JP4075030B2 - 転がり軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受装置に関し、例えば磁気ディスク装置におけるスイングアーム用の軸受のように、高速で微少揺動する部位での使用に適した転がり軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、従来のスイングアーム用軸受装置では、図3に示すように、ケース8にボルト等を介して締結固定される軸1に、一対の玉軸受6,7を介して、ハウジング2が揺動可能に取り付けられる。また、前記ハウジング2には、スイングアーム3と、該スイングアーム3を軸1を中心として揺動駆動するためのボイスコイルモータ(VCM)側部材4と、を含んで構成される所謂Eブロック5が取り付けられる。
【0003】
ところで、従来においては、潤滑剤としてグリースが密封された2個の玉軸受6,7に予圧(軸振れ、転動体の滑り、振動や騒音の防止のために、転動体と内外輪との間隙を調整すべく軸受に与えられるアキシャル荷重を言う)をかけて使用されている(図3の予圧経路等参照)。そして、内輪内周面6a,7a及び外輪外周面6b,7bの周囲に接着剤が塗布されて、図3に示すように、各玉軸受6、7に軸1及びハウジング2が接着固定されるようになっている。なお、前記スイングアーム3とボイスコイルモータ(VCM)側部材4とを含んで構成されるEブロック5は、ハウジング2の外周面に塗布された接着剤等によりハウジング2に固定されている。
【0004】
また、従来のスイングアーム用軸受装置は、例えば、図4に示すように、加振器11によって、軸1をアキシャル方向(図4中の矢印A方向参照)に加振し、ハウジング2の端面のアキシャル方向の振動をレーザードップラのようなセンサ9によって検出し、この検出結果に基づいてアキシャル共振周波数を求め、該アキシャル共振周波数(アキシャル剛性)が所定の周波数範囲内に入るように管理されている(例えば、予圧調整などにより達成される)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年においては、磁気ディスク装置は益々高密度化が要求されている。
このため、ディスクに信号を記録するトラックの幅は益々狭くなってきており、信号を記録再生するヘッドを搭載するスイングアームには、目標トラックへのアクセスの高速化と位置決め精度の向上(位置制御の高速化及び高精度化)が一層強く要求されている。
【0006】
従って、スイングアームを支持する軸受のアキシャル方向の共振周波数について管理するばかりでなく、ラジアル方向(軸直角方向;図3又は図4中の矢印B方向参照)の共振周波数(剛性)についても管理することが要求されるに至っているのが実状である。
【0007】
特に、スイングアームを支持する軸受のラジアル方向共振のピーク信号を電気的な処理(フィルター)によってキャンセルして制御精度の向上を図りつつ位置制御を行うものにおいては、ラジアル方向の共振周波数(主共振;以下、ラジアル共振周波数とも言う)が所定の周波数範囲から外れると、前記キャンセル処理が良好に行われず、十分な制御精度を維持・促進することができなくなる惧れがある。従って、位置制御の高速化及び高精度化の一層の促進の要請に応えるためには、軸受装置のラジアル共振周波数を所定範囲内に管理することが要請される。
【0008】
なお、従来においては、一般に、ラジアル方向の剛性は、アキシャル方向の剛性よりも高いので、アキシャル方向の剛性を管理すれば位置制御精度を十分に確保できると考えられていたこと、又はアキシャル方向の方が剛性が低いため、小さな加振力で共振周波数を比較的容易に測定できること等の理由から、ラジアル共振周波数に着目してこれを積極的に管理するという考えはなかった。
【0009】
本発明は、かかる従来の実情に鑑みなされたもので、軸受装置のラジアル共振周波数を管理することで、例えばスイングアームの位置制御の一層の高精度化及び高速化を図れるようにした転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明では、
転動体と、
回転中心内側から前記転動体を転動自由に支持する内輪と、
回転中心外側から前記転動体を転動自由に支持する外輪と、
前記内輪に取り付けられる軸と、
前記外輪に取り付けられる外輪部取付部材と、
を含んで構成される転がり軸受装置において、
前記軸或いは前記外輪部取付部材のいずれか一方を前記軸の略ラジアル方向に加振した場合における他方の略ラジアル方向における共振周波数を求め、該求めた共振周波数が所定範囲内に収まるように管理するようにした。
【0011】
このように、略ラジアル方向の共振周波数(ラジアル共振周波数、ラジアル剛性)を求め(測定、計算等により検出する場合を含む)、該ラジアル共振周波数が所定範囲内に収まるように軸受装置の各部を管理(調整)すれば、軸受装置の略ラジアル方向の剛性・精度を一層高めることができると共に、また、特に、スイングアーム等を支持する軸受の略ラジアル方向の共振のピーク信号を電気的な処理(フィルター)によってキャンセルして位置制御を行うものにおいては、略ラジアル方向の共振のピーク信号の電気的な処理(フィルター)によるキャンセル処理を良好に達成させることができるので、従来の軸受装置に対して、スイングアーム等の位置制御の高精度化及び高速化を一層促進させることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す。なお、図3又は図4で説明した従来と同様の要素には、同一符号を付して説明する。
