JP4066111B2 - 水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物 - Google Patents

水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
ミネラルとは栄養学上、食品成分中の無機質をいう。人体に必要なミネラルはカルシウム、鉄、亜鉛、銅、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、塩素、ヨウ素などで、何れも微量であるが生理学的意味は大きい。栄養学で現在、特に重要視されているものはカルシウムと鉄である。
【0003】
従来よりカルシウムは、骨や歯を形成するために生体に欠かすことの出来ないミネラルであるが、最近摂取量不足が若年者の骨折や高齢者の骨粗鬆症の増加等に関連して問題視されている。このカルシウム摂取量不足を補うために、食品へのカルシウム強化が試みられており、カルシウムの生体吸収性が比較的良いとされている牛乳へのカルシウム強化や若年者が摂取し易いシリアル食品、スナック菓子等の嗜好性食品へのカルシウム強化が増えてきている。例えば牛乳に添加するカルシウム添加剤としては、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等の有機酸カルシウムがあるが、有機酸カルシウムは水溶性であるため牛乳中の蛋白質と反応して加熱滅菌時に凝固物を生じ易く、又、有機酸カルシウム自身のカルシウム成分比が小さいために牛乳への添加量が必然的に多くなり食味上にも問題がある。
一方、炭酸カルシウム、卵殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、貝殻焼成カルシウム、サンゴ焼成カルシウム、卵殻未焼成カルシウム、骨未焼成カルシウム、貝殻未焼成カルシウム、サンゴ未焼成カルシウム、リン酸カルシウム等の水不溶性カルシウム塩は、牛乳中の蛋白質と反応して凝固物を生じることもなく、又、無味無臭で食味に及ぼす影響も少ないため少量添加でカルシウム強化が出来ることからカルシウム強化基材として好ましい。嗜好性の強いシリアル食品やスナック菓子等の食品においても、水溶性である有機酸カルシウムの使用は食味上の問題があり、水不溶性カルシウム塩の使用が好ましいのが実情である。
【0004】
このため、最近、炭酸カルシウム等の水不溶性カルシウム塩をカルシウム強化基剤として使用した牛乳や嗜好性食品に添加する応用例が増えてきているが、水不溶性カルシウム塩は全般に比重が3前後と高く、液中で短時間に沈澱し、懸濁安定性に問題がある。この問題を解決する方法として、例えば炭酸カルシウムと結晶セルロースを同時的に添加してその網目構造により炭酸カルシウム粒子を支持させる方法(特開昭56-117753 号公報)やショ糖脂肪酸エステル等のHLB が10以上の親水性乳化剤を添加したものに超音波を照射し、炭酸カルシウムの分散性を改良する方法(特開昭64-69513号公報)、或いはメタリン酸ナトリウム(特開平9-20629 号公報)やアルギン酸プロピレングリコールエステル(WO96/13176号公報)等の食品添加物として認可されている分散剤を添加する方法が知られている。
【0005】
しかし、結晶セルロースを用いた場合は、カルシウム懸濁液系の粘度が上昇し、これを牛乳で使用すると食味に影響する。又、親水性乳化剤を用いた場合は、超音波照射等の特殊な分散方法が必要であり、生産効率が悪い等の問題がある。又、メタリン酸ナトリウム等の低分子分散剤を使用した場合は、牛乳の様なpHが中性のものではある程度の効果が期待できるが、シリアル食品やスナック菓子等に添加する場合、pHが酸性側であったり、調味のため食塩等の電解質が存在する高濃度な系に混合された場合には、良好な懸濁安定性が得られないという問題がある。アルギン酸プロピレングリコールエステルの様な食品添加物として認可されている高分子分散剤を使用した場合は、低分子分散剤では分散し難い条件でも添加量を増やせばある程度の分散効果が得られるが、食品添加物であるため使用量に制限があり、現実にその様な食品に使用することは難しい。
【0006】
以上のようにカルシウム強化基材として水不溶性カルシウム塩は食味上、又、他の成分との反応性上、優秀な素材であるが、使用する食品の製造工程、或いは流通・陳列等の品質を保証する期間に懸濁状態を保つ必要があり、懸濁安定性を保つための手段として使用される各種分散剤の添加において、食味上又は生産効率上、或いは他成分との反応性の上で、現状では必ずしも全てが満足されてはいない。
【0007】
