JP4078168B2 - ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型で軽量性に優れるとともに、成形品の一部にスピーカーグリルとしての網目状開口部を有するデザインを有し、同時に高い衝撃強度も有する、新規なポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品に関するものであり、スピーカーグリル付き自動車内装部品とりわけスピーカーグリル付きドアトリム用、スピーカーグリル付きリアパッケージトレイ用、スピーカーグリル付きリアトノボード用等として、好適なポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装部品、例えばドアトリム用として、ポリプロピレン樹脂の射出成形品や射出圧縮成形品が多く実用に供されてきている。
近年上記用途は、益々製品大型化や高機能化が進みつゝあり、例えばドアトリムでは、成形品の大型化や薄肉化(軽量化)に加え、スピーカーグリルの一体成形による高機能化によって、成形材料には薄肉長尺で複雑な製品形状に対応できる良好な成形加工性や美麗な外観を有することが求められる。また、近年では、自動車の側面衝突時の乗員保護を目的としてドアトリムの高強度化が進んでおり、成形材料には高い衝撃強度を有することが求められている。
このような要求に対応するものとして、例えば、射出成形品に関しては、金型設計、製品デザインを改善し、MFRが45g/10分以上のポリプロピレン樹脂材料を用いることで、多孔質部分をきめ細かくしたスピーカーグリル一体型ドアトリム成形品およびその金型が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、ポリプロピレン樹脂の射出圧縮成形品は、射出成形品に較べ比較的低圧で大型成形品の賦型ができるので、製品大型化に対応し易く経済的にも有利であるため、適用が増大しつゝある。
しかしながら、スピーカーグリルに代表される微細な網目状開口部を有し、然も薄肉のデザインの自動車内装部品に対しては、従来のポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品(換言すれば、ポリプロピレン樹脂材料、とりわけ高衝撃強度性能を有するポリプロピレン樹脂材料)の適用は、極めて困難であった。
すなわち、ドアトリムを初め、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ、リアトノボード、トランクルームサイドパネル、リアパッケージトレイ等の自動車内装部品は、何れも長尺ものでリブ、開口部など複雑で流動困難な部位が多く存在するので、製品を成形するには樹脂を注入するゲート点数を増やしたり、成形温度、金型温度を高めるなどが必要となり、製品価値や生産性が満足されるものではなかった。
特に、スピーカーグリル一体成形品については、更に流動が複雑化するので薄肉化、大型化は極めて困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−118407号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スピーカーグリルとしての微細な網目状開口部を有し、然も薄肉デザインの自動車内装部品を、ゲート点数の増加、成形温度、金型温度を上げるといった製品価値、生産性を損なうこと無く成形でき、且つ低比重で高衝撃強度を有する、スピーカーグリル付き自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の研究を重ねた結果、全体およびスピーカーグリルとしての網目状開口部のデザインを特定化し、特定のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体を用いて射出圧縮成形することにより、ゲート点数の増加、成形温度、金型温度を上げるといった製品価値、生産性を損なうこと無く成形でき、且つ低比重で高衝撃強度を有する、微細な網目状開口部を有した薄肉デザインのスピーカーグリル付き自動車内装部品用に好適なポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が50〜90g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が、全溶出量に対し23〜35重量%であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体からなり、射出圧縮成形法にて成形されてなるポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品であって、成形品全体の投影面積が0.4m2以上で、且つ平均肉厚が2.7mm以下であり、その成形品に少なくとも1個以上の、面積が200cm2以上で、開口率が40%以上、網目格子部の肉厚が2.7mm以下、及び網目格子の幅(孔間肉厚)が1mm以下である網目状開口部をスピーカーグリルとして持つデザインを有するスピーカーグリル付き自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、プロピレン・エチレン−ブロック共重合体のアイゾット衝撃強度(JIS K7110、温度23℃)が12KJ/m2以上であることを特徴とする第1の発明に記載のスピーカーグリル付き自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
