JP4077282B2 - バニリルエーテル誘導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なバニリルエーテル誘導体又はその塩、及びこれを含有する外用剤組成物、血行促進剤及び育毛剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来血行促進剤としては、末梢血管拡張作用を有するカプサイシン並びにカプサイシンを含む唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、生姜の辛味成分であるジンゲロール、ショウガオール、生姜エキス、ビタミンE誘導体等が知られている。
【0003】
しかしながらカプサイシン等は、皮膚外用剤として適用した場合、強い皮膚刺激感を有しており、この刺激感を低減するために使用量を減少させると、血行促進効果が低下し、持続性も消失する。また、皮膚刺激感のない他の剤では、十分な血行促進効果と持続性を発現できなかった。
【0004】
また、末梢血管拡張剤である硫酸バメタン(特許文献1参照)やクエン酸ニカメタート(特許文献2参照)等の経口の血行促進剤の化粧料への転用が提案されているが、副作用が生じる可能性が懸念される。すなわち、これらの医薬品を皮膚外用剤として高濃度で使用する場合には、リスクが伴う。
【0005】
一方、前記の血行促進剤を含め各種のビタミン類、セリン、メチオニン等のアミノ酸類、センブリエキス、アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤、紫根エキス等の抗炎症剤、エストラジオール等の女性ホルモン剤、セファランチン等の皮膚機能亢進剤、アルキルアミンオキシド等の特定の両親媒性化合物が脱毛、髪の細りの予防及び治療に用いられてきた(特許文献3参照)。
【0006】
また、ジンゲロン配糖体(特許文献4参照)、オイゲノール誘導体(特許文献5参照)、シトラール(特許文献6参照)が育毛剤として報告されており、更にはカリウムチャンネルオープナーであるミノキシジルが育毛剤として最近注目されている。
【0007】
しかしながら、これらの薬剤は、明確な育毛効果、脱毛効果が認められないものが多く、またミノキシジルのように一定の効果があっても、心臓疾患への副作用が報告されている等、十分な育毛・脱毛予防効果を持ち、なおかつ皮膚外用剤としての高い安全性を持つ物質は未だ見出されていない。
【0008】
本発明は、優れた血行促進効果が長時間持続すると共に、高い育毛効果を有し、更に皮膚刺激感がなく、医薬又は化粧料として安全に使用できる化合物及びこれを含有する血行促進剤、育毛剤及び外用剤組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】
特開昭62−126105号公報
【特許文献2】
特開昭62−135405号公報
【特許文献3】
特開平12−44436号公報
【特許文献4】
特開2000−178140号公報
【特許文献5】
特開平9−241116号公報
【特許文献6】
特開2000−44467号公報
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定のバニリルエーテル誘導体又はその塩が、持続的でかつ強力な血行促進効果と優れた育毛効果を合わせ持ち、さらに皮膚刺激感が無く、血行促進剤、育毛剤及び外用剤組成物として安全に使用できることを見出した。
すなわち本発明は、下記の一般式(1):
【0011】
【化3】
【0012】
〔式中、R1は炭素数2〜4のアルキレン基を、R2は炭素数1〜24の炭化水素基、R3は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Aは次式(a):
【0013】
【化4】
【0014】
(ここで、R4は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Xは水素原子又は水酸基を示し、mは0〜4の整数を示す)又は(b)−COOHを示し、nは0〜3の整数を示す。〕
【0015】
で表されるバニリルエーテル誘導体又はその塩、これを含有する外用剤組成物、血行促進剤及び育毛剤を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の一般式(1)で表されるバニリルエーテル誘導体のうち、R1で示される炭素数2〜4のアルキレン基としては、炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基のいずれでもよく、例えばエチレン、トリメチレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、テトラメチレン、1,2−ジメチルエチレン等が挙げられる。このうち直鎖アルキレン基が好ましく、中でもエチレン及びトリメチレンがより好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0017】
2で示される炭素数1〜24の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソペンチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、イソステアリル基等の炭素数1〜24のアルキル基;アリル、オレイル基等の炭素数3〜18のアルケニル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基;ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル基等のフェニル−(C1−18)アルキル基である炭素数7〜24のアラルキル基が挙げられる。