一方、近年、鉄分不足による貧血症状を起こす女性が多数見られる。この傾向は、女子高生や若い成人女性において特に顕著である。この鉄欠乏性貧血の原因としては、食生活に由来する点が最も大きいが、女性の場合は生理的な出血、妊娠による鉄需要の増加、及びダイエットによる摂取不足等、鉄不足による貧血になり易い環境下にあり、一般的に約半数の女性は鉄が不足していると言われている。この鉄不足を解消するために、鉄分強化食品が販売されるようになってきており、牛乳、清涼飲料水等に鉄分を強化した商品も多数販売され始めている。例えば清涼飲料水に添加する鉄添加剤としては、乳酸鉄、クエン酸鉄ナトリウム、グルコン酸第1鉄等の水溶性の有機酸鉄塩があるが、これらは鉄味が強く、食感の問題で、一度にあまり多くの量を使用できないという問題がある。又、ピロリン酸第2鉄等の水不溶性及び難溶性鉄塩の分散体を用いた場合、鉄臭は改善されるものの、比重が2.75以上と高く、清涼飲料水等に分散させた場合、液中で短時間に沈澱し、懸濁安定性に問題がある。
【0008】
また、カルシウムや鉄以外のミネラルについても、今後、バランス良く摂取するために食品や飲料に添加されることが考えられ、カルシウムと同様に、食味上、反応性上、優秀な難水溶性ミネラルを利用することになると、食味上、生産効率上、或いは他成分との反応性の上で優秀な分散剤が必要となることが容易に推察される。
【0009】
一方、中華麺の製造において、小麦粉、澱粉等を混錬する練り水には、かん水(かん粉)、食塩を溶解すると共に炭酸カルシウムを懸濁して使用する。しかし、この様な練り水配合中での炭酸カルシウムの分散状態は満足されるものではなく、練り水調製後、混錬作業に至るまでに炭酸カルシウムが沈降し再度練り水を撹拌し炭酸カルシウムを再分散させながら添加する必要があり煩雑な作業となる。又、混錬時において麺生地に均一に炭酸カルシウムが行き渡らず得られた麺の物性に偏りが生ずるといった問題が起こる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、食品及び飲料に添加する水不溶性乃至難溶性ミネラルの使用に当たって、液中で沈澱し難く、懸濁安定性及び保存安定性に優れた分散組成物を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、如上の点に鑑み鋭意研究した結果、水溶性ヘミセルロース特に豆類由来の水溶性ヘミセルロースを高分子分散剤として用いたときに、懸濁安定性、保存安定性及び他の成分との反応耐性の良好な水不溶性乃至難溶性ミネラルの分散組成物が得られるという知見を得た。本発明はかかる知見に基づいて、完成されたものである。
【0012】
即ち、水溶性ヘミセルロースを含む水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物、である。
【0013】
本発明における水溶性ヘミセルロースは豆類由来、特に大豆、なかでも子葉由来のものが好ましい。これらの水溶性ヘミセルロースは、その分子量がどの様な値のものでも使用可能であるが、好ましくは平均分子量が数万〜数百万、具体的には5 万〜100 万であるのが好ましい。なお、この水溶性ヘミセルロースの平均分子量は標準プルラン(昭和電工(株)販)を標準物質として0.1MのNaNO3溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。また、ウロン酸の測定はBlumenkrantz法により、中性糖の測定は、アルジトールアセテート化した後にGLC 法により行った。
【0014】
水溶性ヘミセルロースは、ヘミセルロースを含む原料から水抽出や場合によっては酸、アルカリ条件下で加熱溶出させるか、酵素により分解溶出させることができる。水溶性ヘミセルロースの製造法の一例を示すと以下のようである。
【0015】
油糧種子、例えば大豆、パーム、ヤシ、コーン、綿実など通常油脂や蛋白質を除いた殻、あるいは穀類、例えば米、小麦などの通常澱粉等を除いた粕等の植物を原料とすることができる。原料が大豆であれば、豆腐や豆乳、分離大豆蛋白を製造するときに副生するオカラを利用することができる。
【0016】
これらの原料を酸性乃至アルカリ性の条件下、好ましくは各々の蛋白質の等電点付近のpHで、好ましくは130 ℃以下80℃以上、より好ましくは130 ℃以下100 ℃以上にて加熱分解し、水溶性画分を分画した後、そのまま乾燥するか、例えば活性炭処理或いは樹脂吸着処理或いはエタノール沈澱処理して疎水性物質あるいは低分子物質を除去し乾燥することによって、水溶性ヘミセルロースを得ることができる。
【0017】
本発明において、水不溶性乃至難溶性ミネラルとして使用される原料は、食品に使用できるものであれば何れであってもよく、それらの混合物であっても良い。カルシウムを強化する目的等で使用される水不溶性カルシウム塩には炭酸カルシウム、卵殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、貝殻焼成カルシウム、サンゴ焼成カルシウム、卵殻未焼成カルシウム、骨未焼成カルシウム、貝殻未焼成カルシウム、サンゴ未焼成カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられるが、中でも汎用性、工業性、経済性上炭酸カルシウムが好ましく利用できる。炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムを50重量% 以上含有するコーラル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウムが挙げられるが、水酸化カルシウムの水懸濁液である石灰乳と炭酸ガスを反応させる炭酸ガス法に代表される化学的合成法により調製される合成炭酸カルシウムが好ましい。
