JP4069317B2 - 工作機械の主軸軸受潤滑装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械において、ハウジングに対して主軸を回転自在に支持する主軸軸受に潤滑油を供給する主軸軸受潤滑装置に関する。なお、この明細書において、図1の左側を前、右側を後というものとする。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
工作機械の高速で回転する主軸を支持する玉軸受やころ軸受などの主軸軸受の潤滑は、オイルエア潤滑やオイルミスト潤滑などの方式により、連続的に主軸軸受に潤滑油を供給することにより行われている。
【0003】
従来、このような潤滑方式に用いられる主軸軸受潤滑装置としては、ハウジングと、ハウジングに対して主軸を回転自在に支持する複数の主軸軸受と、各主軸軸受に対応するようにハウジングに取り付けられかつ潤滑油供給口および主軸軸受を向いた潤滑油噴出口を有する主軸軸受と同数のノズルとを備えており、全てのノズルの潤滑油噴出口が、主軸軸線と平行な1直線上に長手方向に間隔をおいて位置させられているものが知られている。
【0004】
ところで、オイルエア潤滑やオイルミスト潤滑などの潤滑方式では、微量の潤滑油を空気で搬送して主軸軸受に供給しているため、主軸軸受の固定輪である外輪における空気が当たる部分およびその近傍が空気により冷却され、このような部分では外輪の他の部分に比べて発熱量が少なくなって熱膨張量も小さくなる。また、固定ハウジングにおける外輪の空気により冷却される部分およびその近傍と接触している部分の発熱量も、固定ハウジングの他の部分に比べて発熱量が少なくなって熱膨張量も小さくなる。このような外輪および固定ハウジングの発熱量および熱膨張量のアンバランスは、主軸が一定回転速度で回転する場合には、回転開始後一定時間が経過すると解消されるようになっている。
【0005】
しかしながら、従来の装置においては、全てのノズルの潤滑油噴出口が、主軸軸線と平行な1直線上に長手方向に間隔をおいて位置させられているので、上記アンバランスが解消されるまでにおいては、全ての外輪および固定ハウジングの熱膨張量が小さい部分は、主軸の周方向に関して同一位置にくることになる。したがって、主軸が傾き、加工精度が低下するという問題があった。
【0006】
このような問題の発生を防止するために、従来の装置では加工を始める前にウォームアップ運転が行われている。しかしながら、ウォームアップ運転のためにトータルの加工時間が長くなるという問題がある。また、加工の種類によっては加工中に主軸の回転数を変化させる必要があり、この場合主軸軸受の発熱量が変化して上記アンバランスが発生するので、このアンバランスが解消されるまで加工を中止しているが、この場合にもトータルの加工時間が長くなるという問題がある。したがって、加工中に主軸の回転数を変化させる場合には、加工精度を犠牲にして加工を続けているのが現状である。
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、従来の主軸軸受潤滑装置を用いた場合に比べて、主軸による加工精度を高めることができるとともに、トータルの加工時間を短縮することができる工作機械の主軸軸受潤滑装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段と発明の効果】
請求項1の発明による工作機械の主軸軸受潤滑装置は、ハウジングと、前後方向に間隔をおいて配されかつハウジングに対して主軸を回転自在に支持する複数の主軸軸受とを備えた工作機械の主軸装置において、前後方向に間隔をおいてハウジングに取り付けられかつ潤滑油供給口および潤滑油噴出口を有する主軸軸受と同数のノズルを備え、各主軸軸受に対応してノズルが1つずつ配置されているとともに各ノズルの潤滑油噴出口が各主軸軸受に向いている工作機械の主軸軸受潤滑装置であって、全てのノズルの潤滑油噴出口が、主軸軸線の周りに周方向に間隔をおいて位置していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明の装置によれば、主軸の回転開始時や回転数変化時などに潤滑油搬送空気による冷却効果によって、主軸軸受の外輪および固定ハウジングに主軸の周方向に発熱量および熱膨張量のアンバランスが発生したとしても、全てのノズルの潤滑油噴出口が、主軸軸線の周りに周方向に間隔をおいて位置しているので、全ての主軸軸受の外輪および固定ハウジングについては、熱膨張量の小さい部分は主軸の周方向に関してずれることになる。したがって、主軸が傾くことを抑制することができ、主軸による加工精度の低下を防止することが可能になる。また、加工を始める前のウォームアップ運転や回転数が変化した後の加工中止時間を短縮または不要にすることが可能になり、トータルの加工時間が短縮される。
