JP4076374B2 - 走査型プローブ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料表面に接近されたプローブを利用して試料表面の諸特性を観察する走査型プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型プローブ顕微鏡は、プローブすなわち探針を試料表面に限りなく、例えば5nm程度に接近させて、探針と試料表面間に生じる物理量の変化を検出することにより、試料表面形状をナノメータレベルで観測することが出来る装置として注目されている。そのため、近年、急速にその応用範囲は拡大し、大面積・大重量・大型の試料の表面を観察する目的のために、試料はXY移動ステージに載置し、走査型プローブ顕微鏡の主要な要素は走査型プローブユニットと呼ばれるパッケージに収め、これを既存の光学顕微鏡の対物レボルバで支持する構成が提案されている。
【0003】
このような装置では、最初、対物レンズを試料に対向させて配置し、その対物レンズを含む光学顕微鏡で光学的に観察して測定したい位置を決定する。次に、対物レボルバを切り換えて、走査型プローブユニットを試料に対向させて配置し、走査型プローブユニットのプローブを走査して試料表面を測定する。
【0004】
特開平8−146018号公報は、このような原子間力顕微鏡のひとつを開示している。以下、図9と図10を参照しながら、その原子間力顕微鏡の構成を簡単に説明する。
【0005】
図9において、片持ち梁92は、自由端部下面に探針(プローブ)91を有し、自由端上面に反射面を有している。片持ち梁92の探針91の変位は、半導体レーザ光源93から射出されたレーザ光を片持ち梁92の自由端上面の反射面に照射し、その反射光を二分割フォトダイオード94で検出する構成の光てこ方式の変位検出系によって検出される。
【0006】
片持ち梁92の探針91は、Xスキャナー95とYスキャナー96とによって試料表面に沿って走査されると共に、検出される探針91の変位に応じてZスキャナー97によって高さ方向に走査される。
【0007】
図10に示されるように、これら光てこ方式の変位検出系とXYZ走査スキャナを備えた走査型プローブユニット98は、光学顕微鏡等の対物レボルバ101に、対物レンズ取付部102を利用して、取り付けられる。
【0008】
測定においては、まず、対物レンズを使用して試料を光学的に観察して測定位置を決定し、その後、対物レボルバを切り換えて、走査型プローブユニット98を試料上方に配置し、走査型プローブユニット98のXYZスキャナを走査することにより、試料表面の測定を行なっている。
【0009】
また、特開平5−312563号公報(例えば図7参照)や特開平7−072159号公報(例えば図15参照)も、前述の文献と同様に、走査型プローブユニットを光学顕微鏡等の対物レボルバに取り付け、走査型プローブユニット中のXYZ走査スキャナを走査して、XY移動ステージに載置された試料の表面を測定する技術を開示している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、光学顕微鏡等の対物レボルバの対物レンズ取付部は雌ネジで構成されており、一方、対物レンズはこれに合う雄ネジを有しており、対物レンズの雄ネジを対物レボルバの雌ネジにねじ込むことにより、対物レンズが対物レボルバに取り付けられる。また、既存の光学顕微鏡における対物レンズの取り付けは、対物レンズの光軸周りの向き(回転位置)は問題とならないため、雄ネジと雌ネジの回転位置関係は特に考慮されていない。従って、対物レボルバに形成された雌ネジの回転位置、言い換えれば雌ネジの端の位置は必ずしも揃っていない。
【0011】
走査型プローブユニットは、対物レボルバの雌ネジに合う雄ネジを有しており、雄ネジを雌ネジにねじこむことにより、対物レボルバに取り付けられる。対物レボルバの雌ネジの回転位置は必ずしも揃っていないため、対物レボルバに取り付けられた走査型プローブユニットの軸周りの向き(回転位置)が揃う保証がない。このため、走査型プローブユニットのXYスキャナの走査を、既存の顕微鏡に搭載しているXY移動ステージのXY軸に一致させることができない。このため、走査軸に合わせた試料調整ができず、同様なパターン試料の測定における精度や再現性が悪くなってしまう。
【0012】
また、走査型プローブユニットを対物レボルバに取り付ける際には、走査型プローブユニットを回転させなければならない。走査型プローブユニットからは制御用のコントローラへの配線等も延びているため、取り付けの際に、配線が捩れたり、断線したりするおそれがある。
