JP4041548B2 - 金属溶解炉及び金属溶解方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄,銅,アルミニウム等のスクラップや地金等を、酸素あるいは酸素富化空気を支燃性ガスとした酸素バーナーのみで溶解する金属溶解炉及び金属溶解方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
酸素あるいは酸素富化空気を支燃性ガスとする酸素バーナーで化石燃料を燃焼させ、その燃焼熱で鉄,銅,アルミニウム等のスクラップや地金を溶解させる金属溶解炉が知られている。このような酸素バーナーを利用した溶解炉としては、例えば、特表昭56−501810号公報,特開平1−215919号公報,特開平2−93012号公報,特開平5−271804号公報,特開平5−271807号公報等に記載されている。
【0003】
これらの溶解炉は、一般に、酸素バーナーで金属原料を溶解する溶解部と金属原料を予熱する予熱部とを備えているが、特表昭56−501810号公報や特開平1−215919号公報に記載された金属溶解炉は、溶解部の上方に開閉可能な鉄格子を介して次チャージ分の金属原料を予熱する予熱部を設けている。しかし、このように溶解部の上方に鉄格子を設けた金属溶解炉は、鉄格子が高熱に晒されるために水等で冷却する必要があり、水冷熱損失が大きいだけでなく、厳しい環境下にあるために水漏れや鉄格子の開閉に異常を生じることがあるなどの欠点を有していた。
【0004】
また、前記特開平5−271807号公報に記載された溶解炉は、いわゆる反射炉型であり、金属原料は、炉側壁に設けられた傾斜通路を通って溶解部からの排ガスで予熱されながら重力で溶解部内に投入される。しかし、この場合は、高温の排ガスが予熱部である傾斜通路の上部側空間を流れる傾向にあり、傾斜通路の下部側を落下する金属原料を十分に予熱することが困難であり、また、自然落下で金属原料を投入するために落下速度の制御も困難であった。
【0005】
一般に、金属原料の予熱部を一体に有する溶解炉においては、予熱部から溶解部への金属原料の投入速度が熱効率に大きく影響を与える。すなわち、金属原料の投入速度は、溶解部での溶解速度と略同等であることが好ましく、原料の投入速度が速すぎると溶解部の下部に溶解金属と未溶解の金属とが混在し、さらには炉底からの熱損失で溶解金属が再固化する現象が生じることもある。逆に投入速度が小さいと金属原料の投入に要する時間が長くなるために必要以上にエネルギーを消費することになる。
【0006】
また、金属溶解炉は、金属原料を溶解した後、溶解部内の溶融金属を取鍋等に出湯する必要があるが、比較的小型の溶解炉の場合は、炉全体を傾斜させて溶解部の一側に設けた出湯口から出湯するようにしている。しかし、大型の溶解炉の場合には、炉全体を傾斜させるためのスペースの問題や、駆動装置が大掛かりになるなどの問題があるため、溶解部の底部に出湯口を設けておき、炉底から出湯するようにしていた。このため、溶解部の構造が複雑になって製作コストが上昇するだけでなく、耐火物の保守等に要するコストも多大なものになっていた。
【0007】
さらに、このような金属溶解炉は、一般に多量の耐火物を使用して形成されているが、損傷による耐火物の原単位が溶解コストに影響するため、電気炉では、溶融金属が接触する炉下部を除いて水冷ジャケットによる水冷化を行っている。これは、電気炉の構造として、炉壁が略垂直に形成されていること、炉の天井部が炉底部から高い位置にあることなどの理由により、水冷ジャケットを使用しても熱損失が少ないことから可能となっている。また、酸素バーナーを用いて金属を溶解する溶解炉、例えば、特表昭56−501810号公報に記載された金属溶解炉でも一部を水冷化しているが、水冷化している部分は、垂直な炉壁部分のみである。
【0008】
このように、金属溶解炉を水冷化するには、対象部位が限られていた。特に、酸素バーナーを用いた金属溶解炉で、溶融金属の浴面から天井部までの距離が近い金属溶解炉では、溶融金属からの熱放射やバーナーからの熱放射が大きく、水冷化すると熱損失が大きいため、耐火物を利用せざるを得なかった。しかし、耐火物を使用した場合は、金属原料の溶融段階で大きな熱衝撃を受けるために耐火物の損傷頻度が高くなり、その結果、耐火物原単位が大きくなって溶解コストに大きく影響を与えていた。また、酸素バーナーの挿入口部分等の製作や修理は、極めて面倒であった。
【0009】
また、酸素バーナーを使用した金属溶解炉は、酸素バーナーの取付け位置や火炎の噴出方向も、熱効率に大きな影響を与える。すなわち、酸素バーナーによる金属原料の溶解においては、火炎による直接かつ迅速な溶解が行われるだけでなく、燃焼ガスによる金属原料の予熱も行われる。したがって、熱効率を高めるためには、燃焼ガスによる予熱を十分に行うことと、予熱した金属原料を高温の火炎で迅速に溶解することとが必要であり、溶解速度と予熱速度及び予熱部から溶解部への金属原料の投入速度をうまくバランスさせることが重要である。
【0010】
例えば、酸素バーナーの燃焼火炎の方向をある程度炉底部方向に向けることにより、溶解性能を向上させることができるが、実際の溶解炉においては、燃焼火炎の方向を炉底部に向けるために酸素バーナーを鉛直線に近い急角度で炉壁に設けることは実質的に不可能であり、バーナー挿入口の製作の問題や酸素バーナーの付属部分と炉外壁との干渉等により、酸素バーナーの取付け角度は、炉側壁においては水平線に対して10〜20度程度となっていた。このため、周辺部にデッドゾーンを生じ易く、均一に加熱することが困難であった。
【0011】
さらに、浴面より上方に設けた酸素バーナーの燃焼火炎で金属原料を溶解する場合、溶解部の金属原料が、初期の固体状態では、被加熱物が比較的低温なこともあり、伝熱上は有利であるが、溶解中期以降の液体状態あるいは固体・液体の共存状態では、被加熱物が高温になることだけでなく、浴の上面という限られた伝熱面積しか期待できないため、伝熱が極めて不利になる。したがって、この溶解中期以降の伝熱特性を改善することが、酸素バーナーのみで金属原料を溶解する際の効率を向上させる際の重要な課題となる。
【0012】
このため、特開平5−271804号公報では、バーナー燃焼により形成される高温の火炎から被加熱物に効率的に伝熱させる方法として、酸素バーナーの燃焼火炎を高速で被加熱物に衝突させることが提案されている。ところが、火炎の被加熱物への衝突条件を最適化しても、溶解中期以降は、浴面が比較的平滑になることから、伝熱面積の増加には限界があり、被加熱物に衝突して反射したガスの温度が高いため、熱ロスを生じることになる。
【0013】
そこで、本発明の第1の目的は、予熱部から溶解部への金属原料の投入速度を最適な範囲に制御することができ、酸素バーナーのみで金属原料を効率よく溶解することができる金属溶解炉を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、金属原料の予熱を効率よく行うことにより、酸素バーナーのみで金属原料を効率よく溶解することができるとともに、溶融金属の出湯も容易に行うことができる金属溶解炉を提供することにある。
【0015】
本発明の第3の目的は、酸素バーナーのみで金属原料を効率よく溶解することができるとともに、熱負荷が高く、かつ、酸素バーナーの挿入口等が設けられている部分を水冷化して耐火物の原単位を低減できる金属溶解炉を提供することにある。
【0016】
