JP4074445B2 - 複合粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカ、酸化チタン、及び炭酸カルシウムの各々の優れた特性を併せもつ複合粒子及びその製造方法、並びに該複合粒子を配合した複合組成物及び複合体に関する。
【0002】
より詳しくは、填料や顔料等として使用した際に、シリカのもつ吸着性、吸油性、吸水性等の特性、及び酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性等の特性、並びに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径等に由来する優れた特性をあわせもつ、シリカ粒子及び酸化チタン粒子が合成炭酸カルシウム表面に固着している複合粒子及びその製造方法、並びに該複合粒子を配合した複合組成物及び複合体に関する。
【0003】
【従来の技術】
紙や塗料、ゴム、プラスチック等のシートや成形体に配合される填料や顔料には、求められる特性、機能によって、様々な無機素材が用いられている。填料や顔料として用いられている素材としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルク、カオリンなどが挙げられる。
その中の炭酸カルシウムには、天然白色石灰石の粉砕品である重質炭酸カルシウムと、化学的沈殿反応によって合成される合成炭酸カルシウムとがある。
【0004】
前者の重質炭酸カルシウムは、粉砕、分級といった比較的簡易な操作によって得られるという利点をもつ一方、粒度分布が広く、また物理的破砕独特の不規則な粒子形状をもつため、特定の粒子径や粒子形状により発現する効果を引き出すことは難しい。他方、後者の合成炭酸カルシウムは、化学的な沈殿反応によって得られ、その反応条件を調節することによって、粒子径や粒子形状をコントロールすることが可能である。
【0005】
その合成炭酸カルシウムの一般的に知られている形状としては、長径1〜5μm、短径0.2〜2μmの紡錘状、長径1〜5μm、短径0.1〜0.5μmの柱状、0.1〜1μmの立方体状、0.02〜0.08μmのコロイド状などがあり、それぞれ独特の粒子径および粒子形状によって発現する特有の機能を有しており、その機能や特性を活かして、製紙や塗料、種々の高分子材料などの分野で広く使用されている。
【0006】
また、填料や顔料として用いられる酸化チタンは、イルメナイト鉱石を原料とする硫酸法又はルチル鉱石などを原料とする塩素法によって製造される。工業用酸化チタンの結晶構造には、アナターゼ型とルチル型とがあり、それらの粒子径は0.1〜0.5μmが一般的である。酸化チタンは、白色顔料の中で最も屈折率が大きく、塗料や樹脂、繊維、製紙等の填料や顔料として使用した場合、製品の不透明性や隠蔽性、着色性等の向上には最も優れた素材であるといえる。
【0007】
工業用に用いられるシリカは、珪酸化合物を分解することによって得られ、その種類にはシリカゲル、ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、無水シリカなどがある。シリカは多孔性物質であり、他の素材と比較して比表面積が大きいことから、吸油性や吸水性、接着性などの向上に効果的である。
また、カオリンやタルクは、天然に産出するカオリン原石やタルク原石を粉砕したもので、その粒子形状は平板状であることが特徴であり、表面の平滑性や光沢などを付与できる点で優れている。
【0008】
上記した通り、填料や顔料として用いられる素材は、それぞれ特有の機能や特性を有している。しかし、その一方で、それぞれ機能や特性において不足な面や、短所も併せもっているのが一般的である。
例えば、合成炭酸カルシウムは、粒子形状や粒子径などを最適化することによって、不透明度や白色度などの光学特性や吸油特性などを改善させることが可能ではあるものの、酸化チタンの不透明性や隠蔽性と同等の光学特性や、シリカと同じような高吸油性を発現させることはできない。
【0009】
それに対して、酸化チタンは不透明性や隠蔽性などの光学特性には最も優れるものの、使用工程における粒子の凝集によって不透明度の発現効率が低下したり、粒子の微細性に起因する粘度の上昇や、製紙における歩留の悪さなどの問題点もあるほか、シリカと同等の吸油性、吸水性は望めない。また、シリカについては、化学的安定性が低いことや、屈折率が低いため不透明性に劣ることなども指摘されており、また配合した組成物の粘度上昇を引き起こすも製紙分野等においては欠点となる。
【0010】
