JP2001085665A - 量子ドットを用いた半導体素子 - Google Patents

量子ドットを用いた半導体素子

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JP2001085665A
JP2001085665A JP25671299A JP25671299A JP2001085665A JP 2001085665 A JP2001085665 A JP 2001085665A JP 25671299 A JP25671299 A JP 25671299A JP 25671299 A JP25671299 A JP 25671299A JP 2001085665 A JP2001085665 A JP 2001085665A
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semiconductor
quantum dots
layer
gaas
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Mitsuru Sugawara
充 菅原
Taketeru Mukai
剛輝 向井
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Fujitsu Ltd
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Fujitsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、温度変化に対して発光周波数の温度
変化を小さく抑えるとともに、高温においても高い発光
効率を有する高品質の量子ドットを用いた半導体素子を
提供することを目的とする。 【構成】本発明では、第1の格子定数を有する半導体基
板表面に、第2の格子定数を有する半導体からなる量子
ドットを形成し、次いで前記量子ドットの表面に第3の
格子定数を有する半導体緩衝層を形成し、次いで前記半
導体緩衝層の表面に第4の格子定数を有する半導体歪緩
和層を形成した構造とし、各格子定数の関係を、前記第
1の格子定数と前記第2の格子定数が異なる値であり、
かつ前記第3の格子定数が前記第1の格子定数と同じか、
又は前記第4の格子定数の中間の値であり、更に前記第
4の格子定数が前記第1の格子定数と前記第2の格子定
数の中間の値であるように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、量子ドットを用い
た半導体素子に関する。
【0002】近年では、半導体製造プロセスの進歩に伴
い、ナノスケールの成長技術及び微細加工技術が利用さ
れており、この成長技術及び微細加工技術を用いること
により、量子力学的効果が顕著に現れるサイズまでに微
細な構造をもつ半導体素子を形成することができる。現
在、この量子力学的効果を利用した半導体素子として、
例えばHBT(Hetero−bipolarTran
sistor)や量子井戸レーザ等が実用化されてい
る。
【0003】そして、これらと並んで、量子力学的効果
を利用する究極の材料として量子ドットを用いた半導体
素子が大いに注目されている。例えば、半導体レーザに
おいて、発振しきい値やそのしきい値の温度依存性につ
いては前記量子井戸レーザでは特性改善の限界が指摘さ
れており、この問題を解決する方法のひとつとして、半
導体レーザの活性領域に量子ドットを用いることが提案
されている。
【0004】量子ドット構造とは、前記成長技術及び微
細加工技術を用いることにより、キャリアに3次元的な
量子閉じ込めを与えるほど微細なポテンシャルの箱を形
成したものである。これにより量子ドット内のキャリア
のエネルギー準位が離散的になるので、活性領域に量子
ドットを用いた半導体レーザでは、発光を引き起こす電
子と正孔の再結合に寄与するエネルギー準位を限定する
ことができ、量子井戸レーザなどに比べて極限まで周波
数のそろった光を発光させることができるという大きな
メリットがある。
【0005】この他にも、ホールバーニング効果を応用
した量子ドットメモリが提案されるなど、量子ドットを
次世代の新しい半導体素子に応用するための研究開発が
盛んに行われている。
【0006】
【従来の技術】これまで、量子ドット構造を形成するた
めの技術としては、微細加工技術開発の延長線上に位置
する、人為的な加工技術をより高度化したものが試みら
れたきた。すなわち、電子線リソグラフフィによる方
法、ピラミッド型結晶の頂点を量子ドット構造とする方
