JP4075040B2 - 体外循環血液回路システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
体外循環血液回路の回路内気泡除去システム及びその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血液透析用回路、心肺用血液回路等のような体外循環血液回路において、回路内を流れる血液を変質させず、長時間安定的に機能させるのは医療の上において重要な問題である。回路内の血液の変質について、その大きな要因となるのが、血液と空気の接触または血液の滞留による凝血である。
【0003】
そこで、本願出願人は体外循環血液回路の自動脱気システムとして、特願2001−55731号に記載の血液回路の自動脱気システムを提案した。該血液回路の自動脱気システムは、図10に示したように、血液を循環させるように設けられたメインラインと、その途中に血液中に混入した気泡をトラップする脱気チャンバとからなる血液回路で、該脱気チャンバには、脱気チャンバ内の気泡を検知する気泡検知手段が設けられ、脱気チャンバ内の空気を脱気する脱気ラインが接続され、脱気ラインには脱気ライン内に陰圧負荷する陰圧負荷手段が設けられている。さらに脱気ライン途中より分岐し、生理的浸透圧溶液を導入するよう設けられた給液ラインから構成される血液回路システムである。
【0004】
これにより、脱気チャンバ内に溜まった気泡(空気)を気泡検知手段にて検知し、脱気ラインを通じて脱気し、脱気後、給液ラインから生理的浸透圧溶液より導入することで、脱気ラインに残存する血液を生理的浸透圧溶液にて置換する血液回路システム及びその血液回路システムによる脱気方法を提供するものである。
【0005】
しかしながら、このような血液回路の自動脱気システムにおいては、脱気チャンバに内に溜まった気泡(空気)は血液と接触した状態である。そのため、チャンバ内で泡沫状で存在することがあり、気泡が血液より速やかに分離しないことがあった。また、これらの気泡(空気)を脱気ラインにより脱気する際に、接触する血液をわずかながら同時に排出してしまう。
【0006】
一方、該血液回路の自動脱気システムは、脱気後に脱気ラインに残存する血液を生理的浸透圧溶液にて置換する機構を備える。この時、微量ではあるが生理的浸透圧溶液が脱気チャンバ内の血液に混入してしまう。そのため、特に血液透析用回路においては、正確な除水量あるいは補液量の制御が困難となる可能性もあり、必ずしも好ましいものではなかった。
【0007】
本発明者は以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、次の発明に到達した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上記事情について鑑み、血液透析用回路、人工心肺用血液回路等のような体外循環血液回路において、回路内に設けたチャンバー内に溜まった空気を迅速且つ自動的に除去することで血液と空気の接触部分を実質的に発生させない状態を維持し、血液滞留部を発生させないようにすることが可能な装置を提供することにある。それと同時に、前記体外循環血液回路において、血液に混入した気泡を速やかに分離して脱気することが可能な装置を提供し、脱気時に血液の損失を生じることのない装置を提供する。更には、置換のための生理的浸透圧溶液が血液内に混入しても、返血される血液の水分量を制御可能な装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解消するため、本発明にかかる体外循環血液回路は、血液を循環させるように設けられたメインラインと、その途中に血液中に混入した気泡をトラップする第1の脱気チャンバとからなる体外循環血液回路で、該第1の脱気チャンバには、脱気チャンバ内の気泡を検知する気泡検知手段が設けられている。
【0010】
また、前記第1の脱気チャンバには、脱気チャンバ内の気泡を移送する脱気給液ラインが接続され、該脱気給液ライン途中にはポンプ手段が設けられている。
【0011】
更に脱気給液ライン途中には第2の脱気チャンバが設けられてなり、その末端には生理的浸透圧溶液を導入するよう設けられた給液装置が設けられた体外循環血液回路システムである。
【0012】
