JP4077534B2 - 金属の溶解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の溶解方法に関するもので、詳しくはスクラップやリターン材等の鉄(鋼を含む)原料を、酸素あるいは酸素富化空気を支燃性ガスとした酸素バーナーのみで連続して溶解処理する金属の溶解方法である。
【0002】
【従来の技術】
スクラップやリターン材等の鉄(鋼を含む)原料を溶解する方式としては、主たるエネルギー源が電気であるアーク式電気炉が多く用いられている。このような電気を利用した溶解方法は、昇温が容易で、温度管理も容易であるなどの利点を有するものの、別途に発生させた電気を使用するため、総合的な燃料の利用効率やコストの面で問題があった。
【0003】
一方、エネルギー源として前記電気に代えて、酸素あるいは酸素富化空気を支燃性ガスとする酸素バーナーで化石燃料を燃焼させ、その燃焼熱で鉄等のスクラップや製造時のリターン材等の鉄原料を溶解させることが行われている。このような酸素バーナーを利用した鉄原料の溶解方法としては、例えば特開昭56ー501810号公報、特開平2ー93012号公報、特開平5ー271804号公報、及び特開平5ー271807号公報等に記載されている。
この方法では、一般に鉄原料を酸素バーナーの燃焼火炎で溶解するとともに、高温の燃焼排ガスで原料を予熱するようにし、総合的な燃料の利用効率を向上させ、エネルギーコストを下げる努力が成されてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶解チャージ毎に原料を間欠的に溶解炉に装入して予熱を行う方式では、溶解の進行とともに予熱部内の原料は減少し、予熱効果が低下することにより、燃焼排ガスのエネルギーを十分に利用している状態ではなかった。
そこで、本発明は酸素バーナーの燃焼により生じた熱エネルギーを効率よく利用することができ、熱効率の向上、生産性の向上等が図れる金属の溶解方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属材料を予熱する予熱部を設け、この溶解部と予熱部との間に、溶解部と予熱部との内径より小さな内径を有する絞り部を設け、溶解部の底部に溶湯流路を介して酸素バーナーを備えた湯溜り部を連設するとともに、酸素バーナーを備えた保持部を溶湯流路を介して湯溜り部に連設してなる溶解炉を用い、
予熱部に金属原料を連続して投入して、溶解部で酸素バーナーで溶解せしめた後、溶湯を連続的に湯溜り部に流出させ、湯溜り部で酸素バーナーで昇温して溶湯状態を保持し、保持部に流下させ、適宜所定量の溶湯を間欠的に出湯させる際に、
溶解部と湯溜り部との各々の酸素バーナーの投入熱量の比を2〜5とすることを特徴とする金属の溶解方法である。
請求項2に記載の発明は、保持部での溶湯保持のための酸素バーナーの燃焼火炎中に精錬フラックスを投入することを特徴とする請求項1に記載の金属の溶解方法である。
請求項3に記載の発明は、保持部の溶湯面上の溶融スラグに炭材を投入し、溶融スラグをフォーミングさせながら、フォーミングスラグ中で保持部の酸素バーナーを燃焼することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属の溶解方法である。
請求項4に記載の発明は、予熱部に酸素または空気を供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の金属の溶解方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は、本発明において使用される金属の溶解炉の一例を説明する断面図である。この溶解炉は酸素または酸素富化空気を支燃性ガスとして酸素バーナー1、2、3をそれぞれ備えた溶解部4、溶解部4で溶解した溶湯を溜める湯溜り部6、そして溶湯を保持して貯湯し適宜出湯出来るようにした保持部7を連設するとともに、前記溶解部4の上部に絞り部12を介して排熱利用する予熱部5を連設したものである。そして、金属の投入ー溶解ー出湯を連続的に操業可能とするとともに、溶解や溶湯を保持のために投与する熱の排熱を有効活用することを可能とした、鉄(鋼を含む)のスクラップやリターン材等の鉄原料を溶解再生するための溶解炉である。