法、エッチングされた四面体穴の底に量子ドット構造を
形成する方法、微傾斜基板上におけるステップ端に量子
ドット構造を形成する方法及びSTM技術を応用した原
子マニピュレーションの方法などが行われてきた。
【0007】しかしながら、これらの方法はいずれも人
為的に加工するという特徴をもつため、形成時に加工し
た面において必然的に量子ドットに結晶欠陥が生じてし
まうという欠点があった。
【0008】これに対し、近年現れた新しい技術とし
て、量子ドットを自己形成させる方法がある。この方法
は、ある特定の条件下で半導体基板上に基板とは格子不
整合の半導体を気相エピタキシャル成長させる方法であ
り、その結果、成長中にある膜厚を超えると、2次元膜
ではなく、3次元的な微細構造が基板上に島状分布をす
るようになり、量子ドット構造が自己形成される。
【0009】この方法では、極めて均一性の高い高個数
密度の量子ドットを容易に形成することができ、しかも
人為的な加工を一切行わないので形成の際に結晶欠陥を
生じることがなく、高品質の量子ドットを形成すること
ができる。現在、この量子ドットの自己形成法を用い
て、例えば量子ドットを用いた半導体レーザを形成した
例が実際に報告されるようになっている。
【0010】以上のように量子ドットの形成技術は目覚
しい進歩を遂げたが、この量子ドットを実際のデバイ
ス、特に半導体レーザに用いて実用化する際には更に、
いくつかの問題点がある。そのひとつに、以下に述べる
ように発光周波数の温度依存性が挙げられる。
【0011】図5に従来の量子ドットを用いた半導体素
子の第1の構造を示す。図中、21はGaAs基板、2
2は自己形成InAs量子ドット、23はGaAs被覆
層、25はInAsウェッティング層を表す。従来の量
子ドットを用いた半導体素子の第1の構造の場合には、
半導体基板21としてGaAs結晶基板を用い、その表
面上にIn及びAsの原子を、GaAs基板に対する格
子不整合の組成で供給する。
【0012】これにより、成長初期では2次元的な薄膜
が形成されるが、膜弾性限界を超えた後は3次元の島状
成長が起こり、InAsからなる量子ドット22が自己
形成される。また、このとき、それぞれのInAsドッ
ト22の間の領域のGaAs基板21表面には、InA
sドット22の高さよりも薄い膜厚を有する、InAs
からなるウェッティング層25が形成される。そして、
このInAs量子ドット22の表面上にGaAs膜を形
成し、InAs量子ドットをGaAs被覆層23で埋め
込んでいる。
【0013】図5に示した従来の第1の構造の場合、I
nAsドット22の格子定数はGaAs基板21の格子
定数よりも非常に大きく、量子ドット22とその被覆層
23の間で格子定数が大きく異なっているため、InA
sドット22の内部には大きな格子歪が生じている。一
方、InAsドット22の線熱膨張係数はGaAs基板
21の線熱膨張係数よりも小さいので、温度が上昇した
場合、InAsドット22内の格子歪は大きく緩和され
る方向に向かう。
【0014】従って、温度変化に伴いInAsドット2
2内の格子歪の量は大きく変化し、これに対応してIn
Asドット内のエネルギーギャップも温度変化に伴い大
きく変化するので、発光周波数が温度変化に伴い大きく
変化していくことになる。
【0015】これに対し、本願出願人は本願よりも以前
に、特願平10−371061号の特許出願(以下特許
出願1と称する。)において、以下に述べるように前記
問題点を解決する発明を行っている。
【0016】図6に前記特許出願1における、従来の量
子ドットを用いた半導体素子の第2の構造を示す。図
中、図5で示したものと同一のものは同一の記号で示し
てあり、24はInGaAs歪緩和層を表す。
【0017】図6に示した従来の第2の構造の場合、図
5に示した第1の構造に比べてInAsドット22とG
aAs被覆層23の間に、InAsとGaAsの中間の
格子定数を有するInGaAs歪緩和層24が形成され
ている。このため、InAsドット22に加えられる格
子歪は図5に示した第1の構造の場合に比べて大きく緩
和されるので、図6に示した第2の構造における格子歪
の絶対量は図5に示した第1の構造の場合よりもかなり
小さくなっている。
【0018】従って、温度変化に対する格子歪の変化量
も、図6に示した第2の構造の場合には図5に示した第1
の構造に比べて小さくなるので、InAsドット22内
のエネルギーギャップの温度変化を小さく抑えることが
でき、発光周波数の温度変化も小さく抑えることができ
る。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
