ところで、従来の端子圧着装置では、電線の端部に端子を圧着する際に、まず、切断機構において電線の先端部の被覆材を除去した上で、端子圧着機構で端子を圧着しており、それら電線に加工を行う、切断機構や端子圧着機構は、夫々異なる場所に配置されている。そのため、電線の端部に各種の加工を行うたびに電線の端部の向きをそれらの機構のある向きに変えなければならず、電線に無駄な動きが生じ、電線加工の生産効率を高めることができなかった。そこで、電線の向きを変えることなく、電線に種々の加工を行うことで生産効率を飛躍的に高めた端子圧着装置の出現が望まれていた。
しかしながら、従来のアプリケータでは、端子を圧着する押圧部材とアンビルとが一体的に備えられており、アプリケータの電線を挿入する側と反対側には、押圧部材やアンビルなどを支持するための支持部材が配置されており、端子を圧着した電線をそのまま挿入側の反対側に送ることができなかった。そこで、アプリケータの押圧部材とアンビルとを夫々分離させることで、支持部材を廃止して、電線を反対側へ送ることができるようにすることが考えられるが、従来の端子圧着機構では、基台とともにアンビルが装置本体に固定されており、電線の端部に端子を圧着した後に、電線をさらに前方へ送り出すと、アンビルと電線が接触してしまい、電線を真直ぐ送ることができなかったり、電線に傷などが付いたりして、不具合の原因となる恐れがある。
そこで、押圧部材とアンビルとをともに端子の圧着位置から進退可能とすることが考えられるが、この場合、端子の圧着の際に係る大きな荷重に耐え得る進退機構を備えた端子圧着機構の開発が望まれていた。また、押圧部材とアンビルとをともに進退可能とした場合、電線の端部に端子を圧着する際に、電線の軸位置に対して、端子を圧着する位置が大きく外れると、電線に曲がり癖が付く恐れがある。
また、従来の端子圧着機構では、クランクやカムなどを一方向に連続して回転させることで、スライド部材を上下に移動させ、下死点に達したときに端子の圧潰が最適となるようにしており、クランクやカムなどの摺動部材、押圧部材やアンビルなどに、耐摩耗性に優れた砲金などが用いられているものの、使用に伴って摺動部材などが摩耗し、やがて最適な状態から逸脱してしまい、不具合が発生する恐れがあった。そのため、定期的に、摩耗した摺動部材などを交換したり、或いは、シムなどを挿入したりして位置調整などを行う必要があり、それらの作業は大変であり、工数やコストのかかるものとなっていた。
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、アプリケータの押圧部材とアンビルとを夫々独立して進退させるとともに、電線の端部に端子を圧着する際の荷重に耐え、且つ、端子を圧着する際の押圧部材とアンビルとの位置関係を最適な状態に保つことの可能な端子圧着機構を備えた端子圧着装置を提供することを課題とするものである。
本発明に係る端子圧着装置は、「押圧部材を備えた上側ユニットと、押圧部材の下方に配置されるアンビルを備えた下側ユニットとからなり、押圧部材とアンビルとの間に位置した端子を、押圧部材とアンビルとで圧潰して電線の端部に端子を圧着するアプリケータと、該アプリケータの上側ユニットと下側ユニットとを互いに接近および離反するように進退させる端子圧着機構とを少なくとも具備する端子圧着装置において、前記端子圧着機構は、上下方向に延び端子を圧着する電線が配置される前進側の端部に前記アプリケータの上側ユニットまたは下側ユニットの何れか一方のユニットが脱着可能に取付けられ、上下方向に摺動する第一摺動部材と、該第一摺動部材を上下方向に進退可能に保持する第一保持部材と、該第一保持部材の後退側で且つ前記第一摺動部材の軸心とは偏芯した位置に配置され、前記第一摺動部材を進退させる進退駆動手段と、該進退駆動手段により前進した前記第一摺動部材の後退側に形成される空間内に挿入されるロック部材、及び該ロック部材を前記空間内に挿入および排除するロック部材駆動手段を有し、該ロック部材駆動手段により、前記ロック部材を、前記進退駆動手段により前進した前記第一摺動部材の後退側に形成される前記空間内に挿入することで、前記一方のユニットの後退を阻止するロック手段とを備えた第一進退機構と、前記アプリケータの上側ユニットまたは下側ユニットの何れか他方のユニットを、端子を圧着する電線が配置される方向に進退させる第二進退機構とを備え、前記第一進退機構と前記第二進退機構とで、前記アプリケータの両ユニットを夫々前進させることで、電線の端部に端子を圧着する」構成とするものである。