本発明の第4の目的は、予熱部から溶解部への金属原料の投入速度を最適な範囲に制御するとともに、酸素バーナーの燃焼火炎を金属原料の溶解と予熱とにバランスよく使用して金属原料を効率よく溶解することができる金属溶解炉及び金属溶解方法を提供することにある。
【0017】
本発明の第5の目的は、金属原料の溶解がある程度進んだ溶解中期以降においても酸素バーナーの燃焼火炎の熱を効率よく溶融金属に伝えることができ、酸素バーナーの火炎のみで金属原料を効率よく溶解することができる金属溶解方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属溶解炉は、金属原料を酸素バーナーの火炎で溶解する溶解炉であって、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属原料を予熱する予熱部を設けるとともに、溶解部と予熱部との間に、溶解部及び予熱部の内径よりも小さな内径の絞り部を設け、該絞り部又はその近傍で前記溶解部と前記予熱部とを分離可能としたことを特徴としている。このように、溶解部の上方に絞り部及び予熱部を設けることにより、炉高が高くなっても炉底から出湯することなく、最小限の傾動操作で容易に出湯することができる
【0019】
このように、溶解部と予熱部との間に絞り部を設けることにより、予熱部で予熱されて溶解部に自然落下する原料の投入速度を制御することができる。特に、予熱部の断面積と絞り部の断面積との関係を、予熱部の断面積が絞り部の断面積の1.4〜5倍、好ましくは1.5〜4倍の範囲になるように設定することにより、最適な落下速度(投入速度)で金属原料を溶解部へ導入することができる。また、予熱部の容積と溶解部の容積との関係によっても予熱部における金属原料の予熱状況が変化し、予熱部の実質的な容積を、溶解部の実質的な容積の0.4〜3倍、好ましくは0.5〜2倍の範囲になるように設定することにより、金属原料を効率よく予熱することができ、熱効率を向上させることができる。
【0020】
さらに、前記溶解部と前記予熱部との分離部を、炭素系耐火物で形成するか、あるいは該分離部に、水冷ジャケットを設けることにより、該分離部の損傷を防止できる。
【0021】
また、前記溶解部の炉壁の上部を水冷ジャケットで形成し、該炉壁の上部から前記絞り部に向かう水冷ジャケットの内壁面の角度を水平面に対して20〜60度の範囲に設定するとともに、前記酸素バーナーを前記水冷ジャケットを貫通して設けることにより、水冷化による熱損失を最小に抑えることができ、効率よく金属を溶解できるとともに、この部分の耐火物の損傷問題から解放されて耐火物原単位を大幅に低減することができるため、全体として溶解コストの低減が図れる。
【0022】
さらに、前記酸素バーナーの火炎噴出方向を、溶解部底面上において、溶解部重心位置からバーナー取付部側に、該重心位置と酸素バーナー取付部側内壁との距離の0.2倍の距離近付いた点を中心とする円内に向け、該円の直径を、バーナー取付部側溶解部内壁とこれに対向する溶解部内壁間の距離の0.6倍に設定することにより、酸素バーナーの燃焼火炎及び燃焼排ガスを金属原料の溶解と予熱とに効率よく使用することができ、熱効率の向上が図れる。
【0023】
また、前記酸素バーナーの取付け高さを、該酸素バーナーの火炎吐出口より下方の溶解部の容積が、溶解部全体の容積の0.35〜0.9倍になる位置に設定することにより、酸素バーナーの燃焼火炎及び燃焼排ガスを金属原料の溶解と予熱とに効率よく使用することができ、熱効率の向上が図れる。
【0024】
さらに、前記酸素バーナーとして偏心バーナーを用い、該偏心バーナーをバーナー軸線を中心として回動可能に設けることにより、燃焼火炎の吐出方向を金属原料の溶解段階に応じて変更でき、金属原料を適切に加熱することができ、かつ、予熱部における予熱状態も適宜に変更でき、予熱部から溶解部への金属原料の落下速度を制御することも可能となる。
【0025】
また、前記溶解部の上部に二次燃焼用酸素ノズルを設けることにより、未燃焼成分を燃焼して熱効率を高めることができる。さらに、前記溶解部の底部に溶湯撹拌用ノズルを設けることにより、溶湯の撹拌を促進して、溶湯を均一に加熱できる。
【0026】
次に、本発明の金属原料を酸素バーナーの火炎で溶解する第1の金属溶解方法は、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属原料を予熱する予熱部を設けるとともに、溶解部と予熱部との間に、溶解部及び予熱部の内径よりも小さな内径の絞り部を設けた金属溶解炉を用い、かつ前記酸素バーナーとして偏心バーナーを用い、該偏心バーナーを、前記金属原料の溶解段階に応じてバーナー軸線を中心として回動させることを特徴としている。
【0027】
このように、溶解部と予熱部との間に、適当な内径を有する絞り部を設けた金属溶解炉を用いることにより、予熱部で予熱されて溶解部に落下する原料の投入速度を制御することができ、最適な落下速度(投入速度)で金属原料を溶解部へ導入することができる。
【0028】
そして、前記酸素バーナーとして偏心バーナーを用いることにより、燃焼火炎を炉底部方向に向けて吐出させることができ、酸素バーナーの燃焼火炎及び燃焼ガスを金属原料の溶解と予熱とに効率よく使用することができるので、熱効率の向上が図れる。また、偏心バーナーを回動させて燃焼火炎の吐出方向を変更することにより、燃焼火炎の吐出方向を金属原料の溶解段階に応じて変更でき、金属原料を適切に加熱することができ、かつ予熱部における予熱状態も適宜に変更でき、予熱部から溶解部への金属原料の落下速度を制御することも可能となる。
【0029】
また、本発明の第2の金属溶解方法は、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属原料を予熱する予熱部を設けるとともに、溶解部と予熱部との間に、溶解部及び予熱部の内径よりも小さな内径の絞り部を設けた金属溶解炉を用い、前記金属原料の溶解操作中に浴面に存在する溶融スラグに炭材を投入し、該溶融スラグをフォーミングさせることを特徴としている。
【0030】
酸素バーナーから溶融スラグ中に導入された燃焼火炎は、溶融金属浴面に衝突して溶融金属を直接昇温した後、溶融スラグ内を物理的に上昇する過程で溶融スラグを撹拌しながら加熱する。このとき、溶融スラグに炭材を投入して、溶融スラグをフォーミング状態にすることにより、溶融スラグの見掛上の体積が増し、高温のガスと溶融スラグとの熱交換効率が上昇するので、溶融スラグを介しての金属の間接的な昇温を効率よく行うことができるとともに熱ロスも低減する。
【0031】
また、前記溶融スラグの塩基度γ、但し、γ=(CaO)/(SiO2 )を、溶湯処理温度T[℃]に対して、「0.001T−0.6≦γ≦0.0025T−1」で示される範囲内に制御することにより、溶融スラグをフォーミングさせるにあたり、反応ガスの発生形態と溶融スラグの物性とを制御して、安定したフォーミング状態を得ることができる。
【0032】
本発明の金属溶解炉の溶解部は、炉全体で最も高温となる部位であること及び高温の燃焼ガスとの接触が避けられないこと等の理由により、高温での耐用性、耐酸化性及び耐浸蝕性に優れている必要があり、マグネシアを含む成分系の材質の炉材を用いる。具体的には、マグネシア、マグネシア−炭素系、マグネシア−クロミア系等である。
【0033】
また、絞り部は、高温の燃焼ガスとの接触及び金属原料の落下による衝撃等の理由により、高温での耐用性、機械的強度、耐摩耗性に優れている必要があり、マグネシア−クロミア系の材質の炉材を用いる。
【0034】
さらに、予熱部は、溶解部や絞り部に比べ、耐熱性が低くてもよいから、アルミナ系の材質の炉材を用いる。
