JP4066659B2 - 電子ビーム描画装置および電子ビームを用いた描画方法 - Google Patents

電子ビーム描画装置および電子ビームを用いた描画方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、極めて集積度の高い半導体集積回路の製造に必要な極微細な描画パターンを、ウエハや露光マスクなどの基板に電子ビームによって描画する電子ビーム描画装置および電子ビームを用いた描画方法に関するものである。
背景技術
電子ビームによる描画において、電子ビームの断面形状を、矩形の開口を有するマスクを通過させて矩形とした可変成形型電子ビーム描画装置が知られている。以下、可変成形型電子ビーム描画装置を例にとり、説明する。
電子ビームを半導体ウエハ,露光マスク,レチクルなどの基板上の感光剤(以下、レジストという)に照射して、レジストの化学反応により描画パターンを形成する場合、散乱半径が小さい入射電子による解像力の高い、本来の露光の他に、照射された電子ビームの一部がレジストを透過して基板の中に入り、基板中で散乱半径が大きな散乱となってレジスト層に再入射する露光とがある。照射された電子の散乱を二つに分類した場合、露光が入射電子によるものは前方散乱と呼ばれ、散乱半径が大きな後者は後方散乱と呼ばれる。ある領域内で描画パターンの占める面積が広い、すなわち、露光面積比率が高い領域では、隣り合った領域の後方散乱の影響で過剰露光状態となり、パターン潰れ等の描画パターンの変形が起こる。この現象は一般に近接効果と呼ばれ、近接効果の影響の対策のため、露光エネルギーを補正する方法が多く提案されている。
この補正の方法の一例は、描画パターンの近接効果による変形を予め計算し、それを補償する変形量を描画パターンを表すデータに予め加えておく方法である。この変形量の予測計算方法は複雑であって、実用的ではない。
第二の例は、後方散乱による露光効果を相殺するように、描画時の露光エネルギーを調節して描画することである。この方法では、描画パターンの単位面積に対する露光面積比率として定義される値を指標とする露光エネルギー補正である。これは、後方散乱径が描画パターンより著しく大きい場合に、後方散乱の影響がほぼ一様となり、露光面積比率に比例すると見做すことができるためである。この露光面積比率によって露光時間を変えて露光エネルギーを調整する考え方は、古くから提案されており、例えば、日本国特許出願公告昭58−32420号公報,同昭59−139625号公報,同昭61−284921号公報,日本国特許出願公開平10−229047号公報に述べられている。
また、さらに補正の効果を高めるために、描画パターンの寸法を考慮して露光エネルギーを決定する方法が日本国特許出願公開平10−189422号公報に、1回で露光される領域の周辺の露光面積比率と距離とを考慮して補助露光パターンを決定し露光エネルギーに加える方法が日本国特許出願公開平11−111595号公報に述べられている。
前述の日本国特許出願公開平10−229047号公報に記載された露光エネルギー補正方法について、第2図を用いて以下説明する。第2図は、可変成形型電子ビーム描画装置における近接効果補正のための制御回路の構成を示すブロック図である。
制御装置4に備えられた補助記憶装置(図示せず)に描画パターンのデータが記憶されている。この描画パターンのデータは、はじめに、データの復元回路(図示せず)で一つ一つの独立した基本図形データに復元される。次に、図形分解回路(図示せず)において、その基本図形データを、電子ビームの1回の照射で露光可能な領域の寸法以下の矩形データの集まりに分解する。ここで、基板上の描画領域を、電子ビームの1回の照射で露光可能な領域に計算で分割し定義する。この領域を以下、部分領域とよぶ。
上記図形分解回路からの出力は、基板上の部分領域毎の電子ビーム照射時間を示す信号,矩形図形の縦横寸法を示す信号,位置座標を示す信号である。
これら、図形分解回路からの電子ビームの照射時間T,矩形図形の縦横寸法(H,W),矩形図形の位置座標(X,Y)を、第2図に示す。
近接効果補正を行わない場合や、予め近接効果補正計算を行ってある場合には、照射時間Tは近接効果補正回路22を通らずにブランキング制御回路1に直接入力され、電子ビームの照射/非照射タイミング信号に変換される。
矩形図形の縦横寸法(H,W)は寸法制御回路3に入力され、電子ビーム断面形成用のアナログ信号に変換され、電子ビーム描画装置カラム7に入力される。矩形図形の位置座標(X,Y)は偏向制御回路5に入力され、位置偏向用のアナログ信号に変換され、電子ビーム描画装置カラム7に入力される。
露光面積比率を指標とする近接効果補正を行う場合には、照射時間Tは近接効果補正回路22によって、露光,露光エネルギーの演算,補正露光エネルギーの演算が次々に繰り返し行われる実時間補正が実行され、新たな照射時間がブランキング制御回路1に入力される。近接効果補正回路22で行われる照射時間Tの補正には、露光面積比率算出回路23で計算された分割された部分領域毎の露光面積比率信号Rと、全領域に共通の後方散乱係数ηとが使用される。
露光面積比率信号Rは部分領域毎に変化する値であるので、露光面積比率算出回路23において、予めメモリ(図示せず)にテーブル化して保持しておく。このテーブルは、矩形図形の縦横寸法(W,H)、および、位置座標(X,Y)を入力するときに作成される。
位置座標(X,Y)を記憶したメモリ(図示せず)の上位ビットをテーブル座標とし、各領域毎にW×Hを累積加算すれば、露光面積比率のテーブルが容易に作成できる。その後、各領域の数値を後方散乱の及ぶ範囲の他の領域の数値と平均化するなどして平滑化し、平滑化後の数値をその部分領域の数値とする。この平滑化処理は後方散乱径βの設定処理であり、平滑化の重み付けや繰り返し数は、設定すべき後方散乱径βに応じて選定する。
