は、成膜性と電荷輸送特性を損なわない範囲で適宜選択すればよいが、高分子材料の溶解性の観点からは、2つ以上の置換基を有する場合はそれらが同一でないことが好ましく、また、アルキル鎖を有する置換基の場合には、直鎖状のものよりは分岐のある置換基または環状の置換基がより好ましい。
【0051】
式(2)のAr2としては、上記Ar1と同じものが例示される。Ar2は、置換基を有していなくてもよいし、上記Ar1において−X1−R1−X2−で示される基以外に有してもよい基として例示された基を、1つ以上有していてもよい。式(2)のR14、R15としては、上記R2、R3に対して例示されたものと同じものが例示される。
【0052】
また、高分子蛍光体の末端基は、特に限定されないが、重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていることが好ましい。主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものがより好ましく、例えば、ビニレン基を介してアリール基または複素環化合物基と結合している構造が例示される。具体的には、特開平9−45478号公報の化10に記載の置換基等が例示される。
【0053】
該高分子蛍光体の合成法としては、特に限定されないが、主鎖にビニレン基を有する場合には、例えば特開平5−202355号公報に記載の方法が挙げられる。すなわち、ジアルデヒド化合物とジホスホニウム塩化合物とのWittig反応による重合、ジビニル化合物とジハロゲン化合物とのもしくはビニルハロゲン化合物単独でのHeck反応による重合、ジアルデヒド化合物とジ亜燐酸エステル化合物とのHorner−Wadsworth−Emmons法による重合、ハロゲン化メチル基を2つ有する化合物の脱ハロゲン化水素法による重縮合、スルホニウム塩基を2つ有する化合物のスルホニウム塩分解法による重縮合、ジアルデヒド化合物とジアセトニトリル化合物とのKnoevenagel反応による重合などの方法が例示される。
【0054】
また、主鎖にビニレン基を有しない場合には、例えば該当するモノマーからFeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、Suzukiカップリング反応により重合する方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法などが例示される。
【0055】
なお、該高分子蛍光体は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子蛍光体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上ある場合も含まれる。
【0056】
該高分子蛍光体は、薄膜からの発光を利用するので、固体状態で蛍光を有するものが好適に用いられる。また、該高分子蛍光体を電荷輸送層にも用いる場合には、適度な電荷輸送能を有するものが好適に用いられる。さらに、電荷注入層として用いる場合には、電極からの電荷注入を促進できるような仕事関数または電子親和力を有することが好ましく、電荷注入を容易にするために、イオンのドーピングを行ってもよい。
【0057】
該高分子蛍光体に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどが例示される。高分子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0058】
該高分子蛍光体は、分子量がポリスチレン換算で103〜108であり、それらの重合度は、繰り返し構造やその割合によっても変わる。成膜性の点から一般には繰り返し構造の合計数が、好ましくは10〜20000、さらに好ましくは15〜10000、特に好ましくは20〜5000である。
【0059】
これらの高分子蛍光体を高分子LEDの発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0060】
高分子LED作成の際に、これらの有機溶媒可溶性の高分子蛍光体を用いることにより、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0061】
発光層の膜厚としては、用いる発光材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0062】
本発明の高分子LEDの発光層には、例えば該高分子蛍光体以外の発光材料を混合して使用してもよい。
該発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などを用いることができる。
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0063】
本発明の高分子LEDが正孔輸送層を有する場合、該高分子蛍光体を使用してもよいし、該高分子蛍光体と他の正孔輸送材料と混合して使用してもよい。また、該高分子蛍光体以外の正孔輸送材料のみを使用してもよい。使用される正孔輸送材料としては、特に制限はないが、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体が例示される。
【0064】
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0065】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0066】
ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合またはラジカル重合によって得られる。
ポリシランもしくはその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0067】
ポリシロキサンもしくはその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖または主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖または主鎖に有するものが例示される。