【0035】
尚、本発明に用いられる酸素バーナーは、酸素あるいは酸素富化空気を支燃性ガスとし、重油、灯油、微粉炭、プロパンガス、天然ガス等の化石燃料を燃焼させて高温の火炎を形成するものである。そして、酸素バーナーとしては、例えば、特公平3−3122号公報や特公平7−43096号公報に開示されている酸素バーナーを使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、燃料の種類等に応じて、各種構造のものが使用可能である。酸素バーナーは、空気を支燃性ガスとするバーナーに比べて、排ガス熱損失が小さく、炉内への着熱量が高い等の利点を有する。
【0036】
また、酸素バーナーとして本発明に用いられる偏心バーナーは、バーナー本体先端部の燃焼ノズルからの燃焼火炎の吐出方向がバーナー軸線に対して傾斜角度を有するものである。そして、偏心バーナーとしては、例えば、実開昭59−103025号公報に開示されたバーナーのように、直管状のバーナー本体の先端部に装着されるノズルの流路を、バーナーの軸線に対して所定角度傾斜させたものを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、燃料の種類等に応じて、各種構造のものが使用可能である。
【0037】
さらに、偏心バーナーの回動機構は、例えば、実開昭59−103025号公報に開示されている構造のものを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種構造のものが使用可能である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面を参照してさらに詳細に説明する。図1は、本発明を適用した金属溶解炉の第1実施形態例を示す縦断面図である。
【0039】
この溶解炉は、酸素又は酸素富化空気を支燃性ガスとした酸素バーナー21の燃焼熱のみで、鉄,銅,アルミニウム等のスクラップや地金等を溶解再生するためのものである。そして、該溶解炉は、下部に溶解部22を、上部に予熱部23を一体的に設けるとともに、溶解部22と予熱部23との間に絞り部24を設けたものである。
【0040】
前記溶解部22は、通常の金属溶解炉、例えば電気炉等と略同様の内部形状を有しており、カーボン5〜20重量%を含むマグネシア−カーボン系の炉材で作られている。また、溶解部22の一側には、溶解処理された溶湯25の出湯口26が設けられている。
【0041】
前記予熱部23は、略円筒状に形成されており、アルミナ−シリカ系の炉材で作られている。また、予熱部23の上部開口には、排気口27を有する蓋体28が着脱可能に装着されている。
【0042】
前記絞り部24は、予熱部23から溶解部22に落下する金属原料29の落下速度を制御するために設けられるもので、溶解部22及び予熱部23の各内径よりも小さな内径で形成されている。該絞り部24は、クロミア10〜30重量%を含むマグネシア−クロミア系の炉材で作られている。この絞り部24と大径の溶解部22あるいは予熱部23との間は、図に示すように斜辺30,31で接続してコーン状に形成することが好ましい。この部分を曲面で接続することも可能であるが、耐火物を内張りして形成する炉の場合は、耐火物の内張り作業が面倒になる。この斜辺30,31が垂直に近くなると炉の高さが高くなり、水平に近くなるとデッドスペースを生じて熱効率等が低下することがあるため、通常は、水平線に対して溶解部22の天井部(斜辺30)は20〜60度程度、予熱部23の底部(斜辺31)は20〜70度程度に設定することが好ましい。
【0043】
前記酸素バーナー21は、必要な溶解能力に応じて1本乃至複数本が溶解部22の周壁に設けられた挿入孔32に挿入されて設置されるもので、その取付け位置は、溶解部22の大きさなどに応じて炉壁の垂直部あるいは前記天井部の適当な位置に設定することができる。また、酸素バーナー21は、溶解部22内に落下した金属原料29を溶解部22の底部側から溶解させることができるように、火炎噴出方向が溶解部22の底部に向くように設けられている。前記酸素バーナー21には、図示しない経路から重油や微粉炭等の燃料と支燃性ガスとがそれぞれ導入される。
【0044】
酸素バーナーのみで鉄スクラップを溶解したときの典型的な溶解パターンを図2に示す。図2において、ステップ1は、炉内に充填したスクラップをバーナーからの燃焼ガスで予熱している段階であって、排ガス温度は低く、金属の表面積が大きいため酸化速度は最も大きい。ステップ2は、スクラップのほとんどが溶解し、炉下部に未溶解部が少量残っている段階であって、燃焼ガスの熱量は、未溶解部分の溶解に消費されており、溶湯温度は略融点付近である。また、炉の上部には、スクラップが存在しないため排ガス温度は上昇し、金属の表面積が小さくなり酸化速度は低下する。ステップ3は、スクラップが完全に溶解した後、溶湯を融点より100℃昇温する段階である。
【0045】
このような溶解パターンによって金属原料29が溶解される金属溶解炉において、溶解部22の上方に適当な大きさの絞り部24を設けることにより、鉄格子等を設けることなく予熱部23から溶解部22に落下する金属原料29の落下速度を絞り部24を介して最適な状態に制御することができ、また、溶解部22の直上に予熱部23を設けることができるので、ステップ1における金属原料29の予熱を効率よく行うことができる。
【0046】
すなわち、溶解部22の上方に絞り部24を介して予熱部23を連設することにより、予熱部23から溶解部22に落下する原料量を最適な速度に制御することができるので、従来の鉄格子のような原料投入量を制御する機器を設ける必要がなく、簡単な構造の溶解炉で鉄,銅,アルミニウム等のスクラップや地金等を効率よく溶解処理することができ、炉の構造の簡略化により製造コストや保守コストの低減が図れるとともに、熱効率の向上や溶解時間の短縮も図れる。
【0047】
前記構造の金属溶解炉において、絞り部24の大きさは、炉の処理能力や酸素バーナーの能力、金属原料の種類、溶解部22及び予熱部23の大きさなどによって適当に設定することが可能であるが、通常は、予熱部23の断面積を絞り部24の断面積の1.4〜5倍、好ましくは1.5〜4倍の範囲になるように設定することが望ましい。例えば、予熱部23の断面積を絞り部24の断面積の1.4倍未満にすると金属原料の落下速度が速くなり過ぎて絞り部24を設けた効果が得られにくくなり、逆に予熱部23の断面積が絞り部24の断面積の5倍を超える場合には、金属原料が落下しにくくなって絞り過ぎの傾向となる。
【0048】
また、予熱部23の実質的な容積と溶解部22の実質的な容積との関係も、溶解能力に影響を与えるため、予熱部23の実質的な容積を、溶解部22の実質的な容積の0.4〜3倍、好ましくは0.5〜2倍の範囲になるように設定することが望ましい。例えば、予熱部23の容積が溶解部22の容積に比べて小さすぎる場合は、金属原料の大部分を予熱を経ずに直接溶解させることになり、逆に予熱部23の容積が大きすぎる場合は、投入した熱エネルギーの大部分が予熱に消費されることになるため、いずれの場合も熱効率が低下する傾向となる。
【0049】
なお、上記実質的な容積とは、溶解処理を開始する前にスクラップ等を予熱部23の上部開口から投入したときに、該スクラップが溶解部22内及び予熱部23内に存在する体積に相当するものであり、寸法から算出した容積とは異なっている。
【0050】
図3は、本発明を適用した金属溶解炉の第2実施形態例を示す縦断面図である。尚、第1実施形態例の金属溶解炉における構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0051】