このようなことから、配合する填料や顔料として、単独の素材を用いるのではなく、複数の素材を併用して、より高品質の製品を得る手法が一般的に用いられている。しかし、複数の素材を併用した場合、それらの物理的、表面化学的性質が異なるため、製造工程や製品において、均一性、歩留、安定性等にしばしば問題が生じるのが現状である。そこで、特に近年においては、複数の素材を複合化することによって、これらの問題点を解決すべく、多くの検討がなされている。
【0011】
例えば、特開平9−156919号公報および特開平9−286609号公報で提案されているようなケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を添加してシリカを生成させる際にチタニアを添加することによって得られるチタニアとシリカとの複合粒子や、特開平2−242998号公報で提案されているような酸化チタンとカオリン、タルク、炭酸カルシウムなどとを固着材によって複合化した粒子などが挙げられる。
【0012】
また、特開平11−107189号公報では、ケイ酸アルカリ溶液中に二酸化チタンや炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの耐アルカリ性微小粒子を添加し、特定温度条件下で鉱酸を添加することによって複合粒子を製造する方法や、特許第3146007号公報では、チタニア粒子と焼成カオリン粒子とをカチオン性高分子電解質の作用により共凝集させることによって得られる複合チタニア−焼成カオリン不透明顔料などが提案されている。
【0013】
さらに、本発明者らは、既に特願2000−202813において、平均粒径が0.1〜0.5μmの二酸化チタン粒子を炭酸カルシウム表面に直接担持させた二酸化チタン−炭酸カルシウム複合粒子を、また特願2000−58272において、炭酸カルシウム表面に、平均粒子径が1〜100nmの合成シリカ微粒子を付着、固定させたシリカ−炭酸カルシウム複合粒子を提案している。
【0014】
これら複合粒子は、複合化させた2種の素材の特性を併せもつ粒子として、有効性が見出されている。特願2000−202813の二酸化チタン−炭酸カルシウム複合粒子は、酸化チタンの微細性に起因する配合組成物の粘度上昇あるいは製紙における歩留などを改善することができるほか、従来の酸化チタンの問題点である凝集による不透明性、隠蔽性の向上効果の低下をも改善できるものである。また、特願2000−58272のシリカ−炭酸カルシウム複合粒子は、シリカのもつ高度の吸油性などの特性を炭酸カルシウムに付与することができるものである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述の通り、2種の素材を複合化することによって、機能性を高めた複合粒子に関しては数多くの提案がなされているが、本発明者らは、さらなる多機能性、高機能性を有する新規な複合粒子に関して鋭意検討を重ねた結果、開発に成功したのが本発明である。
【0016】
すなわち、本発明の課題は、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性などの特性、二酸化チタン等の酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性などの特性、及び炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径などに由来する優れた特性を併せもつ新規な複合粒子及びその製造方法を提供し、さらに該複合粒子を含有する複合組成物及び複合体を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するためのものであり、合成炭酸カルシウム表面にシリカ粒子および酸化チタン粒子が固着していることを特徴とし、炭酸カルシウムおよびシリカ、酸化チタンの各々の優れた特性を併せもつものである。また、その複合粒子の製造方法は、合成炭酸カルシウムの製造工程の炭酸化反応過程において、シリカおよび酸化チタンを添加することを特徴とするものである。
【0018】
そして、本発明では、合成炭酸カルシウム表面にシリカ粒子及び二酸化チタン等の酸化チタン粒子を固着したものであることから、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性等の特性、及び酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性等の特性、並びに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径等に由来する優れた特性とを併せもち、各々の素材の特性を効果的に発現させることのできるものである。さらに、本発明の複合粒子を、紙の填料や塗工剤、塗料、プラスチック、ゴム、紙等の複合組成物や複合体に配合することによって、シリカ及び酸化チタン、炭酸カルシウムの各々の優れた特性を付与することができるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態および詳細について説明するが、本発明は、それらによって限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
