JP4077772B2 - 廃棄物処理炉の生成ガス処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、事業用発電ボイラー、例えば石炭焚きあるいは石油焚きボイラーに廃棄物処理炉の生成ガスを処理して化石燃料の代替品として事業用発電ボイラーに供給して化石燃料と混焼させる、廃棄物処理炉の生成ガスの処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境問題、特にCOによる地球温暖化現象が一段と注目されている。このため、化石燃料からの燃焼に由来するCOを削減することが目標として掲げられることとなった。
【0003】
このような状況下において化石燃料の燃焼に由来するCO 排出量を低減させる技術として化石燃料を「カーボンニュートラル」なバイオマスエネルギーで一部代替すること、具体的には化石燃料と廃棄物(バイオマスまたはバイオマスを一部含んだ都市ごみ)を事業用発電ボイラーで混焼する技術が広く注目され始めている。
【0004】
一方、上記の視点とは別に、可燃分を含みながらも通常埋立処分されていた産業廃棄物を化石燃料と混焼させることで積極的にエネルギー回収する技術も広まりつつある。
【0005】
しかしながら本技術では一般的に以下のような課題がある。
【0006】
(1)廃棄物を燃焼する際に廃棄物中のNaCl、KCl等の塩化物が飛散し、かつ混在している塩化ビニル等の有機物中塩素から高濃度のHClガスが発生する。ボイラーで廃棄物を化石燃料と混焼する場合、これら塩化物がボイラー管に付着すると同時に高濃度のHClガスがボイラー管群を通過するため、ボイラー管の高温腐食が進行する可能性が高い。この高温腐食を回避するために廃棄物を混焼する場合、その化石燃料に対する混焼比率に制限が設けられている。
【0007】
一般的な発電用ボイラーの主蒸気温度は500℃以上、主蒸気圧力は 100ata以上であるが、この蒸気条件下において過熱蒸気管の高温腐食を回避するためには廃棄物と化石燃料との混合燃料中のNa、Kの合計濃度を0.1%以下、また塩素濃度を0.3%以下にする必要がある。
【0008】
(2)廃棄物中に塩素が存在するため、多量に混焼した場合、ボイラーのガス温度300〜500℃の冷却部分でダイオキシン類が発生する可能性が高い。このダイオキシン類の排出を抑制するためには高度な排ガス処理設備や灰処理設備を既設のボイラーに追加して設置する必要がある。
【0009】
これらの課題に対処するために、例えば特許文献1では廃棄物を破砕した上で乾燥炉、熱分解炉で処理することで熱分解ガスとチャーを生成させ、そのうちのチャーのみを燃料として使用する方法が提示されている。この方法では熱分解ガスはガスバーナで燃焼され、熱分解炉及び乾燥炉の熱源として利用される。その排ガスはボイラーの排ガス処理系とは別に単独で排ガス処理された上で大気中に排出される。
【0010】
また、特許文献2は特許文献1と同様に廃棄物を破砕した上で乾燥炉、熱分解炉で処理することで熱分解ガスとチャーを生成させる方法をとっており、このうちのチャーを粉砕、水洗することで塩化物等の可溶性成分を分離し更に乾燥させた上で燃料として使用する方法が提示されている。
【0011】
更に特許文献3ではガス化装置により生成されるガスについてセラミックフィルター、酸性ガスの中和器、集じん器を通過させることで精製、無害化される方法が提示されている。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−283431号公報
【0013】
【特許文献2】
特開2001−327950号公報
【0014】
【特許文献3】
特開2003−159508号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特許文献1の方法では塩化物を含有したチャーを直接ボイラーで燃焼させるため上記の高温腐食やダイオキシン類の生成という課題が残り、化石燃料との混焼率が向上する可能性は低い。
【0016】
