JP4075085B2 - ラクチドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸オリゴマーを解重合して乳酸の環状二量体であるラクチドを連続的に製造する方法に関し、より詳しくは、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を得ることのできるラクチドの連続製造方法に関する。
【0002】
ラクチドは、生分解性ポリマーであるポリ乳酸の製造原料として特に有用なものである。
【0003】
【従来の技術】
従来より、ラクチドの製造は、乳酸を脱水縮合して比較的低分子量の乳酸オリゴマーを中間体として得て、次いで乳酸オリゴマーを触媒存在下、減圧下で加熱して解重合することによってラクチドを生成させ、これを蒸気として反応系外に取り出す、いわゆる反応蒸留法によって行われている。
【0004】
このラクチド製造法には多くの研究例が知られている。例えば、独国特許第267826号明細書には、真空中にて乳酸を200℃に加熱し、蒸留するラクチド製造法が記載されている。また、独国特許第1234703号明細書には、L−乳酸水溶液を原料としてチタンテトラアルコキシド触媒存在下で、L−ラクチドを製造する方法が記載されている。しかしながら、これらの方法はいずれも回分操作によるものであり、工業的規模でのラクチド製造には適さない。すなわち、回分操作では、安定した製品が得られにくい、大量生産が難しい等の問題があり、工業的規模での製造には適さない。
【0005】
一方、特開昭63−101378号公報には、工業的規模でのラクチド製造法が記載されている。しかしながら、同号公報記載の方法は半回分操作によるものであり、得られるラクチドの純度は概して低く、精製操作を要する。
【0006】
また、特表平7−500091号公報には、低分子量の乳酸オリゴマーから薄膜蒸留を利用してラクチドを連続的に製造する方法が記載されている。しかしながら、同号公報記載の方法によれば、得られる蒸留物中のラクチド含有率は、56〜84%程度と低く、また、全ラクチド中における目的とするL−ラクチド含量も90〜92%程度であり、光学純度もやや低い、という問題があった。
【0007】
このように、反応系外に取り出した蒸留物中のラクチド含有率が低いのは、蒸留物が不純物として乳酸の一量体や直鎖状二量体等を含むためである。そして、乳酸一量体や直鎖状二量体等が含まれる原因としては、薄膜蒸留に付す乳酸オリゴマーの分子量が低い(平均分子量300(重合度:約5)〜1700(重合度:約30))ために、オリゴマーが解重合する際に、乳酸の一量体や直鎖状二量体が生成しやすくなり、ラクチドに環化するより速くこれらが反応系外に出てしまうためと考えられる。
【0008】
さらに、解重合には高温を要するので、反応時間が長くなると得られるラクチドの光学純度も低下しやすい。すなわち、例えばL−乳酸を構成単位とするオリゴマーを解重合する場合、解重合中の加熱によりラセミ化が起こり、目的とするL−ラクチド以外に、L−乳酸とD−乳酸の環状二量体であるメソ−ラクチドやD−乳酸の環状二量体であるD−ラクチドが生成してしまい、光学純度が低下する。また、D−乳酸を構成単位とするオリゴマーを解重合する場合には、目的とするD−ラクチド以外に、メソ−ラクチドやL−ラクチドが生成してしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、高いラクチド含有率を有し且つ高光学純度のラクチド生成物を得ることのできるラクチドの連続製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、低分子量の乳酸オリゴマーをそのまま解重合するのではなく、管型反応器において乳酸オリゴマーの重合度を高めた後、分子蒸留装置において解重合することによって、上記目的を達成できることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のラクチドの製造方法は、乳酸オリゴマーを解重合してラクチドを製造する方法であって、第1工程において、原料の乳酸オリゴマーを管型反応器に連続的に導入し、加熱して乳酸オリゴマーの重量平均分子量が10000〜30000となるように乳酸オリゴマーの重合度を高め、第2工程において、この重合度が高められた乳酸オリゴマーを分子蒸留装置に連続的に導入し、解重合温度に加熱すると共に前記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力に減圧して、ラクチドを気化させて捕集することを特徴とする。
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明においては、第1工程において、原料の乳酸オリゴマーの重合度を高めるために管型反応器を用いる。管型反応器は、管の一端から原料の乳酸オリゴマーを連続的に供給し、他端から生成物の乳酸オリゴマーを流出させる形式の反応器であり、管の形状は、直管状、U字型曲管状、コイル状等のいずれでも良い。