これにより、第1の脱気チャンバ内に溜まった気泡(空気)を気泡検知手段にて検知し、脱気給液ラインを通じて第2の脱気チャンバへと移送する。第2の脱気チャンバ内には生理的浸透圧溶液が満たされており、移送された気泡は第2の脱気チャンバ内の上方にて速やかに空気層に分離され、脱気される。更に脱気後、脱気給液ラインから生理的浸透圧溶液より導入することで、脱気給液ラインに残存する血液を生理的浸透圧溶液にて置換する血液回路システム及びその血液回路システムによる脱気方法を提供する。更に本発明は以下の(1)から(13)の特徴により上記課題を解消する。
【0013】
(1)体外循環血液回路において、メインラインに接続された第1の脱気チャンバと、該脱気チャンバに接続され、第1の脱気チャンバ内の気泡を脱気し、更に生理的浸透圧溶液を導入するよう設けられた脱気給液ラインと、該脱気給液ライン途中に第2の脱気チャンバを設けた構成とすることを特徴とする体外循環血液回路システム。
【0014】
(2)前記第1の脱気チャンバに該脱気チャンバ内の気泡を検知するよう設けられた気泡検知手段が設けられてなることを特徴とする上記(1)記載の体外循環血液回路システム。
【0015】
(3)前記脱気給液ラインにポンプ手段が設けられてなることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0016】
(4)前記脱気給液ラインに血液検知手段が設けられてなることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0017】
(5)前記脱気給液ラインに開閉手段が設けられてなることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0018】
(6)前記メインラインと連絡するよう設けられ、更にライン途中にポンプ手段を備えた補液ラインを設けられてなること特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0019】
(7)前記気泡検知手段に連動し、脱気給液ラインに設けたポンプ手段の運転を制御する制御手段を備えたことを特徴とする上記(3)から(6)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0020】
(8)前記血液検知手段に連動し、前記脱気給液ラインに設けられたポンプ手段の運転を制御する制御手段を備えたことを特徴とする上記(4)から(7)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0021】
(9)前記脱気給液ラインに設けられたポンプ手段に連動し、前記脱気給液ラインに設けられた開閉手段の開閉を制御する制御手段を備えたことを特徴とする上記(5)から(8)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0022】
(10)前記脱気給液ラインに設けた開閉手段に連動し、前記補液ラインに設けられたポンプ手段の運転を制御する制御手段を備えたことを特徴とする上記(5)から(9)のいずれかに記載の体外循環血液回路システム。
【0023】
(11)体外循環血液回路システムの回路内を流れる血液中の気泡を脱気する方法であって、該回路には第1の脱気チャンバが設けられ、該脱気チャンバと接続する脱気給液ラインを設けるとともに、該脱気給液ライン途中に第2の脱気チャンバが設けられてなる体外循環血液回路システムにおいて、第1の脱気チャンバ内の気泡を気泡検知手段で検知する工程と、第1の脱気チャンバ内の気泡を脱気給液ラインを介して第2の脱気チャンバへと移送する工程と、脱気給液ラインより生理的浸透圧溶液を流し、少なくとも脱気給液ライン中の一部に存在する血液を生理的浸透圧溶液で置換する工程を有することを特徴とする血液回路脱気方法。
【0024】
(12)上記(11)記載の体外循環血液回路システムの脱気給液ラインに開閉手段を設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記開閉手段を制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
【0025】
(13)上記(11)または(12)のいずれかに記載の体外循環血液回路システムの脱気給液ラインにポンプ手段を設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記ポンプ手段を制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
【0026】