【0068】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0069】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0070】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0071】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0072】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、例えば該成功輸送層の膜厚としては1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0073】
本発明の高分子LEDが電子輸送層を有する場合、該高分子材料を使用してもよいし、該高分子材料以外の電子輸送材料と混合して使用してもよい。また、該高分子化合物以外の電子輸送材料のみを使用してもよい。使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体等が例示される。
【0074】
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0075】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムがさらに好ましい。
【0076】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液もしくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0077】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料および/または高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0078】
溶液または溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0079】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリシロキサンなどが例示される。
【0080】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、例えば該電子輸送層の膜厚としては、1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0081】
本発明において、陽極側が透明または半透明であることが好ましいが、該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、ZnO、SnO2が好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0082】
本発明の高分子LEDで用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられる。
【0083】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。陰極作製後、該高分子LEDを保護する保護層を装着していてもよい。該高分子LEDを長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にダメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
本発明の高分子LEDを用いて面状の素子を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成すればよい。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分けることにより、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。
【0084】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
【0085】
実施例1
<高分子蛍光体1の合成>
1、4−ベンゾジオキサンのビスブロムメチル化物をN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成した。得られたホスホニウム塩2.96gとイソフタルアルデヒド0.4gと1−ピレンカルボキシアルデヒド0.23gとを、エタノール/トルエン(1/1)混合溶媒70gに溶解させた。次に、このホスホニウム塩とアルデヒドのエタノール/トルエン混合溶液に、12%リチウムメトキシドメタノール溶液5mlとエチルアルコール20mlとを混合した溶液25mlを、室温で滴下した。引き続き、室温で5時間反応させた。
【0086】
エタノール100mlを添加した後、一夜室温で放置し、生成した沈殿を回収した。次に、この沈殿をエタノールで洗浄した。次に、この沈殿をトルエンに溶解し、これにエタノールを加えて再沈精製した。再沈精製は2回行った。これを減圧乾燥して、重合体0.7gを得た。得られた重合体を高分子蛍光体1と呼ぶ。高分子蛍光体1は、モノマーと重合方法より、下記式(3)と式(4)の繰り返し単位が交互に共重合した構造で、末端部に主にピレニル基を有する。
【化22】
・・・・・(3)
【化23】
・・・・・(4)
【0087】
該高分子蛍光体1のポリスチレン換算の数平均分子量は、2×103であった。該高分子蛍光体1の構造については1H−NMR、IRスペクトルで相当するスペクトルを得た。高分子蛍光体1は、非常に強い蛍光を有しており、蛍光ピーク波長は、クロロホルム溶液では488nm、薄膜では526nmであった。また、高分子蛍光体1は、トルエン、クロロホルム等の有機溶媒に容易に溶解させることができた。
【0088】
<高分子正孔輸送材料1の合成>
欧州特許公報0893485号の実施例2と同じ方法で、芳香族アミンを含むシロキサンポリマーを得た。これを高分子正孔輸送材料1と呼ぶ。該高分子正孔輸送材料1は、トルエンに容易に溶解させることができた。
