上記充填装置75,94による錠剤81の充填を開始する前段階においては、予め充填装置75,94に錠剤81を供給し、スプリングパイプ83及び充填シュート82の通路85の内部や、供給シュート94の通路の内部に錠剤81を積載させておく必要がある。
前記充填装置75,94への錠剤81の供給に際しては、当該充填装置75,94内に錠剤81が存在しない状態で、パーツフィーダ84,93に錠剤81が供給される。そして、パーツフィーダ84,93が作動させられることで、錠剤81はスプリングパイプ83または供給シュート92へと案内される。前記案内された錠剤81は、自重によってスプリングパイプ83及び充填シュート82の通路85の内部、または、供給シュート94の通路の内部を落下する。
しかしながら、充填装置75,94への錠剤81の供給が開始された直後において、錠剤81は、スプリングパイプ83の上端から充填シュート82の下端まで、あるいは、供給シュート94の通路の上端から下端までの大きな落差のある経路を一気に落下することとなる。このとき、特に、錠剤81が口腔内崩壊錠のように非常に脆い場合には、落下の衝撃によって、割れや欠け等の損傷を生じてしまうおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上方から下方へと移送される被移送物の損傷を抑制可能な移送装置、充填装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
手段1.被移送物を上方から下方へと移送させるための移送装置であって、前記被移送物を通過させるための上下方向に延びる移送経路と、前記移送経路内に前記被移送物が存在しない状態で、前記被移送物が前記移送経路内に供給される際に、自身が存在しない場合に比べて前記被移送物の流下速度を遅延させつつ、前記被移送物を下方へと案内可能な規制案内手段とを備えることを特徴とする移送装置。
上記手段1によれば、移送装置は、上下方向に延びる移送経路と規制案内手段とを備えている。移送経路内に被移送物が供給されると、該被移送物は自重によって下方へと移動しようとする。この際、規制案内手段によって、被移送物は、流下速度を遅延させられつつ、下方へと案内される。このため、被移送物が移送経路内を勢いよく一気に落下させられてしまうことがなく、落下による衝撃が抑制される。その結果、被移送物の損傷を抑制することができる。
手段2.前記規制案内手段は、前記移送経路内にある被移送物の下降を停止させるための停止手段と、前記停止手段を上下方向に移動させるための移動手段と、前記停止手段による前記被移送物の下降停止を解除させるための解除手段とを有することを特徴とする手段1に記載の移送装置。
上記手段2によれば、停止手段によって、移送経路内にある被移送物の下降を停止させることができる。このため、移送経路上方において被移送物を停止させることで、被移送物の移送経路内の落差を移送経路の上端から前記上方までの非常に短い距離にすることができる。従って、被移送物が移送経路内を落下する際の衝撃を抑制でき、落下による損傷をも抑制することができる。また、移動手段によって停止手段を上方から下方へと移動させることで、停止手段の移動に伴って、前記停止させられた被移送物が下方へと移送させられる。このとき、移動手段をゆっくり移動させることで、被移送物の流下速度を遅延させることができる。このため、被移送物は落下させられること無く、落下による衝撃を受けることもない。その結果、落下による損傷を抑制できる。さらに、解除手段を作動させることで、停止手段による被移送物の下降停止が解除され、被移送物が移送経路内を下端に向けて流下させられる。被移送物を移送経路の下方まで案内した後で、前記下降停止解除を実施することで、移送経路内の下方における被移送物の落下の際の落差を、移送経路の前記下方から下端までの非常に短い距離にすることができる。このため、被移送物が移送経路内を落下する際の衝撃を抑制でき、落下による損傷をも抑制することができる。
手段3.前記移送経路は、複数存在し、前記解除手段は、前記各移送経路における前記停止手段による前記被移送物の下降停止を同期して解除可能に構成されていることを特徴とする手段2に記載の移送装置。