【0008】
図1において、酸素バーナー1を備えた溶解部4の上部に絞り部12を介して予熱部5を一体的に連設し、また前記溶解部4の底部には溶湯流路8を介して酸素バーナー2を備えた湯溜り部6が連設されている。そして更に該湯溜り部6には溶湯流路9を介して、溶湯を保持して貯湯するための酸素バーナー3と適宜出湯するための出湯口10を備えた保持部7が連設されている。
【0009】
前記絞り部12は、予熱部5から溶解部4に落下する原料の落下速度を制御するために設けられるものであり、溶解部4及び予熱部5の各内径よりも小さな内径で形成されている。そして、この絞り部12と大きな径の溶解部4及び予熱部5との結合部は、図1に示すように斜辺部13a、13bを形成したコーン状とすることが好ましい。なおこの部分を曲面で接続すると、耐火物を内張りして形成する炉では、耐火物の内張り作業が面倒になる。また、斜辺部13a、13bが垂直に近くなると炉の高さが高くなり、一方、水平に近くなるとデッドスペースが生じて、熱効率や操業性に悪影響を及ぼすことがある。このようなことより溶解部4の天井部の斜辺部13bは水平線に対して20〜60度程度の傾斜とし、予熱部5の底部の斜辺部13aは水平線に対して20〜70度程度の傾斜に設定することが望ましい。
【0010】
次に前記溶解部4の酸素バーナー1の取り付け位置は、溶解部の大きさなどに応じて炉壁の垂直部あるいは前記天井部の斜辺部13bの部分の適当な位置に設置することが好ましい。この酸素バーナー1は溶解部4内に落下した原料を底部全体で迅速に溶解し、溶解した金属の溶湯を再凝固させないで溶湯流路8を経て湯溜り部6に流出させることが出来るように、溶解部4の周囲に複数本を火炎噴出方向が溶解部4の底部に向くようにして設けている。なお、重油や微粉炭等の燃料と支燃性ガスとは図示しない経路から同様に溶解部4に導入されている。
【0011】
また、湯溜り部6には、溶解部4から溶湯流路8を介して流出した溶湯を再凝固しないように、重油や微粉炭等の燃料と支燃性ガスとがそれぞれ導入された酸素バーナー2による加熱手段が備えられている。そして、その形状は溶湯流路8を流れる溶湯面より低い位置に一定量の溶湯が溜められるような円筒状、方形状の容器形状を形成している。
【0012】
更に前記保持部7は、溶湯が前記湯溜り部6より自然落下するように、湯溜り部6より低い位置に設置されてる。その形状は、一般的な保持炉と同様に円筒状、方形状等の容器形状に形成され、その底部には開閉可能な栓体10aを備えた出湯口10が設けられている。この保持部7に設けられる酸素バーナー3は、湯溜り部6から溶湯流路9を介して流入した溶湯を昇温したり、各種合金添加時の熱補償や成分調整時の加熱等を行うために使用するもので、必要に応じて1本または複数本が保持部7内に装入され、前記同様に重油や微粉炭等の燃料と支燃性ガスとがそれぞれ導入される。
【0013】
なおまた、前記溶湯流路8、9は、それぞれ湯溜り部6の酸素バーナー2及び保持部7の酸素バーナー3の燃焼排ガスを排出する排ガス流路を兼ねており、酸素バーナー2及び3の排ガスは、溶湯流路8及び9を溶湯流れに対向して流れて溶解部4に流入し、更に絞り部12を経て予熱部5に至り投入される金属原料を予熱して蓋体11に設けた出口11aから排出される。
【0014】
このような、金属の溶解炉にあっては、溶解部の上部に絞り部12を介して予熱部5を連設することにより、予熱部5から溶解部4に落下する原料の量を適当な速度に制御することができるので、従来の鉄格子のような原料投入量を制御する機器を設ける必要がなく、簡単な構造の溶解炉でスクラップ等を効率よく溶解処理することができ、炉の構造の簡略化により製造コストや保守コストの低減が図れるとともに、熱効率の向上や溶解時間の短縮も図れる。