許出願1における、図6に示した量子ドットを用いた半
導体素子の第2の構造では、半導体レーザの発光強度が
小さく、実用上充分とはいえないという問題点がある。
加えて、通常、高温(例えば、200K以上)では発光
強度が極めて小さくなり、半導体レーザが発光しなくな
るという問題点もある。このような状態では、室温以上
で動作させる現実の半導体レーザ素子としては適用不可
能である。
【0020】本発明は前記問題点を鑑みてなされたもの
で、温度変化に対して量子ドット内部のエネルギーバン
ドギャップの変化を小さく抑え、発光周波数の温度変化
を小さく抑えるとともに、高温においても高い発光効率
を有する高品質の量子ドットを用いた半導体素子を提供
することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理説明
図であり、本発明の量子ドットを用いた半導体素子を示
す。図中、1は半導体基板、2は量子ドット、3は半導
体緩衝層、4は半導体歪緩和層、5は半導体被覆層、6
は半導体ウェッティング層を表す。
【0022】前述の問題点は、前記量子ドット22表面
に形成された前記InGaAs歪緩和層24が前記Ga
As基板21とは格子定数が異なっていることに起因し
て、InGaAs歪緩和層24の中の、各量子ドット2
2の間のInAsウェッティング層25表面に形成され
た、InGaAs歪緩和層24とGaAs基板21が近
接している領域において、結晶欠陥が生じやすいためで
あると推測される。そして、InGaAs歪緩和層24
にこのような結晶欠陥が生じている場合、この結晶欠陥
にキャリアがトラップされてしまい、発光に寄与するキ
ャリアの数が減少してしまうため、発光強度が小さくな
ってしまうものと推測される。
【0023】更に、高温になるに従ってキャリアの熱運
動が活発になり、キャリアは各量子ドットの間を激しく
動き回るようになることに起因して、高温になるほどこ
の結晶欠陥にキャリアがトラップされる確率は高くな
る。このため、高温になるに従って発光に寄与するキャ
リア数が減少するため発光効率は徐々に悪くなってい
き、ついにはある温度(図6に示した第2の構造では約
200K)において発光しなくなってしまうものと推測
される。
【0024】そこで、図1に示すように、本発明の量子
ドットを用いた半導体素子では、図6に示した従来の第
2の構造に加えて、量子ドット2と半導体歪緩和層4の
間に、表面に量子ドット2が形成される半導体基板1の
格子定数に等しいか、又は前記半導体基板1の格子定数
と前記半導体歪緩和層4の格子定数の中間の値をもつ格
子定数を有する半導体緩衝層3を、前記量子ドット2の
高さ以下の膜厚で形成した構造となっている。
【0025】言い換えれば、本発明では、第1の格子定
数を有する半導体基板1表面に、第2の格子定数を有す
る半導体からなる複数の量子ドット2を形成し、次いで
前記複数の量子ドット2の表面に第3の格子定数を有す
る半導体緩衝層3を形成し、次いで前記半導体緩衝層3
の表面に第4の格子定数を有する半導体歪緩和層4を形
成した構造としており、各層の格子定数の関係を、前記
第1の格子定数と前記第2の格子定数が異なるように
し、かつ前記第3の格子定数が前記第1の格子定数と同じ
か、又は前記第1の格子定数と前記第4の格子定数の中
間の値になるようにし、更に前記第4の格子定数が前記
第1の格子定数と前記第2の格子定数の中間の値になる
ようにしている。
【0026】この構造により、半導体基板1と、複数の
量子ドット2表面に形成された半導体緩衝層3の間の格
子定数の差を小さく抑えることができるので、各量子ド
ット2の間の半導体ウェッティング層6表面に形成され
た、前記半導体基板1に近接している半導体領域におい
て、結晶欠陥が発生するのを抑制することができる。
【0027】このため、本発明の量子ドットを用いた半
導体素子では、高温においても結晶欠陥にトラップされ
ることにより発光に寄与するキャリアの数が減少するこ
とを抑制することができるので、高温においても半導体
レーザを高い発光効率で発光させることができるという
特有の効果を奏することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】図2は本発明の第1の実施の形態
である量子ドットを用いた半導体素子の形成方法を説明
するための工程図である。図中、図1で示したものと同
一のものは同一の記号で示してあり、11はGaAsか
らなるバッファ層を表す。
【0029】図2を用いて本発明の量子ドットを用いた
半導体素子の形成方法について説明する。まず、半導体
