JP4073573B2 - スクータ型車両のキック始動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスクータ型車両のキック始動装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ型車両のキック始動装置に関する技術は、例えば、特開平5−180127号公報「スクータ型車両のキック始動装置」(従来の技術)がある。
上記従来の技術は、その公報の図1によれば、スイング式エンジンユニットケース2a(番号は公報に記載されたものを引用した。以下同じ。)の側面にキックレバー13を備えるとともに、車体にセンタースタンド8を備え、格納された状態のセンタースタンド8が、キックレバー13のストッパの役割を果たすようにしたというものである。センタースタンド8を起立させたときだけ、キックレバー13をキック操作することができる。
【0003】
さらに、従来の技術は、キックレバー13のキック軸14の中心を、エンジン6のクランク軸10の中心と、後輪に動力を伝達するミッションドライブ軸11の中心と、を結ぶ線12よりも下方へ配置したものである。今まで線12の上に配置していたキック軸14の中心を、下方へオフセットさせ、さらに、キック軸14から後上方へキックレバー13を延すことにより、キックレバー13のキック作動角を大きくすることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スクータ型車両を走行させるときには、センタースタンド8(メインスタンドに相当)を格納した状態で、エンジン6を始動させることがある。上記従来の技術では、このようなときにキックレバー13(キックアームに相当)をキック操作すると、キックレバー13がセンタースタンド8に当るので、始動操作ができない。
センタースタンド8がキックレバー13に干渉しないようにするには、一方を車幅方向へ突出させることが考えられる。しかし、これでは車幅方向へ突出するので、スクータ型車両の外観性を良好に保つことが容易でない。
【0005】
そこで本発明の目的は、メインスタンドを格納した状態であっても、キックアームのキック作動角を大きくできるようにして、エンジンの始動操作を容易にした技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、エンジンの動力を後輪に伝達するための伝動機構を収納するスイング式伝動ケースに、エンジン始動用のキックアームを取付けたスクータ型車両において、メインスタンドを格納した状態でキックアームのキック作動角を大きくするために、車両側面視でキックアームのキック軸とキックペダルとの間の中間部をへの字形状とし、キックアームのスイング中心を伝動ケースの高さ中心より上方へオフセットさせたことを特徴とする。
【0007】
車両側面視でキックアームのキック軸とキックペダルとの間の中間部をへの字形状とし、キックアームのスイング中心を伝動ケースの高さ中心より上方へオフセットさせた分だけ、キックアームはメインスタンドから離れる。メインスタンド又はキックアームを車幅方向へ突出させなくても、メインスタンドを格納した状態でキックアームをキック操作したときに、キックアームのキック作動角を大きくすることができる。更に、キックアームをへの字形状とすることにより、キック軸を必要以上に上方はオフセットさせる必要がなく、且つキックペダルの位置を低く設定できる。従って、エンジンの始動操作は容易である。
請求項2は、メインスタンドが、伝動ケースを支持する車両後半部の後フレームにブラケットを介して取付けられていることを特徴とする。
請求項2は、メインスタンドが、伝動ケースを支持する車両後半部の後フレームにブラケットを介して取付けられているので、請求項1の効果に加え、メインスタンドが、スイング式伝動ケースを支持する車両後方部の後フレームにブラケットを介して取付けられているので、キックアームとメインスタンドとの間に常に十分な幅を確保することができる。従って、走行中でもメインスタンドとキックアームとが干渉することを回避することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車体中央(車幅中心)を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0009】
図1は本発明に係るスクータ型車両の左側面図である。
