JP4072417B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属のスパッタリングにおけるスパッタリング方法に関する平坦化方法であり、特に磁気記録媒体の製造における下地層、軟磁性層などのメタル膜の成膜に有効である。
【0002】
【従来の技術】
従来より磁気記録媒体の成膜方法として良く用いられているスパッタリング法には、磁場を用いたマグネトロンスパッタリングがある。この方法において成膜した場合、RFスパッタリングなどに比べ成膜速度が数倍以上速い特徴がある。特に金属の薄膜を得るには有効な手段として用いられている。また、比較的厚い軟磁性層の成膜においては、結晶構造の乱れなどによって表面性が悪化するため、表面粗さを低減する方法として特許文献1に記載されているよう軟磁性層を薄い層に分割し、且つ軟磁性層とは組成の異なる組成を持つ非磁性の分離層を間に挟むことにより、結晶構造の乱れを防止し、結晶の微細化と結晶面の配向を制御することで軟磁性層表面の表面性の向上(表面粗さの低減)が出来るとしている。この方法によれば磁気記録媒体の表面粗さ:Raが5nm以下、好ましくは4.5nm以下で成膜技術、材料で制約を受けるが、Ra0.7nmから0.8nm程度が最も表面性の良い磁気記録媒体の表面粗さRaであるとしている。また、特許文献1の実施例では500nmの成膜を分割+分離層で行なった例の比較として連続成膜500nmで比較されている。これらの結果から分割することが表面粗さを低減する方法ではなく分離層を入れることが同時に表面粗さを低減する結果となっており、膜厚は最大透磁率と膜厚の積で決定される。結果として、表面粗さは連続成膜でRa6.7nmに対して特許文献1に記載の分割成膜でRa4.2nmである。この結果から分割成膜を行なってもそれほど大きな改善は出来ない事、また、現在の磁気記録媒体の表面粗さは磁気ヘッドの浮上量が7nm未満である事を前提とした場合、Raを0.6nm程度とする必要がある事から、従来方法と比較してもその優位性が見出せないと考えられる。
【0003】
従って、従来例で述べているような原因だけでは説明できず、更なる改善が必要と判断した。
【特許文献1】
特開2001-250223号公報
【発明が解決しようとする課題】
従来のマグネトロンスパッタリングに於いてはその特徴である成膜速度が速い事から膜厚を厚く成膜するには有効な手段として用いられてきた。しかし、我々はこのマグネトロンスパッタリングにおいて垂直方式の磁気記録媒体厚付け成膜を行った際、磁気記録媒体としてはあってはならない表面粗さが増大することを問題視し、これを大幅に低減する事で従来の面内記録媒体と同等若しくはそれ以上に優れた表面性を持つ垂直記録媒体を製造する事を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
つまり、成膜速度を早く、且つ膜厚を厚くするほど成膜後の膜表面の表面粗さは粗くなり、特に磁気記録媒体における高密度化に必須である磁気ヘッドの低浮上化の妨げになる事は明白である。この原因としては成膜速度が速い事による急激な結晶成長、マグネトロンを使用するためプラズマ密度が高いことによるターゲット表面及び基板表面の温度上昇、特に金属膜の場合、厚付けするほどエピタキシャル成長を増長するため結晶粒の増大につながる事、これらの要因から成膜中に基板表面、膜表面温度が上がり、結晶成長を促す為、膜の表面粗さが増大すると考えられる。また、金属膜の中でもアモルファスにおいても結晶成長に限らず表面が荒れてくる、これはひとえに、膜厚が厚くなることにより、単純に基板表面の粗さを受け継ぐ物であり、たとえ、アモルファスといえども、異常成長は必ず生じ、きっかけとなるのは基板表面の微笑突起であり、成膜時の基板表面温度の上昇に他ならない事を示していると考え成膜時の温度上昇を押さえる事で膜表面の粗さを押さえる事が望ましいと考えた。
【0005】
本発明では上述の問題点を解決するため基板温度、膜表面温度を上げずに厚付けする方法として一つの層を1回のスパッタで行うのではなく、分割して数回に分ける事で成膜速度を落とさず、上げたままでも、一回の成膜時の温度上昇を押さえる事で膜の表面粗さを低減する事が可能であると考えた。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施にあたって使用した成膜装置の外観略図を図1に示した。装置の構成及び工程の流れとしては図7に示す。
【0007】
まず、成膜装置は洗浄された基板の投入を行なうロードロック室とそれに連なる各プロセスチャンバーがシード層、下地層、反強磁性層、軟磁性層の成膜順にそれぞれ並び、特に軟磁性層のチャンバーは膜厚が50〜500nmと厚いため最高で10回に分けて成膜出来るよう10チャンバーとなっている。次に磁性膜用の下地膜を成膜するため基板加熱室があり、続いて磁性膜の成膜室に続く。その後、軟磁性膜の特にNiFe等の場合には磁区固定が必要なため磁区固定用磁石の設置された処理室があり、最後に保護膜のDLC成膜を行うためのチャンバーで成膜が完了し、アンロードロックから基板が排出される。以上が流れと構成である。