第2実施形態例の金属溶解炉は、第1実施形態例の金属溶解炉において、前記溶解部22の上部に二次燃焼用酸素ノズル33を設けるとともに、前記溶解部22の底部に溶湯撹拌用ノズル34を設けている。
【0052】
即ち、二次燃焼用酸素ノズル33は、溶解部22の大きさなどに応じて炉壁の垂直部あるいは前記天井部の適当な位置に設けることができる。この二次燃焼用酸素ノズル33は、溶解部22内に酸素を吹き込んで、溶解時に金属原料や副原料等から発生した可燃成分を燃焼させて熱効率を向上させるものである。二次燃焼用酸素ノズル33から吹き込む酸素量は、排ガス成分等をオンラインで検知することにより、制御することができる。
【0053】
また、溶湯撹拌用ノズル34は、プラグ35及び受けスリーブ36を介して溶解部22の底部の炉壁に設けられる。この溶湯撹拌用ノズル34は、溶湯内にガスを吹き込んで、溶湯を撹拌することにより、溶湯を均一に加熱するものである。本実施形態例では、単管型プラグを用いているが、細管複合型プラグやポーラス耐火物型プラグを用いることもできる。
【0054】
図4乃至図6は、本発明を適用した金属溶解炉の第3実施形態例を示す縦断面図である。尚、第1実施形態例の金属溶解炉における構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
第3実施形態例の金属溶解炉は、第1実施形態例の金属溶解炉において、絞り部24の中間部に、溶解部22と予熱部23とを分離するための分離部37を設けている。
【0056】
本実施形態例は、該分離部37を設けることにより溶解部22と予熱部23とを分離可能としているので、溶解部22内の溶融金属を出湯する際には、図5に示すように、溶解部22を予熱部23から分離して溶解部22のみを傾斜させることにより出湯操作を行うことができる。したがって、溶解部22の上方に絞り部24を介して予熱部23を設けることによって炉高が高くなった場合でも、炉全体を傾斜させる必要がないため、炉底部から出湯を行うことなく、僅かなスペースで出湯操作を行うことができる。
【0057】
また、前記分離部37を、比較的内径が小さい絞り部24又はその近傍、特に、内径が最小の絞り部24部分に設けることにより、両者を分離した際の溶解部22からの放散熱量を少なくすることができる。
【0058】
ここで、溶解部22を傾斜させるための装置は、通常、重量物である溶解部22を、その重心位置の近傍で支持することが好ましいため、この場合は、単に溶解部22を傾斜させることはできない。したがって、上記出湯操作を行う際には、まず、予熱部23及び絞り部24の分離部37より上方部分を上昇させることにより溶解部22と分離した後、傾斜装置を作動させて溶解部22を傾斜させるようにする。尚、溶解部22及び絞り部24の分離部37より下方部分を下降させてから傾斜させるようにしてもよい。また、溶解部22の回動中心を適当な位置に設定すれば、溶解部22を傾けるだけで出湯を行うことが可能であり、さらに、溶解部22や予熱部23を水平方向に移動させるようにしてもよい。
【0059】
このように分離部37を設けることにより、限られたスペース内で出湯操作を容易に行うことができるが、分離部37を設けた絞り部24の近傍は、溶解中に発生する溶融金属のスプラシュやスラグが付着し易い場所に設けられているため、溶解部22と予熱部23とを分離する際に、付着物が引き離されるのと一緒に炉内面の耐火物も損傷することがある。
【0060】
したがって、分離部37は、溶融金属のスプラシュやスラグが付着し難く、また、損傷を生じ難い構造を採用することが好ましい。このため、図4及び図5に示す金属溶解炉では、分離部37の部分を、スプラシュやスラグが付着し難く、かつ、損傷し難い耐火物である炭素系耐火物(例えばMgO−C)38で形成している。また、図6に示す金属溶解炉では、分離部37の部分に水冷ジャケット39を設けている。このように炭素系耐火物38や水冷ジャケット39を用いることにより、分離部37における耐火物の損傷を防止することができる。なお、水冷ジャケットの代りに水冷チューブを設けることも可能である。
【0061】
図7は、本発明を適用した金属溶解炉の第4実施形態例を示す縦断面図である。尚、第1実施形態例の金属溶解炉における構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0062】
第4実施形態例の金属溶解炉は、第1実施形態例の金属溶解炉において、溶解部22の炉壁の上部を水冷ジャケット40で形成し、該炉壁の上部から絞り部24に向かう水冷ジャケットの内壁面(斜辺30)の角度を水平面に対して20〜60度の範囲に設定するとともに、酸素バーナー21を前記水冷ジャケット40を貫通して設けている。
【0063】
即ち、溶解部22の炉壁の上部の絞り部24及び予熱部23の炉壁は、水冷ジャケット40により形成されており、溶融金属が接触する溶解部22の下部の炉壁は、耐火物により形成されている。この水冷ジャケット40における溶解部22の天井部(斜辺30)は、溶解部22の周壁から絞り部24の内周に向かって20〜60度の範囲の上昇角で収斂するコーン状に形成されており、予熱部23の底部(斜辺31)は、絞り部24の内周に向かって下向きに収斂するコーン状に形成されている。
【0064】
前記天井部の下面の上昇角は、前記溶解部22における溶融性能や熱効率,熱損失に大きな影響を与えるものであって、上昇角が20度から60度の範囲のときに、水冷熱損失と熱効率とがバランスし、効率のよい溶解操作を行うことができる。
【0065】
即ち、上昇角が20度よりも小さい場合には、酸素バーナー21の火炎や金属溶融面から水冷ジャケット40への熱移動が大きくなって水冷熱損失が大きくなり、上昇角を60度より大きくすると、水冷熱損失は小さくなるものの酸素バーナー21からの金属への熱移動が少なくなり、結果的に熱効率が低下する。
【0066】
したがって、前記天井部の上昇角を20〜60度の範囲に設定することにより、溶解能力や熱効率の低下を最小に抑えて水冷化することが可能となり、耐火物にかかるコストを大幅に削減することができるので、熱効率の低下を差し引いても、全体としての金属溶解コストを低減することができる。また、損傷した耐火物の修理や交換には相当の日数を必要としていたが、水冷ジャケット40は、修理の必要がほとんどないため、炉の稼働率も向上する。
【0067】
図8及び図9は、本発明を適用した金属溶解炉の第5実施形態例を示す図である。図8はその金属溶解炉の縦断面図である。図9は酸素バーナーの火炎噴出方向及び取付け高さを説明するための図である。尚、第1実施形態例の金属溶解炉における構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0068】
第5実施形態例の金属溶解炉は、第1実施形態例の金属溶解炉における酸素バーナー21を最適な位置に取付けた実施形態例に関するものである。即ち、本実施形態例では、前記酸素バーナー21の火炎噴出方向を、溶解部底面上において、溶解部重心位置からバーナー取付部側に、該重心位置と酸素バーナー取付部側内壁との距離の0.2倍の距離近付いた点を中心とする円内に向け、該円を、バーナー取付部側溶解部内壁とこれに対向する溶解部内壁間の距離の0.6倍の直径としたことにある。また、酸素バーナー21の取付け高さを、該酸素バーナー21の火炎吐出口より下方の溶解部の容積が、溶解部22全体の容積の0.35〜0.9倍になる位置に設定している。