【0018】
また、鉄分を強化する目的で使用される水不溶性の鉄塩としては、特にピロリン酸第2鉄の使用が、他の鉄塩に比べて鉄味乃至鉄臭が良好である点において好ましい。
【0019】
以上のカルシウム塩や鉄塩以外の他の成分をミネラル成分として使用する場合、これらのミネラル成分は食品に使用できるものであれば何れであってもよく、又、それらの混合物であってもよい。
【0020】
水不溶性乃至難溶性ミネラルと水溶性ヘミセルロース及び水より成る水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物の水懸濁液を調製する方法は、(1)水不溶性乃至難溶性ミネラルと水からなる、食品添加剤として市販されている水懸濁液を化学的分散法、粉砕機及び又は分散機を用いる物理的方法により、粉砕及び又は分散処理した後に水溶性ヘミセルロースを添加し処理する方法、(2)水不溶性乃至難溶性ミネラルと水溶性ヘミセルロース及び水からなる水懸濁液を、同様に粉砕及び又は分散処理する方法、(3)水不溶性乃至難溶性ミネラルと水からなる、食品添加剤として市販されている水懸濁液を、同様に粉砕及び又は分散処理した後、水溶性ヘミセルロースを添加して処理し、再度、同様にして粉砕及び又は分散処理する方法、の3種類の方法に大別されるが、何れの方法を採用しても、又、組み合せても良い。
【0021】
本発明におけるミネラル分散組成物は、水不溶性乃至難溶性のミネラル成分の他に、既存の食品に使用できる水溶性高分子、糖質、糖アルコール、油脂、油性物質、乳化剤或いは分散剤を含有することができる。
【0022】
水溶性高分子としては、アラビアガム、トラガントガム、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチン、カゼインナトリウム、グワーガム、グワーガム酵素分解物、タラガム、布海苔、寒天、ファーセレラン、タマリンド種子多糖、カラヤガム、トロロアオイ、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、デキストリン、シクロデキストリン、キトサン、ホエー等のアルブミン、可溶性コラーゲン、卵白、卵黄末、大豆蛋白等の蛋白性物質やその分解物、各種澱粉、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、や可溶性澱粉に代表される加工澱粉等及びその加水分解物がある。
【0023】
糖質や糖アルコールとしては、ショ糖、マルトース、マルチトール、エリスリトール、トレハロース等が、既存の食品に使用できる油脂や油性物質としては、一般の動植物性油脂や脂溶性ビタミンであるトコフェノール等がある。
【0024】
乳化剤は、既存の乳化剤でよく、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、シュガーエステル類及びレシチンの様な乳化剤が例示でき、又、分散剤としては、メタリン酸ナトリウム等の各種リン酸塩が挙げられる。
【0025】
本発明における水溶性ヘミセルロースは、上記する既存の各種水溶性高分子や乳化剤或いは分散剤と併用することにより一層効果が向上する場合もあり、既存の各種水溶性高分子等の欠点を補うことができる。
【0026】
本発明における水溶性ヘミセルロースは、特に、酸性乳飲料やヨーグルト等の酸性下で蛋白粒子を分散させる能力に優れることから、水不溶性乃至難溶性ミネラルを強化した酸性乳飲料や、ヨーグルトを製造する場合、水溶性ヘミセルロース単独で乳蛋白と水不溶性乃至難溶性ミネラルを同時に分散させることができる。但し、分散系が酸性に傾くほど、水不溶性乃至難溶性ミネラルの一部乃至全部が系内に溶解し、他成分と反応する。反応生成物が水可溶性ミネラルに変化する場合は分散性に悪影響を及ぼす危険は少ないが、この様な水可溶性ミネラルが多く系中に存在すると風味が低下する傾向にあるため好ましくない。特に、分散系をそのまま利用する飲料やヨーグルト等においては、pH3 以上、好ましくはpH4 以上であることが好ましく、これより酸性側への傾きは好ましくない。
【0027】
本発明の水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物は、使用の目的上、系中に塩類や酸、アルカリ等の電解質を含む場合でも、水溶性ヘミセルロースの添加量を調節すれば、その分散状態を良好に保つことができる。この場合使用できる塩類、酸、アルカリ等としては、食塩、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等、調味、pH調整、保存性向上、物性改良等の目的で食品に使用できるものであればよく、それらの混合物であっても良い。
【0028】