露光面積比率算出回路23は、描画時は位置座標(X,Y)によって露光面積比率Rの線形補間を行い、補間値を近接効果補正回路22へ出力する。
近接効果補正回路22が実行する補正計算は、以下のように行われる。露光エネルギーのうち前方散乱によるものを以下、描画部想定前方散乱蓄積エネルギーとよぶ。そして、この描画部想定前方散乱蓄積エネルギーの量を1とすると、描画パターンの描画時の前方散乱の寄与は、描画エッジで常に描画部想定前方散乱蓄積エネルギーの1/2になると定義する。
この理由を以下に述べる。ある描画パターンの縦断面を考える。その描画パターンを描画するのに必要な露光エネルギーを1、描画パターンの周囲の領域の露光エネルギーを0とすると、設計上は水平方向に0,1,0の矩形状の露光エネルギーを与えればよい。しかし、実際には、描画パターンのエッジ部では、いわゆるボケがあるため、電子ビームのエネルギーが0から1、1から0に急激に変化することはなく、エネルギーの量が0と1の間で傾斜を有する台形の形状となる。したがって、設計上エネルギー1のレベルの水平方向の領域、すなわち、山の頂上の部分は小さくなり、エネルギー0のレベルである山の裾の領域は大きくなる。この設計上矩形形状の描画パターンの水平方向の寸法を定義するにあたって、上記のように台形の山の頂上と裾とで寸法が異なるが、台形の傾斜部は矩形と高さが1/2の点で交差するので、水平方向の寸法を台形の高さの1/2、すなわち、エネルギーが1/2になる点で定義する。このようにすると、前方散乱の影響によって、露光エネルギーを示す台形の傾斜が変化しても、台形の傾斜部と矩形とが交差する高さが1/2の点の水平方向の位置は変化しない。したがって、実際の描画寸法をこのように定義すれば、矩形の設計寸法と一致させることができる。
描画パターンの線幅と線間の寸法が同じで、上述の露光面積比率が50%となる1:1のライン・アンド・スペース・パターンでの最適露光時間t50を基準とし、露光時間tは、露光面積比率Rに対して次式で与えられる。
t(R)=t50・(1+η)/(1+2・η・R) …(1)
上式(1)の形は、上述のように、描画パターンのエッジ部の蓄積エネルギーを揃えて、設計寸法と描画寸法との一致を図るものである。そして、最適露光時間の基準を露光面積比率が50%となる1:1のライン・アンド・スペース・パターンとした理由は、この条件においては、全ての散乱径の散乱に対して、描画パターンのエッジ部での電子ビーム蓄積エネルギーが、常に描画部想定蓄積エネルギーの1/2になり、最適露光時間の描画寸法依存性がないためである。これを理解するには描画パターンを描画エッジで折り返した状況を想定してみればよい。この状況では描画エッジを境に一方が全面描画域になり、他方が非描画域になるが、露光面積比率が50%となる1:1のライン・アンド・スペース・パターンの描画エッジ部の蓄積エネルギーはこの片側全面描画のエッジ部と等価である。このため、描画ライン幅にも散乱径にも依存しないのである。
上述の露光面積比率を指標とする近接効果補正に用いられている電子ビーム散乱パラメータは、前方散乱積分強度に対する後方散乱積分強度の比である後方散乱係数ηと、後方散乱径βの2種のみである。前方散乱の積分強度は、後方散乱の積分強度の基準としてのみ扱われている。この理由は、例えば、電子の加速電圧が50kV程度の場合、後方散乱の散乱径が10μm程度であるのに対して、前方散乱の散乱径が50nm程度と、1/100以下の小ささであることによる。
前方散乱を単なる基準とし、後方散乱の影響のみを補正する上述の補正方法の場合、線幅が300nm以上の描画パターンに対しては、比較的良好な補正結果が得られる。しかしながら、線幅200nm以下の描画パターンでは、露光面積比率が小さい領域において、描画パターンの線幅が小さくなるほど露光エネルギー不足が発生することが明らかになってきた。この理由は、従来考慮されていなかった散乱径が300nm程度の中間散乱の存在が無視できないためである。電子散乱をより正確に記述するためには、三つのガウス分布の記述で散乱径が300nm程度の中間散乱も考慮すべきである。
さらに、基板上に高感度の化学増幅型レジストを用いた場合には、その影響が大きくなる。化学増幅レジストの感度は、化学反応を支配する、電子ビーム照射で発生する酸触媒が本質的な前方散乱領域に対してどのくらいの広さまで拡散するかに依存し、見かけ上は前方散乱径の拡大が起るような形になるためである。例えば、化学増幅レジストで10倍の感度が得られる条件は、酸触媒が本質的な前方散乱領域に対して面積比で10倍の領域まで拡散する条件である。中間散乱径の大きさは前方散乱径に近く、後方散乱径とは大きく異なるので、近似的に前方散乱に取込んで考慮することが可能である。しかし、この時の見かけ上の前方散乱径は、従来想定されていた前方散乱径50nmの4倍の200nm程度迄拡大することがあり得ることが知られている。
実効的な前方散乱径の拡大が問題になる理由を、第3図を用いて、縦横比が大きく、他の描画パターンと比較的離れている孤立線を描画する場合を想定して説明する。第3図は、孤立線描画時の前方散乱による蓄積エネルギーの線幅方向の分布を示すグラフであり、(a)は描画線幅をパラメータとしたとき、(b)は描画線幅が前方徹乱径の二倍のときの前方散乱蓄積エネルギー比の理想分布と実際の分布との比較、(c)は描画線幅が前方散乱径に等しいときの前方散乱蓄積エネルギー比の理想分布と実際の分布との比較である。ここで、位置x/αは、実効前方散乱径αで規格化した単位での位置であり、描画エッジの値を0とする。また、前方散乱蓄積エネルギー比は、位置x/αにおける前方散乱蓄積エネルギーの、描画部の想定蓄積エネルギーに対する比である。