本発明の端子圧着装置によると、アプリケータが押圧部材を備えた上側ユニットと、アンビルを備えた下側ユニットとで構成されており、このアプリケータが取付けられる端子圧着機構では、第一進退機構により一方のユニットを端子を圧着する電線が配置される方向に前進させ、その後にロック手段によりそのユニットの後退が阻止することができる。一方、第二進退機構により他方のユニットを端子を圧着する電線が配置される方向に前進することができ、第一,第二進退機構により、夫々に取付けられたユニットを互いに近接する方向に前進させ、それらユニットの間に配置された端子が圧潰される。このとき、第一進退機構ではロック手段によりユニットの後退が阻止されているので、第二進退機構から第一進退機構に向けて所定の荷重を作用させても、第一進退機構に取付けられたユニットが後退してしまうことがなく、所定の荷重を確実に端子に作用させることが可能となる。
また、本発明の端子圧着装置によると、端子圧着機構により、押圧部材を備えた上側ユニットとアンビルを備えた下側ユニットとを夫々進退させることができるので、電線の端部に端子を圧着した後に、夫々のユニットを後退させることで、電線をさらにその前方に送り出しても、押圧部材やアンビルなどに接触するのを回避することができ、電線を真直ぐ送ることが可能となる。つまり、電線の向きを変える必要がなくなるので、電線を直線状に送りながら電線に種々の加工を行うことのできる端子圧着装置とすることができ、加工の際に電線の無駄な動きを低減させることができ、生産効率を高めることができる。
また、上側ユニットの押圧部材と下側ユニットのアンビルとをともに、端子を圧着する電線が位置する方向に前進させることで、電線に端子を圧着するようにしており、電線の端部に端子を圧着する際に、電線の軸位置に対して、端子を圧着する位置の差を少なくすることができるので、電線に曲がり癖が付くのを抑制することができる。
なお、一方のユニットを後退させるときには、ロック部材駆動手段により、第一摺動部材の後退側の空間に挿入されたロック部材をその空間から排除し、そして、進退駆動手段により第一摺動部材を後退させることで、一方のユニットを後退させることができる。また、第一,第二進退機構での前進のタイミングは、第一進退機構側を先に前進させて、ロック手段により後退を阻止した状態で、第二進退機構側を前進させて、端子を圧着するのが望ましく、これにより、ロック手段により第二進退機構からの荷重を受けさせることができ、第一進退機構ではユニットを進退させ得るだけの駆動力ですむので、装置全体を小型化することができる。
本発明の端子圧着装置によると、前進側の端部にアプリケータの一方のユニットを取付けた第一摺動部材を進退させる進退駆動手段を、第一摺動部材の軸心とは偏芯した位置に備えて、第一摺動部材が前進することでその後退側に形成される空間内にロック手段のロック部材を挿入することで、第一摺動部材の後退、すなわち、第一摺動部材の前進側に取付けられた一方のユニットが後退するのを阻止することが可能となる。また、進退駆動手段を第一摺動部材の軸心と偏芯した位置に備えており、第一摺動部材の後退側端部をロック部材に直接当接させることができるので、第一摺動部材に後退方向に大きな荷重が作用しても、確実に第一摺動部材の後退を阻止することができる。
さらに、本発明に係る端子圧着装置は、「前記第二進退機構は、上下方向に延び端子を圧着する電線が配置される前進側の端部に前記他方のユニットが脱着可能に取付けられる第二摺動部材と、該第二摺動部材を上下方向に進退可能に保持する第二保持部材と、該第二保持部材の後退側に配置され、前記第二摺動部材の後退側の端部に固定されたローラ保持部材と、該ローラ保持部材に回転可能かつ後退向きに保持されたローラと、該ローラと接触するカム面を有した回転カムと、該回転カムを回転駆動する回転駆動手段と、前記ローラよりも前進側に備えられた部材の進退方向の位置を検知する位置検知手段とを備え、前記回転駆動手段により前記回転カムを回転させることで、前記他方のユニットを進退させ、前記位置検知手段が予め設定された前進位置に前記ローラよりも前進側に備えられた部材が到達したのを検知すると、前記回転駆動手段の回転を停止させて、前記他方のユニットの前進を停止させる」構成とすることもできる。
ここで、「ローラよりも前進側に備えられた部材」としては、特に限定するものではないが、ローラ保持部材、第二摺動部材、の他に、第二摺動部材とアプリケータのユニットとを取付けるための被連結部、第二摺動部材に取付けられたアプリケータのユニット、などを例示することができる。