上記手段3によれば、移送経路が複数あり、各移送経路における被移送物の下降停止が、解除手段によって一斉に解除される。このため、移送経路によって解除タイミングがばらばらであったり、不明であったりする場合に比べ、前記解除位置よりも下方における被移送物の移送位置を比較的安定して揃えることができる。従って、被移送物を各移送経路の下方まで案内した後で、前記下降停止解除を同期して実施することで、各移送経路の下端到達時間をほぼ一致させることができる。またその結果、前記到達が完了したか否かの判断が容易になり、移送装置よりも下流側における被移送物の処理を素早く開始することができる。さらに、PTPシートの充填装置等に移送装置を備えた場合には、特に、充填シュート部等にシャッタを設けていなくても、PTPシートへの供給開始位置を合わせることが可能になる。
手段4.前記解除手段による前記各移送経路における前記被移送物の下降停止の解除は、共通の駆動により同期して実施されることを特徴とする手段3に記載の移送装置。
上記手段4によれば、共通の駆動によって、各移送経路における前記被移送物の下降停止が同期して解除される。このような構成とすることで、移送経路毎に駆動させる構成する場合よりも、装置の構造を著しく簡素化することができる。
手段5.前記移送経路は、複数存在し、前記移動手段は、前記各移送経路における前記被移送物を同期して移送するように、前記停止手段を移動可能に構成されていることを特徴とする手段2乃至4のいずれかに記載の移送装置。
上記手段5によれば、移送経路が複数あり、停止手段による各移送経路における被移送物の移送が同期して行われるように、移動手段によって停止手段が移動させられる。このため、移送経路によって被移送物の移送タイミングがばらばらであったり、不明であったりする場合に比べ、被移送物の移送位置を確実に揃えることができる。従って、各移送経路の移送完了時間を一致させるとともに、前記移送が完了したか否かの判断が容易になり、移送後の被移送物の処理を素早く開始することができる。
手段6.前記移動手段による前記各移送経路における前記被移送物の移動は、共通の駆動により同期して実施されることを特徴とする手段5に記載の移送装置。
上記手段6によれば、共通の駆動によって、各移送経路における前記被移送物の移動が同期して行われる。このような構成とすることで、移送経路毎に駆動させる構成する場合よりも、装置の構造を著しく簡素化することができる。
手段7.前記移送経路は、スプリングパイプによって構成され、前記停止手段は、上流側に対し下流側が高くなる部分または同じ高さとなる部分を確保するように前記スプリングパイプを屈曲させることで、前記被移送物の下降を停止可能に構成されていることを特徴とする手段2乃至6のいずれかに記載の移送装置。
上記手段7によれば、スプリングパイプの内部を移送経路として、被移送物が移送される。また、停止手段によって、上流側に対し下流側が高くなる部分または同じ高さとなる部分を確保するように、スプリングパイプが屈曲させられる。被移送物のスプリングパイプ内における移動は、自重によるものであって、下方への移動は容易であるが、上方への移動は事実上不可能である。このため、スプリングパイプ内を流下させられる際の被移送物の移動を、前記屈曲させられた部分の近傍で停止させることができる。さらに、移動手段によって停止手段を移動させる際には、停止手段によるスプリングパイプの屈曲状態を維持することで、被移送物を移動手段の移動に伴って移送することができる。
手段8.前記解除手段は、前記スプリングパイプ全体にわたり、上流側よりも下流側が低くなるように前記停止手段を移動可能に構成されていることを特徴とする手段7に記載の移送装置。
手段8によれば、解除手段によって、停止手段を移動させることで、スプリングパイプは、上流側に対し下流側が高くなる部分または同じ高さとなる部分がなくなり、全体にわたり、上流側よりも下流側が低くさせられる。これにより、スプリングパイプ内で下降停止させられていた被移送物を、自重により流下させることができる。なお、解除手段は、停止手段をスプリングパイプから離間可能に構成されていてもよい。停止手段が離間させられることで、スプリングパイプの復元力により、当該スプリングパイプ全体にわたり、上流側よりも下流側を低くさせることができる。
手段9.前記停止手段は、少なくとも一対のロールまたはバーからなるとともに、該一対のロールまたはバーに前記スプリングパイプを掛けることにより、該スプリングパイプを屈曲可能に構成されていることを特徴とする手段7または8に記載の移送装置。
