JP4077980B2 - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアクリロニトリルまたはポリアクリロニトリル系の繊維から得た酸化繊維を原料とした炭素繊維の製造方法に関し、より詳しくは該酸化繊維を原料とした炭素繊維の製造過程において、強磁場と張力の下で、2段加熱することにより、炭化および黒鉛化した、引張強度と引張弾性率の優れた炭素繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリアクリロニトリルまたはポリアクリロニトリル系繊維から酸化過程、炭化過程を経て得られる炭素繊維は比強度、比弾性率に優れていることから航空・宇宙分野の飛翔体やスポーツ用品、工業製品等、特に、剛性が要求される部材・部品として多用されている。この炭素繊維は湿式紡糸または乾式紡糸などの公知の方法により製造されるポリアクリロニトリルまたはポリアクリロニトリル系繊維を200〜300℃の空気中で数時間酸化し、得られた繊維を800から1500℃の不活性雰囲気中で繊維を延伸しながら炭素化し、更に、2000〜3000℃で繊維を100mg/d以上の高い張力などにより延伸しながら黒鉛化する方法により得られていた。
【0003】
しかしながら、従来の製造方法で得られる酸化繊維は酸化に長時間を要するために製造コストが高くなるという問題があった。また、該酸化繊維を用いて炭素化して得られる炭素繊維はコストが高くなるという問題があった。さらに、従来の炭素繊維の製造方法では炭素繊維の引張強度や引張弾性率を高くすべく炭素化過程で繊維を延伸するために毛羽の多い炭素繊維になるという問題があった。
【0004】
近年、このような問題を解決するために、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維から得た密度1.25〜1.48g/ccの酸化繊維を、磁束密度1テスラ以上、不活性ガス中、張力10〜200mg/dの下で、高引張強度の炭素繊維とする場合は温度1200〜1400℃で、或いは高引張弾性率の炭素繊維とする場合は2000〜3000℃で熱処理することにより炭素繊維を製造する方法が提案されている(特開平11−81052号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の前記公報に示された炭素繊維の方法は、引張強度、引張弾性率ともに高めるには十分な方法ではない。
【0006】
そこで本発明は、炭素繊維製造過程で毛羽の発生を抑え、引張強度、引張弾性率ともに高め、経済的な炭素繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を解決するための本発明の炭素繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維から得た密度1.38〜1.45g/ccの酸化繊維を、磁束密度が5テスラ以上、不活性ガス中、張力1〜50mg/dの下で、1700〜2000℃の第1段目の熱処理と続いて2000〜3000℃の第2段目の熱処理を行うことにより炭化および黒鉛化することを特徴とする。
【0008】
前記磁場の印加は、繊維軸方向に平行に行うことが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
酸化繊維の製造
本発明で用いる酸化繊維の原料となるポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維には、アクリロニトリルの単独またはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の単量体およびそれらの塩類およびメチルまたはエチルエステル、アクリルアミド、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸またはそれらスルホン酸塩などの公知の共単量体とアクリロニトリルとの分子量30,000以上を有する共重合体を公知の方法により紡糸して得た繊維が挙げられる。
【0011】
このようなポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維の製造方法は公知の方法で行うことができ、例えば、次のようにして行う。即ち、前記共重合体をジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶剤、塩化亜鉛濃厚水溶液、濃硝酸水溶液、ロダン塩水溶液などの無機溶剤などに溶解し、得られた重合体溶液を、溶剤の水希釈液中または溶剤の沸点近傍の温度雰囲気中に、細孔を有するノズルを通して圧出する公知の湿式または乾式法により紡出し、次いで、脱溶媒中に2〜5倍延伸、高温水または乾燥後蒸気中でさらに2〜10倍延伸することにより、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維を得る。望ましい酸化繊維を得る目的のためには、酸化繊維の引張強度の点から、該ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維の乾強度は3グラム(g)/デニール(d)以上が好ましい。
【0012】
前記ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維の酸化処理を行うには、該繊維を200〜300℃の空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気中で10〜200mg/dの張力下で10〜100分間処理して、密度が1.38〜1.45g/ccになるように行うのが好ましい。密度が1.38g/cc以下の場合は、得られる酸化繊維の重量が大幅に減少するために経済的でない。また、密度が1.45g/cc以上の場合は低い引張強度の炭素繊維になるので好ましくない。
【0013】
前記酸化処理における酸化温度は、アクリロニトリル繊維またはアクリロニトリル系繊維の示差熱量計(DSC)で測定される発熱ピーク温度から10℃低い温度と50℃低い温度の間であることが、安定した酸化処理と均一な酸化繊維とするために好ましい。酸化処理における雰囲気は空気が経済的であり好ましいが、短時間酸化をより重視する場合は酸素または空気に酸素を30〜50体積%混合したガスが好ましい。張力は酸化繊維の目的により異なるが、特に毛羽のない高性能(高引張強度・高引張弾性率)な炭素繊維とする場合は50〜100mg/dが好ましい。酸化時間は酸化繊維の密度が1.38〜1.45g/ccになるように酸化温度を調整することが好ましい。
【0014】
酸化繊維の製造のための装置は200〜300℃に加熱可能な雰囲気ガス循環式加熱炉、管状炉などの公知の加熱炉であり、その繊維の進行方向でかつ炉の外側に繊維を供給するローラと引き取りローラを装着した公知の装置が好ましい。
【0015】
炭化および黒鉛化処理
本発明の酸化繊維の炭化および黒鉛化は、前記工程で得られた密度1.38〜1.45g/ccの酸化繊維に対して、磁束密度が5テスラ以上、好ましくは8テスラ以上、不活性ガス中、張力1〜50mg/dの下で、1700〜2000℃の第1段目の熱処理と、続いて2000〜3000℃の第2段目の熱処理により、炭化および黒鉛化を行う。
【0016】
第1段目の熱処理と第2段目の熱処理を行うことにより、引張強度、引張弾性率を共に高めた炭素繊維を得ることができる。前記第1段目と第2段目の各温度は、目的とする炭素繊維の引張強度、引張弾性率に応じて、前記した熱処理温度の範囲内で適宜選択することができる。
【0017】
原料として用いる酸化繊維の密度が、1.38g/cc未満或いは1.47g/ccを超えると引張強度と引張弾性率の低いものとなる。
【0018】
第1段目の熱処理は、酸化繊維中に黒鉛様結晶を顕著に発達させるために重要であり、その際、特に第1段目における、酸化繊維に高い磁束密度を印加することにより張力を低くできるため、毛羽の発生を抑えることができる。第1段目の熱処理において、1700〜2000℃の範囲とすることにより、繊維の軟化と分子の再配列が起こるので、この時に磁場をかけると分子の配列を促進し、結晶構造の形成を加速する。加熱温度が1700℃未満であれば、軟化および結晶の再配列が十分でなく、また、2000℃を超えると結晶が成長するのみで、磁場をかけても結晶の配列を促進しない。
【0019】
第2段目の熱処理は、2000〜3000℃の範囲とすることにより、第一段目の熱処理で分子配列を促進させたものについて結晶の成長を加速させる。第2段目の熱処理において、2000℃未満であれば、分子が配列するだけで結晶の成長は十分でない。また、3000℃を超えると、ガス化が進み、繊維としてもろく強度が低くなる。また、第2段目の熱処理における磁場の印加は第1段目の熱処理時の磁場の印加の場合と同様に毛羽の発生を抑えるために有効である。
【0020】
繊維の熱処理時の保持時間が長いと引張強度の低下を伴うことから、より高性能(高引張強度、高引張弾性率)な炭素繊維とするため、且つ経済的な観点から、第1段目の加熱時間は1〜5分、第2段目の加熱時間は、1〜20分が好ましい。