基板1としてはGaAs単結晶を用いる。結晶成長の原
料としては、3族元素の原料としてInにはトリメチル
インジウム(TMI)又はトリメチルインジウムジメチ
ルエチルアミンアダクト(TMIDMEA)を、Gaに
はトリエチルガリウム(TEG)又はトリメチルガリウ
ム(TMG)を用い、5族元素の原料としてAsにはア
ルシン(AsH3)を用いる。
【0030】そして、一連の結晶成長中の基板温度は5
25℃に設定し、有機金属気相エピタキシャル(MOV
PE)成長法により、図2に示したGaAs層3、5、
11、InGaAs層4及びInAs層2、6の各半導
体層を成長させていく。InAsからなる量子ドット2
は、上記「従来の技術」の項で述べた量子ドットの自己
形成法により形成する。
【0031】尚、図2に示した各半導体層(GaAs層
3、5、11、InGaAs層4、及びInAs層2、
6)に関する成長方法、成長条件などについての詳細
は、KohkiMukaietal.、SEMICON
DUCTORSANDSEMIMETALSVol.6
0、Self−AssembledInGaAs/Ga
AsQuantaumDots、Chapter3(A
CADEMICPRESS、1999)(以下文献1と
称する。)に記載されている。
【0032】本発明の第1の実施の形態においても、前
記文献1に記載された成長方法、成長条件に基づいて、
GaAs層3、5、11、InGaAs層4、及びIn
As層2、6の成長を行っている。
【0033】以下に、図2に示した工程に沿って本発明
の量子ドットを用いた半導体素子が形成される様子につ
いて説明を続ける。
【0034】まず、GaAs基板1表面にTEGとAs
3を供給することによって、GaAs基板1表面にG
aAsのバッファ層11を0.5μmの厚さに成長させ
る。(図2(a)を参照。)次に、前記GaAsバッフ
ァ層11表面に0.5ML(monolayer)相当
のTMIDMEAと0.1ML相当のTMGとAsH3
とを交互に14サイクル繰り返して供給する。これによ
り、前記GaAsバッファ層11の表面に、高さ10n
m程度の、InAsからなる複数の3次元的な微細構造
が島状に分布し、極めて均一性の高く、高品質のInA
sからなる複数の量子ドット2が高個数密度に形成され
る。
【0035】このとき、それぞれのInAsドット2の
間の領域のGaAsバッファ層11表面には、InAs
ドット2の高さよりも薄い膜厚を有する、InAsから
なるウェッティング層6が形成される。すなわち、前記
GaAsバッファ層11は前記複数のInAsドット2
と前記InAsウェッティング層6により全面が覆われ
た状態になる。(図2(b)を参照。)次に、前記複数
のInAsドット2及び前記InAsウェッティング層
6の表面にTEG、AsH3を供給することによって、
前記InAsドット2及び前記InAsウェッティング
層6の表面にGaAsからなる半導体緩衝層3を3nm
程度成長させる。(図2(c)を参照。)このとき、複
数のInAsドット2は前記GaAs緩衝層3によって
その上部及び側部から完全に覆われた状態になる。
【0036】その後、TMI、TEG及びAsH3を前
記GaAs緩衝層3の表面に供給することによって、前
記GaAs緩衝層3の表面にInxGa1-xAs(組成x
=0.3)からなる半導体歪緩和層4を10nm程度成
長させる。
【0037】更に、前記InxGa1-xAs歪緩和層4の
表面にTEG及びAsH3を供給することによって、前
記InxGa1-xAs歪緩和層4の表面にGaAsからな
る半導体被覆層5を30nm程度成長させる。(図2
(d)を参照。)以上の工程により、本発明の量子ドッ
トを用いた半導体素子が形成される。
【0038】図2(d)に示すように、本発明の第1の
実施の形態では、GaAs基板1及びGaAsバッファ
層11上に形成した複数のInAsドット2の表面を、
GaAs基板1と格子定数の等しいGaAs緩衝層3に
より覆った構造としている。この構造では、GaAs基
板1とGaAs緩衝層3の間の格子定数の差はないの
で、各InAsドット2の間のInAsウェッティング
層6表面に形成された、GaAs基板1に近接している
半導体領域において、結晶欠陥が発生するのを抑制する
ことができる。
【0039】次に、本発明の量子ドットを用いた半導体
素子として、量子ドットを用いた半導体レーザを試作
し、その特性評価を、図6に示した従来の量子ドットを
用いた半導体素子の場合と比較して行った。
【0040】図3は測定温度170Kにおける量子ドッ
トを用いた半導体レーザの発光スペクトルであり、本発
