JP4067169B2 - ノイズ発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シンセサイザ等の電子楽器にて、効果音を発生させるための音源となるノイズを発生させるノイズ発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電子鍵盤楽器として使用されるシンセサイザでは、音源より発生した信号の周波数、振幅、及びスペクトラムを適宜変更させることにより、所望の音色を得ることができ、幅広い音色の出力が可能である。また、単に楽音の演奏にとどまらず、風の音、波の音、爆発音等の効果音を発生させることも可能であり、芝居や演劇等の分野において、特殊な道具や機材等を使用すること無く簡単な操作で場面に即した臨場感、迫力を得ることができ、また、効果音の発生のタイミングをとりやすいという利点があるので、極めて有用である。
【0003】
一般に、シンセサイザでは、風の音や波の音、爆発音等の効果音を発生させるために、ノイズ発生装置を搭載しており、このノイズ発生装置よりの出力信号を音源とし、この音源に対して種々の処理を加えることにより所望の効果音を得ることができるようになっている。
【0004】
図8は、シンセサイザに搭載される従来のノイズ発生装置の構成を示すブロック図であり、線形合同法に基づく乱数発生方法を適用したものである。図示のようにこのノイズ発生装置は、第1の符号なし加算器21、第2の符号なし加算器22、シフト演算器23、遅延器24から成る2入力1出力回路として構成されている。そして、第1の符号なし加算器21の出力は2系統に分岐され、一方は出力信号とされ、他方は1次の遅延器24に接続されている。また、遅延器24の出力は2系統に分岐され、一方は第2の符号なし加算器22に接続され、他方はシフト演算器23を経由した後、やはり第2の符号なし加算器22に接続される。そして、第2の符号なし加算器22の出力は第1の符号なし加算器21に接続され、且つ、該第1の符号なし加算器21には零でない一定値が入力されるようになっている。
【0005】
このように構成された従来のノイズ発生装置によれば、遅延器24から前回(1回前)に出力された値、及びこの値をシフト演算にてビット操作した値がそれぞれ第2の符号なし加算器22に供給されるので、これらの符号なし加算が行われ、この結果が第1の符号なし加算器21に供給される。そして、供給された値が今回入力された値と符号なし加算されて、今回の出力とされる。
【0006】
こうして得られる出力値は、一様にランダムな値となるから、図8に示されるノイズ発生器の出力は図9に示すように周波数特性が一様なホワイトノイズとなる。そして、このホワイトノイズを音源として、後段の機器にて操作を加えることにより、所望の効果音を得ることができる。
しかしながら、上記した従来のノイズ発生装置では、ホワイトノイズを生成することができるものの、周波数特性が一様でないノイズ、いわゆる有色ノイズを発生させることができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来におけるノイズ発生装置においては、周波数特性が一様なホワイトノイズを生成することができるものの、有色ノイズを生成することができず、効果音を生成する際の汎用性が低いという欠点があり、何とか、有色ノイズを発生させたいという要望が高まっていた。
この発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ホワイトノイズのみならず、種々の周波数特性を有する有色ノイズを発生させることのできるノイズ発生装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、効果音の発生音源となるノイズ信号を発生するノイズ発生装置において、零以外の一定値のデジタル信号がその一方の入力とされ、デジタル信号の符号なし加算を行う第1の符号なし加算器(1)と、
該第1の符号なし加算器(1)の出力側に設置されデジタル信号の遅延を行う遅延器(4)と、
該遅延器(4)の遅延次数を適宜変更する遅延制御手段(5)と、
前記遅延器(4)の出力側に設置され、遅延デジタル信号の所定量のビットシフトを行うシフト演算器(3)と、
該シフト演算器(3)の出力と、前記遅延器(4)の出力とを符号なしデジタル加算する第2の符号なし加算器(2)と、を有し、
前記第1の符号なし加算器(1)は、前記外部より与えられた零以外の一定値のデジタル信号と前記第2の符号なし加算器(2)よりのデジタル出力信号との間でデジタル信号の符号なし加算を実行し、第1の符号なし加算器(1)の出力を当該ノイズ発生装置の出力とすることを特徴とした。
【0011】