【0069】
前記酸素バーナー21の燃焼により形成される火炎の被加熱物(金属原料や溶湯)への衝突条件は、加熱溶解の効率に大きく影響するため、被加熱物に衝突する前に十分な燃焼を行わせることと、火炎の運動エネルギーを高めることとが重要になる。例えば、火炎が被加熱物に当たるまでの燃焼率は、バーナーの吐出口の位置を下げ過ぎると低下するが、燃焼率を高めるために吐出口の位置を上げ過ぎると、被加熱物に当たる際の火炎の運動エネルギー(衝突速度)が低下してしまう。また、運動エネルギーを高めるためには、燃焼ガス自体の量や、火炎と被加熱物との相対位置の他に、バーナーの設置角度(火炎の噴出角度)も重要であり、傾斜角度が小さ過ぎると運動エネルギーを十分に高めることができない。一方、傾斜角度を大きくする程、火炎の運動エネルギーが被加熱物に伝わり易くなり、撹拌作用等で溶解促進に効果が期待できるが、溶解部22の上方に予熱部23を設けた炉形状の場合は、溶湯との接触によるバーナー溶損の懸念や、炉体との干渉を避けて酸素バーナー21を設置する必要があることから、溶解部22の溶湯の上方空間で酸素バーナー21を設置することができる部位は自ずと限界がある。
【0070】
したがって、酸素バーナー21の火炎噴出方向と取付け位置は、溶解部22の形状や大きさなどに応じて設定されるものであるが、図9に示すように、溶解部22の底面上において、溶解部重心Oと酸素バーナー取付部A側の内壁との距離をRo、バーナー取付部A側の内壁とこれに対向する内壁との距離をDoとした場合、酸素バーナー21の火炎噴出方向は、溶解部重心Oから酸素バーナー取付部A側に、前記距離Roの0.2倍の距離Rだけ近付いた点を中心とし、前記距離Doの0.6倍の直径Dを有する円Cの中に向くように設定する。これにより、金属への燃焼火炎の衝突条件を最適化できる。
【0071】
また、酸素バーナー21の取付け高さは、該酸素バーナー21の吐出口より下方の溶解部の容積が、溶解部22全体の容積の0.35〜0.9倍、好ましくは0.45〜0.80倍になるように設定することにより、さらに効率よく金属原料を溶解することができる。
【0072】
ここで、溶解部22の底部が略円形で、その直径がDo、半径がRoとした場合、酸素バーナー21の火炎噴出方向となる円Cの中心位置は、溶解部中心(重心と同一)からバーナー取付部側に0.2Ro近付いた点であり、円Cの直径は0.6Doである。
【0073】
また、例えば、溶解部22が略円筒形の場合、酸素バーナー21の吐出口(ノズル先端部)の高さHは、溶解部の高さHoに対して0.35Ho〜0.9Ho、好ましくは0.45Ho〜0.80Hoとなる。但し、実際には、溶解部22の底面や天井面の形状により多少異なってくる。
【0074】
図10は、本発明を適用した金属溶解炉の第6実施形態例を示す縦断面図である。尚、第1実施形態例の金属溶解炉における構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0075】
第6実施形態例の金属溶解炉は、第1実施形態例の金属溶解炉において、酸素バーナーとして偏心バーナー41を用い、該偏心バーナー41を回動機構42によってバーナー軸線を中心として回動可能に設けている。尚、偏心バーナー41及び回動機構42は、前述の如く、例えば、実開昭59−103025号公報に開示されたバーナー及び回動機構を使用することができる。
【0076】
このように、偏心バーナー41を用いることにより、酸素バーナー1の取付け角度に制約があり、取付け角度が小さい場合でも、燃焼火炎の吐出方向を溶解部22の底部に対して大きな角度で向けることができるから、溶解部22の周辺部にデッドゾーンを生じることなく均一に加熱することができる。
【0077】
一方、迅速に金属原料を溶解することに対しては、バーナー燃焼により形成される火炎の被加熱物への衝突条件が加熱溶解の効率等に大きく影響し、火炎が被加熱物に衝突する前に十分な燃焼を行わせることと、火炎の運動エネルギーを高めることとが重要である。火炎が被加熱物に衝突するまでの燃焼率は、距離が近すぎると低下するが、燃焼率を高めるために距離を離すと衝突速度が小さくなって運動エネルギーが低下する。また、運動エネルギーを高めるためには、燃焼ガス自体の量を増加させることの他、衝突角度を大きくして垂直方向に近付けることが、被加熱物への伝熱効率を高めるには有利である。
【0078】
したがって、前記偏心バーナー41を用いて燃焼火炎の吐出方向を鉛直方向に向けることにより、溶解初期においては、溶解部22から予熱部23まで塔状に直結した金属原料29の基盤部分の軟化溶融を遅らせることができ、金属原料29の落下をある程度遅らせることにより十分な予熱を行うことができるとともに、溶解後期には、衝突時の燃焼火炎の運動エネルギーが溶湯に伝わり易くなり、溶湯の撹拌作用等で溶解促進効果が向上する。
【0079】
また、本発明の第1の金属溶解方法の如く、溶解段階に応じてバーナー軸線を中心として偏心バーナー41を回動させ、燃焼火炎の吐出方向を変更することにより、均一加熱の効果を向上させたり、予熱部23からの金属原料29の落下速度を制御したりすることが可能となる。
【0080】
図11は、本発明の第2の金属溶解方法を説明するための金属溶解炉の実施形態例を示す縦断面図である。尚、第1実施形態例の金属溶解炉における構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0081】
本発明の第2の金属溶解方法は、図11に示す金属溶解炉を用いて、金属原料の溶解操作中に浴面に存在する溶融スラグに炭材を投入し、該溶融スラグをフォーミングさせてフォーミング状態のスラグ(フォーミングスラグ)43にすることによって加熱効率を向上させる。また、前記溶融スラグの塩基度γを、溶湯処理温度T[℃]に対して、0.001T−0.6≦γ≦0.0025T−1で示される範囲内に制御することにより、安定したフォーミング状態を得ることができる。
【0082】
即ち、図11に示す金属溶解炉において、酸素バーナー21の燃焼火炎により金属原料を溶解するにあたり、溶解中期以降に溶解部22の浴面上に存在する溶融スラグに炭材を投入し、フォーミングスラグ43とする。
【0083】
この溶融スラグのフォーミングは、フォーミングスラグ状態を利用した伝熱促進法として、鉄鉱石の溶融還元法での二次着熱技術等で検討されている。この伝熱促進法は、鉄鉱石と炭材との一次反応で生成する一酸化炭素ガスを、スラグ中あるいはスラグ上方で添加した酸素ガスと反応させ、二酸化炭素まで二次燃焼させる方法であって、スラグ中で二次燃焼した場合は、生成反応で高温になった二酸化炭素ガスが、フォーミングスラグ中を上昇中にスラグと熱交換を行ってスラグを昇温させるものである。
【0084】
本発明は、このフォーミング状態での伝熱効率をさらに効果的にしたものであって、酸素バーナー21の高温の火炎は、フォーミングスラグ43中に侵入して浴近傍まで到達し、スラグから抜け出るまでの全滞留時間にわたって伝熱を行うことになり、スラグへの伝熱量を上記二次燃焼による方法よりさらに大きくすることができる。
【0085】
通常、酸素バーナーの燃焼火炎で金属原料を溶解する場合、酸素バーナーの火炎は、溶融金属の浴面に衝突して直接金属を昇温した後、浴面上に存在する液体状態のスラグ中を上昇しながらスラグと熱交換を行ってスラグを昇温するとともに循環流動させ、スラグを介して間接的に金属を昇温する。
【0086】