また特許文献1,2の方法は共に廃棄物を化石燃料と混焼するまでの前処理工程に廃棄物の破砕機、乾燥炉、熱分解炉が必要となり設備構成が極めて複雑である。更に熱分解ガスを十分に精製することなく直接燃焼し、その燃焼排ガスで熱分解炉と乾燥炉を加熱する前提であるが、燃焼排ガスに随伴されるダストが各炉の外壁面に付着し伝熱効率が低下することやダスト中の塩化物に起因した高温腐食が進行し長期運転が困難となることも懸念される。
【0017】
また該燃焼排ガスのために単独の排ガス処理設備が必要である。その上、熱分解炉は間接加熱式のロータリーキルンが前提であるため熱分解炉で生成されたチャーの粒径は大きく、ボイラーに利用するためには別途粉砕処理する手段が必要である。
【0018】
特許文献2の方法では熱分解炉から排出されたチャーを粉砕した上で水洗及び脱水処理することでチャー中の塩化物を除去する方法を取っている。しかしながらチャーには熱分解ガス中のタール分が付着しているため、疎水性であり、単純な水洗処理では含有している塩化物の抽出率は低いままの可能性が高い。
【0019】
特許文献3の方法ではガス化装置から生成されたガス中の塩化物やHClの除去率は高いことが想定されるが、ガスから除去されたダストの処理について方法が提示されておらず、ダスト中に含まれるチャーが燃料として有効利用されない可能性が高い。また高度な集塵手段であるセラミックフィルターと集じん器(バグフィルターまたはセラミックフィルターで構成)を併用しているためガス精製の過程でガスの圧力損失が高まり操業に支障が生ずる懸念もある。
【0020】
本発明は以上の課題を解決するものであり、より簡易な装置構成で廃棄物をガス化し、精製されたガス化ガスと脱塩処理された残さを化石燃料の代替品として使用することで化石燃料との混焼率を増加させると同時にダイオキシン類の排出を未然に防ぐことを目的としたものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の廃棄物処理炉の生成ガス処理方法は、廃棄物を廃棄物処理炉にて部分燃焼を伴いながらガス化し、生成されたチャーおよびガス化ガスを含む生成ガスをサイクロンで粗集じんし、該粗集じん後のガス化ガスを脱塩処理して得られた清浄ガスと、前記脱塩処理で得られたチャーを含む脱塩残渣および前記粗集じん後のチャーを洗浄処理して得られる脱塩ケーキとを化石燃料の代替品として事業用発電ボイラーに供給し、化石燃料と混焼させる、廃棄物処理炉の生成ガスの処理方法において、前記洗浄処理が、前記脱塩残渣を水洗浄する過程において、脱塩残渣1kgに対し、0.1〜100gの界面活性剤を添加することで脱塩残渣中塩化物の洗浄液への抽出率を高めることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の1実施例を示すフロー図である。廃棄物はまず廃棄物処理炉1にてガス化される。なお、ここで言う廃棄物とは都市ごみに限定されず、樹皮、廃木材チップ、籾殻、藁、草、厨芥、コーヒー滓、食品残さ、パルプスラッジや畜産廃棄物等のバイオマスも含むものであり、また廃プラスチック、廃タイヤ、廃電線ケーブル、カーシュレッダーダスト等の産業廃棄物も含むものである。
【0024】
本発明が対象とする廃棄物処理炉は部分燃焼を伴いながら廃棄物をガス化するシャフト炉、流動層炉、循環流動層炉である。シャフト炉においては、炉内に投入された廃棄物が順次、乾燥、乾留、部分燃焼という過程を経てガス化される。この過程において廃棄物中の固定炭素分は充填層自体の荷重によって圧縮されると同時に、部分燃焼の結果生成する高温ガスに曝されるため粒径100μm以下のチャーとなって炉外へ排出される。
【0025】
また流動層炉及び循環流動層炉において、炉内に投入された廃棄物は瞬時に乾燥、乾留、部分燃焼されガス化される。廃棄物中の固定炭素分は流動砂によって細かく粉砕され、シャフト炉同様に粒径100μm以下のチャーとなって炉外へ排出される。従って、これらサイズのチャーであれば何等粉砕手段を講ずることなく、そのまま燃料として使用することが可能となる。
【0026】