請求項2に記載の発明は、効果音の発生音源となるノイズ信号を発生するノイズ発生装置において、零以外の一定値のデジタル信号がその一方の入力とされ、デジタル信号の符号なし加算を行う第1の符号なし加算器(1)と、該第1の符号なし加算器(1)の出力側に設置されるコムフィルタ(6)と、該コムフィルタ(6)の遅延次数及びフィードバックゲインを適宜変更するコムフィルタ制御手段(7)と、前記コムフィルタ(6)の出力側に設置され、デジタル信号の所定量のビットシフトを行うシフト演算器(3)と、該シフト演算器(3)の出力と、前記コムフィルタ(6)の出力とを符号なしデジタル加算する第2の符号なし加算器(2)と、を有し、前記第1の符号なし加算器(1)は、前記外部より与えられた零以外の一定値のデジタル信号と前記第2の符号なし加算器(2)よりのデジタル出力信号との間でデジタル信号の符号なし加算を実行し、第1の符号なし加算器(1)の出力を当該ノイズ発生装置の出力とすることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記遅延器又はコムフィルタの後段に補間器を設置したことを特徴とする。発明者は、有色ノイズを生成可能なノイズ発生装置を種々検討した結果、出力信号の帰還路に遅延器を設置し、該遅延器の遅延次数をランダムに変更することにより、周波数特性が一様でない有色ノイズを発生させることを見いだした。更には、遅延器の代わりにコムフィルタを設置し、該コムフィルタの遅延次数、及びフィードバックゲインを適宜変更することによっても同様に有色ノイズを発生させることができることを見いだした。従って、本発明では、上記の如くの構成を有することにより、種々の有色ノイズを生成することができ、これにより、効果音の音源を幅広く設定することが可能となり、汎用性を著しく向上させることができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るノイズ発生装置の構成を示すブロック図であり、同図に示すように、このノイズ発生装置では、従来例にて示した装置と比較し、遅延器の遅延次数を適宜変更可能に構成した点で相違している。即ち、本実施形態のノイズ発生装置は、第1の符号なし加算器1と、第2の符号なし加算器2と、シフト演算器3と、遅延器4と、遅延量制御信号発生器5(遅延量制御手段)と、から構成されている。
【0014】
第1の符号なし加算器1の出力は、2系統に分岐されており、一方は出力、他方は帰還路とされ、該帰還路には遅延器4が設置されている。また、遅延器4の出力側は、2系統に分岐されており、一方は第2の符号なし加算器2に接続され、他方はシフト演算器3を経由してやはり第2の符号なし加算器2に接続されている。そして、該第2の符号なし加算器2の出力は第1の符号なし加算器1に接続されている。
【0015】
遅延器4は、例えば2000段のメモリを有しており、第1の符号なし加算器1より出力された値を、信号が供給される度にシフトさせながら記憶する。遅延量制御信号発生器5は、遅延器4より出力される遅延の次数をランダムに設定して遅延器4に出力する。即ち、遅延器4は、遅延量制御信号発生器5にて設定された遅延次数に従い、例えば、遅延次数が「10」と設定されたならば、10回前に与えられた数値を取り出して後段側(即ち、第2の符号なし加算器2及びシフト演算器3)に出力する。
【0016】
シフト演算器3は、与えられた数値にビット操作(即ち、2のべき乗演算)を加える演算を行い、データをスライドさせる。例えば、「110010」というディジタル信号が与えられた場合には、例えばこれを左方向に1個スライドさせる操作を加え(即ち、2を乗じる)、「100100」とする。
第1の符号なし加算器1及び第2の符号なし加算器2は、与えられる2つの入力信号の符号なし加算を行うものである。符号なし加算とは周知のように、ある一定の範囲内にて行われる加算演算であり、例えば、3ビットの演算を例にとると、10進法で−4〜3までの8通りの整数の範囲で演算が行われることになる。いま、10進法で「3+3」の演算を行うと、2進法では「011+011」となり、演算の結果は「110」となる。この際、左端の「1」は符号を示すビットであり、「1」はマイナス、「0」はプラスを示すから、この演算の結果は10進法で「−2」となる。このような演算は、オーバーフローとなることが無く、一様にランダムな結果を得ることができる。
【0017】
次に、上記の如く構成された本実施形態の作用について説明すると、第1の符号なし加算器1には、外部より供給される零でない一定値、及び遅延器4、シフト演算器3、第2の符号なし加算器2を介して帰還される信号が供給され、遅延器4における遅延の次数が遅延量制御信号発生器5により、ランダムに変更されるので(2000段のメモリを有する場合には、1〜2000のうちいずれかの値)、後述の実施例に記載するように、ある一定の特徴を有する有色ノイズを得ることができる。また、遅延器4のメモリの段数を変更することにより、有色ノイズの特性を適宜変化させることができる。