本発明の水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物は、乾燥粉末化することにより、当該ミネラルの水に対する分散性を維持して経時安定性を高め、使用範囲を広げることができる。乾燥粉末化について乾燥機に特別の制限はないが、水溶性ヘミセルロースの変質防止の観点より短時間に乾燥を行うのが好ましく、この観点より乾燥機としては、スプレードライヤー、セラミック媒体を加熱流動状態で用いるスラリードライヤー等の液滴噴霧型乾燥機を用いるのが好ましい。
【0029】
水不溶性乃至難溶性ミネラル分散組成物に使用される水溶性ヘミセルロースの添加量は、当該ミネラルに対して概ね0.05重量% 以上より効果を発揮し、牛乳や清涼飲料、酸性乳飲料、ヨーグルト等の低分子電解質の比較的少ない系では、0.05〜50重量% 、好ましくは0.5 〜40重量% の範囲が好ましい。一方、シリアル食品等の様に、食品を調味料と一緒に水不溶性乃至難溶性ミネラルを被覆する場合、当該ミネラルは調味料と混合した調味液にして被覆、乾燥される方が工程管理上好ましい。又、中華麺の様に、小麦粉、澱粉に加える練り水に麺の物性改質の目的で炭酸カルシウムが添加される場合、炭酸カルシウムは、かん水(かん粉)や食塩と混合した練り水組成物として使用される。しかし、調味液は濃縮液の状態にあることが多く、且つ、調味液や練り水組成物中には食塩や炭酸塩等の様な低分子電解質が多く含まれているため、水不溶性乃至難溶性ミネラルを分散させる分散剤の添加量も増やす必要があり、水溶性ヘミセルロースも例外ではない。この様な場合の水溶性ヘミセルロースの添加量は、水不溶性乃至難溶性ミネラルに対して1 〜300 重量% 、好ましくは5 〜200 重量% の範囲であることが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明の実施態様を説明するが、これは例示であって本願発明の精神がこれらの例示によって制限されるものではない。なお、例中、部および% は何れも重量基準を意味する。
【0031】
○大豆ヘミセルロースの調製
分離大豆蛋白製造工程において得られた生オカラに2倍量の水を加え、塩酸にてpHを4.5 に調製し、120 ℃で1.5 時間加水分解した。冷却後遠心分離し(10000 G ×30分)、上澄と沈澱部に分離した。こうして分離した沈澱部を更に等重量の水で水洗し、遠心分離し、上澄を先の上澄と一緒にして活性炭カラム処理した後、乾燥して水溶性ヘミセルロース(イ)を得た。
【0032】
更に、この水溶性ヘミセルロースを0.5%食塩水に溶解し、エタノール濃度が50% となるように再沈澱を3回繰り返し、イオン交換樹脂(オルガノ(株)製「アンバーライトIR-120B 」)を用いて脱塩して水溶性ヘミセルロース(ロ)を得た。
【0033】
一方、前記方法において活性炭カラム処理をしないで同様に水溶性ヘミセルロース(ハ)を得た。以上の結果を纏めると以下のとおり。
【0034】
【表1】
Figure 0004066111
【0035】
次に、(イ)、(ロ)及び(ハ)の水溶性ヘミセルロースの糖組成を次の方法で分析した。ウロン酸の測定は、Blumenkrantz法により、また中性糖は、アルジトールアセテート法によりGLC を用いて測定した。結果は以下のとおり。
【0036】
【表2】
Figure 0004066111
【0037】
○炭酸カルシウム懸濁液の作成
実施例1
水63部に水溶性ヘミセルロース(イ)7部を溶解し、食品添加物公定書中の「炭酸カルシウム」の規格値に対する合格品である炭酸カルシウム試薬(キシダ化学(株)製)30部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌して炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0038】
実施例2
実施例1において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、水溶性ヘミセルロース(ロ)を使用した以外は実施例1と全く同様にして炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0039】
実施例3
実施例1において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、水溶性ヘミセルロース(ハ)を使用した以外は実施例1と全く同様にして炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0040】
実施例4
実施例1において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、水溶性ヘミセルロース(イ)3.5 部とアラビアガム3.5 部を使用した以外は実施例1と全く同様にして炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0041】
比較例1
実施例1において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、水7部を添加した以外は実施例1と全く同様にして炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0042】