一方、廃棄物処理炉が特許文献1,2に示すロータリーキルンの場合、まずガス化性能を向上させるために前段の乾燥炉で廃棄物を乾燥処理している。続いて廃棄物処理炉内で廃棄物はガス化し、縮小していくが、物理的な粉砕力を殆ど受けないため固定炭素分の粒径が大きく、例えば4〜5cm角のサイズのチャーが排出される。その結果、このチャーを燃料として事業用ボイラーに供給するためには別途破砕手段が必要となる。これらの手段を省略するためにも廃棄物処理炉はシャフト炉、流動層炉、循環流動層炉であることが好ましい。
【0027】
ガス化の操作条件としてシャフト炉、流動層炉、循環流動層炉ともに空気比は0.15〜0.7であり、ガス化剤としては空気を主体とするが必要に応じて予熱空気や酸素、水蒸気が使用される。廃棄物に混入している金属類やガレキ等の異物はシャフト炉の場合、溶融物として排出され、流動層炉及び循環流動層炉の場合、その形状を保ったまま排出される。
【0028】
ガス化処理によって廃棄物中の塩素のうち、NaCl、KCl等の無機塩素は塩化物としてガス化ガス中のチャーに移行する。有機塩素分は主としてガス化ガス中のHClに移行する。
【0029】
ガス化ガスは続いてサイクロン2で粗除じんされた上で脱塩装置3に導入される。脱塩装置3は主としてセラミックフィルター4で構成されている。脱塩剤5としてはアルカリ系薬剤である石灰石、消石灰、生石灰、重曹等が使用され、これらの脱塩剤5がセラミックフィルター上で脱塩ケーキ層6を形成する。この脱塩ケーキ層6でガス化ガス中のHClガスが中和除去される。またセラミックフィルター4でろ過されることでガス化ガス中のチャーが除去され、清浄なガス化ガスが得られる。脱塩装置3前後でのガス性状の比較例を表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0004077772
このガス化ガスはボイラー7に送られ燃料として燃焼される。脱塩装置3の内部温度は300〜750℃の温度範囲で管理される。300℃以下ではガス化ガス中に含まれる微量なタール分がフィルター上で固着する可能性がある。一方、750℃以上では塩化カルシウム等の中和生成物が分解し、HClガスが再放出される可能性がある。ガス化ガスの温度がこの領域を下回った場合、廃棄物処理炉1の空気比を上げるか、あるいは予熱空気の温度を上げる措置をとりガス化ガスの温度を上昇させる。また上回った場合、廃棄物処理炉1の空気比を下げるか或いは必要に応じて水噴射することによって冷却する手段を取る。
【0031】
セラミックフィルター4上の脱塩ケーキ層6はボイラー7の高圧蒸気または窒素ガスで間欠的に逆洗されるため圧力損失は一定に保持される。逆洗の結果、脱塩ケーキ層6から剥離したチャーと中和生成物の混合物が脱塩残さ8として排出される。
【0032】
脱塩装置3によってガス化ガスから除去された脱塩残さ8は洗浄装置9に移さる。またサイクロン2によって粗除塵されたチャー21も篩い10によって異物11が除去された上で洗浄装置9に移送される。洗浄装置9に界面活性剤22を添加した上で水洗されることで混合物中の塩化物が抽出される。続いて混合物のスラリー12は脱水装置13にて脱水され、脱塩ケーキ14と洗浄排水15に分離される。表2に脱塩ケーキ14の組成例を示す。また本処理過程による脱塩残さ8中のNa、K、Clの除去率の例を図2に示す。
【0033】
【表2】
Figure 0004077772
脱塩ケーキ14はそのままボイラー7に移送される。ボイラー7の型式が微粉ボイラーや石油焚きボイラーの場合は高圧蒸気または圧縮空気で微粒化されて炉内に噴霧される。流動層または循環流動層ボイラーの場合、ケーキ状態のままで炉内に供給可能である。炉内温度は通常800℃以上あるため、脱塩ケーキ14中の水分は瞬時に乾燥し、また脱塩ケーキ14中の可燃分も化石燃料の火炎帯を通過する際に瞬時に燃焼される。ボイラー7の排ガスは排ガス処理装置18、IDF19を経て煙突20から放散される。
【0034】
塩化物を含んだ洗浄排水は無害化装置16にて処理された上で放流される。上記のように脱塩装置3によって清浄化されたガス化ガスと塩化物を抽出除去した脱塩ケーキ14を混焼するため、ボイラー7の過熱蒸気管の高温腐食やボイラーの300ないし500℃温度雰囲気におけるダイオキシン類生成の可能性を著しく低減でき、その結果、混焼率も向上できる。
