JP4075334B2 - ステアリングダンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、舵取りハンドルの舵取り操作に伴い流路切換弁を切換え制御することにより、パワーシリンダを作動させてパワーアシスト力(操舵補助力)を得るパワーステアリング装置において、キックバック等のように操舵輪側から逆入力があったときの衝撃を減衰、緩和させるために用いるステアリングダンパに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に油圧式のパワーステアリング装置では、舵取りハンドルの舵取り操作に伴ってポンプとタンクとをパワーシリンダの左右室に選択的に接続する流路切換弁を備えている。この流路切換弁により、舵取り操作に応じてパワーシリンダのいずれか一方の室に圧油を給送して、操舵輪を転舵させるためのパワーアシスト力を付与している。
【0003】
このようなパワーステアリング装置を搭載した自動車において、パワーステアリング装置にステアリングダンパを付設したものがすでに知られている。このステアリングダンパは、自動車の走行時において、例えば走行路面の凹凸や障害物等に起因して操舵輪側から作用する逆入力(いわゆるキックバック)による衝撃を減衰、緩和し、舵取りハンドルにその衝撃が伝わらないようにするためのものである。
【0004】
従来のステアリングダンパは、一般に、パワーステアリング装置における流路切換弁とパワーシリンダの左右室との間の左右のシリンダ通路に、前述したキックバック等の逆入力が作用したときに、ピストンの動きに伴ってパワーシリンダの戻り側の室から排出される圧油の流れに抵抗を与えるための絞りまたは可変絞りを設けている。しかし、このような絞りまたは可変絞りは、舵取りハンドルの舵取り操作に伴う正入力時において、ポンプからパワーシリンダの一方の室への供給側の圧油の流れ、さらに、パワーシリンダの他方の室からタンクへの戻り側の流れに対しても流路抵抗になるため、パワーシリンダの作動にあたっての応答性を低下させてしまうという問題がある。
【0005】
このため、左右のシリンダ通路において、前述の絞りを可変絞り弁で構成するとともに、これらの可変絞り弁と並列にそれぞれチェック弁を設け、舵取り操作による正入力時に、対応するシリンダ通路のチェック弁を開くことにより、流路切換弁を介してポンプからシリンダ室への圧油の給送を充分に行えるようにしたものが、すでに提案されている(実公平2−49109号公報)。
【0006】
前記公報には、「ステアリングダンパ本体(パワーシリンダ)と切換バルブとを連結する回路中に、切換バルブ側からステアリングダンパ本体の油室側へのみ油の流れを許容するチェック弁および、初期荷重を有し、油室側から切換バルブ側へのみ油の流れを許容する絞りチェック弁」を備えたステアリングダンパが記載されている。
【0007】
前記従来のパワーステアリング装置に設けられたステアリングダンパは、パワーシリンダ側からの小流量の流れに対しては、可変絞り弁が開かないため、流路切換弁側へ戻すための流路がないので、舵取りハンドルの戻り、特に中立位置付近での戻りが悪いという問題があった。また、パワーシリンダからの小流量の流体を戻すための流路を設けておくと、舵取り操作に応じて流路切換弁から給送される流体が前記チェック弁を開く前に流出するため、プリセット力を与えることができず、高速走行時の直進安定性(手応え感)が良くないという問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明の出願人は、キックバック等のような操舵輪側からの逆入力時における衝撃を減衰、緩和することができ、しかも、舵取りハンドルの戻り、特に中立位置付近での戻りを向上させるとともに、高速時の直進安定性と両立させることができるパワーステアリング装置のステアリングダンパを提供することを目的とした発明について出願をした(特願2000−322955号)。
【0009】