[I]射出圧縮成形品のデザイン
本発明の成形品は、少なくとも1個の微細な網目状開口部を有する自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品である。
1.全体形状
成形品の全体形状としては、投影面積は、0.4m2以上であり、ドアトリムやリアパッケージトレイ等の大型樹脂部品にも用いることができる。また、成形品の平均肉厚は、2.7mm以下であり、好ましくは2.5mm以下である。平均肉厚を2.7mm以下にすることにより、成形品の軽量化が可能となる。
【0010】
2.網目状開口部
本発明の自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品に少なくとも1個設けられる網目状開口部は、スピーカー用グリル等として用いられるものであり、その形状としては、丸型、楕円型、丸みの平行四辺形、長方形、角型等のデザインのものを挙げることができる。
【0011】
網目状開口部の面積は、200cm2以上であり、近年重視されている車室内の音響効果に優れたオーディオ装置等のスピーカー用グリルへの適用が可能であり、スピーカーグリルの大型化、及び意匠性の向上を各々可能とする。
【0012】
網目状開口部は、複数の孔を設けて網目を形成するようにされ、網目格子部の肉厚は、2.7mm以下であり、2.5mm以下が好ましい。また、網目格子の幅(孔間肉厚)は、1mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましい。また、網目状開口部の孔の開口率は、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましい。
網目状開口部における、網目格子部の肉厚が2.7mm以下、網目格子の幅(孔間肉厚)が1mm以下、及び網目部の孔の開口率が40%以上にすることにより、スピーカーグリル内での音響効果を上げることができる。上記の範囲外においては、スピーカーグリル内で音が減衰され、音響効果が低下する。特に、網目格子の幅(孔間肉厚)は、金属製パンチングメタルの様に極力細くし、孔の開口率を上げるほうが良いが、樹脂製品での耐衝撃性を鑑みると前記形状が好ましい。
【0013】
網目状開口部における、網目部の孔の面積は、4.0mm2以下が好ましく、3.5mm2以下がより好ましい。4.0mm2を超えると意匠性の低下や、埃等の進入によるスピーカー自体の障害が発生する事が想定されるので好ましくない。
また、網目部の孔の形状は、丸型、楕円型、角型等より適宜選定される。スピーカーグリルを想定すると丸型や楕円型が好ましい。
さらに、網目状格子部には、格子部の強度向上や、賦型性をより良くするための樹脂流動支援として、裏側にリブを適宜設置することが好ましい。
リブは網目格子部分(孔間)に設けることが、外観及び音響の面で好ましい。
【0014】
3.ゲート
射出圧縮成形品の成形においては、複数のゲートから樹脂を注入して成形が行われるが、注入するためのゲート点数は、4点以下が好ましく、より好ましくは3点以下である。ゲート点数が多いと、個々のゲートから注入された樹脂が合流する際に生ずるウエルドラインが増加して外観を損ない、商品価値が低下するとともに、ゲート部の仕上げ工数も増えるので好ましくない。
【0015】
4.表面加飾
本発明の射出圧縮成形品の表面には、皮革状、梨地、メッシュ状等のシボ加工を施して意匠性を向上させることができるほか、樹脂製のシート、発泡シート、フィルム等や、織布、不織布等を貼り合わせて加飾しても良い。この場合、縦型の射出圧縮成形機を用いれば、予め貼り合わせる生地を雌雄型の間に設置した状態で樹脂を射出注入することで、成形と同時に加飾ができる利点がある。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂成形材料は、後述する様に流動性が高く、言い換えれば溶融時の粘度が適度に低いため、金型のキャビティ内を流動する際の圧力を低くすることが可能となり、貼り合わせる生地の潰れ、ヨレ、しわ、樹脂の染み出しが起こり難く、良好な表面加飾が行い易い特徴がある。
【0016】
本発明の射出圧縮成形品の例を図で説明する。図1(a)は、自動車右側フロントドアのスピーカーグリル付きドアトリムの一例の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のスピーカーグリルを構成する網目状開口部の一部分の拡大平面図であり、図1(c)は、図1(b)のX−X’方向の断面図である。ドアトリムは、アームレスト1、丸形網目状開口部2、2個のゲート3を有している。また、網目状開口部は、孔4がd(孔間肉厚)の間隔を開けるようにして設けられている。さらに、網目状開口部2は、その強度を維持する等のために、裏面に補強リブ5が設けられている。図2(a)は、自動車右側フロントドアのスピーカーグリル付きドアトリムの他の例の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のスピーカーグリルを構成する網目状開口部の一部分の拡大平面図であり、図2(c)は、図2(b)のX−X’方向の断面図である。ドアトリムは、アームレスト1、楕円形網目状開口部2、2個のゲート3を有している。また、網目状開口部は、孔4がd(孔間肉厚)の間隔を開けるようにして設けられている。さらに、網目状開口部は、その強度を維持するために、裏面に補強リブ5が設けられている。なお、図1及び2における網目状開口部2、ゲート3、網目状開口部の孔4、孔間肉厚d、網目部の孔の開口率、網目部の孔の面積、リブ等は、目的に応じて上記の範囲で適宜変更することができる。