【0013】
本発明の目的は、既存の光学顕微鏡の対物レボルバに対して走査型プローブユニットを回転位置調整可能に取り付ける機構を備えた、走査型プローブユニットを含めた装置(走査型プローブ装置)を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、対物レボルバへの取り付けの際に、走査型プローブユニットから延びる配線が捩れたり断線したりするおそれの少ない走査型プローブ装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料を載置するXY移動ステージを有する光学顕微鏡の対物レボルバに取り付け可能な走査型プローブ装置であり、前記光学顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に取り付け可能な接続部と、前記接続部に着脱可能な走査型プローブユニットとを備えており、前記走査型プローブユニットは、プローブを自由端に有するカンチレバーと、前記試料表面に対して前記カンチレバーをXYZ方向に走査するための走査機構と、前記カンチレバーの変位を検出するための変位検出系と、前記接続部に対して着脱、且つ位置調整可能な装着部とを有している。
ある観点によると、前記装着部を前記接続部に挿入し、前記装着部は前記接続部に挿入する部分に形成された溝を有し、前記接続部は前記装着部の溝と係合し得る抑えネジを有し、前記装着部の溝と前記接続部の抑えネジとの係合によって、前記走査機構のXY走査方向を前記XY移動ステージのXY軸に対し位置調整可能に前記走査型プローブユニットを支持する。
別の観点によると、前記接続部を前記装着部に挿入し、前記接続部は前記装着部に挿入する部分に形成された溝を有し、前記装着部は前記接続部の溝と係合し得る抑えネジを有し、前記接続部の溝と前記装着部の抑えネジとの係合によって、前記走査機構のXY走査方向を前記XY移動ステージのXY軸に対し位置調整可能に前記走査型プローブユニットを支持する。
また別の観点によると、前記装着部と前記接続部は互いに連結するアリ機構を有し、前記アリ機構によって、前記走査機構のXY走査方向を前記XY移動ステージのXY軸に対し位置調整可能に前記走査型プローブユニットを支持する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
第一実施形態
図1に示されるように、本実施形態の走査型プローブ装置100は、既存の光学顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に装着可能な接続部材1と、接続部材1に着脱される走査型プローブユニット20とを備えている。既存の光学顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部は雌ネジであり、接続部材1はその雌ネジと螺合する雄ネジ2を有している。
【0018】
走査型プローブユニット20は、プローブを自由端に有するカンチレバー10と、カンチレバー10の変位を検出するための変位検出部5と、試料表面に対してカンチレバー10を変位検出部5と共に走査するための走査機構30と、接続部材1に装着可能な装着部3とを有している。
【0019】
装着部3は、走査機構すなわちスキャナ30を保持している。このような理由から、以下では、装着部3をスキャナ保持部3と呼ぶ。スキャナ30は変位検出部5を支持しており、変位検出部5はカンチレバー10を保持している。
【0020】
スキャナ30は、スキャナ保持部3の内側に配置されており、変位検出部5をXY方向に走査するための円筒型のXYスキャナ6と、変位検出部5をZ方向(上下方向)に走査するための積層型のZスキャナ8と、それらを連結している中間部材7とを備えている。XYスキャナ6の上端はスキャナ保持部3に固定されており、その下端には中間部材7が固定されている。中間部材7にはZスキャナ8の上端が固定されており、その下端には変位検出部5が固定されている。
【0021】
ここでは、スキャナ30は、XYスキャナの機能が円筒型のスキャナで構成され、Zスキャナの機能が積層型のスキャナで構成されているが、これに限定されるものではなく、XYZスキャナの機能の全てが一つのチューブスキャナで構成されてもよく、またXYZスキャナの各機能に対応して三つの積層型のスキャナで構成されてもよく、他の様々な組み合せや他のスキャナで構成されてもよい。
【0022】
