JP4068901B2 - 表面機能性部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は表面機能性部材に関し、詳細には、粗面化部材、導電性部材、遮光部材など、各種機能性微粒子を吸着してなる機能性の表面層を有する応用範囲の広い表面機能性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、任意の基材に機能性の微粒子を吸着させて各種の機能を有する表面層を形成した部材が種々提案されている。微粒子吸着表面層を有する部材としては、例えば、樹脂や金属製の微細な粒子により凹凸を形成した反射防止部材、導電性の微粒子を吸着させた導電性部材、抗菌性の金属(酸化物)微粒子を吸着させた防汚・抗菌性部材、微粒子の積層構造を利用して気体の透過性を低下させるガスバリアフィルム、紫外線、赤外線、或いは可視光を遮断する微粒子材料を用いた遮光性部材などが挙げられる。
【0003】
その代表的なものとして粗面化部材について述べれば、所定の微細な凹凸を有する粗面化部材は、界面における屈折率を制御し、光の反射を防止しうる材料として有用である。
近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、カソードレイチューブディスプレイ(CRT)、エレクトロルミネッセンス(EL)ランプなどに代表される画像表示体(ディスプレイ)が、テレビ、コンピューターや近年普及してきた各種モバイル装置など、様々な分野で広く用いられるようになってきており、目覚ましい発展を遂げている。ディスプレイは使用される各種装置の機能向上に伴い、高画質化、低消費電力化などの要求が高まっている。高画質化としては、映像の画素密度の向上、鮮やかな色調の実現などとともに、ディスプレイ表面への照明などの光の映り込みを防止する反射防止能も重要な要素となっている。
特に、近年普及が著しい携帯端末用ディスプレイは当然屋外での使用も想定され、従来にも増して、太陽光や蛍光等の外部光のディスプレイへの映り込みを防止する、高い反射防止能に対する要求も高まっている。
また、軽量、コンパクト、汎用性等の特徴を有するLCDが広く使用されている。これらのこれらモバイル装置(携帯端末)にはタッチパネル式の入力、即ち、ディスプレイ表面の所定領域をプラスチックのペンや指で直接触れて操作する方式が広く使用され、ディスプレイ表面は画質、反射防止能のみならず、耐磨耗性等の耐久性、汚れ防止性などの特性も重要になってきている。
【0004】
反射防止に関しては、従来、光の入射面を粗面化し、光を散乱もしくは拡散させる手法が一般的に行われている。粗面化処理としては、基材表面をサンドブラスト法、エンボス法等により直接粗面化する方法や基材表面にフィラーを含有させた塗布液を塗布、乾燥して粗面化層を設ける方法などが用いられている。
なかでも、基材表面にフィラーを含有させた粗面化層を設ける方法が、粗面化面の凹凸の大きさの制御性、製造容易である点から、現在、汎用されている。
例えば、特開平6−18706号公報には、耐熱性に乏しい高透明なプラスチックフィルムに適合する目的で、UV硬化型樹脂と樹脂ビーズを構成要素とする粗面化層が提案されている。
また、さらに、耐摩耗性に優れたシリカ等の無機顔料を樹脂ビーズの代わりに使用する提案もなされているが、かかる無機顔料は分散性に問題があり、均一な粗面化層が形成しがたいという問題もでてくる。そこで、例えば、特開平11−287902号には、シリカと分散性の良好な樹脂フィラーからなる2種類の顔料を用いた粗面化層も提案されている。
しかしながら、これらの方法はいずれも、凹凸を形成するためのフィラーをバインダーで基材上に塗布して形成する方法であり、バインダーの影響でフィラーの凹凸が緩和され、設計値どおりの反射防止能が得難いという問題をはらんでおり、また、フィラーの凹凸効果を向上させるためにバインダーを希釈したり使用量を低下させると膜強度が低下し、耐久性に問題がでてくる虞がある。
【0005】
反射防止層を形成する他の方法としては、屈折率の高い材料と低い材料を交互に積層し、多層化する方法が知られている。多層構造を形成する方法としては、具体的には、SiO2に代表される低屈折率材料と、TiO2、ZrO2等の高屈折率材料を交互に蒸着等により成膜する気相法や、金属アルコキシドの加水分解、縮重合を利用したゾルゲル法等が挙げられる。
これらの多層構造の反射防止層を形成する方法は、蒸着等の気相法による場合には、加工装置が高価であり、また、大きな面積のものは製造し難い、ゾルゲル法による場合は、塗布、焼成を繰り返すこと等の理由から製造コストが高価であるうえ、得られる反射防止層が紫や緑系統の色を呈しているため、汚れが目立つなどの問題があった。
【0006】
ディスプレイの解像度が向上するに伴い、上記粗面化層の凹凸の高さや間隔にもさらなる緻密化が要求されるようになってきた。画像の高画質化は画素の高密度化により達成しうるが、凹凸の間隔がこの画素のピッチより大きい場合は干渉によるギラツキが発生しやすく、所望の反射防止性が得られないことから、粗面化層の凹凸の高さ及び間隔をばらつきがでないように制御し、画像表示体の面積にかかわらず、均一で反射防止能の高い反射防止層が所望されている。
【0007】