【0013】
また、管型反応器は、1本の管により構成されたものでも良いが、並列に配置された複数の管により構成されたものでも良い。
【0014】
本発明において、管型反応器として、二重管式熱交換器や、多管式熱交換器、単管式熱交換器を用いることができる。
【0015】
二重管式熱交換器は、内管と外管とからなるものであり、内管内に反応物を流通させ、外管内に伝熱媒体を流通させる。内管内の反応物と外管内の伝熱媒体とは、並流であってもよいが、一般には向流で流通させる。また、内管外側の伝熱面積を増大させるために、内管外周面にフィンが形成されたフィン付き管を内管として用いることも好ましい。フィンには、縦型フィンや螺旋型フィンがある。
【0016】
多管式熱交換器は、並列に配列された複数の管よりなる管束が通常円筒形の胴内に収められた所謂シェルアンドチューブ型のものであり、管内に反応物を流通させ、胴と管束との間隙に伝熱媒体を流通させる。多管式熱交換器には、固定管板型、U字管型、遊動頭型等があるが、いずれをも用いることができる。伝熱面積は、管の本数、径、長さ等によって、変化させることができる。多管式熱交換器は、管の本数を多くすることによって多流量の反応物を処理することができ、伝熱面積を大きくすることによって温度制御性能に優れ、装置容積も小さく、しかも安価であるので好ましい。多管式熱交換器の管の長さ、直径、本数としては、限定されるものではないが、例えば長さ1〜10m、直径0.5〜10inch、本数2〜100本である。
【0017】
単管式熱交換器は、1本の伝熱管が容器内に設置されたものであり、その管の内又は外に伝熱媒体を流通させて熱交換を行なう。じゃ管型、コイル管型がある。
【0018】
また本発明において、管型反応器として、様々な形の攪拌翼を備えた一軸又は二軸の押出機や混練機を用いることもできる。
【0019】
これら管型反応器は、水平状態、垂直状態、あるいは斜めの状態のいずれの状態に設置しても良い。
【0020】
これら管型反応器では、反応器内の反応流体の流れが理想的なピストン流れに近く、反応流体の滞留時間分布が存在しない。すなわち、すべての反応物質が等しい滞留時間で反応器内を通過するものと考えられる。これに対して、管型反応器の代わりに連続槽型反応器を用いると、連続槽型反応器では反応流体の滞留時間分布が存在するので、平均滞留時間よりも滞留時間の長い反応物質が存在する。その結果、原料として光学活性のあるものを使用した場合には、ラセミ化が起こり光学純度の低下の原因となる。乳酸オリゴマーの重合度を高めるために管型反応器を用いた場合には、工業的規模の実装置においても、連続槽型反応器よりも滞留時間分布が小さくなるので、光学純度の低下を最小限に抑えることができる。
【0021】
本発明においては、第2工程において、乳酸オリゴマーの解重合のために分子蒸留装置を用いる。分子蒸留とは、液体の表面からの蒸発分子が自己及び残留不活性ガスなどの分子との衝突による分子の移行の抑制を受けない高真空下の状態で、成分の蒸発速度の違いを利用して成分を分離する非平衡操作であり、操作温度を物質の正常沸点と関係なく任意に設定し得るという利点を有する。
【0022】
分子蒸留装置としては、ポットスチル型、流下膜型、遠心型等が挙げられるが、連続式で広く工業的に用いられているのは、流下膜型、遠心型装置である。遠心型分子蒸留装置は、遠心力を利用して加熱面上に蒸発物質の膜を広げる方式のものであり、流下膜型分子蒸留装置は、蒸発物質を加熱面に沿って流下させ、薄膜状とする方式のものである。本発明においても、これらの連続式分子蒸留装置を好適に用いることができる。
【0023】
次に、本発明の操作法について説明する。
本発明では、原料として比較的低分子量の乳酸オリゴマーを用いる。このオリゴマーは、従来より知られている方法で製造することができる。例えば、乳酸モノマーを減圧(一般に5〜20mmHg程度)下で加熱(一般に120〜170℃)して脱水することによって、重量平均分子量400(重合度:約5.3)〜2000(重合度:約27.5)の乳酸オリゴマーを得ることができる。
【0024】
本発明においては、第1工程において、この乳酸オリゴマーを管型反応器の入口に連続的に導入し、加熱してオリゴマーの重合度を高める。
【0025】
この反応においては、乳酸の重合用触媒を用いることができる。重合用触媒としては特に限定されるものではないが、通常、周期律表IA族、 IIIA族、IVA族、IIB族、IVB族およびVA族からなる群から選ばれる金属または金属化合物からなる触媒を用いることができる。
【0026】