比較例2
実施例1において、水溶性ヘミセルロース(イ)7部を用いる代わりに、メタリン酸ナトリウム(キシダ化学(株)製)2.1 部と水4.9 部を使用した以外は実施例1と全く同様にして炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0043】
比較例3
実施例1において、水溶性ヘミセルロース(イ)7部を用いる代わりに、メチルセルロース(信越化学工業(株)製:SM-4000 )0.7 部と水6.3 部を使用した以外は実施例1と全く同様にして炭酸カルシウム懸濁液を得た。
【0044】
炭酸カルシウムの懸濁安定性評価
実施例1〜4及び比較例1〜3で得た炭酸カルシウム懸濁液を、そのまま、及び炭酸カルシウム濃度が0.2%となるように希釈し、100ml 容メスシリンダーに100ml 注ぎ、20℃にて静置1時間後と3日後の界面の高さと沈降物量を観察した。メスシリンダーに刻まれたml単位の表示を読み取り、その結果を下記の3段階で評価した。
【0045】
(界面の高さ評価)
上澄みと懸濁液との界面が存在しない 3点
上澄みと懸濁液との界面が90ml以上100ml 未満の高さに存在する 2点
上澄みと懸濁液との界面が90ml未満の高さに存在する 1点
(沈澱物量評価)
沈殿物が確認できない 3点
沈殿堆積物と懸濁液との界面が底部より2ml 未満の高さに存在する 2点
沈殿堆積物と懸濁液との界面が底部より2ml 以上の高さに存在する 1点
【0046】
結果を比較して以下に示す。
【表3】
Figure 0004066111
【0047】
以上に様に、水溶性ヘミセルロースを用いた場合、食品用炭酸カルシウム分散剤として良く利用されるメタリン酸ナトリウムを添加した場合と同等以上の懸濁安定性が得られた。一方、メチルセルロースを使用した場合は、調製時は安定しているが希釈時の懸濁安定性に劣る。この原因は、メチルセルロースの添加により分散系が増粘して炭酸カルシウムの沈降速度が見掛け上遅くなったためであり、希釈により粘度が低下すると分散状態が保てなくなる。水溶性ヘミセルロースを用いた場合は、調製時、希釈後も懸濁安定性に優れ、増粘による見掛け上の分散状態でなく、水溶性ヘミセルロースが分散剤として効果を発揮していることが判る。
【0048】
本実施例では、炭酸カルシウム試薬をホモミキサーで撹拌し、炭酸カルシウムの懸濁液を調製したが、炭酸カルシウム自身の粒子径が、より細かくなれば炭酸カルシウムの沈降速度が小さくなり懸濁安定性を向上させることができる。例えば、水酸化カルシウムの水懸濁液中に炭酸ガスを吹込み水酸化カルシウムを炭酸化させて得られる炭酸カルシウムは、純度も高く粒子径も細かいが、この様な粒子径の細かい炭酸カルシウムの懸濁液に水溶性ヘミセルロースを分散剤として添加した場合、より一層懸濁安定性の優れる懸濁液が得られることは明確である。
【0049】
○酸性乳飲料の作製
実施例5
脱脂粉乳18.1部を牛乳34部、水47.9部に加えて分散させ、95℃で15分間殺菌後、撹拌しながら40℃まで冷却し、スターターとして市販のプレーンヨーグルトを3部添加し、38℃の恒温室でpH4.2 になるまで発酵させた。発酵したヨーグルトを撹拌機を用いてカードを潰し、10℃まで冷却して発酵乳を調製した。水溶性ヘミセルロース(イ)2部を熱水98部に加えて80℃で10分間撹拌しながら溶解した後、約25℃まで冷却して乳蛋白の安定剤溶液を作成した。砂糖35部を水65℃に加えて溶解後、25℃に温度調節して糖液を得た。水63部に水溶性ヘミセルロース(イ)7部を溶解し、炭酸カルシウム試薬30部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌して炭酸カルシウム懸濁液を得た。発酵乳40部に乳蛋白の安定剤溶液20部、糖液20部、水14.8部を加えて混合後、50%w/vクエン酸溶液でpH4.2 に調整し、炭酸カルシウム懸濁液5.2部をこれに加えてホモゲナイザー(第一段150kg/m2 、第二段0kg/m2 )にて均質化し、カルシウムとして約0.2%含有している酸性乳飲料を得た。
【0050】
実施例6
実施例5で得た発酵乳15部に乳蛋白の安定剤溶液20部、糖液20部、水39.8部を加えて混合後、50%w/vクエン酸溶液でpH4.2 に調整し、炭酸カルシウム懸濁液5.2 部をこれに加えて殺菌後、ホモゲナイザー(第一段150kg/m2 、第二段0kg/m2 )にて均質化し、カルシウムとして約0.2%含有している酸性乳飲料を得た。
【0051】
比較例4
実施例5の乳蛋白の安定剤溶液作成段階において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、アルギン酸プロピレングリコールエステル(君津化学工業(株)製)を使用すること、炭酸カルシウム懸濁液作成段階において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、HLB19 のショ糖脂肪酸エステルを使用した以外は実施例5と全く同様にしてカルシウムとして約0.2%含有している酸性乳飲料を得た。