以上、反射防止部材を例に挙げて説明した通り、種々の機能を有する微粒子を所望の基材表面に吸着させて耐久性に優れる機能性表面層を形成することは困難であった。例えば、N.J.Nattan、M.Brustらによって、マイナスに帯電したコロイド状の金微粒子を酸化ケイ素基材表面に吸着させ、リンカーとしてアミノプロパンチオールなどを用いて架橋構造を形成することにより固定化し、そのプロセスを複数回繰り返すことにより基材表面に金微粒子を多層吸着させる方法が提案されているが、この技術は複雑なプロセスを要するため、実用的な粒子吸着層の形成には適用し難い。
また、塗布法によっては、機能性表面層の形成に用いられた機能性微粒子が有する機能がバインダーなどにより阻害され、設計値どおりの機能を発現させることが困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような先行技術の欠点を考慮した本発明の目的は、表面に機能性微粒子が単層、或いは積層状態で強固に吸着してなる、耐久性に優れた微粒子吸着層を有し、吸着された機能性微粒子の効果が持続する表面機能性部材を提供することにある。本発明の他の目的は、上記特性を有し、且つ、多層構造の微粒子吸着層を容易に形成し得る表面機能性部材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、グラフトポリマーを表面に有する基材の特性に着眼し研究を進めた結果、グラフトポリマーに極性基を導入することで、該極性基との相互作用を形成し得る物性を有する微粒子に対して強い吸着性を有し、高密度で特定の物性を有する微粒子を配列、吸着しうることを見出し、これを利用することで微粒子の有する優れた機能を生かした微粒子吸着層が得られることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明の紫外線吸収部材は、極性基を有するグラフトポリマー鎖が存在する表面を有する支持体上に、該極性基と結合しうる金属酸化物微粒子を吸着してなる微粒子吸着層を設けたことを特徴とする。
ここで、金属酸化物微粒子を吸着させるための極性基を有するグラフトポリマー鎖は、支持体表面にグラフト重合により導入されることが好ましい態様である。また、極性基としては、イオン性基が好ましい。
【0010】
本発明の作用は明確ではないが、本発明においては支持体上に極性基が導入され、その表面上に該極性基と何らかの相互作用を形成し結合し得る物性を有する、金属酸化物などの任意の機能性微粒子が高密度で均一に充填された層を形成し、結果として、バインダーを用いることなく微粒子による表面層が形成され、該表面は微粒子の形状、或いはそれが有する機能をそのまま反映した微粒子吸着層が設けられ、例えば、均一な凹凸形状を呈する粗面化層や、導電性微粒子による導電層などの機能性の表面層が形成され、この表面層が優れた機能を発現し得る。また、表面にある極性基とそれと吸着し得る微粒子間が静電的な引力などの相互作用により強固に吸着しているため、耐摩耗性が増大し、微粒子吸着層の高い耐久性が発現したものと推定される。
【0011】
このような構造の微粒子吸着層の存在は、外観的には、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察し、或いは、その断面を走査型電子顕微鏡で観察し、表面の緻密な凹凸形状、或いは、微粒子の積層状態が形成されていることなどによりその構造を確認することができる。また、機能性の微粒子の発現する物性を測定することで、微粒子からなる機能性層の存在を確認することもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面機能性部材は、支持体の少なくとも片面に極性基を有するグラフトポリマー鎖が存在し、そのような極性基を有する表面は、一般的に表面グラフト法により作成されたものであることが好ましい。また、反射防止フィルムや赤外線吸収フィルムなどの光透過型部材を得ようとする場合には、この支持体の基材として透明基材を用いることが好ましい。
【0013】
〔極性基を表面に導入した基材〕
表面グラフト法により作成された、極性基を有するグラフトポリマー鎖が存在する表面とは、基材を構成する高分子表面上に光、電子線、熱などの従来公知の方法にて極性基を有するモノマーをグラフトし、或いは、極性基を有するマクロマー、ポリマーなどが支持体表面に結合し、極性基を有する表面を形成した状態を指す。また、極性基としては、ある種の金属微粒子と相互作用を形成して吸着するカルボニル基、アミド基、ヘテロ原子を有する芳香環などヘテロ結合を有する官能基、或いは,静電気的な相互作用を形成するイオン性基などが挙げられ、イオン性基が好ましい。これを例に挙げて説明するに、例えば、イオン性基を形成するイオン性モノマーとしては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、もしくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマー等が挙げられる。
【0014】
フィルム基材などの支持体上に極性基を有するグラフトポリマー鎖を導入する方法としては、公知の方法を適用すればよく、具体的には、例えば、日本ゴム協会誌,第65巻,604,1992年,杉井新治著,「マクロモノマーによる表面改質と接着」の記載を参考にすることができる。その他、以下に述べる表面グラフト重合法と呼ばれる方法を適用することもできる。