【0018】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るノイズ発生装置の構成を示すブロック図であり、同図に示すようにこの実施形態では、図1に示した遅延器4の代わりに、コムフィルタ6を設置している点で相違している。図2に示すように、コムフィルタ6は、入力信号(即ち、第1の符号なし加算器1の出力信号)と帰還信号との加算を行う加算器61と、この帰還路に設置される遅延器62とを有しており、更に、第1の符号なし加算器1よりの出力信号レベルを制御するための乗算器63及び遅延器62の出力レベルを制御するための乗算器64を具備している。また、遅延器62の遅延次数をランダムに変化させ、且つ、フィードバックゲインを調整するための、コムフィルタ制御信号発生器7(コムフィルタ制御手段)が設置されている。図3は、コムフィルタ6のフィードバックゲインを上昇させたときの周波数特性図であり、該コムフィルタ6を通過させることにより、櫛歯状に変化する周波数特性を有する出力信号を得ることができる。
【0019】
そして、このように構成されたノイズ発生装置では、コムフィルタ6を通過した信号が、シフト演算器3、第2の符号なし加算器2を介して第1の符号なし加算器1に供給されることになり、該第1の符号なし加算器1の出力は一定の特徴を有する有色ノイズとなる。また、コムフィルタ制御信号発生器7にてフィードバックゲインを調整することにより、この有色ノイズの特性を適宜変化させることができる。
【0020】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るノイズ発生装置の構成を示すブロック図であり、同図に示すようにこの実施形態では、図1に示した遅延器4の後段側に補間器8が設置されている点で相違している。このような構成によれば、同一のサンプリングレート及び遅延段数にて、サンプリングレートを上げ遅延値の段数を増加したことに相当する遅延量の分解能を得ることができる。これにより、不連続な量にて遅延量の制御を行う場合においても、あたかも連続量で制御する如くの自然な音色変化を得ることができるようになる。以下、これを詳細に説明する。
【0021】
ここでいう「補間」とは、離散データ列を
D(0),・・,D(k−1),D(k),・・,D(k+1),・・
(kは変数)
と表すとき、D(t),D(t+1)[tは整数]に対して、t≦τ<t+1なるτに対するD(τ)を生成することである。
いま、τを整数部tと小数部Mに分割し、τ=t+Mと表記する。
小数部Mの語長をm(ビット)とすると、例えば、最も計算量の少ない直線補間の例では、
D(τ)=(D(t+1)−D(t))*M/2m+D(t)
となる。
【0022】
上記M/2mの演算はハードウェア構成では配線の対応をシフトすることに相当し、ソフトウェアによる実現ではシフト命令に相当するため、演算量への影響は少ない。
そして、上記の如く補間を行うことにより、サンプリングレートを同一としたまま、遅延値の段数を2m倍にすることに相当する遅延量の分解能を得ることができるようになる。上記では、直線補間を例に説明したが、補間方法として二次補間等の高次多項式やオールパスフィルタ等を用いれば、直線補間よりも演算量が多くなるものの、遅延量を変化させる際、より滑らかな音色変化を得ることができる。
【0023】
【実施例】
発明者は、有色ノイズを発生させるべくノイズ発生装置について鋭意検討した結果、出力信号の帰還路に遅延器4を設置し、該遅延器4の次数をランダムに変化させることにより、一定の特徴を有する有色ノイズを発生させることができることを見いだした。以下、発明者による実験の結果について説明する。
図5は、第1の実施形態(図1)及び第2の実施形態(図2)に示したノイズ発生装置を使用して得られる出力信号レベル(縦軸)と、繰り返し回数(横軸)との関係を示す特性図であり、図中「菱形」で示す点が第1の実施形態、「十字」で示す点が第2の実施形態を用いた結果を示している。同図から容易に理解されるように、繰り返し回数(第1の符号無し加算器1に一定値が与えられる回数)が少ないときには出力レベルはほとんどゼロであるが、一定の繰り返し回数を越えると、出力レベルがランダムに変動する有色ノイズとなっていることが確認できる。
【0024】
図6は、第2の実施形態(図2)に示した構成にて得られたノイズ信号を示す特性図であり、比較のために、図7には従来例にて示した図8の構成にて得られるノイズ信号を示す。図6と図7とを比較して容易に理解されるように、従来のノイズ発生装置では、周波数変化に対してほぼ一定のノイズレベルを有するいわゆるホワイトノイズが出力信号として得られるのに対して、図6に示す特性図では、周波数変化に対して大きく変動するいわゆる有色ノイズが得られる。
