JP4075003B2 - 半導体レーザ及びその製造方法 - Google Patents
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a.結晶品質が悪い、
b.サイズが大きく十分な量子効果が得られない、或いは、
c.密度が低い等の欠点があり、
所期の高性能な半導体レーザを実現することができなかった。
図4(a)は従来の自己組織化による量子ドット半導体レーザの概略的断面図であり、n型GaAsからなる基板31上に、MOVPE法(有機金属気相成長法)を用いて、n型AlGaAsからなるクラッド層32、GaAsからなる光閉じ込め層33、InGaAs量子ドットを含む活性層34、GaAsからなる光閉じ込め層35、及び、p型AlGaAsからなるクラッド層36を順次エピタキシャル成長させて基本構造を構成したものである。
図4(b)は図4(a)における破線の円内の領域を模式的に拡大して示したもので、光閉じ込め層33を構成するGaAsと格子不整合のInGaAsを薄く成長させることによって二次元的に拡がる薄いウェッティング層(Wetting層:濡れ層)37とクラスタ状の島である量子ドット38とからなる活性層34が形成され、この量子ドット38は図においては説明を簡単にするために1個のみ示しているが、実際にはランダムに高密度で分布しているものである。
図4(c)は、量子ドット38の近傍の伝導帯側のバンドダイヤグラムであり、この量子ドット38内においては、上述のように離散化されたエネルギー準位、即ち、量子準位が形成される。
なお、図においては、説明を簡単にするために、基底準位39、第2量子準位40、及び、第3量子準位41を示しているが、量子ドット38のサイズ及び光閉じ込め層33,35との相対的なバンドギャップ差等によって形成される量子準位の数は異なる。
まず、量子ドット38におけるキャリアで緩和過程を伝導帯側で考えると、量子ドット38近傍の電子42は、オージェ過程によって量子ドット38の離散化したエネルギー準位、特に、第3量子準位41等の高次の量子準位に捕まる。
なお、オージェ過程とは、二つの電子42が衝突して、一つの電子42が量子ドット38内に遷移、即ち、緩和し、そのエネルギーをもらったもう一方の電子42が高いエネルギー状態に励起される過程であり、この場合の緩和時間τ0 は1〜10ps(ピコ秒)程度と非常に高速な緩和過程である。
次いで、第3量子準位41等の高次の量子準位に捕まった電子42は、離散化した量子準位間のエネルギー差に相当するエネルギーを有する縦光学フォノン(LOフォノン)を放出しながら基底準位39等の低次の量子準位へ緩和していくが、この場合の緩和時間τ0 はフォノンボトルネック現象のために数100psと極めて長い値となることが報告されており(必要ならば、K.Mukai et al.,Physical Review B,Vol.54,No.8,pp.5243−5246,1996参照)、この様な数100psの長い緩和時間τ0 では所期の優れた特性が得られないという問題が発生する。
なお、図6乃至図8は、本発明者が、レート方程式を解いて量子ドット半導体レーザの動作特性をシミュレートした結果をグラフ化したものであり、詳細な計算方法は論文(M.Sugawara et al.,Applied Physics Letters,Vol.71,No.19,pp.2791〜2793,November,1998参照)に詳しい。
図6は、量子ドット半導体レーザの電流−光出力特性を示す図であり、量子準位間の緩和時間τ0 が増大するに連れて効率の低下としきい値電流Ithの上昇が起こることが明らかである。
図7は、量子ドット半導体レーザの最大光出力の緩和時間τ0 依存性を示す図であり、緩和時間τ0 の増大とともに、最大光出力が低下し、しまいには光出力が得られなくなることが明らかである。
図8は、変調帯域幅f3dB の緩和時間τ0 依存性を示す図であり、緩和時間τ0 の増大とともに、変調帯域幅f3dB が狭くなっていくことが明らかである。
なお、図1(a)は、量子ドット半導体レーザの概略的断面図であり、また、図1(b)は、活性層近傍における伝導帯側のバンドダイヤグラムである。
図1(a)及び(b)参照
(1)本発明は、基板上にInを含むウェッティング層3とInを含む量子ドット1からなる活性層4を有する半導体レーザにおいて、前記量子ドット1は、ウェッティング層3よりIn組成比が大きく、量子ドット1内における量子準位が基底準位7のみであり、量子ドット1の周囲に接するように低バンドギャップ層2が設けられ、低バンドギャップ層2のバンドギャップE g は、量子ドット1のバンドギャップをE g1 、ウェッティング層3のバンドギャップをE g2 とした時、E g1 <E g <E g2 の関係を満たすことを特徴とする。
なお、本願明細書において、レーザ動作温度の熱エネルギー、即ち、kT(k:ボルツマン係数、T:絶対温度)の範囲内に存在するエネルギー準位はまとめて一つの準位と見なすものである。
この様な量子ドット1をInGaAs、InGaN、或いは、InGaPの内のいずれかによって構成することにより、優れた特性の量子ドット半導体レーザを再現性良く作製することができる。
(6)また、本発明は、上記(5)において、量子ドット1が、InGaAs、InGaN、或いは、InGaPの内のいずれかから構成されることを特徴とする。
(7)また、本発明は、上記(5)または(6)において、ウェッティング層3を形成する工程乃至低バンドギャップ層2を形成する工程を複数回実行することを特徴とする。
図2(a)参照