表面グラフト重合法とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
【0015】
本発明を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203,p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
表面グラフトポリマーを有する表面を作成するための手段としてはこれらの他、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基材表面官能基とのカップリング反応により形成することもできる。
【0016】
プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY.Ikada et al, Macromolecules vol. 19, page 1804(1986)などの記載の方法にて作成することができる。具体的にはPETなどの高分子表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面とイオン性官能基を有するモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層、即ち、イオン性基を有する表面層を得ることができる。
光グラフト重合は上記記載の文献のほかに特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)記載のように、フィルム基材の表面に光重合性組成物を塗布し、その後イオン性ラジカル重合化合物とを接触させ光を照射することによっても作成することができる。
【0017】
本発明において好適に用い得る極性基であるイオン性基を形成し得るイオン性モノマーとは、前記したように、アンモニウム,ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーもしくはスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマーが挙げられる。
本発明においてとくに有用なイオン性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン酸塩、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレートもしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、アシッドホスホオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのリン酸モノマーもしくはそれらのアルカリ金属及びアミン塩、などを使用することができる。
【0018】
ここで得られた表面機能性部材を粗面化部材として反射防止材料に使用する場合、高密度画素を備えた高解像度用の画像表示体、モバイルに用いられる小型で高解像度の画像表示体においては、形成する表面凹凸性状を制御するため表面平滑性の透明基材を用いることが好ましいが、マクロの反射防止能をより向上させるためには、表面積を増加させてより多くのイオン性基の導入を図る目的で、基材表面を予め粗面化することも可能である。
基材を粗面化する方法としては基材の材質に適合する公知の方法を選択することができる。具体的には、例えば、基材が樹脂フィルムの場合には、グロー放電処理、スパッタリング、サンドブラスト研磨法、バフ研磨法、粒子付着法、粒子塗布法等が挙げられる。また、基材がアルミニウム板のような金属板の場合には、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法などが適用でき、機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0019】
〔極性基と相互作用を形成し結合しうる物性を有する微粒子〕
1.微粒子
次に、前記極性基と結合しうる物性を有する微粒子について説明する。用いられる微粒子は、機能性表面の目的に応じて適宜選択すればよい。また、微粒子の粒径も目的に応じて選択することができる。本発明の好ましい態様においては、微粒子はイオン的に吸着するため、微粒子の表面電荷、イオン性基の数により、粒径や吸着量が制限されることはいうまでもない。粒径は、一般的には0.1nmから1μmの範囲であることが好ましく、1nmから300nmの範囲であることがさらに好ましく、5nmから100nmの範囲であることが特に好ましい。
本発明においては、グラフト界面と相互作用により結合する粒子は、極性基としてイオン性基を挙げて説明するに、イオン性基の存在状態に応じて、規則正しくほぼ単層状態に配置されたり、長いグラフト鎖のそれぞれのイオン性基にナノスケールの微粒子が一つづつ吸着し、結果として多層状態に配列されたりする。
【0020】
次に、本発明に用い得る機能性の微粒子について、表面機能性部材の目的に応じて説明する。
1−1.反射防止部材用微粒子