ところで、回転カムのカム面に対してローラを転動させて進退させるものの場合、カム面との摩擦抵抗を低減させることができるので、駆動に係る効率を高めることができる。しかしながら、ローラを回転支持するために、例えば、複数のベアリング球が使用されており、これらベアリング球は、所定の寸法公差でもって形成されているので、それらベアリング球の直径にはバラツキがあるのが実情である。これにより、ローラの回転に伴ってベアリング球の位置が変化するので、ローラの軸心と軸受けの軸心とが常に同一にはならず、変化したものとなっている。そのため、回転カムの回転角度が同じであっても、カム面を転動するローラを回転支持する側(支持部材)の位置はその都度変化することとなり、その位置の再現性を得るのが困難であった。そこで、砲金などからなる摺動部材をカム面に接触させることで、回転カムの回転角度に対する再現性を得ることが考えられるが、この場合、カム面との摩擦抵抗が大きく、長期の使用により、カム面や摺動部材が摩耗することで、結果的に位置の再現性が得られないと言った問題がある。
そこで、本発明の端子圧着装置によると、回転カムを回転駆動手段により回転させることで、アプリケータの他方のユニットを取付けた第二摺動部材を、端子を圧着する電線が位置する方向に進退させることが可能となる。そしてローラよりも前進側に備えられた部材の進退方向の位置を検知する位置検知手段により、その部材の位置を検知し、予め設定された前進位置にその部材が達すると回転駆動手段の回転を停止させて、他方のユニットの前進を停止させるものである。つまり、ローラを回転支持するベアリング球の精度のバラツキに関係なく、ローラよりも前進側に備えられた部材の位置を検知して他方のユニットを所定の位置まで前進するようにしており、ローラを用いても、他方のユニットの前進位置の再現性を得ることができる。また、ローラを用いることができるので、カム面との摩擦抵抗を低減させることができ、進退の駆動に係るロスを低く抑えることができるとともに、耐久性を向上させることができる。
また、本発明の端子圧着装置によると、装置の使用により押圧部材やアンビルが摩耗して、端子を圧着する最適位置が変化しても、第二圧着機構におけるローラよりも前進側に備えられた部材の前進位置の設定を変更するだけで容易に対応することができ、従来に比べて、位置調整などに係る時間を大幅に短縮することができる。
なお、他方のユニットを後退させるときは、回転駆動手段を前進させた方向とは逆方向に回転させることで、他方のユニットを後退させることができる。また、ローラを回転カムの方向に付勢する付勢手段を備えてもよい。これにより、回転カムのカム面とローラとの接触性を向上させ、カム面からローラが離れるのを防止して、回転カムの急激な回転にも追従できるようにすることができる。つまり、進退駆動を早くすることができるので、装置の生産効率を高めることが可能となる。
上記のように本発明によると、アプリケータの押圧部材とアンビルとを夫々独立して進退させるとともに、電線の端部に端子を圧着する際の荷重に耐え、且つ、端子を圧着する際の押圧部材とアンビルとの位置関係を最適な状態に保つことの可能な端子圧着機構を備えた端子圧着装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態である端子圧着装置について、図1から図5に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態である端子圧着装置を示す斜視図であり、図2は端子圧着装置を図1とは反対側から示す斜視図であり、図3は端子圧着装置の端子圧着機構をアプリケータとともに示す正面図であり、図4は端子圧着機構の第一進退機構の動作を示す説明図であり、図5は端子圧着機構の第二進退機構の動作を説明する説明図である。
本実施形態の端子圧着装置1は、図1および図2に示すように、電線癖取装置2と、電線Lの先端側に端子を圧着させるための第一圧着機構3と、電線Lの後端側に端子を圧着させるための第二圧着機構4と、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構5と、電線Lの先端側を第一圧着機構3に送り込む電線送り機構6と、切断後の電線Lを保持し電線Lの後端側を第二圧着機構4に送り込むチャック機構7と、端子を圧着し終えた電線Lを蓄えた後に電線Lを外部へ排出する排出装置8とを備えている。本例の端子圧着装置1は、加工中の電線Lの向きを変えることなく、直線状に電線Lを送りながら加工することのできるものである。なお、図2は電線癖取装置2を省略して示している。また、第一圧着機構3および第二圧着機構4が、本発明の端子圧着機構に相当している。