<素子の作成および評価>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、高分子正孔輸送材料1と高分子蛍光体1とを8:2の重量比で含む2.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートにより60nmの厚みで成膜した。これを大気下150℃で5分間加熱乾燥した。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、アルミニウムキノリニウム錯体を電子輸送層として50nm蒸着し、さらに陰極として、アルミニウムとリチウムを50nm共蒸着して(Al:Li=100:1(重量比))、高分子LEDを作製した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜8×10-6Torrであった。得られた素子は電圧を印加することにより、緑色で明るく発光した。輝度は電流密度にほぼ比例しており、発光効率は約2.6cd/Aであった。
【0089】
実施例2
<高分子蛍光体2の合成>
1、4−ベンゾジオキサンのビスブロムメチル化物をN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成した。得られたホスホニウム塩2.96gとテレフタルアルデヒド0.47gとを、エタノール100mlに溶解させた。次に、このホスホニウム塩とアルデヒドのエタノール混合液に、12%リチウムメトキシドメタノール溶液5mlとエチルアルコール20mlとを混合した溶液25mlを、室温で滴下した。引き続き、室温で7時間反応させた。
【0090】
一夜室温で放置した後、生成した沈殿を回収した。次に、この沈殿をエタノールで洗浄した。次に、この沈殿をトルエンに溶解し、これにエタノールを加えて再沈精製した。回収した沈殿をエタノールで洗浄した後、これを減圧乾燥して、重合体0.5gを得た。得られた重合体を高分子蛍光体2と呼ぶ。
高分子蛍光体2は、モノマーと重合方法より、下記式(3)と式(5)の繰り返し単位が交互に共重合した構造で、末端部に主にピレニル基を有する。
【化24】
・・・・・(3)
【化25】
・・・・・(5)
【0091】
該高分子蛍光体2のポリスチレン換算の数平均分子量は、2×103であった。該高分子蛍光体2の構造については1H−NMR、IRスペクトルで相当するスペクトルを得た。高分子材料2は、非常に強い蛍光を有しており、蛍光ピーク波長は、クロロホルム溶液では500nm、薄膜では526nmであった。また、高分子蛍光体2は、トルエン、クロロホルム等の有機溶媒に容易に溶解させることができた。
<素子の作成および評価>
高分子材料1の代わりに高分子材料2を用いる以外は実施例1と同様にして、高分子LEDが作成でき、得られる素子は電圧を印加することにより、明るく発光する。
【0092】
【発明の効果】
本発明において、溶媒への溶解性が高く、成膜性が優れている特定の高分子材料を用いるので、本発明の高分子LEDは低電圧、高発光効率である。したがって、該高分子LEDは、バックライトとしての曲面状や面状光源、フラットパネルディスプレイ等の装置に好ましく使用できる。
Claims (8)
- 少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、発光層を有する高分子発光素子において、該発光層が、下記式(1)および下記式(2)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、かつ下記式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以上99.9モル%以下であり、下記式(2)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の0.1モル%以上50モル%以下であり、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体を含むことを特徴とする高分子発光素子。
・・・・・(1)
〔式中、Ar1は、主鎖部分に含まれる炭素原子の数が6〜60からなるアリーレン基または主鎖部分に含まれる炭素原子の数が4〜60からなる複素環化合物基である。ここで、該Ar1は、X1−R1−X2以外の置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキルシリル基;炭素数6〜60のアリール基およびアリールオキシ基;炭素数4〜60の複素環化合物基;炭素数8〜60のアリールエテニル基からなる群から選ばれた基を1つ以上有していてもよい。X1、X2は、Oを示す。X1とX2は、Ar1中の2つの炭素原子にそれぞれ結合しており、それら2つの炭素原子は互いに隣接しているか、または間に1個の炭素原子を挟んでいる。R1は、炭素数1〜20のアルキレン基を示す。R 2 、R 3 は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。nは0または1である。〕
−Ar2−(CR14=CR15)m− ・・・・・(2)
〔ここでAr2は、主鎖部分に含まれる炭素原子の数が6〜60からなるアリーレン基または主鎖部分に含まれる炭素原子の数が4〜60からなる2価の複素環化合物基である。Ar2は、式(1)のX1−R1−X2で示される置換基を有していない。R14、R15は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。mは0または1である。〕 - R1が、炭素数2のアルキレン基である請求項1に記載の高分子発光素子。
- Ar1がフェニレン基である請求項1または2に記載の高分子発光素子。
- 少なくとも一方の電極と発光層との間に該電極に隣接して導電性高分子からなる層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子発光素子。
- 少なくとも一方の電極と発光層との間に該電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子発光素子。
- 陰極と発光層との間に、電子輸送層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子発光素子。
- 陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子発光素子。
- 陰極と発光層との間に、電子輸送層、および陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子発光素子。
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