本発明の機能性部材を反射防止部材として用いる場合には、機能性微粒子として、金属酸化物微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を用いることが好ましい。このような微粒子を用いることで、画像表示体表面へ好適に用いられる、均一で優れた反射防止能を有し、画像コントラストを低下させることなく鮮明な画像を得ることができ、優れた耐久性を達成し得る反射防止材料に好適に用い得る粗面化部材を提供することができる。
【0021】
金属酸化物微粒子としては、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)などが好適なものとして挙げられる。また、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク等のいわゆる透明顔料、白色顔料と呼ばれる顔料微粒子なども以下に述べる好ましい形状を有するものであれば使用することができる。
この用途においては、微粒子の粒径は、100nmから300nmの範囲であることが好ましく、100nmから200nmの範囲であることがさらに好ましい。本態様においては、グラフト界面とイオン的に結合する粒子は規則正しくほぼ単層状態に配置される。本発明の粗面化部材を特に反射防止材料として用いる場合には、反射を防止すべき波長(λ)に対して、λ/4となるように膜厚を制御することが効果の観点からは好ましく、微粒子の粒径は粗面化層の膜厚とほぼ同一になることを考慮すれば、粒径が100nmよりも小さくなると、粗面化層が薄くなりすぎて反射防止性が低下する傾向にあり、また、300nmよりも大きくなると、拡散反射が大きく、白濁が著しくなるため、透明感が得がたく、且つ、グラフト界面とイオン的に結合する接触面積が小さくなりすぎて、粗面化層の強度が低下する傾向がでてくる。
【0022】
1−2.導電膜用微粒子
本発明の機能性部材を導電膜として用いる場合には、機能性微粒子として、導電性樹脂微粒子、導電性或いは半導体の金属微粒子、金属酸化物微粒子、及び、金属化合物微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を用いることが好ましい。
導電性金属微粒子又は金属酸化物微粒子としては、比抵抗値が1×103Ω・cm以下の導電性金属化合物粉末であれば幅広く用いることができ、具体的には、例えば、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの単体とその合金の他、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化ルテニウム(RuO2)、などを用いることができる。
また、半導体としての特性を有する金属酸化物、金属化合物微粒子を用いてもよく、例えば、In2O3、SnO2、ZnO、Cdo、TiO2、CdIn2O4、Cd2SnO2、Zn2SnO4、In2O3−ZnOなどの酸化物半導体微粒子、及びこれらに適合する不純物をドーパントさせた材料を用いた微粒子、さらには、MgInO、CaGaOなどのスピネル形化合物微粒子、TiN、ZrN、HfNなどの導電性窒化物微粒子、LaBなどの導電性ホウ化物微粒子などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
1−3.表面抗菌性材料用微粒子
本発明の機能性部材を抗菌性材料として用いる場合には、機能性微粒子として、抗菌作用、殺菌作用を有する金属或いは金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。
このような金属(化合物)微粒子を形成し得る材料としては、具体的には、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)などの殺菌性を有する金属単体と、これらを1種以上含有するその合金、或いはこれらの金属酸化物が挙げられる。また、金属化合物半導体であって、蛍光灯や太陽光など紫外領域の波長を含む光の照射によって殺菌作用を発現する酸化チタン、酸化鉄、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム等、及び、これらを白金、金、パラジウム、銀、銅、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオブ、スズなどで修飾した金属化合物などが挙げられる。
【0024】
1−4.紫外線吸収部材用微粒子
本発明の機能性部材を紫外線吸収部材として用いる場合には、機能性微粒子として、例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化クロム、酸化錫、酸化アンチモン等の金属酸化物微粒子を用いることが、紫外線A,B領域(光波長280〜400nm)における高い遮蔽機能を有するため好ましい。本発明において、基材として高分子化合物を用い、これと複合化することにより紫外線遮蔽フィルム・シートとしての高い機能と加工性が発現され、種々の応用が期待される。また、金属酸化物の紫外線遮蔽効果を利用して高分子素材の耐光性を改良することも期待される。
【0025】
1−5.光学材料用微粒子