変位検出部5は、カンチレバー10の変位を検出するために一般的な光てこ方式の検出系を備えている。この光てこ方式の検出系は、検出用の光を照射するレーザ光源11を含むレーザユニット12と、レーザユニット12からの光をカンチレバー10に照射するためのミラー13と、カンチレバー10で反射された光を検出する二分割受光素子の検出器14とを有しており、検出器14上の光スポットの位置に基づいてカンチレバー10の変位を検出する。光てこ方式による検出原理は、一般に広く知られており、ここでは詳しい説明は省略する。
【0023】
接続部材1は凹部を有しており、スキャナ保持部3は、接続部材1の凹部に殆ど隙間なく挿入され得る凸部を有している。つまり、スキャナ保持部3と接続部材1は互いに勘合し得る。
【0024】
さらに、スキャナ保持部3は、接続部材1の凹部に勘合する凸部の周面に形成されたV溝4を有しており、接続部材1は、スキャナ保持部3のV溝4と係合し得る抑えネジであるプランジャ9を有している。接続部材1のプランジャ9とスキャナ保持部3のV溝4との係合によって、スキャナ保持部3は接続部材1に回転可能に支持される。つまり、接続部材1は走査型プローブユニット20を位置調整可能に支持し得る。
【0025】
接続部材1は、例えば三つのプランジャ9を有しているが、プランジャ9の個数はこれに限定されるものではなく、任意に変更されてもよい。例えば、接続部材1とスキャナ保持部3が良好に勘合していれば、プランジャ9の個数は一つであってもよい。
【0026】
プランジャ9は、図2に示されるように、穴を有するネジ18と、ネジ18の穴の中に収容された先端が丸い軸16と、軸16を付勢するバネ17とを有している。先端の軸16は、矢印で示された方向の成分を有する外力を受けると、ネジ18の中に移動する。
【0027】
次に、図3を参照しながら、既存の顕微鏡の対物レボルバへの走査型プローブユニット20の取り付けについて説明する。取り付けは、最初に接続部材1だけが対物レボルバに取り付け、続いて対物レボルバに取り付けられた接続部材1に走査型プローブユニット20を装着することで行なわれる。
【0028】
まず、図3において、既存の顕微鏡の対物レボルバ31の対物レンズ取付部の雌ネジ34に接続部材1の雄ネジ2を合わせ、接続部材1を回転させることで、対物レボルバ31に接続部材1を固定する。
【0029】
次に、走査型プローブユニット20のXY走査方向(軸)をXY移動ステージ35のXY軸に粗く合わせた状態で、走査型プローブユニット20のスキャナ保持部3の凸部を接続部材1の凹部に挿入する。
【0030】
挿入の際、プランジャ9の軸16は、最初、接続部材1の凹部に挿入されたスキャナ保持部3の凸部に押されて引っ込む。更にスキャナ保持部3が挿入されてプランジャ9の位置にV溝4が来ると、バネ17に復元力によってプランジャ9の軸16がV溝4の中に押し進められる。
【0031】
その結果、走査型プローブユニット20は、プランジャ9とV溝4の係合すなわち引っ掛かりによって、下に落下することなく、接続部材1に対して回転可能に支持される。また、走査型プローブユニット20は、バネ17の復元力によって軸16がスキャナ保持部3に押し付けられることにより、回転を妨げない程度に固定される。
【0032】
プランジャ9のバネ17の力量は、強過ぎると、装着や回転しづらく、逆に弱過ぎると、落下の恐れがあるので、走査型プローブユニット20の落下を阻止しつつ、走査型プローブユニット20の容易な回転を妨げないように設定されることが望ましい。
【0033】
続いて、粗く位置決めされた回転位置をより正確に調整するため、スキャナ保持部3を回転させて、走査型プローブユニット20のXYスキャナ6の走査方向(軸)をXY移動ステージ35のXY移動軸と一致させる。走査型プローブユニット20の回転調整を容易にするために、例えば、スキャナ保持部3に特定の箇所に目印、例えば線や丸等の図形や色やDカット等を設けておいてもよい。
【0034】
以上の説明から分かるように、本実施形態の走査型プローブ装置によれば、既存の顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に、走査型プローブユニットを容易に取り付け可能であると共に、走査型プローブユニットのXY走査軸をXY移動ステージのXY軸に容易に合わせることができる。これにより、同様なパターン試料の測定時の測定精度や再現性が向上される。また、走査型プローブユニットは、回転させることなく、接続部に装着できるので、走査型プローブユニットからコントローラへ延びる配線の捩れや切断のおそれもない。
【0035】
第一実施形態の変形例
本実施形態の変形例の走査型プローブ装置100Aを図4に示す。図4において、図1に示された部材と同一の参照符号で示された部材は同等の部材を示しており、続く説明ではその詳しい説明は省略し、以下では相違箇所について説明する。