上記手段9によれば、一対のロール等にスプリングパイプを掛けることで、スプリングパイプを屈曲させることができる。このため、ロールの掛け方によって、スプリングパイプに対して、上流側に対し下流側が高くなる部分または同じ高さとなる部分を確保したり、スプリングパイプ全体にわたり、上流側よりも下流側を低くしたりするといったことが容易に可能となる。特に、ロールの場合には、スプリングパイプへの負荷が少なくて済む。
手段10.前記停止手段は、前記移送経路内において前記被移送物を下方から支持可能な支持部材であることを特徴とする手段2乃至6のいずれかに記載の移送装置。
上記手段10によれば、停止手段の支持部材によって、移送経路内の被移送物が下方から支持される。このため、移送経路を変形させる必要が無く、移送経路を構成する部品への負荷を抑制できる。また、被移送物を支持部材で直接支持可能となるため、当該被移送物の下降停止や下方への移動の規制をより確実なものとすることができる。
手段11.前記解除手段は、前記支持部材を前記移送経路に対して出没可能に構成されていることを特徴とする手段10に記載の移送装置。
上記手段11によれば、解除手段によって、支持部材が移送経路内に突出させられると、該移送経路内の被移送物を支持することが可能となる。逆に、解除手段によって、支持部材が移送経路から没入させられると、該移送経路内の被移送物の支持が解除され、被移送物の流下が可能となる。すなわち、出没という比較的単純な動作で、支持・解除の切換を行うことができる。
手段12.手段1乃至11のいずれかに記載の移送装置を備え、移送される容器フィルムに形成されたポケット部に被移送物を充填するための充填装置。
上記手段12によれば、充填装置に前記移送装置を備えることで、容器フィルムのポケット部に被移送物を充填する際に、被移送物の損傷が抑制される。このため、容器フィルムに対し損傷された被移送物が供給されにくい。
手段13.手段12に記載の充填装置を備えてなるPTP包装機。
上記手段13によれば、PTP包装機に前記充填装置を備えることで、容器フィルムに対し、損傷された被移送物が供給されにくく、その結果、被移送物の充填された容器フィルムから製造される製品としてのPTPシートの不良率を低減することができる。
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤の充填装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機内でPTPシートのポケット部に錠剤が充填されるようになっている。図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着された密封用フィルム4とを有している。容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、透明または半透明を呈している。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。また、各ポケット部2には被移送物としての錠剤5が1つずつ収容されている。また、PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び密封用フィルム4から形成された帯状のPTPフィルムがカット或いは打抜かれることで、シート状に製造されている。
図3に示すように、PTP包装機6は、錠剤5を帯状の容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、ポリプロピレン、PVCなどのフィルム7をフィルム送りロール8とテンションロール9,10とで、加熱装置11及び成形装置12に送り込み、錠剤5が充填されるポケット部2をフィルム7に成形する。そして、フィルム7にポケット部2が成形された容器フィルム3が、錠剤5を充填するための充填装置13の下まで送られてくると、充填装置13が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
また、錠剤5の充填後、各ポケット部2における錠剤5の有無、充填された錠剤5の欠損、異物の混入等を見付け出すために検査が行われる。該検査は、CCDカメラ14、照明15などから構成される検査装置により行われる。