光学機器に用いられるカラーフィルター、シャープカットフィルター、非線形光学材料などに用いる機能性微粒子としては、CdS、CdSe等の半導体又は金等の金属からなる微粒子が挙げられ、基材としてシリカガラス又はアルミナガラスを用いることで、カラーフィルターなどに好適に用いられるのみならず、3次の光非線形感受率が大きいことが確認されてから、光スイッチ、光メモリ用材料などの非線形光学材料として期待される。ここで用いられる微粒子としては、具体的には、金、白金、銀、パラジウム等の貴金属又はその合金等が挙げられ、安定性の観点から、金、白金等のアルカリによって急激に溶解することのない物質等が好適に挙げられる。
【0026】
また、非線形光学材料として好適な金属(化合物)の超微粒子としては、具体的には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)などの単体と、これらを1種以上含有するその合金であって、10〜1000オングストロームの平均粒子径を有する超微粒子が挙げられる。なお、この粒子径は1次粒子、2次粒子のいずれであってもよいが、可視光を散乱させないものが好ましい。なかでも、トルエン等の溶剤中に独立分散した粒径10nm以下の、Au,Pt,Pd,Rh,Agから選ばれた貴金属微粒子、あるいはTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Cd,Y,W,Sn,Ge,In,Gaから選ばれた金属微粒子が好適に挙げられる。
【0027】
これらの超微粒子を用いて、通常の方法、即ち、ゾル−ゲル法、含浸法、スパッタ法、イオン注入法、あるいは溶融析出法などにより非線形光学材料を作成する場合、微粒子が非常に凝集しやすいため、複合物中の微粒子濃度を増加させることが困難となったり、生産性が低下する、などの問題が生じていた。特に、微粒子の濃度が低く、物理特性に微粒子の寄与する割合が小さいものは、用途が限定され、3次の非線形光学効果を利用した画像メモリ、光集積回路などには不向きであった。本発明の構成によれば、微粒子は基材表面のイオン性基に直接イオン的に結合し、該イオン性基はグラフトにより高密度で存在するため、微粒子濃度を容易に増加させることができ、光学材料中において、このような非線形光学材料用途に特に好適であるといえる。
【0028】
1−6.ガスバリアフィルム用微粒子
本発明の表面機能性部材をガスバリアフィルムとして用いる場合には、機能性微粒子として、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化錫のような無機化合物、又はアルミニウム、錫、亜鉛のような金属から作られる超微粉末、即ち平均粒子径が100nm以下、好ましくは50nm以下の微粒子が好ましい。超微粉末は、前記の無機化合物や金属から選ばれる1種又は、2種以上の混合物の形態で用いることができる。超微粉末として酸化ケイ素のような絶縁性無機化合物を用いることによって、機能性部材全体に絶縁性を持たせることが可能になる。前記超微粉末は、特に超微粉末化が容易な酸化ケイ素が好ましい。
また、基材としては、ガスバリア性の高い有機樹脂フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなどを用いることが好ましい。
【0029】
1−7.有機発光素子用微粒子
微粒子として、ホットキャリアーによる励起によって発光する有機色素分子うが凝集した微粒子を用い、電極を有する基材表面にこれらによる層を形成することで、有機発光素子を形成することができる。ここで用いられる有機色素としては以下のようなものが挙げられるが、もちろんそれらに限定されるものではなく、固体光機能素子の使用目的等を考慮して適宜選択される。
【0030】
p−ビス[2−(5−フェニルオキサゾール)]ベンゼン(POPOP)等の青色発光のオキサゾール系色素;クマリン2、クマリン6、クマリン7、クマリン24、クマリン30、クマリン102、クマリン540等の緑色発光のクマリン系色素;ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン101、ローダミン110、ローダミン590、ローダミン640等の赤色発光のローダミン系(赤色)色素;およびオキサジン1、オキサジン4、オキサジン9、オキサジン118等の近赤外領域の発光が得られ、特に光通信に適合した光機能素子に好適なオキサジン系色素などが挙げられる。
さらにフタロシアニン、ヨウ化シアニン化合物等のシアニン系色素等をも挙げられる。なお、これらの色素を選択する際に、アクリル樹脂等の高分子に溶けやすいものを選択することが薄膜形成の目的上好ましい。そのような色素としては、POPOP、クマリン2、クマリン6、クマリン30、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン101等が挙げられる。
【0031】
また、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)膜に使われる有機分子、例えば8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(AlQ3)、1,4ビス(2,2ジフェニルビニル)ビフェニル、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)誘導体、ジスチリルアリレーン誘導体、スチリルビフェニル誘導体、フェナントロリン誘導体等、あるいは該有機分子に添加物を加えた媒体などにより形成された微粒子であってもよい。