【0035】
図3は化石燃料の一つである石炭と都市ごみとの重量ベースの混合率と混合燃料中の塩化物中Na、K濃度及び塩素濃度の対比例である。都市ごみを脱塩処理していない場合、混合率 20%でNa、Kの合計濃度が0.1%に達するためこれ以上混焼率を上げられないが、脱塩処理した場合、混合率を50%まで上げられる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の効果は次の通りである。
【0037】
(1)都市ごみやバイオマス、産業廃棄物をガス化炉にてガス化し、生成したガス化ガスやチャー中の塩素分を除去する結果、化石燃料焚きボイラーに適用可能な燃料を取得することが可能である。
【0038】
(2)上記の結果、ボイラーにおける化石燃料との混焼比率の制約が緩和され、化石燃料使用量が低減でき、化石燃料由来のCOも低減できる。
【0039】
(3)有機塩素分や塩化物が除去された清浄ガスや脱塩ケーキを化石燃料と混焼するためボイラー管の高温腐食を回避でき、化石燃料を単独で使用した場合と同じ蒸気条件で運転可能である。
【0040】
(4)既に存在しているボイラーの近傍で都市ごみやバイオマスをガス化し、その結果得られた燃料をボイラーで混焼するため、都市ごみやバイオマスを単独で燃料として使用するボイラーを新規に設置するよりも設備費を低減できる。
【0041】
(5)上記の燃料を化石燃料と混焼するため、燃焼の結果発生するダイオキシン類が少なく活性炭吸着層や飛灰の加熱脱塩素装置等の高度な排ガス、灰処理設備を設置する必要がない。
【0042】
(6)本方式は石炭焚きボイラーのうち、微粉炭ボイラー、流動層ボイラー、循環流動層ボイラーのいずれの型式にも適用可能であり、重油を燃料とする石油ボイラーにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1実施例を示すフロー図である。
【図2】 本処理過程による脱塩残さ中のNa、K、Clの除去率の例を示すグラフである。
【図3】 化石燃料の一つである石炭と都市ごみとの重量ベースの混合率と混合燃料中の塩化物中Na、K濃度及び塩素濃度の対比例である。
【符号の説明】
1:廃棄物処理炉
2:サイクロン
3:脱塩装置
4:セラミックフィルター
5:脱塩剤
6:脱塩ケーキ層
7:ボイラー
8:脱塩残さ
9:洗浄装置
10:篩い
11:異物
12:スラリー
13:脱水装置
14:脱塩ケーキ
15:洗浄排水
16:無害化装置
17:化石燃料
18:排ガス処理装置
19:IDF
20:煙突
21:チャー
22:界面活性剤

Claims (2)

  1. 廃棄物を廃棄物処理炉にて部分燃焼を伴いながらガス化し、生成されたチャーおよびガス化ガスを含む生成ガスをサイクロンで粗集じんし、該粗集じん後のガス化ガスを脱塩処理して得られた清浄ガスと、前記脱塩処理で得られたチャーを含む脱塩残渣および前記粗集じん後のチャーを洗浄処理して得られる脱塩ケーキとを化石燃料の代替品として事業用発電ボイラーに供給し、化石燃料と混焼させる、廃棄物処理炉の生成ガスの処理方法において、
    前記洗浄処理が、前記脱塩残渣を水洗浄する過程において、脱塩残渣1kgに対し、0.1〜100gの界面活性剤を添加することで脱塩残渣中塩化物の洗浄液への抽出率を高めることを特徴とする廃棄物処理炉の生成ガスの処理方法。
  2. 前記脱塩処理がセラミックフィルターをろ過材とし、脱塩剤としてアルカリ系薬剤を使用してフィルター表面に形成されたケーキ層にてガス化ガス中のHClを中和し、ガス化ガス中のチャーを除去することで清浄ガスを生成する脱塩装置を使用し、この脱塩装置の内部温度を300〜750℃に管理することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理炉の生成ガスの処理方法。
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