本発明の複合粒子は、合成炭酸カルシウムの表面にシリカ粒子及び酸化チタン粒子が固着しているものである。
【0020】
複合粒子を構成する第1の成分である合成炭酸カルシウムに関しては、その粒子形状、粒子径などに制限はなく、長径1〜5μm、短径0.2〜2μmの紡錘状、長径1〜5μm、短径0.1〜0.5μmの柱状、0.1〜1μmの立方体状、0.02〜0.08μmのコロイド状など、複合粒子に求められる性状や用途によって、適宜選択することができる。
その中でも、シリカ粒子および酸化チタン粒子の固着効率、固着力の面では、紡錘状炭酸カルシウムが最も優れている。
【0021】
第2の成分であるシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応によって合成されたものであれば特に制限なく使用可能であり、具体的には、コロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカ、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらシリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力、付着性の高さ、高吸油性などの優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。
【0022】
これら合成シリカのうち、コロイダルシリカはケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pHおよび濃度を調節してゾルを安定化させた球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカであり、シリカゲルはケイ酸ソーダを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また、無水シリカは、四塩化珪素の加水分解によって得られるものであり、ホワイトカーボンは有機ケイ酸化合物やケイ酸ソーダなどの分解によって得られる含水微粉ケイ酸である。
【0023】
前記した通り、本発明では、各種のシリカが制限されることなく使用可能であるが、本発明の複合粒子を得るには、それに適切な粒子径のシリカを選択することが望ましく、一次粒子の平均径が0.001〜0.1μmの範囲にあるシリカを使用することが好適である。いずれにしても、製造する複合粒子に要求される特性や用途に応じて適宜選択して使用することが好ましい。
【0024】
第3の成分である酸化チタンについては、工業的に硫酸法または塩素法によって製造されるアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン等の各種酸化チタンあるいは、それらをアルミニウムや珪素、亜鉛、ジルコニウムなどで表面処理したものを使用することが可能である。特に、酸化チタンのもつ不透明性や隠蔽性などを効果的に発現させたい場合には、一次粒子の平均径が0.1〜0.5μmの範囲の酸化チタンを選択することが望ましい。
【0025】
本発明の複合粒子の複合化形態は、合成炭酸カルシウム表面にシリカ粒子および酸化チタン粒子が直接固着していることを特徴とするものである。すなわちバインダーとして他の成分が存在せず、炭酸カルシウムとシリカ粒子及び酸化チタン粒子が直接接合している。この接合の状態に関しては、詳しく解明できていないが、何らかの化学的または物理的な結合が関与しているものと推測している。
【0026】
本発明の複合粒子は、合成炭酸カルシウムの製造工程の炭酸化反応過程において、シリカおよび酸化チタンを添加し、引き続き炭酸化反応を行って、炭酸化を終了させることによって製造される。合成炭酸カルシウムの製造方法としては、特段の制限はなく、生石灰の消化によって得られる消石灰スラリー中に炭酸ガスを導入することによって炭酸カルシウムを沈殿させる炭酸ガス化合法や、塩化カルシウムなどのカルシウム塩溶液中に炭酸ナトリウムなどの炭酸源を導入して炭酸カルシウムを沈殿させる溶液法などの常法が適用できる。
【0027】
その際の製造条件については、消石灰スラリーやカルシウム塩溶液の温度や濃度、炭酸源として導入される炭酸ガスや炭酸ナトリウムなどの供給速度(炭酸化反応速度)、撹拌条件などによって、得られる炭酸カルシウムの形状や粒子径などが変化する。例えば、炭酸ガス化合法の場合、消石灰スラリー濃度が高く、炭酸化反応速度が遅く、温度が高い条件下では長径1〜5μm、短径0.1〜0.5μmの柱状炭酸カルシウムが、炭酸化反応速度が速く、温度が低い条件下では粒子径0.02〜0.1μmのコロイド状炭酸カルシウムが、両者の中間的な条件下では長径1〜5μm、短径0.2〜2μmの紡錘状炭酸カルシウムが生成しやすい傾向がある。