【0018】
このうち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソペンチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル等の炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基;ベンジル、フェネチル基等の炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソペンチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル基が好ましい。
【0019】
3で示される炭素数1〜5のアルキル基としては、炭素数1〜3が好ましく、中でもメチル、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0020】
4で示される炭素数1〜6の炭化水素基としては、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖若しくは、環上の飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−エチルブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;アリル、ブテニル基等の炭素数3〜6のアルケニル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。
このうちメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基;アリル、ブテニル基等の炭素数3〜5のアルケニル基;シクロプロピル、シクロペンチル基等の炭素数3〜5のシクロアルキル基が好ましい。
【0021】
式(a)中、mは0〜4の整数を示すが、特に0又は1が好ましい。
また、nは0〜3の整数を示すが、特に0〜2が好ましい。
一般式(1)において、Aは効果、溶解性及び製造の簡便性から(a)が好ましい。
【0022】
本発明の一般式(1)で表されるバニリルエーテル誘導体のうちAが(b)−COOHである化合物については、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属類、アルミニウム、亜鉛等の両性金属塩や1級、2級、3級アミン塩及び4級アンモニウム塩、アルギニン、リジン等のアミノ酸塩を形成することができる。
【0023】
本発明の一般式(1)で表されるバニリルエーテル誘導体において特に好ましい具体的な化合物としては、以下に示すものが挙げられる。
【0024】
【化5】
【0025】
本発明の一般式(1)で表される化合物はいずれも新規化合物であり、例えばベンズアルデヒド誘導体(2)又はベンジルアルコール誘導体(3)から得られるバニリルアルキルエーテル誘導体(4)(特開昭57−9729号公報)を水酸基を有するアルキルハライド、グリシドール、α−モノクロロ酢酸ナトリウム、エチレンオキシド或いはグリシジルアルキルエーテル等と反応させることにより合成することができる。(式1)
【0026】
【化6】
【0027】
〔式中、Rは次式:
【0028】
【化7】
【0029】
(R1、R2及びnは前記と同じものを示す)を示し、R3及びAは前記と同じものを示し、R'は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子又はメシル基、トシル基を含むアルキルスルホニルオキシ基等の脱離基等を示す。〕
【0030】
このうち、グリセリル基をもつ化合物は、バニリルアルキルエーテル誘導体をケタール誘導体とした後、これを酸処理等により、又はバニリルアルキルエーテル誘導体とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテルをカルボン酸存在下又は非存在下のアルカリ加水分解により合成することもできる。(式2)
【0031】
【化8】
【0032】
〔式中Z1はハロゲン原子又はアルキルスルホニルオキシ基等の脱離基を示し、R'はアルキル基を示し、R及びR3は前記と同じものを示す。〕
【0033】
すなわち、(式1)において、バニリルアルキルエーテル誘導体に対して水酸基を有するアルキルハライド、グリシドール、α−モノクロロ酢酸、エチレンオキシド或いはグリシジルアルキルエーテル等をモル比で1〜10倍程度用い、無溶媒又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、水などの溶媒中で0〜150℃程度の温度で反応させることが好ましい。特に溶媒として水を用い、脂溶性の高いバニリルアルキルエーテル誘導体を水酸基を有するアルキルハライドと反応させる場合には上記の反応を層間移動触媒の存在下で行うことが好ましい。上記方法で得られるバニリルエーテル誘導体は、アルカリ水洗等による原料や中間体の除去、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーにより精製することもできる。
【0034】
かくして得られる本発明のバニリルエーテル誘導体又はその塩は、優れた血行促進・育毛作用を有し、人体に対して好ましくない皮膚刺激感をほとんど生じないという優れた特性を発揮する。
【0035】
さらに化学的安定性に優れ、保存による着色等もないため、これらの化合物は、末梢血行障害に起因する各種疾患、例えばしもやけ、冷え性、レイノー症等に対する予防及び治療剤や育毛剤、或いは外用剤組成物に配合することができる。