【0052】
比較例5
比較例4で得た発酵乳15部に乳蛋白の安定剤溶液20部、糖液20部、水39.8部を加えて混合後、50%w/vクエン酸溶液でpH4.2 に調整し、炭酸カルシウム懸濁液5.2 部をこれに加えて殺菌後、ホモゲナイザー(第一段150kg/m2、第二段0kg/m2)にて均質化し、カルシウムとして約0.2%含有している酸性乳飲料を得た。
【0053】
炭酸カルシウム及び乳蛋白の懸濁安定性評価性評価
実施例5〜6及び比較例4〜5で得たカルシウムとして約0.2%含有している酸性乳飲料を、100ml 容メスシリンダーに100ml 注ぎ、4℃にて静置して界面の高さと沈降物量の経時的な変化を観察した。メスシリンダーに刻まれたml単位の表示を読み取り、その結果を下記の3段階で評価した。
【0054】
(界面の高さ評価)
上澄みと懸濁液との界面が存在しない 3点
上澄みと懸濁液との界面が95ml以上100ml 未満の高さに存在する 2点
上澄みと懸濁液との界面が95ml未満の高さに存在する 1点
(沈澱物量評価)
沈殿物が確認できない 3点
沈殿堆積物と懸濁液との界面が底部より2ml 未満の高さに存在する 2点
沈殿堆積物と懸濁液との界面が底部より2ml 以上の高さに存在する 1点
【0055】
結果を比較して以下に示す。
【表4】
Figure 0004066111
【0056】
以上のように、水溶性ヘミセルロースを用いた場合、炭酸カルシウム粒子及び乳蛋白粒子の分散性が向上し、沈澱物も少なく懸濁安定性及び保存安定性の良好な、カルシウム強化酸性乳飲料が得られた。
【0057】
○シリアル食品の作製
実施例7
水100 部に脱脂粉乳10部、砂糖9部、モルトエキス8部、食塩4部、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)4部、クエン酸0.8 部を溶解して調味液を得た。水100 部に水溶性ヘミセルロース(イ)15部を溶解し、炭酸カルシウム20部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌して炭酸カルシウム懸濁液を得た。調味液100 部に炭酸カルシウム懸濁液11部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌して炭酸カルシウム懸濁調味液を得た。全粒トウモロコシ100 部をプラスチック製の箱に入れ約15℃の水道水に8時間浸漬後、水抜きし16時間調湿してトウモロコシ内の水分分布を均一に34%にした。調湿後のトウモロコシに、先に調製した炭酸カルシウム懸濁調味液40部を添加し、蒸煮釜で蒸気圧力1.8kg/cm2にて55分間蒸熱処理した。これを脱圧後、更にジャケットのみを蒸気圧力0.5kg/cm2にて25分間加熱することにより、トウモロコシ表面の乾燥を行いα化度85%のトウモロコシを得た。このトウモロコシを圧偏ロールにて0.6 〜0.8mm の厚みに圧偏し、バンドドライヤーを用いて70℃で15分間の熱風乾燥を行い、水分含量9%のフレークを得た。次いで高温気流焙焼機(荒川製作所(株)製:ジェットゾーンオーブン)を用いて250 ℃で20秒間焙焼してシリアル食品を得た。
【0058】
比較例6
実施例7において、水溶性ヘミセルロース(イ)を使用しなかった以外は実施例7と全く同様にしてシリアル食品を得た。
【0059】
比較例7
実施例7において、炭酸カルシウム懸濁液の調製段階で、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、メタリン酸ナトリウム0.9 部を使用した以外は実施例7と全く同様にしてシリアル食品を得た。
【0060】
炭酸カルシウムの懸濁安定性及びシリアル食品作製の評価
実施例7及び比較例6〜7で得た炭酸カルシウム懸濁液及び炭酸カルシウム懸濁調味液を、100ml 容メスシリンダーに100ml 注ぎ、20℃にて静置24時間後の界面の高さと沈降物量を観察した。評価方法は、実施例1〜4及び比較例1〜3での炭酸カルシウムの懸濁安定性評価に準じた。又、蒸煮処理したトウモロコシを取り出した後の蒸煮釜の内面に炭酸カルシウムの凝集物の有無を目視観察した。更に、得られたシリアル食品における被覆むらの有無を目視観察した。
【0061】
結果を比較して以下に示す。
【表5】
Figure 0004066111
【0062】
以上に様に、水溶性ヘミセルロースを用いた場合、炭酸カルシウムの分散性が発揮され、調味液の経時安定性が良好となり、経時的に均一で、その後のコーンへの調味時の混合で炭酸カルシウムの濃度分布にむらのない優れたカルシウム強化シリアル食品が得られた。一方、水溶性ヘミセルロースを使用しなかった場合や水溶性ヘミセルロースの代りに分散剤としてメタリン酸ナトリウムを使用した場合は、炭酸カルシウム懸濁液、或いは炭酸カルシウム懸濁調味液の調製時点で炭酸カルシウムが凝集沈降し、良好な分散状態を維持できず、又、その後のコーンへの調味時の混合で炭酸カルシウムの濃度分布にむらが生じ、満足できるシリアル食品は得られなかった。