第3図(a)において、描画パターンの線幅wが実効前方散乱径αの2倍より大きい場合、例えば、線幅w/α=4.0の場合、記号*の星印で示されるように、位置x/α=0の想定描画エッジでの蓄積エネルギー比が、位置x/α=2の描画部の想定蓄積エネルギーの常に1/2になる。これに対し、描画パターンの線幅wが実効前方散乱径αに対して小さくなると、描画エッジでの電子ビーム蓄積エネルギーは、位置x/α=2の描画部の想定蓄積エネルギーの1/2よりも低下し、描画パターンの線幅の中心での蓄積エネルギーも低下する。この状況を第3図(b),第3図(c)によって説明する。
描画パターンの線幅wが実効前方散乱径αの2倍の場合、第3図(b)において、記号◇の白色菱形で示される前方散乱電子による蓄積エネルギーの分布は、記号□の白色四角形で示される理想分布より低く、山の形状をしている。しかし、位置x/α=0における想定描画エッジでの前方散乱蓄積エネルギー比が0.5で、想定描画エッジでの電子ビーム蓄積エネルギーが描画部想定蓄積エネルギーの1/2であり、この蓄積エネルギーの分布による線幅と設計上の線幅とが一致している。したがって、このパターンの描画では、記号■の黒色四角形で示されるように補正なしで想定どおりの線幅を得ることができる。
これに対して、描画線幅wが実効前方散乱径αに等しい場合、第3図(c)において、描画部想定蓄積エネルギーの1/2となる位置は、位置x/α=0における想定描画エッジよりも線幅の内側となり、電子ビーム蓄積エネルギーが不足するので、想定どおりの描画が行えない。補正なしで描画を行うと、露光エネルギーが不足して、線幅w/α=1よりも細い線となってしまう。
さらに、描画線幅が細い場合は、第3図(a)の記号◆の黒色菱形で示すように、描画部想定蓄積エネルギーの1/2となる領域が無くなり、描画自体が行えなくなる。
この状況を、第4図に整理して示す。第4図は、孤立線描画時の、描画中心と描画エッジ部の、前方散乱電子による蓄積エネルギー強度の描画線幅依存性を示し、前方散乱蓄積エネルギー比の描画線幅依存性を示すグラフであり、横軸は設計線幅の前方散乱径に対する比である。第4図において、描画寸法が実効前方散乱径の2倍より小さくなると、線状の描画パターンの設計エッジ部の電子ビーム蓄積エネルギーが低下し、前方散乱蓄積エネルギー比が0.5である点、すなわち、描画部想定蓄積エネルギーの1/2になる位置が、描画線幅の内側になるので、線幅の設計寸法に対する線幅細りが発生する。更に、描画寸法が実効前方散乱径程度となると、電子ビーム蓄積エネルギーのピーク値も描画部想定蓄積エネルギーの1/2以下になり、像形成自体が不可能となることがわかる。これらの状況は、第3図のw/α=1.0およびw/α=0.5の描画に例示される状況である。
このため、微細寸法描画時に、描画寸法に応じて露光エネルギー調整を行うことが必要になる。望ましい形の補正は、式(1)で説明したように、第4図に示す孤立線エッジ部の前方散乱蓄積エネルギー比が描画寸法によらず、0.5となる形の補正である。
この様な描画寸法に応じた露光エネルギー調整は、前述の日本国特許出願公開平10−189422号公報に述べられている。このような補正を行えば、第3図(a)に対応する前方散乱蓄積エネルギー比の分布は第5図(a)に示すようになる。第3図(a)と比べて、蓄積エネルギー比が増加されてる。
第5図(b)は、第3図(c)と同じく、描画線幅wが実効前方散乱径αに等しい場合の描画補正時の前方散乱蓄積エネルギー比の分布を示すが、想定どおりの描画が行われる形になっている。また、第5図(c)は描画線幅wが実効前方散乱径αの1/2の場合の描画補正時の前方散乱蓄積エネルギー比の分布を示すが、この場合でも想定どおりの描画が行われる形になっている。
ただし、日本国特許出願公開平10−189422号公報に述べられている本従来技術においては、描画寸法に応じた露光エネルギー調整の必要性の原因を寸法測定精度不足による露光エネルギー不足に求めており、以下の理由のため望ましい形の補正とはなっていない。すなわち、本従来技術においては、露光面積比率に無関係に同一の補正が与えられるが、この補正では、露光面積比率が50%のライン・アンド・スペース・パターンや、線幅よりも線の間隔が狭い露光面積比率が高い描画パターンでオーバードーズが発生し、パターン潰れが起るという問題を新たに発生させる。
第6図および第7図は、第3図や第5図と同様の、前方散乱蓄積エネルギー分布を示すグラフであり、ライン・アンド・スペース・パターン描画の場合を示す。以下の説明は、実効的な前方散乱の影響のみを示し、後方散乱の影響を含んでいないが、現実にはこれにほぼ一定と見做せる後方散乱電子による蓄積エネルギーが加わるので、以下の結果よりも広い線幅が描画される。
第6図に示すような露光面積比率が50%である線幅とその間の比率が1対1のライン・アンド・スペース・パターンにおいて、露光エネルギー補正の前における描画エッジでの電子ビーム蓄積エネルギーの値は、描画寸法によらず常に描画部想定蓄積エネルギーの1/2になる。これに対し、従来技術に記載された孤立細線に対する補正と同一の線幅依存補正をこのパターンに加えると、第7図に示すように、電子ビーム蓄積エネルギーが増加し、オーバードーズが発生し、記号■の黒色四角形で示される描画域が第6図の場合と比べて広くなる寸法太りが発生する。