さらに、各ポケット部2に錠剤5が充填された容器フィルム3の上に、密封用フィルム4を、テンションロール16,17を介して送り込み、シール手段たる一対のシールロール18,19で固着させる。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。かかる長尺状のPTPフィルム20はシート状のPTPシート1に裁断された後に、図示しない不良シート排出機構やPTPシート集積機構などへ順に送られる。
さて、図1は、本実施形態におけるPTP包装機6に適用される充填装置13を示している。充填装置13は、被移送物としての錠剤5を受け入れ、下流側へと供給するためのパーツフィーダ22と、前記供給された錠剤5を一列に積載するための複数のスプリングパイプ23と、錠剤5をポケット部2へと充填するための充填シュート24と、錠剤5の下方への移動を規制するための規制案内手段25とを備えている。なお、第1の実施形態では、主としてスプリングパイプ23と規制案内手段25とにより移送装置が構成されている。
パーツフィーダ22は、錠剤5を貯留可能な深皿形状のフィーダ部26、及び、該フィーダ部26を振動させるための図示しないアクチュエータを有している。フィーダ部26は、アクチュエータによって振動させられることで、錠剤5を所定方向へ回動させるように構成されている。また、フィーダ部26の底部には複数の誘導孔27が設けられており、回動させられた錠剤5が誘導孔27に落下するようになっている。
スプリングパイプ23は、図示はしないが螺旋状の金属線によって構成され、可撓性を有する筒体であるとともに、長手方向両端が開口しており、内部を錠剤5が一列に整列して通過可能になっている。つまり、本実施形態では、スプリングパイプ23の内側により移送経路が構成され、スプリングパイプ23は、移送経路構成手段として機能する。また、スプリングパイプ23は、その長手方向が略上下方向に延びるようにして設けられ、前記フィーダ部26の下側において、上部開口端が誘導孔27に連結されているとともに、下部開口端が充填シュート24に連結されている。
充填シュート24は、容器フィルム3の幅方向全体にわたって延びるように配設されているとともに、錠剤5用の複数の通路29が設けられている。通路29の上部は鉛直方向に延びており、下部は、下端に近づくにつれて鉛直方向に対する傾斜角度を増すように容器フィルム3の幅方向に湾曲している。また、各通路29は、錠剤5が一列に積載できるように形成されている。各通路29の上端及び下端は開口しており、上部開口端が前記各スプリングパイプ23に連結され、下部開口端は積載された錠剤5を容器フィルム3のポケット部2へと落下可能になっている。さらに、通路29の下端には、錠剤5の移動(落下)を停止させるための図示しないシャッタ機構が設けられている。該シャッタ機構は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入されるようになっている。なお、前記通路29の上端から下端までの鉛直方向の距離は、短い方が好ましい。
さて、前記規制案内手段25は、停止手段を構成する一対のロール31,32と、該ロール31,32を移動させるための移動手段33とを備えている。一対のロール31,32は、充填シュート24に上方において、長手方向を平行、かつ、略水平方向に並べて、容器フィルム3の幅方向全体にわたって延びるように配置されるとともに、その一端が移動手段33に支持されている。
また、通常、ロール31,32には、全てのスプリングパイプ23が、一方のロール31の下側と、他方のロール32の上側とを通るように略N字状に揃えて掛けられている。より詳しくは、スプリングパイプ23は、誘導孔27から一方のロール31に向かって下方へと延び、一方のロール31の外周に沿って向きを変えて一旦上方に向かい、他方のロール32の外周に沿って向きを変えて再度下方に向かって延びている。
移動手段33は、前記ロール31,32の一端が連結されてなる移動板34と、該移動板34を上下方向に移動させるためのガイド35と、解除手段を構成し、前記移動板34に当接させられるストッパ36とを有している。移動板34は、略長方形の板状であり、前記ロール31,32の長手方向に略直交して設けられている。また、移動板34は、軸38を介してガイド35に回動可能に支持されている。なお、軸38は、前記ロール31,32の長手方向に平行に延びている。ガイド35には、図示しないアクチュエータが内蔵されている。該アクチュエータによって移動板34が軸38ともども上下方向に移動させられるようになっており、移動板34と共に一対のロール31,32もまた上下方向に移動させられるようになっている。ストッパ36は、移動板34が下方へと移動した際に、移動板34の下面に当接させられるように配置されている。該ストッパ36に当接させられた移動板34は、その軸38側がさらに下方へ移動させられることで、軸38を中心に回動するようになっている。