第一圧着機構3と第二圧着機構4とは基本的な構成が等しいため、以下、第一圧着機構3について説明し、第二圧着機構4についての詳細な説明は省略する。第一圧着機構3は、図1および図3に示すように、端子を圧着するアプリケータ9を取付けるフレーム部材10を備えている。このフレーム部材10の側面には、切欠き11が形成されており、その切欠き11内にアプリケータ9が取付けられている。詳しくは、切欠き11の上方には後述するアプリケータ9の上側ユニット12が、また、切欠き11の下方には、アプリケータ9の下側ユニット13が夫々取付けられている。
この第一圧着機構3は、切欠き11内において、電線Lの端部に端子が圧着されるようになっており、アプリケータ9の上側ユニット12および下側ユニット13を、それらユニットの間に配置される端子に向かって、夫々独立して進退させる第一進退機構14および第二進退機構15とを備えている。ここでは、電線Lが配置される方向、すなわち、端子を圧着する方向に進むのを前進と言い、その逆方向に進むのを後退という。
図3に示すように、第一進退機構14は、上下方向に延び電線Lが配置される前進側の端部がフレーム部材10の切欠き11内部に露出する第一摺動部材16と、フレーム部材10に固定され、第一摺動部材16を上下方向に摺動可能に保持する第一保持部材17と、第一摺動部材16の後退側(図中上側)の端部に固定され、第一摺動部材16に対しその軸直角方向に突出した連結片18と、連結片18の突出端部に接続され、第一保持部材17の後退側に配置されたエアシリンダなどからなる昇降シリンダ19とを備えている。昇降シリンダ19は、連結片18を介して第一摺動部材16を進退させることができるとともに、連結片18により、第一摺動部材16の軸心とは偏芯した位置に配置されている。
この第一進退機構14には、昇降シリンダ19により前進した第一摺動部材16の後退を阻止するロック手段20がさらに備えられている。このロック手段20は、第一摺動部材16を前進させることでその後退側に形成される空間21(図4参照)内に挿入可能な大きさのロック部材22と、ロック部材22を第一摺動部材16の軸直角方向に移動させてロック部材22を空間21内に挿入するエアシリンダなどからなるロックシリンダ23とから構成されている。
この第一進退機構14は、昇降シリンダ19により、第一摺動部材16を前進(図3中下降)させると、第一摺動部材16の後退側に空間21が形成され、その空間21にロックシリンダ23により水平方向からロック部材22を挿入する。これにより、第一摺動部材16の後退側端部がロック部材22に当接するとともに、ロック部材22がその後退側(図中上方)に位置するフレーム部材10の一部と当接し、而して第一摺動部材16の後退を阻止することが可能となる。なお、図4(ウ)に示すようにロック部材22は、ロックシリンダ23側に付勢手段24により付勢されており、ロックシリンダ23の駆動力を解除することで、ロック部材22は、空間21から排除され、ロックが解除される。
また、第一進退機構14には、第一摺動部材16の前進側端部に上側ユニット12を取付けるための被連結部25が固定されており、この被連結部25と第一保持部材17との間には互いに接近する方向に付勢する付勢手段26が設けられており、昇降シリンダ19の駆動力とロック手段20のロックとが解除されると、第一摺動部材16は、図3および図4(ア)に示す後退した状態となる。本例では、昇降シリンダ19および付勢手段26が本発明の進退駆動手段に相当し、ロックシリンダ23および付勢手段24が本発明のロック部材駆動手段に相当している。
一方、第二進退機構15は、上下方向に延び、電線Lが配置される前進側(図中上側)の端部がフレーム部材10の切欠き11内部に露出する第二摺動部材27と、フレーム部材10に固定され、第二摺動部材27を上下方向に摺動可能に保持する第二保持部材28と、第二保持部材28の後退側(下側)に配置され第二摺動部材27の後退側端部に固定されたローラ保持部材29と、ローラ保持部材29に回転可能かつ後退向きに保持されたローラ30と、ローラ保持部材29の下方に配置されローラ30と接触するカム面31を有した回転カム32と、回転カム31を回転駆動するステッピングモータなどからなる回転駆動手段33と、第二摺動部材27の前進側端部に固定されアプリケータ9の下側ユニット13を取付けるための被連結部34と、回転カム32のカム面31からローラ30が離れないようにローラ30を回転カム32側に付勢する付勢手段35とが備えられている。この回転カム32は、その回転中心とカム面31までの半径距離が、図中反時計回りの方向に進むに従って大きくなるように形成されており、およそ一周する手前辺りでその半径差を繋ぐような形状とされている。