この現象を第8図に示す。第8図は、従来技術における寸法依存補正により、露光面積比率が50%である線幅とその間の比率が1対1のライン・アンド・スペース・パターンで発生するオーバードーズを示し、前方散乱蓄積エネルギー比の描画線幅依存性を示すグラフであり、横軸は設計線幅の前方散乱径に対する比である。第8図において、孤立細線の描画時に必要となる線幅依存補正を、線幅とその間の比率が1対1のライン・アンド・スペース・パターンに対して実行すると、第8図に示すように、描画パターン寸法が小さいほど大きなオーバードーズが発生する。
以上述べた従来技術による、第6図,第7図,第8図に示したライン・アンド・スペース・パターンの描画の例は、実効的な前方散乱の影響のみを示し、後方散乱の影響を含んでいないが、現実にはこれにほぼ一定と見做せる後方散乱電子による蓄積エネルギーが加わる。このため、1対1のライン・アンド・スペースの微細パターンの解像は元々困難であるので、現実には、線の間隔が描画線幅より広いパターンを描画するようにしている。しかし、この場合でも、描画線幅と線の間隔が細くなると、上記の従来技術による補正法では、線の寸法太りや、線同士がつながってしまうパターン潰れが発生しやすい。
発明の開示
電子ビーム描画装置において、描画される描画パターンが孤立微細パターンである場合、描画時に露光エネルギーが不足する。上述した従来技術では、この対策として、寸法依存の露光エネルギー補正を行う。しかし、露光面積比率が高い領域が過剰露光となってしまうという問題点を有していた。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、露光面積比率が異なる領域が混在する微細パターン描画に対しても描画寸法精度が良好な電子ビーム描画装置および電子ビームを用いた描画方法を提供するものである。
この問題を解決するため、本発明は、前方散乱径に対応した補正である線幅依存補正と、後方散乱係数に対応した補正である露光面積比率依存補正の整合をとり、露光面積比率が異なる領域が混在する微細パターン描画に対しても描画寸法精度が良好な電子ビーム描画装置を提供するものである。
また、本発明は、前方散乱径αを基準寸法とする寸法依存補正を後方散乱係数ηに取込んで実効後方散乱係数ηとし、実効後方散乱係数ηと露光面積比率Rとで露光エネルギーの補正を行う構成を備えるものである。
より具体的には、本発明の実施態様においては、(1)露光パターンを電子ビーム描画装置の最大ショットサイズ以下の寸法に矩形分割し、その分割した矩形パターンを矩形電子ビームで順次露光する電子ビーム描画装置において、露光される矩形パターンの描画パターン幅と描画パターン長の両寸法に対して予め設定した補正パラメータと、描画域の基準面積に対する露光面積比率によって、露光エネルギーを調整して露光を行うものである。
さらに、(2)上記露光エネルギーの調整は、矩形パターン寸法の両方向の寸法を同一の基準で分類し、両方向の寸法分類に対応する補正パラメータテーブルを作成し、該補正パラメータテーブルと描画域の露光面積比率テーブルとを参照して行われるものであり、電子ビームの照射による描画を行いながら補正する実時間補正が可能になる。
また、上記露光エネルギーの調整を補正パラメータテーブルに対応する図形の微小ドット毎に実験的に定めるのは、データ量が多く煩雑で現実的では無いので、(3)上記各描画パターンの描画パターン幅と描画パターン長に依存する補正パラメータが、複数の寸法分類に対して、一つの基準寸法に対する分類寸法を中間パラメータとして定められる補正パラメータとしたものであり、補正パラメータの設定を容易にできる。
これを実現するために、(4)上記基準寸法は、電子ビーム描画における電子の散乱を二つのガウス分布で記述した場合の、分散が狭い方のガウス分布である前方散乱の散乱径であって、補正パラメータはこの前方散乱径を基準として換算される無次元の描画寸法に対して決められるものである。
上述したガウス分布は、レジスト処理条件に依存する実効的な分布である。また、基準寸法となる散乱径は、レジスト処理条件に依存する実効的な値であり、補正パラメータとして入力されるものである。本発明の実施態様では、描画寸法に依存した補正に関わるレジスト処理条件の依存性は、実効前方散乱径の変化の形で設定している。
本発明の実施態様では、さらに、(5)前記の基準寸法による換算寸法を変数とする誤差関数を中間パラメータとして定められる補正パラメータとしている。ここで、x方向の幅がW、y方向の高さがHである孤立パターンを描画する場合を考える。描画パターンのコーナー部の前方散乱による蓄積エネルギーは、散乱分布関数をxに関して0からWまで積分し、yに関して0からHまで積分することによって与えられる。これは、前方散乱をガウス分布で記述した場合に、誤差関数の積で記述できる形となることを利用している。
ただし、上記補正パラメータを、露光面積比率に無関係に与えると、前述したように、露光面積比率が高い領域でオーバードーズが発生し、パターン潰れが起るという問題が発生する。このため本発明の実施態様では、(6)前記露光エネルギーの調整において、露光面積比率が50%となる線幅と線の間隔の比が1対1のライン・アンド・スペース・パターンに対しては、露光される矩形パターンの一方の寸法が予め設定した寸法以下の場合でも補正されない構成とする。
本発明の実施態様は、直接的な描画寸法依存の露光エネルギー補正ではなく、後方散乱係数に描画寸法依存補正を加えるものである。そして、大寸法描画に対する従来技術の補正法と連続的につながる寸法依存補正を実現するものである。