スクータ型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11のヘッドパイプ12に取付けたフロントフォーク13と、フロントフォーク13に取付けた前輪14並びにフロントフェンダ15と、フロントフォーク13に連結したハンドル16と、ハンドル16周りを覆うハンドルカバー17と、車体フレーム11の中央低部(低床部分)に取付けた補機収納ボックス18と、車体フレーム11の後上部に取付けたスイング式パワーユニット21(前部のエンジン22と後部の伝動機構23の組合せ構造)と、パワーユニット21の後部に取付けた後輪24と、車体フレーム11の後部上部にパワーユニット21を懸架するリヤサスペンション25と、車体フレーム11の後部上部に取付けた収納ボックス26と、収納ボックス26の上部に取付けたシート27と、収納ボックス26の後方で車体フレーム11の後部上部に取付けた燃料タンク28と、車体フレーム11を覆うボディカバー30とを主要構成とした自動二輪車である。
【0010】
ボディカバー30は、ヘッドパイプ12の前部を覆うフロントカバー31と、運転者の脚部を覆うためのレッグシールド32と、運転者の足載せのためのステップフロア33と、ステップフロア33の下方に配置して車体フレーム11の下部を覆うアンダカバー34と、車体フレーム11の後半部を覆うリヤカバー35とからなる。
図中、16aはグリップ、41はフロントサスペンション、42はヘッドランプ、112はメインスタンド、92はエンジン始動用のキックアーム、45はテイルランプ、46はリヤフェンダ、47はリヤグリップ、48はエアクリーナ、49はキャブレータである。
【0011】
図2は本発明に係るスクータ型車両の平面図であり、スクータ型車両10にメータ51、左右のミラー52,52、ラジエータ53、マフラ54を備えたことを示す。ラジエータ53は、パワーユニット21の右側に一体に設けたものである。
【0012】
図3は本発明に係る車体フレームの分解斜視図である。
車体フレーム11は、ステップフロア33(図1参照)の下方で、前フレーム11Fと後フレーム11Rとサブフレーム81とに前後三分割した分割フレームである。
前フレーム11Fは、ヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から下方へ延びるヘッドパイプポスト61と、ヘッドパイプポスト61の下端から後方へ二股状に延びる左右一対のメインフレーム62,62と、左右のメインフレーム62,62の後端間に掛け渡した後部クロスメンバ63とからなり、平面視略ロ字状枠の一体鋳造フレーム、例えば、アルミニウム合金の鋳造品である。平面視ロ字状枠であるから、中央に空間部S1を有することになる。
【0013】
このように、左右のメインフレーム62,62は、ヘッドパイプ12から後方へ延びる部材であり、その後端下部に、後上方へ傾斜した傾斜面を形成し、この傾斜面を前部結合面64,64としたものである。後部クロスメンバ63は、正面視上開放コ字状部材であり、その車幅中央部の高さをメインフレーム62,62よりも下位に設定したものである。
【0014】
後フレーム11Rは、左右一対のメインフレーム71,71と、左右のメインフレーム71,71の前後方向の中間部間に掛け渡した前部クロスメンバ72と、左右のメインフレーム71,71の後端間に掛け渡した後部クロスメンバ73とからなる、一体鋳造フレーム、例えば、アルミニウム合金の鋳造品である。左右のメインフレーム71,71は、前端下部に、後下方へ傾斜した傾斜面を形成し、この傾斜面を後部結合面74,74としたものである。これらのメインフレーム71,71は、さらに後方へ延び、その後端から上方へ延び、その上端からさらに後上方へ延びた、側面視略逆Z状の部材である。
【0015】
車体フレーム11は、前部結合面64,64に後部結合面74,74を重ね合わせて、ボルト・ナット75・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)にて結合することにより、前フレーム11Fに後フレーム11Rを一体的に結合したものである。
後フレーム11Rは後端部にサブフレーム81を、ボルト・ナット85・・・にて結合したものである。サブフレーム81は、左右の起立した収納ボックス用ポスト82,82と、収納ボックス用ポスト82,82間を繋いだ連結ステー83とからなる。サブフレーム81の結合部分、すなわち、ボルト・ナット85・・・にて結合する部分は、リヤサスペンション取付部77の前後に設けられており、補強を兼ねている。76はハンガピボット部である。
【0016】
図4は本発明に係る後フレーム、パワーユニット並びにメインスタンド周りの左側面図である。
パワーユニット21は、側面から見たときに概ね水平向きに配置したものであり、エンジン22の動力を後輪24(図1参照)に伝達するための、伝動機構(変速機構を含む。)23を収納するスイング式伝動ケース91に、エンジン始動用のキックアーム92を取付けたものである。