【0017】
[II]ポリプロピレン樹脂
上記自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品の材料であるポリプロピレン樹脂は、以下の物性を有するプロピレン・エチレン−ブロック共重合体であり、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
1.プロピレン・エチレン−ブロック共重合体の物性
(1)MFR
本発明で用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体のMFRは、50〜90g/10分、好ましくは55〜90g/10分、より好ましくは60〜90g/10分である。MFRが50g/10分未満のでは、金型への充填賦型性や成形品外観が不良となり不適であり、90g/10分を超えると耐衝撃吸収性が低下し、延性破壊性の保持が困難である。
すなわち、本発明の成形品全体の平均肉厚は、2.7mm以下と極めて薄肉であり、且つゲート点数も少ないのに加え、とりわけ、網目状開口部は、非常に複雑で狭い流路となっているので、射出圧縮成形する際、充分に樹脂が行き渡らないと賦形性不足となる。
一方、賦形性不足を解消するために、網目状開口部にゲートを設けることも考えられるが、本発明に用いる射出圧縮成形法では困難である。
【0019】
ここで射出圧縮成形法を簡単に説明すると、雌雄一対からなる金型のキャビティ内に樹脂を射出注入する際に、予め雌雄互いの金型を少し開いた状態(キャビティを拡大した状態)で、射出注入を開始し、射出注入過程もしくは射出注入完了後に雌雄の金型を閉じて樹脂を賦形させる工法である。
すなわち、拡大されたキャビティ内に射出注入することで金型内の樹脂圧力を低減でき、比較的型締め力の小さい成形機で大型の成形品が得られるといった利点がある。
一方、拡大されたキャビティ内に樹脂を射出注入することから、開口部、パーティング部といった雌雄金型の合わせ部位近辺にゲートを設けるとバリが発生し開口部が塞がるといった問題があり、網目状開口部にゲートを設けることはできない。
また、成形温度や金型温度を高く設定することで見掛け上の樹脂流動性を向上させる方法もあるが、その場合でも網目状開口部が大きく薄肉のものには対応しきれず生産性だけを低下させるといった問題がある。
さらに、極端にMFRが大きいポリプロピレン樹脂を用いる方法もあるが、この場合成形品の耐衝撃性などの強度を著しく低下させるので実用性に欠け好ましくない。
ここで、MFRは、JIS−K7210(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定されるものである。
【0020】
(2)オルトジクロルベンゼンによる温度上昇溶離分別量
本発明で用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体のオルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量は、全溶出量に対し23〜35重量%、好ましくは25〜35重量%である。
この40℃以下の溶出量が23重量%未満のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体を用いると、例えば、ドアトリムの成形においては、車両の側面衝突時に乗員を保護するために必要な耐衝撃吸収性及び延性破壊性などの性能が、不足となり易く好ましくない。逆に40℃以下の溶出量が35重量%を超える場合は、成形品の剛性を著しく低下させるので、成形品肉厚を厚くする必要が生じ、軽量化が難しくなるので好ましくない。
【0021】
オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量は、フィード原料ガスの調整などの重合条件を調節して、重合条件の一環として設定するが、必要に応じて、この40℃以下の溶出量が比較的少ないプロピレン・エチレン−ブロック共重合体に、各種のゴム成分、例えば、エチレン・1−ブテン共重合ゴムやエチレン・1−オクテン共重合ゴムを添加混合したり、混練して調整設定することもできる。この場合、どちらかと言えば、重合条件のみで設定したものの方が、射出圧縮成形品の表面硬度が高く好ましい。
【0022】
ここで、上記温度上昇溶離分別(TREF)とは、不活性担体の存在下に一定高温下でポリマーを完全に溶解させた後に冷却し、該不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させ、次に、温度を連続又は段階的に昇温して、溶出した成分を回収し、その濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(積分溶出曲線)により、ポリマーの組成分布を測定する方法である。温度上昇溶離分別(TREF)の測定の詳細については、Journal of Applied Polymer Science第26巻 第4217〜4231頁(1981年)に記載されており、本発明においてもこれに従って行う。
【0023】