この間接的な昇温には、スラグ層を燃焼ガスが通過する状態が大きく影響し、スラグ高さが高いほど有利となるが、熱的な問題や耐火物溶損の面で操業上不利となるスラグの増量は避けるべきである。そこで、溶融スラグに炭材を投入してスラグ中の鉄酸化物等の還元成分と炭材とを連続的に反応させ、発生ガスによりスラグをフォーミング状態にすることにより、スラグの見掛上の体積が増すため、燃焼ガスとフォーミングスラグ43との熱交換効率を上昇させることができ、フォーミングスラグ43を介しての間接的な金属の昇温を効率よく行うことができる。
【0087】
即ち、酸素バーナー21からの燃焼火炎は、フォーミングスラグ43中を通って浴と衝突することにより浴を直接的に昇温した後、フォーミングスラグ43中を物理的に上昇しながらスラグを昇温するが、フォーミングによりスラグの見掛上の体積が増加しているため、スラグ中を通過する燃焼ガスの滞留時間が長くなり、スラグへの伝熱量を増加できるとともに、燃焼ガスによるスラグの撹拌、循環流動も効果的に行うことができる。したがって、スラグから浴への伝熱も効率よく行うことができ、溶解時間の短縮や熱効率の大幅な向上を図ることができる。さらに、炭材により酸化鉄が還元されるため、鉄の歩留も向上する。
【0088】
前記炭材は、粉状,粒状のコークス等を使用することができ、その添加量は、スラグの発生量,層厚等により異なるが、一般的には、金属原料トン当たり1〜10kgの範囲が適当であり、添加量が少ないと十分なフォーミング状態が得られず、逆に添加量が多すぎると、炭材のコストが上昇することになる。
【0089】
ここで、安定したフォーミング状態を得るためには、反応ガスの発生形態やスラグの物性、すなわち、ガス発生速度や気泡径、スラグの粘性や表面張力を適正に制御することが重要である。例えば、溶融スラグ中の還元可能な酸化物を還元して一酸化炭素の気泡を発生させるに際し、微細な気泡を得るためには微細な炭材を使用することが効果的であり、気泡を連続的に得るためには、炭材を連続的に適量ずつ添加することが有効である。
【0090】
さらに、金属原料を溶解する際には、固体状態から固体液体の共存状態を経て液体状態になるまでの加熱を効率よく行うことが必要である。そして、前記フォーミングスラグ43を介して溶湯25を加熱する際の浴温度は、例えば鉄の場合、炭素濃度等により変動するが、鉄原料の一部が溶解し始めて平滑になる約1000℃から出湯可能な1300〜1600℃以上までの温度範囲となる。この温度範囲内でスラグのフォーミング状態を安定して保持させるために種々検討した結果、スラグの塩基度を、その温度に応じて制御することが有効であることが判明した。すなわち、溶融スラグの塩基度γ=(CaO)/(SiO2 )を、溶湯処理温度T[℃]に対して、0.001T−0.6≦γ≦0.0025T−1で示される範囲内に制御することにより、安定したフォーミング状態を得ることができ、酸素バーナー21の燃焼火炎が有する熱エネルギーを効率よく溶湯に伝達することができる。
【0091】
尚、本発明は、上述の各実施形態例に限定されるものではなく、例えば、各実施形態例を組み合わせても良いことは勿論である。
【0092】
【実施例】
実施例1
図1に示す構造の金属溶解炉を使用して、鉄スクラップ1トンを溶解し、絞り部の効果を確認する実験を行った。溶解部はマグネシア−カーボン(10%)、絞り部はマグネシア−クロミア(20%)、予熱部はアルミナ−シリカ(12%)でそれぞれ形成した。溶解部の大きさは、全高80cm、内径90cmの一定とした。この溶解部で鉄1トンを溶解すると、浴面高さは約22cmとなる。また、溶解部の大きさが一定であることから、スクラップ投入時にスクラップが占める予熱部及び溶解部の容積、即ち予熱部の実質的な容積と溶解部の実質的な容積との比は略一定となり、この場合は、約1:1となる。したがって、鉄スクラップを予熱部の上部開口から炉内に投入したとき、予熱部と溶解部の内部には、それぞれ約500kgのスクラップが存在することになる。
【0093】
酸素バーナーは、溶解部の傾斜した天井部に、水平面に対して約60度傾斜させた状態で炉底中心方向に向けて3本設置した。各酸素バーナーには、燃料として微粉炭を35kg/h供給し、支燃性ガスとして約600℃の高温酸素を酸素比1.0で供給した。微粉炭は空気で搬送した。この酸素バーナーの火炎温度は最高温部で約2800℃で、火炎長さは70cmであった。
【0094】
そして、絞り部の径(断面積)に対する予熱部の径(断面積)の比率を種々変化させて鉄スクラップ(ヘビー屑)1トンの溶解処理を行い、出湯温度を1630℃の一定として、スクラップの落下速度、溶解に要する時間及び熱効率をそれぞれ測定した。なお、絞り部内周面の高さ方向の寸法は約20cmとした。また、溶解部の天井面には約30度の傾斜を付けて絞り部に接続し、予熱部の底面は、スクラップが滞留しない程度の傾斜を付けて絞り部に接続した。結果を表1及び図12に示す。尚、表1の実験番号8は、絞り部を設けていない金属溶解炉を使用した場合の比較例である。
【0095】
【表1】
Figure 0004041548
【0096】
表中、熱効率は次式により求めた。
η=HY/Q
但し、η:熱効率
H:溶解後の金属1トン当たりの熱容量
Y:溶解歩留
Q:金属原料1トンを溶解するのに要したバーナーでの燃焼熱量
【0097】
また、落下制御係数は次式により求めた。
υ=100T/t
但し、υ:落下制御係数
t:金属溶解炉に投入した金属原料の全てが溶解部に落下するまでの燃焼開始からの時間
T:予熱部の断面積が絞り部の断面積の1.5倍のときのt
【0098】
表1及び図12から明らかなように、予熱部の実質的な容積と溶解部の実質的な容積との比を約1:1と一定にした場合において、予熱部の断面積と絞り部の断面積との比率によって溶解性能が変化することがわかる。これから、スクラップの落下制御係数、即ちスクラップの落下速度が溶解性能に大きく影響を与えていることがわかり、予熱部の断面積を絞り部の断面積の6倍にするとスクラップの落下速度が遅くなって絞り過ぎの傾向となり、逆に1.2倍にするとスクラップの落下速度が速すぎて溶解が追い付かず絞りが足りない傾向となる。これらの結果から、予熱部の断面積が絞り部の断面積に対して1.4倍から5倍の範囲のとき、特に1.5〜4倍の範囲のときに溶解時間の短縮と熱効率の向上が図れること、即ち溶解能力が向上することがわかる。
【0099】
実施例2
次に、予熱部の断面積を絞り部の断面積の1.5倍の一定とし、溶解部の実質的な容積に対する予熱部の実質的な容積の比率、即ちそれぞれにおける鉄スクラップ量の割合を変化させて同様の実験を行った。その結果を表2に示す。なお、絞り部は、予熱部の一部とみなして計算している。
【0100】
【表2】
Figure 0004041548
【0101】
実施例3
図3に示す構造の金属溶解炉を使用して、鉄スクラップ1トンを溶解し、二次燃焼用酸素ノズルから二次燃焼用酸素を吹き込んで、その効果を確認する実験を行った。尚、予熱部の断面積を絞り部の断面積の1.4倍とした以外は、実施例1と同様にした。
【0102】
二次燃焼用酸素ノズルから酸素5Nm3 /hを吹き込んだところ、熱効率は47%から52%に向上した。また、排ガス熱損失は53%から33%に低減し、炉内着熱量は47%から67%に向上した。
【0103】
実施例4
図7に示す構造の金属溶解炉を使用して、鉄スクラップ1トンを溶解し、水冷ジャッケトを用いた場合の熱効率を測定した。尚、酸素バーナーの取付け角度を40度とした以外は、実施例2と略同様にした。
【0104】
そして、溶解部の天井面の上昇角(傾斜角)を種々変化させて、その時の水冷熱損失係数,溶解時間及び熱効率をそれぞれ測定した。また、溶解部全体を耐火物で形成した場合も同様に測定した。その結果を表3に示す。なお、水冷熱損失係数は、上昇角が30度のときを100とした相対値である。