【0015】
次に、前記金属溶解炉を使用して、金属の溶解をする方法の実施の形態について説明する。本発明の金属の溶解方法は、上記[予熱部5]ー[絞り部12]ー[溶解部4]よりなる溶解炉部分に[湯溜り部6]及び[保持部7]とを一体に連結して形成した溶解炉を使用して酸素バーナーの燃焼火炎で鉄原料を溶解するものである。そして原料や溶湯を酸素バーナーの燃焼排ガスと向流接触させて排ガスが有する熱エネルギーを有効に利用し、熱効率の向上を図り、溶解に必要な燃料及び酸素の使用量を大幅に削減するとともに、生産性の向上を図るものである。
【0016】
また、湯溜り部6及び保持部7内で燃焼している酸素バーナー2及び3から溶湯への伝熱は、そこでの溶湯面が平滑であるため、それ程大きくなく、それ故湯溜り部6及び保持部7で加熱を必要とする溶湯の加熱に関しては、熱効率が高くない。しかし、酸素バーナー2及び3の排ガスの熱は、排出過程で溶解部4から予熱部5内のスクラップに伝熱されるため、溶解処理工程での全体的熱効率は低下しないことになる。なお、湯溜り部6、溶湯流路9及び保持部7内の溶湯が、温度低下のため再凝固の懸念がある場合には、湯溜り部6及び保持部7内の酸素バーナー2及び3の代わりに、加熱効率の高いアーク発生電極を備えたアーク加熱を実施すれば、更に効率良く溶解を行うことができる。
【0017】
即ち本発明の金属の溶解方法は、予熱部5に連続的に原料を装入するとともに、溶解部4で溶解した溶湯を連続的に湯溜り部6流出させ、溶湯を加熱して溶湯状態を保ち、そしてこの溶湯を連続的に保持部7に流出させ、保持部7では溶湯状態を保つよう加熱してこれを保持するとともに、間欠的に所定量出湯するように運転する。これにより、予熱部5から絞り部12を経て溶解部4に至る経路に、対向して流れる排ガスにより曝される状態に、常に適当量の原料が存在するので、排ガスの熱エネルギーを原料に効率よく回収できる。それ故、湯溜り部6や保持部7が設置されておらずに、溶解部4内のみで溶解処理した溶湯を出湯する従来の溶解炉のようなバッチ方式の炉では、予熱部5及び絞り部12内に原料が存在しない時期があって、予熱部5や絞り部12で熱回収がされないような事態が生ずるが、本発明の方法ではこのようなことはなく、常に排ガスの熱エネルギーを原料の加熱に利用し回収している。
【0018】
次に上記した本発明の金属の溶解方法を実施するにあたり常に安定した状態で操業されることが重要である。特に溶解部4で生成される溶湯を湯溜り部6へ搬送したり、また湯溜り部6から保持部7へ搬送するにあたっては、常に安定した状態を保って流出させることが重要である。これには、予熱部5から絞り部12を経て溶解部4に落下した原料を、酸素バーナー1で迅速に溶解し、温度の低い溶湯を湯溜り部6へと流入させ、湯溜り部6内の酸素バーナー2により加熱して、溶湯が溶湯流路9を安定した状態を保って流通する温度に昇温せしめる必要がある。このためには、原料の溶解部4への落下速度と溶解速度とのマッチングや溶解した溶湯の溶解部4から湯溜り部6への流出速度と湯溜り部6から保持部7への流出速度とをマッチングさせて操業することが重要である。
【0019】
しかるに、原料の落下速度は、溶解部4の酸素バーナー1と絞り部12との条件設定により容易に最適な速度範囲に制御することができる。一方溶解部4及び湯溜り部6からの各溶湯の流出速度をマッチングさせる問題は、本発明の連続溶解を行う場合には特に重要である。即ち、溶解部4の酸素バーナー1の燃焼量を増加して、溶解部4から低温溶湯の湯溜り部6への流出量を増加させた場合、湯溜り部6の酸素バーナー2の燃焼量をそのままにしておくと、湯溜り部6内の溶湯の加熱が追いつかず、湯溜り部6内または溶湯流路9上の溶湯は温度が低下し、再凝固を生ずることが懸念される。
【0020】