(14)上記(11)から(13)のいずれかに記載の体外循環血液回路システムの前記メインラインと連絡するよう設けられ、更にラインの途中にポンプ手段を備えた補液ラインを設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記血液を生理的浸透圧溶液で置換する工程に連動して、前記ポンプ手段を制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
【0027】
(15)上記(11)から(14)のいずれかに記載の体外循環血液回路システムに制御手段を設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記脱気の各工程を自動で制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
【0028】
本発明の体外循環血液回路システムによれば、血液回路内において血液と空気層が実質的に接触しない状態を維持するだけでなく、同時に血液回路内で血液が滞留する部分を発生させないようにすることが可能となる。更には、生理的浸透圧溶液を満たした第2の脱気チャンバを設けることで、血液内に混入した気泡を速やかに分離することが可能となる。また、脱気後に脱気給液ラインに残存する血液を生理的浸透圧溶液にて置換することで、脱気に伴う血液の損失を防ぐことが可能となる。また、ライン途中にポンプ手段を備えた脱気給液ラインと、メインラインとを連絡する補液ラインを設けることで、前記置換のための生理的浸透圧溶液が血液内に混入しても、返血される血液の水分量を制御することが可能な血液回路の体外循環血液回路システムを提供することが可能となる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明である体外循環血液回路の詳細について説明する。まず、図1を参照して、概略的な構成について説明する。図1は本発明にかかる体外循環血液回路システムを血液透析に用いた場合の概略図である。本発明にかかる体外循環血液回路システムは透析器12の血液ポートに接続され、ポンプ手段61によって、血液を循環させるように設けられたメインライン3の途中に第1の脱気チャンバ1を介して設置されている。
【0030】
気泡が混在した血液はメインライン3を通じて、この第1の脱気チャンバ1に流れると、この第1の脱気チャンバ1にて捕捉される。また第1の脱気チャンバ1には、その外周面に気泡検知手段8が備えられ、第1の脱気チャンバ1内の気泡を検知するよう設置されている。
【0031】
前記第1の脱気チャンバ1の上方にはチャンバ内の空気を脱気する脱気給液ライン4が接続されてなる。前記脱気給液ライン4には、その途中にライン内の空気等を移送するためのポンプ手段62と、移送された空気を捕捉し、血液と空気を完全に分離するための生理的浸透圧溶液が満たされた第2の脱気チャンバ2が備えられている。また、前記第2の脱気チャンバ2には、その外周面に血液検知手段9が備えられ、脱気時に吸引された血液を検知するよう設置されている。更に前記脱気給液ライン4には、末端に生理的浸透圧溶液を充填した給液装置10が備えられており、更に近傍に備えられた開閉手段7の開閉によって、脱気給液ライン4に該溶液を給液するよう設置されている。
【0032】
また、前記生理的浸透圧溶液を充填した給液装置10とメインライン3と連絡するよう設けられ、そのライン途中に生理的浸透圧溶液を移送するためのポンプ手段63が設けられた補液ライン5が設置されている。これにより、一般的な血液透析療法において行われる補液操作を上記に示した脱気給液操作と同時に行うことができるよう設置されている。
【0033】
また、図1に示した体外循環血液回路システムには、前記気泡検知手段8、血液検知手段9からの信号によるポンプ手段62の駆動の制御、開閉手段7の開閉操作の制御、あるいは開閉手段7からの信号によるポンプ手段63の駆動を制御する制御手段11から構成されている。
【0034】
上記構成によれば、血液回路のメインライン3中に流れる血液が第1の脱気チャンバ1内に導入され、そこで血液中に混入された気泡が自らの浮力でもって第1の脱気チャンバ1上方部に移動する。時間経過とともに、幾つかの気泡が第1の脱気チャンバ1上方部に溜まり、空気層を形成するようになる。この空気層を気泡検知手段8で検知し、脱気給液ライン4途中に設けられたポンプ手段62により第2脱気チャンバ2へと移送する。この時、移送された空気は血液と接触しながら移送されるが、血液が血液検知手段9の位置に達すると、ポンプ手段62が停止し、空気のみが第2脱気チャンバ2へと移送される。この第2脱気チャンバ2内には生理的浸透圧溶液が満たされている。このため、移送された空気はその浮力でチャンバ上方部に移動し、生理的浸透圧溶液と速やかに分離され、空気層を形成した後、脱気管21より脱気される。次に給液装置10より生理的浸透圧溶液を第2脱気チャンバ2及び脱気給液ライン4へと流し、残存した血液を第1の脱気チャンバ1内に戻す。この生理的浸透圧溶液の置換操作により第1の脱気チャンバ1内に僅かながら生理的浸透圧溶液が流入してしまう。この流量を制御手段にて算出し、一連の血液透析運転中に行われている補液操作の流量制御に対して補正をするよう、ポンプ手段63にその信号を送信し、その駆動を制御している。