【0036】
本変形例の走査型プローブ装置100Aの接続部材1Aは、走査型プローブユニット20を回転位置調整後に固定するための固定用ネジ41を更に有している。固定用ネジ41は、列えば、すり割付きとがり先止めネジ(NU)や、先端の丸い軸で構成されるちくビス等のネジで構成される。なお、固定用ネジ41は、単体の構造物で、プランジャ9の様なバネは備えていない。
【0037】
本変形例の走査型プローブ装置100Aでは、回転位置調整後、固定用ネジ41を締め込む。これにより、走査型プローブユニット20が接続部材1Aに確実に固定される。
【0038】
図4に示した変形例では、固定用ネジ41は、スキャナ保持部3のV溝4に締め付けられるが、他の位置に締め付けられてもよく、この場合には先端が平らなネジが適している。また、固定用ネジ41は、一箇所に設けられているが、複数箇所に設けられてもよい。
【0039】
本変形例によれば、回転位置調整後に走査型プローブユニット20を確実に固定することができる。走査型プローブユニット20は最終的に固定用ネジ41で固定されるので、プランジャ9のバネ17の力量は、走査型プローブユニット20の落下を阻止できる程度でありさえすればよい。これは設計の自由度を向上させる。
【0040】
第二実施形態
第二実施形態の変形例の走査型プローブ装置200を図5に示す。図5において、第一実施形態の部材と同一の参照符号で示された部材は同等の部材を示しており、続く説明ではその詳しい説明は省略し、以下では相違箇所について説明する。
【0041】
図5に示されるように、本実施形態の走査型プローブ装置200は、既存の光学顕微鏡の対物レボルバに装着可能な接続部材52と、接続部材52に着脱される走査型プローブユニット20Aとを備えている。
【0042】
走査型プローブユニット20Aは、積層型のZスキャナ8が円筒型のZスキャナ8Aに変更されている点を除けば、第一実施形態で説明した走査型プローブユニット20と同様なものである。なお、図示されていないが、中間部材7はその中央に開口を有しており、これを通っての光学観察を可能にしている。
【0043】
接続部材52は、対物レボルバの対物レンズ取付部である雌ネジに螺合する雄ネジ53と、カンチレバー10の近傍に焦点が合うように組み込まれたレンズ51と、走査型プローブユニット20Aを回転可能に支持するための三つのプランジャ9と、走査型プローブユニット20Aを固定するための三つの固定用ネジ41とを有している。プランジャ9と固定用ネジ41はそれぞれ接続部材52の周りに均等に配置されている。
【0044】
接続部材52は、第一実施形態の接続部材1の凹部よりも径が若干大きい凹部を有している。従って、スキャナ保持部3の凸部は、接続部材1の凹部に殆ど多少の隙間、例えば0.1mm〜1mm程度の隙間を置いて、挿入され得る。このため、走査型プローブユニット20Aは、単にプランジャ9によって支持されている状態では、回転可能であるとともに、前述した隙間の範囲内において横方向に移動可能である。
【0045】
従って、この状態では、走査型プローブユニット20Aは、回転され得るだけでなく、固定用ネジ41で押されることによって移動され得る。つまり、走査型プローブユニット20Aは、三つの固定用ネジ41の各々の締め具合を加減することによって横方向の位置が調整可能である。
【0046】
本実施形態の走査型プローブ装置200では、走査型プローブユニット20Aの回転位置調整までは、第一実施形態と同様に行なわれる。その後、走査型プローブユニット20Aの芯調整、正確にはカンチレバー10のプローブ位置の調整が行なわれる。芯調整は次のようにして行なわれる。
【0047】
まず、図示していない既存の光学顕微鏡の観察光学系と、レンズ51とを用いて、図示していない観察手段、例えば接眼鏡筒やCCDカメラで撮影された像を表示するモニタ等の視野中心にカンチレバー10が位置するように、三つの固定用ネジ41を用いて突っ張り引っ張りの要領で調整する。
【0048】
観察手段の中心位置へのカンチレバー10の配置を正確かつ容易にするため、観察手段の視野中心位置が分かる様に、接眼レンズを使用して観察する場合には、レチクル入りの接眼を用いたり、CCDを使用して観察する場合には、スーパーインポーズを用いてモニタにクロスを表示させたりするとよい。
【0049】
その後、カンチレバー10を視野中心に位置決めした後、三つの固定用ネジ41をカンチレバー10の中心が動かないように締め付ける。これにより、回転位置調整に加え、カンチレバー10の中心位置調整が完了する。この調整の結果、光学顕微鏡の対物レンズによる観察中心と、カンチレバー10の中心位置とが略一致する。このため、対物レンズを用いて測定位置を決定した後、対物レボルバを回転させて走査型プローブユニットに切換えるだけで、その測定位置に対してプローブによる測定を行なうことができる。