エンジン22は、OHC型4サイクル単気筒水冷式エンジンであり、ヘッドカバー101を前向きに配置し、ヘッドカバー101に点火コイル102を備えるとともに、シリンダヘッド103に点火プラグ104を備え、これらの点火コイル102と点火プラグ104とを高電圧コード105にて接続したものである。
さらにこの図は、後フレーム11Rにブラケット111を介してメインスタンド112を上下スイング可能に取付けたことを示す。
【0017】
本発明は、メインスタンド112を格納した状態でキックアーム92のキック作動角を大きくするために、キックアーム92のスイング中心P1を伝動ケース91の高さ中心より上方へオフセットさせたことを特徴とする
具体的には、エンジン22のクランク軸106の中心P2と、後輪24に動力を伝達するドライブ軸107の中心P3と、を結ぶ線をXとする。この線Xは、側面から見たときに概ね水平な線であり、伝動ケース91の高さ中心を通る。以下、線Xのことを伝動ケース91の高さ中心と言う。
【0018】
キックアーム92のスイング中心P1、すなわち、キック軸93の中心は、伝動ケース91の高さ中心Xより上方へ所定の距離(オフセット量)Yだけオフセットするとともに、クランク軸106の中心P2よりも後方へ配置したものである。キックアーム92は、キック軸93から後方へ延びるとともに、その先端にキックペダル94を取付けたものである。キックペダル94は、図に示す格納位置から紙面手前側へ倒して、使用することになる。
【0019】
さらにキックアーム92は、側面から見たときに、メインスタンド112の先端を迂回するように概ね「へ」字状に形成したものである。
ところで、キックアーム92並びにメインスタンド112は、リヤカバー35(図2参照)の幅内にほとんど収る範囲に、配置したものである。このため、キックアーム92並びにメインスタンド112が車幅方向へ突出することはない。
図中、96は伝動ケース用カバーである。
【0020】
図5は本発明に係るパワーユニット取付構造の要部を断面した左側面図であり、後フレーム11Rにハンガ機構120を介してパワーユニット21(図4参照)を上下スイング可能に取付けたことを示す。
【0021】
図6は図5の6−6線断面図である。
ハンガ機構120は、後フレーム11Rの左右のメインフレーム71,71に緩衝部材121,121を介して取付けた左右一対の第1ピボット軸122,122と、これらのピボット軸122,122に上下スイング可能に取付けた左右のリンクプレート123,123と、これらのリンクプレート123,123の前端部間に掛け渡した連結ロッド124と、左右のリンクプレート123,123の後端部間に掛け渡した第2ピボット軸125と、第2ピボット軸125に緩衝部材126,126を介して上下スイング可能に取付けた左右のハンガプレート127,127とからなる。
【0022】
左右の第1ピボット軸122,122は、車幅方向に延びる同一軸心上に配置したボルト・ナットである。左右のリンクプレート123,123は、第1ピボット軸122,122と直交する方向に延びた板材である。第2ピボット軸125は、第1ピボット軸122,122に並行に配置したボルト・ナットである。左右のハンガプレート127,127は、伝動ケース91(図4参照)から延びた吊下げ部材である。
左又は右のリンクプレート123は、前端部に前部スイング規制部128を備えるとともに、後端部に後部スイング規制部129を備える。前・後部スイング規制部128,129は、緩衝材である。
【0023】
一旦図5に戻って説明を続けると、前部スイング規制部128の上端面はメインフレーム71の第1ストッパ面78に接し、後部スイング規制部129の上端面はメインフレーム71の第2ストッパ面79に接するように配置したものである。従って、リンクプレート123のスイング運動は、第1・第2ストッパ面78,79によって規制される。この結果、リンクプレート123のスイング量が少ないので、パワーユニット21(図4参照)は主に第2ピボット軸125を中心にスイングする。第2ピボット軸125の高さは、第1ピボット軸122よりも低い。
パワーユニット21に衝撃力が作用したときには、前・後部スイング規制部128,129が弾性変形することによって、後フレーム11Rに伝わる衝撃力を緩和する。
【0024】
図7は本発明に係るキックアームとメインスタンドの関係を示す作用図である。
メインスタンド112は、実線にて示す格納位置から想像線にて示す起立位置へ、スイング可能である。キックアーム92は、実線にて示す中立位置Aから時計回り方向へスイング可能であり、キック操作力がないと、元の中立位置Aに自動復帰する。
中立位置Aにおいて、キックペダル94を倒してキック操作をしたときに、位置Bまで角度θaだけキックアーム92をスイングさせることにより、クランク軸106を回してエンジン22を始動させることができる。上記角度θaは、エンジン22を始動させるのに最低限必要なキックアーム92のスイング角、すなわち、キックアーム92の必要始動スイング角である。