前記出願に係る発明の構成では、チェック弁の筒状弁体に、スプリングによってプリセット力を与えるようにしているので、高速直進時の安定性(手応え感)の向上とシミーの減衰には非常に効果的である。しかしながら、チューニングによっては、前記スプリングによるプリセット力を大きくした方が好ましい場合がある。このようにプリセット力を大きくした場合には、例えば急操舵をしたときに、パワーシリンダ内のピストンがマニュアルで移動しようとするにもかかわらず油が供給されない状態となり、ピストンの移動により拡大する側の油圧室側のシリンダ通路に負圧が発生してしまうという問題があった。このような状態になると、ハンドルが異常に重くなったり、ハンドルの戻りが悪くなるという問題が生ずる。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、急操舵時やハンドルの戻り時に、シリンダ通路での負圧の発生を防ぎ、ハンドルが急に重くなることやハンドルの戻りが悪くなることを防止できるように改良したステアリングダンパに係る発明について特許出願をした(特願2001−159003号)。
【0011】
前記出願(特願2001−159003号)に係る発明の構成について、図3により簡単に説明する。パワーステアリング装置の左右シリンダ通路の途中に、ステアリングダンパを構成する左右一対のダンパ部を設けてあり、図3はそのダンパ部の一方10Aを示す。
【0012】
パワーステアリング装置のバルブハウジング26内に、段付きのバルブ孔34が設けられている。このバルブ孔34は、その内部に小径部34aおよび大径部34bが形成されており、この大径部34b側の開口部34cに、外周にシール部材36が嵌着されたプラグ38が挿入され、バルブ孔34の内部が密封されている。
【0013】
バルブ孔34の大径部34b内には、可変絞り弁6の筒状弁体40(以下第1の弁体と呼ぶ)が収容されている。この第1の弁体40は、先端(図3の左端)にフランジ40aが形成されており、このフランジ40aがバルブ孔34の大径部34bと小径部34aとの間の段部に形成された弁座34dに当接することにより、可変絞り弁6が閉弁する。この第1弁体40のフランジ40aの背面と前記プラグ38の前面との間に、付勢手段としてのコイルスプリング42が配置され、前記第1弁体40を前記弁座34d方向に常時付勢している。
【0014】
また、前記バルブ孔34の小径部34a内には、チェック弁8の有底円筒状弁体44(以下第2の弁体と呼ぶ)が収容されている。この第2の弁体44は、コイルスプリング(付勢手段)46によって、前記第1の弁体40方向に付勢されている。第2の弁体44の先端面44aはテーパ状になっており、この先端面44aが前記第1の弁体40のフランジ40a側開口部の内周面に形成された弁座40bにシートしてチェック弁8が閉じられる。なお、このチェック弁8の弁体(第2弁体44)を付勢するスプリング46の付勢力は、前記可変絞り弁6の弁体(第1弁体40)を付勢するスプリング42の付勢力よりも小さいことはいうまでもない。
【0015】
有底円筒状をしている第2の弁体(チェック弁8の弁体)44の先端部(有底円筒状の弁体の底部)44bにその軸芯を貫通する連通孔(絞り穴)11が形成されている。この連通孔11が、パワーシリンダP/C側からの流量が少ないときでも、流路切換弁CV側へ流すリーク通路を構成している。
【0016】
また、第2の弁体44の先端部(底部)44b寄りの外周面は、小径になっており、この小径部に内外を貫通する通路穴44cが形成されている。また、前記バルブ孔34の大径部34b内に収容されている可変絞り弁6の第1弁体40にも、内外を貫通する通路穴40cが形成されている。
【0017】
従って、流路切換弁CV側から供給される圧油は、前記バルブ孔34の大径部34b内に開口する通路54から、通路穴40cを通って第1弁体40内に入った後、チェック弁8を開いて、第2弁体44の小径部の外周から通路穴44cを通って第2弁体44の内部に入り(図3中の破線の矢印I参照)、接続通路50を通ってパワーシリンダP/Cに供給される。また、パワーシリンダP/Cからの流れが可変絞り弁6を開いて流路切換弁CV側へ戻るときには、第2弁体44の内部から通路穴44cを通って第2弁体44の小径部の外面側に流出し(図3中の実線の矢印O参照)、前記バルブ孔34の大径部34b内に開口する通路54から流路切換弁CVへ還流する。
【0018】
前記ダンパ部10Aのチェック弁8とパワーシリンダP/Cのシリンダ室との間に、タンクT側に連通する第2のチェック弁13が設けられている。このチェック弁13は、前記バルブ孔34に連続する弁孔56内に収容されたボール弁58と、前記弁孔56の内部に形成された段部に設けられている弁座56aとによって構成されている。
【0019】