IA族に属するものとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属と弱酸の塩(例えば、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、オクチル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、乳酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、オクチル酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等)等を挙げることができる。
【0027】
IIIA族に属するものとしては、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等を挙げることができる。
【0028】
IVA族に属するものとしては、例えば、有機スズ系の触媒(例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズ等)の他、粉末スズ、酸化スズ、ハロゲン化スズ等を挙げることができる。
【0029】
IIB族に属するものとしては、例えば、亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物等を挙げることができる。
【0030】
IVB族に属するものとしては、例えば、テトラプロピルチタネート等のチタン系化合物、ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物等を挙げることができる。
【0031】
VA族に属するものとしては、例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物、酸化ビスマス(III) 等のビスマス系化合物等を挙げることができる。
【0032】
これらの中でも、スズまたはスズ化合物からなる触媒が活性の点から好ましく、オクチル酸スズが特に好ましい。
【0033】
これら触媒の使用量は、原料の乳酸オリゴマーに対して0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%程度である。
【0034】
また、触媒の添加は、管型反応器に導入する前の乳酸オリゴマーに行なっても良いし、管型反応器内の入口付近で行なっても良い。
【0035】
管型反応器内の温度は、管型反応器出口で得られる乳酸オリゴマーの温度が、160〜300℃、好ましくは180〜260℃、より好ましくは200〜250℃になるように設定する。この温度が160℃未満であると、適切な分子量のオリゴマーが得られにくく、また次工程の解重合温度にするのに加熱を要する。一方、温度が300℃を超えると、ラセミ化、着色の原因となりやすい。
【0036】
また、管型反応器における滞留時間は、2時間以下、好ましくは60分以下、より好ましくは1〜30分とする。滞留時間が2時間を超えると、ラセミ化が起こる可能性が高くなるので好ましくない。
【0037】
このような操作条件とすることにより、管型反応器において、乳酸オリゴマーの重量平均分子量が10000〜30000、好ましくは10000〜25000、より好ましくは12000〜20000となるようにオリゴマーの重合度を高める。重量平均分子量が2000未満では、次工程の分子蒸留装置での解重合において、乳酸の一量体や直鎖状二量体が生成しやすくなり、ラクチド留分中にこれらの不純物を多く含んでしまう。一方、重量平均分子量が30000を超えるオリゴマーを得るには、管型反応器の高い内温、長い滞留時間を要するので好ましくない。
【0038】
また、管型反応器の出口付近にベントを装着して、反応器内を減圧することによって、脱水反応を促進してオリゴマーの重合度を高めることもできる。この場合の管型反応器の内温及び滞留時間は、適宜選択することができる。
【0039】
このようにして、管型反応器の出口から、重合度が高められた乳酸オリゴマーが溶融状態で得られる。この第1工程においては、管型反応器を用いるので、工業的規模の実装置においても滞留時間分布が小さく、光学純度の低下を最小限に抑えることができる。
【0040】
本発明においては、このようにして管型反応器出口から得られた乳酸オリゴマーを、第2工程において、分子蒸留装置に連続的に導入し、解重合温度に加熱すると共に前記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力に減圧して、ラクチドを連続的に生成させる。分子蒸留装置への導入は、乳酸オリゴマーの溶融状態を保ったまま行うことが好ましい。
【0041】
分子蒸留装置内の有効温度(解重合温度)は、160〜300℃、好ましくは180〜260℃、より好ましくは200〜250℃に設定する。この温度が160℃未満であると、ラクチドの留出が難しくなり、かなりの高真空度を要する。一方、温度が300℃を超えると、ラセミ化、着色の原因となりやすい。また、操作効率の点からも、管型反応器出口で得られる乳酸オリゴマーの温度と同程度の温度にすることが好ましい。
【0042】