【0021】
第1段目および第2段目の熱処理時の張力は、毛羽のない高引張強度、高引張弾性率の炭素繊維とするためには、1〜50mg/dが好ましい。張力が1mg未満であると引張強度および引張弾性率が低下し、また、縮んだり、カール等を発生する。50mg/dを超えると、折れたり、毛羽の発生が生じるので好ましくない。
【0022】
第1段目および第2段目の熱処理時の磁場は、高引張強度・高引張弾性率の炭素繊維とする場合は5テスラ以上、好ましくは8テスラ以上、特に、10テスラ以上の磁束密度が好ましい。磁場が5テスラ未満であると、得られる炭素繊維の引張強度および引張弾性率が低いものとなる。
【0023】
磁場の方向は繊維軸と平行、または、垂直のどちらでも効果的であるが、特に、繊維軸方向と平行に磁場を印加することによって、繊維中の炭素6員環網平面で構成される黒鉛様結晶のc軸が繊維軸と垂直方向に、より配列するため、引張強度、引張弾性率は磁場を印加しない場合に比べて高く出来る。また、磁場を印加することによって、磁場を印加しない場合に比べて低い張力でも得られた炭素繊維の性能を高く(高引張強度・高引張弾性率)できるため、毛羽のない高性能な炭素繊維が得られる。
【0024】
黒鉛化時間に伴って引張弾性率が向上するが長時間の黒鉛化では繊維表面の劣化が起こり引張強度が低下するので黒鉛化時間は2〜25分が好ましい。
【0025】
本発明で用いられる炭素化・黒鉛化のための装置は、炭素化・黒鉛化処理における800〜3000℃に加熱可能な雰囲気ガス導入式電気管状炉などの炭素繊維を製造するために用いられる公知の加熱炉にその外側に繊維を供給するローラと繊維引き取りローラを装着した装置である。特に、本発明で用いられる黒鉛化のための装置は、磁場を印加する場合は繊維を通過させる部分の外側に磁場に影響されない炭素などの発熱体を配置した構造、またはレーザ光線で直接加熱する構造、または炭素均熱材にレーザを照射して加熱して間接的に繊維を加熱する構造と、さらに、その外側に磁場を発生する磁石を配置した構造の管状炉型が好ましい。磁石は省電力に優れている超電導磁石が好ましい。
【0026】
図1は、本発明の炭素繊維の製造方法に使用する酸化繊維を製造するための横型の酸化繊維製造装置の概略図である。図1において、1はポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維から選ばれた原料繊維であり、繊維供給ローラ9に巻回されている。原料繊維1は、石英管7の繊維導入口11に導入され、石英管7内を通過して繊維排出口12より排出されて繊維引き取りローラ10に巻回される。石英管7は、繊維排出口12の近傍にガス流入口2と、繊維導入口11の近傍にガス排出口3を有し、ガスは繊維の移動方向に対してガスの流れ方向は向流となっている。石英管7の外側にニクロム線等の加熱装置8が装着されている。加熱装置8が装着された石英管7のさらに外側には、水流入口4と水流出口5を有する水冷ジャケット式石英管6が配置されており、水流入口4は前記繊維の移動方向の上流側に、排水口5は前記繊維の移動方向の下流側に配置されて、冷却水の流れは繊維移動方向と同方向となっている。
【0027】
図2は、本発明の炭素繊維の製造方法に使用するための横型の炭化・黒鉛化装置の概略図である。図2において、31は酸化繊維又は第1段目の熱処理の終了した繊維であり、繊維供給ローラ28に巻回されている。
【0028】
繊維供給ローラ28に巻回されている繊維31は、炭化・黒鉛化装置の中心軸部分に繊維31の導入口21側と出口22側とに分断されて配置されている2個の水冷ジャケット式銅管19、20の内管13−1、13−2を通過するように、内管13−1の一端のガス出口22から導入され、内管13−2の他端のガス導入口21から排出され、繊維引き取りローラ29に巻回される構造となっている。ガスの流れに対して繊維の移動方向は向流である。
【0029】
前記2個の水冷ジャケット式銅管19、20の間は、特に磁場が印加される場所であり、この部分には、中心軸部分に繊維31とガスが通過するためための黒鉛管23と、該黒鉛管23の外側に黒鉛粒子層24と、該黒鉛粒子層24の外側を包囲するアルミナ管25からなる磁性管が配置されている。図2におけるA−A′の断面図を図3に示す。黒鉛管23の一方の端が水冷ジャケット式銅管19の内管13−1に、他端が水冷ジャケット式銅管20の内管13−2に連通されており、内管13−1及び13−2にねじ込んで接続されている。
【0030】