前記ステアリングダンパは、舵取りハンドル(図示せず)の舵取り操作に伴う正入力時には、ポンプから供給通路を介して給送される圧油が、流路切換弁CVからバルブハウジング26の通路54を通って、バルブ孔34の大径部34b内に入り、さらに、第1の弁体40の通路穴40cから第1の弁体40内部に入って、チェックバルブ8の弁体(第2の弁体44)に作用する。この流路切換弁CVからの流れがチェック弁8を押し開くと、圧油は第2弁体44の外周側から通路穴44cを通って第2弁体44の内部に入り、接続通路50を通ってパワーシリンダP/Cの一方のシリンダ室に送られる。
【0020】
この正入力時には、パワーシリンダP/Cの一方の室に、流路切換弁CVからの圧油がチェックバルブ8を開いて供給されるが、他方のシリンダ室からの戻り油は、開放した前記可変絞り弁6および第2弁体44の先端部に形成されている連通孔(絞り穴)11を通過して流路切換弁CVからタンクに還流する。このようにパワーシリンダP/Cの左右室の一方にポンプからの高圧油が導入されるとともに、他方の室がタンクTに連通することにより、パワーシリンダP/Cが作動して操舵補助力を発生させる。
【0021】
また、前記舵取りハンドルの操作が急激に行われた場合には、パワーシリンダP/C内のピストンがマニュアルで動こうとするが、油が充分に供給されないため、流路切換弁CVからパワーシリンダP/Cに至るシリンダ通路内に負圧が発生しようとする。このようにシリンダ通路に負圧が発生しそうになると、第2のチェック弁13が開放してタンクTから油が補給される。従って、シリンダ通路内が負圧になることがなく、ハンドルが急に重くなる等の不具合を防止することができる。また、ハンドルの戻り時にも、同様にシリンダ通路内に負圧が発生することを防いで、ハンドルの戻りが悪くなることを防止することができる。
【0022】
一方、自動車の走行中に、例えば路面の凹凸や障害物等に起因して、操舵輪側からのキックバック等の逆入力が作用したときには、パワーシリンダP/Cの一方の室からの油の流れが一方のシリンダ通路(図3中ではパワーシリンダ側接続通路50)からチェック弁8の第2弁体44内に入り、この第2弁体44の先端に形成された連通孔11を通って第1弁体40内に流出する。このように第2弁体44に連通孔11が形成されているので、パワーシリンダP/C側からの流量が少なく可変絞り弁6が開放しないときでも、流路切換弁CVを介してタンクTに還流させることができる。
【0023】
前記キックバック等の逆入力が大きく、パワーシリンダP/Cからの流量が大きい場合には、連通孔(絞り穴)11を通過する流量によりその上流側の圧力が上昇する。この連通孔11の前後の圧力差が大きくなると、可変絞り弁6の第1弁体40が図3の右方に移動して可変絞り弁6が開放する。パワーシリンダP/Cからの戻り方向の流れは、連通孔(絞り穴)11の前後の圧力差に応じて可変絞り弁6を所定の開度で開放し、流路切換弁CVを介してタンクTに還流する。このときの流路抵抗によって衝撃が減衰、緩和されることによるダンパ効果で、逆入力の舵取りハンドルへの伝達を阻止することができる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
前記出願にかかるステアリングダンパの発明では、その目的を達成する優れた作用効果を奏することができるが、チェック弁8の有底円筒状の弁体44が旋削加工等の機械加工により成形されているため、加工費および材料費が高く、コスト高であるという問題があった。
【0025】
また、前述のように、チェック弁8を開いてパワーシリンダP/Cへ流れる圧油は、図3中に破線Iで示すように、第2弁体44の小径部外面側から通路穴44cを通って第2弁体44の内部に流入し、逆に、可変絞り弁6を開いてパワーシリンダP/Cから流路切換弁CVへ流れる作動油は、図3中に実線Oで示すように、第2弁体44内部から通路穴44cを通って第2弁体44の小径部外面側に流出する。第2弁体44の内部には、通路穴44cと底部44bとの間(図3中のB参照)に空間60があるため、第2の弁体44の内部から流出する流れがこの空間60によって乱されて大きい圧力損失を生じるという問題があった。
【0026】
さらに、前記従来の構成では、第2の弁体44の底部44bに貫通形成されている連通孔(絞り穴)11の長さ(図3中のA参照)を調節するためには、底部44bの厚さを変更しなければならず、絞りのチューニングを行うことは困難であった。