【0050】
本実施形態では、接続部材52は三つの固定用ネジ41を有しているが、これに限定されるものではなく、それ以上の固定用ネジ41を有していてもよい。また、レンズ51は、接続部材1の中に配置されているが、これに限定されるものではなく、光学顕微鏡の光軸上でありさえすれば、他の適当な位置、例えばXYスキャナ6や中間部材7等の中に配置されてもよい。
【0051】
以上の説明から分かるように、本実施形態の走査型プローブ装置は、第一本実施形態の利点に加えて、走査型プローブユニット20Aの芯調整を行なって、カンチレバー10の中心位置を光学顕微鏡の対物レンズによる観察中心に合わせて、光学顕微鏡による観察位置とプローブによる測定位置とを揃えておくことにより、光学顕微鏡による観察に続いて直ちにプローブによる測定を行なうことができるという利点を有している。
【0052】
第三実施形態
第三実施形態の変形例の走査型プローブ装置300を図6に示す。図6において、上述した実施形態の部材と同一の参照符号で示された部材は同等の部材を示しており、続く説明ではその詳しい説明は省略し、以下では相違箇所について説明する。
【0053】
図6に示されるように、本実施形態の走査型プローブ装置300は、既存の光学顕微鏡の対物レボルバに装着可能な接続部材61と、接続部材61に着脱される走査型プローブユニット20Bとを備えている。
【0054】
走査型プローブユニット20Bは、スキャナ保持部3が、丸アリ(雄アリ)64を備えたスキャナ保持部65に変更されている点を除けば、第二実施形態で説明した走査型プローブユニット20Aと同様なものである。
【0055】
接続部材61は、対物レボルバの対物レンズ取付部である雌ネジに螺合する雄ネジ62と、走査型プローブユニット20Bを回転可能に支持するための雌アリ63と、走査型プローブユニット20Bを固定するための固定用ネジ66とを有している。固定用ネジ66は丸い先端を有している。接続部材61は一つの固定用ネジ66を有しているが、複数の固定用ネジ66を有していてもよい。
【0056】
本実施形態では、既存の光学顕微鏡の対物レボルバへの走査型プローブユニット20Bの取り付けは以下のようにして行なわれる。
【0057】
まず、第一実施形態と同様にして、接続部材61を既存の光学顕微鏡の対物レボルバの対物取付部に取り付ける。
【0058】
その後、走査型プローブユニット20Bのスキャナ保持部65の丸アリ64を接続部材61の雌アリ63に挿入して接続部材61に突き当てる。これにより走査型プローブユニット20Bは接続部材61に回転可能に支持される。挿入は、好ましくは、走査型プローブユニット20BのXYスキャナ6のXY走査方向(軸)をXY移動ステージのXY軸に粗く合わせて行なう。
【0059】
次に、走査型プローブユニット20BのXYスキャナ6のXY走査方向(軸)とXY移動ステージのXY軸が一致するように微調整し、固定用のネジ66を締め付け、走査型プローブユニット20Bを固定する。
【0060】
このように、本実施形態の走査型プローブ装置は、既存の顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に、走査型プローブユニットを容易に取り付け可能であると共に、走査型プローブユニットのXY走査軸をXY移動ステージのXY軸に容易に合わせることができる。これにより、同様なパターン試料の測定時の測定精度や再現性が向上される。また、走査型プローブユニットは、回転させることなく、接続部に装着できるので、走査型プローブユニットからコントローラへ延びる配線の捩れや切断のおそれもない。さらに、第一実施形態の様なプランジャを使用しないため、そのバネ力を考慮する必要がなく、設計の自由度が高い。
【0061】
第四実施形態
第四実施形態の変形例の走査型プローブ装置400を図7に示す。図7において、上述した実施形態の部材と同一の参照符号で示された部材は同等の部材を示しており、続く説明ではその詳しい説明は省略し、以下では相違箇所について説明する。
【0062】
図7に示されるように、本実施形態の走査型プローブ装置400は、第一実施形態と同様の接続部材1と、接続部材1に着脱される連結部材71と、連結部材71に着脱される走査型プローブユニット20Cとを備えている。
【0063】