測定装置は、ダイヤインスツルメンツ製CFC T−150Aを使用し、まず、測定すべきサンプルを溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用い、3mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。以下の測定は、設定条件にしたがって自動的に行われる。サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入される。次に該サンプルを1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却させる。TREFカラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工製AD806MS 3本)へ注入される。SECで分子サイズの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分保持される。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行う。溶出温度は0℃から50℃まで5℃毎に、50℃から80℃まで10℃毎に、80℃から90℃までは5℃毎に、90℃から140℃までは4℃毎に階段的に昇温される。該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は、装置付属の赤外線分光光度計で検出され、各溶出温度区分におけるクロマトグラフが得られる。なお、赤外線分光光度計での検出は、検出波数3.42μmにおける吸光度を使用して行われ、溶液中のポリマー成分量と吸光度とが比例するものとして以下のデータ処理が行われる。各溶出温度区分におけるクロマトグラムは、内蔵のデータ処理ソフトにより処理され、各クロマトグラムの面積を基に、積算が100%となるように規格化された各溶出温度区分の溶出量が計算される。更に、得られた各溶出温度区分の溶出量から、積分溶出曲線が作成される。40℃以下の溶出量とは、積分溶出曲線における40℃までの積算溶出量を示すものである。
【0024】
(3)アイゾット衝撃強度
本発明で用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体のアイゾット衝撃強度(23℃)は、好ましくは12kJ/m2以上であり、より好ましくは14kJ/m2以上である。
プロピレン・エチレン−ブロック共重合体のアイゾット衝撃強度(23℃)が12kJ/m2未満であると、上述の耐衝撃吸収性及び延性破壊性が不足となり易く好ましくない。
ここで、アイゾット衝撃強度(23℃)は、JIS K7110、温度23℃に準拠して求める値である。
【0025】
本発明で用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体が2種以上の組み合わせ(例えば、ペレットブレンド)として用いる場合は、混合物(例えば、ペレットブレンド)全体のMFR、40℃以下の溶出量、アイゾット衝撃強度が上記範囲を満足するものであればよい。
【0026】
2.プロピレン・エチレン−ブロック共重合体の製造
上記プロピレン・エチレン−ブロック共重合体は、チーグラー系やメタロセン系の高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、気相重合あるいは液相塊状重合により製造される。重合方式としては、バッチ重合、連続重合どちらの方式も採用することができる。
該プロピレン・エチレン−ブロック共重合体を製造するに際しては、最初にプロピレンの単独重合によって結晶性ポリプロピレン部を形成し、次にエチレンとプロピレンとのランダム共重合によってエチレン・プロピレン−ランダム共重合部を形成したものが品質上から好ましい。例えば、塩化マグネシウムに四塩化チタン、及び有機酸ハライドを接触させて形成した固体成分に、有機アルミニウム化合物、有機珪素化合物を組合せた触媒を用いてプロピレンの単独重合を行い、次いで、エチレンとプロピレンとのランダム共重合を行うことによって製造できる。
また、該プロピレン・エチレン−ブロック共重合体は、本発明効果を損なわない範囲内で他の不飽和化合物、例えば、1−ブテン等のα−オレフィン、酢酸ビニルの如きビニルエステル等を含有する三元以上の共重合体であっても、これらの混合物であってもよい。
また、このプロピレン・エチレン−ブロック共重合体は、ペレット状でもパウダー状でも構わないが、所定の添加剤等を配合済のペレット状が好ましい。
【0027】
なお、上記のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体のMFRは、重合条件で調整してもよく、重合後に過酸化物にて任意に制御してもよいが、射出圧縮成形品の外観の点からは、前者が好ましい。
MFRの調整を過酸化物にて制御する場合は、その制御率(=制御後のMFR値/制御前重合MFR値)を4.0以下、好ましくは3.0以下にする必要がある。4.0を超えると射出圧縮成形品の外観が劣る様になり、不適である。
MFRの調整に用いる過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,3ービス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0028】
3.付加成分