【0027】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、材料費、加工費を低減することができる低コストのステアリングダンパを提供することを目的とするものである。
【0028】
また、他の発明は、チェック弁の弁体の内部から外部に流出する流体の流れの圧力損失を大幅に低減して、外部から内部に流入する流体の流れの圧力損失とほぼ同程度にすることができるステアリングダンパを提供することを目的とするものである。
【0029】
さらに、他の発明は、第2の弁体の底部に形成されている連通孔の長さを自由に調整して、絞りのチューニングを容易に行うことができるステアリングダンパ
を提供することを目的とするものである。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るステアリングダンパは、ポンプおよびタンクとパワーシリンダの左右室との間を舵取りハンドルの舵取り操作に応じて選択的に切換え接続する流路切換弁と、この流路切換弁を前記パワーシリンダの左右室に接続する左右一対のシリンダ通路を備えたパワーステアリング装置のステアリングダンパであって、前記各シリンダ通路の途中に設けられて前記パワーシリンダから流路切換弁への流入を制限する可変絞り弁と、この可変絞り弁と回路上並列に接続され前記流路切換弁からパワーシリンダへの流入を許容するチェック弁とを備えた一対のダンパ部から構成されており、特に、前記可変絞り弁は、油通路を有する弁座とこの弁座に対して付勢される弁体とから構成され、前記チェック弁は、前 記可変絞り弁の油通路に対して並列に設けられた油通路を有する弁座とこの弁座に対して付勢される弁体とから構成され、前記チェック弁は、バルブ孔に収容され、開口部を有する弁座と、このバルブ孔に移動可能に設けられ、この弁座に当接することにより閉弁する弁体とから構成され、前記チェック弁の弁体をプレス加工により成形したことを特徴とするものである。
【0031】
また、請求項2に記載の発明に係るステアリングダンパは、前記ステアリングダンパにおいて、ハウジングの内面に形成されて前記可変絞り弁の弁座を構成する段部と、この段部に当接することにより可変絞り弁を閉弁する筒状の弁体と、この筒状弁体を前記弁座方向に付勢する付勢手段と、前記筒状弁体の開口部に当接して前記チェック弁を閉弁する有底円筒状の弁体と、この有底円筒状弁体を、前記付勢手段の逆方向から付勢する付勢手段とを備えており、特に、前記チェック弁の弁体をプレス加工により成形したことを特徴とするものである。
【0032】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、チェック弁の弁体をプレス成形したので、材料費および加工費が大幅に削減される。
【0033】
さらに、請求項3に記載の発明に係るステアリングダンパは、前記チェック弁の弁体の円筒部に、その内外を貫通する通路穴が形成され、流路切換弁からの流体は、弁体の外面側から前記通路穴を通って弁体内に流入し、パワーシリンダ側からの流体は弁体の内部から通路穴を通って外面側に流出するように構成し、かつ、前記弁体内の、前記通路穴よりも底部寄りにキャップを装着したことを特徴とするものである。
【0034】
また、請求項4に記載の発明に係るステアリングダンパは、前記キャップに、通路穴の内部から外部に流出する流体をスムーズに流すための傾斜面を形成したことを特徴とするものである。
【0035】
請求項3および請求項4に記載の発明は、キャップによってチェック弁の弁体の底部側の空間をなくす、または小さくすることができるので、前記弁体の内部から外部へ流出する流体の圧力損失が低減される。
【0036】
また、請求項5に記載の発明に係るステアリングダンパは、前記チェック弁の有底円筒状弁体の底面を貫通する連通孔を形成するとともに、キャップの底面にも連通孔を形成したことを特徴とするものである。
【0037】
請求項5に記載の発明では、プレス加工により成形したチェック弁の弁体は、肉厚が薄いので、連通孔の長さを充分に取ることができないが、キャップにも同様の連通孔を設けることにより、必要な連通孔(絞り穴)の長さを確保することができる。
【0038】
また、請求項6に記載の発明に係るステアリングダンパは、前記キャップをプレス加工により成形したことを特徴とするものである。
【0039】
また、請求項7に記載の発明に係るステアリングダンパは、前記キャップを複数枚重ねて連通孔の長さを変更可能にしたことを特徴とするものである。