したがって、本発明の実施態様は、(7)描画するに先立って、基本描画図形データから得られる描画すべき図形パターンに対して複数の部分領域に分割し、該分割された各部分領域についての露光面積比率を計算して記憶手段に記憶させる露光面積比率計算手段と、描画するに先立って、描画すべき図形パターンの幅および長さの分類に対して、補正不用の大寸法パターンに対して予め与えた2−ガウス分布近似記述での後方散乱係数に対する補正係数を計算して描画寸法依存の実効後方散乱係数を与える後方散乱係数補正計算手段を備え、前記の露光面積比率計算手段の記憶手段から読み出された領域毎の露光面積比率と、前記の後方散乱係数補正計算手段から出力される図形パターン毎の実効後方散乱係数を参照して実時間で露光時間についての近接効果補正計算を行い、該補正された露光時間の間だけ成形電子ビームを照射して描画図形を描画する制御部を含む電子ビーム描画光学系とを備えるものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明による実施態様を以下説明する。
第9図は、可変成形型電子ビーム描画装置の構成の概略を示す図である。カラム7は縦断面図で示してある。
電子源8から引き出された電子ビーム21は、成形レンズ10,14、縮小レンズ16,投射レンズ18からなる電子光学レンズユニットを通過し、X−Yステージ20の上に設置された基板19に照射される。さらに、電子ビーム21の光軸上に、矩形開口マスク11が設置され、電子ビーム21が矩形に成形される。また、電子ビーム21の光軸上に、露光マスク15が設置され、電子ビーム21が所望の形状に成形される。電子ビーム21を制御するために、照射のON−OFFを行うブランキング電極9とその電流を制御するブランキング制御回路1、部分一括パターンの描画を行う場合に、露光マスク15に設けられた部分一括パターンの選択を行う転写偏向電極12とその電流を制御する転写偏向制御回路2、矩形描画時に電子ビームのサイズを制御する成形偏向電極13とその電流を制御する寸法制御回路3、基板19上の描画位置を制御する位置偏向電極17とその電流を制御する偏向制御回路5が設けられている。これらの制御回路1,2,3,5は、これらに信号ライン6で接続されるとともに、コンピュータを備えた制御装置4によって、制御される。
矩形描画を行う場合には、矩形電子ビームを転写偏向電極12によって、露光マスク15上の大きな矩形開口部に導き、さらに成形偏向電極13によって、矩形開口マスク11上の開口と、露光マスク15上の大きな矩形開口の切り合いを調整して、描画を行う。部分一括パターンの描画の場合、部分一括パターンの選択は、矩形に成形された電子ビーム21を転写偏向電極12によって偏向させ、露光マスク15上の所望のパターンに導くことによって行われる。
次に、本発明による露光エネルギー補正の原理を説明する。散乱電子の蓄積エネルギー強度分布EID(r)を、前方散乱積分強度を1とする2−ガウス分布で記述すると次式の形になる。
EID(r)=(1/π){(1/α)exp(−r/α)+(η/β)exp(−r/β)} …(2)
ここで、上式(2)の第一項は前方散乱によるガウス分布、第二項は後方散乱によるガウス分布である。また、αは前方散乱径、βは後方散乱径、ηは前方散乱を基準とする後方散乱の積分強度比で定義される後方散乱係数である。
上式(2)は極座標形式で距離rの関数の形で示されているが、r=x+yの関係を利用すると、xy座標形の式に変形できる。すなわち、前方散乱に関する部分は次式の形になる。
(1/π)・(1/α)・exp(−r/α)=(1/π)・(1/α)・exp(−x/α)・exp(−y/α)…(3)
したがって、前方散乱径αを基準寸法とすることによって、前方散乱挙動が統一的に把握できる。
x方向幅がW、y方向高さがHの孤立パターンを描画する状況を考えると、描画パターンのコーナー部の前方散乱による蓄積エネルギーは、式(3)をxに関して0からWまで積分し、yに関して0からHまで積分することによって与えられるが、これは誤差関数の積で記述できる形である。したがって、前者の積分はW/αに対する誤差関数値erf(W/α)の1/2、後者の積分はH/αに対する誤差関数値erf(H /α)の1/2になる。
ここで、誤差関数erf(a)は、次式のガウス分布関数G(t)を0からaまで積分した値を与えるもので、aが2より大でほぼ1になる性質の関数である。
G(t)=(2/√π)・exp(−t) …(4)
孤立パターンに対する寸法依存補正は、積分上限aが2より小さくなった場合に起る誤差関数値erf(a)の低下を補正すればよいので、孤立パターンの露光エネルギー補正は大サイズのパターンに対して与えられる露光エネルギーを、二つの誤差関数erf(W/α),erf(H /α)で除する形に補正すればよい。
一方、描画パターンサイズが比較的大きくて、寸法依存補正が不用の場合、後方散乱の影響を補正すればよく、先に述べたように、式(1)の近接効果補正式が使える。式(1)は描画寸法によらず描画パターンエッジ部の蓄積エネルギーを揃えることで設計寸法と描画寸法を一致を図るもので、このとき前方散乱の寄与は描画エッジでの電子ビーム蓄積エネルギーが常に描画部想定蓄積エネルギーの1/2になることを前提に定式化されている。これは、描画寸法が常に前方散乱径の2倍以上であることを前提にしているとも言える。式(1)において、R=0とすると、下式に示す、露光面積比率が0に近似できる孤立パターン描画時の最適露光時間tを得る。
=t50・(1+η) …(5)
ところが、描画寸法が前方散乱径αの2倍以下の孤立パターンの描画時に、描画パターンのエッジ部の蓄積エネルギーを、描画寸法が前方散乱径αの2倍以上のパターンに揃えるためには、前述したように、孤立パターン描画時の最適露光時間tを以下の描画寸法依存性を示す式とする必要がある。