【0035】
これにより、メインライン3内に発生した空気を除去することが可能となる。血液の滞留部分がない状態を維持することが可能となり、その結果脱気ライン3中の凝血を防ぐことが可能となる。また、脱気給液ライン4に残存した血液を生理的浸透圧溶液にて置換し、脱気により移送された血液を回収することで血液の損失を防ぐことが可能となる。更に上記置換操作に伴う血液への生理的浸透圧溶液の混入によって生じる血液の水分量の補正が、上記の補液操作の制御により可能となり、返血される血液の正確な水分量制御が可能となる。
【0036】
また本発明の体外循環血液回路システムにおいて、制御手段11を用い、気泡検知手段8、血液検知手段9等からの信号を入力し開閉手段7、ポンプ手段62、63等を制御することで、一連の脱気工程を自動的に行うことが可能となる構成とするのが好ましい。
【0037】
本発明にかかる体外循環血液回路システムの構成部品である第1の脱気チャンバ1、あるいは第2の脱気チャンバ2は、メインライン3を流れる血液中の気泡を集め、脱気させる必要があるため、気泡が溜まる各脱気チャンバの上方部の形状は半球形あるいは円錐形のような略円錐形の形状であるのが好ましい。理由としては、脱気時に各脱気チャンバ上方が半球形あるいは円錐形のような略円錐形の形状であれば、特に第1の脱気チャンバ1の場合、その頂部に接続して設けられた脱気給液ライン4より脱気すると、脱気チャンバ内に空気層が残ることなく、また余分な血液を吸引することなく、効率的に脱気することが可能となるからである。
【0038】
また、第1の脱気チャンバ1に接続されるメインライン3の血液導入口は脱気チャンバ1上方側部に、血液排出口は脱気チャンバ1最下部にそれぞれ設置されてなるのが好ましい。理由としては、血液導入口が仮に第1脱気チャンバ1の上部に設けてあると、脱気時に導入される血液を同時に吸引してしまうばかりでなく、血液導入口より血液が導入される際、場合により血液導入口より空気層を介して血液の液面に導入されることとなり、この時血液の液面において泡沫が発生し、結果的に空気層を増大させてしまう可能性があるからである。さらには、その血液導入口を気泡検知手段8よりも下方に位置、即ち気泡が溜まり空気層の発生により生じた空気と血液との界面よりも下方に位置するように設けられているのが好ましい。血液導入口より導入される血液が脱気チャンバに導入される時に空気を介することなく、導入することが可能となるからである。
【0039】
本発明にかかる体外循環血液回路システムに用いられる気泡検知手段8は第1の脱気チャンバ1の外周面に設けられている。第1の脱気チャンバ1に設けられる気泡検知手段8は脱気する空気層の量に応じて第1の脱気チャンバ1に装着する位置を変化させることが可能である。即ち、脱気する空気の量を多く設定するには、第1の脱気チャンバ1に装着する位置を脱気チャンバ頂部から比較的遠位に設ければよく、脱気する空気の量を少なく設定するには、第1の脱気チャンバ1に装着する位置を脱気チャンバ1頂部から比較的近位に設ければよい。このように本発明に用いられる気泡検知手段は脱気する空気の量の調整も簡単に行うことができる。また、本発明に用いられる気泡検知手段は、光学的センサあるいは超音波センサ等、その他公知のいずれの方式のセンサであっても構わない。
【0040】
本発明にかかる体外循環血液回路システムに用いられる血液検知手段9は、第2の脱気チャンバ下方部近傍の脱気給液ライン4の外周面に設けられている。この血液検知手段についても、その設けられる位置について、任意に位置を変化させることが可能である。尚、本発明に用いられる血液検知手段は、上記の気泡検知手段と同様、光学的センサあるいは超音波センサ等、その他公知のいずれの方式のセンサであっても構わない。
【0041】
尚、上記のように図1において血液透析の場合の実施形態として説明したが、本発明にかかる体外循環血液回路システムはこれに限定されるものではなく、人工心肺用の血液回路等、その他の体外循環血液回路にも適用される。