【0040】
請求項7に記載の発明では、プレス成形されたキャップを多層化し、その枚数を変更することにより、連通孔の長さを自由に設定することができるので、絞りのチューニングを容易に行うことができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態により本発明を説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るステアリングダンパに用いられるチェック弁の弁体144のみを拡大して示す縦断面図である。チェック弁の弁体144以外の部分の構成は、図3に示す従来の構成と同様なので、図示を省略する。なお、必要な部分は、図3中の符号により説明する。
【0042】
このチェック弁の弁体(第2の弁体)144は、全体が板状の部材をプレス加工することにより成形されている。この第2の弁体144は有底円筒状をしており、先端側(図の左側)の底部144bの中心部に連通孔(絞り穴)111が形成されている。この第2弁体144は、ハウジング26に形成されたバルブ孔34内を摺動する大径部144dと、底部144b寄りの小径部144eとを有している。また、この小径部144eには、この弁体144の内部側と外部側とを連通する通路穴144cが形成されている。
【0043】
さらに、第2弁体144の小径部144e内の、前記通路穴144cよりも底部144b寄りに、ほぼカップ状のキャップ162が嵌着されている。このキャップ162は、第2弁体144の小径部144eの内面に圧入またはカシメ等により固定されている。キャップ162は、第2弁体144の内面に固定される円筒部162aと、第2弁体144の大径部144d側を向いた底面162bと、これら円筒部162aと底面162bとを接続する傾斜面162cとを有している。この傾斜面162cの円筒部162a側(外周側)が、前記第2弁体144の通路穴144cの底部144b側の端部にほぼ一致している。
【0044】
従って、パワーシリンダP/C側から流れてくる作動油が、可変絞り弁6を開いて流路切換弁CV側に戻る際に、この傾斜面162cに沿って第2弁体144の内部側から外面側にスムーズに流出するようになっている。従来の構成では、チェック弁6を開いて第2弁体44の外部側から内部側に流れ込む圧油は(図3の破線の矢印I参照)、圧力損失が少ないが、可変絞り弁6を開いて第2弁体44の内部から外部へ流出する作動油は(図3の実線の矢印O参照)、第2弁体44の底面側にある空間60が油だまりとなって、流れを乱すので、前記流入する場合よりも圧力損失が大きかったが、この実施の形態では、流出する場合も流入する場合とほぼ同等の圧力損失に抑制することができる。
【0045】
さらに、このキャップ162の底面162bには、前記第2弁体144の底部144bに形成された連通孔(絞り穴)111と同径の連通孔(絞り穴)162dが、同一軸線上に形成されている。第2弁体144に形成されている連通孔111は、一定の長さ(図3のA参照)を有する必要が有るが、この実施の形態では、プレートをプレス加工することにより第2弁体144を成形しているので、弁体底部144bの連通孔111の長さを従来の構成のように長く取ることができないが、このようにキャップ162にも連通孔162dを形成することにより、必要な絞りの長さを確保することができる。
【0046】
図2は、第2の実施の形態に係るステアリングダンパのチェック弁8を構成する弁体244の縦断面図であり、この実施の形態では、キャップ162を二層化(162A、162B)している。そして、二層のキャップ162A、162Bの同じ位置に連通孔(絞り穴)162Ad、162Bdを形成している。これらキャップ162A、162Bも、第2弁体144と同様にプレス加工により成形されているので、板厚が薄いため、単独では、連通孔(絞り穴)162Ad、162Bdの長さを充分取ることができないが、このようにキャップ162A、162Bを二層構造にすることにより必要な絞りの長さを確保することができる。なお、キャップ162A、162Bは二層に限るものではなく、三層以上であっても良い。キャップ162を必要な枚数重ねることにより、必要な絞り長さを容易に得ることができる。
【0047】
