JP4067552B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド部にベルト層を埋設した空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ベルト層の酸化劣化を防止して耐久性の向上を可能にした空気入りタイヤに関する。
トレッド部にベルト層を埋設した空気入りタイヤにおいて、耐久性を阻害する要因として、ベルト層のタイヤ軸方向の両端部におけるコードとコートゴムとの剥離が挙げられる。特にベルト層が劣化するとコードとコートゴムとの剥離を生じ易くなる。このようなベルト層の劣化は、タイヤ内部の空気がタイヤ外部に向けて滲み出す過程で、空気中の酸素がベルト層のコートゴムを酸化することにより促進されることが指摘されている。
そこで、空気入りタイヤのバットレス部に複数本のコードをタイヤ軸方向に配列してなるコード補助層を埋設し、該コード補助層をベルト層の下方域に延在するベルト内側部とタイヤ軸方向外側へ延長する延長部とタイヤ外表面に近接する近接部とから構成し、タイヤ内を移動する空気をコード補助層を介してタイヤ外部に導くことにより、酸素がベルト層の端部付近を大量に通過することを防止し、ベルト層のコートゴムの酸化劣化を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上述のように空気入りタイヤのバットレス部に複数本のコードをタイヤ軸方向に配列してなるコード補助層を埋設し、その端部をバットレス部の近傍でタイヤ外表面に近接させた場合、以下のような問題がある。即ち、バットレス部はウェット路面走行時に水と接する機会が比較的多いため、コード補助層の端部をバットレス部の近傍でタイヤ外表面に近接させた場合、コード補助層を介してベルト層に水分が供給されることになる。そうすると、水分がベルトコードの劣化を促進し、これが空気入りタイヤの耐久性を低下させる要因となる。また、バットレス部はタイヤ走行時の変形量が比較的多いため、コード補助層の端部をバットレス部の近傍でタイヤ外表面に近接させた場合、その近接部を起点として損傷を生じ易くなり、これも空気入りタイヤの耐久性を低下させる要因となる。つまり、コード補助層に基づいてベルト層の酸化劣化を防止しても、空気入りタイヤの耐久性の改善効果が十分に得られないのである。
特開2003−80905号公報
本発明の目的は、ベルト層の酸化劣化を防止して耐久性の向上を可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層に沿ってタイヤ内表面に空気透過防止層を配置し、トレッド部における前記カーカス層の外周側にベルト層を埋設した空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層と前記ベルト層との間にコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回してなるコード層を配置し、該コード層の少なくとも一部を前記コードとタイヤ外表面との距離が2mm以下となるようにタイヤ外表面に近接させたことを特徴とするものである。
本発明では、空気透過防止層とベルト層との間にコード層を配置し、該コード層の少なくとも一部をタイヤ外表面に近接させるので、タイヤ内部の空気がタイヤ外部に向けて滲み出す過程において、ベルト層に向かって移動する空気をコード層のコード内に取り込んでタイヤ外表面に近接させた部分からタイヤ外部に排出することができる。これにより、ベルト層を通過する酸素量を減らし、ベルト層の酸化劣化を抑制し、延いては、空気入りタイヤの耐久性を向上することができる。
しかも、コード層はコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回した構造を有しているため、コード層自体が耐久性の低下要因となるのを回避することができる。即ち、コード層がコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回した構造を持つ場合、酸素の排出効果が確保される一方で、ウエット路面走行時に路面に近い位置でタイヤ外表面に近接するコード層に水分が浸透しても、その水分がコード層のコード内を通ってベルト層に到達するまでの経路が長くなるので、ベルト層に水分が供給されるのを避けることができる。また、コード層がコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回した構造を持つ場合、コード端末が殆ど存在しないので、コード層をタイヤ外表面に近接させても、その近接部分を起点とする損傷を生じ難くなる。従って、コード層による耐久性の改善効果を最大限に享受することができる。
なお、上記コード層は空気透過防止層を通過した空気をタイヤ外部に導くものであり、空気入りタイヤの内圧保持性能は空気透過防止層に基づいて確保されるので、上記コード層に起因して空気入りタイヤの内圧保持性能が低下することはない。
本発明においては、コード層の少なくとも一部をタイヤ半周以上にわたってコードとタイヤ外表面との距離が2mm以下となるようにタイヤ外表面に近接させることが好ましい。これにより、ベルト層に向かって移動する空気をタイヤ外部に排出する作用を十分に確保することができる。
また、コード層とベルト層とのタイヤ軸方向の重なり幅をベルト層の端部から少なくとも10mmとすることが望ましい。これにより、剥離故障を生じ易いベルト層の端部付近を確実に保護することができる。なお、ベルト層の下方域にコード層の端部を配置すると、その端部が故障の要因になる場合があるので、ベルト層の下方域にはコード層の端部が存在しないことが好ましい。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、このカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。タイヤ内表面にはカーカス層4に沿って空気透過防止層6が配置されている。この空気透過防止層6(インナーライナー層)は、ブチルゴムを主成分とするゴム組成物から構成しても良く、或いは、熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂にエラストマーを分散させた複合樹脂材料から構成しても良い。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、複数層のベルト層7がタイヤ全周にわたって配置されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4とベルト層7との間にはコード層8が配置されている。このコード層8は1本又は複数本のコードをタイヤ周方向に対する角度が例えば10°以下となるようにタイヤ周方向に連続的に巻き回すことで構成されている(図2参照)。コード層8のコードとしては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、アラミド等の有機繊維コードを用いることが好ましい。コード層8の少なくとも一部は、図3の拡大図に示すように、コードCとタイヤ外表面Sとの距離Dが2mm以下となるようにタイヤ外表面に近接している。本実施形態では、コード層8がタイヤ幅方向外側に延長し、そのタイヤ幅方向の端部8aがタイヤ外表面に近接している。