このようなことから、本発明者等はこれらを解決すべく鋭意調査検討した結果、後述する実施例に示す如く、溶解部4の酸素バーナー1での投入熱量と湯溜り部6の酸素バーナー2での投入熱量との比を2〜5の範囲、好ましくは3〜4の範囲でそれぞれの酸素バーナーを燃焼することが、安定した状態で溶湯を流出させるのに適切であることを見い出した。更に、湯溜り部6から保持部7への溶湯流路9に、保持部7で発生する高温の燃焼排ガスを溶湯と向流方向に通過させることにより、溶湯の温度低下や溶湯流路9での再凝固による詰まり現象等を防止して溶湯を安定した状態で流下させることができる。
【0021】
次に、保持部7に溶湯流路9を介して流入してくる溶湯は、酸素バーナー3により、各種合金添加時の熱補償のためや、成分調整時の加熱のために加熱されるが、この時に保持部7内に溶湯のみしか存在していない状態では、酸素バーナー3の火炎からの伝熱のみであり、それ故バーナー火炎の伝熱面積はある程度までしか大きくできないため、加熱効率に限度があり向上しない。
このようなことより、保持部7での加熱効率の向上を図るため、図2に図示する如く、保持部7の溶湯表面上に溶融スラグ14層を形成させ、該溶融スラグ14層中で酸素バーナー3の火炎を発生せしめて、溶融スラグ14層と燃焼火炎との伝熱面積を増大せしめるようにして、加熱効率の向上が成し得るものであることに着目した。
【0022】
しかしながら、溶融スラグ14層で酸素バーナー全体の火炎を発生させると、溶融スラグ14層の厚みがかなり厚くなり、そのための造滓材の投入量が増大し、またこれを溶解するための熱エネルギーも増大し、この結果製造コストの増大をもたらすこととなる。かかる点に鑑み、溶融スラグ14層中に炭材投入ランス15を介して炭材を投入し、溶融スラグ14層中の鉄酸化物等の還元成分と炭材とを連続的に反応させ、発生ガスにより該溶融スラグ14層をフォーミングさせることにより、溶融スラグ14層の見かけ上の体積が増加するため、燃焼ガスと溶融スラグ14層との熱交換効率が向上し、溶融スラグ14層を介して間接的な溶湯の昇温を効率良く行うことができる。
【0023】
即ち、酸素バーナー3からの燃焼火炎は、フォーミングスラグ中を通って溶湯と衝突することにより溶湯を直接的に昇温せしめた後、フォーミンググラス中を物理的に上昇しながら溶融スラグ14層を昇温せしめるが、フォーミングにより溶融スラグ14層の見かけ上の体積が増大しているため、溶融スラグ14層中をを通過する燃焼ガスの滞留時間が長くなり、溶融スラグ14層への伝熱量が増大できる。従って、溶融スラグ14層から溶湯面への伝熱も効率よく行うことができ、保持部7内の溶湯の保持が効率よく行える。
なお、前記炭材としては、粉状、粒状のコークス等を使用することができ、その添加量は溶融金属1トン当たり1〜10kgの範囲が適当であり、添加量が少ないと十分なフォーミング状態が得られず、また反面添加量が多すぎると、炭材のコストが上昇することになる。
【0024】
また、フォーミングのためには保持部7に溶融スラグ14層を形成させる必要があるが、その方法として、例えば▲1▼溶解炉以外で溶融スラグを生成させて、これを保持部7内に投入する方法が考えられるが、ハンドリング等が煩雑であり、工業的ではない。また一方▲2▼溶融スラグの原料となる石灰等を直接保持部7内に投入する場合では、酸素バーナー3で溶解することになり、上述したような状況から溶解効率が低下し、溶融スラグを形成するためだけに多大の燃料を使用することになる。
【0025】
そこで、鋭意検討した結果、図3に図示する如き酸素バーナー30を使用して、酸素バーナーの燃焼火炎34中に、溶融スラグの原料となるフラックスをバーナーの中心の通路33を介して供給して投入し、これによりフラックスへの伝熱を向上させ、フラックスを迅速に溶融させることが可能であることに着目した。このような目的で用いる酸素バーナー30の構造は、燃焼火炎中に均一にフラックスを分散できる構造であれば良く、好ましくは図3に図示したようにバーナー30の中心部通路33よりフラックスを供給して投入し、この外周に沿って同心円状にして内外の2重円に穿孔された通路のうち、内周側通路32に燃料を供給し、外周側通路31に支燃性ガスである酸素を供給するようにしたものであり、そして燃料及び支燃性ガス34で溶融フラックス35を包み込んだ状態にした酸素バーナー30である。