上記のように構成されてなる充填装置13は、容器フィルム3への錠剤5の充填を開始する前段階において、予め、スプリングパイプ23内及び充填シュート24の通路29内に錠剤5を積載しておく必要がある。ここで、充填装置13内に錠剤5を積載するために、該充填装置13に錠剤5が供給される場合について説明する。
まず、充填装置13内に錠剤5が全く無い状態において、ガイド35のアクチュエータを作動させることによって、移動板34を移動させ、ロール31,32をスプリングパイプ23の上部に対応した位置まで移動させておく。このとき、上述したようにスプリングパイプ23の上部が、ロール31,32に掛けられて、略N字状に屈曲された状態となる。
次に、パーツフィーダ22のフィーダ部26に錠剤5を供給する。そして、パーツフィーダ22のアクチュエータを作動させることによって、フィーダ部26を振動させる。この振動によって、供給された錠剤5が所定方向に回動させられ、誘導孔27に到達した錠剤5は、当該誘導孔27に落下させられることとなる。前記誘導孔27に落下させられた錠剤5は、スプリングパイプ23へと案内される。
該スプリングパイプ23の上部には、ロール31に沿って下流側が上流側よりも高くなる部分が設けられている。また、錠剤5のスプリングパイプ23内における移動は、自重によるものであって、下方への移動は容易であるが、上方への移動は事実上不可能である。このため、図4(a)に示すように、最初にスプリングパイプ23内を落下させられる錠剤5は、ロール31の近傍でその移動を停止させられることとなる。従って、ここで錠剤5の落下させられた距離は、誘導孔27からスプリングパイプ23の上部までの非常に短い距離となる。
続いて、ガイド35のアクチュエータを作動させることによって、ロール31,32にスプリングパイプ23を略N字状に掛けた状態を維持しつつ、移動板34を下方へとゆっくりと移動させる。該移動板34の移動により、ロール31,32が下方へ移動させられる。これに伴って、図4(b)に示すように、各スプリングパイプ23内の錠剤5が下方へと同期して移送される。なお、移動板34の移動は、少なくとも自重により錠剤5が落下する速度より遅く、好ましくは、スプリングパイプ23の上端に到達した錠剤5が、直前にスプリングパイプ23に落下させられた錠剤5と接触しつつ、スプリングパイプ23内を移動可能な速度である。
さらに、移動板34は、ストッパ36に当接させられた後は、主として軸38側のみが下方へと移動させられる。すなわち、移動板34が軸38を中心に回動させられ、軸38とは反対側が上動させられることになる。これにより、図4(c)に示すように、ロール31,32は略水平に並んだ状態から、上下方向に並んだ状態へ移動する。つまり、スプリングパイプ23は、略N字状から略く字状となる。詳しくは、スプリングパイプ23は、誘導孔27から一方のロール31に向かって斜め下方に向き、さらに、他方のロール32に向かっても上方に向きを変えることなく斜め下方に向く。そして、スプリングパイプ23は、他方のロール32に沿って逆斜め下方に向きをかえ、充填シュート24に向かうこととなる。すなわち、スプリングパイプ23の上流側よりも下流側が高くなる部分がなくなり、スプリングパイプ23の全体にわたり上流側よりも下流側が低くなる。これにより、ロール31の近傍より下流側への移動が停止させられていた錠剤5が、自重により下方へと移動させられ、充填シュート24の通路29下端まで移動させられる。すると、ほぼ同一のタイミングで、スプリングパイプ23の上端から、充填シュート24の通路29下端まで、錠剤5が連続して一列に積載された状態となる。
このようにして錠剤5の積載された状態のもと、容器フィルム3への錠剤5の充填を開始する。このとき、充填シュート24の全ての通路29下端まで錠剤5が到達しているため、シャッタを開放することで、各通路29一斉に充填開始可能となる。充填中においては、パーツフィーダ22を作動させて、錠剤5をスプリングパイプ23及び充填シュート24に連続的に供給させる。一方、容器フィルム3の移送に合わせて、充填シュート24のシャッタを開閉させることで、充填シュート24の通路29下端からポケット部2へと錠剤5が落下させられる。