【0008】
尚、評価としては成膜後の表面粗さをAFMを用いて測定し、その膜の表面粗さとして、Ra:中心線平均粗さ、Rp:最大高さで比較した。測定に使用したAFMはDI3000型ナノスコープ3(デジタルインスツルメンツ社製)である。Ra,Rpの定義は本装置の取扱説明書に記載されている通りである。
【0009】
この装置を用いて、本発明の目的である表面粗さの低減検討をまずは単層膜で進めた。最初に確認のために軟磁性膜の膜厚に対して表面粗さがどのように変化するかをNiFe、CoTaZrそれぞれの単層膜について50nm〜500nmまで膜厚を変化させて1回の成膜でサンプリングし、測定を行なった。その結果が図2である。これより、NiFeのような結晶性の膜でも、CoTaZrのようなアモルファスな膜においても膜厚が厚いほど表面粗さは増大する事が判った。従って、結晶性の乱れのみで表面粗さが増大するのではない事が判る。
【0010】
また、本発明のポイントとなる温度の影響について同様に成膜を行なった。その結果が図3である。因みにこの時の膜厚は500nm一定で成膜時の圧力は1Paとした。これから判るように連続成膜を行なったNiFe,CoTaZr共に基板温度の高いほうが急激に表面粗さが大きくなり、分割成膜(ここでは5分割)した場合にも温度の高いほうがやはり粗さは大きくなる傾向にある。つまり、基板温度が低く分割成膜することで一度の成膜での温度上昇を押さえる事で表面粗さは十分に低減できるとともに、高温、連続成膜においても従来例にようなRa5nmの大きさの表面粗さは生じない。本実施の形態では、分割成膜する場合の基板温度を20℃〜200℃の範囲としており、この範囲においては、媒体表面の保護膜の表面粗さRaを0.6nm以下に低減することができる。このとき、軟磁性膜がCoTaZrの場合には、表面粗さRaを0.3nm以下に低減することができる。また更に、分割成膜する場合の基板温度を20℃〜100℃とした場合には、表面粗さRaを0.5nm以下に低減することができ、磁気ヘッドの浮上量が7nm以下である場合でも、安定したヘッド走行制御が可能な磁気記録媒体を提供できる。
【0011】
次に成膜時のAr圧力の依存性を確認した。その結果が図4である。この時の材料はNiFeで、膜厚は500nm一定とし基板温度は常温とした。この結果から成膜時の圧力は低いほうが表面粗さRa,Rp共に低減できる事が判る。更に同様に分割回数を変化させ成膜を行なった。その結果が図5である。この時の成膜圧力は1Paで膜厚は500nmとし、基板温度は常温とした。分割回数は1〜20回で行なった。図5より分割回数が3回以上では急激に表面粗さが低減され10回以上ではほぼ一定となり変化しない事が判る。
【0012】
以上の本発明の検討結果から、従来例のような分離層を挟んだ複雑な構造を取ること無く表面粗さを低減する方法により、軟磁性膜が1層で、膜厚が厚くとも従来例に比べ、一桁以上表面性の良い磁気記録媒体が供給できる。また、成膜装置によって基板温度の上昇による、表面粗さの発生状況は異なるが一般的にターゲットと基板との距離(以下T/S距離)が遠いほど、投入パワーが小さいほど(成膜速度が小さいほど)、成膜時の圧力が低いほど表面粗さは小さくなる傾向を示す。従って、より効果的に表面粗さを低減するにはこれらのファクターを適正化することが必要となる
次に垂直媒体の層構成として以下に示す内容で総合成膜を行い、軟磁性層の膜厚のみを変化させてサンプリングした。サンプリングに当たっては、まず、基板としてHOYA社製ガラス基板:OD:φ65mm×ID:φ20mm×0.635mmt、Ra:0.312nm、Rp:3.321nmをアルカリ、超音波純水洗浄を行い、IPA(イソプロピルアルコール)蒸気洗浄乾燥を施した後、シード層としてCoCrZr:30nm、下地層としてCoCr:5nm、反強磁性層としてMnPt:30nm、軟磁性層としてNiFeを:50から500nm成膜を行ない、その後、下地層と磁性層をそれぞれCoCr:7nm、CoCtPtB:15nm成膜した。保護膜としてはDLC(ダイヤモンドライクカーボン膜)をRF−CVDで5nm成膜した。本実施例に於いては軟磁性層以外は成膜時の圧力を9.3E-1Pa一定とし、軟磁性層は0.6Pa一定で行なった。また、軟磁性層の分割数は1〜10とした。
【0013】
この結果が図8である。この検討結果より、垂直媒体の全構成が入っていても軟磁性膜の膜厚及び分割数は表面粗さに影響しており、分割数が多いほど、膜厚が薄いほど表面粗さRaは小さくなる事が判る。以上の結果から磁気ディスクとしての浮上性を確保するための表面粗さとして磁気ヘッドの浮上量を6nm以下を想定すると表面粗さRaは大凡0.8nm以下が望ましい。この為には成膜膜厚が200nm以下の場合には分割数を3以上10までで、200nmを超す場合には5以上10までが望ましい。更に生産性を考慮すると分割数は多いほどターゲット一枚当たりの成膜膜厚の低減が可能となるため、分割数を5以上10までにするのが最良である。