【0105】
【表3】
Figure 0004041548
【0106】
表3に示す結果から、溶解部全体を耐火物で形成し、上昇角が25度,30度の場合、すなわち、この部位の水冷熱損失が無い場合には、投入熱量が有効に溶融金属に伝達された割合、即ち熱効率は50〜51%であった。これに対し、水冷ジャケットにより水冷化した場合、上昇角によって水冷熱損失や溶解時間、熱効率に差を生じた。例えば、上昇角が小さいと溶融金属からの熱を多く受けるために水冷熱損失が大きくなる妥当な傾向が見られた。しかし、この水冷熱損失の大小と溶解能力には相関はなく、上昇角が15度と20度との間、60度と70度との間で、溶解能力に大きな差が見られた。
【0107】
このことから、上昇角が15度と20度との間で水冷熱損失の影響が大きくなると判断され、60度と70度との間では溶解部内の燃焼廃ガスの挙動による影響が大きくなると判断される。したがって、水冷ジャケットを使用して溶解部の水冷化を図る場合には、天井部の上昇角を20〜60度の範囲にすることが適当と判断される。また、このときの熱効率は、耐火物のときと比べて4〜8%低い値ではあるが、43〜46%と比較的良好な性能が得られる。すなわち、熱効率は低下するものの、耐火物の損傷を考慮すると、全体としての金属溶解コストは低減できる。
【0108】
実施例5
図8に示す構造の金属溶解炉を使用して、重油を燃料とし、純酸素を支燃性ガスとする酸素バーナーを3本設置し、該酸素バーナーの設置位置及び火炎の噴出方向を変更して、鉄スクラップ(ヘビー屑)1トン、銅(地金)1トン、アルミニウムスクラップ(サッシ屑)400kgをそれぞれ溶解したときの熱効率を測定した。溶解部は、全高70cm、内径90cmで、天井面の上昇角度は30度である。また、重油の流量は、酸素バーナー3本合計して毎時90リットルとした。その他は実施例2と略同様にした。
【0109】
それぞれの酸素バーナーにおける火炎の噴出方向を、図9のa,b,c,d,e,f,g,h,iに向けたときの各熱効率を表4に示す。a〜eは本発明の実施例、f〜iは比較例である。但し、表中「−」表示部分は測定しなかった。
【0110】
【表4】
Figure 0004041548
【0111】
実施例6
全高120cm、内径160cmで、傾斜角度30度の天井面を有する溶解部に、実施例5と同様の酸素バーナーを6本設置し、鉄スクラップ(ヘビー屑)5トンを溶解して実施例5と同様に熱効率を測定した。その結果を表5に示す。なお、重油の流量は、酸素バーナー6本合計して毎時400リットルとした。
【0112】
【表5】
Figure 0004041548
【0113】
実施例7
実施例5及び実施例6において、酸素バーナーを、微粉炭を燃料とするものに変更し、1トンの炉では微粉炭供給量を毎時90kg、5トンの炉では毎時400kgとした以外は同様にして鉄スクラップ(ヘビー屑)を溶解したときの熱効率を測定した。その結果を表6に示す。
【0114】
【表6】
Figure 0004041548
【0115】
実施例8
実施例5及び実施例6において、酸素バーナーの取付け高さを変えて鉄スクラップ(ヘビー屑)を溶解したときの熱効率を測定した。その結果を表7に示す。表中の比率は、溶解部全体の容積を1としたときの酸素バーナー吐出口より下方の溶解部の容積割合を示している。
【0116】
【表7】
Figure 0004041548
【0117】
なお、上記実施例5〜8では、酸素バーナーの火炎の噴出方向の違いによる差を明らかにするため、3本あるいは6本の酸素バーナーの火炎の噴出方向を、それぞれの酸素バーナーにおいて同じ基準(a〜i)で設定したが、複数本の酸素バーナーを用いる場合は、各バーナーにおける火炎の噴出方向を任意に設定することが可能である。例えば、3本の酸素バーナーを用いる場合、各バーナーを、それぞれ図9におけるa,b,cのように別々の方向に火炎を噴出させるようにしてもよく、適当な組合わせで実施することが可能である。この場合、全ての酸素バーナーの火炎噴出方向を同一方向としたときに比べて、溶解後の撹拌作用(溶湯の乱れ)が大きくなることもあり、原料が難溶性であったり、溶湯の不均一性が大きかったりする場合には、溶解時間の短縮を図れることもある。
【0118】
実施例9
図10に示す構造の金属溶解炉を使用して、鉄スクラップ(ヘビー屑)1トン、銅スクラップ(純銅の電線屑)1トン、アルミニウムスクラップ(サッシ屑)400kgをそれぞれ溶解したときの熱効率を測定した。
【0119】
酸素バーナーは、バーナー付属部分と炉体との干渉による制約のため、水平線に対して15度の角度で溶解部に取付けた。そして、燃焼火炎の吐出方向がバーナー軸線方向(0度)である一般のバーナーと、吐出方向がバーナー軸線方向に対して25度偏心したバーナー、及び40度偏心したバーナーとについてそれぞれ熱効率を測定した。また、火炎吐出方向が40度偏心したバーナーにおいて、昇温開始から金属原料が全量溶解部内に落下するまでの時期に、3分毎にバーナーを軸線を中心として右旋回20度、0度、左旋回20度の順に繰り返し回動させた場合についても同様に熱効率を測定した。その結果を表8に示す。なお、その他は実施例5と略同様にした。
【0120】
【表8】
Figure 0004041548
【0121】
実施例10
酸素バーナーとして微粉炭を燃料とするバーナーを用い、その取付け角度を20度とし、バーナーからの燃焼火炎の吐出方向を0度、20度、40度とした場合の熱効率を、実施例9と同様にそれぞれ測定した。その結果を表9に示す。
【0122】
【表9】
Figure 0004041548
【0123】
実施例11
図11に示す構造の金属溶解炉を使用して、重油を燃料とし、純酸素を支燃性ガスとする酸素バーナーを水平面に対して40度の傾斜角度で3本設置し、鉄スクラップ(ヘビー屑)1トンを溶解したときの熱効率を測定した。溶解部は、全高70cm、内径90cmで、天井面の上昇角度は30度である。また、重油の流量は、酸素バーナー3本合計して毎時90リットルとした。酸素は毎時180Nm3 を供給した。その他は実施例2と略同様にした。
【0124】
予熱部内の原料が溶解部内に落下してスラグが形成されてから炭材を添加し、1630℃で出湯するまでに要した時間(原料が溶解部内に落下してからの時間及び全溶解時間)、鉄歩留、熱効率をそれぞれ測定した。使用した炭材は、炭素含有量90%以上のコークス粉あるいは粒であり、コークス粉は、粒度が3mmアンダーのものを用い、毎分100g、200g、300gでそれぞれ連続的に添加した。コークス粒は、10〜30mmの粒度のものを用い、5分毎に1kgを投入した。その結果を、炭材を添加しなかった場合を含めて表10に示す。なお、出湯時の溶湯は、炭素含有量0.03〜0.07%の低炭素溶鋼の成分であった。
【0125】
【表10】
Figure 0004041548
【0126】
実施例12
実施例11と同じ溶解炉を使用し、スラグの塩基度を変えて溶解操作を行った。金属原料には、鋼屑と銑鉄地金を配合して1トンとしたものを用いた。この場合、溶湯中の炭素濃度が多いほど比較的低温から溶解し、出湯も低温で可能となる。スラグの塩基度調整は、焼成した石灰と硅砂とを配合したフラックスを用いて行った。炭材は、実施例11と同じコークス粉を用いて毎分200gの割合で連続添加した。そして、各塩基度におけるフォーミングの状況を観察するとともに、総溶解時間及び熱効率を測定した。なお、フォーミングの良否の判定は、原料落下後の処理中に50%以上の時間フォーミング状態を保っていたときを安定とした。結果を表11に示す。