なお、前記実施の形態のステアリングダンパは、図3に示すようなインテグラル型パワーステアリング装置のバルブハウジング内に設けたものに限るものではなく、例えば、特願2000−322955号のようなパイプ部材内にステアリングダンパを設けた構成にも適用可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、ポンプおよびタンクとパワーシリンダの左右室との間を舵取りハンドルの舵取り操作に応じて選択的に切換え接続する流路切換弁と、この流路切換弁を前記パワーシリンダの左右室に接続する左右一対のシリンダ通路を備えたパワーステアリング装置のステアリングダンパであって、前記各シリンダ通路の途中に設けられて前記パワーシリンダから流路切換弁への流入を制限する可変絞り弁と、この可変絞り弁と回路上並列に接続され前記流路切換弁からパワーシリンダへの流入を許容するチェック弁とを備えた一対のダンパ部からなるステアリングダンパにおいて、前記可変絞り弁は、油通路を有する弁座とこの弁座に対して付勢される弁体とから構成され、前記チェック弁は、前記可変絞り弁の油通路に対して並列に設けられた油通路を有する弁座とこの弁座に対して付勢される弁体とから構成され、前記チェック弁は、バルブ孔に収容され、開口部を有する弁座と、このバルブ孔に移動可能に設けられ、この弁座に当接することにより閉弁する弁体とから構成され、かつ、前記チェック弁の弁体をプレス加工により成形したことにより、チェック弁の弁体の材料費、加工費を低減することにより、安価なステアリングダンパを得ることができる。
【0049】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記ステアリングダンパにおいて、ハウジングの内面に形成されて前記可変絞り弁の弁座を構成する段部と、この段部に当接することにより可変絞り弁を閉弁する筒状の弁体と、この筒状弁体を前記弁座方向に付勢する付勢手段と、前記筒状弁体の開口部に当接して前記チェック弁を閉弁する有底円筒状の弁体と、この有底円筒状弁体を、前記付勢手段の逆方向から付勢する付勢手段とを備え、前記チェック弁の弁体をプレス加工により成形したことにより、チェック弁の弁体の材料費、加工費を低減することができ、安価なステアリングダンパを得ることができる。
【0050】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記請求項2に記載のステアリングダンパにおいて、前記チェック弁の弁体は内外を貫通する通路穴が形成され、流路切換弁からの流れは、弁体の外面側から前記通路穴を通って弁体内に流入し、パワーシリンダ側からの流れは弁体の内部から通路穴を通って外面側に流出するように構成し、かつ、前記弁体内の、通路穴よりも底部寄りにキャップを装着したことにより、チェック弁の弁体の内部から外部へ流出する流体の圧力損失を低減して、前記弁体の外部から内部に流入する流体の圧力損失とほぼ同等にすることができる。
【0051】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載のステアリングダンパにおいて、前記キャップに、通路穴の内部から外部に流出する流体をスムーズに流すための傾斜面を形成したことにより、請求項3に記載の発明の構成よりもさらに圧力損失を低減することができる。
【0052】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3または請求項4に記載のステアリングダンパにおいて、前記チェック弁の有底円筒状弁体の底面を貫通する連通孔を形成するとともに、キャップの底面に連通孔を形成したことにより、プレス加工により成形された板厚の薄い弁体でも、必要な絞りの長さを確保することができる。
【0053】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載のステアリングダンパにおいて、前記キャップをプレス加工により成形したことにより、安価で製作可能である。
【0054】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載のステアリングダンパにおいて、前記キャップを複数枚重ねて連通孔の長さを変更可能にしたことにより、必要な絞りの長さを確保することができ、しかも、絞りの長さを任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るステアリングダンパのチェック弁の弁体を示す縦断面図である。
【図2】 第2の実施の形態に係るステアリングダンパのチェック弁の弁体を示す縦断面図である。