【0010】
請求項1の発明による工作機械の主軸軸受潤滑装置において、全てのノズルの潤滑油噴出口が、主軸軸線の周りに周方向に等間隔をおいて位置していることが好ましい。この場合、主軸の回転開始時や回転数変化時の主軸の傾き防止効果が一層顕著になる。
【0011】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1および図2はこの発明による潤滑装置を備えた工作機械における主軸の前部を示し、図3は1つのノズルの部分を拡大して示し、図4は潤滑装置のノズルおよび潤滑油供給パイプの配置を示す。
【0013】
図1および図2において、工作機械の主軸(1)の前部は、前後方向に間隔をおいて配された複数、ここでは4つの主軸軸受(2A)(2B)(2C)(2D)によって、固定ハウジング(3)に対して回転自在に支持されている。この例の場合、主軸軸受(2A)〜(2D)は全てアンギュラ玉軸受である。以下、前端に位置するものから第1〜第4主軸軸受(2A)〜(2D)と称する。各主軸軸受(2A)〜(2D)の内輪(2a)は主軸(1)の外周に固定されており、前後方向に隣接する内輪(2a)間には位置決め用内側カラー(4)(5)(6)が配されている。各主軸軸受(2)の外輪(2b)は固定ハウジング(3)の内周に固定されており、前後方向に隣接する外輪(2b)間には位置決め用外側カラー(7)(8)(9)が配されている。以下、第1主軸軸受(2A)と第2主軸軸受(2B)の外輪(2b)間に位置する外側カラー(7)を第1外側カラー、第2主軸軸受(2B)と第3主軸軸受(2C)の外輪(2b)間に位置する外側カラー(8)を第2外側カラー、第3主軸軸受(2C)と第4主軸軸受(2D)の外輪(2b)間に位置する外側カラー(9)を第3外側カラーとそれぞれ称する。
【0014】
主軸軸受(2)の潤滑装置は、各主軸軸受(2)に対応するように前後方向に間隔をおいてハウジング(3)に取り付けられ、かつ潤滑油供給口(10a)および主軸軸受(2A)〜(2D)を向いた潤滑油噴出口(10b)を有する主軸軸受(2)と同数のノズル(10A)(10B)(10C)(10D)を備えている(図4参照)。
【0015】
固定ハウジング(3)の周壁には、主軸(1)軸線方向に関して第1外側カラー(7)、第2外側カラー(8)の前端部および後端部、ならびに第3外側カラー(9)に対応した位置であって、かつ主軸(1)軸線の周りに周方向に等間隔をおいた位置に、それぞれ主軸(1)の径方向に伸びるノズル挿入用貫通穴(11)が形成されている。これらのノズル挿入用貫通穴(11)内に、それぞれノズル(10A)(10B)(10C)(10D)が外側から挿入されて固定ハウジング(3)に固定されている。以下、前端に位置するものから第1〜第4ノズル(10A)(10B)(10C)(10D)と称する。各ノズル(10A)(10B)(10C)(10D)の主軸(1)径方向の内端部は、外側カラー(7)(8)(9)を貫通して内外両カラー(4)(5)(6)(7)(8)(9)間に突出している。各ノズル(10A)(10B)(10C)(10D)の内外両カラー(4)(5)(6)(7)(8)(9)間への突出部に潤滑油噴出口(10b)が形成されている(図3参照)。第1ノズル(10A)の潤滑油噴出口(10b)は第1主軸軸受(2A)に、第2ノズル(10B)の潤滑油噴出口(10b)は第2主軸軸受(2B)に、第3ノズル(10C)の潤滑油噴出口(10b)は第3主軸軸受(2C)に、第4ノズル(10D)の潤滑油噴出口(10b)は第4主軸軸受(2D)にそれぞれ向いている。潤滑油供給口(10a)は、各ノズル(10A)(10B)(10C)(10D)の周壁における前側部分に潤滑油噴出口(10b)と連通するように形成されている(図3参照)。
【0016】