分子蒸留装置の加熱域表面は任意の手段により加熱することができる。この加熱域は好ましくは熱伝導性材料から構成されており、熱を加熱域壁面の外側から内部蒸発表面に向けて供給し、分子蒸留装置に導入された乳酸オリゴマーを加熱する。熱の供給は、例えば、加熱域の外側を加熱テープで電気的に包み込むことにより、あるいは電気加熱マントルを加熱域に被せることにより行うことができる。又は、加熱域にジャケットを設け、このジャケットに熱媒を循環させ、内部加熱表面を加熱しても良い。また、加熱域表面の温度制御を正確に行なうために、加熱域の外表面に熱電対を設置して、加熱域表面の温度をモニターするようにしても良い。
【0043】
分子蒸留装置内の圧力は、上記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力であり、通常1〜50mmHg程度である。より低圧とした方が加熱温度を低くすることができるので好ましく、従って好ましくは1〜20mmHg、より好ましくは1〜10mmHg、さらに好ましくは1〜5mmHgである。
【0044】
また、分子蒸留装置における滞留時間は、10分以下、好ましくは3分以下、より好ましくは1分以下である。滞留時間が10分を超えると、ラセミ化が起こる可能性が高くなるので好ましくない。
【0045】
このような操作条件によって、生成したラクチドを蒸気として解重合反応系外に取り出し連続的に捕集することができる。ラクチドの捕集は、分子蒸留装置に取り付けられたコンデンサーにより容易に行うことができる。
【0046】
この第2工程においては、重合度が高められた乳酸オリゴマーを解重合するので、乳酸の一量体や直鎖状二量体の生成が非常に少なく、高ラクチド含有率(例えば、ラクチド留分中のラクチド含有率:85〜95%)のラクチド留分を得ることができる。また、滞留時間も短くて済み、解重合中にラセミ化が起こることがなく、原料として光学活性なL−又はD−乳酸から合成されたL−又はD−乳酸オリゴマーを用いた場合には、高い光学純度のL−又はD−ラクチド(例えば、光学純度:90〜98%eeのL−ラクチド)を得ることができる。
【0047】
本発明の方法で製造されたラクチドは高純度のものであるが、必要によりさらに精製した後、ポリ乳酸への重合反応に利用することもできる。精製は、例えば、特開平6−256340号公報「ラクチドの溶融結晶化精製」、特開平7−118259号公報「ラクチドの精製法及び重合法」等に記載の方法に従って行うことができる。
【0048】
本発明においては、分子蒸留装置においてラクチドに変換されなかった乳酸オリゴマーのうちの少なくとも一部を、管型反応器又は分子蒸留装置に再循環させて再利用することも可能である。
【0049】
あるいは、分子蒸留装置においてラクチドに変換されなかった乳酸オリゴマーのうちの少なくとも一部を加水分解して乳酸にして、得られた乳酸を乳酸オリゴマーの原料として用いることも可能である。乳酸への加水分解は、常法により行うことができる。
【0050】
このように、ラクチドに変換されなかった乳酸オリゴマーを再利用する場合には、オリゴマー中に含まれている触媒の量や失活の度合い、全反応系内の物質収支を考慮することが必要である。
【0051】
本発明における好ましい態様について述べると;
重量平均分子量400〜2000のL−又はD−乳酸オリゴマーを原料として用い、これを管型反応器に連続的に導入し、有機スズ触媒存在下、管型反応器出口で得られる乳酸オリゴマーの温度が160〜300℃、好ましくは180〜260℃になるように加熱し、滞留時間は2時間以下、好ましくは60分以下として、オリゴマーの重合度を高め重量平均分子量10000〜30000、好ましくは10000〜25000の乳酸オリゴマーを連続的に得る。この乳酸オリゴマーを分子蒸留装置に連続的に導入し、解重合温度160〜300℃、好ましくは180〜260℃、圧力1〜20mmHg、好ましくは1〜10mmHg、滞留時間10分以下、好ましくは3分以下で解重合して、ラクチドを連続的に生成させる。このラクチドを蒸気として解重合反応系外に取り出し捕集する。
【0052】
この操作により、ラクチド含有率85〜95%、原料に応じてL−又はD−ラクチドの光学純度90〜98%eeのラクチド留分を得ることができる。
【0053】
本発明におけるより好ましい態様について述べると;
重量平均分子量400〜2000のL−又はD−乳酸オリゴマーを原料として用い、これを管型反応器に連続的に導入し、オクチル酸スズ触媒存在下、管型反応器出口で得られる乳酸オリゴマーの温度が200〜250℃になるように加熱し、滞留時間は1〜30分として、オリゴマーの重合度を高め重量平均分子量12000〜20000の乳酸オリゴマーを連続的に得る。この乳酸オリゴマーを分子蒸留装置に連続的に導入し、解重合温度200〜250℃、圧力1〜5mmHg、滞留時間1分以下で解重合して、ラクチドを連続的に生成させる。このラクチドを蒸気として解重合反応系外に取り出し捕集する。
【0054】