明の図2の構造の場合と従来の図6の構造の場合につい
てそれぞれ示す。図3において、横軸は波長(単位:
Å)を、縦軸は規格化された発光強度(単位:arbi
traryunit)を表す。
【0041】ここで、従来の図6の構造において、In
xGa1-xAs歪緩和層の組成はx=0.3であり、その
膜厚は10nmである。一方、本発明の図2の構造で
は、InxGa1-xAs歪緩和層の組成はx=0.3で、
その膜厚は7nmであり、GaAs緩衝層の膜厚は3n
mである。本発明の図2の構造では、InxGa1-xAs
歪緩和層とGaAs緩衝層の膜厚の合計を10nmとし
ており、従来の図6の構造のInxGa1-xAs歪緩和層
の膜厚に一致させている。
【0042】図3をみると、本発明の図2の構造の場合
は、波長λ=1.24×104Å付近において発光強度
の鋭いピークが見られ、従来の図6の構造の場合は、波
長λ=1.36×104Å付近において発光強度のピー
クが観測される。そして図3から明らかなように、これ
らのピークのおける発光強度の最大値は、GaAs緩衝
層3を有する本発明の図2の構造の場合は、GaAs緩
衝層を有しない従来の図6の構造の場合に比べて極めて
大きくなっている。
【0043】すなわち、本発明の図2の構造のようにG
aAs緩衝層3を挿入することにより、半導体レーザの
発光強度が従来に比べて著しく大きくなったことがわか
る。この実験結果により、本発明によって、従来の構造
における、量子ドットを用いた半導体レーザの発光強度
が小さいという問題点が改善されることが確かめられ
た。
【0044】尚、図3では、図2に示した本発明の構造
の場合、発光強度のピークの位置が従来の図6の構造の
場合に比べて低波長側にシフトしている。これは、In
Asドットの表面を覆う物質が、従来の図6の構造の場
合はInGaAs歪緩和層であったのが、図2に示すよ
うに本発明の構造の場合ではGaAs緩衝層3となった
ことに起因して、InAsドットが従来の図6の構造に
比べて周囲の物質(GaAs緩衝層3)からより強く圧
縮されるようになったため、量子ドット内の格子定数が
小さくなり、その結果エネルギーバンドギャップが大き
くなったことによると考えられる。
【0045】図4は測定温度300Kまでの発光エネル
ギー、すなわち発光周波数の温度依存性を示す図であ
り、本発明の図2の構造の場合と、従来の図5及び図6
の構造の場合についてそれぞれ示す。図4において、横
軸は測定温度(単位:K)を、縦軸は半導体レーザの発
光エネルギー(単位:eV)を表し、黒丸(●)は本発
明の図2の構造のデータを、黒四角(■)は従来の図6
の構造のデータを、白四角(□)は従来の図5の構造の
データを表す。
【0046】ここで、図3のときと同様に、従来の図6
の構造においてInxGa1-xAs歪緩和層の組成はX=
0.3であり、その膜厚は10nmである。一方、本発
明の図2の構造では、InxGa1-xAs歪緩和層の組成
はX=0.3であり、その膜厚は7nmであり、GaA
s緩衝層の膜厚は3nmである。すなわち、本発明の図
2の構造では、InxGa1-xAs歪緩和層とGaAs緩
衝層の膜厚の合計を10nmとしており、従来の図6の
構造のInxGa1-xAs歪緩和層の膜厚に一致させてい
る。
【0047】そして、本発明の図2及び従来の図6の構
造においてはGaAs被覆層の膜厚はいずれも、30n
mである。また、従来の図5の構造において、GaAs
被覆層の膜厚を40nmとしており、本発明の図2の構
造における、InxGa1-xAs歪緩和層、GaAs緩衝
層及びGaAs被覆層の各膜厚の合計に一致されてい
る。
【0048】図4において、5K付近から200K付近
にわたる温度範囲における発光エネルギーの温度変化量
で比較すると、本発明の図2の構造の場合の温度変化は
およそ25meV程度であるのに対し、図5に示した従
来の第1の構造の場合はおよそ65meVであり、本発
明の図2の構造の場合の温度変化の度合いは図5に示し
た従来の第1の構造の場合に比べてかなり小さくなって
いる。また、図6に示した従来の第2の構造の場合の温
度変化はおよそ25meVであり、本発明の図2の構造
の場合の温度変化の度合いは、図6に示した従来の第2
の構造の場合と比較してもほぼ同程度の小ささとなって
いる。
【0049】すなわち、本発明の図2の構造のようにG
aAs緩衝層3を挿入した場合でも、図6に示した従来
の第2の構造における、発光エネルギーの温度変化の度
合いを小さい範囲に抑える効果は充分に現れていること
がわかる。この実験結果により、本発明は、図6に示し
た前記特許出願1の発明が奏する効果を失うことなく充