このようにして保持部7で効率よく溶融スラグを形成させるとともに、溶融スラグをフォーミングさせることができて、加熱効率の優れた金属溶解の操業を達成することができる。
【0026】
また、上記した溶融スラグをフォーミングさせるとガスが発生するが、ここで発生するガスはCO(一酸化炭素)ガスであり、図1及び図2に図示した溶解炉では、必然的に溶湯流路9及び8を通り、予熱部5内の原料を予熱して排気口11aから排出される。しかし、COガスは多大なガス潜熱を含んでいて、このまま状態で排出すると、熱エネルギーを無駄に廃棄することになり、効率的とは言いがたく、また経済的に無駄な浪費となる。そこで、予熱部5の炉壁に設けた酸素吹き込み用ランス16より酸素または空気を予熱部5内に吹き込むことにより、予熱部5内を通過するCOガスをCO2 (二酸化炭素)まで二次燃焼させる。そして、これによってその燃焼熱を予熱部5内の原料に着熱させることができ、排ガスであるCOガスのエネルギーを有効に回収できる。
【0027】
また、上記発生したCOガスを予熱部5以外で燃焼させても同様な効果が得られるが、湯溜り部6や保持部7の空間で燃焼させた場合では、多大な燃焼熱のため、炉耐火物の損傷が増大することになり得策ではない。予熱部5内で燃焼させることにより、原料に着熱した分、炉耐火物への熱負荷が低減することになり、炉体構造上有利となる。ここで、予熱部5内へ吹き込む酸素または空気は、均一混合をすることを考慮すると、酸素吹き込み用ランス16を予熱部5の周方向位置に複数本、高さ方向に複数段にして設けて、吹き込むのが効果的である。
【0028】
以上のような本発明の金属の溶解方法を実施することにより、必要な時期に1溶解バッチ分の溶湯を払い出す従来の工程を活かしつつ、溶解炉部分における原料が常に所定量充填されている状況を作り出すことによって、次々に投入される新しい原料を予熱して効率的に熱回収を行うことができる。
【0029】
なお、上記各酸素バーナーに使用する燃料としては、重油以外の灯油等の液体燃料をはじめとして、プロパン、ブタン等のガス燃料や、微粉炭等の固体燃料を用いることが可能である。また、支燃性ガスの酸素ガスも、高純度のものから、純度が80%程度の比較的低純度のものまで使用することができる。なおまた、必要に応じて湯溜り部6及び保持部7の底部に攪拌用ノズルを設置して溶湯の攪拌を行ってもよい。攪拌用のガスとしては、アルゴンや窒素等を用いることができ、酸素を用いることも可能である。この攪拌は、成分や温度の制御、攪拌用ガスの制約等、状況によって使用条件等を適宜選択すればよい。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の金属の溶解方法の実施例について説明する。
[実施例1]
図2に図示した溶解炉を用いて鉄(ヘビー屑)を溶解して、金属の溶解方法の溶解性能を評価した。溶解炉の溶解部4は高さ70cm、内径90cmとし、天井斜辺部13bの傾斜角度を水平面に対して30度の天井面を形成せしめた。この溶解部に重油を燃料とし、純酸素を支燃性ガスとする酸素バーナー1を水平面に対して40度の傾斜角で3本配置した。湯溜り部6の空間は40cmの方形とし、溶湯が溜まる高さを20cmとして形成した。酸素バーナー2は前記溶解部4と同様の燃料と支燃性ガスを使用して湯溜り部6の上方より1本設置した。溶解部4と湯溜り部6間の溶湯流路8は、その断面を15cm角とし、長さを40cmとした。湯溜り部6と保持部7間の溶湯流路9は、その断面を20cm角とし、長さを40cmとした。保持部7は全高105cm、内径60cmとし、前記と同様な燃料と支燃性ガスを用いた酸素バーナー3を1本設置するとともに、底部近傍に高純度アルゴンを吹き込む攪拌用ノズルを3本設置した。
【0031】