上記プロピレン・エチレン−ブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内で以下に示す任意の添加剤や配合材成分を性能向上などのために、予め配合混練しておいても良く、射出圧縮成形時にプロピレン・エチレン−ブロック共重合体に、直接またはマスターバッチなどの形で混合して成形しても良い。
具体的には、着色するための顔料;ポリエチレン、ポリスチレン等の各種樹脂;タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ等の各種フィラー;エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・1−ブテン共重合ゴム、エチレン・1−ヘキセン共重合ゴム、エチレン・1−オクテン共重合ゴム、SEBS、SEP、SEPS等の各種ゴム;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアマイド、アルキルジエタノールアミンエステル等の帯電防止剤;ヒンダードアミン化合物、ベンゾエート化合物系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光安定剤および紫外線吸収剤;タルク、カルボン酸塩、ソルビトール系、有機リン酸塩などの核剤;脂肪酸アミド類などの滑剤;各種酸化防止剤;各種難燃剤;各種発泡剤;各種分散剤などが挙げられる。
【0029】
[III]成形
本発明のポリプロピレン射出圧縮成形品は、射出圧縮成形(プレスインジェクション)法にて成形することによって得られる。その主要成形条件の設定は次の通りである。
【0030】
射出条件
成形温度;190〜260℃(好ましくは、200〜240℃)
ホットランナー温度;190〜260℃(好ましくは、200〜240℃)
金型温度;20〜60℃(好ましくは、30〜50℃)
【0031】
圧縮条件
圧縮開始位置;1〜30mm(好ましくは、5〜20mm)
圧縮のタイミング;射出開始〜射出完了後(好ましくは、射出途中〜射出完了直前)
圧縮速度;5〜50mm/sec(好ましくは、10〜30mm/sec)(多段制御可能)
【0032】
[IV]射出圧縮成形品
本発明のポリプロピレン射出圧縮成形品は、大型で軽量性に優れるとともに、成形品の一部に網目状開口部を有するデザインを有し、同時に良好な外観と高い衝撃強度も有する。具体的には、重さ1kgの鋼球を−30℃雰囲気下で落下させた破壊高さが40cm以上であり、かつ高さ100cmから落下させ破壊した場合、その落下箇所がシャープエッジとならない優れた特徴を有する。
【0033】
[V]用途
本発明のポリプロピレン射出圧縮成形品は、大型で軽量性に優れるとともに、成形品の一部に網目状開口部を有するデザインを有し、同時に高い衝撃強度も有するので、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ、トランクルームサイドパネル、リアパッケージトレイ等の自動車内装部品、とりわけスピーカーグリル付きドアトリム用、スピーカーグリル付きリアパッケージトレイ用やスピーカーグリル付きリアトノボード用として好適である。
【0034】
【実施例】
本発明のポリプロピレン射出圧縮成形品を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例での各種評価法、用いたポリプロピレン樹脂の製造方法を以下にします。
【0035】
1.評価方法
(1)MFR:JIS K 7210(温度230℃、荷重21.18N)に準拠して測定した。
(2)温度上昇溶離分別:前述の通り。
(3)アイゾット衝撃強度:JIS K 7110(温度23℃)に準拠して測定した。
(4)射出圧縮成形性:射出圧縮成形品の網目状開口部の充填性で下記の通り判定した。
○:網目状開口部の格子部分は完全充填されており、孔部分はバリ等による目詰まりが無く、見た目が美しく仕上がったもの
○−:網目状開口部の格子部分は完全充填されているが、孔部分に若干のバリが発生しているが実用上問題なく仕上がったもの
△:網目状開口部の格子部分は完全充填されているが、孔部分にバリによる目詰まりが発生しており、実用上問題となるもの
×:網目状開口部の格子部分が充填できず、成形が不可能であったもの
(5)成形品外観:射出圧縮成形品の外観品質として、射出圧縮成形特有のリングマークの発生状態を重視して観察し、下記の通り判定した。
A:リングマークは殆ど見受けられず、流れ模様・艶ムラ等の外観不具合も無く、見た目が美しく仕上がったもの。
B:リングマークが若干発生しているが、流れ模様・艶ムラ等の外観不具合は無く、実用上問題なく仕上がったもの。
C:リングマークが目立ち、流れ模様・艶ムラが発生しており、実用上問題となるレベルのもの。
(ただし、リングマークとは、金型を圧縮する際に樹脂流動が急激に変化することに起因する、しわ、光沢ムラのことであり、一般にリング状に発生し外観品質を低下させるものである。)
(6)成形品強度:射出圧縮成形品を試験温度−30℃、鋼球重さ1kg、落下高さ100cmの条件で鋼球落下試験を行い、落下箇所のシャープエッジ破面の有無等を観察し、次の基準で目視判定した。
○:シャープエッジは無く、変形や表面白化も僅かであり、強度的に実用上全く問題ないもの。
○−:シャープエッジは無く、変形と表面白化が見受けられるものの、強度的に実用上問題ないもの。