【0042】
【実施例】
本発明における血液回路システムの脱気機構の詳細について、その一連の流れに沿って図2から図9を用いて説明する。図2から図9は本発明にかかる血液回路システムの血液透析中に用いた場合の運転中の各工程における概略図である。尚、メインライン3、第1の脱気チャンバ1、第2の脱気チャンバ2、脱気給液ライン4、補液ライン5に記された2種類の斜線は、疎なる斜線が生理的浸透圧溶液、密なる斜線が血液を示している。
【0043】
まず、図2が示すように、血液透析運転開始前において血液回路のメインライン3、第1の脱気チャンバ1、第2の脱気チャンバ2、脱気給液ライン4、補液ライン5内にそれぞれ生理的浸透圧溶液(図中の疎なる斜線部)が満たされる(通常プライミング操作と称する)。この時、開閉手段7は開放した状態である。
【0044】
次に図3が示すように、血液透析器(不図示)において血液透析の運転が開始されると、メインライン3より血液(図中の密なる斜線部)が流れ、第1の脱気チャンバ1の上方側部に設けられた血液導入口より血液が導入され、第1の脱気チャンバ1内が血液で満たされ、脱気チャンバ1最下部に設けられた血液排出口より血液が排出され、メインライン3を通じて血液透析器(不図示)に戻される。この時、開閉手段7は閉鎖した状態にする。
【0045】
次に図4が示すように、何らかの要因にて血液回路内に発生した気泡がメインライン3より第1の脱気チャンバ1に導入されると、その気泡は第1の脱気チャンバ1内上方部へと溜まるようになる。血液透析運転中の時間経過とともに、しだいに第1の脱気チャンバ1上方部に溜まった気泡は空気層Aになり、脱気チャンバ1上方部には空気層Aと血液との界面が発生する。さらに気泡が溜まり、空気層Aが大きくなると、空気層Aと血液との界面が下がり、界面の位置が所定の位置に達すると、気泡検知手段8は信号を出力し、その信号を制御手段11に送信する。
【0046】
次に図5が示すように、制御手段11はポンプ手段62に信号を送信し、ポンプ手段62の運転を開始させ、脱気給液ライン4内を第1の脱気チャンバ1側から第2の脱気チャンバ側へと流れるようにする。すると、第1の脱気チャンバ1内の空気Aはその近傍の血液とともに脱気給液ライン4を通じて、第2の脱気チャンバ2へと移送される。
【0047】
次に図6が示すように、空気Aとともに移送されてきた血液が血液検知手段9の位置まで達すると、血液検知手段9は血液を検知し、その信号を制御手段11に送信する。制御手段11はポンプ手段62に対し、運転停止するように送信し、ポンプ手段62の運転が停止して、脱気工程が完了する。第2の脱気チャンバ2内には生理的浸透圧溶液が満たされている。一般的に空気は、血液のような粘性の高い液体と接触している場合と比較して、粘性の低い液体、この例において生理的浸透圧溶液と接触している場合の方が、接する液体との分離が速やかに行われる。また、第1の脱気チャンバ1上方部に溜まる空気は、泡沫状で存在している場合があり、血液層と完全に分離した空気層の状態でないことがある。しかしながら、第2の脱気チャンバ2内には生理的浸透圧溶液で満たされているため、移送された空気は、チャンバ内にて速やかに分離し、第2の脱気チャンバ2上方部に溜まり、空気層Aを形成することができる。一方、第2の脱気チャンバ2上方部には、空気層Aを排出するための脱気管21が設けられており、空気層Aはこの脱気管21より脱気される。
【0048】
次に図7が示すように、ポンプ手段62の運転が停止すると、制御手段11は開閉手段7に信号を送信し、開閉手段7を開放して、給液工程が開始される。開閉手段7が開放されると、給液装置10内に充填された生理的浸透圧溶液が脱気給液ライン4を通じて、第2の脱気チャンバ2に至り、更に第2の脱気チャンバ2の下部に接続された脱気給液ライン4に流れて、脱気給液ライン4と第1の脱気チャンバとの接続部分に達した時点で、第2の脱気ライン2に残存する血液を第1の脱気チャンバ1へと返血される。
【0049】
次に図8が示すように、生理的浸透圧溶液が第2脱気チャンバ2、脱気給液ライン4に給液されて、脱気給液ライン4と第1の脱気チャンバとの接続部分に達すると、制御手段11から開閉手段7に信号が送信され、開閉手段7が閉鎖して、給液が停止されて、給液工程が完了する。このような給液工程の流量制御については、制御手段11による開閉手段7の開閉制御を、生理的浸透圧溶液の給液量と各ラインにおける流速を算出し、それによって予め設定した時間だけ開閉される時間的制御が望ましい。