【0063】
○カルシウム分強化牛乳の作製
実施例8
水150 部に水溶性ヘミセルロース(イ)6部を溶解し、炭酸カルシウム44部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、更に水250 部を添加して再度ホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、炭酸カルシウム懸濁液を得た。炭酸カルシウム懸濁液450 部を、60℃で溶解させたバター400 部中に分散させ、脱脂乳8000部中に添加、撹拌後、殺菌してカルシウム分強化牛乳を得た。
【0064】
実施例9
水150 部に水溶性ヘミセルロース(イ)6部を溶解し、炭酸カルシウム44部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌後、この懸濁液をスプレードライヤーを用いて乾燥粉末化した。得られた乾燥粉末50部を65℃の温水400 部に添加し、ホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、炭酸カルシウム再懸濁液を得た。炭酸カルシウム再懸濁液450 部を、60℃で溶解させたバター400 部中に分散させ、脱脂乳8000部中に添加、撹拌後、殺菌してカルシウム分強化牛乳を得た。
【0065】
比較例8
実施例8において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、アルギン酸プロピレングリコールエステルを使用した以外は実施例8と全く同様にしてカルシウム分強化牛乳を得た。
【0066】
比較例9
実施例8において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、HLB が16のショ糖ステアリン酸エステルを12部使用した以外は実施例8と全く同様にしてカルシウム分強化牛乳を得た。
【0067】
炭酸カルシウムの懸濁安定性評価
実施例8〜9及び比較例8〜9で得たカルシウム分強化牛乳を、100ml 容メスシリンダーに100ml 注ぎ、4℃にて静置後、定期的にメスシリンダー中の牛乳を静かに廃棄してメスシリンダー底部に残存する沈降物量の経時的な変化を観察した。その結果を下記の3段階で評価した。
(沈澱物量評価)
沈殿物が確認できない 3点
沈殿物が1ml 未満存在する 2点
沈殿物が1ml 以上存在する 1点
【0068】
結果を比較して以下に示す。
【表6】
Figure 0004066111
【0069】
以上に様に、水溶性ヘミセルロースを用いた場合、炭酸カルシウムの分散性及び分散安定性が改善され、経時性の優れたカルシウム分強化牛乳が得られた。又、炭酸カルシウム懸濁液を一旦乾燥粉末化しても、水に再分散させれば同等の分散性及び分散安定性を有するカルシウム分強化牛乳が得られた。
【0070】
○鉄分強化牛乳の作製
実施例10
水75部に水溶性ヘミセルロース(イ)3部を溶解し、ピロリン酸第2鉄試薬(三栄源エフエフアイ(株)製)22部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、更に水125 部を添加して再度ホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、ピロリン酸第2鉄懸濁液を得た。ピロリン酸第2鉄懸濁液40部を、60℃で溶解させたバター400 部中に分散させ、脱脂乳8000部中に添加、撹拌後、殺菌して鉄分強化牛乳を得た。
【0071】
実施例11
水75部に水溶性ヘミセルロース(イ)3部を溶解し、ピロリン酸第2鉄22部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌後、この懸濁液をスプレードライヤーを用いて乾燥粉末化した。得られた乾燥粉末25部を65℃の温水200 部に添加し、ホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、ピロリン酸第2鉄再懸濁液を得た。ピロリン酸第2鉄再懸濁液40部を、60℃で溶解させたバター400 部中に分散させ、脱脂乳8000部中に添加、撹拌後、殺菌して鉄分強化牛乳を得た。
【0072】
比較例10
実施例10において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、アルギン酸プロピレングリコールエステルを使用した以外は実施例10と全く同様にして鉄分強化牛乳を得た。
【0073】
比較例11
実施例10において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、HLB が13のグリセリン脂肪酸エステルを6部使用した以外は実施例10と全く同様にして鉄分強化牛乳を得た。
【0074】
ピロリン酸第2鉄の懸濁安定性評価
実施例10〜11及び比較例10〜11で得た鉄分強化牛乳を、100ml 容メスシリンダーに100ml 注ぎ、5℃にて静置後、定期的にメスシリンダー中の牛乳を静かに廃棄してメスシリンダー底部に残存する沈降物量の経時的な変化を観察した。評価方法は、実施例8〜9及び比較例8〜9での炭酸カルシウムの懸濁安定性評価に準じた。