【0028】
本発明においては、炭酸カルシウムの製造条件に関して特段の制約はなく、目的とする炭酸カルシウムの形状および粒子径に応じて、調節することが可能である。なかでも、シリカおよび酸化チタンの固着性に優れ、常温付近での合成が可能であり経済性にも優れるといった利点を有している紡錘状炭酸カルシウムが生成するような条件下で製造することがより好適である。
【0029】
また、本発明でいう合成炭酸カルシウムの製造工程における炭酸化反応過程とは、カルシウム化合物あるいはカルシウムイオンと炭酸ガスあるいは炭酸イオンが化合し、炭酸カルシウムが生成、沈殿する過程のことであり、炭酸化反応を開始する以前をも含む。この炭酸化反応過程において、シリカおよび酸化チタンを添加することによって、本発明の複合粒子は製造される。
【0030】
その炭酸化反応過程において添加されるシリカに関しては、既に述べたように、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応によって合成されたものであれば特に制限なく使用可能であり、具体的には、コロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカ、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0031】
添加するシリカの量に関しては、特段の制約はなく、複合粒子に求められるシリカに起因する特性や用途によって選択することが可能であるが、より好ましくは、炭酸カルシウム100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲になるような添加量であることが望ましい。0.1重量部未満であると、シリカの特性がほとんど発揮されないことが多い。なお、炭酸カルシウムの比表面積によりシリカの固着量にも限界が存在するため、添加量が多すぎると炭酸カルシウム表面に固着されず、遊離状態のシリカが混入し、複合粒子の性状に悪影響を及ぼすこともあるので、より好ましくは50重量部以下であることが望ましい。
【0032】
炭酸化反応過程において添加される酸化チタンについても、既に述べたように、工業的に硫酸法または塩素法によって製造されるアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン等の各種酸化チタン、あるいはそれらをアルミニウムや珪素、亜鉛、ジルコニウムなどで表面処理したものを使用することが可能である。
【0033】
酸化チタンの添加量に関しては、特段の制約はなく、複合粒子に求められる酸化チタンに起因する特性や用途によって選択することが可能であるが、より好ましくは、炭酸カルシウム100重量部に対して0.1〜50重量部の範囲になるような添加量であることが望ましい。0.1重量部未満であると、酸化チタンの特性がほとんど発揮されないことが多い。なお、シリカの添加量の場合と同様に、炭酸カルシウムの比表面積により酸化チタンの固着量にも限界が存在するため、添加量が多すぎると炭酸カルシウム表面に固着されず、遊離状態の酸化チタンが混入し、酸化チタンの特性の発現効率が低下したり、複合粒子の性状に悪影響を及ぼすこともあるので、50重量部以下であることがより望ましい。
【0034】
シリカ及び酸化チタンの添加態様あるいは添加時の状態については、粉体のまま添加するのは勿論のこと、水等の溶媒に分散させたスラリーの状態で添加を行っても良い。また添加する時期に関しては、炭酸化反応を開始する前または炭酸化反応の途中であれば良く、炭酸化反応によって炭酸カルシウムが生成する過程において、シリカおよび酸化チタンを共存させることによって、炭酸カルシウム表面にシリカおよび酸化チタンを固着させることが可能である。ただし、添加の時期が炭酸化反応の終了間際になってくると、炭酸カルシウム表面へのシリカおよび酸化チタンの固着が弱くなる傾向が認められている。
【0035】
したがって、シリカについては添加量が炭酸カルシウム100重量部に対して30重量部以上、酸化チタンについては20重量部以上とする場合には、炭酸化率が90%に達する以前に、より好ましくは炭酸化率が60%に達する以前に添加することが望ましい。
なお、ここでいう炭酸化率とは下式で表されるものである。
炭酸化率(%)=(炭酸化反応によって生成した炭酸カルシウム中のカルシウム重量)÷(反応系内に存在するカルシウムの総重量)×100
【0036】