×:シャープエッジが発生し、強度不足で実用に供せないもの。
(7)デザイン性:射出圧縮成形品全体のデザインを観察して次の基準の段階に判定した。
◎:網目状開口部面積の割合が、成形品全体に対して大きく、しかも開口率も大きく、スピーカーグリル付きドアトリムとしてのデザイン性に特に優れたもの
○:成形品自体の大きさおよび網目状開口部面積の割合が適度で、スピーカーグリル付きドアトリムとしてのデザイン性に優れたもの
(8)軽量性:射出圧縮成形品の重量に基づき、次の基準の段階に判定した。
◎:成形品肉厚が薄く、成形品寸法見合いの軽量性が特に優れたもの
○:成形品重量が適度で、成形品寸法見合いの軽量性が優れたもの
×:成形品が重く、成形品寸法見合いの軽量性が劣るもの
【0036】
2.使用ポリプロピレン樹脂
(A):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC08G」と「BX03HRS」を70:30の比率で混合したポリプロピレン樹脂組成物。(A)はMFRが62g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し24重量%、また、アイゾット衝撃強度(23℃)は12KJ/m2であった。
(B):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC08G」、「BX03HRS」とデュポンダウエラストマー製「EG8407」を60:30:10の比率で混合したポリプロピレン樹脂組成物。(B)はMFRが53g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し30重量%、また、アイゾット衝撃強度(23℃)は16KJ/m2であった。
(C):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC10AH」、デュポンダウエラストマー製「EG8407」を78:22の比率で混合したポリプロピレン樹脂組成物。(C)はMFRが70g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し30重量%、また、アイゾット衝撃強度(23℃)は17KJ/m2であった。
(D):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC03HR」を単軸押出機(温度=240℃)を用いて、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼンを用いてラジカル分解処理したポリプロピレン樹脂。(D)はMFRが65g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し26重量%、また、アイゾット衝撃強度(23℃)は13KJ/m2であった。
(E):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC03HR」。(E)はMFRが30g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し26重量%、また、アイゾット衝撃強度(23℃)は19KJ/m2であった。
(F):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC4LA」とデュポンダウエラストマー製「EG8407」を90:10の比率で混合した後、単軸押出機(温度=240℃)を用いて、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼンを用いてラジカル分解処理したポリプロピレン樹脂組成物。(F)はMFRが65g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し26重量%、またアイゾット衝撃強度(23℃)は11KJ/m2であった。
(G):上述のポリプロピレン樹脂(D)=85重量%と、富士タルク工業製のタルク「PKP80」=15重量%を二軸混練押出機(KCM50…神戸製鋼所製)にて混練造粒したポリプロピレン樹脂組成物。
(H):日本ポリケム(株)製ノバテックPP「BC06C」。(H)のMFRは60g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が全溶出量に対し9重量%、また、アイゾット衝撃強度(23℃)は5KJ/m2であった。
【0037】
実施例1
ポリプロピレン樹脂(A)を用い、図1及び下記に示す形状のスピーカーグリル付きドアトリム状モデル成形品(金型−1)を用い、下記の射出圧縮射出条件で、射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0038】
射出成形品(1)
全体形状:投影面積=0.5m2、平均肉厚が2.5mm、ゲート数=2点
網目状開口部形状:スピーカーグリル状丸形、面積=310cm2、肉厚=2.5mm
孔の面積=2.8mm2、開口率=42%、網目格子の幅(孔間肉厚)=0.9mm
【0039】
射出圧縮成形
(1)成形機:縦型射出圧縮成形機;(株)神戸製鋼所製VFP500−186MI、型締力500t)
(2)金型:雌雄一対からなり、上型(雌)が製品表面、下型(雄)が製品裏面となる構造で、成形品部にポリプロピレン樹脂を注入するゲートは、下型に設置した、ホットランナー内蔵金型。
(3)射出条件