このような仕様の溶解炉を、先ず全体の耐火物を保熱するために、溶解部4、湯溜り部6及び保持部7の酸素バーナー1、2及び3を燃焼させて耐火物を昇熱する。昇熱完了次第、前記各酸素バーナーを消火するとともに、予熱部5の上部蓋体11を開けて開口より1トンの原料を装入し、各酸素バーナー1、2及び3を燃焼させて溶解を開始した。溶解部4に溶湯が生成し、湯溜り部6に流出し始めたら、湯溜り部6の酸素バーナー2の燃料の流量を徐々に増量し燃焼させた。溶解が進行し、湯溜り部6から溶湯が保持部7に流出する段階になった時点で保持部7の酸素バーナー3の燃料流量を増量させた。
なお、上記した操業の進行中、予熱部5内の装入原料レベルが下がるに伴い予熱部5の上部より逐次連続的に追加原料を装入した。
【0032】
かくして、保持部7内に約1630℃の溶湯が約1トン溜まった時点で、溶湯を保持部7から取鍋に出湯した。このようにして溶解が連続し、出湯操作を繰り返し行うと、2回目以降から出湯時間間隔が短くなるとともに、燃料原単位等が徐々に低下し、3回目以降でこれらの値は略一定値になった。また、酸素バーナーに供給する重油の流量を変化させて、重油量の変化による溶湯生成状況の変動も確認した。溶解部4の3本の酸素バーナー1には、バーナー1本当たり毎時15〜20リットル、湯溜り部6の1本の酸素バーナー2には毎時15〜20リットル、保持部7の1本の酸素バーナー3には毎時20〜30リットルのそれぞれの流量の重油を供給した。また、酸素は酸素比が1になるように、前記各部のそれぞれの酸素バーナーに1本当たり毎時30〜40Nm3(溶解部4)、6〜10Nm3(湯溜り部6)、40〜60Nm3(保持部7)の各量を供給した。
更に、3本の攪拌用ノズルにより保持部7の溶湯中に高純度のアルゴンガスを合計で毎時約2Nm3の流量で吹き込んだ。このようにして、生成されて保持部7より出湯された溶湯の炭素含有量は0.05〜0.12%の範囲の低炭素溶鋼の成分であった。また、排ガスの温度は予熱部5の上部で650℃以下であった。 上記した金属溶解の操業の性能を評価するために、総重油供給量を90L/hr、105L/hr、120L/hrのそれぞれの状態の時の1トンの金属の溶解時間(min)、1トンの金属を溶解するに要する重油使用量(L/T)及び1時間当たりの溶解量(トン)を示す生産性(T/hr)を測定し表1に比較例と併記して示した。
【0033】
上記実施例1による本発明の金属の溶解方法の性能の評価を明確にするため、従来の溶解炉を使用して金属を溶解して、これを比較例とした。
[比較例]
比較例として使用した溶解炉は、本発明の湯溜り部6及び保持部7を設けず、予熱部4を上部にして下方に絞り部12を介して溶解部4のみで形成したものである。そしてこれらの寸法、形状等の溶解炉の諸元は実施例1の溶解炉と略同一とした。
酸素バーナーは、溶解部に3本設置し、この酸素バーナーに供給する重油は各バーナー1本当たり毎時25〜35リットルとするとともに、酸素は酸素比が1になるように毎時50〜70Nm3供給した。
この場合最初に1トンのヘビー屑を予熱部から装入して全量を溶解し、約1630℃まで昇温して出湯した。そしてこのような比較例の操業での性能として、実施例1と同様に、酸素バーナーに供給する重油の流量を変化させて、この変化による1トンの金属を溶解するに要する時間(min)、1トンの金属を溶解するに要する重油使用量(L/T)及び1時間当たりの溶解量(トン)を示す生産性(T/hr)を測定し、表1に実施例1の結果と併記して示した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1で明らかなように、実施例1の溶解炉を使用することにより、同一生産性において重油使用量が約30%減少しており、熱効率がかなり向上していることが判明した。また、同一の重油使用量で溶解した場合には、本発明の溶解炉においては比較例の溶解炉に比べて生産性が約30%向上することとなる。
【0036】