【0127】
【表11】
Figure 0004041548
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の金属溶解炉は、溶解部の上方に絞り部を介して予熱部を設けたので、予熱部で予熱されて溶解部に落下する原料の投入速度を制御することができ、各種金属のスクラップや地金等を酸素バーナーのみで効率よく溶解処理することができ、各種スクラップを低コストで再利用することができる。特に、予熱部の断面積を絞り部の断面積の1.4〜5倍の範囲に、及び/又は、予熱部の実質的な容積を溶解部の実質的な容積の0.4〜3倍の範囲にすることにより、小規模な溶解炉でも50%以上の高い熱効率を達成でき、優れた溶解性能を得ることが可能になる。
【0129】
また、絞り部又はその近傍で溶解部と予熱部とを分離可能とすることにより、炉全体を傾斜させることなく、限られたスペース内で容易に出湯操作を行うことができる。
【0130】
さらに、溶解部の上部を水冷ジャケットで形成することにより、耐火物原単位を大幅に削減することができ、全体としての金属溶解コストを大幅に低減することができる。
【0131】
また、溶解部に設ける酸素バーナーの火炎噴出方向を特定の円内に向けることにより、金属原料の溶解と予熱とを最適に制御でき、各種金属原料を効率的に溶解することができる。さらに、バーナー取付け高さを特定の範囲に設定することにより、熱効率のさらなる向上が図れ、殊に融点の高い鉄等の金属原料の溶解に高い効果を得ることができる。また、複数本の酸素バーナーを用いる場合は、各酸素バーナーの火炎噴出方向を適当に組合わせることにより、溶解時間の短縮等を図ることも可能である。
【0132】
さらに、酸素バーナーとして、燃焼ノズルからの燃焼火炎の吐出方向がバーナー軸線に対して実質的に角度を有する偏心バーナーを用いて、該偏心バーナーを回動させることにより、溶解部内の金属を均一に加熱することができるとともに、金属原料の溶解と予熱とを最適に制御できる。
【0133】
また、前記溶解部の上部に二次燃焼用酸素ノズルを設けることにより、未燃焼成分を燃焼して熱効率を高めることができる。さらに、前記溶解部の底部に溶湯撹拌用ノズルを設けることにより、溶湯の撹拌を促進して、溶湯を均一に加熱できる。
【0134】
さらに、溶融スラグに炭材を投入して溶融スラグをフォーミング状態にして酸素バーナーによる溶解操作を行うことにより、燃焼火炎の熱エネルギーを有効にスラグに伝熱することができ、該スラグを介して溶湯を効率よく昇温させることができる。これにより、溶解時間の短縮、熱効率の向上等が図れ、生産性の向上や操業コストの大幅な低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した金属溶解炉の第1実施形態例を示す縦断面図である。
【図2】 酸素バーナーのみで鉄スクラップを溶解したときの典型的な溶解パターンを示す図である。
【図3】 本発明を適用した金属溶解炉の第2実施形態例を示す縦断面図である。
【図4】 本発明を適用した金属溶解炉の第3実施形態例を示す縦断面図である。
【図5】 図4に示す金属溶解炉の出湯時の状態を示す縦断面図である。
【図6】 図4に示す金属溶解炉の分離部の他の形態例を示す要部の縦断面図である。
【図7】 本発明を適用した金属溶解炉の第4実施形態例を示す縦断面図である。
【図8】 本発明を適用した金属溶解炉の第5実施形態例を示す縦断面図である。
【図9】 図8に示す金属溶解炉における酸素バーナーの火炎噴出方向及び取付け高さを説明するための図である。
【図10】 本発明を適用した金属溶解炉の第6実施形態例を示す縦断面図である。
【図11】 本発明の第2の金属溶解方法を説明するための金属溶解炉の実施形態例を示す縦断面図である。
【図12】 実施例1の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
21…酸素バーナー、22…溶解部、23…予熱部、24…絞り部、25…溶湯、26…出湯口、27…排気口、28…蓋体、29…金属原料、30,31…斜辺、32…挿入孔、33…二次燃焼用酸素ノズル、34…溶湯撹拌用ノズル、37…分離部、40…水冷ジャケット、41…偏心バーナー、42…回動機構、43…フォーミングスラグ

Claims (11)

  1. 金属原料を酸素バーナーの火炎で溶解する溶解炉であって、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属原料を予熱する予熱部を設けるとともに、溶解部と予熱部との間に、溶解部及び予熱部の内径よりも小さな内径の絞り部を設け、該絞り部又はその近傍で前記溶解部と前記予熱部とを分離可能としたことを特徴とする金属溶解炉。
  2. 前記予熱部の断面積は、前記絞り部の断面積の1.4〜5倍の範囲であることを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  3. 前記予熱部の実質的な容積は、前記溶解部の実質的な容積の0.4〜3倍の範囲であることを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  4. 前記溶解部と前記予熱部との分離部は、炭素系耐火物で形成したことを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  5. 前記溶解部と予熱部との分離部には、水冷ジャケットが設けられていることを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  6. 前記酸素バーナーとして偏心バーナーを用い、該偏心バーナーをバーナー軸線を中心として回動可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  7. 前記溶解部の上部に二次燃焼用酸素ノズルを設けたことを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  8. 前記溶解部の底部に溶湯撹拌用ノズルを設けたことを特徴とする請求項1記載の金属溶解炉。
  9. 金属原料を酸素バーナーの火炎で溶解する金属溶解方法であって、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属原料を予熱する予熱部を設けるとともに、溶解部と予熱部との間に、溶解部及び予熱部の内径よりも小さな内径の絞り部を設けた金属溶解炉を用い、かつ前記酸素バーナーとして偏心バーナーを用い、該偏心バーナーを、前記金属原料の溶解段階に応じてバーナー軸線を中心として回動させることを特徴とする金属溶解方法。
  10. 金属原料を酸素バーナーの火炎で溶解する金属溶解方法であって、酸素バーナーを備えた溶解部の上方に、金属原料を予熱する予熱部を設けるとともに、溶解部と予熱部との間に、溶解部及び予熱部の内径よりも小さな内径の絞り部を設けた金属溶解炉を用い、前記金属原料の溶解操作中に浴面に存在する溶融スラグに炭材を投入し、該溶融スラグをフォーミングさせることを特徴とする金属溶解方法。
  11. 前記溶融スラグの塩基度γを、溶湯処理温度T[℃]に対して、0.001T−0.6≦γ≦0.0025T−1で示される範囲内に制御することを特徴とする請求項10記載の金属溶解方法。
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