【0036】
本発明の血行促進剤、育毛剤及び外用剤組成物は、上記バニリルエーテル誘導体又はその塩を1種又は2種以上混合して用いることができ、また育毛効果又は血行促進効果を有する植物エキス(特開平9−268118号公報、特開平10−226621号公報記載)等を併用することもできる。好適な植物エキスとしては、ユズ、シナノキ、ボダイジュ、イチョウ、マロニエ、ブッチャーブルーム、センブリ等を挙げることができる。
【0037】
本発明の血行促進剤、育毛剤及び外用剤組成物は、外用医薬品、化粧料(皮膚化粧料、毛髪化粧料)等の製剤として用いることができる。
【0038】
外用医薬品としては、例えば、薬効成分を含有する各種軟膏、パップ剤等を挙げることができる。例えば軟膏剤とする場合には、油性基剤をベースとするもの、水中油型又は油中水型の乳化系基剤をベースとするもののいずれであっても良く、油性基剤としては、例えば、植物油、動物油、合成油、脂肪酸及び天然又は合成のグリセライド等が挙げられる。薬効成分としては、特に制限はなく、例えば、鎮痛消炎剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤、収斂剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0039】
皮膚化粧料としては、種々の形態、例えば油中水型又は水中油型の乳化型、ペースト状、ジェル状、固形等の油性又は水性の化粧料とすることができる。具体的には、クリーム、化粧乳液、化粧水、美容液、油性化粧料、口紅、ファンデーション、ローション、マッサージ剤、育毛剤、入浴剤、歯磨き剤、液体石鹸、固形石鹸、クリーム状ヘアコンディショナー、皮膚洗浄料等とすることができる。
【0040】
毛髪化粧料としては、特に制限はなく、例えばヘアトニック、整髪料、育毛剤等が挙げられ、育毛剤は、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアコンディショナー、エアロゾール、泡状タイプ等とすることができる。
【0041】
本発明の血行促進剤、育毛剤及び外用剤組成物を化粧料や外用医薬品として用いる場合のバニリルエーテル誘導体又はその塩の含有量は、0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%であることが特に好ましい。
【0042】
また、毛髪化粧料として用いる場合のバニリルエーテル誘導体又はその塩の含有量は、シャンプー等にあっては、0.001〜5%、リンス、トリートメント、コンディショナー、スタイリング剤等にあっては、0.1〜20%、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、エアロゾール、泡状タイプ等にあっては、0.01〜5%が好ましい。
【0043】
【実施例】
以下、実施例等により本発明を具体的に説明する。
化合物5以外の各サンプルは、まずバニリルアルコールから1−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼンを合成し、それぞれエーテル化することにより合成した。1−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼンは特開昭57−9729号公報の記載に従い合成した。
【0044】
実施例1 1−n−ブトキシメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシベンゼン(化合物1)の合成
1−n−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼン5g(23.8mmol)、蒸留水10g、水酸化ナトリウム0.97g(24.3mmol)を90℃で加熱攪拌しながら、イソプロパノール15gに溶解した2−ブロモエタノール6.54g(52.36mmol)を1時間かけて滴下した。その温度でさらに18時間反応させた後、室温まで冷却し、酢酸エチル100mLで抽出し、減圧下有機溶媒を留去した。残渣に酢酸エチル100mLを加え、1%NaOHaq.(100mL×5)、飽和食塩水(100mL×1)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥・ろ過後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/5)により精製し、油状の化合物1(1.73g,収率28.5%)を得た。
1H-NMR(200MHz,δ,CDCl3):
0.92(t,3H,J=7.23Hz), 1.41(m,2H),1.60(m,2H), 2.73(t,1H,J=6.16Hz), 3.46(t,2H,J=6.50Hz), 3.88(s,3H), 3.93(m,2H), 4.10-4.14(m,2H), 4.44(s, 2H), 6.82-6.93(m,3H)
【0045】
実施例2 1−n−ブトキシメチル−4−(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ)−3−メトキシベンゼン(化合物2)の合成