[実施例2]次に、実施例2として、実施例1の溶解炉を安定した状態で運転するため、溶解部4の酸素バーナー1の投入熱量と湯溜り部6の酸素バーナー2の投入熱量との関係が溶湯の流出挙動にどのような影響があるかを、それぞれの酸素バーナーの投入熱量を変化させて溶解を実施し検証した。用いた溶解炉と溶解方法は、上記実施例1で用いた溶解炉の諸元及び条件と同一にして行った。溶解部4の酸素バーナー1よりの重油の投入速度を毎時60〜90リットルと変化させ、また湯溜り部6の酸素バーナー2よりの重油の投入速度を毎時15〜45リットルと変化させた。ただし溶解炉全体の重油使用量は一定とした。このようにして、溶解部4の酸素バーナー1による投入熱量と湯溜り部6の酸素バーナー2による投入熱量との比率の変化による保持部7へ流出する湯溜り部6からの溶湯の出湯速度(T/hr)の変化を測定(ロードセルによる)した。その結果を図4に示す。
【0037】
図4で明らかなように、溶解部4と湯溜り部6の酸素バーナーによる投入熱量の比が2〜5の値の範囲において、湯溜り部6より保持部7への出湯速度が大きくなることを示している。この酸素バーナーによる投入熱量の比が2以下の場合、即ち溶解部4の酸素場バーナー1による投入熱量が相対的に小さくなり、このため溶解部4での溶解自体が律束され、出湯量が小さくなる。一方、この酸素バーナーによる投入熱量の比が5以上の場合には、湯溜り部6の酸素バーナー2の投入熱量が不足し、湯溜り部6での溶湯の流動性がなくなったり、再凝固が生じるようになり、保持部7への出湯速度が減少する。
このようなことより、保持部7への出湯速度を増大させ、生産性を最大限に確保するためには、溶解部4と湯溜り部6との酸素バーナー1と2による投入熱量の比が重要であり、その比を2〜5の範囲に制御することが必要であり、好ましくは3〜5の値になるよう制御すると良いことが確認された。
【0038】
[実施例3]
実施例3として保持部7における酸素バーナー3の燃焼熱を効率よく溶湯に伝熱させるため、溶湯上面にスラグフォーミングを形成することの効果、及びスラグフォーミングで発生するCOガスの予熱部5内での二次燃焼による熱利用効果について確認した。
この実施例で使用した溶解炉は図2に図示した溶解炉で、その寸法、形状及び諸元は実施例1と同様である。そして保持部7内に炭材を投入して、溶湯上面にフォーミングスラグを形成し、このフォーミングスラグ中で酸素バーナー3を燃焼させて、保持部7内の溶湯を1630℃に保持した。この時の溶解炉の溶解部4、湯溜り部6及び保持部7の各部での酸素バーナーの重油使用量(L/hr)と、1時間当たりの溶解量(T/hr)及び溶湯1トン当たりの重油使用量(L/T)を測定した。
また、これに加えて、スラグフォーミングにあたって発生するCOガスを更に予熱部5で利用してこれを二次燃焼せしめて、その熱を原料の予熱に使用した操作を含めた場合についても同様に測定した。
この結果を、上記各操作処理をしない場合を比較例として、これらを併記対比して表2に表示する。
【0039】
【表2】
【0040】
表2で明らかなように、保持部7内でスラグをフォーミングさせ、フォーミングスラグ中で酸素バーナー3を燃焼させることにより、保持部7内の酸素バーナー3の重油使用量は比較例に比べ、約50%減少をしていることを示している。また、スラグフォーミング操作に加え、これで発生したCOガスを予熱部5内で二次燃焼した場合、溶解部4での重油使用量は比較例に比べて減少しており、かつ生産性も向上していることを示している。
したがって、保持部7内の溶融スラグに炭材等を添加し、スラグをフォーミングさせ、フォーミングスラグ中で酸素バーナー3を燃焼させ、かつこれに加えて予熱部5内の排ガスを予熱部4に酸素または空気を供給して二次燃焼させることにより、燃料使用量の削減及び生産性の向上を達成することができることが確認された。
【0041】
【実施例4】
次に実施例4として、図3に図示した酸素バーナー30を保持部7に設置し、この酸素バーナー30の中心通路33よりフラックスを供給し溶融フラックスとして保持部7の溶湯面に向け放射して、保持部7の溶湯の状態や燃料の使用状況を調査した。使用した溶解炉は図2に図示したものを使用し、寸法、形状等の諸元及び条件は実施例1と同様である。