【0032】
以上、1−1〜1−7において、本発明の表面機能性部材の応用例とその分野で好適に用いられる微粒子を具体例を挙げて説明したが、本発明はこれに制限されるものではなく、少なくとも片面にイオン性基などの極性基を導入してなる基材と、該イオン性基等と結合しうる物性を有する微粒子の種類を選択し、それらを適宜組合せることで、機能性の微粒子が有する物性を生かした機能性の表面を有する部材を種々、構成することができることは言うまでもない。
【0033】
2.微粒子表面の物性(イオン性基とイオン的に結合しうる荷電)について
上記の各微粒子は、例えばシリカ微粒子のように、それ自体荷電を有するものは、そのまま極性基としてイオン性基を有する表面を形成する材料を選択して反対のイオン性基を支持体表面に導入すれば微粒子吸着層にそのまま吸着させることができる。
【0034】
これらの微粒子は、支持体表面に存在するイオン性基に吸着し得る最大量、結合されることが耐久性の点で好ましい。また、機能性表面における機能性発現の効率からは、分散液の分散濃度は、10〜20重量%程度が好ましい。
【0035】
表面にイオン性基を有する基材において、該イオン性基に前記金属酸化物微粒子を結合させ、微粒子吸着層を設ける方法としては、金属酸化物微粒子の分散液を表面グラフトポリマー、即ち、イオン性基を有する基材表面上に塗布する方法、及び、金属酸化物微粒子の分散液中にイオン性基を表面に有するフィルム基材を浸漬する方法などが挙げられる。塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の金属酸化物微粒子を供給し、イオン性基との間に十分なイオン結合による導入がなされるために、分散液と表面にイオン性基を有する基材との接触時間は、10秒から180分程度であることが好ましく、1分から100分程度であることがさらに好ましい。
【0036】
〔極性基への微粒子の吸着〕
吸着の具体的な態様を挙げれば、例えば、極性基として、正の電荷を有するアンモニウムの如きイオン性モノマーを用いて支持体表面にイオン性基を有するグラフトポリマー鎖を導入し、その後、シリカ微粒子分散液にこの基材を所定時間浸漬し、その後、余分な分散液を水により洗浄、除去することで、透明基材の表面にはシリカ微粒子が、イオン性基の存在密度に応じて、ほぼ1層の状態から多層の状態まで、いずれも緻密に吸着してなる微粒子吸着層が形成される。
【0037】
このようにして、支持体基材上に極性基を導入し、そこに前記微粒子を吸着させて所望の機能を有する微粒子吸着層を設けることができる。微粒子吸着層の膜厚は目的により選択できるが、一般的には0.001μm〜10μmの範囲が好ましく、0.01μm〜5μmの範囲がさらに好ましく、0.1μm〜2μmの範囲が最も好ましい。膜厚が薄すぎると耐キズ性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には透明性が低下する傾向にある。
【0038】
(基材)
本発明において極性基を有するグラフトポリマー鎖が存在する表面を形成するのに使用される支持体の基材としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できるが、光透過性を必要とする透明基材を選択する場合には、例えば、ガラス、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。また、透明性を必要としない表面機能性部材の基材としては、上記のものに加えて、紙、プラスチックがラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
これらは、用途及び吸着される微粒子との関係に応じて適宜選択されるが、加工性、透明性の観点からは、高分子樹脂からなる表面を有する基材が好ましく、具体的には、樹脂フィルム、表面に樹脂が被覆されているガラスなどの透明無機基材、表面層が樹脂層からなる複合材のいずれも好適である。
表面に樹脂が被覆されている基材としては、表面に樹脂フィルムが貼着された積層板、プライマー処理された基材、ハードコート処理された基材などが代表例として挙げられる。表面層が樹脂層からなる複合材としては、裏面に接着剤層が設けられた樹脂シール材、ガラスと樹脂との積層体である合わせガラスなどが代表例として挙げられる。
【0039】
本発明の表面機能性部材は、基板上に導入された極性基、好ましくは、イオン性基に、シリカに代表される金属酸化物微粒子などの特定の機能を有する微粒子が静電気的に高密度で均一に吸着した層が形成されており、バインダーを用いることなく、しかも、イオン性基に微粒子が単層状態或いは多層状態で吸着した表面層が形成されているため、該表面は微粒子の物性をそのまま反映した機能性表面となる。例えば、この微粒子として粗面化部材用の微粒子を用いた場合、微粒子の形状均一な凹凸性を有し、均一で緻密な凹凸を有する粗面化層が形成される。さらに、この粗面化部材を反射防止材料として用いた場合、高い反射防止能が達成されながらその層自体は薄層で、基材として透明基材を用いることで光透過性を妨げる懸念がなくなることから、反射型のみならず、透過型の画像表示体にも好適に使用できる。