また、この第二進退機構15には、第二摺動部材27の所定位置に、その軸直角方向に突出する突起36と、第二摺動部材27の前進および後退移動に伴って移動する突起36の位置を検知する位置検知手段37とがさらに備えられている。
この第二進退機構15は、回転駆動手段33により、回転カム32を回転させることで、第二摺動部材27を上下方向に進退させることができ、特に前進の際に、第二摺動手段27の突起36の位置を位置検知手段37により検知しながら前進させ、予め設定された前進位置に突起36が到達すると、回転駆動手段33の回転を停止させ、第二摺動部材27の前進を停止させる。つまり、第二摺動部材27の前進側端部に取付けられた下側ユニット13の前進を停止させる。これにより、ローラ30を回転支持するベアリング球などの寸法誤差などによるガタツキを微調整して、下側ユニット13の前進位置を常に一定に維持することが可能となる。なお、第二摺動部材27すなわち下側ユニット13の後退は、回転駆動手段33の回転を前進側とは反対方向に回転させることで、後退させることができる。
次に、アプリケータ9は、上側ユニット12と、下側ユニット13とに互いに分離されており、個々に交換可能な状態で第一圧着機構3に取付けられている。詳しくは、上側ユニット12の上部には連結部70が設けられており、この連結部70と第一進退機構14の被連結部25とを連結することで上側ユニット12が第一進退機構14に取付けられる。一方、下側ユニット13の下部にも連結部71が設けられており、この連結部71と第二進退機構15の被連結部34とを連結することで、下側ユニット13が第二進退機構15に取付けられる。
このアプリケータ9では、上側ユニット12には押圧部材38が、下側ユニット13にはアンビル39が夫々取付けられており、上側ユニット12及び下側ユニット13を互いに接近する方向に前進させることで、押圧部材38とアンビル39との間に位置する端子を圧潰可能としている。なお、下側ユニット13には、端子をアンビル39上に搬送する端子搬送機構40が備えられている。
端子搬送機構40は、板状のキャリアによって一連に繋がれた端子を一つずつアンビル39上に順次供給するものであり、ベース部材41と、ベース部材41に形成されキャリアを案内する溝状のガイド部42と、ガイド部42の開口部分を部分的に塞ぎキャリアの逸脱を防止する逸脱防止機構43と、端子に係止爪44を係止させることでキャリアによって繋がれた端子を搬送させる搬送機構45と、搬送機構45を水平方向に摺動させる搬送シリンダ(図示しない)と、端子をアンビル39上に停止させるための制止機構69とを備えている。
ところで、アプリケータ9の上側ユニット12および下側ユニット13には、それらを特定するための識別情報が書込まれたICチップ(図示しない)が夫々備えられており、端子圧着装置1に備えられた図示しない読書き手段によりICチップの情報を読取ることで、アプリケータ9の上側ユニット12および下側ユニット13に対応した位置設定、電線Lの加工内容、あるいは、端子圧着装置1に取付けられた上側ユニット12や下側ユニット13が正しいものか否か、などを端子圧着装置1において制御することが可能となり、それらの設定などにかかる時間を短縮したり、設定ミスなどを防止することができる。
切断機構5は、第一圧着機構3と第二圧着機構4との間に配置され、電線Lの切断や、電線Lの端部の被覆材を除去するものであり、電線Lの被覆材を除去するために上下方向に配置された一対の切込刃46と、図示は省略するが、電線Lを切断するために上下方向に配置された一対の切断刃とを備えている。それら、切込刃46および切断刃は、夫々独立して開閉することができ、ステッピングモータ等からなる駆動手段47を有した開閉手段48により、開閉駆動するようになっている。
一方、電線送り機構6は、図1に示すように、電線取込みガイド49、電線の長さを測長するエンコーダ50、所定距離離間して配置される一対のローラ51、及びガイドパイプ52等から構成されている。なお、一対のローラ51は、互いに接近および離反するように移動可能とされ、また、ローラ51がローラ駆動手段(図示しない)により回転駆動され、回転方向及び回転数を制御することにより、電線Lを任意の長さ送るとともに、エンコーダ50によるフィードバック制御を可能にしている。また、ガイドパイプ52は、図示しないガイドパイプ駆動手段により、そのパイプの先端をアプリケータ9や切断機構5の近傍に位置させて、端子の圧着、切断や、被覆材の除去の際に電線Lが振れたりするのを防止するものである。