(W,H)=t/erf(W/α)/erf(H/α) …(6)
前述の式(5)のt50は原理的に描画寸法依存性を示さないので、後方散乱係数ηが実効的に次式のように描画寸法に依存するとすれば、前述の式(1)の補正式を描画寸法が前方散乱径αの2倍以下の場合に対して、矛盾無く拡張できる。
1+η(W,H)=(1+η)/erf(W/α)/erf(H/α)…(7)
したがって、式(1)の補正式を次式の形の描画寸法依存式に変形する。
t(R,W,H)=t50・{1+η(W,H)}/{1+2・η(W,H)・R}…(8)
この補正式は、露光面積比率Rが0.5より小さい領域で描画パターンサイズ(W,H)が小さくなる場合に露光時間が長くなる形となっている。ただし露光面積比率Rが0.5の場合は描画パターンサイズが小さくても補正がかからない形になっている。また、大寸法描画に対する従来の近接効果補正法に連続的につながる寸法依存補正式になっている。本発明は、以上の補正原理の上に以下に示す実施態様により実現される。
第10図は、第2図の可変成形型電子ビーム描画装置における近接効果補正に、描画寸法依存補正を加えるための制御回路の構成を示すブロック図である。
図中の記号は第2図と共通であり、Tは図形分解回路(図示せず)からの電子ビーム照射時間、(W,H)は矩形図形の縦横寸法、(X,Y)は位置座標である。照射時間Tは最終的にはブランキング制御回路1に入力され、電子ビームの照射/非照射タイミング信号に変換される。矩形図形の縦横寸法(W,H)は寸法制御回路3に入力され、電子ビーム断面形成用のアナログ偏向信号に変換される。位置座標(X,Y)は偏向制御回路5に入力され、位置偏向用のアナログ信号に変換される。そして、それぞれの信号は電子ビーム描画装置カラム7に入力され、電子ビームの制御に用いられる。
ブランキング制御回路1へは、実描画時に照射時間Tを近接効果補正回路22によって、露光と露光エネルギー補正とが繰り返し行われる実時間補正を行った補正信号が入力される。この補正信号は、描画領域を分割した部分領域毎の露光面積比率Rと、後方散乱係数補正計算回路24で演算される実効後方散乱係数ηとによって求められる。実効後方散乱係数ηは、後方散乱係数ηに描画パターンサイズ依存性を取り込んだものである。
露光面積比率Rは、分割された部分領域ごとに異なる値であるので、露光面積比率算出回路23において、予めメモリ(図示せず)にテーブル化しておく。このテーブルは、矩形図形の縦横寸法(W,H)、および、位置座標(X,Y)を入力するときに作成される。
位置座標(X,Y)を記憶したメモリ(図示せず)の上位ビットをテーブル座標とし、各領域毎にWとHの積の値を累積加算すれば、露光面積比率のテーブルが容易に作成できる。その後、各領域の数値を後方散乱の及ぶ範囲の他の領域の数値と平均化するなどして平滑化し、平滑化後の数値をその部分領域の数値とする。この平滑化処理は後方散乱径の設定処理であり、平滑化の重み付けや繰り返し数は、設定すべき後方散乱径βに応じて選定する。
そして、露光面積比率算出回路23は、描画時は位置座標(X,Y)によって露光面積比率Rの線形補間を行い、補間値を近接効果補正回路22へ出力する。
本実施例の特徴は、近接効果補正回路22へ入力する後方散乱係数を、描画パターンサイズ依存性を取込んだ実効値ηとするところにある。この補正計算は、後方散乱係数補正計算回路24で行われる。
後方散乱係数補正計算回路24へは、前方散乱径α,後方散乱係数η,矩形図形の縦横寸法(W,H),位置座標(X,Y)が入力される。縦横寸法(W,H)は実時間で入力され、前方散乱径αと後方散乱係数ηとは描画に先立って予めメモリ(図示せず)などに記憶される。
後方散乱係数補正計算回路24は、実際に描画する時点で、描画図形の縦横寸法(W,H)を「L(1)未満,L(1)以上L(2)未満,…,L(n)以上」に分類する機能を有している。ここで、縦横寸法(W,H)が予め定められた値以上のものの分類である最大分類は、描画寸法依存補正のときの無補正条件とし、分類された縦横寸法(W,H)のひとつひとつには、予め代表寸法「L0,L1,・・・,Ln」を付しておく。各代表寸法と図形分解条件との整合をとるようにすれば、分類数が少なくても問題はない。
さらに、後方散乱係数補正計算回路24は、上記の代表寸法と、前方散乱径αに対する誤差関数値「erf(L0/α),erf(L1/α),・・・,erf(Ln/α)」を計算して、テーブルとして記憶する機能を有する。ここで、誤差関数erf(a)は、前述の式(4)のガウス分布関数G(t)を0からaまで積分した値を与えるもので、aが2より大でほぼ1になる性質を有する関数である。
第1図は、後方散乱係数補正計算回路24を主とした本実施例の機能を示すフローチャートである。ステップ31で、露光パターン矩形分割、ステップ32で、矩形パターンの決定の後、ステップ33で、矩形寸法のチェックが実行される。
ステップ34では、実際に描画する時点で、誤差関数テーブル25を用いて、矩形図形の縦横寸法(W,H)の分類に応じて誤差関数値のピックアップが実行される。
誤差関数テーブル25は、ステップ41で、分類代表寸法設定、ステップ42で、前方散乱径αによる規格化の後、ステップ43で作成される。
ステップ35では、後方散乱係数ηに対して補正計算を実行する。すなわち、下式(9)により実効後方散乱係数ηを演算する。
η=(1+η)/erf(W/α)/erf(H/α)−1 …(9)