この操作により、ラクチド含有率90〜95%、原料に応じてL−又はD−ラクチドの光学純度95〜98%eeのラクチド留分を得ることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
<乳酸オリゴマーの重量平均分子量>
以下の条件のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
検出器:RID-6A、ポンプ:LC-9A 、カラムオーブン:GTO-6A、カラム:Shim-pack GPC-801C, -804C, -806C, -8025Cを直列 (島津製作所製)
移動相:クロロホルム、流速:1ml/min、サンプル量:200μl(サンプル濃度が0.5w/w%となるようにクロロホルムに溶かした)、カラム温度:40℃。
【0056】
[実施例]
容量2lのガラス製フラスコに1000[g/hr]の速度で、濃度87%、光学純度98.6%のL−乳酸(Purac社製)を連続的に供給した。フラスコ内は、温度160℃、圧力5mmHgになるように制御し、脱水反応を行なった。この操作により、重量平均分子量約2000の乳酸オリゴマーが730[g/hr]で得られた。
【0057】
この乳酸オリゴマーに触媒としてオクチル酸スズを73[g/hr]の速度で加え、内温240℃に設定された二軸混練押出機(S−1、栗本鉄工所社製)の入口に連続的に導入し、オリゴマーを加温しながら触媒と混合させた。滞留時間20分とした。この操作により、押出機出口から重量平均分子量約15000の乳酸オリゴマーが連続的に得られた。
【0058】
この乳酸オリゴマーを溶融状態のまま、流下式の薄膜蒸留装置(WFE2−03、神鋼パンテック社製)に連続的に導入し、有効温度240℃、圧力3mmHg、滞留時間約1分で解重合して、生成したラクチド留分をコンデンサーで捕集した。ラクチド留分は590[g/hr]で得られた。
【0059】
このラクチド留分中のラクチド含有率は89重量%であり、ラクチドの組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によると、L−ラクチド:97.6、D−ラクチド:0.3%、LD−ラクチド(メソ):2.1%であり、L−ラクチドの光学純度は97.3%eeであった。
【0060】
【発明の効果】
本発明のラクチド製造方法によれば、上述のように、第1工程において、管型反応器を用いて原料の乳酸オリゴマーの重合度を乳酸オリゴマーの重量平均分子量が10000〜30000となるように高めるので、滞留時間分布が小さく、光学純度の低下を最小限に抑えることができる。そして、第2工程において、重合度が高められた乳酸オリゴマーを分子蒸留装置を用いて解重合するので、乳酸一量体や直鎖状二量体の生成が非常に少なく、高ラクチド含有率のラクチド留分を得ることができる。また、分子蒸留装置での滞留時間も短く、光学純度の低下が非常に少ない。
【0061】
また、本発明のラクチド製造方法は、連続操作であり、品質の安定したラクチドを大量生産することができる。
【0062】
このように、本発明のラクチド製造方法によれば、高純度ラクチドを工業的に安定して製造することができる。特に、原料として光学活性な乳酸オリゴマーを用いた場合には、高い光学純度を有するラクチドを製造することができる。
さらに、管型反応器は低価格な設備であり、本方法は経済的にも優れている。
Claims (6)
- 乳酸オリゴマーを解重合してラクチドを製造する方法であって、第1工程において、原料の乳酸オリゴマーを管型反応器に連続的に導入し、加熱して乳酸オリゴマーの重量平均分子量が10000〜30000となるように乳酸オリゴマーの重合度を高め、第2工程において、この重合度が高められた乳酸オリゴマーを分子蒸留装置に連続的に導入し、解重合温度に加熱すると共に前記解重合温度におけるラクチドの蒸気圧以下の圧力に減圧して、ラクチドを気化させて捕集することを特徴とする、ラクチドの製造方法。
- 管型反応器における滞留時間が2時間以下であることを特徴とする、請求項1に記載のラクチドの製造方法。
- 分子蒸留装置における滞留時間が10分以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のラクチドの製造方法。
- 原料の乳酸オリゴマーが、L−乳酸オリゴマー又はD−乳酸オリゴマーであることを特徴とする、請求項1〜3項のうちのいずれか1項に記載のラクチドの製造方法。
- 分子蒸留装置においてラクチドに変換されなかった乳酸オリゴマーのうちの少なくとも一部を、管型反応器又は分子蒸留装置に再循環させることを特徴とする、請求項1〜4項のうちのいずれか1項に記載のラクチドの製造方法。
- 分子蒸留装置においてラクチドに変換されなかった乳酸オリゴマーのうちの少なくとも一部を加水分解して乳酸にして、得られた乳酸を乳酸オリゴマーの原料として用いることを特徴とする、請求項1〜5項のうちのいずれか1項に記載のラクチドの製造方法。
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