以上詳述したように、上下方向に移動可能な一対のロール31,32を備えた規制案内手段25を設けるとともに、該一対のロール31,32に可撓性を有するスプリングパイプ23を略N字状に掛けるように構成し、錠剤5の移動経路において、上流側よりも下流側が高くなる部分を確保することとした。このため、スプリングパイプ23内を落下させられる錠剤5をロール31近傍で停止させることができる。
また、充填装置13に錠剤5を供給する前に、ロール31,32がスプリングパイプ23の上部に移動させられた状態となるようにし、スプリングパイプ23を略N字状に掛けたままロール31,32を下方へと移動させるようにした。このため、ロール31,32の移動に伴って、錠剤5をスプリングパイプ23の上部から下部へとゆっくりと移送することができる。従って、錠剤5がスプリングパイプ23内を一気に落下させられることは無く、落下による衝撃を受けることも無い。その結果、錠剤5の損傷を抑制することができる。
さらに、パーツフィーダ22に供給された錠剤5は、誘導孔27から落下させられると、ロール31近傍のスプリングパイプ23の上部で停止させられる。このため、このとき落下させられる錠剤5の距離は、誘導孔27からスプリングパイプ23の上部までの非常に短い距離となる。従って、落下の際の錠剤5への衝撃を低減することができ、錠剤5の損傷を抑制できる。
加えて、スプリングパイプ23に対するロール31,32の位置関係を変化させるだけで、スプリングパイプ23の屈曲形状を略N字状から略く字状へと変形させることができる。これにより、スプリングパイプ23の全体にわたり、上流側よりも下流側を低くすることができ、スプリングパイプ23の下流側への錠剤5の移送停止を容易に解除することができる。また、前記ロール31,32の位置関係の変化は、該ロール31,32を支持する移動板34を下降させつつ、ストッパ36に当接させるだけで、実施させることができる。このため、スプリングパイプ23の屈曲形状を変更するための別途のアクチュエータ等が必要なく、装置全体の構成を簡素なものとすることができる。
併せて、前記スプリングパイプ23の屈曲形状の変形を当該スプリングパイプ23の下部において行なうようにした。このため、該スプリングパイプ23の変形に伴って落下させられる錠剤5の距離は、スプリングパイプ23の下部から充填シュート24の下端までの短い距離となる。従って、落下の際の錠剤5への衝撃を低減することができ、錠剤5の損傷を抑制することができる。
このように、規制案内手段25によって、錠剤5の損傷を抑制しつつ、充填装置13内における錠剤5の移送を自動的に行うことができる。このため、作業者による特別な手作業等が必要なく、錠剤5の移送を安定したものにすることができ、確実な製造管理をすることができる。
また、規制案内手段25は、パーツフィーダとスプリングパイプと充填シュートとからなる従来の充填装置に容易に追加装備させることができる。
さらに、スプリングパイプ23が複数あり、全てのスプリングパイプ23が一対のロール31,32に揃えて掛けられている。そのうえ、全てのスプリングパイプ23に共通したロール31,32の移動により、全てのスプリングパイプ23の屈曲位置や形状を同期して変化させることができる。このため、非常に簡素な構造により全てのスプリングパイプ23の形状変化を容易に一斉に実施させることができる。また、各スプリングパイプ23における錠剤5の移送位置や、移送停止の解除を同期させることができる。従って、錠剤5の各スプリングパイプ23の下端までの到達時間、さらには、充填シュート24の各通路29下端までの到達時間をほぼ一致させることができる。その結果、全ての充填シュート24の通路下端まで錠剤5の到達が完了したか否かの判断が容易になり、ポケット部2への充填をスムーズに開始することができる。また特に、充填シュート24にシャッタを設けていなくても、PTPシート1への供給開始位置を合わせることが可能になる。