また、チャック機構7は、図2に示すように、第一,第二圧着機構3,4および切断機構5を挟んで、電線送り機構6とは反対側に配置されている。このチャック機構7は、上下方向に対向配置された一対の把持部53と、一対の把持部53を開閉するチャック開閉機構54と、把持部53とともにチャック開閉機構54を電線の送り方向に移動するチャック移動手段(図示しない)と、電線Lを載置し電線Lの送りを補助するコンベア55とから構成されている。このチャック機構7の把持部53は、V字形状をしており、特に、下側の把持部53により、電線Lを受けるとともに、把持部53を閉動作することで、電線Lが把持部53の中心に移動し、電線Lの軸心を保つことができる。このチャック機構7は、切断機構5で切断された電線Lを把持するとともに、電線Lの後端部の加工の際に電線Lをその軸方向に移動させるものであり、その際に電線Lがスムーズに移動できるように、電線Lの移動に同調して電線Lを載置したコンベア55が作動するようになっている。
さらに、排出装置8は、チャック機構7の側方に配置され、チャック機構7から電線Lを受け取る受取機構56と、受取機構56を移動させて電線Lをチャック機構7から移動させる移動機構57と、移動機構57により移動した電線Lを受け取って収容する収容部58を備えた回転収容装置59とから構成されている。この排出装置8は、加工された電線Lを所定量収容した後に外部に排出するものである。なお、符号60は、受取機構56を移動させる移動機構57の駆動手段であり、符号61は、回転収容装置59における収容部58を回転させる回転駆動手段である。
また、端子圧着装置1には、アプリケータ9に望むように端子ガイド機構62が配置されている。この端子ガイド機構62は、端子をガイドするガイドローラ63と、搬送される端子の振れを抑制する一対の振れ止板64と、端子の有無を検知する端子有無センサ(図示しない)と、これらガイドローラ63、振れ止板64など支持するフレーム部材65とから構成されている。この端子ガイド機構62は、端子圧着装置1のテーブル66の下側に収容された図示しない端子リールに巻かれた端子を、アプリケータ9に安定して案内するとともに、端子の有無を検知するものである。
さらに、端子圧着装置1には、図1に示すように、電線送り機構6の前方(電線Lの上流側)に、電線癖取装置2が配置されている。この電線癖取装置2は、所定間隔に配置された複数のローラと、電線Lの有無を検知する電線有無センサ(図示しない)とを備えており、複数のローラ間に電線Lを通すことで、電線Lの曲げ癖を直し、電線Lを真直ぐにするとともに、電線Lの有無を検知することのできるものである。
なお、図1および図2中符号67は、制御手段を備えた操作部であり、この操作部67において、所定の情報を入力することで、制御手段により端子圧着装置1が制御される。また、符号68は、第一,第二圧着機構3,4を個別に操作できる副操作部である。
次に、本実施形態の端子圧着装置1の動作の一例を図1から図5に基づいて説明する。はじめに、操作部67から、所望とする製品、つまり、端子付電線の情報を入力し、加工に必要にアプリケータ9を取付ける。このとき、アプリケータ9の上側ユニット12および下側ユニット13に夫々設けられたICチップの識別情報を読み取ることで、上側ユニット12および下側ユニット13が間違えていないかを自動的に検出する。そして、上側ユニット12および下側ユニット13に間違いがなければ、端子圧着装置1が可動可能となる。また、下側ユニット13の前進位置に関する位置設定などが、図示しない記憶手段から制御手段に読込まれる。
まず、電線Lは、電線送り機構6のローラ51が回転することで、電線Lの先端が切断機構5へと送られ、電線Lの先端が切込刃46から所定量、すなわち、電線Lの被覆材の除去長さ分突出した位置で停止する。このとき、ガイドパイプ52も、切断機構5近傍まで前進する。そして、駆動手段47の駆動により一対の切込刃46が電線Lの芯線まで切込んだ後に、電線Lから離れない程度に若干後退する。これにより、芯線に傷が付くのを防ぐとともに、小さい力で引抜くことができる。その後、電線送り機構6のローラ51が逆回転し、電線L先端の被覆材が除去されるとともに、電線Lの先端は、第一圧着機構3におけるアプリケータ9の押圧部材38とアンビル39との間まで後退する。また、ガイドパイプ52もあわせて後退する。