【0013】
本実施の形態においては、図1に示すように、本発明の外輪部取付部材の一部に相当するハウジング2の外周部に、ダミーマス10(Eブロック5相当の質量;なお、Eブロック5は、本発明の外輪部取付部材の少なくとも一部に相当する。)が取り付けられ、このダミーマス10の外周部には、軸1の略ラジアル方向(図1中の矢印B方向参照)に対して加振可能な加振器11が取り付けられている。
【0014】
また、軸1の外周には、前記加振器11による略ラジアル方向への加振に伴い発生する軸1の略ラジアル方向振動を検出することができるように、例えばレーザードップラのような非接触変位計(センサ)9が配設されている。なお、ここでは、非接触式の変位センサを用いることとしているが、接触式の変位センサを用いることも可能である。
【0015】
そして、前記変位センサ9の検出信号は、例えばFFT(高速フーリエ変換)分析器等へ送られ、該FFT分析器等では、この送られた検出信号に基づいて略ラジアル方向の共振周波数(ラジアル共振周波数)を検出することができるようになっている。
【0016】
ところで、ラジアル共振周波数検出結果に対する、ハウジング2とダミーマス10との接続部の剛性(接続剛性のバラツキ)の影響を低減するために、ダミーマス10を取り付けない状態でラジアル共振周波数を測定し、質量−剛性の換算式から、マス(Eブロック5)を取り付けたときのラジアル共振周波数を計算によって検出するようにすることもできる。
【0017】
即ち、このように、マス(Eブロック5)を取り付けたときのラジアル共振周波数を質量−剛性の換算式から計算によって検出するようにすると、実際にダミーマス10を取り付けて測定する場合と比較して、ダミーマス10の取り付け具合のバラツキに伴う前記接続部の剛性バラツキ、延いてはラジアル共振周波数の測定バラツキを排除することができるので、測定バラツキのない信頼性・精度の高いラジアル共振周波数を検出することができることになる。
【0018】
そして、本実施の形態においては、上記のようにして検出されたラジアル共振周波数(ラジアル剛性)が所定範囲内に収まるように、軸受装置各部の締め付けトルク、各部の重量、各部のはめあい公差、各部の接続剛性等が調整(管理)されることになる。
【0019】
ところで、ラジアル共振周波数(ラジアル剛性)の所定範囲は、実機の主共振(数KHz)の±15%の範囲とすることが望ましい。
【0020】
このように、本実施の形態によれば、略ラジアル方向における共振周波数(ラジアル共振周波数、ラジアル剛性)を精度良く求め、該ラジアル共振周波数を所定範囲内に収めることができるように軸受装置の各部を調整するようにしたので、軸受装置の略ラジアル方向の剛性・精度を一層高めることができると共に、また、特に、スイングアーム等を支持する軸受の略ラジアル方向の共振のピーク信号を電気的な処理(フィルター)によってキャンセルして位置制御を行うものにおいては、略ラジアル方向の共振のピーク信号の電気的な処理(フィルター)によるキャンセル処理を良好に達成させることができるため、従来の軸受装置に対して、スイングアーム等の位置制御の高精度化及び高速化を一層促進させることが可能となる。
【0021】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図2を参照しつつ説明する。なお、図1の第1の実施の形態と同様の要素には同一の符号を付してある。
【0022】
第2の実施の形態は、図2に示されるように、図1に示した第1の実施の形態と異なり、ハウジング2の外周部にダミーマス10(Eブロック5相当の重量)を取り付けると共に、軸1の両端部を挟むようなかたちで軸1に固定されるコ字状の治具12に取り付けられた加振器11を介して、軸1を略ラジアル方向(図2の矢印B方向参照)に加振するように構成されている。
【0023】
また、ダミーマス10の外周には、前記加振器11による略ラジアル方向への加振に伴い発生するダミーマス10の略ラジアル方向振動を検出可能なレーザードップラのような非接触変位計(センサ)9が配設される。当該変位センサ9の検出信号は、FFT分析器等へ送られ、この送られた検出信号に基づいて前記FFT分析器等では略ラジアル方向の共振周波数(ラジアル共振周波数)を検出するように構成される。
【0024】
ところで、治具12の軸1への固定は、通常、ボルト等による締結によりなされるが、本実施の形態において測定されるラジアル共振周波数には、当該締結部(取り付け部)の締結(取り付け)剛性の影響が含まれる。即ち、締結部の締め付けトルクが小さい場合は共振ピークが小さく且つ不安定であり共振周波数が特定し難くなる一方、締め付けトルクが大きい場合は共振ピークが大きく且つ安定するため共振周波数を特定し易くなる。従って、締め付けトルクは大きい方が好ましいが、締め付けトルクを過大にし過ぎると、即ち、過大な軸力を与えると、軸受6,7に作用する予圧が変化してしまう惧れがあるため、かかる予圧変化を排除して適正予圧を付与した状態でのラジアル共振周波数を求めるべく、実機の使用条件と同じ締め付けトルクで締結することが好ましい。