【図3】 従来のステアリングダンパの一方のダンパ部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
CV 流路切換弁
P/C パワーシリンダ
6 可変絞り弁
8 チェック弁
10A ダンパ部
11 連通孔(絞り穴)
34d 可変絞り弁の弁座
40 可変絞り弁の弁体
40b チェック弁の弁座
42 (可変絞り弁の)付勢手段
44 チェック弁の弁体
44c 通路穴
46 (チェック弁の)付勢手段
162 キャップ

Claims (8)

  1. ポンプおよびタンクとパワーシリンダの左右室との間を舵取りハンドルの舵取り操作に応じて選択的に切換え接続する流路切換弁と、この流路切換弁を前記パワーシリンダの左右室に接続する左右一対のシリンダ通路を備えたパワーステアリング装置のステアリングダンパであって、前記各シリンダ通路の途中に設けられて前記パワーシリンダから流路切換弁への流入を制限する可変絞り弁と、この可変絞り弁と回路上並列に接続され前記流路切換弁からパワーシリンダへの流入を許容するチェック弁とを備えた一対のダンパ部からなるステアリングダンパにおいて、
    前記可変絞り弁は、油通路を有する弁座とこの弁座に対して付勢される弁体とから構成され、前記チェック弁は、前記可変絞り弁の油通路に対して並列に設けられた油通路を有する弁座とこの弁座に対して付勢される弁体とから構成され、
    前記チェック弁は、バルブ孔に収容され、開口部を有する弁座と、このバルブ孔に移動可能に設けられ、この弁座に当接することにより閉弁する弁体とから構成され、
    前記チェック弁の弁体をプレス加工により成形したことを特徴とするステアリングダンパ。
  2. ポンプおよびタンクとパワーシリンダの左右室との間を舵取りハンドルの舵取り操作に応じて選択的に切換え接続する流路切換弁と、この流路切換弁を前記パワーシリンダの左右室に接続する左右一対のシリンダ通路を備えたパワーステアリング装置のステアリングダンパであって、前記各シリンダ通路の途中に設けられて前記パワーシリンダから流路切換弁への流入を制限する可変絞り弁と、この可変絞り弁と並列に接続され前記流路切換弁からパワーシリンダへの流入を許容するチェック弁とを備えた一対のダンパ部からなるステアリングダンパにおいて、
    ハウジングの内面に形成されて前記可変絞り弁の弁座を構成する段部と、この段部に当接することにより可変絞り弁を閉弁する筒状の弁体と、この筒状弁体を前記弁座方向に付勢する付勢手段と、前記筒状弁体の開口部に当接して前記チェック弁を閉弁する有底円筒状の弁体と、この有底円筒状弁体を、前記付勢手段の逆方向から付勢する付勢手段とを備え、
    前記チェック弁の弁体をプレス加工により成形したことを特徴とするステアリングダンパ。
  3. 請求項2に記載のステアリングダンパにおいて、
    前記チェック弁の弁体は、円筒部に内外を貫通する通路穴が形成され、流路切換弁からの流れは、弁体の外面側から前記通路穴を通って弁体内に流入し、パワーシリンダ側からの流れは弁体の内部から通路穴を通って外面側に流出するように構成し、かつ、前記弁体内の、通路穴よりも底部寄りにキャップを装着したことを特徴とするステアリングダンパ。
  4. 請求項3に記載のステアリングダンパにおいて、
    前記キャップに、通路穴の内部から外部に流出する流体をスムーズに流すための傾斜面を形成したことを特徴とするステアリングダンパ。
  5. 請求項3または請求項4に記載のステアリングダンパにおいて、
    前記チェック弁の弁体の底面を貫通する連通孔を形成するとともに、前記キャップの底面に連通孔を形成したことを特徴とするステアリングダンパ。
  6. 請求項5に記載のステアリングダンパにおいて、
    前記キャップをプレス加工により成形したことを特徴とするステアリングダンパ。
  7. 請求項6に記載のステアリングダンパにおいて、
    前記キャップを複数枚重ねて前記連通孔の長さを変更可能にしたことを特徴とするステアリングダンパ。
  8. 請求項1または請求項2に記載のステアリングダンパにおいて、
    前記チェック弁の弁体は、底部と筒状部とから構成される有底円筒状に形成され、この筒状部に形成された通路孔を有することを特徴とするステアリングダンパ。
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