【0025】
メインスタンド112を格納した状態においては、メインスタンド112の先端113にキックアーム92が当るまで、キックアーム92をスイングさせることができる。当ったときのキックアーム92の位置はCである。キックアーム92が中立位置Aから位置Cまでスイングする最大スイング角、すなわち、キック作動角はθbである。
キック作動角θbは、必要始動スイング角θaよりも十分に大きい。従って、キックアーム92のキック操作により、エンジン22を容易に始動させることができる。
【0026】
このように、キックアーム92のスイング中心P1を、伝動ケース91の高さ中心Xより上方へオフセットさせたので、オフセットさせた分だけ、キックアーム92をメインスタンド112から離すことができる。このため、キックアーム92又はメインスタンド112を車幅方向へ突出させなくても、メインスタンド112を格納した状態でキックアーム92をキック操作したときに、キックアーム92のキック作動角θbを大きくすることができる。従って、エンジン22を容易に始動操作することができる。しかも、キックアーム92やメインスタンド112が車幅方向へ突出しないので、スクータ型車両の外観性を良好に保つことができる。
【0027】
なお、上記本発明の実施の形態において、キックアーム92のスイング中心P1は、クランク軸106の中心P2より前方へ配置してもよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、メインスタンドを格納した状態でキックアームのキック作動角を大きくするために、車両側面視でキックアームのキック軸とキックペダルとの間の中間部をへの字形状とし、キックアームのスイング中心を伝動ケースの高さ中心より上方へオフセットさせたので、オフセットさせた分だけ、キックアームをメインスタンドから離すことができる。このため、メインスタンド又はキックアームを車幅方向へ突出させなくても、メインスタンドを格納した状態でキックアームをキック操作したときに、キックアームのキック作動角を大きくすることができる。更に、キックアームをへの字形状とすることにより、キック軸を必要以上に上方はオフセットさせる必要がなく、且つキックペダルの位置を低く設定できる。従って、エンジンを容易に始動操作することができ、しかも、スクータ型車両の外観性を良好に保つことができる。
請求項2は、メインスタンドが、伝動ケースを支持する車両後半部の後フレームにブラケットを介して取付けられているので、請求項1の効果に加え、メインスタンドが、スイング式伝動ケースを支持する車両後方部の後フレームにブラケットを介して取付けられているので、キックアームとメインスタンドとの間に常に十分な幅を確保することができる。従って、走行中でもメインスタンドとキックアームとが干渉することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクータ型車両の左側面図
【図2】本発明に係るスクータ型車両の平面図
【図3】本発明に係る車体フレームの分解斜視図
【図4】本発明に係る後フレーム、パワーユニット並びにメインスタンド周りの左側面図
【図5】本発明に係るパワーユニット取付構造の要部を断面した左側面図
【図6】図5の6−6線断面図
【図7】本発明に係るキックアームとメインスタンドの関係を示す作用図
【符号の説明】
10…スクータ型車両、11…車体フレーム、21…パワーユニット、22…エンジン、23…伝動機構、24…後輪、91…スイング式伝動ケース、92…キックアーム、93…キック軸、94…キックペダル、106…クランク軸、107…ドライブ軸、112…メインスタンド、P1…キックアームのスイング中心(キック軸の中心)、P2…クランク軸の中心、P3…ドライブ軸の中心、X…伝動ケースの高さ中心、Y…オフセット量、θa…必要始動スイング角、θb…キック作動角。

Claims (2)

  1. エンジンの動力を後輪に伝達するための伝動機構を収納するスイング式伝動ケースに、エンジン始動用のキックアームを取付けたスクータ型車両において、メインスタンドを格納した状態で前記キックアームのキック作動角を大きくするために、車両側面視で前記キックアームのキック軸とキックペダルとの間の中間部をへの字形状とし、前記キックアームのスイング中心を前記伝動ケースの高さ中心より上方へオフセットさせたことを特徴とするスクータ型車両のキック始動装置。
  2. 前記メインスタンドは、前記伝動ケースを支持する車両後半部の後フレームにブラケットを介して取付けられていることを特徴とする請求項1記載のスクータ型車両のキック始動装置。
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