さらにまた、充填装置13に錠剤5を供給する際における錠剤5の損傷が抑制されるため、容器フィルム3に対し損傷された錠剤5が供給されにくい。このため、PTP包装機6によって製造される製品としてのPTPシート1の不良率を低減することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本第2の実施形態では、図5に示すように、充填装置41は、パーツフィーダ42と、錠剤5をポケット部2へと充填するためのロータリドラム43と、前記パーツフィーダ42からロータリドラム43へと錠剤5を供給するための供給シュート44と、錠剤5の落下を規制するための規制案内手段45とを備えている。なお、第2の実施形態においては、供給シュート44と規制案内手段45とによって移送装置が構成されている。
ロータリドラム43は、回転軸46を中心軸とする円柱形状の回転体である。回転軸46は、その基端部が図示しないサーボモータに直接又は間接に連結されており、サーボモータによって回転駆動される。ロータリドラム43は、回転軸46とともに一体回転する。ロータリドラム43の外周面上には、錠剤5を収容し、かつ、保持するための保持部としての収容凹部47が多数形成されている。なお、収容凹部47に対応して、図示しない吸引機構が設けられており、各収容凹部23に収容される錠剤2の吸引及び吸引の解除が可能となっている。
ロータリドラム43の上方には、パーツフィーダ42の誘導孔48から落下した錠剤5を収容凹部47に供給するための供給シュート44が配設されている。該供給シュート44には、上下方向に延びる移送経路としての複数の通路50が設けられ、各通路50内を錠剤5が一列に積載できるように形成されている。通路50の上端及び下端は開口しており、上部開口端が前記各誘導孔48に連結され、下部開口端はロータリドラム43の頂上近傍となるよう配置され、積載された錠剤5を収容凹部47へと案内可能となっている。また、各通路50の側面には、上下方向全体にわたり規制案内手段45のためのスリット51が形成されている。
規制案内手段45は、前記スリット51を介して通路50内に入り込み可能な支持部材としての爪部53と、該爪部53を移動させるための移動手段54とを備えている。該移動手段54は、第1アクチュエータ及び解除手段としての第2アクチュエータ(共に図示略)を内蔵している。前記第1アクチュエータ(例えば、エアシリンダ)によって、爪部53が上下方向に移動可能に構成されているとともに、前記第2アクチュエータ(例えば、ソレノイド)によって、爪部53が通路50内外に出没可能に構成されている。なお、爪部53の通路50内への突出時には、爪部53によって当該爪部53よりも上方の錠剤5の下方への移動が規制されるようになっている。
ここで、容器フィルム3への錠剤5の充填を開始する前段階において、上記のように構成されてなる充填装置41に錠剤5が供給される場合について説明する。
まず、充填装置41内に錠剤5が全く無い状態において、移動手段54の第1アクチュエータを作動させることによって、爪部53を供給シュート44の上部まで移動させるとともに、第2アクチュエータを作動させることによって、前記爪部53を通路50内へ突出させておく。
次に、パーツフィーダ42に錠剤5を供給し、誘導孔48に錠剤5を落下させる。該誘導孔48に落下させられた錠剤5は、供給シュート44の通路50内へと案内される。このとき、最初に通路50内を落下させられる錠剤5は、爪部53によって移動を停止されることとなる。このため、ここで錠剤5の落下させられた距離は、誘導孔48から通路50の上部までの非常に短い距離となる。
続いて、規制案内手段45の第1アクチュエータを作動させることによって、爪部53を通路50下端までゆっくりと移動させる。該爪部53の移動に伴って、通路50内の錠剤5が下方へと移送され、供給シュート44の通路50の上端から下端まで、錠剤5が連続して一列に積載された状態となる。なお、爪部53の移動は、少なくとも自重により錠剤5が落下する速度より遅く、好ましくは、通路50の上端に到達した錠剤5が、直前に通路50に落下させられた錠剤5と接触しつつ、通路50内を落下移動可能な速度である。
さらに、この時点で第2アクチュエータを作動させることによって、爪部53が没入させられる。これにより、錠剤5が、通路50下端からロータリドラム43の収容凹部47へ落下可能な状態となる。