1−n−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼン 3g(14.3mmol)、蒸留水6g、水酸化ナトリウム0.57g(14.3mmol)を100℃で加熱攪拌しながら、蒸留水6gに溶解したα−モノクロロヒドリン3.16g(28.6mmol)を30分間かけて滴下した。その温度でさらに17時間反応させた後、室温まで冷却し、2N−硫酸(20mL)で反応を停止し、酢酸エチル100mLで抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL×1)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥・ろ過後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/5〜1/1)により精製して得た粗生成物1.5gをさらに再結晶(酢酸エチル/n−ヘキサン=10mL/10mL)により精製し、化合物2(0.72g,収率17.7%,mp67.5℃)を白色結晶として得た。
1H-NMR(200MHz,δ,CDCl3):
0.92(t,3H,J=7.22Hz), 1.30-1.48(m,2H), 1.53-1.79(m,2H), 2.57(t,1H), 3.33(br,1H), 3.71(t,2H,J=6.51Hz), 3.78(m,2H), 3.87(s,3H), 3.97-4.16(m,3H), 4.43(s,2H), 6.82-6.91(m,3H)
【0046】
実施例3 1−n−ブトキシメチル−4−カルボキシメトキシ−3−メトキシベンゼン(化合物3)の合成
1−n−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼン5g(23.8mmol)、蒸留水20g、水酸化ナトリウム0.98g(24.6mmol)を100℃で加熱攪拌しながら、蒸留水10gに溶解したクロロ酢酸ナトリウム4.17g(35.1mmol)を20分間かけて滴下した。その温度でさらに7時間反応させた後、2M−NaOHaq.(10g)を加えてさらに1時間反応させ、室温まで冷却した。2N−硫酸(25mL)を加え系内を酸性化した後、酢酸エチル100mLで抽出し、NaHCO32.02gを溶解した蒸留水50mLで逆抽出した。逆抽出した水層を酢酸エチル(50mL×1)で洗浄後、2N−硫酸で酸性化してから酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL×1)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥・ろ過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=2/1)により精製して得た2.5gの結晶をさらに再結晶(酢酸エチル/n−ヘキサン=15mL/60mL)により精製し、化合物3(1.53g,収率32.7%,mp83.4℃)を白色結晶として得た。
1H-NMR(200MHz,δ,CDCl3):
0.92(t,3H,J=7.23Hz), 1.31-1.49(m,2H), 1.54-1.68(m,2H), 3.47(t,2H,J=6.49Hz), 3.91(s,3H), 4.45(s,2H), 4.66(s,2H), 6.85-6.96(m,3H)
【0047】
実施例4 1−n−ブトキシメチル−4−(3−イソプロピルオキシ−2−ヒドロキシ−n−プロピル)−3−メトキシベンゼン(化合物4)の合成
1−n−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼン(10g,47.6mmol)、グリシジルイソプロピルエーテル(11.1g,95.2mmol)に蒸留水(50g)を加え、50℃で攪拌し、そこへ、4N−水酸化ナトリウム水溶液(6mL,NaOH)を加え、8時間反応させた。反応後、トルエンで抽出し、有機層を2N−NaOHaq.で洗浄することにより、未反応の1−n−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼンを除去し、さらに有機層を飽和食塩水で洗浄した。トッピング後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、油状の化合物10(7.75g,収率50%)を得た。
1H-NMR(200MHz,δ,CDCl3):
0.92(t,3H,J=7.23Hz), 1.17(d,6H,J=6.09Hz), 1.30-1.64(m,4H), 2.91(d,1H,J=4.11Hz), 3.45(t,2H,J=6.51Hz), 3.51-3.71(m,3H), 3.86(s,3H), 3.98-4.13(m,3H), 4.43(s,2H), 6.83-6.93(m,3H)
【0048】
実施例5 1−n−ブトキシエトキシメチル−4−ヒドロキシエチル−3−メトキシベンゼン(化合物5)の合成
1−n−ブトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼン(5g,20.8mmol)、蒸留水(15g)を70℃で撹拌し、そこへ3.5N−水酸化ナトリウム水溶液(18mL,NaOH)とクロロエタノール水溶液(クロロエタノール5g,62.4mmol/蒸留水10mL)を2時間かけて交互に滴下した。反応後、トルエンで抽出し、有機層を2N−水酸化ナトリウム水溶液で洗浄することにより、未反応の1−n−ブトキシエトキシメチル−4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゼンを除去し、さらに有機層を飽和食塩水で洗浄した。乾燥・濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、油状の化合物5(4g,収率64%)を得た。
1H-NMR(200MHz,δ,CDCl3):