【0075】
結果を比較して以下に示す。
【表7】
Figure 0004066111
【0076】
以上に様に、水溶性ヘミセルロースを用いた場合、ピロリン酸第2鉄の分散性及び分散安定性が改善され、経時性の優れた鉄分強化牛乳が得られた。又、ピロリン酸第2鉄懸濁液を一旦乾燥粉末化しても、水に再分散させれば同等の分散性及び分散安定性を有する鉄分強化牛乳が得られた。
【0077】
○中華そば製造用練り水組成物の作製
実施例12
水100 部に水溶性ヘミセルロース(イ)20部を溶解し、炭酸カルシウム10部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌して炭酸カルシウム懸濁液を得た。粉末かん水(オリエンタル酵母工業(株)製)2.5 部、食塩10部を水200 部に溶解後、炭酸カルシウム懸濁液130 部を添加してホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌して中華そば製造用練り水組成物を得た。
【0078】
実施例13
実施例12において得られた練り水組成物を、スプレードライヤーを用いて乾燥粉末化した。得られた乾燥粉末17.5部を水100 部に添加し、ホモミキサーで10000rpm×15分間撹拌し、中華そば製造用練り水組成物を得た。
【0079】
実施例14
実施例12において、粉末かん水の使用量を13部にする以外は実施例12と全く同様にして中華そば製造用練り水組成物を得た。
【0080】
実施例15
実施例12において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、水溶性ヘミセルロース(イ)10部とグワーガム酵素分解物(太陽化学(株)製:サンファイバーR)10部を使用した以外は実施例12と全く同様にして中華そば製造用練り水組成物を得た。
【0081】
比較例12
実施例12において、水溶性ヘミセルロース(イ)を使用しなかった以外は実施例12と全く同様にして中華そば製造用練り水組成物を得た。
【0082】
比較例13
実施例12において、水溶性ヘミセルロース(イ)を用いる代わりに、メチルセルロース(SM-4000 )0.7 部を使用した以外は実施例12と全く同様にして中華そば製造用練り水組成物を得た。
【0083】
炭酸カルシウムの懸濁安定性評価
実施例12〜15及び比較例12〜13で得た中華そば製造用練り水組成物を、100ml 容メスシリンダーに100ml 注ぎ、20℃にて静置後の経時的な沈降物量を観察した。メスシリンダーに刻まれたml単位の表示を読み取り、その結果を下記の3段階で評価した。
(沈澱物量評価)
沈殿物が確認できない 3点
沈殿堆積物と懸濁液との界面が底部より2ml 未満の高さに存在する 2点
沈殿堆積物と懸濁液との界面が底部より2ml 以上の高さに存在する 1点
【0084】
結果を比較して以下に示す。
【表8】
Figure 0004066111
【0085】
以上に様に、水溶性ヘミセルロースを用いた場合、炭酸カルシウムの分散性が発揮され、練り水組成物の経時安定性が良好となり、経時的に均一で、その後の麺生地混錬時に炭酸カルシウムの濃度分布にむらの生じ難い優れた中華そば製造用練り水組成物が得られた。一方、水溶性ヘミセルロースを使用しなかった場合は、練り水組成物の調製時点で炭酸カルシウムが凝集沈降し、良好な分散状態を維持できなかった。又、水溶性ヘミセルロースの代りに組成物の粘度を上げて炭酸カルシウムの沈降を遅延させる目的で増粘剤としてメチルセルロースを使用した場合は、水溶性ヘミセルロースと同程度の粘度では炭酸カルシウムが凝集沈降する。仮にメチルセルロースの添加量を増やしたり、より高粘度を発揮する品種に代えて練り水組成物の粘度を上げることで炭酸カルシウムの沈降が抑制できたとしても、練り水組成物の粘度の上昇は、作業性の悪化に繋がり、小麦粉、澱粉等の原料粉に対する練り水添加率に狂いが生じるため安定して良好な中華麺製造が実施できない。
【0086】
【発明の効果】
このように、水溶性ヘミセルロースを水不溶性及び難溶性ミネラルの分散組成物に使用すると、水不溶性及び難溶性ミネラルの分散安定性が良好となる。その結果、水不溶性及び難溶性ミネラル懸濁液或いは再懸濁液を被覆、混合する場合の均一性が向上し、作業性が改善されると共に、最終製品においても水不溶性及び難溶性ミネラルの分布の均一な製品を得ることが可能となり、生産性の向上に繋がった。

Claims (4)

  1. 大豆由来の水溶性ヘミセルロースを含む、炭酸カルシウムまたはピロリン酸第2鉄の水分散懸濁液
  2. 請求項1に記載の水分散懸濁液の乾燥粉末
  3. 請求項1の水分散懸濁液または請求項2の乾燥粉末を含む、ミネラル強化食品又は飲料。
  4. 請求項1の水分散懸濁液または請求項2の乾燥粉末を含む、中華そば製造用練り水組成物。
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