次に、第一圧着機構3において、上側ユニット12が下降するとともに、下側ユニット13が上昇することで、上側ユニット12の押圧部材38と下側ユニット13のアンビル39とで端子が圧潰され電線Lの先端に端子が圧着される。詳述すると、第一圧着機構3の第一進退機構14では、はじめに、図4(ア)に示すように、昇降シリンダ19の駆動力とロック手段20のロックとが解除されており、付勢手段26の付勢力により第一摺動部材16すなわち上側ユニット12が押圧部材38とともに上昇した後退位置にある。そして、昇降シリンダ19に圧縮エアが供給されると、付勢手段26の付勢力に抗して第一摺動部材16が前進(下降)する。このとき第一摺動部材16の後退側には空間21が形成される(図4(イ)参照)。なお、第一摺動部材16の前進位置は、連結片16が第一保持部材17と当接することで規制されている。その後、ロックシリンダ23に圧縮エアが供給され、付勢手段24の付勢力に抗してロック部材22が空間21内に挿入され、第一摺動部材16の後退が阻止される。
一方、第二進退機構15では、図5(ア)に示すように、下側ユニット13が下降した後退位置にあり、回転駆動手段33により回転カム32を図中反時計回りの方向に回転させる。すると、回転カム32のカム面31と当接しているローラ30を介して第二摺動部材27すなわちアンビル39を備えた下側ユニット13が前進(上昇)する。このとき、ローラ30は、付勢手段35により回転カム32側に付勢されており、カム面31からローラ30が離れることはない。この回転カム32の回転に伴って、第二摺動部材27が前進すると、第二摺動部材27の突起36も前進し、位置検知手段37によりその突起36の位置を検知している。そして、位置検知手段37により、突起36が予め設定された位置に到達したのを検知すると、回転駆動手段33の回転駆動を停止させ、回転カム32の回転が停止すると同時に第二摺動部材27の前進が停止する。つまり、下側ユニット13の前進が停止する。
この下側ユニット13の前進が停止する位置は、上側ユニット12の押圧部材38と、下側ユニット13のアンビル39とで電線の端部に端子を圧着するときに、最適な圧着状態となるような、押圧部材38とアンビル39との位置関係があり、その位置関係を基に予め位置が設定されている。なお、この位置設定は、アプリケータの種類などにより適宜設定することができる。また、押圧部材やアンビルの摩耗などによりその位置が変化した場合でも、適宜、位置設定を変更することも可能である。
このように、上側ユニット12と下側ユニット13とが、夫々端子を圧着する電線Lが配置された方向に前進することで、アンビル39上に配置された端子に電線Lの先端部が挿入されるとともに、押圧部材38とアンビル39とで端子が圧潰され、電線の端部に端子が圧着される。このとき、第一進退機構14では、ロック手段20により押圧部材38の後退が阻止されており、第二進退機構15から作用する荷重を逃がすことなくアンビル39を介して端子に作用させることができる。なお、第一進退機構14と第二進退機構15の作動タイミングは、特に限定するものではないが、端子が圧潰される前までに、第一進退機構14のロック手段20が作動して第一摺動部材16の後退が阻止されていることが望ましい。
そして、電線Lの先端に端子が圧着されると、第一進退機構14では、ロックシリンダ23の駆動力を解除すると付勢手段24の付勢力によりロック部材22が空間21から排除され、さらに、昇降シリンダ19の駆動力を解除すると、付勢手段26の付勢力により第一摺動部材16が後退し、もって上側ユニット12が後退する。一方、第二進退機構15では、回転駆動手段33が前進時とは逆方向(図中時計回りの方向)に回転カム32を回転駆動させると、第二摺動部材27が後退し、もって下側ユニット13が後退する。そして、上側ユニット12および下側ユニット13が夫々後退し、電線Lを開放して互いに遠ざかる。
続いて、電線送り機構6のローラ51が回転し電線Lが所定長さ送られる。なお、電線Lの長さは、エンコーダ50により測長されており、所定長さに達するとローラ51の回転が停止する。すると、チャック機構7のチャック開閉機構54が作動し電線Lの後端を一対の把持部53により把持し、切断機構5の切断刃が閉駆動して、電線Lが所定長さに切断される。なお、電線Lの先端側は、チャック機構7のコンベア55に載置される。
電線Lが切断されると、チャック開閉機構54は、電線Lを把持したまま、電線Lの後端が切断機構5の切込刃46から所定量となるように電線の送り方向と逆方向に移動する。そして、切込刃46により切込まれた後、チャック開閉機構54が電線の送り方向に移動すると、電線Lの後端の被覆材が除去されるとともに、電線Lの後端は、第二圧着機構4におけるアプリケータ9の押圧部材38とアンビル39との間まで移動する。