ここで、この補正計算を補正に先立って予め実行させ、描画寸法分類に対する実効後方散乱係数ηのテーブルを作成しておき、描画時にこのテーブルを参照して補正しても良い。このテーブルについては、第11図,第12図で説明する。
ステップ36では、後述の式(10)を用いて露光時間補正を実行し、ステップ37で、電子ビームによる露光を実行する。
式(9)に示した実効後方散乱係数ηを用いた補正は、縦横寸法(W,H)に対して等価であり、かつ縦横の両寸法が小さい場合には一方のみが小さい場合よりも大きな補正が加わる。これは、aが2より大で誤差関数erf(a)がほぼ1になる性質の関数であることによる。また、この誤差関数の性質によって、この補正式では縦横の両寸法WとHが大きい場合、実効後方散乱係数ηが真の後方散乱係数ηに一致する。したがって、本実施例による補正の方法を微小パターンに限定せずに、描画する全パターンに適用することも可能である。
第11図は、ラインパターン描画時の実効後方散乱係数ηの設定例を示す表であり、前方散乱径に依存する実効後方散乱係数設定値の、真の後方散乱係数と描画線幅に対する変化を示す。また、第12図は、真の後方散乱係数ηが0.5の場合の、矩形パターン描画時の実効後方散乱係数ηの設定例を示す表であり、前方散乱径に依存する実効後方散乱係数設定値の、描画矩形サイズに対する変化を示す。
第11図に、真の後方散乱係数ηが0.3,0.5,0.7,1.0の場合に、前方散乱径αを基準とする線幅W/αのライン描画において、どのような実効後方散乱係数ηが設定されるかが示されている。W/αが2以上では、真の後方散乱係数ηにほぼ等しい値の実効後方散乱係数ηが設定され、W/αが2より小さくなると、真の後方散乱係数ηよりも大きな値が実効後方散乱係数ηに設定されている。
第12図に、真の後方散乱係数ηが0.5のときに、幅W,高さHの矩形描画において、設定される実効後方散乱係数ηの値が示されている。線幅W/αと、線幅H/αがともに2以上では、真の後方散乱係数ηにほぼ等しい実効後方散乱係数ηが設定される。線幅W/α、線幅H/αの一方が2より小さくなると、真の後方散乱係数ηよりも大きな値が実効後方散乱係数ηに設定されるようになる。しかし、線幅W/α、線幅H/αの両方が2より小さくなると、さらに大きな値が実効後方散乱係数ηに設定されている。
以上の、実効後方散乱係数ηの出力までが、第10図に示した後方散乱係数補正計算回路24の機能である。
第10図に示した近接効果補正回路22は、実効後方散乱係数ηと、露光面積比率算出回路23からの分割された部分領域毎の露光面積比率Rとを参照して、露光時間Tの近接効果補正計算を実時間で行う。この補正は、露光面積比率が50%となるライン・アンド・スペース・パターンにおける最適露光時間t50を基準として次式によって定義される。
t(R,W,H)=t50・(1+η)/(1+2・η・R) …(10)
この補正式は、形式的に描画寸法依存補正がない式(1)の場合と同じ形であり、露光面積比率Rが小さい場合には露光時間が長くなる。ただし、描画寸法依存性が、前述の式(9)から実効後方散乱係数ηに反映されているので、露光面積比率Rが0.5より小さい部分領域で、描画パターンサイズ(W,H)が小さくなる場合にも、露光時間が長くなる。また、この補正式では、露光面積比率Rが0.5の場合は、描画パターンサイズが小さくても、描画寸法依存の補正がかからないようになっている。さらに、大寸法パターン描画時は、実効後方散乱係数ηが真の後方散乱係数ηに一致するので、全ての描画パターンに対して使用可能な補正式である。
以上述べた本発明の実施例による補正を、機能面から以下にまとめる。
(1)描画図形の縦横寸法(W,H)を分類する。
(2)各分類に代表寸法L0,L1,…,Lnを与えておく。
(3)各代表寸法を前方散乱径αで除した数値の誤差関数値をテーブルとして記憶する。
(4)描画図形の縦横の両寸法に応じてテーブル値を参照して後方散乱係数ηを補正する。
(5)露光面積比率50%では寸法依存補正がかからないように露光エネルギー補正を実行する。
ただし、(4)は実時間補正とせずに、予め計算によりテーブル化しておき、描画時に図形寸法に応じて実効後方散乱係数ηの値のテーブル値を参照する方法としてもよい。
なお、以上の本発明の実施態様においては、混乱を避けるため、可変成形型電子ビーム描画装置における一例を説明したが、部分一括パターン描画方法に対しても対応可能である。部分一括パターン描画方法に対して本発明を適用する場合には、部分一括パターン描画情報に付加情報として、露光面積比率Rと最小パターン寸法(W,H)に関する情報を付加しておく。そして、部分一括パターン描画時に、これらの付加情報を参照して描画を行う構成とする。この方法によって、本発明を部分一括パターン描画装置および方法に対しても、適用することが可能になる。
以上述べた本発明の実施態様によれば、基板上の線幅200nm以下のパターンを描画する場合、パターンサイズが小さくなるほど露光エネルギー不足が発生するという、露光エネルギーの描画パターンサイズ依存性を正確に補正することができる。したがって、電子ビーム描画装置の生産性を低下させずに線幅200nm以下の微細パターンの高精度描画を実現することができる。
また、最適露光エネルギーの描画パターンサイズ依存性が、高感度の化学増幅型レジストを高感度条件で用いた場合にはより大きなパターンサイズで現れるため、化学増幅型レジストの高感度条件での使用と微細寸法描画精度の両立は困難であったが、本発明の実施態様によれば、化学増幅型レジストを高感度条件で使用することが可能となり、電子ビーム描画装置の生産性を高めることが可能となる。