【0025】
また、第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様に、ダミーマス10を取り付けない状態でラジアル共振周波数を測定し、質量−剛性の換算式から、マス(Eブロック5)を取り付けたときのラジアル共振周波数を計算によって検出するようにすることもでき、これにより、ダミーマス10の取り付け具合のバラツキに伴う剛性バラツキ、延いてはラジアル共振周波数の測定バラツキを排除することができるため、測定バラツキのない信頼性・精度の高いラジアル共振周波数を検出することができることになる。
【0026】
そして、本実施の形態においても、上記のようにして検出されたラジアル共振周波数(ラジアル剛性)が所定範囲内に収まるように、軸受装置各部の締め付けトルク、各部の重量、各部のはめあい公差、各部の接続剛性等が調整(管理)されることになる。
【0027】
なお、ラジアル共振周波数(ラジアル剛性)の所定範囲は、第1の実施の形態と同様、実機の主共振(数KHz)の±15%の範囲とすることが望ましい。
【0028】
以上のように、本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様、略ラジアル方向の共振周波数(ラジアル共振周波数、ラジアル剛性)を精度良く求め、該ラジアル共振周波数を所定範囲内に収めることができるように軸受装置の各部を調整するようにしたので、軸受装置の略ラジアル方向の剛性を一層高めることができると共に、また、特に、スイングアームを支持する軸受の略ラジアル方向の共振のピーク信号を電気的な処理(フィルター)によってキャンセルして位置制御を行うものにおいては、略ラジアル方向の共振のピーク信号の電気的な処理(フィルター)によるキャンセル処理を良好に達成させることができるため、従来の軸受装置に対して、スイングアーム等の位置制御の高精度化及び高速化を一層促進させることが可能となる。
【0029】
なお、上記各実施の形態では、転動体を玉とする玉軸受装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、転動体をころとするころ軸受装置等、あらゆる転がり軸受装置(アンギュラー型式なども含む)に適用することができるものである。
【0030】
また、上記各実施の形態では、ラジアル共振周波数を実際に測定して得られたラジアル共振周波数を所定範囲内に収めることとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、シミュレーション計算等によってラジアル共振周波数を求め(検出し)、これが所定範囲内に収まるように各部を調整する場合も含まれるものである。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、転がり軸受装置の略ラジアル方向の共振周波数(ラジアル共振周波数、ラジアル剛性)を求め、該求めたラジアル共振周波数を所定範囲内に収めるように軸受装置の各部を管理(調整)するようにしたので、軸受装置の略ラジアル方向の剛性・精度を一層高めることが可能となると共に、また、特に、スイングアーム等を支持する軸受の略ラジアル方向の共振のピーク信号を電気的な処理(フィルター)によってキャンセルして位置制御を行うものにおいては、略ラジアル方向の共振のピーク信号の電気的な処理(フィルター)によるキャンセル処理を良好に達成させることが可能となるため、従来の転がり軸受装置に対して、スイングアーム等の位置制御の高精度化及び高速化を一層促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る玉軸受装置のラジアル共振周波数の測定方法を説明する図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る玉軸受装置のラジアル共振周波数の測定方法を示す図である。
【図3】従来の玉軸受装置の構成例を示す断面図である。
【図4】従来の玉軸受装置のアキシャル共振周波数の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
1 軸
2 ハウジング
3 スイングアーム
4 ボイスコイルモータ(VCM)側部材
5 Eブロック
6 玉軸受
6a 内輪内周面
6b 外輪外周面
7 玉軸受
7a 内輪内周面
7b 外輪外周面
9 変位センサ
10 ダミーマス
11 加振器
12 治具

Claims (1)

  1. 転動体と、
    回転中心内側から前記転動体を転動自由に支持する内輪と、
    回転中心外側から前記転動体を転動自由に支持する外輪と、
    前記内輪に取り付けられる軸と、
    前記外輪に取り付けられる外輪部取付部材と、
    を含んで構成される転がり軸受装置において、
    前記軸或いは前記外輪部取付部材のいずれか一方を前記軸の略ラジアル方向に加振した場合における他方の略ラジアル方向における共振周波数を求め、該求めた共振周波数が所定範囲内に収まるように管理されたことを特徴とする転がり軸受装置。
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