炭化・黒鉛化装置の繊維とガスの通路における、黒鉛管23以外の通路を冷却できるように、2つの水冷ジャケット式銅管19、20は、水流入口15、17と水流出口16、18を有する。さらに該水冷ジャケット式銅管19、20を被うようにアルミナ管26を配置し、さらにその外側に水流入口32と水流出口33を有する水冷ジャケット式石英管14を配置し、さらにその外側を超電導磁石27のボアーが被うように超電導磁石27を配置して、炭化・黒鉛化装置を構成する。
【0031】
【実施例】
〔比較例1〜3〕
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記実施例に限定されるものではない。本発明で記載される密度はアセトンを用いたアルキメデス法により測定したものである。尚、特に指定しない限り%は重量%で記載する。
【0032】
酸化繊維の製造
アクリロニトリル95%とアクリル酸メチルエステル4.5%からなる重合体を60%塩化亜鉛濃厚水溶液に溶解し、9%の重合体溶液を得た。この溶液を25%の塩化亜鉛水溶液中に孔径0.06mmで12000ホールのノズルを通して圧出し、水洗して脱溶媒中に2.5倍延伸し、乾燥後105℃の飽和水蒸気中で5倍延伸して繊維特性が単繊維直径9.5ミクロン、繊維本数12000本、引張強度492MPa、引張弾性率91GPaのポリアクリロニトリル系繊維を得た。
【0033】
酸化繊維製造装置は図1に示すものを用い、該装置の加熱装置8にはニクロム線によるものを用い、長さ1000mm、内径15mmの石英管7の外周に、繊維導入口11または繊維排出口12からそれぞれ400mmのところまでを除いて、巻き付けて加熱装置8を構成した。図1に示す酸化繊維製造装置の繊維導入口11から、前記工程で得られたポリアクリロニトリル系繊維を導入し、一方、ガス流入口12から炉内に2.5L/分の空気を導入して流動させながら、255℃、張力65mg/dで、糸速度の調整により75分間加熱して密度が1.40g/ccの酸化繊維Aを得た。
【0034】
炭素繊維の製造
次いで、該酸化繊維Aを炭化・黒鉛化装置(図2)を用い、次のように処理して炭素繊維とした。該炭化・黒鉛化装置において、黒鉛管23には、長さ500mm、内径8mmのものを使用した。該炭化・黒鉛化装置での磁場は黒鉛管23の発熱部分の20cmの間で磁束密度12テスラで繊維と平行に印加した。
【0035】
不活性ガスのアルゴンはガス導入口21から導入し、黒鉛管23を通して、ガス出口22から排出した。黒鉛管23の内部空間を2100℃に保持し、黒鉛化時間については繊維31を黒鉛管23内を通糸して所定の温度領域を通過する時間とし、糸速度により調整し、本実施例、比較例では20分間とした。また、黒鉛化処理時の繊維31に印加する張力は酸化繊維を巻回しているボビン(繊維供給ローラ28)の回転を制御して20mg/dとなるように調整した。得られた繊維を炭素繊維A12(比較例1)とした。
【0036】
前記比較例1の工程において、黒鉛化時の加熱炉に磁場を5テスラとする以外は前記比較例1と同様にして炭素繊維A5(比較例2)を作製した。
【0037】
また、前記比較例1の工程において、黒鉛化時の加熱炉に磁場を印加しない以外は比較例1と同様にして炭素繊維A0(比較例3)を作製した。
【0038】
得られた比較例1〜3の炭素繊維について、単繊維の引張強度、引張弾性率を測定した。引張強度、引張弾性率は、試料長さ50mm、引張速度1mm/分で25本測定した平均値で評価した。また、炭素繊維の毛羽を目視で判定した。その結果を下記の表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 0004077980
【0040】
表1によれば、比較例1、比較例2、比較例3の炭素繊維の毛羽は少なく良好であったが、単繊維性能は比較例1の炭素繊維の方が比較例2、比較例3の炭素繊維に比べて高い引張強度、引張弾性率を示し、特に、引張強度が極めて高いことが特徴的である。前記工程のように磁場を印加して黒鉛化することによって引張弾性率が向上するのは、炭素6員環網平面構造が磁場によって配列したこと、繊維から排出される酸化性ガスや、酸化処理における雰囲気中の微量酸化性ガスが磁場により繊維との反応を抑制されたことなどが考えられる。
【0041】
〔比較例4、5〕
酸化繊維の密度がそれぞれ1.36g/cc、1.47g/ccとなるように酸化時間を調整する以外は前記比較例1と同様にして酸化繊維を製造した。得られた酸化繊維B(1.36g/cc)および酸化繊維C(1.47g/cc)を、さらに、前記比較例1と同様にして黒鉛化してそれぞれ炭素繊維B0(比較例4)、炭素繊維C0(比較例5)を得た。これらの炭素繊維について比較例1と同様にして単繊維の引張強度、引張弾性率を測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004077980