上記の内容から、本発明によるノイズ発生装置を使用することにより、従来より生成が困難であった有色ノイズを発生させ得ることが確認できた。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、出力信号の帰還路に遅延器を設置し、該遅延器の遅延次数をランダムに変化させるように構成しているので、周波数特性が一様でない、いわゆる有色ノイズを発生させることができ、風の音や波の音、爆発音等の効果音を発生させるための音源として、幅広い音色を得ることができ、汎用性の高いノイズ発生装置を提供することができる。また、遅延器の代わりにコムフィルタを設置し、該コムフィルタの遅延次数を制御することにより、前記と同様に、有色ノイズを得るとができる。更に、遅延器の後段側に補間器を設置することによっても同様に、有色ノイズを発生させることができ、その効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るノイズ発生装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るノイズ発生装置の構成を示すブロック図。
【図3】コムフィルタの周波数特性を示す説明図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るノイズ発生装置に構成を示すブロック図。
【図5】繰り返し回数と出力レベルとの関係を示す特性図であり、「菱形点」は第1の実施形態、「十字点」は第2の実施形態による特性を示す。
【図6】図2に示したノイズ発生装置にて得られるノイズ信号の、周波数変化に対する変化を示す特性図。
【図7】従来におけるノイズ発生装置にて得られるノイズ信号の、周波数変化に対する変化を示す特性図。
【図8】従来におけるノイズ発生装置の構成を示すブロック図。
【図9】ホワイトノイズの周波数特性を示す説明図。
【符号の説明】
1,21 第1の符号なし加算器
2,22 第2の符号なし加算器
3,23 シフト演算器
4 遅延器
5 遅延量制御信号発生器
6 コムフィルタ
7 コムフィルタ制御信号発生器
8 補間器
24 1次の遅延器
61 加算器
62 遅延器
63,64 乗算器
Claims (3)
- 効果音の発生音源となるノイズ信号を発生するノイズ発生装置において、
零以外の一定値のデジタル信号がその一方の入力とされ、デジタル信号の符号なし加算を行う第1の符号なし加算器(1)と、
該第1の符号なし加算器(1)の出力側に設置されデジタル信号の遅延を行う遅延器(4)と、
該遅延器(4)の遅延次数を適宜変更する遅延制御手段(5)と、
前記遅延器(4)の出力側に設置され、遅延デジタル信号の所定量のビットシフトを行うシフト演算器(3)と、
該シフト演算器(3)の出力と、前記遅延器(4)の出力とを符号なしデジタル加算する第2の符号なし加算器(2)と、を有し、
前記第1の符号なし加算器(1)は、前記外部より与えられた零以外の一定値のデジタル信号と前記第2の符号なし加算器(2)よりのデジタル出力信号との間でデジタル信号の符号なし加算を実行し、第1の符号なし加算器(1)の出力を当該ノイズ発生装置の出力とすることを特徴とするノイズ発生装置。 - 効果音の発生音源となるノイズ信号を発生するノイズ発生装置において、
零以外の一定値のデジタル信号がその一方の入力とされ、デジタル信号の符号なし加算を行う第1の符号なし加算器(1)と、
該第1の符号なし加算器(1)の出力側に設置されるコムフィルタ(6)と、
該コムフィルタ(6)の遅延次数及びフィードバックゲインを適宜変更するコムフィルタ制御手段(7)と、
前記コムフィルタ(6)の出力側に設置され、デジタル信号の所定量のビットシフトを行うシフト演算器(3)と、
該シフト演算器(3)の出力と、前記コムフィルタ(6)の出力とを符号なしデジタル加算する第2の符号なし加算器(2)と、を有し、
前記第1の符号なし加算器(1)は、前記外部より与えられた零以外の一定値のデジタル信号と前記第2の符号なし加算器(2)よりのデジタル出力信号との間でデジタル信号の符号なし加算を実行し、第1の符号なし加算器(1)の出力を当該ノイズ発生装置の出力とすることを特徴とするノイズ発生装置。 - 前記遅延器又はコムフィルタの後段に補間器を設置したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のノイズ発生装置。
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