上記機能性微粒子を適宜選択することで、機能性微粒子の特性を反映させることができる微粒子吸着層は、任意の基材表面に比較的簡易な処理で形成することが可能であり、さらには、優れた機能性を発現しうる微粒子吸着層の耐久性が良好であるため、先に述べたような多用な目的に好適に使用しうるという利点を有する。
【0040】
用途に関してさらに例示すれば、微粒子を選択することで、導電性の有機或いは無機微粒子を用いることで、機能性表面に電子・電気的機能を、フェライト粒子などの磁性体微粒子を用いることで磁気的機能を、特定の波長の光を吸収、反射、散乱するような微粒子を用いて光学的機能を、というように種々の機能を機能性表面に発現させることができ、種々の工業製品、医薬品、触媒、バリスター(可変抵抗器)、塗料、化粧品など幅広い分野で使用することができる。また、種々の微粒子構成材料が有するこれらの多種多様な機能に加え、基材として高分子材料を用いることにより、高分子材料が有する成形加工の容易性をも利用することができ、新規な材料の開発も期待される。
【0041】
前記の広範囲の用途における具体例を述べれば、例えば、光学部品、サングラス、紫外線・可視光・赤外線などの光に対する、遮蔽フィルム、遮蔽ガラス、遮光窓、遮光容器、遮光プラスチックボトル等への適用、抗菌性フィルム、微生物除菌フィルター、抗菌性プラスチック成形体、漁網、テレビ用部品、電話機用部品、OA機器用部品、電気掃除機用部品、扇風機用部品、エアーコンディショナー用部品、冷蔵庫用部品、洗濯機用部品、加湿器用部品、食器乾燥機用部品などの各種のOA機器や家電製品、あるいは便座、洗面台用部品などのサニタリー用品、その他の建材、車両部品、日用品、玩具、雑貨などの幅広い用途が挙げられる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(参考例1、2)
〔極性基としてイオン性基を表面に有する支持体基材の作成〕
膜厚188μの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4100、東洋紡(株)社製)を用い、グロー処理として平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行った。
(酸素グロー処理条件)
初期真空 :1.2×10-3Pa
酸素圧力 :0.9Pa
RFグロー:1.5KW,処理時間 :60sec
【0043】
(イオン性基の導入)
次に、グロー処理したフィルムを窒素バブルしたスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(10Wt%)に70℃にて7時間浸漬した。浸浸した膜を水にて8時間洗浄することによりスチレンスルホン酸ナトリウムが表面にグラフトポリマー化された基材Aを得た。
また同様に、スチレンスルホン酸ナトリウムをアクリル酸に変えた以外は上記と同じ方法にてアクリル酸がグラフトされた表面グラフトフィルムである基材Bを得た。
【0044】
〔該イオン性基とイオン結合しうる金属酸化物微粒子〕
本実施例においては、金属酸化物微粒子として正電荷を有するTiO2粒子を使用した。
〔基材への荷電粒子の塗布〕
正電荷TiO2分散液〔H40:多木化学(株)製〕5gと水5gとからなる分散液中に、表面グラフトポリマーを有する基材A及び基材Bをそれぞれ20分間浸漬した。その後、流水で表面を十分洗浄して余分な微粒子水分散液を除去し、表面に微粒子吸着による粗面化層を有する粗面化部材A及び粗面化部材Bを得た。
【0045】
粗面化部材A及び、粗面化部材Bの表面を透過型電子顕微鏡(JEOL JEM−200CX)にて10万倍で観察したところ、いずれの表面においても、微粒子に起因する緻密な凹凸形状が形成されていることが確認された。
【0046】
〔反射防止能の評価〕
この粗面化部材表面に入射する光束φiと反射する光束φrとの比(φr/φi)即ち視感反射率(%)を分光器を用いて測定したところ、粗面化部材Aは0.2%、粗面化部材Bは0.3%であり、いずれも優れた反射防止能を有することが確認された。
【0047】
〔耐磨耗性の評価〕
得られた粗面化部材A、Bを水で湿らせた布(BEMCOT、旭化成工業社製)を用いて手で往復30回こすった。こすった後に、前記と同様にして透過型電子顕微鏡(JEOL JEM−200CX)にて、その表面を10万倍で観察したところ、いずれの表面においても、こすり処理を行なう前と同様の微粒子に起因する緻密な凹凸形状が観察され、表面の緻密な凹凸形状がこすりにより損なわれなかったことが確認された。
【0048】
(参考例3)
〔極性基としてイオン性基を表面に有する支持体基材の作成〕
実施例1で用いたグロー処理したフィルム基板として用いた。イオン性基を導入するためのモノマーとして、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド(ブレンマーQA:日本油脂(株)製)を使用したほかは、実施例1と同様にして、カチオン性のアンモニウムクロライドが表面にグラフトポリマー化された基材Cを得た。
【0049】
〔該イオン性基とイオン結合しうる金属酸化物微粒子〕