分に備えていることが確認できた。
【0050】また、図4をみると、図6に示した従来の
第2の構造の場合には実験データは200Kの温度まで
しか測定されていない。これは上記述べたように、20
0Kを超えると半導体レーザが発光しなくなるため測定
できなかったことによる。一方、図2に示した本発明の
構造の場合は200Kを超える温度領域にも実験データ
が存在しており、これは本発明の構造の場合の半導体レ
ーザは200K以上の温度領域でも発光していることを
示している。
【0051】すなわち、本発明の構造を採用することに
より、従来の構造における、200K以上の高温におい
て量子ドットを用いた半導体レーザが発光しないという
問題点を改善することができることが確認できた。
【0052】また、上述の本発明の第1の実施の形態に
おいては、半導体基板1にはGaAs基板を用い、その
表面にInAs量子ドット2を自己形成法により形成
し、その上にGaAs緩衝層3、InxGa1-xAs(x
=0.3)歪緩和層4及びGaAs被覆層5を順次形成
した場合について説明したが、本発明はこれらの実施の
形態に限定されるものではない。
【0053】すなわち、InxGa1-xAs歪緩和層4の
組成はx=0.3に限定されるものではなく、他の組成
とすることができる。また、上記述べた半導体材料の組
み合わせのほかに、「課題を解決するための手段」にお
いて述べた格子定数の関係を有する半導体材料の組み合
わせならば、他の3−5族半導体及び2−6族半導体を
用いてもよいことはもちろんである。
【0054】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、量
子ドットを用いた半導体素子に関し、半導体基板表面に
形成された複数の量子ドットの表面を覆うように、前記
半導体基板の格子定数と等しいか又は近い格子定数を有
する半導体緩衝層を形成しているので、前記量子ドット
の間の半導体ウェッティング層表面に形成された、前記
半導体基板に近接している半導体領域において、結晶欠
陥の発生を抑制することができる。従って、本発明は、
量子ドットを用いた半導体レーザの発光強度を増大させ
ることができるとともに、高温においても半導体レーザ
を発光させることが可能となり、係る量子ドットを用い
た半導体素子の性能向上に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理説明図
【図2】 本発明の第1の実施の形態の形成方法を説明
するための工程図
【図3】 量子ドットを用いた半導体レーザの発光スペ
クトルを示す図
【図4】 発光エネルギーの温度依存性を示す図
【図5】 従来の量子ドットを用いた半導体素子の第1
の構造を示す図
【図6】 従来の量子ドットを用いた半導体素子の第2
の構造を示す図
【符号の説明】
1 半導体基板、 2 量子ドット、 3 半導体緩衝層、 4 半導体歪緩和層、 5 半導体被覆層、 6 半導体ウェッティング層 11 GaAsからなるバッファ層、 21 GaAs基板、 22 自己形成InAs量子ドット、 23 GaAs被覆層、 24 InGaAs歪緩和層

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1の格子定数を有する半導体基板と、 前記半導体基板表面に形成された、前記第1の格子定数
    とは異なる第2の格子定数を有する半導体からなる複数
    の量子ドットと、 前記複数の量子ドットの表面を覆うように形成された、
    第3の格子定数を有する半導体緩衝層と、 前記半導体緩衝層の表面に形成された、第4の格子定数
    を有する半導体歪緩和層とを有する量子ドットを用いた
    半導体素子であって、 前記第3の格子定数が前記第1の格子定数と同じか、又は
    前記第1の格子定数と前記第4の格子定数の中間の値で
    あり、 前記第4の格子定数が前記第1の格子定数と前記第2の
    格子定数の中間の値であることを特徴とする量子ドット
    を用いた半導体素子。
  2. 【請求項2】前記半導体基板がGaAs基板であり、 前記量子ドットがInxGa1-xAs(0<x≦1)から
    なる量子ドットであり、 前記半導体歪緩和層がInyGa1-yAs(0<y<1、
    x>y)層であり、 前記半導体緩衝層がInzGa1-zAs(0≦z<1、y
    >z)層であることを特徴とする請求項1記載の量子ド
    ットを用いた半導体素子。
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