【0014】
以上の検討結果を纏めると軟磁性膜の成膜に際しては基板温度上昇を防止し、媒体表面の表面粗さを0.8nm以下に低減する為に基板温度は100℃以下、成膜時圧力はスパッタ電極の能力によるが極力低く(本検討では0.7Pa以下)、分割回数は総じて3〜10にする事が、より、磁気ヘッドの浮上性を確保し信頼性の高い磁気ディスクを得る事になる。
【0015】
次に図8で行なったと同じ方法でサンプリングを行い、浮上性の評価を行なった。その時の軟磁性膜の諸条件と表面粗さ、ピークカウント(2nmでスライスした場合の突起の数)、及び磁気ヘッド浮上性の歩留りを評価した。浮上性は磁気ヘッドの浮上量を5nmとし、メディアの全面(R15-31の両面)を評価し、磁気ヘッドと円板面の突起とが接触した時の信号をピエゾ素子を搭載した磁気ヘッドにて評価した。この浮上性の目安としては5個以下とした。
【0016】
評価結果及び諸条件を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0004072417
【0018】
この結果からやはり、上述の検討結果と同様の傾向で軟磁性膜の成膜時の圧力は低く、分割数は多いほうが浮上性は良好であり、比較例のように単に表面粗さがRa0.8nmを達成していたとしてもピークカウント数、表面粗さRpが大きくなる物は浮上歩留りが落ちている事が明白である。
【0019】
これらから、分割して成膜した本発明の媒体においては、いずれもRa:0.33nm以下、Rp:3.5nm以下でほぼ基板の表面粗さと同等であり、1回で成膜した比較例1、2、3に於いてはいずれも明らかに粗いことが判る。従って、本発明で成膜した媒体は分割成膜することで極低浮上に耐えうる表面粗さを保持しうることが判った。更にAFMの結果からPeakCount数を解析した結果、本実施の形態では数個レベルに対して比較例では100個以上と多い事が判る。これを反映して磁気ヘッド浮上量:5nmでは本発明品の歩留りが95%以上であるのに対し比較例では数十%とほとんどが極低浮上に対応できないことが明確である。
【0020】
更に、本発明では軟磁性層としてCoTaZrのアモルファス膜を同様に成膜したが同様の効果を得ることが出来ることを確認できた。また、磁性層としてCo/Pdの積層膜(超格子膜):40bi-Layerを用いた場合においてもこの効果は得られることを確認している。
【0021】
従って、本発明の効果は層構成、材料の違いに依らず、実施例のみに限定される物ではない。
図6に本発明の実施例で行なった垂直媒体の層構成の一例を示した。下から順に1-ガラス基板,2-シード層,3-下地層1,4-反強磁性層,5-軟磁性層,6-下地層、7-磁性層,8-保護膜層の構成になっており,図2-Bでは磁性層が9-超格子磁性層からなる場合である。
【0022】
【発明の効果】
以上の本発明の方法によれば媒体の表面粗さを低減でき浮上歩留りを95%以上確保でき、且つ、成膜タクトが成膜速度を落とさずに短く出来ることから大幅な生産性の確保が可能となる。特に垂直媒体における軟磁性層のような厚い膜の成膜に対しては最も有効な手段である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で使用した成膜装置概略図
【図2】表面粗さの膜厚依存性
【図3】表面粗さの基板温度依存性
【図4】表面粗さの成膜時圧力依存性
【図5】表面粗さの分割数依存性
【図6】本発明の垂直媒体の層構成例
【図7】本発明の実施例での磁気ディスク製造フローチャート
【図8】本発明の実施例での軟磁性膜成膜条件と表面粗さの評価結果
【符号の説明】
1-ガラス基板,2-シード層,3-下地層1,4-反強磁性層,5-軟磁性層、5a〜5e−軟磁性層5の分割成膜状態を示す。6-下地層,7-磁性層,8-保護膜層、9-超格子磁性層

Claims (3)

  1. 非磁性基板上にシード層、下地層、反強磁性層、軟磁性層、下地層、磁性層、保護膜層を少なくとも有する垂直磁気記録媒体の製造方法において、膜厚が50から200nmの範囲にありアモルファスである該軟磁性層の成膜を、前記非磁性基板を20℃〜200℃の温度条件で分割して行い、媒体表面の表面粗さRaを0.6nm以下に形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
  2. 請求項1の磁気記録媒体の製造方法において、前記軟磁性層はCoTaZrであることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
  3. 請求項の磁気記録媒体の製造方法において、該軟磁性層の成膜を行う際の分割数を3から10の範囲とすることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
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