本実施例においては、金属酸化物微粒子として正電荷を有するSiO2粒子を使用した。
〔基材への荷電粒子の塗布〕
シクロヘキサン90g中に平均粒径200nmのシリカ微粒子〔シーホスターP−20:日本触媒(株)製〕10gを分散させた分散液中に、表面グラフトポリマーを有する基材Cをそれぞれ20分間浸漬した。その後、流水で表面を十分洗浄して余分な微粒子分散液を除去し、表面に粗面化層を有する粗面化部材Cを得た。
【0050】
粗面化部材Cの表面を透過型電子顕微鏡(JEOL JEM−200CX)にて10万倍で観察したところ、微粒子に起因する緻密な凹凸形状が形成されていることが確認された。
【0051】
得られた粗面化部材Cにたいして、実施例1と同様にして、反射防止能及び耐磨耗性の評価を行ったところ、視感反射率0.2%であり、こすり処理後の表面凹凸形状の変化も認められなかったことから、カチオン性の表面を有する本実施例においても、同様に高い反射防止能と表面の耐磨耗性が達成されていることがわかった。
【0052】
(実施例1)
〔極性基としてイオン性基を表面に有する支持体基材の作成〕
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、下記の光重合性組成物をロッドバー17番で塗布し、80℃で2分間乾燥させた。次にこの塗布されたフィルムを、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用し、10分間照射し、予備硬化させて中間層を形成した。
【0053】
(光重合性組成物)
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
【0054】
中間層が形成されたPETフィルムを、アクリル酸:20質量%及び次亜塩素酸ナトリウム:0.01質量%を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯を使用し30分間光照射した。
光照射後、得られたフィルムをイオン交換水で良く洗浄し、ポリアクリル酸がグラフトされた表面グラフトフィルムである基材Dを得た。グラフトされたポリアクリル酸の厚みをATR−IR(全反射赤外線吸収スペクトル)を用いて測定したところ、0.55μmであった。
【0055】
〔該イオン性基とイオン結合しうる金属酸化物微粒子〕
本実施例においては、金属酸化物微粒子として正電荷を有するTiO2粒子を使用した。
〔基材への荷電粒子の塗布〕
正電荷TiO2分散液〔H40:多木化学(株)製〕5gと水5gとからなる分散液中に、表面グラフトポリマーを有する基材Dを20分間浸漬した。その後、流水で表面を十分洗浄して余分な微粒子水分散液を除去し、表面にTiO2微粒子が吸着してなる微粒子吸着層を有する表面機能性部材Dを得た。
表面機能性部材Dの断面を走査型電子顕微鏡(JEOL S800)にて10万倍で観察したところ、TiO2微粒子が10層吸着していることが確認された。
【0056】
〔紫外線遮蔽能の評価〕
この表面機能性部材Dに波長280〜400nmの紫外線を照射し、紫外線の透過率を測定したところ、透過率は1.0%であり、優れた紫外線遮蔽能を有することが確認された。
【0057】
〔耐磨耗性の評価〕
得られた表面機能性部材Dを水で湿らせた布(BEMCOT、旭化成工業社製)を用いて手で往復30回こすった。こすった後に、前記と同様にして走査型電子顕微鏡(JEOL S800)にて、その断面を10万倍で観察したところ、いずれの表面においても、こすり処理を行なう前と同様に多層にわたる微粒子が吸着してなる表面層の存在が観察され、微粒子吸着層がこすりにより損なわれなかったことが確認された。
【0058】
実施例の評価結果より、本発明の表面機能性部材は、吸着された微粒子の機能に応じた優れた性能が発現され、また、表面に形成された微粒子吸着層の耐久性が良好であることが確認され、本発明は実用に適する種々の機能性表面を有する材料として有用であることがわかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、表面に機能性微粒子が単層、或いは積層状態で強固に吸着してなる、耐久性に優れた微粒子吸着層を有し、且つ、このような微粒子吸着層を容易に形成することができ、吸着された機能性微粒子の効果が持続する表面機能性部材を提供することができる。
Claims (3)
- 極性基を有するグラフトポリマー鎖が存在する表面を有する支持体上に、該極性基と結合しうる金属酸化物微粒子を吸着してなる微粒子吸着層を設けた紫外線吸収部材。
- 金属酸化物微粒子が、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化クロム、酸化錫、および、酸化アンチモンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の紫外線吸収部材。
- 極性基を有するグラフトポリマー鎖が、支持体表面にグラフト重合により導入されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紫外線吸収部材。
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