【0050】
次に図9が示すように、前記給液工程が完了した際に第1の脱気チャンバ1へと返血される血液と同時に、給液による生理的浸透圧溶液が導入される。このため、メインライン3を流れ、患者へと返血される血液の水分量が多くなる。このことは、特に血液透析療法において、その療法の効果を損なう虞がある。一方、血液透析療法においては、生理的浸透圧溶液をメインラインへと導入する補液操作があり、これにおいても水分量を制御している。そのため、給液工程を完了すると、本来の補液操作による生理的浸透圧溶液の導入量と給液工程による導入量の補正をする必要がある。そこで、給液工程完了後の補液操作による導入量を、本来の補液操作による導入量に対して、給液工程による導入量を差し引いた導入量が補液されるよう、ポンプ手段63の駆動を制御する。この時、給液工程が完了した時に開閉手段7が閉鎖した信号を制御手段11にて受信し、その信号をポンプ手段63に送信して駆動制御して、導入量の調整をする。また、この制御においても、補正するための導入量を算出し、それによる予め設定した時間だけ開閉される時間的制御が望ましい。
【0051】
尚、本発明に用いられる生理的浸透圧溶液については、一般的な血液透析透析療法において用いられる補液操作に用いる補液であればよい。
【0052】
また、本実施例において、脱気給液ラインへの導入に用いられる生理的浸透圧溶液と、補液操作に用いられる生理的浸透圧溶液を同一の給液装置10に充填した装置として示した。また、補液ライン5を脱気給液ライン4にて分岐してメインライン3と連絡する装置として示した。しかしながら、本発明の体外循環血液回路システムは本実施例においてのみ、制限を受けるものではない。例えば、給液装置10をそれぞれ別の給液装置とした装置であっても、補液ライン5を給液装置10より直接メインライン3に連絡する装置であっても、本発明の効果は達成可能である。
【0053】
また、本発明に用いられる脱気管21による脱気方法は自然排気であっても、ポンプ手段等による強制排気であっても構わない。また、脱気管21には外部からの異物の混入を防止するため、フィルター等が設けられているのが望ましい。また、脱気時にチャンバ内の生理的浸透圧溶液がオーバーフローするのを防止するための装置が設けられているのが望ましい。そのため、脱気管21に外部と遮断して回路内の閉鎖系を確保するための開閉手段を設けても構わない。
【0054】
以上のことより、血液回路内に気泡や空気層が発生しても、第1の脱気チャンバ1にて捕捉し、更にその気泡や空気層を第2の脱気チャンバ2に移送して、速やかに血液と分離し、脱気することで、血液回路内において血液と空気が接触させる状態を実質的に発生させないように維持することが可能となる。更に給液工程により脱気給液ライン4に残存する血液を生理的浸透圧溶液に置換することが可能となる。更に補液ライン5に設けられたポンプ手段63を制御することで補液操作の制御が可能となる。また、これら一連の工程において制御手段11を用いることによって、自動で行うことができる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の血液回路の自動脱気システムによれば、生理的浸透圧溶液を満たした第2の脱気チャンバを設けることで、血液内に混入した気泡を速やかに分離して脱気することが可能となる。また、脱気後に脱気給液ラインに残存する血液を生理的浸透圧溶液にて置換することで、脱気に伴う血液の損失を防ぐことが可能となる。また、ライン途中にポンプ手段を備え、生理的浸透圧溶液がメインラインへと連絡する補液ラインを設けることで、前記置換のための生理的浸透圧溶液が血液内に混入しても、返血される血液の水分量を制御することが可能な体外循環血液回路システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる体外循環血液回路システムの血液透析に用いた場合の概略図
【図2】本発明にかかる体外循環血液回路システムのプライミング操作時における概略図
【図3】本発明にかかる体外循環血液回路システムの体外血液循環開始時の概略図
【図4】本発明にかかる体外循環血液回路システムの運転中における気泡検知時の概略図
【図5】本発明にかかる体外循環血液回路システムの脱気工程開始時の概略図
【図6】本発明にかかる体外循環血液回路システムの脱気工程停止時の概略図
【図7】本発明にかかる体外循環血液回路システムの給液工程開始時の概略図
【図8】本発明にかかる体外循環血液回路システムの給液工程停止時の概略図