添加したフラックスはCaO、SiO2、MgOの混合物で、それぞれの混合割合(溶湯1トン当たりについて)はCaO:18kg/T、SiO2:26kg/T、MgO:7kg/Tであり、添加速度は2.0kg/minで実施した。添加のためのキャリアーガスとして窒素ガスを用いた。
これによる保持部7への重油供給量(L/hr)、フラックスの滓化時間(min)及び生産性(T/hr)を測定した。その結果を、表3にフラックスを直接保持部7の上部から一括して添加した比較例の結果と併記して表示する。
【0042】
【表3】
【0043】
表3で明らかなように、フラックスを酸素バーナーの火炎中に添加することにより、フラックスの滓化時間が短縮され、滓化が促進されており、その結果保持部7の酸素バーナーの重油使用量が減少し、熱効率が向上していることを示している。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、溶解及び保持に使用する酸素バーナーからの燃焼排ガスを原料の予熱に効率よく利用することができ、溶解に必要な燃料や酸素の使用量を大幅に削減することができ、生産性の向上も図ることができる。これにより、炉の耐火物の消耗や冷却水、ガス等の使用原単位の削減も可能になる。また、溶解炉本体や集塵機等の排ガス処理装置の容量も縮小することができる、等々経済的に極めて有利な効果を奏する。
特に、溶解部4の酸素バーナー1での投入熱量と湯溜り部6の酸素バーナー2での投入熱量との比を2〜5の範囲とすることは、溶湯を安定した状態で流出させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において使用される溶解炉の一例を説明する断面図である。
【図2】本発明における溶解方法の一例を説明する溶解炉の断面図である。
【図3】本発明における保持部に使用する酸素バーナーの一例を示す断面図である。
【図4】 溶解部の酸素バーナーの投入熱量と湯溜り部の酸素バーナーの投入熱量の比の変化に対する保持部への出湯速度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1、2、3、30…酸素バーナー、 4…溶解部、 5…予熱部、6…湯溜り部 7…保持部、 8、9…溶湯流路、 10…出湯口、11…蓋体、 12…絞り部、13…斜辺部、 14…溶融スラグ、15…炭材投入用ランス、 16…酸素吹き込み用ランス、35…溶融フラックス
Claims (4)
- 酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属材料を予熱する予熱部を設け、この溶解部と予熱部との間に、溶解部と予熱部との内径より小さな内径を有する絞り部を設け、溶解部の底部に溶湯流路を介して酸素バーナーを備えた湯溜り部を連設するとともに、酸素バーナーを備えた保持部を溶湯流路を介して湯溜り部に連設してなる溶解炉を用い、
予熱部に金属原料を連続して投入して、溶解部で酸素バーナーで溶解せしめた後、溶湯を連続的に湯溜り部に流出させ、湯溜り部で酸素バーナーで昇温して溶湯状態を保持し、保持部に流下させ、適宜所定量の溶湯を間欠的に出湯させる際に、
溶解部と湯溜り部との各々の酸素バーナーの投入熱量の比を2〜5とすることを特徴とする金属の溶解方法。 - 保持部での溶湯保持のための酸素バーナーの燃焼火炎中に精錬フラックスを投入することを特徴とする請求項1に記載の金属の溶解方法。
- 保持部の溶湯面上の溶融スラグに炭材を投入し、溶融スラグをフォーミングさせながら、フォーミングスラグ中で保持部の酸素バーナーを燃焼することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属の溶解方法。
- 予熱部に酸素または空気を供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の金属の溶解方法。
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