第二圧着機構4でも、第一圧着機構3と同様の動作がおこなわれ、電線Lの後端に端子が圧着される。両端に端子が圧着された電線Lは、チャック開閉機構54から排出機構5の受取機構56へと受け渡され、電線Lを受け取った受取機構56は、駆動手段60により回転収容装置59の上方に移動すると、電線Lを放し、電線Lは、回転収容装置59の収容部58に収容される。なお、アプリケータ9では、端子が圧潰されると、下側ユニット13における端子搬送機構40により次の端子がアンビル上に搬送される。
上記の一連の動作により両端に端子を圧着した電線Lが形成され、この一連の動作が所定回数繰り返される。なお、回転収容装置59は、収容部58に所定数量の電線Lが収容されると回転駆動手段61により回転し、電線Lすなわち端子付電線を端子圧着装置1の外部に排出する。
このように、本実施形態の端子圧着装置1によると、押圧部材38を備えた上側ユニット12とアンビル39を備えた下側ユニット13とを、第一進退機構14と第二進退機構15とにより互いに近接する方向に前進させ、押圧部材38とアンビル39とで電線Lの端部に端子を圧着することができる。このとき、第一進退機構14のロック手段20により上側ユニット12の後退が阻止されているので、第二進退機構15から第一進退機構14に向けて所定の荷重を作用させても、第一進退機構14に取付けられた上側ユニット12が後退してしまうことがなく、所定の荷重を確実に端子に作用させることができる。
また、第一進退機構14と第二進退機構15とにより、押圧部材38を備えた上側ユニット12とアンビル39を備えた下側ユニット13とを夫々進退させることができるので、電線Lの端部に端子を圧着した後に、夫々のユニットを後退させることで、電線Lをさらにその前方に送り出しても、押圧部材38やアンビル39などに接触するのを回避することができ、電線Lを真直ぐ送ることが可能となるので、電線Lを直線状に送りながら電線Lに種々の加工を行うことのできる端子圧着装置1とすることができ、加工の際に電線Lの無駄な動きを低減させることができ、生産効率を高めることができる。また、電線Lの端部に端子を圧着する際に、電線Lの軸位置に対して、端子を圧着する位置の差を少なくすることができるので、電線Lに曲がり癖が付くのを抑制することができる。
さらに、第二進退機構15において、位置検知手段37により、第二摺動部材27の前進位置を検知し、予め設定された前進位置に第二摺動部材27が達すると回転駆動手段33の回転を停止させて、下側ユニット13の前進を停止させるようにしているので、これにより、ローラ30を回転支持するベアリング球などの精度のバラツキに関係なく、第二摺動部材27の位置を検知して下側ユニット13を所定の位置まで前進するようにしており、ローラ30を用いても、下側ユニット13の前進位置の再現性を得ることができるので、カム面31との摩擦抵抗を低減させることができ、進退の駆動に係るロスを低く抑えることができるとともに、耐久性を向上させることができる。
また、この端子圧着装置1によると、装置の使用により押圧部材38やアンビル39が摩耗して、端子を圧着する最適位置が変化しても、第二圧着機構15における第二摺動部材27の前進位置の位置設定を変更するだけで容易に対応することができ、従来に比べて、位置調整などに係る時間を大幅に短縮することができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
すなわち、本実施形態の端子圧着装置1は、上側ユニット12を第一進退機構14で、下側ユニット13を第二進退機構15で夫々進退させるものを示したが、これに限定するものではなく、上側ユニットを第二進退機構で、下側ユニットを第一進退機構で夫々進退させてもよい。ただし、本実施形態のようにするのが望ましく、機構が大きくなる第二進退機構を下側に配置することで、端子圧着装置全体の重心を下げることができ、安定性を高めることができると共に、端子圧着機構のフレーム部材を必要最小限の大きさにすることができる。
また、本実施形態の端子圧着装置1は、第二進退機構15における位置検知手段37が検知するローラ30よりも前進側に備えられた部材として、第二摺動部材27を示したが、これに限定するものではなく、例えば、ローラ保持部材29、被連結部34、或いは、下側ユニット13、を検知するようにしても良く、何れの場合でも、上記と同様の効果を奏することができる。