以上のように、本発明によれば、電子ビーム描画装置において、描画される描画パターンが孤立微細パターンである場合描画時に露光エネルギーが不足し、寸法依存の露光エネルギー補正を行うと、露光面積比率が高い領域が過剰露光となってしまうという問題点を解決し、露光面積比率が異なる領域が混在する微細パターン描画に対しても描画寸法精度が良好な電子ビーム描画装置および電子ビームを用いた描画方法を提供することができるという、顕著な効果を得ることができ、極めて有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、後方散乱係数補正計算回路24を主とした本実施例の機能を示すフローチャートである。第2図は、近接効果補正のための制御回路の構成を示すブロック図である。第3図は、孤立線描画時の前方散乱による蓄積エネルギーの線幅方向の分布を示すグラフである。第4図は、孤立線描画時の、描画中心および描画エッジ部の前方散乱蓄積エネルギー比の描画線幅依存性を示すグラフである。第5図は、寸法依存補正をして孤立線描画を行った場合の前方散乱蓄積エネルギーの分布を示すグラフである。第6図は、ライン・アンド・スペース・パターン描画時の前方散乱蓄積エネルギーの分布を示すグラフである。第7図は、孤立線描画時と同一の線幅依存補正をライン・アンド・スペース・パターン描画に加えた場合の前方散乱蓄積エネルギー分布を示すグラフである。第8図は、孤立線描画時と同一の寸法依存補正をライン・アンド・スペース・パターン描画に加えた場合の前方散乱蓄積エネルギー比の描画線幅依存性を示すグラフである。第9図は、可変成形型電子ビーム描画装置の構成の概略を示す図である。第10図は、可変成形型電子ビーム描画装置における近接効果補正と描画寸法依存補正を行うための制御回路の構成を示すブロック図である。第11図は、細線描画時の実効後方散乱係数ηの設定例を示す表である。第12図は、真の後方散乱係数ηが0.5の場合の、矩形描画時の実効後方散乱係数ηの設定例を示す表である。

Claims (7)

  1. 露光パターンを電子ビームの最大ショットサイズ以下の寸法の矩形形状に分割し、該分割した矩形パターンを矩形電子ビームで基板上に順次露光する電子ビーム描画装置において、露光される前記矩形パターンの縦寸法と横寸法に対して予め設定された後方散乱係数に対する補正パラメータを設定する後方散乱係数補正計算回路と、前記基板上の領域の基準面積に対する露光される面積の比率を設定する露光面積比率算出回路と前記後方散乱係数補正計算回路で設定された後方散乱係数に対する補正パラメータと前記露光面積比率算出回路で設定された基準面積に対する露光される面積の比率とに基づいて露光時間を調整する近接効果補正回路と、該近接効果補正回路で調整された露光時間に基づいて露光を行う電子ビーム描画装置カラムとを備えたことを特徴とする電子ビーム描画装置。
  2. 請求項1において、前記露光面積比率算出回路では、前記基板上の領域の各々について前記基準面積に対する露光される面積の比率から露光面積比率テーブルを作成し、前記近接効果補正回路では、前記矩形パターンの縦寸法と横寸法を同一の基準で分類し、両寸法の分類に対応する後方散乱係数に対する補正パラメータテーブルを作成し、該補正パラメータテーブルと前記露光面積比率テーブルとを参照して露光時間を調整することを特徴とする電子ビーム描画装置。
  3. 請求項2において、前記後方散乱係数補正計算回路で設定される後方散乱係数に対する補正パラメータは、複数の前記分類に対して一つの基準寸法に対する分類寸法を中間パラメータとして定められる後方散乱係数に対する補正パラメータであることを特徴とする電子ビーム描画装置。
  4. 請求項3において、前記基準寸法は、前記電子ビームを照射したときの前記基板内の電子の散乱を2つのガウス分布で表したときの散乱が狭い方のガウス分布で表される散乱径であることを特徴とする電子ビーム描画装置。
  5. 請求項2において、前記後方散乱係数補正計算回路で設定される後方散乱係数に対する補正パラメータは、複数の前記分類に対して一つの基準寸法によって換算される換算寸法を変数とする誤差関数を中間パラメータとして定められる後方散乱係数に対する補正パラメータであることを特徴とする電子ビーム描画装置。
  6. 請求項1において、前記近接効果補正回路では、前記露光面積比率算出回路で設定される面積の比率が50%のライン・アンド・スペース・パターン以外に対して、前記露光時間の補正がなされることを特徴とする電子ビーム描画装置。
  7. 基板を描画するに先立って、基本描画図形データから得られる描画すべき図形パターンに対して複数の部分領域に分割し、該分割された各部分領域についての露光面積比率を計算して記憶手段に記憶させる露光面積比率算出回路と、前記基板を描画するに先立って、前記描画すべき図形パターンの幅および長さの分類に対して、予め定められた大きさ以上の大寸法パターンに対して予め与えられた2−ガウス分布近似で表される後方散乱係数に対する補正を計算して描画寸法依存の実効後方散乱係数を与える後方散乱係数補正計算回路と、前記露光面積比率計算手段の前記記憶手段から読み出された前記各部領域毎の露光面積比率と、前記後方散乱係数補正計算手段から出力される前記描画すべき図形パターン毎の実効後方散乱係数とを参照して露光時間を近接効果補正する近接効果補正回路と、該近接効果補正回路で補正された露光時間に基づいて前記基板へ電子ビームを照射して前記描画すべき図形パターンを描画する電子ビーム描画装置カラムとを備えたことを特徴とする電子ビーム描画装置。
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