また、シリカ添加及び酸化チタンの添加順序については、複合粒子に求められる特性および用途に応じて選択することができる。具体的には、複合粒子に要求される特性、特に表面特性として、シリカの特性を最優先させたい場合には、酸化チタンの添加を先に、シリカの添加を後に行うことによって複合粒子表面に露出するシリカの割合を多くすることができる。逆に酸化チタンの特性を最優先させたい場合は、シリカの添加を先に、酸化チタンの添加を後に行えば良い。また、シリカと酸化チタンの添加を同時に行っても何ら差し支えない。
【0037】
ただし、炭酸カルシウム表面への固着性は、シリカの方が高いことを示すデータが得られており、特に添加するシリカの量が多い場合には、酸化チタンが固着されにくくなることもある。したがって、シリカの添加量および酸化チタンの添加量を多くする場合には、酸化チタンの添加を先に、シリカの添加を後にしたほうが望ましい。
【0038】
また、酸化チタンを添加した後、炭酸化が終了するまで炭酸化反応を継続させた後、炭酸化反応によって炭酸カルシウムを沈殿しうるカルシウム化合物を添加し、再度、炭酸化反応を行う際にシリカの添加を行ってもよい。なお、この際に添加される炭酸化反応によって炭酸カルシウムを沈殿しうるカルシウム化合物としては、生石灰や消石灰は勿論のこと、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどの可溶性カルシウム塩などが使用できる。
【0039】
シリカおよび酸化チタンを添加した後は、引き続き炭酸ガス等の炭酸源を導入して、炭酸化が完了するまで、炭酸化反応を継続させる。炭酸化の完了については、スラリーのpHを計測することによって容易に判断することができる。例えば、炭酸ガス化合法の場合、炭酸化の完了前では、未反応の消石灰が存在するためスラリーのpHは10〜13とアルカリ性を示すが、炭酸化が完了するとスラリーのpHは中性付近にまで低下する。
【0040】
このようにして得られる複合粒子は、合成炭酸カルシウム表面にシリカ粒子および酸化チタン粒子が固着されているものであり、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性などの特性および、酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性などの特性、ならびに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径などに由来する優れた特性とを併せもち、3種の素材の特性を効果的に発現させることができる。
【0041】
そして、本発明の複合粒子は、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性などの特性、及び酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性などの特性、並びに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径などに由来する優れた特性を付与することにより製品品質を向上させることを目的として、製紙用のほか、プラスチック、ゴムあるいは塗料等の顔料や填料として利用でき、それらのために該複合粒子を含む組成物あるいはその組成物から形成された成形体が、本発明の複合組成物あるいは複合体である。
【0042】
それら複合組成物あるいは複合体について、製紙用における利用を例に説明する。製紙用に利用した場合については、本発明の複合粒子は、紙に内填される填料、および紙に塗工される塗工剤中の顔料のいずれにも応用が可能であり、その複合粒子を含有した填料、顔料あるいはその顔料を含有する塗工剤が本発明の複合組成物であり、またできあがった紙が本発明の複合体である。
【0043】
製紙用の填料とは、紙の品質向上や増量の目的で紙中に内填される物質であり、製紙の中の紙料調製工程において、パルプスラリー中に、サイズ剤や紙力増強剤、歩留向上剤等の製紙用薬剤類とともに添加される。填料の配合率は、製造される紙の種類や品質によって異なるが、一般に、印刷用紙では紙の絶乾重量に対して3〜30重量%、難燃紙等の無機質紙では最高で90重量%程度配合される場合もある。また、製紙用の顔料とは、紙の品質、特に表面性状を向上させるために、紙の表面に塗工される塗工剤中に配合される物質である。製紙用塗工剤は、顔料とバインダーを水に分散させたものであり、塗工剤中の顔料濃度は30〜60重量%程度である。
【0044】
本発明の複合粒子を、製紙用填料として使用する際には、内填される填料の少なくとも一部を該複合粒子とし、その配合量は填料に対して1重量%以上、望ましくは5重量%以上とするのが好適である。また、塗工顔料として使用する際には、塗工剤中に含まれる顔料の少なくとも一部を該複合粒子とし、その複合粒子の配合量は顔料に対して1重量%以上、望ましくは5重量%以上とするのが好適である。