走査型プローブユニット20Cは、スキャナ保持部3が、長アリ(雄アリ)75を備えたスキャナ保持部74に変更されている点を除けば、第二実施形態で説明した走査型プローブユニット20Aと同様なものである。
【0064】
連結部材71は、接続部材1の凹部に殆ど隙間なく挿入され得る凸部を有している。つまり、連結部材71と接続部材1は互いに勘合し得る。さらに、連結部材71は、接続部材1の凹部に勘合する凸部の周面に形成されたV溝73を有しており、接続部材1は、連結部材71のV溝73と係合し得るプランジャ9を有している。接続部材1のプランジャ9と連結部材71のV溝73との係合によって、連結部材71は接続部材1に回転可能に支持される。
【0065】
接続部材1は、ここでは一つのプランジャ9を有しているが、複数のプランジャ9を有していてもよい。また、接続部材1は、より好ましくは、第一実施形態の変形例と同様に、連結部材71を固定するための固定用ネジ41を有しているとよい。
【0066】
連結部材71は、更に、走査型プローブユニット20Cのスキャナ保持部74の長アリ(雄アリ)75を受け入れる雌アリ72と、走査型プローブユニット20Cを固定するためのネジ66とを有している。連結部材71は、ここでは一つのネジ66を有しているが、複数のネジ66を有していてもよい。
【0067】
本実施形態では、既存の光学顕微鏡の対物レボルバへの走査型プローブユニット20Cの取り付けは以下のようにして行なわれる。
【0068】
まず、第一実施形態と同様にして、接続部材1を既存の光学顕微鏡の対物レボルバの対物取付部に取り付ける。
【0069】
次に、連結部材71の凸部を接続部材1の凹部に挿入し、連結部材71の雌アリ72の方向をXY移動ステージのXY軸に合わせ、連結部材71を回転位置調整を行なう。調整後、固定用ネジを用いて連結部材71を固定するとより好ましい。
【0070】
続いて、走査型プローブユニット20Cのスキャナ保持部74の長アリ75を、連結部材71の雌アリ72に挿入し、固定用のネジ66を締め付けて、走査型プローブユニット20Cを固定する。
【0071】
この後、必要であれば、走査型プローブユニット20Cと固定されている連結部材71を、XY移動ステージのXY軸と走査型プローブユニット20CのXY走査方向(軸)が一致する様に、連結部材71を回転させ調整する。
【0072】
本実施形態では、走査型プローブユニット20Cの向きすなわち回転位置は、スキャナ保持部74の長アリ75が挿入される連結部材71の雌アリ72の方向で決まる。このため、走査型プローブユニット20Cを付け替えた際などにも、走査型プローブユニット20Cの回転位置を調整し直す必要がない。
【0073】
以上の説明から分かるように、本実施形態の走査型プローブ装置は、既存の顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に、走査型プローブユニットを容易に取り付け可能であると共に、走査型プローブユニットのXY走査軸をXY移動ステージのXY軸に容易に合わせることができる。これにより、同様なパターン試料の測定時の測定精度や再現性が向上される。また、走査型プローブユニットは、回転させることなく、接続部に装着された連結部材に装着されるので、走査型プローブユニットからコントローラへ延びる配線の捩れや切断のおそれもない。さらに、連結部材71の回転位置を一度調整した後は、連結部材71に取り付けられる走査型プローブユニット20Cの回転位置調整を再度行なう必要がない。
【0074】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施の形態を述べたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【0075】
例えば、第一実施形態や第二実施形態において、図8に示されるように、対物レボルバの雌ネジに合う雄ネジ82を有する接続部81が、スキャナ保持部84の凹部に挿入され、スキャナ保持部84がプランジャ9を有し、プランジャ9を受ける溝83が接続部81に形成されている構成に変更されてもよい。また、各実施形態の各要素が適宜組み合わせられてもよい。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、既存の光学顕微鏡の対物レボルバに対して走査型プローブユニットを回転位置調整可能に取り付ける機構を備えた走査型プローブ装置が提供される。さらに、本発明による走査型プローブ装置では、対物レボルバへの取り付けの際に、走査型プローブユニットから延びる配線が捩れたり断線したりするおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態における走査型プローブ装置を示している。