0.92(t,3H,J=7.19Hz), 1.25-1.46(m,2H), 1.51-1.65(m,2H), 2.76(t,1H,J=6.21Hz), 3.47(t,2H,J=6.65Hz), 3.61(s,4H), 3.87(s,3H), 3.93(t,3H,J=4.52Hz), 4.52(s,2H), 6.82-6.95(m,3H)
【0049】
試験例1 モルモット皮膚における血流促進作用
本発明の化合物塗布による血行促進効果を以下に示す方法で測定した。
モルモット(雄性、9〜14週齢)は、測定前日に毛刈り及び電気シェーバーによる剃毛を皮膚に対して穏やかに行った。試験当日の血流測定30分前にも、電気シェーバーによる剃毛を穏やかに行った。
上記モルモット背部を左右に区分し、固定ボックスに保持した後、多点式レーザードップラー血流計(KB−201(バイオメディカル社))を装着し、サンプル塗布前の定常血流量を測定した。次に、血流プローブを一旦はずし、左右のどちらかにサンプル溶液(1%溶液)或いはサンプル希釈溶媒(エタノール/水=1/1(w/w))を塗布し(10μL/cm2)、固定ボックスから開放した状態で放置した。塗布10分後に再び固定ボックスに保持し、血流プローブを背部塗布領域に貼り付け血流量を連続的に測定した。塗布15分〜20分後の平均血流量を求め、サンプル溶液塗布側及びサンプル希釈溶媒塗布側の定常血流量に対する相対血流上昇量の比を算出することにより先の定常血流量に対する相対値(%)を求めた。1つのサンプルにつき4匹のモルモットで試験を行い、相対値(%)の平均を算出した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
その結果、既存の血行促進剤であるニコチン酸−dl−α−トコフェロールに比べて、本発明の化合物はすべて同等以上の高い血流促進効果を示した。
【0052】
試験例2 ラット髭器官培養系における髭伸長促進作用
本発明化合物の育毛活性は、ラット髭器官培養毛の伸長促進試験により評価した。以下に試験方法を示す。
[試験方法]
3〜7日齢のSDラットの髭毛包を新藤らの方法(新藤敏政、坪井良治、日皮会誌、Vol.107、769ページ、1997年)を一部改変して培養を行なった。ラットを氷冷麻酔し、70%エタノールで皮膚を消毒した。上唇部皮膚組織をRPMI1640(GIBCO BRL製)培地中に切り出し、皮下組織側より実体顕微鏡下において、毛包周囲の皮下組織を微細ピンセットで切り除き、毛包漏斗部を微小剪刀にて切断して単離した髭毛包をRPMI 1640中に集めた。採取した髭毛包を器官培養シャーレ(Falcon製)のステンレスグリッド上に3〜6本ずつ並べ、無血清のRPMI 1640培地を毛包が浸る程度添加して、5%CO2、95%Air、35℃条件下で培養を行なった。培養開始時に被験物質を0.1μMになるようにRPMI 1640培地で調製し、培養系に添加した。髭器官培養毛包の伸長量は、培養毛包の拡大外観写真を培養開始時及び2日後に撮影し、両画像の毛球部基底部から毛幹先端までの長さ変化を測定した。試験は各サンプルについて3回行い、薬剤無添加をコントロールとして、コントロール(100%)に対する相対値の平均を算出し、これを髭伸長促進率(%)とした。結果を表2に示した。
【0053】
【表2】
【0054】
その結果、本発明の化合物は全て、コントロールに比べて、毛成長を120%以上伸長し、育毛効果に優れていることが明らかとなった。
以上の試験結果から、本発明のバニリルエーテル誘導体は、既存の血行促進剤に比べても、充分かつ高い血行促進効果を持ち、更に優れた育毛効果も有していることが明らかとなった。
【0055】
実施例4 次の表3〜6に示す組成の乳化化粧料を常法により製造した。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
得られた化粧料は、いずれも肌への刺激が少なく、良好な血行促進効果が認められた。
【0061】
実施例5 次の表7〜9に示す組成のヘアトニックを常法により製造した。
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
得られたヘアトニックは、肌への刺激が少なく、良好な育毛効果が認められた。
【0066】
【発明の効果】
本発明のバニリルエーテル誘導体又はその塩は、持続的で、かつ強力な血行促進効果と優れた育毛効果を合わせ持ち、更に皮膚刺激がないことから、これを含有する血行促進剤、育毛剤及び外用剤組成物は、安全性の高い皮膚化粧料、毛髪化粧料、外用医薬品又は医薬部外品として有用である。

Claims (5)

  1. 下記の一般式(1):
    〔式中、R1は炭素数2〜4のアルキレン基を、R2は炭素数1〜24の炭化水素基、R3は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Aは次式(a):
    (ここで、R4は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Xは水素原子又は水酸基を示し、mは0〜の整数を示す)又は(b)−COOHを示し、nは0〜の整数を示す。〕で表されるバニリルエーテル誘導体又はその塩。
  2. 請求項1記載のバニリルエーテル誘導体又はその塩を含有する化粧料組成物。
  3. 請求項1記載のバニリルエーテル誘導体又はその塩を含有する外用医薬組成物。
  4. 請求項1記載のバニリルエーテル誘導体又はその塩を含有する血行促進剤。
  5. 請求項1記載のバニリルエーテル誘導体又はその塩を含有する育毛剤。
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