【0043】
表2に示すように、比較例4および比較例5は比較例1に比較して低い引張強度、引張弾性率であり劣っていた。
【0044】
〔実施例1、比較例6、比較例7〕
図2の加熱炉を1800℃、加熱時間3分とする以外は前記比較例1と同様にして第1段目の熱処理により炭素繊維Xを製造し、また張力を80mg/dとする以外は炭素繊維Xと同じようにして第1段目の熱処理により炭素繊維Yを作製した。これらの炭素繊維Xおよび繊維Y、並びに前記比較例1で用いた酸化繊維Aを図2の炭化・黒鉛化装置の炉の温度を2600℃にし、酸化繊維Aおよび繊維Xの場合は張力を20mg/d、繊維Yの場合は張力を80mg/dとする以外は比較例1と同様にして黒鉛化し、酸化繊維Aからは炭素繊維D(比較例6)、第1段目の熱処理した炭素繊維Xおよび第1段目の熱処理した炭素繊維Yからは第2段目の熱処理により黒鉛化した炭素繊維X20(実施例1)、第2段目の熱処理した黒鉛化した炭素繊維Y80(比較例7)を得た。
【0045】
これらの炭素繊維について、前記比較例1と同様にして単繊維の引張強度、引張弾性率を測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0004077980
【0047】
表3に示すように、実施例1は毛羽が少なく、高い引張強度と高い引張弾性率を示したが、比較例7は毛羽が多く問題があり、そのため引張強度、引張弾性率が高いにもかかわらず、取り扱い性、品格として問題があった。また、表3によれば、実施例1は比較例6に比べても高い引張強度を示し、磁場を印加し、1800℃で一旦加熱処理した後(第1段目の熱処理)、さらに高温で黒鉛化する方(第2段目の熱処理)が高い引張強度を示したことが分かる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維から得た密度1.38〜1.45g/ccの酸化繊維を、不活性ガス中において磁束密度が5テスラ以上、好ましくは8テスラ以上の磁場の印加並びに1〜50mg/dの張力の下で、1700〜2000℃の第1段目の熱処理と、2000〜3000℃の第2段目の熱処理を行うことにより炭化および黒鉛化しているので、高引張強度及び高引張弾性率の炭素繊維を経済的に製造することができる。
【0049】
本発明の炭素繊維の製造方法は、磁場を印加することによって、低い張力を付与するにもかかわらず、得られた炭素繊維は高引張強度・高引張弾性率であり、且つ毛羽の発生のない炭素繊維が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炭素繊維の製造方法に使用する酸化繊維を製造するための横型の酸化繊維製造装置の概略図である。
【図2】本発明の炭素繊維の製造方法に使用するための横型の炭化・黒鉛化装置の概略図である。
【図3】図2のA−A′の断面図である。
【符号の説明】
1 原料繊維
2 ガス流入口
3 ガス排出口
4 水流入口
5 水流出口
6 水冷ジャケット式石英管
7 石英管
8 加熱装置
9 繊維供給ローラ
10 繊維引き取りローラ
11 繊維導入口
12 繊維排出口
13−1、13−2 内管
14 水冷ジャケット式石英管
15、17、32 水流入口
16、18、33 水流出口
19、20 水冷ジャケット式銅管
21 ガス導入口
22 ガス出口
23 黒鉛管
24 黒鉛粒子
25、26 アルミナ管
27 超電導磁石
28 繊維供給ローラ
29 繊維引き取りローラ
31 繊維

Claims (2)

  1. ポリアクリロニトリル繊維またはポリアクリロニトリル系繊維から得た密度1.38〜1.45g/ccの酸化繊維を、不活性ガス中において磁束密度が5テスラ以上の磁場の印加並びに1〜50mg/dの張力の下で、1700〜2000℃の第1段目の熱処理と続く2000〜3000℃の第2段目の熱処理を行うことにより炭化および黒鉛化することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. 前記磁場の印加は、繊維軸方向に平行に行うことを特徴とする請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
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