そして、容器フィルム3への錠剤5の充填を開始する際には、容器フィルム3の移送に併せて、ロータリドラム43を回転させ、ロータリドラム43の頂上近傍に到達した収容凹部47に対して、供給シュート44から供給された錠剤5を吸着機構によって吸着させる。前記吸着された錠剤5は、さらにロータリドラム43が回転させられることで、ロータリドラム43の下方へと移送させられる。ロータリドラム43の最下点近傍において錠剤5の吸着機構による吸着を解除させることで、収容凹部47から錠剤5が落下させられる。すなわち、錠剤5が容器フィルム3のポケット部2へ充填される。
以上詳述したように、上下方向に移動可能、かつ、供給シュート44の通路50に対して出没可能な爪部53を有する規制案内手段45を設け、爪部53の下降に伴って錠剤5が下方へとゆっくりと移送されるようにして、錠剤5が通路50の上端から下端まで一気に落下することの無いように構成した。これにより、基本的には本第2の実施形態においても前記第1の実施形態と同様の作用効果が奏される。
また、通路50に沿って爪部53が移動させられるようになっている。このため、通路50を変形させる必要が無く、供給シュート44への負荷を抑制することができる。
さらに、爪部53に錠剤5を直接支持させることができるため、錠剤5の下方への移動の規制をより確実なものとすることができる。
以上説明した実施の形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
(a)第1の実施形態において、移動板34を下方へと移動させつつ、ストッパ36に当接させることで、移動板34が回動されるように構成されているが、ストッパ36を上昇させる駆動機構等を設け、該ストッパ36を上昇させることで、移動板34を回動させてもよい。この場合、移動板34の下降を停止させておいても良い。
(b)第1の実施形態において、一対のロール31,32は、ひとつの移動板34によってまとめて移動させられるようになっているが、各ロール31,32をそれぞれ別途移動手段によって移動制御させるようにしてもよい。また、この場合、ロール31,32をそれぞれ略鉛直方向及び略水平方向に移動可能に構成することで、ロール31,32によって変更可能なスプリングパイプ23の屈曲形状のバリエーションを増すことができる。
(c)また、ロール31,32によって屈曲させるスプリングパイプ23の形状は、必ずしも略N字状や略く字状である必要は無い。例えば、略N字状に代えて、略W字状としてもよく、上流側よりも下流側が高くなる部分または同じ高さとなる部分を確保することで、錠剤5の下方への移動を停止できればよい。また、略く字状に代えて、略S字状としてもよく、上流側よりも下流側を低くすることで、前記錠剤5の下方への移動停止を解除できればよい。
(d)ロール31,32に代えて、バー(棒状部材、板状部材を含む)により規制案内手段を構成してもよい。要するに、スプリングパイプ23を引掛可能となっていればよい。
(e)第2の実施形態では、ロータリドラム43が設けられているが、ロータリドラム43を省略し、供給シュート44から直接、容器フィルム3に錠剤5を充填する構成としてもよい。
(f)第2の実施形態では、上下方向に移動可能、かつ、出没可能な爪部が各通路に対して1つずつ設けられているが、各通路に対して出没可能な複数の爪部を所定の上下間隔ごとに設けてもよい。そして、供給シュート44内の錠剤5を移送する際には、突出させておいた爪部を通路上方から順に没入させるように構成する。これにより、錠剤5が一度に落下する落差が隣り合う爪部の間隔となる。このため、爪部の間隔を比較的狭い間隔に設定しておくことで、前記落差を小さくでき、落下の際の衝撃を低減することができる。
(g)スプリングパイプ23と充填シュート24との間、または、供給シュート44とロータリドラム43との間または供給シュート44の下部に錠剤5のシャッタを設けてもよい。この場合、スプリングパイプ23や供給シュート44の通路50のような移送経路内に錠剤5が適切に準備されるのを待って、シャッタを開放することにより、全ての移送経路で一斉に錠剤5を落下させることができる。その結果、シャッタより下流側への錠剤5の供給開始タイミングや位置を揃えることができる。
2…ポケット部、3…容器フィルム、5…被移送物としての錠剤、6…PTP包装機、13…充填装置、23…移送装置を構成するスプリングパイプ、25…移送装置を構成する規制案内手段、31,32…停止手段を構成するロール、33…移動手段、41…充填装置、44…移送装置を構成する供給シュート、45…移送装置を構成する規制案内手段、50…移送経路としての通路、53…支持部材としての爪部、54…移動手段。