【図2】図1に示されたプランジャを拡大して示している。
【図3】図1に示された走査型プローブ装置とこれが取り付けられた光学顕微鏡の対物レボルバ周辺部分を示している。
【図4】第一実施形態の変形例における走査型プローブ装置を示している。
【図5】本発明の第二実施形態における走査型プローブ装置を示している。
【図6】本発明の第三実施形態における走査型プローブ装置を示している。
【図7】本発明の第四実施形態における走査型プローブ装置を示している。
【図8】第一実施形態や第二実施形態に適用可能な接続部材とスキャナ保持部の別の係合の形態を示している。
【図9】従来の走査型プローブユニットを示している。
【図10】図9に示された走査型プローブユニットが取り付けられた対物レボルバを示している。
【符号の説明】
1 接続部材
2 雄ネジ
3 スキャナ保持部
4 V溝
5 変位検出部
6 XYスキャナ
7 中間部材
8 Zスキャナ
9 プランジャ
10 カンチレバー
11 レーザ光源
12 レーザユニット
13 ミラー
14 検出器
20 走査型プローブユニット
30 スキャナ
100 走査型プローブ装置

Claims (4)

  1. 試料を載置するXY移動ステージを有する光学顕微鏡の対物レボルバに取り付け可能な走査型プローブ装置であり、
    前記光学顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に取り付け可能な接続部と、
    前記接続部に着脱可能な走査型プローブユニットとを備えており、
    前記走査型プローブユニットは、プローブを自由端に有するカンチレバーと、前記試料表面に対して前記カンチレバーをXYZ方向に走査するための走査機構と、前記カンチレバーの変位を検出するための変位検出系と、前記接続部に対して着脱、且つ位置調整可能な装着部とを有し、
    前記装着部を前記接続部に挿入し、前記装着部は前記接続部に挿入する部分に形成された溝を有し、前記接続部は前記装着部の溝と係合し得る抑えネジを有し、前記装着部の溝と前記接続部の抑えネジとの係合によって、前記走査機構のXY走査方向を前記XY移動ステージのXY軸に対し位置調整可能に前記走査型プローブユニットを支持することを特徴とする走査型プローブ装置。
  2. 試料を載置するXY移動ステージを有する光学顕微鏡の対物レボルバに取り付け可能な走査型プローブ装置であり、
    前記光学顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に取り付け可能な接続部と、
    前記接続部に着脱可能な走査型プローブユニットとを備えており、
    前記走査型プローブユニットは、プローブを自由端に有するカンチレバーと、前記試料表面に対して前記カンチレバーをXYZ方向に走査するための走査機構と、前記カンチレバーの変位を検出するための変位検出系と、前記接続部に対して着脱、且つ位置調整可能な装着部とを有し、
    前記接続部を前記装着部に挿入し、前記接続部前記装着部に挿入する部分に形成された溝を有し、前記装着部前記接続部の溝と係合し得る抑えネジ有し、前記接続部の溝と前記装着部の抑えネジとの係合によって、前記走査機構のXY走査方向を前記XY移動ステージのXY軸に対し位置調整可能に前記走査型プローブユニットを支持することを特徴とする走査型プローブ装置。
  3. 前記装着部と前記接続部は互いに勘合し、前記溝と前記抑えネジとの係合によって、前記走査型プローブユニットを位置調整可能に支持することを特徴とする請求項又は請求項記載の走査型プローブ装置。
  4. 試料を載置するXY移動ステージを有する光学顕微鏡の対物レボルバに取り付け可能な走査型プローブ装置であり、
    前記光学顕微鏡の対物レボルバの対物レンズ取付部に取り付け可能な接続部と、
    前記接続部に着脱可能な走査型プローブユニットとを備えており、
    前記走査型プローブユニットは、プローブを自由端に有するカンチレバーと、前記試料表面に対して前記カンチレバーをXYZ方向に走査するための走査機構と、前記カンチレバーの変位を検出するための変位検出系と、前記接続部に対して着脱、且つ位置調整可能な装着部とを有し、
    前記装着部と前記接続部は互いに連結するアリ機構を有し、前記アリ機構によって、前記走査機構のXY走査方向を前記XY移動ステージのXY軸に対し位置調整可能に前記走査型プローブユニットを支持することを特徴とする走査型プローブ装置。
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