【0045】
このようにして、該複合粒子を製紙用填料または塗工用顔料として使用することにより、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性などの特性、及び酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性などの特性、並びに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径などに由来する優れた特性を紙に付与することが可能となる。
【0046】
具体的には、シリカのもつ高吸油性といった特性や、酸化チタンのもつ高不透明性といった特性、炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径といった特性により、インク受理性等の印刷適性や不透明度や白色度といった光学特性、紙力などの物理的特性などの紙質に優れた紙を得ることができる。さらには、填料あるいは顔料が、少量の配合量であっても、高い印刷適性や光学特性などが得られることから、顔料あるいは填料の配合量を低減させることも可能となるため、紙の軽量化、薄紙化などにも効果的である。
【0047】
また、製紙における操業性の面でも、本発明の複合粒子は優れた効果を発揮する。例えば、製紙用填料として、本発明の複合体を使用した場合には、酸化チタンを使用した場合に比較し、抄紙工程、特にワイヤー上において抄紙原料からの漏れが少なくワイヤー上で留まりがよく、その結果填料の歩留まりを向上させ、かつ、酸化チタンやシリカを塗工用顔料として使用した際に生ずる塗工剤による粘度上昇の抑制などに効果を発揮する。
【0048】
さらに、本発明の複合粒子は、製紙以外の分野でも利用でき、その利用形態としては、プラスチック、ゴム、塗料等の填料や顔料が挙げられ、その際における複合粒子を含有した未成形の組成物が本発明の複合組成物であり、それを使用して形成した成形体であるプラスチック製ケース、プラスチックフィルム、板状ゴム、塗膜付き金属あるいは塗膜付き木板等が、本発明の複合体である。
【0049】
以上で例示した各応用分野においても、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性などの特性および、酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性などの特性、ならびに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径などに由来する優れた特性を、製品に付与し、品質を向上させることができるほか、製造工程における配合組成物の粘度調整、単純混合物を用いた場合の比重差による分離などの諸問題の解決にも効果を有するものである。特に高分子材料に配合した際には、シリカによる補強性(塗料においては塗膜強度)と酸化チタンによる不透明性や着色性を兼ね備えた複合組成物や複合体を得ることができるという特徴を有している。
【0050】
【実施例】
本発明の実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0051】
[実施例1]
工業用生石灰120gを、70℃に加温した水道水1.0L中に投入し、30分間撹拌して生石灰を消化させたのち、目開き150μmのフルイにて消化残渣を除去してから、水道水を加え、濃度74g/Lの消石灰スラリー2.0Lを調製した。消石灰スラリーの温度を30℃に調節した後、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。
【0052】
炭酸化反応開始から5分が経過した時点(炭酸化率4.5%)で、一次粒子の平均径が0.05μmのシリカの水分散体(日産化学工業製スノーテックス20L)80g(シリカ分として16g)を添加し、引き続き炭酸化反応を継続させた。続いて、炭酸化反応開始から10分が経過した時点(炭酸化率9.1%)で、一次粒子の平均径が0.21μmのルチル型酸化チタン(石原産業製CR−60)20gを添加し、引き続き炭酸化反応を継続して、スラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ、複合粒子を得た。
【0053】
走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1.5〜2μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。その観察結果を示す電子顕微鏡写真は図1に示した。また、該写真を模写した図面を作成し、その作成図面の図2において、複合粒子を構成する酸化チタン、シリカ及び炭酸カルシウムの各物質に該当するものを示した。