図2(a)は、本発明の実施例1の量子ドット半導体レーザの概略的断面図であり、n型GaAs基板11上に、MOVPE法を用いてn型AlGaAsクラッド層12、i型GaAs光閉じ込め層13、活性層17、i型GaAs光閉じ込め層18、p型AlGaAsクラッド層19、及び、p型GaAsキャップ層20を順次エピタキシャル成長させたものである。
Eg1<Eg <Eg2
の関係を満たし、且つ、図2(b)に示すように、伝導帯側の離散化されたエネルギー準位、即ち、量子準位が基底準位21の一つだけになるようにInGaAs低バンドギャップ層16のバンド・ギャップEg を設定するものであり、その値Eg 、したがって、In組成比は、InGaAs量子ドット15のIn組成比、及び、サイズ等に依存する。
なお、この場合には、活性層17の構造を理解しやすいように、強調して図示しているが、実際には、図4に示した従来の量子ドット半導体レーザと同様の層厚関係を有するものであり、また、InGaAs量子ドット15は高密度で分布しているものである。
図2(b)は、活性層17の近傍における伝導帯側のバンドダイヤグラムであり、図に示すように、InGaAs量子ドット15内における量子準位が一つである時、即ち、基底準位21のみである場合、活性層17の近傍に注入された電子22は、オージェ過程で1〜10ps程度の短い緩和時間τ0 で基底準位21へ緩和するので、フォノンボトルネック現象の影響を受けることなくレーザ発振するための電子を短い時間で補給することができる。
図3参照
図3は、本発明の実施例2の量子ドット半導体レーザの概略的断面図であり、n型GaAs基板11上に、MOVPE法を用いてn型AlGaAsクラッド層12、i型GaAs光閉じ込め層13、活性層23、i型GaAs光閉じ込め層18、p型AlGaAsクラッド層19、及び、p型GaAsキャップ層20を順次エピタキシャル成長させたものである。
なお、この場合にも、活性層23の構造を理解しやすいように、強調して図示しているが、実際には、図4に示した従来の量子ドット半導体レーザと同様の層厚関係を有するものであり、また、InGaAs量子ドット15或いは量子ドット列は高密度で分布しているものである。
Eg1<Eg <Eg2
の関係を満たすように設定しており、個々のInGaAs量子ドット15は相対的にバンドギャップの小さなInGaAs低バンドギャップ層16によって周囲が囲まれているので、全体として1個の大きな量子ドットのバリアの高さ、即ち、エネルギー障壁が低くなり、形成される量子準位は基底準位のみとなるので、フォノンボトルネック現象の影響を受けることがなく、キャリアの高速緩和が可能になる。
2 低バンドギャップ層
3 ウェッティング層
4 活性層
5 高バンドギャップ層
6 高バンドギャップ層
7 基底準位
8 高次の量子準位
9 高次の量子準位
11 n型GaAs基板
12 n型AlGaAsクラッド層
13 i型GaAs光閉じ込め層
14 InGaAsウェッティング層
15 InGaAs量子ドット
16 InGaAs低バンドギャップ層
17 活性層
18 i型GaAs光閉じ込め層
19 p型AlGaAsクラッド層
20 p型GaAsキャップ層
21 基底準位
22 電子
23 活性層
31 基板
32 クラッド層
33 光閉じ込め層
34 活性層
35 光閉じ込め層
36 クラッド層
37 ウェッティング層
38 量子ドット
39 基底準位
40 第2量子準位
41 第3量子準位
42 電子
Claims (7)
- 基板上にInを含むウェッティング層とInを含む量子ドットからなる活性層を有する半導体レーザにおいて、前記量子ドットは、前記ウェッティング層よりIn組成比が大きく、該量子ドット内における量子準位が基底準位のみであり、該量子ドットの周囲に接するように低バンドギャップ層が設けられ、前記低バンドギャップ層のバンドギャップE g は、前記量子ドットのバンドギャップをE g1 、前記ウェッティング層のバンドギャップをE g2 とした時、E g1 <E g <E g2 の関係を満たすことを特徴とする半導体レーザ。
- 上記ウェッティング層、量子ドット、及び、低バンドギャップ層がInを含んでなり、前記ウェッティング層のIn組成比は、前記量子ドットのIn組成比より0.2以上小さいことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ。
- 上記低バンドギャップ層のIn組成比が、上記ウェッティング層のIn組成比と上記量子ドットのIn組成比の間であることを特徴とする請求項2記載の半導体レーザ。
- 上記量子ドットが、InGaAs、InGaN、或いは、InGaPの内のいずれかから構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
- Inを含むウェッティング層を形成する工程と、前記ウェッティング層の膜厚を厚くしていき、前記ウェッティング層よりIn組成比の大きな島状の量子ドットを形成する工程と、前記ウェッティング層よりバンドギャップが小さく且つ前記量子ドットよりバンドギャップが大きく、前記量子ドットを覆う低バンドギャップ層を形成する工程とによって活性層を形成し、前記量子ドット内における量子準位は、基底準位のみであることを特徴とする半導体レーザの製造方法。
- 上記量子ドットが、InGaAs、InGaN、或いは、InGaPの内のいずれかから構成されることを特徴とする請求項5記載の半導体レーザの製造方法。
- 上記ウェッティング層を形成する工程乃至低バンドギャップ層を形成する工程を複数回実行することを特徴とする請求項5または6に記載の半導体レーザの製造方法。
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