固定ハウジング(3)の周壁に、一端が各ノズル挿入用貫通穴(11)の内周面に開口するとともに他端が固定ハウジング(3)の外周面に開口したパイプ挿通穴(12)が、主軸(1)軸線の周りに周方向に間隔をおいてノズル(10A)(10B)(10C)(10D)と同数形成されている。各パイプ挿通穴(12)は、各ノズル挿入用貫通穴(11)の内周面から前方に伸びて固定ハウジング(3)の前端部に至る第1の部分(12a)と、固定ハウジング(3)の前端面と固定ハウジング(3)の前端に固定された蓋(13)の後面との間に形成されかつ第1部分(12a)の前端に連なって主軸(1)の周方向に伸びる第2の部分(12b)と、第2部分(12b)の先端に連なって後方に伸びかつ第4主軸軸受(2)の後方に至る第3の部分(12c)と、第3部分(12c)の後端に連なって主軸(1)の径方向外方に伸びかつ固定ハウジング(3)の外周面に開口した第4の部分(12d)とよりなる。
【0017】
各パイプ挿通穴(12)内に、可撓性を有する潤滑油供給パイプ(14)が、パイプ挿通穴(12)における固定ハウジング(3)外周面への開口側から通され、その先端部が各ノズル挿入用貫通穴(11)の内部に突出させられ、各ノズル(10A)(10B)(10C)(10D)の潤滑油供給口(10a)に密に差し込まれて固定されている(図4参照)。なお、潤滑油供給パイプ(14)は、パイプ挿通穴(12)の固定ハウジング(3)外周面への開口内にはめ入れられた止め具(15)により固定ハウジング(3)に固定されている。
【0018】
上記構成の主軸軸受(2)潤滑装置において、潤滑油供給ユニットから搬送用空気とともに供給された潤滑油は、供給パイプ(14)を通って潤滑油供給口(10a)からノズル(10A)(10B)(10C)(10D)内に送り込まれ、潤滑油噴出口(10b)から各主軸軸受(2A)(2B)(2C)(2D)に噴射される。
【0019】
主軸(1)の回転開始時または回転数変化時に、主軸軸受(2A)(2B)(2C)(2D)の固定輪である外輪(2b)における空気が当たる部分およびその近傍が空気により冷却されることにより、空気が当たる部分およびその近傍の発熱量および熱膨張量が他の部分に比べて少なくなる。また、固定ハウジング(3)における外輪(2b)の空気により冷却される部分およびその近傍と接触している部分の発熱量および熱膨張量も、固定ハウジング(3)の他の部分に比べて少なくなる。ところが、全てのノズル(10A)(10B)(10C)(10D)の潤滑油噴出口(10b)が、主軸(1)軸線の周りに周方向に等間隔をおいて位置しているので、全ての主軸軸受(2A)(2B)(2C)(2D)の外輪(2b)および固定ハウジング(3)の熱膨張量の小さい部分は、主軸(1)の周方向に関して等間隔をおいてずれることになる。したがって、主軸(1)が傾くことを抑制することができ、主軸(1)による加工精度の低下を防止することが可能になる。また、加工を始める前のウォームアップ運転や回転数が変化した後の加工中止時間を短縮または不要にすることが可能になり、トータルの加工時間が短縮される。
【0020】
上記の実施形態においては、ノズル(10A)(10B)(10C)(10D)の潤滑油噴出口(10b)は、主軸(1)軸線の周りに周方向に等間隔をおいて位置しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、固定ハウジングに取り付けられる他の部品や、ハウジング冷却用の冷却液を循環させる流路、配線、配管の配置などに応じて、ノズルの位置を多少周方向にずらして配置した場合にも、ほぼ同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による主軸軸受潤滑装置を備えた工作機械の主軸前部を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】ノズルおよび潤滑油供給パイプの配置を示す一部を省略した斜視図である。
【符号の説明】
(1):主軸
(2A)(2B)(2C)(2D):主軸軸受
(3):固定ハウジング
(10A)(10B)(10C)(10D):ノズル
(10a):潤滑油供給口
(10b):潤滑油噴出口
Claims (1)
- ハウジングと、前後方向に間隔をおいて配されかつハウジングに対して主軸を回転自在に支持する複数の主軸軸受とを備えた工作機械の主軸装置において、前後方向に間隔をおいてハウジングに取り付けられかつ潤滑油供給口および潤滑油噴出口を有する主軸軸受と同数のノズルを備え、各主軸軸受に対応してノズルが1つずつ配置されているとともに各ノズルの潤滑油噴出口が各主軸軸受に向いている工作機械の主軸軸受潤滑装置であって、全てのノズルの潤滑油噴出口が、主軸軸線の周りに周方向に間隔をおいて位置していることを特徴とする工作機械の主軸軸受潤滑装置。
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