上記空気入りタイヤでは、空気透過防止層6とベルト層7との間にコード層8を配置し、該コード層8の少なくとも一部をタイヤ外表面に近接させているので、タイヤ内外の圧力差に起因してタイヤ内部の空気がタイヤ外部に向けて滲み出す過程において、ベルト層7に向かって移動する空気をコード層8のコード内に取り込んでタイヤ外表面に近接させた部分からタイヤ外部に排出することができる。これにより、ベルト層7を通過する酸素量を減らし、ベルト層7のコートゴムの酸化劣化を抑制して空気入りタイヤの耐久性を向上することができる。
しかも、コード層8はコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回した構造を有しているため、コード層8に起因して耐久性が低下するのを回避することができる。つまり、コード層8がコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回した構造を持つ場合、ウエット路面走行時にコード層8に浸透した水分がコード層8のコード内を通ってベルト層7に到達するまでの経路が長くなるためベルト層7に水分が供給されるのを避けることができ、更にはコード層8にコード端末が殆ど存在しないためタイヤ走行時の変形に起因して上記近接部分を起点とするサイドブロー等の損傷が生じるのを避けることができる。
コード層8のタイヤ外表面に近接させる部分では、コードとタイヤ外表面との距離Dを2mm以下とする。コード層8の距離Dが2mm超であるとコード内に導かれた空気がタイヤ外部に排出され難くなる。コード層8のコードはタイヤ外表面に露出していても良い。その場合、距離Dは0mmである。
コード層8はその端部8aをタイヤ半周以上にわたってコードとタイヤ外表面との距離Dが2mm以下となるようにタイヤ外表面に近接させることが好ましい。勿論、コード層8の端部8aをタイヤ全周にわたってタイヤ外表面に近接させても良い。これにより、ベルト層7に向かって移動する空気をタイヤ外部に効率良く排出することができる。
上述した実施形態では、コード層8がベルト層7を横切るように延在し、ベルト層7の下方域に端部を有していない。このようにベルト層7の下方域から端部を排除した構成は耐久性の点で優れている。しかしながら、コード層8をベルト層7の端部だけに重なるものとし、そのようなコード層8をベルト層7の両端部にそれぞれ配置しても良い。この場合、コード層8とベルト層7とのタイヤ軸方向の重なり幅はベルト層7の端部から少なくとも10mmとすることが望ましい。これにより、剥離故障を生じ易いベルト層7の端部付近を確実に保護することができる。
タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤにおいて、タイヤ構造を種々異ならせた従来例、比較例及び実施例のタイヤをそれぞれ作製した。
従来例のタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側にベルト層を埋設し、タイヤ内表面に空気透過防止層を設けたものである。比較例のタイヤは、バットレス部におけるカーカス層とベルト層の端部との間に複数本のコードをタイヤ周方向に対して90°の角度で配列してなるコード層を配置し、そのコード層の端部をコードとタイヤ外表面との距離が1mmとなるようにタイヤ外表面に近接させたこと以外は、従来例と同じ構造を有するものである。
実施例のタイヤは、カーカス層とベルト層の端部との間に1本のコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回してなるコード層を配置し、そのコード層の端部をコードとタイヤ外表面との距離が1mmとなるようにタイヤ外表面に近接させたこと以外は、従来例と同じ構造を有するものである。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、耐久試験及びエア漏れ試験を実施し、その結果を表1に示した。
耐久試験:
試験タイヤをリムサイズ15×6JJのホイールに組付け、空気圧を200kPaとして排気量1800ccの乗用車に装着し、舗装路にて5万km走行後、ベルトエッジセパレーション及びサイド部クラックの発生状況を調べた。
エア漏れ試験:
試験タイヤをリムサイズ15×6JJのホイールに組付け、初期圧力を250kPa、室温21℃、無負荷条件にて3ヶ月間放置し、所定の測定間隔で圧力を測定した。内圧の測定間隔は3時間毎とし、測定圧力Pt、初期圧力P0、経過日数tとして、(1)式で回帰してα値を求めた。
Pt/P0=exp(−αt) ・・・(1)
そして、(2)式において(1)式で得られたα値を用い、かつ、t=30(日)を代入してβ値を求めた。
β=〔1−exp(−αt)〕×100 ・・・(2)
このβ値を1ヶ月当たりの圧力低下率(%/月)とした。
Figure 0004067552
表1に示すように、実施例のタイヤでは耐久試験後においてベルトエッジセパレーション及びサイド部クラックが発生しておらず、エア漏れ試験の結果も良好であった。一方、従来例のタイヤではベルトエッジセパレーションが発生していた。また、比較例のタイヤではベルトエッジセパレーションの発生が回避されていたが、その替わりにサイド部クラックが発生していた。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。 図1の空気入りタイヤを示す斜視断面図である。 図1の空気入りタイヤの要部を示す断面図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 空気透過防止層
7 ベルト層
8 コード層
C コード
S タイヤ外表面

Claims (3)

  1. 一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層に沿ってタイヤ内表面に空気透過防止層を配置し、トレッド部における前記カーカス層の外周側にベルト層を埋設した空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層と前記ベルト層との間にコードをタイヤ周方向に連続的に巻き回してなるコード層を配置し、該コード層の少なくとも一部を前記コードとタイヤ外表面との距離が2mm以下となるようにタイヤ外表面に近接させた空気入りタイヤ。
  2. 前記コード層の少なくとも一部をタイヤ半周以上にわたって前記コードとタイヤ外表面との距離が2mm以下となるようにタイヤ外表面に近接させた請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記コード層と前記ベルト層とのタイヤ軸方向の重なり幅を該ベルト層の端部から少なくとも10mmとした請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
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