【図9】本発明にかかる体外循環血液回路システムの補液工程開始時の概略図
【図10】従来における体外循環血液回路システムの血液透析に用いた場合の概略図
【符号の説明】
1.第1の脱気チャンバ
2.第2の脱気チャンバ
21.脱気管
3.メインライン
4.脱気給液ライン
5.補液ライン
61.ポンプ手段
62.ポンプ手段
63.ポンプ手段
7.開閉手段
8.気泡検知手段
9.血液検知手段
10.給液装置
11.制御手段
12.透析器
A.空気(空気層)
Claims (12)
- 体外循環血液回路において、メインラインに接続された第1の脱気チャンバと、第1の脱気チャンバに該脱気チャンバ内の気泡を検知するよう設けられた気泡検知手段と、該脱気チャンバに接続され、第1の脱気チャンバ内の気泡を脱気し、更に生理的浸透圧溶液を導入するよう設けられた脱気給液ラインと、該脱気給液ラインに送液する給液装置と、該脱気給液ライン途中に設けられた第2の脱気チャンバと、該脱気給液ラインにポンプ手段を設けた構成であることを特徴とする体外循環血液回路システム。
- 前記気泡検知手段に連動し、前記脱気給液ラインに設けられたポンプ手段の運転を制御する制御手段を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の体外循環血液回路システム。
- 前記脱気給液ラインに血液検知手段が設けられてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の体外循環血液回路システム。
- 前記血液検知手段に連動し、前記脱気ラインに設けられたポンプ手段の運転を制御する制御手段を備えたことを特徴とする、請求項3に記載の体外循環血液回路システム。
- 前記脱気給液ラインに開閉手段が設けられてなることを特徴とする、請求項1から4のいずれかの項記載の体外循環血液回路システム。
- 前記脱気給液ラインに設けられたポンプ手段に連動し、前記脱気給液ラインに設けられた開閉手段の開閉を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の体外循環血液回路システム。
- 前記メインラインと連絡するよう設けられ、更にライン途中にポンプ手段を備えた補液ラインを設けられてなることを特徴とする、請求項1から6のいずれかの項記載の体外循環血液回路システム。
- 前記脱気給液ラインに設けた開閉手段に連動し、前記前記補液ラインに設けられたポンプ手段の運転を制御する制御手段を備えたことを特徴とする、請求項7に記載の体外循環血液回路システム。
- 体外循環血液回路システムの回路内を流れる血液中の気泡を脱気する方法であって、該回路には第1の脱気チャンバが設けられ、該脱気チャンバと接続する脱気給液ラインが設けられ、該脱気給液ラインには給液装置とポンプ手段が設けられるとともに、該脱気給液ライン途中に第2の脱気チャンバが設けられてなる体外循環血液回路システムにおいて、第1の脱気チャンバ内の気泡を気泡検知手段で検知する工程と、ポンプ手段を制御する工程と、第1の脱気チャンバ内の気泡を脱気給液ラインを介して第2の脱気チャンバへ移送する工程と、脱気給液ラインより生理的浸透圧液を流し、少なくとも脱気給液ライン中の一部に存在する血液を生理的浸透圧溶液で置換する工程を有することを特徴とする血液回路脱気方法。
- 前記請求項9記載の体外循環血液回路システムの脱気給液ラインに開閉手段を設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記開閉手段を制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
- 前記請求項9または10のいずれかの項記載の体外循環血液回路システムの前記メインラインと連絡するよう設けられ、更にラインの途中にポンプ手段を備えた補液ラインを設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記血液を生理的浸透圧溶液で置換する工程に連動して、前記ポンプ手段を制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
- 前記請求項9から11のいずれかの項記載の体外循環血液回路システムに制御手段を設けた体外循環血液回路システムにおいて、前記脱気の各工程を自動で制御する工程を更に含むことを特徴とする血液回路脱気方法。
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