【0054】
[実施例2]
実施例1と同様の操作で、消石灰スラリーを調製した後、スラリー温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。炭酸化反応開始から5分が経過した時点(炭酸化率4.5%)で、一次粒子の平均径が0.05μmのシリカの水分散体(日産化学工業製スノーテックス20L)200g(シリカ分として40g)を添加し、引き続き炭酸化反応を継続させた。
【0055】
続いて、炭酸化反応開始から10分が経過した時点(炭酸化率9.1%)で、一次粒子の平均径が0.21μmのルチル型酸化チタン(石原産業製CR−60)10gを添加し、引き続き炭酸化反応を継続して、スラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ、複合粒子を得た。
走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1.5〜2μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。
【0056】
[実施例3]
実施例1と同様の操作で、消石灰スラリーを調製した後、スラリー温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。炭酸化反応開始から5分が経過した時点(炭酸化率4.5%)で、一次粒子の平均径が0.21μmのルチル型酸化チタン(石原産業製CR−60)30gを添加し、引き続き炭酸化反応を継続させた。
【0057】
続いて、炭酸化反応開始から60分が経過した時点(炭酸化率54.5%)で、一次粒子の平均径が0.05μmのシリカの水分散体(日産化学工業製スノーテックス20L)100g(シリカ分として20g)を添加し、引き続き炭酸化反応を継続して、スラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ、複合粒子を得た。
走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1.5〜2μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。
【0058】
[実施例4]
実施例1と同様の操作で、消石灰スラリーを調製した後、スラリー温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。炭酸化反応開始から5分が経過した時点(炭酸化率4.5%)で、一次粒子の平均径が0.21μmのルチル型酸化チタン(石原産業製CR−60)45gを添加し、引き続き炭酸化反応を行った。スラリーのpHが7に達し、炭酸化反応が終了したことを確認した後、37g/Lの濃度の消石灰スラリー200mLを添加してから、炭酸ガスを0.20L/分の速度で導入して再度炭酸化反応を開始した。
【0059】
2度目の炭酸化反応開始から1分が経過した時点で、一次粒子の平均径が0.05μmのシリカの水分散体(日産化学工業製スノーテックス20L)250g(シリカ分として50g)を添加し、引き続き炭酸化反応を継続して、スラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ、複合粒子を得た。
走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1.5〜2μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。
【0060】
[実施例5]
実施例1と同様の操作で、消石灰スラリーを調製した後、スラリー温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。炭酸化反応開始から60分が経過した時点(炭酸化率54.5%)で、一次粒子の平均径が0.15μmのアナターゼ型酸化チタン(石原産業製A−100)5gと、一次粒子の平均径が0.01μmのシリカ(日本アエロジル製アエロジル200)10gとを添加し、引き続き炭酸化反応を行った。
【0061】
スラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ、複合粒子を得た。走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1〜1.5μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。
【0062】
[実施例6]