成形温度;230℃
ホットランナー温度;230℃
金型温度;40℃
(4)圧縮条件
圧縮開始位置;15mm
圧縮のタイミング;射出途中
圧縮速度;20mm/sec(固定)
【0040】
実施例2〜3
ポリプロピレン樹脂(B)、ポリプロピレン樹脂(C)を使用する以外は、実施例1と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例4
ポリプロピレン樹脂(A)を用い、図2及び下記に示す形状のスピーカーブリル付きドアトリム状モデル成形品(金型−2)を用い、実施例1と同様の射出条件で射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0042】
射出成形品(2)
全体形状:投影面積=0.5m2、平均肉厚が2.5mm、ゲート数=2点
網目状開口部形状:スピーカーグリル状楕円形、面積=450cm2、肉厚=2.5mm
孔の面積=2.8mm2、開口率=45%、網目格子の幅(孔間肉厚)=0.8mm
【0043】
実施例5
ポリプロピレン樹脂(B)を使用する以外は、実施例4と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例6
ポリプロピレン樹脂(A)を用い、図1及び下記に示す形状のスピーカーブリル付きドアトリム状モデル成形品(金型−3)を用い、実施例1と同様の射出条件で射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0045】
射出成形品(3)
全体形状:投影面積=0.5m2、平均肉厚が2.5mm、ゲート数=2点
網目状開口部形状:スピーカーグリル状丸形、面積=310cm2、肉厚=2.2mm
孔の面積=2.8mm2、開口率=42%、網目格子の幅(孔間肉厚)=0.9mm
【0046】
実施例7
ポリプロピレン樹脂(B)を使用する以外は、実施例6と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例8
ポリプロピレン樹脂(D)を使用する以外は、実施例1と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0048】
比較例1〜4
ポリプロピレン樹脂(E)〜(H)を使用する以外は、実施例1と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0049】
比較例5
ポリプロピレン樹脂(E)を使用する以外は、実施例4と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0050】
比較例6
ポリプロピレン樹脂(E)を使用する以外は、実施例6と同様にして射出成形品を得た。その評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示す様に実施例1〜8は、何れも良好な射出圧縮成形性、成形品外観、成形品強度、デザイン性および軽量性を示した。一方、比較例1〜6に示したものは、これらの性能バランスが不良であった。
【0053】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品は、大型で軽量性に優れるとともに、成形品の一部に網目状開口部を有するデザインを有し、同時に良好な外観と高い衝撃強度も有するので、自動車内装部品とりわけスピーカーグリル付きドアトリム用、スピーカーグリル付きリアパッケージトレイ用やスピーカーグリル付きリアトノボード用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出圧縮成形品の一例である。
【図2】本発明の射出圧縮成形品の他の例である。
【符号の説明】
1 アームレスト
2 網目状開口部
3 ゲート
4 孔
5 補強リブ
d 孔間肉厚
Claims (2)
- メルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が50〜90g/10分、オルトジクロルベンゼンを溶媒に用いた0〜140℃間の温度上昇溶離分別における40℃以下の溶出量が、全溶出量に対し23〜35重量%であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体からなり、射出圧縮成形法にて成形されてなるポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品であって、成形品全体の投影面積が0.4m2以上で、且つ平均肉厚が2.7mm以下であり、その成形品に少なくとも1個以上の、面積が200cm2以上で、開口率が40%以上、網目格子部の肉厚が2.7mm以下、及び網目格子の幅(孔間肉厚)が1mm以下である網目状開口部をスピーカーグリルとして持つデザインを有するスピーカーグリル付き自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品。
- プロピレン・エチレン−ブロック共重合体のアイゾット衝撃強度(JIS K7110、温度23℃)が12KJ/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載のスピーカーグリル付き自動車内装部品用ポリプロピレン樹脂射出圧縮成形品。
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