実施例1と同様の操作で、消石灰スラリーを調製した後、スラリー温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。炭酸化反応開始から90分が経過した時点(炭酸化率81.8%)で、一次粒子の平均径が0.15μmのアナターゼ型酸化チタン(石原産業製A−100)5gと、一次粒子の平均径が0.01μmのシリカ(日本アエロジル製アエロジル200)10gとを添加し、引き続き炭酸化反応を行った。
【0063】
スラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ、複合粒子を得た。走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1〜1.5μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。
【0064】
[実施例7]
工業用生石灰150gを、70℃に加温した水道水1.0L中に投入し、60分間撹拌して生石灰を消化させたのち、目開き150μmのフルイにて消化残渣を除去してから、水道水を加え、濃度94g/Lの消石灰スラリー2.0Lを調製した。消石灰スラリーの温度を50℃に調節した後、撹拌しながら炭酸ガスを0.20L/分の速度で導入して、炭酸化反応を開始した。炭酸化反応開始から5分が経過した時点(炭酸化率2.1%)で、一次粒子の平均径が0.21μmのルチル型酸化チタン(石原産業製CR−60)20gを添加し、引き続き炭酸化反応を継続させた。
【0065】
続いて、炭酸化反応開始から45分が経過した時点(炭酸化率20.0%)で、一次粒子の平均径が0.05μmのシリカの水分散体(日産化学工業製スノーテックス20L)100g(シリカ分として20g)を添加し、引き続き炭酸化反応を継続してスラリーのpHが7に達した時点で炭酸化反応を終了させ複合粒子を得た。
走査型電子顕微鏡にて、複合粒子を観察したところ、長径1〜2μm、短径0.1〜0.3μmの柱状状炭酸カルシウム粒子表面に、シリカおよび酸化チタンが固着していることが確認された。
【0066】
[比較例1]
実施例1と同様の操作で、消石灰スラリーを調製した後、スラリー温度を30℃に調節してから、撹拌しながら炭酸ガスを0.35L/分の速度で炭酸化反応を行った。スラリーのpHが7に達し、炭酸化反応が終了した後、一次粒子の平均径が0.21μmのルチル型酸化チタン(石原産業製CR−60)45g、および一次粒子の平均径が50nmのシリカの水分散体(日産化学工業製スノーテックス20L)200g(シリカ分として40g)を添加し、10分間撹拌を継続させた。
【0067】
得られた生成物について、走査型電子顕微鏡にて観察を行ったところ、長径1.5〜2μm、短径0.4〜0.5μmの紡錘状炭酸カルシウム、シリカ粒子および酸化チタン粒子が確認されたが、各々は独立した状態で、複合化はしていなかった。
【0068】
【発明の効果】
本発明の複合粒子は、合成炭酸カルシウム表面に、シリカおよび酸化チタンが固着したものであり、シリカおよび酸化チタン、炭酸カルシウムの各々の優れた特性を併せもつ。したがって、本発明の複合粒子を紙、塗料、プラスチック、ゴム等に配合することによって、シリカのもつ微細性、吸着性、吸油性、吸水性などの特性および、酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、高着色性などの特性、ならびに炭酸カルシウムのもつ独特の粒子形状や粒子径などに由来する特性を効果的に発現させることのできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた複合粒子の走査型電子顕微鏡写真
【図2】 図1の電子顕微鏡写真の複合粒子を模写した図であり、その粒子を構成する酸化チタン、シリカ及び炭酸カルシウムの各物質を図中で示す。
Claims (3)
- 紡錘状又は柱状炭酸カルシウムの製造工程の炭酸化反応過程において、一次粒子の平均径が0.001〜0.1μmの合成シリカ、及び一次粒子の平均径が0.1〜0.5μmの酸化チタン粒子を、炭酸カルシウム100重量部に対して、合成シリカを0.1〜50重量部、及び酸化チタンを0.1〜50重量部の範囲で添加することを特徴とする、合成シリカ粒子及び酸化チタン粒子が紡錘状又は柱状炭酸カルシウム粒子表面に固着している複合粒子の製造方法。
- 炭酸化反応過程において、酸化チタンを添加し、その後合成シリカを添加することを特徴とする請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
- 酸化チタンを添加して炭酸化反応を終了させた後、カルシウム化合物を添加し、再度炭酸化反応を行う過程において合成シリカを添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合粒子の製造方法。
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